説明

防災情報システム及び防災情報装置

【課題】防災情報システムの通信回線(NW)の状況に応じて交換する情報をユーザーが特別の操作をすることなく通信速度に適した形式に変更することで、有線の高速NWが途絶したときにも防災情報の交換を継続すること。
【解決手段】高速NWが使用可能時は、情報サーバと情報端末間を中継させて詳細な情報を高速に伝送させる。高速NW不能時は、簡易な代替画面に差し替えて情報端末で閲覧や記入をさせ、情報サーバとの通信では低速NWに代替画面中の情報データのみを伝送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報サーバと情報端末との間をネットワーク(以下、NW)を介して防災情報を交換する防災情報システム、及びその防災情報システムに用いる防災情報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自治体等において、県庁などに配置された情報サーバと市役所や町役場などに配置された情報端末との間をNWなどを使用して接続し、それらの間で防災情報の交換を行うようになってきている。
【0003】
このNWに障害が発生した場合にも情報サーバと情報端末との間の通信を確保するために、バックアップ回線(NWの1形態)に切り替えて通信を継続することが行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−273765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、通信回線として光NWのように有線の高速(大容量)NWが普及してきており、この高速NWを使用して静止画や動画を容易に扱えるようになった。この高速NWを防災情報システムに用いる場合には、地震などの際にNW系統の断が懸念され、バックアップ回線として固定系の無線システム(マイクロ網)が整備されてきた。また、そのバックアップ回線として移動無線の通話用チャネルを用いることも考えられる。しかし、これら固定系の無線システムや移動無線の通話用チャネルは、光NWに比して通信速度は極めて低いから、そのままでは有線の高速NWのバックアップとしては非力である。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、防災情報システムの通信回線(NW)の状況に応じて交換する情報をユーザーが特別の操作をすることなく通信速度に適した形式に変更することで、有線の高速NWが途絶したときにも防災情報の交換を継続することができる、防災情報システム、及びそのための防災情報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の防災情報システムは、情報サーバと、情報端末と、高速NW及び低速NWを介して前記情報サーバと接続し且つ前記情報端末と接続して、前記情報サーバと前記情報端末との間で防災情報を交換するための防災情報装置とを有し、
前記防災情報装置は、
前記高速NWを介して前記情報サーバへ問い合わせ信号を送信し、該送信への応答の有無によって前記高速NWが使用可能か不可かを判定するとともに、前記高速NWが使用可能な時は前記情報サーバと前記情報端末との間での災害情報の交換を前記高速NWを介して中継する、高速NW死活判定部と、
簡易災害様式及び簡易報告様式を記憶する、代替画面作成用記憶部と、
前記高速NW使用不可の時に、前記簡易災害様式と前記サーバから前記低速NWを介して送信された簡易災害情報用データとに基づいて簡易災害情報を作成して前記情報端末へ送信するとともに、前記簡易報告様式を前記情報端末へ送信し、前記情報端末から送られた報告データが記入された記入済簡易報告様式から前記報告データを抽出して、該報告データのみを前記低速NWを介して前記情報サーバへ送信する、代替画面作成処理部と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の防災情報装置は、高速NW及び低速NWを介して情報サーバと接続し且つ情報端末と接続して、前記情報サーバと前記情報端末との間で防災情報を交換するための防災情報装置であって、
前記高速NWを介して前記情報サーバへ問い合わせ信号を送信し、該送信への応答の有無によって前記高速NWが使用可能か不可かを判定するとともに、前記高速NWが使用可能な時は前記情報サーバと前記情報端末との間での災害情報の交換を前記高速NWを介して中継する、高速NW死活判定部と、
簡易災害様式及び簡易報告様式を記憶する、代替画面作成用記憶部と、
前記高速NW使用不可の時に、前記簡易災害様式と前記サーバから前記低速NWを介して送信された簡易災害情報用データとに基づいて簡易災害情報を作成して前記情報端末へ送信するとともに、前記簡易報告様式を前記情報端末へ送信し、前記情報端末から送られた報告データが記入された記入済簡易報告様式から前記報告データを抽出して、該報告データのみを前記低速NWを介して前記情報サーバへ送信する、代替画面作成処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防災情報システム及び防災情報装置によれば、高速NWが使用できるときは、情報サーバと情報端末間の通信をひたすら中継させて詳細な情報を高速に伝送させ、一方、高速NWが途絶しているとき(使用できないとき)は、中継するのではなく、必要最小限の情報交換ができる代替の画面に差し替えて情報端末で閲覧や記入をさせ、情報サーバと防災情報装置との通信では低速NWに代替画面中の情報データのみを伝送させるから、操作性(レスポンス)が改善される。
【0009】
また、高速NWの障害時に、情報量の少ない画面に自動的に誘導するので、利用者に手間を取らせない。
【0010】
更に、本発明では、情報端末にNWの切り替えに対応した専用のソフトは不要である。また、極端に速度の異なるIPネットワークの二重化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の防災情報システム及び防災情報装置の実施例について説明する。
【0012】
図1に示されるように、県庁などのセンターに配置された情報サーバ10と複数の市役所や町役場に配置された情報端末20との間での防災情報の交換を高速NW30或いは低速NW40を介して行うように、防災情報装置100によって中継或いは加工する。
【0013】
高速NW30は公衆回線の光NWなどの大容量・高速の回線であり、低速NW40は固定系の無線システム(マイクロ網)等の小容量・低速の回線である。
【0014】
高速NW30が使用可能である通常時には、図1に示すように、情報サーバ10と情報端末20との間での防災情報の交換を高速NW30を介して、防災情報装置100がそのまま中継する。情報端末20で情報サーバ10に集積されている災害情報を取得する場合には、地図など図面も使用し分かり易い形式で詳細災害情報が伝送される。
【0015】
また、情報端末20で情報サーバ10へその地区などの災害状況を報告する場合には、情報サーバ10から送られる図面などを使用して対話式で災害状況が簡単に入力できる詳細報告様式を情報端末20へ伝送し、その詳細報告様式に災害状況が入力された記入済詳細報告様式が情報端末20から情報サーバ10へ伝送される。
【0016】
これら詳細災害情報、詳細報告様式、記入済詳細報告様式は地図データ(ビップマップ形式)等も含むからデータ量が多いが高速NW30を介して伝送されるのでレスポンス遅れなどの問題もない。この場合、防災情報装置100は、ひたすら中継機能を果たすことになる。
【0017】
高速NW30が使用不可である異常時には、図2に示すように、情報サーバ10と情報端末20との間での防災情報の交換を低速NW40を介して、且つ防災情報装置100で防災情報に特定の情報処理の加工を行った上で伝送する。
【0018】
情報端末20で情報サーバ10に集積されている災害情報を取得する場合には、防災情報装置100へは情報サーバ10から簡易災害情報用データ(例、テキストデータ)のみが低速NW40を介して伝送され、防災情報装置100で作成した或いは記憶している簡易災害様式に伝送されてきた簡易災害情報用データを組み込む加工処理を行って、簡易災害情報を作成し、情報端末20へ送信する。情報端末20では、簡易とは言え、所定の様式に災害情報用データが組み込まれた見やすい形式で災害情報を閲覧できる。なお、この明細書で「簡易」とは、高速NWを通して伝送される「詳細」に比してその内容が簡単なものであればよく、そのように内容が異なっていればよい。従って、本明細書において、「詳細」を「第1」とし、「簡易」を「第2」と言い換えても良い。
【0019】
また、情報端末20から災害状況を報告する場合には、やはりサーバ10に要求することなく、防災情報装置100で作成した或いは記憶している簡易報告様式を情報端末20へ送信する。情報端末20では簡易報告様式に災害状況を記入し、記入済簡易報告様式を防災情報装置100へ送信する。防災情報装置100では、記入済簡易報告様式から情報端末20で記入された事項(記入データ)のみを抽出して、低速NW40を介して情報サーバ10へ伝送する。
【0020】
これら簡易災害様式、簡易報告様式、或いはそれらを作成するためのデータは、防災情報装置100に記憶されている。これらの様式等は設置時に取得され、また、それらの様式(フォーム)が変更される場合には情報サーバ10等から高速NW30や低速NW40を介して、様式が変更後のものに更新される。従って、高速NW異常時には、情報サーバ10と防災情報装置100との間での低速NW40での伝送は、簡易災害情報用データ(テキストデータ)や情報端末20で記入された事項(記入データ;テキストデータ)のみが伝送されるから、低速NW40にも係わらずレスポンス遅れの影響が無く或いは少なく、また、情報端末20での報告データの記入や災害情報の閲覧は所定の様式で行われるから低速NW40使用による悪影響を少なくできる。
【0021】
図3は、本発明の防災情報装置100の内部構成を示す図であり、図4〜図6のフロー図も用いて順次説明する。
【0022】
図3において、プロキシ処理部111は高速NW30を使用する場合にそれとの接続及び通信機能を行うもので、インターフェース113を通して高速NWにつながる。端末通信処理部112は、情報端末20とインターフェース114をとうしてつながり、所要の通信処理などを行う。
【0023】
高速NW死活判定部120は、高速NW30が使用可能か不可かを定期的に監視する他、高速NW使用可能時にプロキシ処理部111、端末通信処理部112、高速NW30を介して情報伝送を行う。また、高速NW使用不可時に代替画面作成処理部140,端末通信処理部112、低速NW40を介して情報伝送を行う。なお、これらの情報伝送は、高速NW死活判定部120を介する必要はなく、これをパスするルートを形成してもよい。
【0024】
記憶装置130は、代替画面作成用記憶部であり、簡易災害様式や簡易報告様式、或いはそれらを作成するためのデータが記憶されており、これらの記憶された様式等は設置時に取得され、また、それらの様式(フォーム)が変更される場合には情報サーバ10等から高速NW30や低速NW40を介して、様式が変更後のものに更新される。
【0025】
代替図面作成処理部140は、高速NW30の使用不可時に、簡易災害様式に、低速NW40を介して送られてきた簡易災害情報用データを組み込む加工処理を行って、簡易災害情報を作成し、また、簡易報告様式を情報端末20へ送信し、情報端末20から送られてきた記入済簡易報告様式から情報端末20で記入された事項(記入データ)のみを抽出する。
【0026】
低速通信用データ処理部151及び通信制御部152は、インターフェース153、低速NW40を介して情報サーバ10との通信を行うための処理、制御を行う。
【0027】
高速NW死活判定部120で行う死活判定処理が図4に示されている。図4で、点検動作(監視)が開始されると、高速NW死活判定部120から高速NW30を介して情報サーバ10に問い合わせ送信が定期的に或いは必要時に行われる(S101)。この問い合わせは、例えばネットワークの疎通を確認するping送信機能のようなものでよい。
【0028】
問い合わせ送信に対して、規定時間内に応答があるか否かを判定し(S102)、応答があれば高速NW30が使用可能であると判定して高速NW使用可能フラグを「1」とし(S103)、応答がなければ高速NW30が使用不可であると判定して高速NW使用可能フラグを「0」とする(S104)。これにより、常時、高速NW30の状況が監視される。
【0029】
次に、災害情報の取得方法を、図5も用いて説明する。情報端末20から災害情報の要求が出されると、高速NW30が使用可能(フラグ=1)であるかどうかが判定される(S201)。使用可能であると、高速NW30を介して情報サーバ10に対して詳細災害情報を要求し(S202)、高速NW30を介して情報サーバ10から受信した詳細災害情報を要求した情報端末20へ送信し(S203)、詳細災害情報の取得を終了する(S204)。
【0030】
高速NW30が使用不可であると、低速通信用データ処理部151、通信制御部152等を用いて低速NW40の接続処理を行い(S211)、低速NW40を介して情報サーバに対して簡易災害用情報データを要求する(S212)。そして、簡易災害用情報データを低速NW40を介して得る(S213)と、低速NW40の接続を切断する(S214)。
【0031】
代替画面作成処理部140では、記憶装置130から取り出した簡易災害様式(もしくは簡易災害様式作成用データから作成した簡易災害様式)に、伝送されてきた簡易災害情報用データを組み込む加工処理を行って簡易災害情報を作成し(S215)、情報端末20へ送信し(S216)、簡易災害情報の取得を終了する(S217)。
【0032】
次に、災害情報の報告方法を、図6を用いて説明する。情報端末20から災害情報の報告要求が出されると、高速NW30が使用可能(フラグ=1)であるかどうかが判定される(S301)。使用可能であると、高速NW30を介して情報サーバ10に対して詳細報告様式を要求し(S302)、高速NW30を介して情報サーバ10から受信した詳細報告様式を要求した情報端末20へそのまま送信する(S303)。情報端末20で所定事項が記入された記入済詳細報告様式を受信し(S304)、受信した記入済詳細報告様式をそのまま高速NW30を介して情報サーバ(10)へ送信し(S305)、災害情報の詳細報告を終了する(S306)。
【0033】
高速NW30が使用不可であると、代替画面作成処理部140は記憶装置130から取り出した簡易報告様式(もしくは簡易報告様式作成用データから作成した簡易報告様式)を情報端末20へ送信する(S311)。情報端末20で必要な最小限の事項が記入された記入済簡易報告様式を受信し(S312)、記入済簡易報告様式から情報端末20で記入された事項(記入データ)のみを抽出する(S313)。そして、低速通信用データ処理部151、通信制御部152等を用いて低速NW40の接続処理を行い(S314)、その記入データのみを低速NW40を介して情報サーバ10へ送信し(S315)、災害情報の簡易報告を終了する(S316)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の防災情報システムの高速NW使用時(通常時)の状況を示す図
【図2】本発明の防災情報システムの低速NW使用時(異常時)の状況を示す図
【図3】本発明の防災情報装置100の構成図
【図4】高速NWの死活判定処理のフロー図
【図5】災害情報の取得処理のフロー図
【図6】災害情報の報告処理のフロー図
【符号の説明】
【0035】
10:情報サーバ、20:情報端末、30:高速ネットワーク(高速NW)
40:低速ネットワーク(低速NW)、100:防災情報装置、111:プロシキ処理部
112:端末通信処理部、120:高速NW死活判定部、130:記憶装置
140:代替画面作成処理部、151:低速通信データ用処理部、152:通信制御部
113,114,153:インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報サーバと、情報端末と、高速NW及び低速NWを介して前記情報サーバと接続し且つ前記情報端末と接続して、前記情報サーバと前記情報端末との間で防災情報を交換するための防災情報装置とを有し、
前記防災情報装置は、
前記高速NWを介して前記情報サーバへ問い合わせ信号を送信し、該送信への応答の有無によって前記高速NWが使用可能か不可かを判定するとともに、前記高速NWが使用可能な時は前記情報サーバと前記情報端末との間での災害情報の交換を前記高速NWを介して中継する、高速NW死活判定部と、
簡易災害様式及び簡易報告様式を記憶する、代替画面作成用記憶部と、
前記高速NW使用不可の時に、前記簡易災害様式と前記サーバから前記低速NWを介して送信された簡易災害情報用データとに基づいて簡易災害情報を作成して前記情報端末へ送信するとともに、前記簡易報告様式を前記情報端末へ送信し、前記情報端末から送られた報告データが記入された記入済簡易報告様式から前記報告データを抽出して、該報告データのみを前記低速NWを介して前記情報サーバへ送信する、代替画面作成処理部と、を有することを特徴とする、防災情報システム。
【請求項2】
高速NW及び低速NWを介して情報サーバと接続し且つ情報端末と接続して、前記情報サーバと前記情報端末との間で防災情報を交換するための防災情報装置であって、
前記高速NWを介して前記情報サーバへ問い合わせ信号を送信し、該送信への応答の有無によって前記高速NWが使用可能か不可かを判定するとともに、前記高速NWが使用可能な時は前記情報サーバと前記情報端末との間での災害情報の交換を前記高速NWを介して中継する、高速NW死活判定部と、
簡易災害様式及び簡易報告様式を記憶する、代替画面作成用記憶部と、
前記高速NW使用不可の時に、前記簡易災害様式と前記サーバから前記低速NWを介して送信された簡易災害情報用データとに基づいて簡易災害情報を作成して前記情報端末へ送信するとともに、前記簡易報告様式を前記情報端末へ送信し、前記情報端末から送られた報告データが記入された記入済簡易報告様式から前記報告データを抽出して、該報告データのみを前記低速NWを介して前記情報サーバへ送信する、代替画面作成処理部と、を有することを特徴とする、防災情報装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−124296(P2010−124296A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296647(P2008−296647)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】