説明

防音機能付き車両シート用ファンモジュールおよび自動車のシート

【課題】車両のシートのファンモジュールに関する。
【解決手段】ファンモジュール10はハウジング12を備えており、このハウジング12は、空調ダクト14の少なくとも一部を画成しており、空気コンベア16を収容している。空気コンベア16は、使用時、ダクト14の内側に空気流18を発生させる。ファンモジュール10の動作時のノイズに起因する騒音を低減するため、ハウジング12もしくはダクト14、またはその両方に、空気流18の流れの方向における下流、空気コンベア16の後ろに、空気流18の流れの方向に対して横方向の少なくとも1つの音排出開口20を設け、この開口20を吸音材料22によって覆うことを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を備えている、車両のシート用のファンモジュールに関する。さらには、本発明は、請求項13の特徴を備えている、自動車のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのファンモジュールは、快適な空調を迅速に、ほぼ瞬時に設定する役割を果たす。ファンモジュールによって空気を供給したり吸い込ませることができる。特に、カブリオレやロードスターなどのオープンカーでは、車両のシートおよびシートに座っている人の周囲(特に人の頸部)に空間的に限定される空調を、オープンな車室内に提供することができる。
【0003】
これらの快適な空調機能は、ファンモジュールの動作時に発生するノイズによって大きく影響され得る。従って、独国特許第10160799号明細書では、一般的なファンモジュールを、上方に、布張り/充填材料を有するヘッドレスト(upholstered headrest)の後ろに移動させる、または後方に、車両のシートのシートバック(背もたれ)の裏側に移動させることを提案している。ファンモジュールの動作条件によっては、例えば、大量の空気が送られる場合、はっきりと聞こえるノイズが発生する。ノイズ源によって発せられる音パターンは、ほとんどが空気の流れによって「伝え」られる。空気の流れが車両のシートに座っている人の耳の方向に向いている場合、この音パターンは、その人によって特に容易に知覚される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、上述したノイズを低減し、一連の製品を高い費用対効果で作製することのできるファンモジュールを提供することである。
【0005】
この目的は、本発明によると、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
本発明の別の目的は、動作時に発生するノイズを低減する、自動車のシートを提供することである。
【0007】
この目的は、請求項13に定義されている特徴によると、技術的に単純な手段によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特に重要な点として、ファンモジュールのノイズ源から発せられる音波を、音排出開口(sound outlet opening)を通じて少なくとも一部をダクトから取り出すことができる。出ていく音波は、吸音材料によってほとんどが「吸収される」、または「消滅する」。
【0009】
音波は、ノイズ源から空間のあらゆる方向に球状に伝搬する。ファンモジュールの動作時、振動する空気が移動すると、音の干渉と、可聴範囲への周波数シフトも起こりうる。音波はハウジングおよび/またはダクトに何度も当たってこれらを振動させ、一部は反射する。空気の流れの方向に対して横方向に配置されている音排出開口により、そのような反射現象が相当に低減する。これを目的として、音排出開口は吸音材料によって覆われている。
【0010】
特に効果的なノイズ低減は、音排出開口ができるだけノイズ源の近くに配置されている場合に達成することができる。従って、ハウジングのうち、空気コンベアの後ろに音排出開口を設けることが特に有利である。
【0011】
本説明においては、用語「〜の後ろ」または「下流」と、「〜の前」または「上流」は、それぞれ、空気の流れの方向を基準として用いている。当業者には、空気コンベアによって二方向の空気流が生じうることが理解されるであろう。
【0012】
空気コンベアの可動要素およびその駆動手段と、空気流を制限したり向きを変える手段は、ノイズ源としてみなされる。具体的には、後者の手段は、空気流を受け取るダクトに結合されている。ダクト内では、空気の温度および流速に応答して乱流が生じることがある。ノイズとして知覚されるこの乱流は、ダクトのテーパー部および曲がり部においても発生する。従って、そのようなノイズを低減させるためには、音源の下流、かつ音源の近くに音排出開口を配置することが有利である。空気コンベアが吸込み動作を行うとき、ダクトの端部が車内の下流に位置する場合、ハウジングは、空気コンベアの両側に、ダクトに沿った音排出開口を備える。
【0013】
本説明においては、用語「ダクト」は、ファンモジュールによって形成されているダクトと、ハウジングに取り付けることのできる個別のダクトセクションを備えたマルチダクトシステムの両方を意味する。後者のダクトセクションは、例えば、車両のシートによって提供される凹部とすることができる。
【0014】
特に快適な空調を得るため、空気流は暖めることができる。これを目的として、ダクトの内側にはヒーターが設けられている。具体的には、このヒーターは、電気エネルギまたはその他によって動作することができ、この場合、空気流は流れの障害物に当たり、またはこれを超えて流れる。従って、本発明の特に有利な実施形態によると、空気コンベアとヒーターの間、またはヒーターの後ろに音排出開口を配置する。
【0015】
最近の車両のシートには、シートポジションの複数の調節機能が提供されている。下流側のダクト出口の位置を調節するため、ダクトには、具体的にはフレキシブルなセクションもしくは曲がったセクション、またはその両方が設けられている。この場合も、ダクトの長さが変化していたり空気流の向きが変わっていると、乱流が発生することがある。空気流を身体の特定の部分(例:頭部、顔、背中、肩)の方に向けられるようにする場合、フレキシブル/曲がったセクションがダクト出口の近くに配置されている。本発明の特に有利な実施形態によると、音排出開口はこのセクションに設けられている。
【0016】
ハウジングと、空気コンベアの可動部分との間でもノイズが発生することがある。さらに、空気コンベアがファンモジュールに取り付けられている場合、これに起因してハウジングが振動することがある。これらのノイズを低減するため、U形状の断面を有する2つの対応する外郭の形式としてハウジングを具体化し、音排出開口が外郭の壁に形成される(recess)ように、ファンモジュールを構成することができる。このファンモジュールの使用時には、壁は車両のシート表面にほぼ平行に延在する。
【0017】
このような2コンポーネント式のハウジングの実施形態では、可動部分との共振によるノイズの発生を一方の外郭に制限することができる。音排出開口が設けられている外郭の壁をシート表面の方に向けることができ、この場合、車両のシートの上部材料とファンモジュールとの間に存在している編布(knitted fabric)が、追加の吸音材料の役割を果たすことができる。
【0018】
この効果は、さまざまな方法において利用することができる。従って、本発明の有利な実施形態によるファンモジュールは、第1の外郭の音排出開口の向かい側に配置されている別の音排出開口が第2の外郭の壁に設けられているように具体化されている。薄いダクトには、外郭の対向する幅広い側面に音排出開口を設けることができ、この場合、これらの音排出開口は、使用時、車両のシートの上部材料(発泡材料を含んでいる)によって囲まれている。
【0019】
ファンモジュールの別の有利な実施形態においては、特定のセクションにおいて音がダクトに当たるときの音をほぼ完全な程度まで取り出すため、音排出開口は複数の穴を備えている。これにより、穴の表面積を合計すると、音排出開口として比較的大きな凹部となり、その一方で、ハウジングの強度および剛性に関する限りは、穴によるハウジングへのマイナスの影響がほとんどないという利点がさらにもたらされる。
【0020】
音は音源からダクト内を同心円状に伝搬するため、本発明の有利な実施形態においては、穴はダクトの実質的に全幅にわたり存在している。
【0021】
吸音材料としては、専門家らに公知である、音の伝搬を低減する任意の製品を使用することができる。このような製品としては、例えば、かさ密度が小さい発泡体や、音を完全に反射する表面を有する発泡体が挙げられる。特に有利であるのは、発泡材料を吸音材料として使用することである。そのような発泡材料は、低価格であるのみならず、音排出開口を確実に完全に覆うためのフレキシブル性も備えている。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、大量生産する場合に特に費用対効果が高く、音排出開口が設けられているハウジングの周囲が、発泡材料によって包まれている。従って、発泡材料は、ハウジングのうち、音排出開口が分布している部分を少なくとも覆っている。
【0023】
車両のシートの布張り/充填材料は、さらなる吸音材料として適している。このような布張り/充填材料としては、例えば、座ったときの快適性を高める発泡材料が挙げられる。通気を良好にするため、布張り/充填材料は、空気で満たされている不規則な形状の空間を含んでいる。これらの空間により、衝突する音波を減衰させることができる。従って、本発明によるファンモジュールの別の実施形態においては、車両のシートの一部が、音排出開口を覆う発泡材料によって被覆されているカバーを備えている。このカバーは、ダクトセクションと、ファンモジュールを受け入れる空洞の両方を提供する、上述した車両のシートにおける凹部を閉じる役割を果たすことができる。従って、本発明によるファンモジュールは、改造する、保守する、修理する、または必要であれば交換することができる。
【0024】
本発明によるファンモジュールは、頸部または頭部の暖房として使用することができる。本発明の別の実施形態によると、この目的のため、ファンモジュールは、車両のシートのシートバックに組み込むことができ、かつ、シートバック内側の、ファンモジュールのダクトを、車両のシート表面の方向、シートの上縁部の下流側に向けることができるように、さらに構成されている。
【0025】
請求項13による自動車のシートは、ファンモジュールを備えている。このファンモジュールは、ノイズの最適化を目的として、上述した実施形態に従って具体化することができる。(例えば車室をオープンにしている場合に)シートに座っている人が、健康および快適性に影響する強い風から保護されるように、車両のシート内のダクトは頸部に達している。この場合、ダクトから出る空気流は特によく聞こえる。動作時に発生するノイズを最小にするため、ダクトもしくはハウジング、またはその両方は、空気流に対して横方向に配置されている音排出開口を備えており、これらの音排出開口は、吸音材料によって覆われている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下では、いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明し、本発明のさらなる特徴および利点を示す。
【0027】
以下の説明は、特に明記されていない限りはすべての図面にあてはまる。同一・相当の構造/特徴は同一・相当の数字によって表してある。
【0028】
図1に示したファンモジュール10は、車両のシート100(図には示していない)の空調としての役割を果たす。ファンモジュール10は、矩形管の形式の空気伝達ダクト14を形成しているハウジング12を備えている。ダクト14は、第1のセクションと第2のセクションとに分かれており、第1のセクションは、空気コンベア16を収容しており、2つの外郭30から形成されている。外郭30の一方には、嵌り合う外郭30を閉じて密閉するためのクリップ15が外側に設けられている。空気コンベア16は、回転自在に取り付けられているロータ17を備えており、このロータは、電気で動作するECモーターによってシャフトを介して駆動することができる。ファンモジュール10の動作時、ロータ17の回転方向に応じて、ダクト14の内側に空気流18を提供することができる。図1に示した実施形態においては、空気は、下流に、ダクト14の第2のセクションに流れ込み、この第2のセクションは、吐水口(spout)の形式に具体化されており、ダクト出口28の方向の先細り形状となっている。
【0029】
空気コンベアの動作中に振動が生じるのは自然なことであり、この振動は、ダクト14の中を流れる空気柱にノイズ源として伝わりうる。さらに、ロータ17の高速時には、ロータ羽根17.1とハウジング12との間に乱流が生じる。その音波は、空間内のあらゆる方向に伝搬し、特に、空気流18によってダクト出口28の方向に運ばれる。さらに、空気流18に起因して、人の耳によって知覚可能な周波数応答への周波数シフトが生じ、従って、機械的振動に起因する振動(vibrational oscillations)も耳に聞こえる。これらは、特に回転速度が変化するときに起こる。
【0030】
音波は、ダクト14の中を通るとき、ハウジング12と、ダクト14を形成している他のセクション(ハウジング12に個別に結合することもできる)とに何度も反射する。音波を低減させるため、外郭30の1つの壁32に音排出開口20が組み込まれている。この音排出開口20は、空気流18に対して横方向に延びており、これによって音波がダクト14から出ることができ、空気流18は、ダクト内部と周囲との小さな圧力差によって少量が逃げるのみである。
【0031】
さらには、音排出開口20を覆っている吸音材料22によって、消失する空気流がさらに減少する。しかしながら、音波は、主として吸収材料22によって減衰する。この目的には、音排出開口20の上に吸音材料22が配置されていれば十分である。
【0032】
空気流18の温度を制御するため、空気コンベア16の後ろの下流にヒーター24が配置されている。ヒーター24は、フレーム24.1の内側に複数の抵抗加熱素子25を保持しており、これらの要素25に関連付けられている薄層構造(lamellae)25.1に空気流18が作用する。具体的には、空気コンベア16の送り性能が高い場合、空気流18が薄層構造25.1に集まり、それにより、空気流18が薄層構造25.1内を流れるときに薄層構造が振動する。そのような振動は、ダクト14の内側で空気コンベア16とヒーター24との間で音波の形式で伝搬する。空気流18に対して横方向に伝搬する音波は、空気コンベアの後ろの下流、ヒーターの前に配置されている音排出開口20に衝突し、ハウジング12から出る。吸音材料22は、音波がハウジング12の外側にさらに伝搬することと、ダクト14の内側における音の反射とを防止する。
【0033】
さらには、空気流18がヒーター24の中を流れて薄層構造25.1の下流側端部から出る結果としてと、加熱された空気の膨張に起因して、ノイズまたはビートノイズ(beat noise)が起こり得る。従って、図1に示したファンモジュール10の実施形態においては、ヒーター24の下流に追加の音排出開口20が配置されている。この音排出開口20は、空気流18に関してヒーター24の後ろに設けられており、吸音材料22によって覆われている複数の穴34を備えている。
【0034】
図2は、ハウジング12を備えている本発明のファンモジュール10の実施形態を、外側から見た図として示している。ハウジング12は、断面が実質的にU形状である2つの対応する外郭30から成り、この平面図では、シートバックに面している上側外郭30を主として示してある。外郭30は、空気コンベア16とヒーター24とを収容している。空気コンベア16は、3つの固定手段17.2によって外郭30に固定されている。使用時、空気コンベア16は、ダクト14内に空気流18を生成し、この空気流18は、下流のダクト出口28から出る。外郭30は、空気コンベア16とヒーター24(PTC(図示していない)を含んでいる)との間と、ダクト出口28とPTCとの間とに、音排出開口20を備えている。これらの音排出開口20は、ダクト14の全幅36にわたって存在している複数の穴34によって画成されている。穴34は、外郭30の壁32に複数行にわたり形成されている。特に図4から明らかであるように、ファンモジュール10は、車両のシート100のシート表面102に対する配置として、壁32が車両のシート100のシート表面102にほぼ平行に延びるように配置することができる。側面に形成されている外郭30のクリップ15には、ファンモジュール10を車両のシート100の支持構造部(図示していない)に固定するための楕円形の穴15.1が設けられている。
【0035】
図2に示したファンモジュール10の2つの外郭30は、ヒーター24の領域を除いて吸音材料22によって包まれている。従って、空気コンベア16の固定手段17.2からハウジング12に伝わる振動が減衰する。吸音材料22は、発泡材料38を含んでいる。この発泡材料38は、少なくとも音排出開口20の周囲の領域40を覆うフレキシブルな布状に具体化されており、この布はハウジング12の周囲を包んでいる。なお図2では、見やすいように、ハウジング12の上側の発泡材料38は省いてある。
【0036】
図3は、ファンモジュール10の上述した実施形態の中央部分を示している。図を単純にするため、ダクト14を覆っている一方の外郭30を省いてある。この図に示したハウジング12の第1の外郭30は、実質的にU形状の断面を有し、使用時、空気伝達ダクト14を管状に画成している。ハウジング12の内側では、ダクト14はヒーター24によって分割されている。ヒーター24の方に向いている空気流18は、ヒーター24の中を流れるときに加熱される。ハウジング12のうちヒーター24を収容している領域においては、ダクト14の幅が広くなっている。ダクト14のこの断面変化に起因して流れに渦および乱流が生じ、その音波が空間内の全方向に伝搬する。これらの音波を減衰させるため、ヒーター24の両側、外郭30の壁32に音排出開口20が配置されている。この図に示したハウジング12の外郭30には、下から吸音材料22が設けられており、音排出開口20の周囲の領域40を覆っている。音排出開口20は、吸音材料22の発泡材料38によって覆われている複数の穴34によって画成されている。使用時に発生する音波は、音排出開口20を介して発泡材料38に達する。発泡材料38は、そのかさ密度を小さくするいくつかの空間を含んでおり、これにより、音の完全な反射によってノイズの低減が達成される。
【0037】
図4は車両のシート100を示しており、このシートのシートバック106には、本発明によるファンモジュール10が組み込まれている。この実施形態においては、ハウジング12によって少なくとも一部が画成されている空気伝達ダクト14は、その下流のダクト出口28が車両のシート100の上縁部108付近に位置するように配置されている。ダクト14の他方の端部は、シートバック106のカバー104に位置している。使用時、ファンモジュール10のハウジング12の中に配置されている空気コンベア16によって、空気流18が空気入口開口29からダクト14に吸い込まれ、ヒーター24に送られて加熱される。これによって生じるノイズは、空気流18およびハウジング12(音波を反射する)によって、ダクト14に沿ってダクト出口28まで運ばれる。ハウジング12とダクト14とに、空気流18に対して横方向に組み込まれている音排出開口20から、音波が取り出される。断面を示したダクト14は、シート表面102と裏側のカバー104とにそれぞれほぼ平行に延在する2つの対向する壁32を備えている。シート表面102と、この表面102に面している壁32との間には発泡材料38が設けられており、この発泡材料38は、音排出開口20を覆っているため吸音材料22としての役割を果たす。カバー104は、発泡材料38によって覆われている。この特に容易に変形可能な発泡材料38は、音排出開口20が形成されているハウジング12の領域40とダクト14とに少なくとも存在している。これらの音排出開口20から出る音は、カバー104の発泡材料38によってほとんどが「吸収」される。
【0038】
図4に示したように、ダクト14は、ハウジング12と、個別のダクトセクション14.1の両方によって画成されている。空気流18がシート表面102から出て、車両のシート100に座っている人(図示していない)の方向に向けられるように、ダクトセクション14.1はダクト出口28の近くに弓形部26を備えている。空気流18が弓形部26の中で向きを変えるとき、当然ながら乱流が起こり、これに起因して、特に空気流18が上縁部108から出る場合、はっきり聞こえるノイズが生じる。弓形部26の内側には別の音排出開口20が配置されており、弓形部26内で発生する音波は、音排出開口20を覆っている吸音材料22によって減衰する。
【0039】
図4aは、シートバック106に組み込まれているファンモジュール10を備えている自動車のシート110を示している。ファンモジュール10には、このシート110に座る人の頸部まで延びている管状ダクト14が画成されている。ハウジング12は空気コンベア16を収容しており、空気コンベア16は、使用時、ダクト14内に空気流18を発生させる。さらに、ダクト14内には、ハウジング12に固定されているヒーター24が設けられている。さらに下流、空気コンベア16およびヒーター24の後ろ、ダクト出口28の近くには、ダクト14によって弓形部26が画成されている。弓形部26には、空気流18に対して、すなわちハウジング12の長手延長部に対してほぼ横方向に延びている音排出開口20が設けられている。音排出開口20から出る音は、音排出開口20を覆っている材料22によって止まる。伸縮自在に(telescopic manner)形成されている、ダクト14の曲がり部分(shifting portion)により、ダクト出口28をさまざまな向きに配置することが可能であり、この曲がり部分には、吸音材料22によって覆われている音排出開口20が同様に形成されている。ハウジング12は、シート表面102に実質的に平行に延在する2つの対向する壁32によって部分的に範囲が画定されている。これらの壁32には、空気流18に対して横方向に配置されている音排出開口20が形成されている。音排出開口20は、空気コンベア16とヒーター24の間と、ヒーター24の下流とに存在している。音をさらに減衰させるため、ハウジング12のこれらの音排出開口20は、吸音材料22としての発泡材料38によって覆われている。
【0040】
自動車のシート110のファンモジュール10のさらなる特徴は、上述した例に説明してある。
【0041】
例 比較のため、複数の異なるファンモジュールを、動作時のノイズ発生について試験した。この試験では、以下に説明するファンモジュールの実施形態を使用して一連の測定値を集めた。

1.車両のシート用の先行技術によるファンモジュールは、ハウジングを備えており、このハウジングは、空気伝達ダクトの少なくとも一部を画成しており、使用時にダクト内側に空気流を発生させる空気コンベアを収容している。

2.ファンモジュールAは、上述した特徴を備えており、ハウジングは、空気流が供給されるヒーターを収容しており、ハウジングには、空気コンベアとヒーターとの間に、空気流の流れの方向に対して横方向に音排出開口が形成されており、この音排出開口は吸音材料によって覆われている。

3.ファンモジュールBは、ファンモジュールAの特徴を備えており、吸音材料によって覆われている追加の音排出開口が、ヒーターの下流に配置されている。

4.ファンモジュールCは、ファンモジュールBの特徴を備えており、同様に吸音材料によって覆われている追加の音排出開口が、ダクト出口の近くに画成されている弓形部の内側に設けられている。

【0042】
図5aは、比較対象の一連の測定の結果を、音波試験図の形式において、周波数に対する音の大きさとしてプロットしたものである。
【0043】
図5bは、上述した複数の異なるファンモジュールの実施形態の、時間に対する音の大きさを示している。
【0044】
比較対象の測定値のグラフから明らかであるように、「先行技術」によるファンモジュールの、1000Hz以下、2500Hz〜3000Hz、および3000Hz〜約3500Hzの周波数範囲における音の大きさのレベルの最大値は、ファンモジュールA〜Cの追加の特徴によって低減している(図5a)。
【0045】
平均ノイズレベルは、先行技術によるファンモジュールと比較して、上述したファンモジュールの追加の特徴によって低減している(図5b)。
【0046】
本発明は、技術的に単純な手段によって動作ノイズの効果的な低減を達成し、その実用的な実施形態の結果として低価格の大量生産が可能である、防音機能付きファンモジュールおよび自動車のシートを開示している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるファンモジュールの第1の実施形態とハウジングの一部とを示している。
【図2】本発明によるファンモジュールの第2の実施形態の平面図を示している。
【図3】第2の実施形態のハウジング部分の、開いた状態での平面図を示している。
【図4】本発明によるファンモジュールの実施形態を備えている、車両のシートの第1の例の概略的な縦断面図を示している。
【図4a】本発明による自動車のシートの断面を概略的に示している。
【図5a】複数の異なるファンモジュールと、先行技術のファンモジュールの一連の測定値を表している音波試験図を示している。
【図5b】複数の異なるファンモジュールと、先行技術のファンモジュールの、時間に対する音の強さのレベルを表す図を示している。
【符号の説明】
【0048】
10 ファンモジュール
12 ハウジング
14 ダクト
14.1 ダクトセクション
15 クリップ
15.1 楕円形の穴
16 空気コンベア
17 ロータ
17.1 ロータロータ羽根
17.2 固定手段
18 空気流
20 音排出開口
22 吸音材料
24 ヒーター
24.1 フレーム
25 抵抗加熱素子
25.1 薄層構造
26 弓形部
28 ダクト出口
29 空気入口開口
30 外郭
32 壁
34 穴
36 ダクトの幅
38 発泡材料
40 領域
100 車両のシート
102 シート表面
104 カバー
106 シートバック
108 上縁部
110 自動車のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシート(100)のファンモジュール(10)であって、
空調ダクト(14)の少なくとも一部を画成しており、空気コンベア(16)を収容しているハウジング(12)を備えており、
前記空気コンベア(16)は、使用時、前記ダクト(14)の内側に空気流(18)を発生させ、
前記ハウジング(12)もしくは前記ダクト(14)、またはその両方が、前記空気流(18)の流れの方向における下流、前記空気コンベア(16)の後ろに、前記空気流(18)の前記流れの方向に対して横方向の少なくとも1つの音排出開口(20)を備えており、前記音排出開口(20)が吸音材料(22)によって覆われている、
ファンモジュール(10)。
【請求項2】
前記音排出開口(20)は、前記ダクト(14)の内側に配置されておりかつ前記空気流(18)が供給され得るヒーター(24)と、前記空気コンベア(16)との間に設けられている、請求項1記載のファンモジュール(10)。
【請求項3】
前記音排出開口(20)は、前記空気流(18)が供給され得るヒーター(24)の下流に配置されている、請求項1または請求項2記載のファンモジュール(10)。
【請求項4】
前記音排出開口(20)は、前記ダクトの出口(28)の近くの、前記ダクト(14)の弓形部(26)の内側に配置されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項5】
前記ハウジング(12)は、前記空気コンベア(16)と前記ヒーター(24)とを収容する、実質的にU形状の断面を有する2つの対応する外郭(30)、を備えており、
前記音排出開口(20)は、前記車両のシート(100)のシート表面(102)に平行に延在している、前記ハウジング(12)の壁(32)、に形成されている、
請求項1から請求項4のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項6】
いくつかの音排出開口(20)は、前記車両のシート(100)の前記シート表面(102)に平行に延在している、前記ハウジング(12)の対向する壁(32)、に形成されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項7】
前記音排出開口(20)は、複数の穴(34)によって画成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項8】
前記穴(34)は、前記ダクト(14)のほぼ全幅(36)にわたり分布している、請求項7記載のファンモジュール(10)。
【請求項9】
前記吸音材料(22)は、発泡材料(38)から成る、請求項1から請求項8のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項10】
前記ハウジング(12)は、前記音排出開口(20)の領域(40)において、その周囲の一部または全体が前記発泡材料(38)によって包まれている、請求項9記載のファンモジュール(10)
【請求項11】
前記発泡材料(38)は、前記車両のシート(100)のカバー(104)の一部を形成している、請求項9または請求項10記載のファンモジュール(10)。
【請求項12】
前記ファンモジュール(10)は、前記車両のシート(100)のシートバック(106)に組み込むことができ、
前記ダクト(14)は、前記シート(100)の上縁部(108)の領域まで延びている、
請求項1から請求項11のいずれかに記載のファンモジュール(10)。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のファンモジュール(10)を備えている自動車のシート(110)であって、
前記ファンモジュール(10)は、
首の領域まで延びている空調ダクト(14)の少なくとも一部を画成しており、空気コンベア(16)を収容している、ハウジング12を備えており、
前記空気コンベア(16)は、使用時、前記ダクト(14)の内側に空気流(18)を発生させ、
前記ハウジング(12)もしくは前記ダクト(14)、またはその両方が、前記空気流(18)の流れの方向における下流、前記空気コンベア(16)の後ろに、空気流(18)の前記流れの方向に対して横方向の少なくとも1つの音排出開口(20)を備えており、前記音排出開口(20)が吸音材料(22)によって覆われている、
自動車のシート(110)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2008−132975(P2008−132975A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−286584(P2007−286584)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(501324823)カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】