説明

障害物検出装置

【課題】 車両の後方、後側方の障害物検出に適した構成を有する障害物検出装置を提供する。
【解決手段】 後方、後側方の障害物を検出する電波レーダの検出結果を読み込み(ステップS1)、車速センサやシフトセンサの出力を基にして進行方向を検出し、その結果を読み込む(ステップS3)。後退中の場合には、反射波強度MPが第1の判定しきい値MPth1を超える場合には、そのトラッキング時間がしきい値tc_th1を超える場合に障害物と判定し(ステップS7〜S13)、第2の判定しきい値MPth2を超え、MPth1以下である場合には、そのトラッキング時間がしきい値tc_th2を超える場合(ここで、tc_th2>tc_th1である。)に障害物と判定する(ステップS15〜S21)。後退中以外は接近中の物体についてのみ第1の判定しきい値MPth1により障害物判定を行う(ステップS27〜S39)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも電波レーダを用いて車両後方・後側方の障害物を検出する障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波レーダや画像センサを用いて車両周辺の障害物を検出するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。検出結果を基にして、運転者への報知や車両挙動制御を行うことで、自動走行を行ったり、障害物への衝突回避を促し、安全を確保する。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、ミリ波レーダと画像センサとを備える周辺監視装置に関するものであり、両者の検知範囲とその特性に応じて得意となるデータを組み合わせて周辺の物体検知を行うものである。この技術は、例えば、先行車両に追従して自動走行を行う際に先行車両を検知するものであり、ミリ波レーダは比較的遠距離にある先行車両の測定を担っている。
【特許文献1】特開2001−99930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両周辺の物体検出装置としては、前方だけでなく、側方や後方を検出エリアとするシステムもある。車両前方を検出エリアとするシステムでは、追従走行やレーン逸脱監視等の制御に用いられ、前進時、特に高速走行時を制御対象としていることが多い。また、対象物体も通常、運転者の視認エリア内の視認すべき対象物(先行車両、対向車両)であり、運転者の視認を補佐・補強するものである。
【0005】
これに対して、特に、後方や後側方を対象エリアとする検出装置においては、前進時だけでなく、後退時、停止時等においても制御を行う必要がある。また、対象物体も運転者が視認できないエリアや、視認が困難なエリアをカバーするものである。したがって、前方エリアを対象とする監視装置とは異なる構成、制御を行う必要がある。
【0006】
そこで本発明は、車両の後方、後側方の障害物検出に適した構成を有する障害物検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両後方・後側方を検出エリアとする電波レーダと、この電波レーダの検出結果に基づいて障害物の存否判定を行う判定手段を備える障害物検出装置において、車両の前後方向における進行方向を検出する進行方向検出手段をさらに備え、判定手段は、進行方向検出手段により車両が後退中と検出した場合には、後退中でない場合に比較して障害物が存在すると判定しやすくなる判定条件を用いることを特徴とする。
【0008】
車両が後退していない(前進中に限らず停止中を含む)場合には、後方、後側方から車両に接触・衝突する可能性があるのは、車両に向かって移動している物体のみであり、通常は、後続車両に限られる。これに対して、後退中においては、進路上の停止物や進路を横切って移動している物体(他車両や歩行者を含む。)や進路方向に移動していても自車両より低速の物体等が接触・衝突する可能性のある障害物となりうる。電波レーダは、車両のような金属物体の検出は得意だが、こうした停止物や低速の物体等で非金属の物体の検出は比較的苦手である。そこで、本発明においては後退時には障害物の判定条件を緩くすることでこの種の物体を検出しやすくする。
【0009】
判定手段は、電波レーダの受信強度が所定のしきい値より大きい場合に検出物を障害物と判定するものであって、進行方向検出手段により車両が後退中でないと検出した場合には、このしきい値として第1しきい値を用い、後退中と検出した場合には第1しきい値より小さい第2しきい値をこのしきい値として用いるとよい。障害物と判定する際のしきい値を後退中の場合には低く設定することで、後退中の場合には障害物と判定しやすくなる。
【0010】
判定手段は、検出物が所定のトラッキング時間以上連続して検出されている場合にその検出物を障害物と判定するものであって、車両が後退中と判定した場合には、後退中でないと判定した場合に比較してこのトラッキング時間を長くするとよい。トラッキング時間を長くすると、障害物と判定するのに時間を要することになる。しかしながら、前進時に比べて後退時の検出対象は検出エリア内に長時間とどまっている可能性が高く、トラッキング時間を長くすることで、確実な検出を図る。
【0011】
前進中、停止中においては相対接近速度が正、つまり、自車両に対して接近してくる物体以外は接近・衝突の可能性に乏しく障害物と判定する必要がないから、判定手段は、少なくとも車両が後退中でない場合には、相対接近速度が正となる検出物のみを障害物と判定するとよい。接近物か否かは反射波のドップラー成分を利用して容易に分離が可能である。
【0012】
電波レーダと検出エリアの少なくとも一部が重複する画像センサをさらに備えており、判定手段は、重複する検出エリア内の対象物については、車両が後退中である場合には、電波レーダで検出した対象物が画像センサでも検出された場合に対象物を障害物と判定し、車両が後退中でない場合には、電波レーダで検出した対象物を障害物と判定してもよい。
【0013】
前述したように、電波レーダは、車両のような金属物体の検出は得意だが、非金属の物体の検出は比較的苦手である。そこで、後退時には、電波レーダにおける障害物の判定条件を緩くすることで非金属の物体の検出を可能としつつ、画像センサの検出結果を組み合わせることで誤検出を抑制する。一方、前進時・停止時においては、金属物体の検出を優先するため、緩和していない判定条件を利用して電波レーダによる検出を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、後退中は停止中・前進中に比較して緩やかな判定条件で障害物の検出を行うため、電波レーダが検出を苦手とする対象、例えば、歩行者や非金属の停止物等の存否を判定することが可能となる。これには、例えば、判定しきい値を変えることで対応すれば判定ロジックを大きく変更する必要がなく、実現が容易である。
【0015】
後退時に判定しきい値を緩くする一方、トラッキング時間を長くすれば、路面凹凸による反射など一時的な影響を除外することができ、判定精度を向上させることができるので、望ましい。この場合でも、後退時の移動速度は比較的低速であるため、接触・衝突までの時間的余裕を確保することができる。
【0016】
車両が後退中でない前進中・停止時には、車両に接近してくる障害物のみを判定すればよい。障害物に応じて車両挙動制御等の処理を行う場合に、接触可能性の低い対象物をこうした制御処理に情報として伝達する必要がないので、処理に要するメモリや計算量を低減することができる。
【0017】
検出エリアの一部が重複する画像センサを備えている場合には、重複エリアについては、後退時についてのみ電波レーダと画像センサとの両方で重複して検出できた対象物のみを障害物とすることにより、特に電波レーダでの検出が困難な物体の検出を精度よく行うことが可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明に係る障害物検出装置の実施形態の構成を示すブロック図である。この障害物検出装置100は、障害物認識ECU1と、車両後方の画像を取得する後方カメラ2と、車両の右後方から後方を探索するレーダ30および左後方から後方を探索するレーダ31とを有する。レーダ31としては、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ等の電波レーダが好ましい。電波レーダは、雨、霧、雪などの気象条件や、周囲の明るさ、埃、騒音の影響を受けにくく良好な性能を発揮できるため後方カメラ2で検出が困難な環境下でも対象物を認識することができる。
【0020】
障害物認識ECU1は、CPU、ROM、RAM等によって構成されており、後方カメラ2で取得した画像の画像処理を行う画像処理部11と、レーダ30、31の探索結果を処理するレーダ処理部12と、処理結果を基にして障害物の有無を判定する判定部14と、判定に際して必要な情報を蓄積しておく記憶手段13とを備えている。障害物認識ECU1内の画像処理部11、レーダ処理部12、記憶手段13、判定部14は、完全に独立したハードウェアに限られるものではなく、その一部または全部が他の処理部、手段とハードウェアの一部または全部を共用していてもよい。つまり、同一のハードウェアを複数または一つのソフトウェアにより実現することが可能である。
【0021】
画像処理部11には、レーダ処理部12の処理結果が入力されるほか、判定部14は、画像処理部11、レーダ処理部12の判定結果が入力されるとともに、記憶手段13から格納されている情報を読み込む機能を有しており、さらに、駆動系のシフト状態を検出するシフトセンサ70と車速を検出する車速センサ71の出力が入力されている。
【0022】
障害物認識ECU1は、車内LAN4を介してモニター51、スピーカー52、車両挙動制御ECU53、エンジンECU54、プリクラッシュシステムECU55等に接続されている。各ECU53〜55は、障害物認識ECU1と、同様にCPU、ROM、RAM等によって構成されており、それぞれ、車両の挙動、エンジンの駆動、プリクラッシュシステムの作動を制御するものである。
【0023】
図2は、後方カメラ2とレーダ30、31それぞれの検出エリアを示す図である。レーダ30、31はそれぞれ車両6後方の左右の角端に配置されており、所定角度の扇形の領域を検出エリアとしている。一方、後方カメラ2は、車両6の後端の略中央部に設置されており、所定の画角内の画像を撮像するものであり、その撮像範囲が検出エリアとなっている。
【0024】
ここで、後方カメラ2とレーダ30、31全てで重複している検出エリアをエリアaとし、後方カメラ2のみが検出可能なエリアをエリアb、後方カメラ2とレーダ30とで重複して検出可能でレーダ31の検出エリアから外れているエリアをエリアc、後方カメラ2とレーダ31とで重複して検出可能でレーダ30の検出エリアから外れているエリアをエリアd、レーダ30とレーダ31とで重複して検出可能で後方カメラの検出エリアから外れているエリアをエリアe、レーダ30のみで検出可能なエリアをエリアf、レーダ31のみで検出可能なエリアをエリアg、後方カメラ2とレーダ30、31の全ての検出エリアより外側で、エリアfの右前方に位置するエリアをエリアh、エリアgの左前方に位置するエリアをエリアiと称する。
【0025】
ここで、本実施形態の動作のいくつかの形態を具体的に説明する。図3は、第1の制御処理を示すフローチャートである。この第1の制御処理においては、レーダ30、31の検出結果に基づいて車両後方の障害物を判定する。この処理は、障害物認識ECU1中の判定部14により、車両の電源がオンになっている間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0026】
ステップS1では、レーダ処理部12の検出結果を読み込む。続いて、車速センサ71、シフトセンサ70の出力信号から車両の進行方向検出結果を判定する(ステップS3)。続く、ステップS5では、後退中か否かを判定する。後退中の場合(実際に所定の速度以上で後退していると判定した場合)にはステップS7へと移行し、レーダで検出された反射波の強度MPが所定のしきい値MPth1を超えているか否かを判定する。このMPth1としては、車両等の金属物体からの反射波を他の反射波、ノイズから識別可能なしきい値が設定される。
【0027】
MPがMPth1より大きい場合には、ステップS9へと移行してカウンタ値tcを1加算する。このtcは初期値が0に設定されるものであり、障害物が複数存在するため、多数の反射波が存在する場合には、対応する反射波ごとに個別にカウントされるものであり、同一の障害物を継続して検知している場合の継続時間(トラッキング時間)をカウントするものであり、実際のトラッキング時間はタイムステップ間の時刻×tcで表せる。
【0028】
続く、ステップS11では、tcをしきい値tc_th1と比較する。tcがtc_th1を超えている場合には対象物を障害物と判定し(ステップS13)、処理を終了する。tcがtc_th1以下の場合は、そのまま処理を終了する。この場合は、対象物が障害物であるか否かの判定は保留されていることになる。
【0029】
一方、ステップS7でMPがMPth1以下と判定した場合には、ステップS15へと移行し、MPを別のしきい値MPth2と比較する。ここで、MPth2はMPth1より小さな値に設定されており、例えば、歩行者や非金属の障害物、コンクリートや木材等からの反射波に対応する反射波をノイズ等から識別可能な値に設定されている。MPがMPth2より大きい場合には、ステップS17へと移行してカウンタ値tcを1加算する。そして、このtcをしきい値tc_th2と比較する。このtc_th2は、上述したtc_th1より十分に長く設定されている。tcがtc_th2を超えている場合には対象物を障害物と判定し(ステップS13)、処理を終了する。反射波強度のしきい値を低下させたことで、反射波強度の弱い非金属物体等も検出可能となる反面、障害物がないにもかかわらず、障害物と判定する誤認識の可能性も増大する。この制御処理では、反射波強度のしきい値を低下させる反面、トラッキング時間のしきい値を長く設定することで、この誤認識の発生を抑制している。tcがtc_th1以下の場合は、そのまま処理を終了する。この場合は、対象物が障害物であるか否かの判定は保留されていることになる。
【0030】
また、ステップS15でMPがMPth2以下と判定した場合には、ステップS23へと移行し、カウンタ値tcを0にリセットし、障害物なしと判定して(ステップS25)処理を終了する。
【0031】
ます、ステップS5で後退中でない(つまり、前進中あるいは停止中)と判定した場合には、ステップS27へと移行し、自車両に接近している物体の検出結果のみを抽出する(具体的な処理の一例については後述する)。これは、後退中でない場合には、障害物判定条件に、自車両に接近していることを加えることを意味し、後退中に比べて障害物と判定する条件が厳しくなること、言い換えると、後退中の場合にはそれ以外の場合に比べて障害物と判定しやすくなることを意味する。そして、ステップS29へと移行し、抽出した反射波強度MPが所定のしきい値MPth1を超えているか否かを判定する。
【0032】
MPがMPth1より大きい場合には、カウンタ値tcを1加算する(ステップS31)。そして、tcをしきい値tc_th1と比較する(ステップS33)。tcがtc_th1を超えている場合には対象物を障害物と判定し(ステップS35)、処理を終了する。tcがtc_th1以下の場合は、そのまま処理を終了する。この場合は、対象物が障害物であるか否かの判定は保留されていることになる。
【0033】
また、ステップS29でMPがMPth1以下と判定した場合には、ステップS37へと移行し、カウンタ値tcを0にリセットし、障害物なしと判定して(ステップS39)処理を終了する。
【0034】
このように前進中や停止中には接近する物体のみを抽出して、障害物判定を行うことで、自車両の走行に障害となることのない停止物体や自車両から遠ざかる物体に対する判別処理を省略することができ、処理量を減らすことができる。これにより、さらに障害物に応じた処理、例えば並走車両や後続車両等の状況に応じて車両挙動を制御したり、プリクラッシュシステムを作動させる際の処理を速やかに行うことができる。
【0035】
次に、第2の制御処理について図4に示されるフローチャートを参照して説明する。この第2の制御処理においては、レーダ30、31の検出結果と後方カメラ2で取得した画像を画像処理した処理結果の両方を利用して処理を行う点が第1の処理形態と相違する。
【0036】
ここでは、レーダ検出結果の読み込み(ステップS1)と進行方向検出結果の読み込み(ステップS3)とあわせて画像処理部11による画像処理結果の読み込み(ステップS2)を行う。これらの処理結果の読み込みは、並列して行ってもよいし、順番を異ならせてもよい。
【0037】
ステップS5における後退判定処理と、後退中でないと判定した場合の処理(ステップS29〜S39)は、第1の処理形態と同一である。ステップS5で後退中と判定した場合には、第1の処理形態と同様にレーダで検出された反射波の強度MPとしきい値MPth1との比較処理を行う(ステップS7)。ここで、MPがMPth1を超えていた場合の処理(ステップS9〜S13)は、第1の処理形態と同一である。一方、MPがMPth1以下であった場合、第1の処理形態と同様に、MPを別のしきい値MPth2と比較する(ステップS15)。
【0038】
ステップS15でMPがMPth2以下であると判定した場合の処理(ステップS23、S25)は第1の処理形態と同一である。一方、ステップS15でMPがMPth2を超えていると判定した場合には、ステップS16へと移行し、画像検出結果とレーダ検出結果が一致しているか否かを判定する。具体的には、反射波に対応する位置に画像処理により検出した障害物候補が存在するか否かを判定すればよい。一致していると判定した場合には、ステップS21へと移行して障害物と判定して処理を終了する。一致していない場合には、そのまま処理を終了する。この場合には、障害物であるか否かの判定は保留される。
【0039】
この処理形態では、後退時には、レーダの反射波強度のしきい値をそれ以外の場合より低くすることで、非金属物体等も検出可能としている。しきい値を下げたことで誤認識の可能性も増大することから、この誤認識の抑制のため、反射強度の低い対象物については画像認識の処理結果を併用している。後退時の車速は、比較的低速であり、また、反射強度の低い物体としては、歩行者や非金属性の壁、樹木等があるが、これらは、比較的サイズが大きく、停止しているか速度が遅いため、後方カメラ2で継続的にその画像を継続的にとらえることができ、また、車両の進行に影響を与える障害物となりうる場合には、その画面上のサイズも比較的大きくなるから、画像認識により把握することが比較的容易である。
【0040】
ここで、ステップS27における接近物体の抽出処理について述べる。接近物体の抽出手法としては、例えば、レーダ30、31のドップラーシフト成分を検出することで、対象物と自車両の相対速度を知ることができる。これを第1の処理形態に適用すると、レーダ30、31の処理結果のみに基づいて障害物を検出することができる。
【0041】
また、レーダ30、31の処理結果と画像処理結果とを組み合わせて接近物体を検出することもできる。図5は、その場合の抽出処理を示すフローチャートである。ステップS51では、レーダ検出物体が画像検出エリア内か否かを判定する。検出物体が画像検出エリア外の場合には、そのまま処理を終了する。この場合には、抽出は行われない。レーダ検出物体が画像検出エリア内に存在する場合には、ステップS53へと移行して画像処理部11がレーダ検出物体の周辺を画像処理することで物体の大きさ、形状を判定する。続く、ステップS55では、画像処理結果とレーダ検出結果とを融合し、その位置変化、大きさ、形状の変化等から自車両に接近している物体か否かを判定する。
【0042】
次に、第3の制御処理について図6に示されるフローチャートを参照して説明する。この第2の制御処理においては、レーダ30、31の検出結果と後方カメラ2で取得した画像を画像処理した処理結果の両方を利用して処理を行う点が第1の処理形態と相違する。
【0043】
最初にレーダ検知物体の存否を判定する(ステップS61)。レーダ検知物体の存否検出の際には、第1、第2の制御処理で説明したように、後退時とそれ以外の場合とで判定しきい値を変更し、後退時のほうが物体を検知しやすく設定するとよい。
【0044】
検知物体がある場合には、ステップS63へと移行し、検出位置が画像検知領域内であるか否かを判定する。画像検知領域内である場合(図2におけるエリアa、エリアc、エリアd内にある場合)にはステップS65に移行してレーダ検出物体の周辺を画像処理することで障害物か否かを判定する。画像検知領域内でない場合(図2におけるエリアe、エリアf、エリアg内にある場合)には、レーダで検出した物体を障害物に設定する(ステップS67)。このとき、上述した第1の制御処理において行ったように反射波の強度に応じてトラッキング時間のしきい値を変更するとよい。
【0045】
ステップS61で、レーダで検知した物体がないと判定した場合にはステップS69に移行して前回検出した障害物があるか否かを判定する。前回も障害物を検出していない場合には、周辺に障害物なしと判定して処理を終了する。
【0046】
一方、前回障害物を検出している場合には、ステップS71へと移行してその予測位置が画像検知領域内にあるか否かを判定する。ここで、位置予測は、障害物の位置をトラッキングしておき、前回の障害物の相対位置と相対速度、相対加速度情報を基にして今回の相対位置を予測することで行えばよい。予測位置が画像検知領域内に位置している場合とは、予測位置が図2におけるエリアbに位置していると考えられる場合である。なぜなら、当該障害物はレーダで検出されていないことから、レーダでも検出可能なエリアa、c、dには位置していないと考えられるからである。画像検知領域内に位置していると判定した場合には、予測位置周辺を画像処理することで障害物を判定する(ステップS73)。予測位置が画像検知領域内でない場合とは、レーダでも画像でも検知できない領域、つまり、エリアhまたはエリアiに位置すると考えられる場合である。この場合には、予測位置に障害物があるものと推定し、推定結果を障害物情報として出力する(ステップS75)。
【0047】
また、特に、前進中の場合には、走行レーンの認識処理を行い、走行レーン内の接近障害物(走行レーン上を走行している後続車両のほか、別レーンから進入してくる車両を含む)のみを障害物として認識するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る障害物検出装置の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】後方カメラ2とレーダ30、31それぞれの検出エリアを示す図である。
【図3】図1の装置の第1の制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図1の装置の第2の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】接近物体の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図1の装置の第3の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1…障害物認識ECU、2…後方カメラ、4…車内LAN、6…車両、11…画像処理部、12…レーダ処理部、13…記憶手段、14…判定部、30、31…レーダ、51…モニター、52…スピーカー、53…車両挙動制御ECU、54…エンジンECU、55…プリクラッシュシステムECU、70…シフトセンサ、71…車速センサ、100…障害物検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方・後側方を検出エリアとする電波レーダと、該電波レーダの検出結果に基づいて障害物の存否判定を行う判定手段を備える障害物検出装置において、
車両の前後方向における進行方向を検出する進行方向検出手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記進行方向検出手段により車両が後退中と検出した場合には、後退中でない場合に比較して障害物が存在すると判定しやすくなる判定条件を用いることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、電波レーダの受信強度が所定のしきい値より大きい場合に検出物を障害物と判定するものであって、前記進行方向検出手段により車両が後退中でないと検出した場合には、該しきい値として第1しきい値を用い、後退中と検出した場合には前記第1しきい値より小さい第2しきい値を該しきい値として用いることを特徴とする請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、検出物が所定のトラッキング時間以上連続して検出されている場合に該対象を障害物と判定するものであって、車両が後退中と判定した場合には、後退中でないと判定した場合に比較して該トラッキング時間を長くすることを特徴とする請求項2記載の障害物検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、少なくとも車両が後退中でない場合には、相対接近速度が正となる検出物を障害物と判定することを特徴とする請求項1記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記電波レーダと検出エリアの少なくとも一部が重複する画像センサをさらに備えており、
前記判定手段は、重複する検出エリア内の対象物については、車両が後退中である場合には、前記電波レーダで検出した対象物が前記画像センサでも検出された場合に対象物を障害物と判定し、車両が後退中でない場合には、前記電波レーダで検出した対象物を障害物と判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−91102(P2007−91102A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284575(P2005−284575)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】