説明

離型フィルム

【課題】 ビアホールを施した複数層の積層板同志をブリプレグを介して積層化する際の樹脂留まり性が良好で、安価でかつ耐熱性の良好な離型フィルムを提供する。
【解決手段】 銅張積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用される離型フィルムであって、ポリエステル系発泡フィルムの片面乃至両面に離型層を設けてなることを特徴とする。離型層はシリコーン系離型剤処理により形成したものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅張積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用される離型フィルムに関し、詳細には、電子機器などに広範に使用される積層配線基板の製造に好適に用いられる離型フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、多層の導体回路を有する積層配線基板の製造方法としては、片面又は両面に導体回路を有する内層材にプリプレグを積層し、その最外層に導体箔を配置し、熱プレスして一体化させる方法が一般的である。このような方法においては、プリプレグから生じた粉末物や他の異物が導体箔上に入り込みやすく、これが原因となって導体箔に局部的な圧力がかかり、導体箔の表面に打痕が生じる懸念がある。この問題を防止するため、導体箔と鏡面板との間に樹脂等により形成された離型フィルムを配置し、異物による局部的な圧力を緩和させるやり方が提案されている。
【0003】このような離型フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面乃至両面にシリコーンなどの離型剤を処理したフィルム、フッ素系フィルム、ポリオレフィン系フィルムなどが用いられていた。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面乃至両面にシリコーンなどの離型剤を処理したフィルムでは、プリプレグを直接銅箔に積層する場合には好適に使用しうるものの、フィルム自体のクッション性に乏しいため、予めビアホールを形成した複数層の積層板同志をプリプレグを介して積層化する場合、加熱プレスの際にプリプレグの樹脂がビアホールを通り離型フィルムに接触するが、そこで留まらず、離型フィルムと積層板の界面に漏れだすという問題があった。
【0004】また、フッ素系フィルムは耐熱性に優れているが、フィルムを構成するフッ素系樹脂自体が高価なため、製造費が高くなる問題があり、ポリオレフィン系フィルムは耐熱性が乏しいため、プレス時に120℃以上の温度になる用途には使用できないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、ビアホールを施した複数層の積層板同志をプリプレグを介して積層化する際の樹脂留まり性が良好で、安価でかつ耐熱性の良好な離型フィルムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは検討の結果、クッション性と耐熱性に優れた基材を選択することで本発明の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の離型フィルムは、銅張積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用される離型フィルムであって、ポリエステル系発泡フィルムの片面乃至両面に離型層を設けてなることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の離型フィルムにおいて基材として用いられるポリエステル系発泡フィルムは、クッション性に優れており、プリプレグプレス工程におけるプレス時の樹脂留まり性が改良される。本発明において発泡フィルムとは、フィルムの一部または全てが発泡体で構成されているものを包含する。
【0008】即ち、フィルム全体が発泡体であるもの、フィルムの中間層として発泡体層があり、その両表層面が未発泡体フィルムである複合フィルム、フィルムの片面が発泡体層であり反対面が未発泡体層フィルムである複合フィルム、発泡体フィルムの表面に有機系或いは無機系のコーティング剤を施したフィルムなどのいずれでもよい。また、複合フィルムにおいてフィルム全体に占める発泡体層の厚みは、目的とするクッション性を得られる範囲で適宜選択することができるが、発泡体層の厚みがフィルム全体の厚みの40〜100%の範囲であることが好ましい。
【0009】本発明の離型フィルム基材を構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂であれば特に制限はなく、公知のポリエステル樹脂から任意に選択して用いることができるが、プリプレグプレス工程において、加圧と同時に加熱処理されるため、耐熱性の観点から、芳香族系ポリエステル樹脂を選択することが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの樹脂が挙げられる。
【0010】発泡フィルム或いはフィルム中に発泡体層を形成するためには、公知の発泡樹脂の製造方法を適用すればよく、例えば、ベースポリマー中に無機或いは有機系発泡剤を配合してフィルム形成する方法等が挙げられる。フィルム基材の厚さには特に制限はないが、得られた離型フィルムのコストや使用時の作業性等を考えると25〜100μm程度が望ましい。
【0011】本発明の離型フィルムは前記フィルム基材の片面乃至両面に離型剤処理を施して離型層を形成することで得られるが、作業時に離型層を設けた面の判別が困難であることから、両面に離型層を設けたものの方が誤作業が無くなるという観点から好ましい。特に、本発明の離型フィルムがプリプレグの間にサンドされて使用される用途においては、両面に離型剤処理を施して離型層を設けたものが適している。使用される離型剤としては、特に制限はないが、耐熱性、硬度及び離型性の観点から適宜選択され、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、シアナート樹脂などの熱硬化性樹脂、シリコーン系化合物、シリコン、アルミなどを含有するガラス系無機化合物等が挙げられ、離型性、耐熱性に優れていることから、シリコーン系離型剤が特に望ましい。
【0012】離型層の形成方法としては、前記のような離型剤をフィルム基材にメイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、ドクターコーティング、エアーナイフコーティング等の公知の塗布方法を利用して塗布したのち、加熱処理や紫外線照射、電子線照射などの離型剤に適合する公知の方法で乾燥或いは硬化する方法が挙げられる。離型層の厚みは必要な離型効果を得られる限りにおいては、特に制限はないが、適切な離型性を得られるという観点から、0.05〜1.0μm程度であることが好ましい。離型層の厚みが0.05μmより薄いと離型性が悪化し、1.0μmより厚いと離型フィルム同志を重ねたときにブロッキングし易くなる。
【0013】なお、離型剤塗布時にフィルム基材と離型剤層との密着性向上のために、フィルム基材にコロナ放電処理や易接着コート剤塗布などの処理を行って、基材表面の濡れ性を改良したり、或いは、離型剤中に密着性向上剤等を内添するなどの手段をとってもよい。
【0014】このようにして得られる本発明の離型フィルムは、フィルム基材の特性より、安価で、耐熱性に優れ、さらに、基材のクッション性が良好であるため、予めビアホールを形成した複数層の積層板同志を積層化する際において、加熱プレスの際、離型フィルムがビアホールの周縁に密着し易くなるので、樹脂留まり性が良好で、離型フィルムと積層板の界面への樹脂の漏出を効果的に防止しうる。
【0015】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(実施例1)厚さ75μmのフィルムであって、中間層が厚み70μmの発泡ポリエチレンテレフタレートで両表層面が未発泡のポリエチレンテレフタレートフィルムである東洋紡績製、クリスパーG−1212(商品名)の片面に、シリコーン系離型剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、SRX−211(商品名:触媒SRX−212をSRX−211 100重量部に対して1重量部添加)を固形分として0.2g/m2となるように塗布した後、140℃の熱風循環式オーブン中で30秒間加熱処理することにより乾燥硬化させて片面にシリコーン処理による離型層を形成した。その後、離型層を形成しない他の面にも同様にしてシリコーンを処理することにより、フィルム基材の両面に離型層を形成したサンプルAを得た。
【0016】(比較例1)厚さ75μmの末発泡のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製、エステルE−5000:商品名)の両面に実施例1と同様にして両面に離型層を形成し、サンプルBを得た。
【0017】〔離型フィルムの評価〕得られたサンプルの離型性と樹脂留まり性を次に記載する方法で評価した。
■2層板の作成(離型性評価)
銅箔/ブリブレグ/銅箔/ブリプレグと積層したものを、実施例1及び比較例1で得られた離型フィルム(サンプルA、サンプルB)それぞれ2枚で挟み、次に、この積層品を更にステンレス板2枚で挟み込む。プレス機にて180℃の条件下、50kg/cm2のプレス圧にて30分プレス処理を行い、プリプレグ樹脂の硬化を行ない2層板を作成する。冷却後、離型フィルムがステンレス板および2層板から容易に剥離できるかどうかを観察した。
【0018】■4層板の作成(離型性と樹脂留まり性評価)
■で得られた2層板に直径0.2mmのビアホールを5箇所形成した積層板を2枚用意する。2枚の積層板でプリプレグを挟み込み、この積層品を実施例1及び比較例1で得られた離型フィルム(サンプルA、サンプルB)それぞれ2枚で挟み、更にステンレス板2枚で挟み込む。プレス機にて180℃の条件下、50kg/cm2のプレス圧にて30分プレス処理を行ってプリプレグ樹脂の硬化を行ない4層板を作成する。冷却後、離型フィルムがステンレス板および2層板から容易に剥離できるかどうかを観察するとともに、ビアホールよリプリプレグ樹脂か流出していないかどうかの樹脂留まり性を目視にて観察した。
【0019】その結果、実施例1の離型フィルムは、2層板、4層板の作成のいずれにおいても、離型フィルムの熱による変質は見られず、剥離性が良好であり、ビアホールからの樹脂の流出も見られなかったことから、樹脂留まり性に優れていることがわかった。
【0020】一方、末発泡のポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いた比較例1の離型フィルムは剥離性は良好であったが、ビアホールから樹脂の流出があり、樹脂留まり性が不良であった。
【0021】
【発明の効果】本発明の離型フィルムは、ビアホールを施した複数層の積層板同志をブリプレグを介して積層化する際の樹脂留まり性が良好で、安価でかつ耐熱性に優れるという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅張積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用される離型フィルムであって、ポリエステル系発泡フィルムの片面乃至両面に離型層を設けてなることを特徴とする離型フィルム。

【公開番号】特開2002−1726(P2002−1726A)
【公開日】平成14年1月8日(2002.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−190468(P2000−190468)
【出願日】平成12年6月26日(2000.6.26)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】