説明

離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、感光性転写材料、離画壁付基板、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに表示装置

【課題】良好な撥インク性を有し、高さバラツキの小さい離画壁が得て、表示ムラを抑えた高品位な画像表示を可能とする。
【解決手段】撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を用いて塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmでの気体の流速が0.5m/s以下となる範囲で乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、感光性転写材料、離画壁付基板、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイ、液晶カラーテレビの需要が増加する傾向にあり、このようなディスプレイに不可欠なカラーフィルタの特性向上とコストダウンに対する要求が高まっている。
【0003】
従来、カラーフィルタの製造方法としては、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法などが実施されている。
例えば、染色法は、透明基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料層を形成し、これをフォトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。この工程を3回繰り返すことにより、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色部からなる着色層を形成することができる。
また、顔料分散法は、近年盛んに行なわれている方法であり、透明基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。この工程を3回繰り返すことで、R、G、Bの3色の着色部からなる着色層を形成することができる。
また、電着法は、透明基板上に透明電極をパターニングし、顔料、樹脂、電解液等の入った電着塗装液に浸漬して第一の色を電着するものであり、この工程を3回繰り返すことで、R、G、Bの3色の着色部からなる着色層が得られ、最後に焼成する。印刷法は、熱硬化型の樹脂に顔料を分散し、印刷を3回繰り返すことによってR、G、Bを塗り分けた後、樹脂を熱硬化させることで、着色層を形成するものである。
【0004】
これらの方法は、赤色、緑色、青色の3色画素を形成するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になる点で共通しており、また、工程数が多いために歩留まりが低下し易いという問題もある。
【0005】
上記に鑑み、近年では、ブラックマトリックス(離画壁)を顔料分散法で形成し、RGB画素をインクジェット法で形成するカラーフィルタ製造法が検討されている。このインクジェット法は、例えば画素間を区画する離画壁であるブラックマトリックスで取り囲まれた凹部にR、G、B各色の液体を順次付与し、着色領域(例えば画素)を形成するものである。インクジェット法を利用した方法は、製造プロセスが簡略で低コストであるという利点がある。
また、インクジェット法は、カラーフィルタの製造に限らず、エレクトロルミネッセンス素子など他の光学素子の製造にも応用が可能である。
【0006】
前記インクジェット法において、隣り合う画素領域間におけるインクの混色等の発生や、所定の領域以外の部分にITO溶液や金属溶液が固まってこびり付く現象を防ぐ必要がある。そのため、ブラックマトリクス等の離画壁は、インクジェット法で吐出される塗出液である水や有機溶剤等を弾く性質、いわゆる撥水、撥油性を有することが要求されている。
【0007】
撥水、撥油性に関連して、フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体との共重合体を含有するフォトレジスト組成物が開示されており、フォトレジスト組成物固形分に対して0.001〜0.05質量%の範囲の共重合体の添加が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、フルオロアルキル基を有するビニル系単量体を含有する単量体組成物を重合して得られるビニル系重合体、感光性樹脂及び有機溶剤を含有するコーティング用組成物、炭素数4〜6のフルオロアルキル基を有するビニル系単量体を含有する単量体組成物を重合して得られるビニル系重合体、感光体を含有するレジスト組成物に関する開示がある(例えば、特許文献2〜3参照)。
【特許文献1】特開平9−54432号公報
【特許文献2】特開2004−2733号公報
【特許文献3】特開2005−315984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記したフォトレジスト組成物やコーティング用組成物などの組成物では、塗膜形成したときの撥水、撥油性が不充分であるだけでなく、撥インク化に伴ない塗膜の膜面制御が難しくなり、塗布後の乾燥等の工程で膜内変動を生じやすくなる。パターン形成以前の膜自体に厚み不均一ができてしまうと、その膜から形成されるパターンの面内均一性が保てず、均一なパターン形成に支障を来す。そのため、表示ムラのない高画質な画像表示が行なえるカラーフィルタや表示装置は得られない。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、画素群を構成する画素間を区画するブラックマトリクス等の離画壁を、予め撥インク剤を含む樹脂組成物を用いて塗布形成する場合に、インク乗り上げを防止できる良好な撥インク性を有し、膜厚変動を抑えた離画壁形成用の樹脂膜の形成が可能で、高さバラツキの小さい離画壁が得られる離画壁用感光性樹脂膜の形成方法及び感光性転写材料、並びに混色、色ムラ等が防止され、表示画像中の表示ムラを抑えて高品位な画像表示が行なえる離画壁付基板、カラーフィルタ及びその製造方法並びに表示装置を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、均一な高さの離画壁を形成するには、露光、現像等によるパターン形成過程以前の樹脂組成物膜の面内膜厚変動を小さくすることが重要であるとの知見、また、フッ素プラズマ処理を行なわずに離画壁に撥水、撥インク性を与えるには、ポストベーク等の加熱前後で表面エネルギーが大きく上昇する組成物を用いることが有効であるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
【0012】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmにおける気体の流速を0.5m/s以下にして乾燥させる乾燥工程と、を有する離画壁用感光性樹脂膜の形成方法である。
<2> 前記乾燥は、塗布膜の表面に風速0.5m/s以下の流速で乾燥風をあてて行なうことを特徴とする前記<1>に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法である。
<3> 真空度が10-3Pa以下になるように真空引きを行なって乾燥させることを特徴とする前記<1>に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法である。
【0013】
<4> 前記撥インク剤が、(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位と、(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位とを含むことを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法である。
<5> 前記(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位が、末端封止型のポリエーテル構造を有することを特徴とする前記<4>に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法である。
<6> 仮支持体上に、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法により形成された感光性樹脂層を有する感光性転写材料である。
【0014】
<7> 基板上に、撥インク剤を含有し、面内膜厚均一性が±5%以内である樹脂離画壁膜を有する離画壁付基板である。
【0015】
<8> 前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、又は前記<6>に記載の感光性転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成する層形成工程と、形成された感光性樹脂層を、マスクを通してパターン状に露光し、現像して離画壁を形成する離画壁形成工程と、前記離画壁により区画された基板上の凹部にインクジェット法により着色液体組成物を付与して着色領域を形成する着色領域形成工程と、を有するカラーフィルタの製造方法である。
<9> 前記<8>に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタである。
<10> 前記<9>に記載のカラーフィルタを備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画素群を構成する画素間を区画するブラックマトリクス等の離画壁を、予め撥インク剤を含む樹脂組成物を用いて塗布形成する場合に、インク乗り上げを防止できる良好な撥インク性を有し、膜厚変動を(好ましくは、塗布膜の面内均一性が±5%以内になるように)抑えた離画壁形成用の樹脂膜の形成が可能で、高さバラツキの小さい離画壁が得られる離画壁用感光性樹脂膜の形成方法及び感光性転写材料を提供することができる。また、
本発明によれば、混色、色ムラ等が防止され、表示画像中の表示ムラを抑えて高品位な画像表示が行なえる離画壁付基板、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、並びにこれを用いた感光性転写材料、離画壁付基板、カラーフィルタ及びその製造方法、表示装置について詳細に説明する。
【0018】
<離画壁用感光性樹脂膜の形成方法>
本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法は、撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmにおける気体の流速を0.5m/s以下にして乾燥させる乾燥工程とを設けて構成されたものである。また、必要に応じて他の工程を設けて構成することができる。
【0019】
−塗布工程−
塗布工程では、少なくとも撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布する。
塗布は、基板上に直接離画壁を形成する場合は永久支持体となる基板の上に、あるいは転写法により感光性樹脂組成物からなる層を基板上に転写して離画壁を形成する場合は、感光性転写材料を構成する仮支持体の上に行なうことができる。したがって、感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する場合、基板の少なくとも一方の面に、後述の感光性樹脂組成物を用いることにより、又は後述の本発明の感光性転写材料を用いることにより形成することができる。感光性樹脂組成物及び感光性転写材料の詳細については後述する。
【0020】
感光性樹脂組成物の塗布は、特に限定はないが、例えば、スリット塗布、バー塗布、カーテン塗布等の公知の塗布方法により行なうことができる。
所望の基板上に塗布する場合は、後述する乾燥工程に供された後、その基板上に直接、離画壁用感光性樹脂膜(感光性樹脂層)が形成される。また、所望の仮支持体上に塗布する場合は、後述する乾燥工程に供された後、乾燥後の離画壁用感光性樹脂膜が転写されて所望の基板上に感光性樹脂層が形成される。後者のように、仮支持体上に塗布する場合は一般に、ロール状の転写材料とする目的で長尺の仮支持体を用いて塗布が行なわれるため、ウエイブハンドリングによるが、この場合は塗布時の搬送速度が比較的速い。そのため、膜厚変動抑え(面内均一性が良好で)高さバラツキの小さい離画壁を得るためには、後述の乾燥工程のみならず、塗布速度に依存する同伴風量も考慮する必要がある。
【0021】
なお、感光性転写材料を用いて基板上に感光性樹脂層を転写形成する場合、例えば、以下のようにして行なえる。すなわち、
仮支持体上に該仮支持体側から順に(熱可塑性樹脂層と)酸素遮断層と感光性樹脂層と該感光性樹脂層上を保護するカバーシートとが設けられた感光性転写材料を用意する。まず、カバーシートを剥離除去した後、露出した感光性樹脂層の表面を永久支持体である基板上に貼り合わせ、ラミネータ等を通して加熱、加圧して積層する(積層体)。ラミネータには、従来公知のラミネータ、真空ラミネータ等の中から適宜選択したものを使用でき、より生産性を高めるには、オートカットラミネーターも使用可能である。次いで、仮支持体と酸素遮断層(又は熱可塑性樹脂層)との間で剥離し、前記積層体から仮支持体を除去することにより、基板上に感光性樹脂層を酸素遮断層(及び熱可塑性樹脂層)と共に転写形成する。
【0022】
〜基板等〜
本発明において、基板(永久支持体)としては、ガラス、セラミック、合成樹脂フィルム等を使用することができる。特に好ましくは、透明性で寸度安定性の良好なガラスや合成樹脂フィルムなどの透明基板が挙げられる。
感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体の詳細については後述する。
【0023】
〜感光性樹脂組成物〜
本発明における感光性樹脂組成物は、少なくとも撥インク剤の少なくとも一種を含んでなるものであり、必要に応じて、更に開始剤、バインダー、エチレン性不飽和化合物、色材、及びその他添加剤を用いて構成することができる。
【0024】
感光性樹脂組成物は、撥インク剤を含んで構成されるので、感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターン像表面の撥水、撥インク性を向上させることができる。そして、この感光性樹脂組成物は、本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法に適用されることで、撥インク剤を含む樹脂組成物を用いて膜形成した際の膜面操作が容易に行なえ、撥水、撥インク性を与えながら、面内均一性の高い塗布膜が得られる。
【0025】
撥インク剤の含有により、水接触角をJIS R3257に記載の方法に準拠し測定した場合に、加熱処理を施す前のパターン像表面の水接触角をA°とし、240℃で50分間の条件で加熱処理し、1時間放冷した後のパターン像表面の水接触角をB°としたときの接触角差(B°−A°)が20°以上である撥水、撥インク性能を与えることができる。水接触角の詳細については後述する。
また、撥インク剤の含有により、感光性樹脂組成物を用いて形成された離画壁表面の撥水、撥インク性を保持しつつ、該離画壁と該離画壁が形成された基板との密着性を良好に保つことができる。更には、離画壁で取り囲まれた凹部に着色液体組成物を付与して着色領域を形成してカラーフィルタを作製する場合に、混色、色ムラ等の発生を抑制することができる。
【0026】
1)撥インク剤
本発明の感光性樹脂組成物は、撥インク剤の少なくとも1種を含有する。撥インク剤は、ブラックマトリクス等の離画壁を構成する材料に含まれるバインダー等の樹脂成分と親和性の少ないケイ素原子又はフッ素原子を含む化合物が好ましい。
【0027】
前記ケイ素原子を含む化合物としては、例えば、下記の繰り返し単位を有する分子量数千〜数十万の線状有機ポリシロキサンを主成分とするものを挙げることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
前記繰り返し単位において、nは2以上の整数を表し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、又はフェニル基を表す。このような線状有機ポリシロキサンをまばらに架橋することによりシリコーンゴムが得られる。架橋に用いる架橋剤は、いわゆる室温(低温)硬化型のシリコーンゴムに使われるアセトキシシラン、ケトオキシムシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、アミドシラン、アルケニオキシシランなどであり、通常は線状の有機ポリシロキサンとして末端が水酸基であるものと組み合わせて、それぞれ脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコ−ル型、脱アミン型、脱アミド型、脱ケトン型のシリコーンゴムが得られる。また、シリコーンゴムには、触媒として少量の有機スズ化合物などが添加される。
【0030】
前記フッ素原子を含む化合物としては、フッ素原子を有する繰り返し単位を含む化合物が好適に挙げられ、撥インク性の点から、(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位と(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位と(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位とを含む含フッ素化合物が好ましい。
以下、前記含フッ素化合物を中心に詳細に説明する。
【0031】
〜(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位〜
本発明における含フッ素化合物は、(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましい。これにより、撥水・撥インク性を付与することができる。少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位としては、総炭素数4〜8のフッ化アルキル基を有する繰り返し単位が好ましく、フッ化アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。更に好ましくは、下記構造式(A)が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
前記構造式(A)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。炭素数1〜5のアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基等が含まれる。
前記構造式(A)中、aは、含フッ素化合物の全質量中に占める構造式(A)の質量の比率(質量%)を表す。aの具体的な範囲については後述する。
【0034】
前記構造式(A)中、Xは、エーテル基、エステル基、アミド基、アリーレン基、又は2価のヘテロ環残基を表す。
で表されるアリーレン基としては、総炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、ビフェニレンが挙げられ、これらはo−、p−、m−置換でもよい。中でも、炭素数6〜12のアリーレン基がより好ましく、フェニレン、ビフェニレンは特に好ましい。
で表されるヘテロ環残基としては、例えば、窒素原子又は酸素原子を環の構成員として含む5員又は6員のヘテロ環に由来の2価のヘテロ環残基が好ましい。具体的な例として、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、キノリン環、チアジアゾール環等が好適であり、ピリジン環、チアジアゾール環、等に由来の2価のヘテロ環残基がより好ましい。
上記のうち、Xとしては、下記連結基又は下記構造を有する連結基が好ましい。
【0035】
【化3】

【0036】
ここで、Rは、水素原子、総炭素数1〜12のアルキル基、又は総炭素数6〜20のアリール基を表す。
で表される総炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの無置換アルキル基、並びに、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ヒドロキシ基などの置換基を有する置換アルキル基が挙げられる。中でも、総炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、ブチル基、オクチル基はより好ましい。
で表される総炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ノニルフェニル基が挙げられる。中でも、総炭素数6〜15のアリール基が好ましく、フェニル基、ノニルフェニル基はより好ましい。
【0037】
前記構造式(A)中、Lとしては、下記連結基又は下記構造を有する連結基が好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
は、水素原子、メチル基を表す。
nは2〜20の整数を表し、好ましくは4〜12の整数を表す。
Yは、単結合、下記連結基、又は下記構造を有する連結基であることがより好ましい。
【0040】
【化5】

【0041】
nは2〜20の整数を表し、好ましくは4〜12の整数を表す。
は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
【0042】
前記構造式(A)中、Rfは、フッ素を含む基を表す。Rfは、下記構造の含フッ素基、又は下記構造の基を有する含フッ素基であることが好ましい。
【0043】
【化6】

【0044】
mは1〜20の整数を表し、好ましくは、4〜12の整数を表す。
【0045】
上記の構造式(A)のうち、Rが水素原子であって、Xがエステル基であって、Lが下記の連結基又は下記構造を有する連結基(R、n、及びYは前記の通りであり、好ましい態様も前記同様である)であって、Rfが前記構造の含フッ素基、又は前記構造の基を有する含フッ素基である場合が好ましい。
【化7】

【0046】
〜(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位〜
本発明における含フッ素化合物は、さらに、(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましい。この繰り返し単位を含むことで、含フッ素化合物を含む感光性樹脂組成物によって形成される硬化膜と基板との間の密着性を向上させることができる。ポリエーテル構造としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラヒドロフランなどが挙げられ、これらは複数組み合わされていてもよい。
【0047】
更に好ましくは、下記構造式(B)が挙げられる。
【化8】

【0048】
前記構造式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表す。好ましくは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基を表す。
前記構造式(B)中、nは4〜40が好ましく、9〜30がより好ましい。さらに12〜24が特に好ましい。
前記構造式(B)中、bは、含フッ素化合物の全質量中に占める構造式(B)の質量の比率(質量%)を表す。bの具体的な範囲については後述する。
【0049】
前記構造式(B)中、Lは、単結合、又は2価の連結基が好ましい。2価の連結基としてさらに好ましくは、以下の構造式で表される2価の連結基である。構造式(B)中のLとしては、単結合がより好ましい。
【0050】
【化9】

【0051】
前記構造式(B)中、Mは、ポリエチレンオキサイドの繰り返し単位、ポリプロピレンオキサイドの繰り返し単位、又はポリテトラヒドロフランの繰り返し単位を表す。更に、Mとしては、下記構造を有する基がより好ましい。
【0052】
【化10】

【0053】
は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表す。lは2〜20の整数を表し、より好ましくは、4〜12の整数を表す。
Mとして好ましくは、前記(a)で表されるエチレンオキサイド鎖であり、Rは水素原子が好ましい。
【0054】
前記構造式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は6〜15のアリール基を表し、該アルキル基及び該アリール基は無置換でも置換基を有していてもよい。
で表されるアルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、オクチル基が好ましい。
で表されるアリール基として好ましくは、フェニル基、メチルフェニル基、ノニルフェニル基、メトキシフェニル基などが挙げられ、好ましくは、フェニル基、ノニルフェニル基が好ましい。
【0055】
本発明における(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位は、撥インク性の点から、該ポリエーテル構造が末端封止型であることが好ましい。ここで、ポリエーテル構造が末端封止型であるとは、繰り返し単位中におけるポリエーテル構造の、主鎖から遠い方の末端がヒドロキシ基以外のアルキル基又はアリール基であることをいう。具体的には、例えば、前記構造式(B)におけるRが、水素原子以外のアルキル基又はアリール基であることをいう。
本発明において、Rとして更に好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0056】
上記の構造式(B)のうち、Rが水素原子、メチル基、又はヒドロキシメチル基であって、Lが単結合であって、Mがエチレンオキサイド鎖又は下記基(Rは水素原子を表す。lは2〜20の整数を表す。)であって、Rが水素原子以外のアルキル基又はアリール基である末端封止型のポリエーテル構造を持ち、nが12〜24である繰り返し単位が好ましい。
【化11】

【0057】
前記ポリエーテル構造を持つビニル化合物の市販品としては、日本油脂(株)製:ブレンマ−PME200、PME550、PME1000、50POEP−800P、ALE800、PE1300、ANE1300、PSE−1300、PMEP−1200B041MA、PE350、PP800、新中村化学(株)製:NKエステルAM130G、M230G、M90G、M40G、AMP−60G、OC−18E、A−SAL−9E、A−CMP−5E、共栄社(株)製:ライトエステル041MAなどが挙げられる。
【0058】
〜(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位〜
本発明における含フッ素化合物は、更に(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましい。カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したもの及び市販品のいずれを使用してもよい。
【0059】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0060】
前記市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも、現像性に優れ、低コストである点で、下記構造式(C)で表される繰り返し単位、(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0061】
【化12】

【0062】
前記構造式(C)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
また、構造式(C)中、cは、含フッ素化合物の全質量中に占める構造式(C)の質量の比率(質量%)を表す。cの具体的な範囲については後述する。
【0063】
本発明における含フッ素化合物が前記構造式(A)を含む場合、構造式(A)中のaの具体的な範囲としては、40〜85質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましく、50〜80質量%が最も好ましい。
本発明における含フッ素化合物が前記構造式(B)を含む場合、構造式(B)中のbの具体的な範囲としては、10〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜50質量%が最も好ましい。
本発明における含フッ素化合物が前記構造式(C)を含む場合、構造式(C)中のcの具体的な範囲としては、0.1〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%が最も好ましい。
【0064】
含フッ素化合物中のフッ素原子含有率としては、36〜70質量%が好ましく、より好ましくは36〜65質量%であり、36〜60質量%が最も好ましい。含フッ素化合物中のフッ素原子含有率が前記範囲内であると、着色領域(例えばRGB等の着色画素)形成時に着色液体組成物を液適付与する際の離画壁上へのインク乗り上げ、及び合成時における含フッ素化合物の析出を防止でき、また、含フッ素化合物の感光性樹脂組成物への溶解性をより向上させることができる。
【0065】
含フッ素化合物の感光性樹脂組成物中における含有量としては、組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜20質量%であり、更に好ましくは0.1〜10質量%である。含フッ素化合物の添加量が前記範囲内であると、着色領域(例えばRGB等の着色画素)形成時に着色液体組成物を液適付与する際の離画壁上へのインク乗り上げを防止でき、基板との密着性及び離画壁濃度が得られる。
【0066】
本発明における撥インク剤としては、撥インク性の点から、前記(a)の繰り返し単位が50質量%であって、前記(b)の繰り返し単位が45質量%であって、前記(c)の繰り返し単位が5質量%である場合が好ましい。
【0067】
本発明における含フッ素化合物の分子量としては、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量で2000〜30000が好ましく、3000〜20000がより好ましい。
【0068】
以下、本発明に係る含フッ素化合物の具体例〔例示化合物(1)〜(26)〕を示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。なお、各成分の組成比(a、b、c)については、前記好ましい組成比の範囲で選択することができる。
【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
2)開始剤
本発明における感光性樹脂組成物は、開始剤の少なくとも1種を用いて構成することができる。
感光性樹脂組成物を硬化させる方法としては、熱開始剤を用いる熱開始系や光開始剤を用いる光開始系が一般的であるが、本発明では硬化後の離画壁を後述するような形状とすることが重要であることから、光開始系を用いることが好ましい。
【0075】
光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の照射(露光ともいう)により、後述のエチレン性不飽和化合物の重合を開始する活性種を発生し得る化合物であり、公知の光重合開始剤もしくは光重合開始剤系の中から適宜選択することができる。
【0076】
光重合開始剤もしくは光重合開始剤系としては、例えば、トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、等を挙げることができる。
【0077】
具体的には、特開2001−117230公報に記載の、トリハロメチル基が置換したトリハロメチルオキサゾール誘導体又はs−トリアジン誘導体、米国特許第4239850号明細書に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載のトリハロメチルオキサジアゾール化合物などのトリハロメチル基含有化合物;
【0078】
9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、9−ピラジニルアクリジン、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、などのアクリジン系化合物;
【0079】
6−(p−メトキシフェニル)−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、6−〔p−(N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)フェニル〕−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン系化合物;その他、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ミヒラーズケトン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどが挙げられる。
【0080】
上記のうち、トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物から選択される少なくとも一種が好ましく、特に、トリハロメチル基含有化合物及びアクリジン系化合物から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。トリハロメチル基含有化合物、アクリジン系化合物は、汎用性でかつ安価である点でも有用である。
【0081】
特に好ましくは、前記トリハロメチル基含有化合物としては、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾールであり、前記トリアジン系化合物としては、6−〔p−(N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)フェニル〕−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、前記アクリジン系化合物としては、9−フェニルアクリジンであり、前記アセトフェノン系化合物としては、ミヒラーズケトンであり、前記ビイミダゾール系化合物としては、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールである。
【0082】
前記光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
開始剤(特に光重合開始剤)の樹脂組成物における総量としては、樹脂組成物の全固形分(質量)の0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。前記総量が前記範囲内であると、樹脂組成物の光硬化を効率良く行なえ、現像の際に欠落や表面荒れの発生のない画像パターンを得ることができる。
【0083】
なお、本発明において、感光性樹脂組成物の全固形分(質量)とは、感光性樹脂組成物中の、溶剤を除いた全成分を意味する。
【0084】
前記光重合開始剤は、水素供与体を併用して構成されてもよい。該水素供与体としては、感度をより良化することができる点で、下記メルカプタン系化合物、アミン系化合物等が好ましい。ここでの「水素供与体」とは、露光により前記光重合開始剤から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物をいう。
【0085】
前記メルカプタン系化合物は、ベンゼン環あるいは複素環を母核とし、該母核に直接結合したメルカプト基を1個以上、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個有する化合物(以下、「メルカプタン系水素供与体」という)である。また、前記アミン系化合物は、ベンゼン環あるいは複素環を母核とし、該母核に直接結合したアミノ基を1個以上、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個有する化合物(以下、「アミン系水素供与体」という)である。尚、これらの水素供与体は、メルカプト基とアミノ基とを同時に有していてもよい。
【0086】
上記のメルカプタン系水素供与体の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジン、等が挙げられる。これらのうち、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールが好ましく、特に2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0087】
上記のアミン系水素供与体の具体例としては、4、4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリル等が挙げられる。これらのうち、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0088】
前記水素供与体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、形成された画像が現像時に永久支持体上から脱落し難く、かつ強度及び感度も向上させ得る点で、1種以上のメルカプタン系水素供与体と1種以上のアミン系水素供与体とを組合せて使用することが好ましい。
【0089】
前記メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体との組合せの具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。より好ましい組合せは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであり、特に好ましい組合せは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
【0090】
前記メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体とを組合せた場合の、メルカプタン系水素供与体(M)とアミン系水素供与体(A)との質量比(M:A)は、通常1:1〜1:4が好ましく、1:1〜1:3がより好ましい。前記水素供与体の感光性樹脂組成物における総量としては、感光性樹脂組成物の全固形分(質量)の0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
【0091】
3)バインダー
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダーの少なくとも1種を用いて好適に構成することができる。
バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載の、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができる。また、このほかに水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。
【0092】
また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよく、あるいは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。
【0093】
バインダーの樹脂組成物中における含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0094】
4)エチレン性不飽和化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。エチレン性不飽和化合物としては、下記化合物を単独で又は他のモノマーとの組合わせて使用することができる。
【0095】
具体的には、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン、ジアリルフマレート、トリメリット酸トリアリル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
【0096】
また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物とヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応物も使用できる。
これらのうち、特に好ましいのは、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートである。
【0097】
エチレン性不飽和化合物の樹脂組成物中における含有量としては、樹脂組成物の全固形分(質量)に対して、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%が特に好ましい。エチレン性不飽和化合物の含有量が前記範囲内であると、組成物の露光部でのアルカリ現像液への耐性を確保でき、樹脂組成物としたときのタッキネスが増加するのを抑えて取り扱い性を保つことができる。
【0098】
5)色材
本発明の感光性樹脂組成物は、色材の少なくとも1種を用いて構成することができる。
色材としては、公知の着色剤(染料、顔料など)を使用することができ、具体的には、特開2005−17716号公報[0038]〜[0054]に記載の顔料及び染料や、特開2004−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤などを好適に用いることができる。
【0099】
本発明の感光性樹脂組成物には、有機顔料、無機顔料、染料等を好適に用いることができる。特に本発明の感光性樹脂組成物を遮光性の離隔壁形成用に構成するときには、炭素材料(カーボンブラックなど)、酸化チタン、4酸化鉄等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉といった遮光材料、及び赤、青、緑色等の顔料の混合物等を用いることができる。中でも、カーボンブラックが好ましい。
顔料を用いる場合には、感光性樹脂組成物中に均一に分散されていることが好ましい。
【0100】
色材の樹脂組成物中における含有量としては、現像時間を短縮する観点から、樹脂組成物の全固形分に対して、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、50〜55質量%であることが更に好ましい。
【0101】
顔料は分散液として使用されることが望ましい。この分散液は、顔料と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、有機溶媒(又はビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビヒクルとは、塗料が液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁)に記載のニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に、同文献の310頁に記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。
【0102】
色材(顔料)の粒子径は、分散安定性の観点から、数平均粒子径で0.001〜0.1μmが好ましく、0.01〜0.08μmがより好ましい。なお、「粒子径」とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から求めた粒子面積をこれと同面積の円で表したときの直径をいい、「数平均粒子径」とは、100個の粒子の粒子径を求めて平均した平均値をいう。
【0103】
感光性樹脂組成物には、前記1)〜5)の成分の他に、下記の溶媒、界面活性剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。また、その他にも、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0104】
−溶剤−
本発明における感光性樹脂組成物においては、前記成分の他に、更に溶剤を用いてもよい。溶剤の例としては、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム等を挙げることができる。
【0105】
−界面活性剤−
本発明の感光性樹脂組成物においては、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラを効果的に防止するという観点から、該感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。
前記界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
【0106】
−熱重合防止剤−
本発明における感光性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0107】
−紫外線吸収剤−
本発明における感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物、並びにサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0108】
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。
【0109】
〜感光性転写材料〜
本発明の感光性転写材料は、既述の本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法を用いて仮支持体上に感光性樹脂層を設けて構成されたものであり、必要に応じて、仮支持体及び感光性樹脂層間に更に、熱可塑性樹脂層、酸素を遮断しうる保護層(以下、「酸素遮断層」ともいう)等の他の層を設けて構成することができる。感光性転写材料を用いることで、離画壁を容易かつ低コストに形成することができる。
【0110】
具体的には、仮支持体の上に、前記塗布工程において少なくとも撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、後述する乾燥工程において、塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmにおける気体の流速を0.5m/s以下にして乾燥させることにより、仮支持体上に感光性樹脂層(離画壁用感光性樹脂膜)が設けて構成される。
【0111】
本発明の感光性転写材料は、撥インク剤を含む樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を設ける場合に、撥インク剤を用いると塗布膜面の平滑操作が難しくなって均一厚が得られにくいが、本発明においては、感光性樹脂層が既述の本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法により形成されるので、良好な撥インク性を持たせつつ、膜厚変動を抑えて膜内均一性の高い離画壁形成用の樹脂膜を形成できる。これより、高さバラツキの小さい離画壁(ブラックマトリクス等)が得られ、ひいては表示ムラを抑えた画像表示が可能なカラーフィルタ及び表示装置を提供することができる。
【0112】
酸素遮断層を用いた場合、感光性樹脂層は酸素遮断層に大気から保護されるため、自動的に貧酸素雰囲気下となる。そのため、露光を不活性ガス下や減圧下で行う必要がなく、現状の工程をそのまま利用し、高感度化、高硬度化できる利点がある。後述するように、仮支持体を「酸素を遮断しうる保護層」として用いてもよく、この場合は酸素遮断層を設ける必要がなく、工程数削減に寄与する。
【0113】
感光性転写材料には、仮支持体と感光性樹脂層との間、あるいは酸素遮断層を有する場合は仮支持体と酸素遮断層との間に、熱可塑性樹脂層を設けてもよい。熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性を有し、少なくとも実質的な軟化点が80℃以下の樹脂成分を含み、クッション性を備えた層である。このような熱可塑性樹脂層が設けられることにより、永久支持体との良好な密着性を得ることができる。
【0114】
軟化点が80℃以下のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体のケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのケン化物、等が挙げられる。
【0115】
熱可塑性樹脂層には、上記の熱可塑性樹脂の少なくとも一種を適宜選択して用いることができ、更に「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による、軟化点が約80℃以下の有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することができる。
【0116】
また、軟化点が80℃以上の有機高分子物質についても、その有機高分子物質中に該高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することで、実質的な軟化点を80℃以下に下げて用いることもできる。また、これらの有機高分子物質には、仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で、各種ポリマーや過冷却物質、密着改良剤あるいは界面活性剤、離型剤、等を加えることもできる。
【0117】
好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェートを挙げることができる。
【0118】
感光性転写材料を構成する仮支持体としては、化学的及び熱的に安定であって、可撓性の物質で構成されるものから適宜選択することができる。具体的には、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等、薄いシート若しくはこれらの積層体が好ましい。前記仮支持体の厚みとしては、5〜300μmが適当であり、好ましくは20〜150μmである。この厚みが前記範囲内であると、仮支持体を破れないように容易に剥離でき、仮支持体を介しても解像度の良い露光が行なえる。
上記具体例の中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0119】
感光性樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄いカバーシートを設けることが好ましい。カバーシートは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、感光性樹脂層から容易に分離されねばならない。カバーシート材料としては例えばシリコーン紙、ポリオレフィン若しくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。尚、カバーシートの厚さは、4〜40μmが一般的であり、5〜30μmが好ましく、10〜25μmが特に好ましい。
【0120】
−乾燥工程−
乾燥工程では、前記塗布工程で塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmでの気体の流速が0.5m/s以下となる範囲で乾燥させる。本工程において、気体の流速を0.5m/s以下にして乾燥させることで、撥インク剤の含有により膜面操作、具体的には僅かな外力で膜面に発生する塗布液の対流等、つまり膜面不均一の発生防止に効果的であり、塗布膜の面内均一性を±5%以内に抑えることができる。これより、高さバラツキの少ない離画壁(ブラックマトリクス等)を形成することができる。換言すると、気体の流速が0.5m/sを超えると、塗布膜の面内均一性が±5%を超え、均一厚の離画壁を安定的に形成することができない。
【0121】
本発明における気体の流速は、塗布膜の膜表面から0.5cm離れた位置(膜表面からの高さが0.5cm)で測定した流速であり、SYSTEM6243(KANOMAX(株)製)を用いて測定される値である。
気体の流速は、乾燥時間等の生産性の観点からは、0.1m/s〜0.5m/sが好ましい。
【0122】
ここでの気体は、塗布膜が存在する空間に存在して膜表面に触れるガスのことである。また、気体の流速は、膜表面近傍に存在した気体が真空引き等により移動して発生する流れの速さや、逆に外部から乾燥のために膜表面に気体(例えば空気等の乾燥風)が供給されてできる気体の流れの速さであってもよい。
【0123】
本工程における乾燥は、(1)供給された乾燥風が直接膜面に触れるようにあるいは触れないように供給して行なってもよいし、(2)温度を保ってあるいは保たずに真空引きして行なってもよい。
前記(1)による場合は、乾燥風の温度、含水量、風の向きを適宜選択して行なえる。
前記(2)による場合は、真空度が10−3Pa以下になるように真空引きすることが好ましい。真空度が10−3Pa以下であると、乾燥を膜内均一性を保ちながら迅速に進行させることができる。真空乾燥においては、真空状態にすることに加えて加熱状態にして真空乾燥させるようにしてもよい。加熱温度は、25〜100℃とすることができる。本発明においては、形成される感光性樹脂膜の膜厚均一性の点から、真空度を10-4Pa以下とし、乾燥温度を30〜80℃として真空乾燥することが好ましい。
【0124】
真空度の測定は、一般的な真空度計で測定可能であり、具体的には、ピラニ真空計やダイヤフラム型真空計(例えば、日本エム・ケイ・エス(株)製のバラトロン真空計など)等を用いて測定可能である。
【0125】
<離画壁付基板>
本発明の離画壁付基板は、基板(好ましくは透明基板)上に、撥インク剤を含有し、面内膜厚均一性が±5%以内である樹脂離画壁膜を設けて構成されたものである。撥インク剤及び基板の詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
この離画壁付基板は、樹脂離画壁膜の面内膜厚均一性が±5%以内であることで、離画壁(ブラックマトリクス等)の高さバラツキが少ないので、面内均一性の高いカラーフィルタが得えられ、画像表示したときの表示ムラを防止できる。本発明の離画壁付基板は、既述の本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法により最も好適に得ることができる。
【0126】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
本発明のカラーフィルタの製造方法は、既述の本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、又は既述の本発明の感光性転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成する層形成工程と、形成された感光性樹脂層を、マスクを通してパターン状に露光し、現像して離画壁を形成する離画壁形成工程と、離画壁により区画された基板上の凹部にインクジェット法により着色液体組成物を付与して着色領域を形成する着色領域形成工程とを設けて構成することができる。
【0127】
−層形成工程−
層形成工程は、既述の本発明の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法、又は既述の本発明の感光性転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成し、積層体とする。感光性樹脂層の形成に関する詳細については既述の通りである。
【0128】
−離画壁形成工程−
離画壁形成工程は、前記層形成工程で形成された感光性樹脂層を、マスクを通してパターン状に露光し(露光工程)、更に現像する現像工程を設けることにより離画壁を形成する。
【0129】
露光工程では、前記層形成工程で得られた積層体と所望のフォトマスク(例えば石英露光マスク)とを、感光性樹脂層(感光性転写材料を用いた場合は仮支持体除去後の除去面(酸素遮断層面))とフォトマスクとが向き合うように配置し、例えば感光性樹脂層とフォトマスクとを垂直に立てた状態で、フォトマスク面と感光性樹脂層との間の距離を適宜(例えば200μm)設定し、露光する。
【0130】
露光は、例えば、超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(例えば、日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)等を用いて行なえ、露光量は適宜(例えば300mJ/cm)選択すればよい。
露光に用いる光源としては、中圧〜超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0131】
離画壁は、光感度、すなわち硬化度を高める点で、感光性樹脂層を貧酸素雰囲気下にて露光し、その後現像して形成されることが好ましい。ここで、貧酸素雰囲気下とは、不活性ガス下、減圧下、酸素を遮断しうる保護層(以下、「酸素遮断層」ともいう。)下にあることを指し、詳しくは以下の通りである。
【0132】
前記不活性ガス下とは、N、H、COなどの不活性気体やHe、Ne、Arなどの希ガス類などのガス雰囲気に曝されていることをいう。中でも、安全性や入手の容易さ、コストの問題から、不活性ガスはNが好適である。
【0133】
前記減圧下とは、500hPa以下、好ましくは100hPa以下の状態をいう。
【0134】
前記酸素を遮断しうる保護層(酸素遮断層)とは、例えば、特開昭46−2121号や特公昭56−40824号の各公報に記載の、ポリビニルエーテル/無水マレイン酸重合体、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキル澱粉の水溶性塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、各種のポリアクリルアミド類、各種の水溶性ポリアミド、ポリアクリル酸の水溶性塩、ゼラチン、エチレンオキサイド重合体、各種の澱粉およびその類似物からなる群の水溶性塩、スチレン/マレイン酸の共重合体、マレイネート樹脂、及びこれらの二種以上の組合せ等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの組合せである。
また、ポリビニルアルコールは、鹸化率が80%以上であるものが好ましく、ポリビニルピロリドンの含有量は、アルカリ可溶な感光性樹脂層の固形分に対し、1〜75質量%が好ましく、より好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。
【0135】
また、酸素遮断層には、各種フィルムを用いることもできる。例えば、PETをはじめとするポリエステル類、ナイロンをはじめとするポリアミド類、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA類)も好適に用いることができる。これらフィルムは、必要に応じて延伸されたものでもよく、厚みは5〜300μmが適当であり、好ましくは20〜150μmである。
特に感光性転写材料を用いて離隔壁を形成する場合には、仮支持体を酸素を遮断しうる保護層として好適に用いることが可能である。
【0136】
仮支持体を酸素遮断層として用いる場合は、仮支持体を残したまま(剥離せずに)、該仮支持体と所望のフォトマスク(例えば、石英露光マスク)とが向き合うように配置し、積層体とフォトマスクとを垂直に立てた状態で、露光マスク面と該仮支持体との間の距離を適宜(例えば200μm)設定し、露光する。
【0137】
酸素を遮断しうる保護層(酸素遮断層)の酸素透過係数は、2000cm/(m・day・atm)以下が好ましいが、100cm/(m・day・atm)以下であることがより好ましく、最も好ましくは50cm/(m・day・atm)以下である。
酸素透過率が前記範囲内であると、酸素遮断により光硬化が良好に進行し、離画壁を所望の形状に形成するのに有効である。
【0138】
次いで、現像工程が施され、露光後の感光性樹脂層を所定の現像液を用いて現像処理する。引き続き、必要に応じて、水洗処理して、パターン画像(離画壁パターン)を得る。なお、現像の前には、純水をシャワーノズル等にて噴霧し、感光性樹脂層又は酸素遮断層の表面を均一に湿らせることが好ましい。
【0139】
現像処理に用いる現像液としては、アルカリ性物質の希薄水溶液が用いられるが、水と混和性の有機溶剤を少量添加したものでもよい。
【0140】
前記アルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物類(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩類(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩類(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属ケイ酸塩類(例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、アルカリ金属メタケイ酸塩類(例えば、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム)、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、燐酸三ナトリウム、等が挙げられる。アルカリ性物質の希薄水溶液は、アルカリ性物質の濃度としては0.01〜30質量%が好ましく、pHは8〜14が好ましい。
【0141】
前記「水と混和性の有機溶剤」としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が好適に挙げられる。水と混和性の有機溶剤の濃度は0.1〜30質量%が好ましい。
更に、公知の界面活性剤を添加することもでき、該界面活性剤の濃度としては0.01〜10質量%が好ましい。
【0142】
現像液は、浴液としても、あるいは噴霧液としても用いることができる。
感光性樹脂層の未硬化部分を除去する場合、現像液中で回転ブラシや湿潤スポンジで擦るなどの方法を組合わせることができる。現像液の液温度は、通常室温(20℃)付近から40℃が好ましい。現像時間は、感光性樹脂層の組成、現像液のアルカリ性や温度、有機溶剤を添加する場合にはその種類と濃度、等に依るが、通常10秒〜2分程度である。現像時間が前記範囲内であると、非硬化部(ネガ型の場合は非露光部)の現像進行が良好であり、硬化部(ネガ型の場合は露光部)がエッチングされることもなく、良好な形状の離画壁を得る点で有効である。
また、現像処理の後に水洗工程を入れることも可能である。
【0143】
〜加熱処理工程〜
現像工程によって得られた感光性樹脂層からなるパターン画像(離画壁パターン)を加熱処理(ベーク処理ともいう)することにより、撥水、撥インク性により優れた離画壁を得ることができる。
加熱処理は、露光及び現像により形成されたパターン画像(離画壁パターン)を加熱することで、硬化させると共に、熱で表面にフッ素官能基が並ぶので、含フッ素化合物による撥水・撥インク性をより発揮させることができる。特に、既述の繰り返し単位(a)〜(c)を有する含フッ素化合物を用いた場合に有効である。
【0144】
加熱処理の方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。すなわち、例えば、複数枚の基板をカセットに収納してコンベクションオーブンで処理する方法、ホットプレートで1枚ずつ処理する方法、赤外線ヒーターで処理する方法、等である。
【0145】
また、ベーク温度(加熱温度)としては、通常150〜280℃であり、好ましくは180〜250℃である。加熱時間は、前記ベーク温度により適宜選択できるが、例えばベーク温度を240℃とした場合は10〜120分が好ましく、30〜90分がより好ましい。
【0146】
また、離画壁の形成方法における加熱処理工程においては、前記露光、現像工程によって形成された離画壁パターンを、不均一な膜減りを防止し、感光性樹脂層に含まれるUV吸収剤等の成分の析出を防止する観点から、加熱処理前にポスト露光を行なうようにしてもよい。加熱処理を施す前にポスト露光を行なうと、ラミネート時にかみこんだ微小な異物が膨れて欠陥となるのを効果的に防止することができる。
【0147】
ここで、前記ポスト露光について略説する。
ポスト露光に用いる光源としては、感光性樹脂層を硬化し得る波長領域の光(例えば、365nm、405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。
具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量としては、前記露光を補う露光量であればよく、通常は50〜5000mJ/cm2であり、好ましくは200〜2000mJ/cm2、更に好ましくは500〜1000mJ/cm2である。
【0148】
本発明の離画壁の形成方法によって作製できる離画壁は、555nmにおいて高い光学濃度を有することが好ましい。特に離隔壁としてカラーフィルタを構成するブラックマトリクスを形成するときには、遮光性を付与しより鮮明でくっきりとした多色画像を表示する観点から、光学濃度2.5以上が好ましく、2.5〜10.0がより好ましく、2.5〜6.0が更に好ましく、3.0〜5.0が特に好ましい。
また、感光性樹脂層は好ましくは光開始系にて硬化されるため、露光波長(一般には紫外域)に対する光学濃度も重要である。すなわち、その値は2.0〜10.0が好ましく、更には2.5〜6.0がより好ましく、3.0〜5.0が特に好ましい。前記好ましい範囲であると、所望形状の離画壁を形成することができる。
【0149】
また、離画壁の幅及び高さについては、幅(すなわちカラーフィルタを形成した場合における画素と画素との間隔)としては15〜100μmが好ましく、高さ(すなわち基板法線方向における基板面から離画壁の頂点までの距離)としては1.0〜5.0μmが好ましい。
離画壁の形状は、特開2006−154804号公報の段落番号[0054]〜[0055]に記載の形状が、本発明においても好適である。
【0150】
〜離画壁の接触角測定〜
加熱処理(ベーク処理)前後での離画壁(例えばブラックマトリクス)のインク接触角及び水接触角の変化が重要である。ここでの接触角の測定方法は、財団法人・日本規格協会によるJIS規格に準拠した方法、具体的にはJIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」内の「6.静滴法」に記載された方法が適用される。
より具体的には、接触角測定器(協和界面科学(株)製の接触角計CA−A)を用い、20メモリの大きさのインク滴、水滴をつくり、針先からインク滴、水滴を出して、パターン状に形成された離隔壁上面に接触させてインク滴、水滴を形成し、10秒静置後、接触角計の覗き穴からインク滴、水滴の形状を観察し、25℃における接触角θを求める。また、ここでの「加熱処理後」とは、240℃で50分間加熱した後、1時間室温にて放冷した後のことをさす。
【0151】
〜接触角値〜
感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物を用いて形成された離画壁表面の水接触角を前記方法により測定した場合に、加熱処理を施す前の離画壁パターン表面の水接触角をA°とし、240℃で50分加熱し1時間放冷した後の離画壁表面の水接触角をB°としたとき、接触角差(B°−A°)が20°以上とすることができる。接触角差(B°−A°)は30°以上がより好ましく、40°以上が最も好ましい。
また、A°としては、離画壁と基板との密着性をより向上させる観点から、0〜60°が好ましく、0〜55°がより好ましく、0〜50°が特に好ましい。B°としては、カラーフィルタを作製した際の混色をより効果的に抑制する観点から、65〜180°が好ましく、80〜180°がより好ましく、90〜180°が特に好ましい。
【0152】
ここで、離隔壁の上面について図1を参照して説明する。
離画壁の上面とは、離画壁の表面のうち基板と接する面と反対側の露出面をいう(図1の上面4)。なお、離画壁の側面とは、離画壁の露出する表面のうち、離画壁の上面以外の表面をいう(図1の側面5)。また、基板上の凹部とは、離隔壁で取り囲まれ、離画壁側面と基板の離画壁が形成されていない基板面とからなる凹状領域をいう(図1の凹部3)。
【0153】
−着色領域形成工程−
着色領域形成工程は、前記離画壁形成工程で形成された離画壁により区画された基板上の凹部にインクジェット法により着色液体組成物を付与して着色領域を形成する。本工程では、離画壁によって区画された基板上の凹部(着色領域形成用の領域)に(好ましくは2色以上の)着色液体組成物を付与し、(好ましくは2色以上の)複数の着色領域(例えば、赤、緑、青、白、紫等の着色画素など)を形成することができる。
【0154】
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、既述の本発明のカラーフィルタ用感光性組成物を用いた離隔壁(例えばブラックマトリクス)を有する基板上に着色液体組成物を付与し、着色領域を形成するので、インクの離隔壁上への乗り上げ等に伴なう混色が回避でき、離隔壁の剥がれや欠け欠陥等の発生も抑えられるので、混色、色ムラ、白抜け等の画像故障が抑制された高品位なカラーフィルタを作製することができる。
本発明のカラーフィルタもまた、既述の本発明のカラーフィルタ用感光性組成物を用いた離隔壁を備えるので、色ムラがなく色純度が高く、白抜け等の画像故障が抑制されており、鮮やかでくっきりとした表示特性を有する。
【0155】
インクジェット法としては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
インクは、油性、水性のいずれも使用できる。また、そのインクに含まれる着色剤は染料、顔料ともに使用でき、耐久性の面からは顔料の使用がより好ましい。また、公知のカラーフィルタの作製の際の塗布に用いられる着色インク(例えば特開2005−3861号公報の段落番号[0034]〜[0063]に記載の着色樹脂組成物)や、特開2004−325736号公報に記載の着色インク、特開2002−372613号公報に記載のインクなど、公知のインクを使用することもできる。
インクジェット法に用いるインクには、付与後の工程を考慮し、加熱によって硬化する、又は紫外線などのエネルギー線によって硬化する成分を添加することができる。加熱によって硬化する成分としては、各種の熱硬化性樹脂が広く用いられ、エネルギー線によって硬化する成分としては、例えばアクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体に光反応開始剤を添加したものが例示できる。特に耐熱性を考慮してアクリロイル基、メタクリロイル基を分子内に複数有するものがより好ましい。これらのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体は水溶性のものが好ましく使用でき、水に難溶性のものでもエマルション化するなどして使用できる。
この場合、前記感光性組成物で挙げた顔料などの着色剤を含有させた感光性組成物を、好適なものとして用いることができる。
【0156】
本発明のカラーフィルタは、着色液体組成物の液滴をインクジェット法により基板上に吐出して着色領域(例えば画素)が形成されたカラーフィルタである場合が好ましく、少なくともRGB3色のインクをインクジェット法により吐出して少なくとも3色の着色画素を有するカラーフィルタが好ましい。
カラーフィルタのパターン形状は、特に限定されるものではなく、一般的なブラックマトリックス形状であるストライプ状であってもよいし、格子状、デルタ配列状であってもよい。
【0157】
作製されたカラーフィルタには、耐性向上のため、全面にオーバーコート層を設ける場合がある。オーバーコート層は、着色領域(例えばRGB画素)を保護すると共に、表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える観点からは設けないことが好ましい。
【0158】
オーバーコート層を形成する樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性に優れ、カラーフィルタを構成する硬化性組成物の樹脂成分が一般にアクリル系樹脂を主成分として含み、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品としてJSR社製の「オプトマーSS6699G」が挙げられる。
【0159】
また、着色領域(例えばRGB画素)上には、必要に応じて、透明電極、配向膜等を設けてもよい。透明電極の具体例としては、ITO膜が挙げられる。また、配向膜の具体例としては、ポリイミドが挙げられる。
【0160】
<表示装置>
本発明の表示装置は、既述の本発明のカラーフィルタを設けて構成されたものである。本発明のカラーフィルタを備えるので、画像表示した際の表示ムラが抑えられ、画像品質の良好な表示画像を得ることができる。
【0161】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られるカラーフィルタは、液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロクロミック表示素子、PLZT等と組合せて表示素子として用いることができる。カラーカメラやその他のカラーフィルタを用いる用途にも使用できる。
【0162】
表示装置としては、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などが挙げられる。表示装置の定義や各表示装置の説明については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0163】
本発明のカラーフィルタを設けて構成される表示装置としては、液晶表示装置が好ましい。液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。
本発明が適用できる液晶表示装置には特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については、例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0164】
液晶表示装置は、カラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルムなど、様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉、(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
【0165】
用途としては、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクター、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの用途に特に制限なく適用できる。
【実施例】
【0166】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を表し、また、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0167】
(実施例1)
上記した本発明の含フッ素化合物の例示化合物(1)を下記のように合成した。なお、ここで合成した例示化合物以外の他の本発明における含フッ素化合物についても類似の方法により合成することが可能である。
なお、含フッ素化合物中のフッ素原子含有率は、構造式から推定されるフッ素量を表す。
【0168】
−含フッ素化合物(1)の合成−
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート〔MMPG−Ac、ダイセル化学工業(株)製〕30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、パラフィン入りのウォーターバス中で内温70℃まで加熱した。これに更に、MMPG−Ac35gにアクリル酸〔AA、東京化成工業(株)製〕2.5gと2−(パーフルオロヘキシル)−エチルアクリレート〔FAAC6、NOK(株)製〕25gと末端メチルポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000、日本油脂(株)製、PEOの繰り返し数23、末端メチル基〕22.5gとラウリルメルカプタン〔LM、東京化成工業(株)製〕0.70gとを溶解させた溶液及び、MMPG−Ac10gに2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル)〔V65、和光純薬工業(株)製〕0.285gを溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
【0169】
以上のようにして、2−(パーフルオロヘキシル)−エチルアクリレート〔FAAC6〕、アクリル酸〔AA〕、及びポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000〕を共重合させて、FAAC6/AA/PME1000=50/5/45(質量比)の含フッ素化合物(1)を合成した。含フッ素化合物(1)の重量平均分子量は、1.3万であり、含フッ素化合物(1)中のフッ素原子含有率は36%であった。
【0170】
−感光性樹脂組成物の調製−
まず、下記表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150r.p.m.で10分間攪拌し、次いで表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1、及び含フッ素化合物(1)をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150r.p.m.にて30分間攪拌することにより、感光性樹脂組成物K1を調製した。
なお、下記表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0171】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) ・・・ 13.1%
・下記分散剤1 ・・・ 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万) ・・・ 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・79.53%
【0172】
【化18】

【0173】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=78/22[モル比])のランダム共重合物、分子量3.8万) ・・・ 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・ 73%
【0174】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA) ・・・ 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・ 24%
【0175】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 ・・・ 30%
・メチルエチルケトン ・・・ 70%
【0176】
【化19】

【0177】
【表1】

【0178】
−離画壁の形成−
無アルカリガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう。)を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。ガラス基板を120℃で3分間熱処理し、表面状態を安定化させた。
【0179】
このガラス基板を冷却し、23℃に温調した後、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、前記感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続き、装置内乾燥風量を0.5m/sとした温度100℃の乾燥装置にて2分間乾燥し、膜厚約2.3μmの感光性樹脂組成物層K1を得た。
このとき、装置内乾燥風量は、感光性樹脂組成物層K1の層表面から0.5cmの高さの風量を、SYSTEM6243(KANOMAX社製)を用いて測定した。
【0180】
次いで、前記感光性樹脂組成物層K1に対して、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)によりガラス基板とマスク(画像パターンを有する石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂組成物層K1との間の距離を200μmに設定して窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
【0181】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して感光性樹脂組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を100倍に希釈したものを用いて23℃で80秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、パターニング画像を得た。引き続き、超純水を超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行なった後、大気下で露光量2000mJ/cmにてポスト露光し、240℃で50分間ポストベーク(加熱)処理を行なって、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、幅100μmの開口部を有するストライプ状のブラックマトリクス(離画壁)を形成し、ブラックマトリクス付き基板を作製した。
【0182】
−評価1−
(1)面内均一性の評価
上記で作製したブラックマトリクス(離画壁)の厚みを任意の点5箇所を測定し、平均値Lavを算出した。5箇所の厚みのうち、平均値Lavからの差が最も大きい厚みLmを選択し、下記式から膜厚変動率(%)を求め、面内均一性を評価する指標とした。膜厚変動率を下記表2に示す。
膜厚変動率(%) = Lm/Lav
【0183】
−カラーフィルタの作製−
(1)画素用着色インク組成物の調製
下記成分のうち、まず、顔料、高分子分散剤、及び溶剤を混合し、3本ロールとビーズミルを用いて顔料分散液を得た。この顔料分散液をディソルバー等で充分に攪拌しながら、その他の材料を少量ずつ添加し、赤色(R)画素用着色インク組成物を調製した。
〈赤色画素用着色インク組成物の組成〉
・顔料(C.I.ピグメントレッド254) ・・・ 5部
・ソルスパース24000(AVECIA社製;高分子分散剤) ・・・ 1部
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=72/28[モル比])のランダム共重合物(分子量:3.7万、バインダー) ・・・ 3部
・エピコート154(油化シェル社製;ノボラック型エポキシ樹脂、)・・・ 2部
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(エポキシ樹脂) ・・・ 5部
・トリメリット酸(硬化剤) ・・・ 4部
・3−エトキシプロピオン酸エチル(溶剤) ・・・80部
【0184】
さらに、上記組成中のC.I.ピグメントレッド254に代えてC.I.ピグメントグリーン36を同量用いる以外は、R画素用着色インク組成物の場合と同様にして、緑色(G)画素用着色インク組成物を調製した。また、上記組成中のC.I.ピグメントレッド254に代えてC.I.ピグメントブルー15:6を同量用いる以外は、R画素用着色インク組成物の場合と同様にして、青色(B)画素用着色インク組成物を調製した。
【0185】
(2)着色画素の形成
次に、前記R、G、Bの各画素用着色インク組成物を用いて、上記で得られたブラックマトリクス付き基板のブラックマトリクス(離画壁)で区画された領域内(ブラックマトリクスで取り囲まれた凹部)に、インクジェット方式の記録装置を用いて所望の濃度になるまでインク組成物の吐出を行ない、R、G、Bのパターン(着色画素)からなるカラーフィルタを作製した。続いて、このカラーフィルタを230℃オーブン中で30分間ベークし、離画壁及び各画素がともに完全に硬化されたカラーフィルタ基板を得た。
【0186】
−液晶表示装置の作製−
上記より得たカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びに離画壁の上に、更にITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0187】
−柱状スペーサパターンの形成−
スペーサパターン形成用の下記感光性樹脂層用塗布液を、上記と同様のスリットコーターにより前記カラーフィルタのITO上に塗布し、乾燥させて、感光性樹脂層SP1を形成した。
〈感光性樹脂層用塗布液の処方SP1〉
・メタクリル酸/アリルメタクリレート共重合体(モル比=20/80、分子量40000;高分子物質) ・・・108部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート ・・・ 64.7部
(重合性モノマー)
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル〕−s−トリアジン・・・ 6.24部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル ・・・ 0.0336部
・ビクトリアピュアブルーBOHM(保土ヶ谷化学社製) ・・・ 0.874部
・メガファックF780F ・・・ 0.856部
(大日本インキ化学工業(株)製;界面活性剤)
・メチルエチルケトン ・・・328部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・475部
・メタノール ・・・ 16.6部
【0188】
次に、所定のフォトマスクを介して超高圧水銀灯により300mJ/cmでプロキシミティー露光した。露光後、KOH現像液〔CDK−1(商品名)の100倍希釈液(pH=11.8)、富士フイルム(株)製〕を用いて未露光部の感光性樹脂層を溶解除去した。
続いて、230℃で30分間ベークし、ガラス基板上のITO膜の上の離画壁の上部に位置する部分に直径16μm、平均高さ3.7μmの柱状スペーサパターンを形成した。その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0189】
−液晶配向分割用突起の形成−
下記の突起用感光性樹脂層用塗布液を、上記と同様のスリットコーターにより前記カラーフィルタ基板のITO上に塗布し、乾燥させて突起用感光性樹脂層を形成した。次に、突起用感光性樹脂層上に下記処方P1から中間層用塗布液を塗布し、乾燥膜厚1.6μmの中間層を設けた。
【0190】
〈突起用感光性樹脂層用塗布液の処方A〉
・ポジ型レジスト液 ・・・ 53.3部
(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製、FH−2413F)
・メチルエチルケトン ・・・ 46.7部
・前記界面活性剤1 ・・・ 0.04部
【0191】
〈中間層用塗布液の処方P1〉
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550) ・・・ 32.2部
・ポリビニルピロリドン ・・・ 14.9部
(アイエスピー・ジャパン(株)製、K−30)
・蒸留水 ・・・524部
・メタノール ・・・429部
【0192】
次に、フォトマスクが突起用感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティー露光機を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cmでプロキシミティー露光した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像し、突起用感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去した。すると、前記カラーフィルタ基板のITO膜上のR、G、Bの画素の上部に位置する部分に、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる突起が形成された。次いで、該突起が形成されたカラーフィルタ基板を240℃下で50分間ベークすることにより、カラーフィルタ基板上に高さ1.5μm、縦断面形状が蒲鉾様の配向分割用突起を形成した。
【0193】
更に、得られたカラーフィルタ基板に対して、駆動側基板及び液晶材料を組合せることによって配向分割垂直配向型液晶表示素子を作製した。具体的には、駆動側基板としてTFTと画素電極(導電層)とが配列形成されたTFT基板を準備し、このTFT基板及び上記より得たカラーフィルタ基板を、TFT基板の画素電極等が設けられた側の表面とカラーフィルタ基板の配向分割用突起等が形成された側の表面とが対向するように配置し、スペーサ分の間隙を設けて固定した。この間隙に液晶材料を封入することにより画像表示を担う液晶層を設け、液晶セルを得た。このようにして得た液晶セルの両面に(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、冷陰極管のバックライトを構成し、これを液晶セルの偏光板が設けられた側と反対側(背面側)に配置し、配向分割垂直配向型液晶表示装置とした。
【0194】
−評価2−
上記より得られた離画壁及び液晶表示装置について下記評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
(2)離画壁の撥水・撥インク性
上記と同様にして形成した感光性樹脂組成物層K1に対し、マスクを使用しない以外は上記と同様の方法で露光し、その後ポストベーク処理(加熱処理工程)までの操作を同様の条件で行なってテスト用感光性樹脂組成物層を得た。そして、このテスト用感光性樹脂組成物層をポストベーク処理後1時間室温にて放冷した後、接触角測定器(協和界面科学(株)製の接触角計CA−A)を用いて、前記R画素用着色インク組成物を20メモリの大きさの液体試料(インク試料)として針先から出し、テスト用感光性樹脂組成物層に接触させることにより、テスト用感光性樹脂組成物層上にR画素用着色インク組成物の液滴(インク滴)を形成した。そして、このインク滴の形状を接触角計の覗き穴から観察し、25℃下、着滴から10秒放置後のインク滴のインク接触角θを求めた。
【0195】
(3)液晶表示装置の表示ムラ
上記で作製した液晶表示装置について、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視にて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
・Aランク:表示ムラはなく、非常に良好な表示画像が得られた。
・Bランク:ガラス基板のふち部分に微かにムラがあったものの、表示部への影響はなく表示画像は良好であった。
・Cランク:表示部に微かにムラがみられたが、実用上許容範囲内であった。
・Dランク:表示部にムラがみられ、表示画像はやや悪かった。
・Eランク:表示部に強いムラがみられ、表示画像は非常に悪かった。
【0196】
(実施例2〜6)
実施例1において、含フッ素化合物(1)の含有量、乾燥温度、乾燥時間、乾燥風量、及び乾燥方法を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ブラックマトリクス(離画壁)付き基板、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、同様の評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
【0197】
(実施例7〜9)
実施例1において、含フッ素化合物(1)の含有量、乾燥温度、乾燥時間、乾燥風量、及び乾燥方法を下記表2に示すように変更すると共に、離画壁の形成に用いた「0.5m/sとした温度100℃の乾燥装置」を、バキュームドライオーブンDP−22(ヤマト(株)製)に代えて下記表2に示す真空度で塗布膜の乾燥を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、ブラックマトリクス(離画壁)付き基板、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、同様の評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
なお、真空度の測定は、日本エム・ケイ・エス(株)製のバラトロン真空計を用いて行なった。
【0198】
(比較例1〜4)
実施例1において、含フッ素化合物(1)の含有量、乾燥温度、乾燥時間、乾燥風量、及び乾燥方法を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ブラックマトリクス(離画壁)付き基板、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、同様の評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
【0199】
(実施例10)
無アルカリガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう。)を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、さらに純水シャワーにより洗浄した。洗浄後、このガラス基板を基板予備加熱装置により100℃で2分間加熱した。
【0200】
シランカップリング処理後のガラス基板に、下記の感光性転写材料K1からカバーフィルムを除去して露出した感光性樹脂組成物層の表面を、該ガラス基板の表面と接するように重ね合わせ、ラミネータ(LamicII型、株式会社日立インダストリイズ製)を用いて、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。続いて、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離して除去した。仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を用いて、ガラス基板とマスク(画像パターンを有する石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂組成物層との間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。
【0201】
次いで、KOH現像液〔富士フイルム(株)製のCDK−1(商品名)の100倍希釈液(pH=11.8)〕にて現像して、感光性樹脂組成物層の未露光部分及びその下の中間層、熱可塑性樹脂層を除去し、ガラス基板上にパターンを形成した。続いて、大気下アライナーにてガラス基板のパターン形成面側からガラス基板の全面を2000mJ/cmでポスト露光し、240℃で50分間ポストベークを行なった。以上により、光学濃度4.0のブラックマトリックス(離画壁)を得た。
【0202】
その後、実施例1と同様にして、カラーフィルタ及び液晶表示装置を作製すると共に、実施例1と同様の評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
【0203】
<感光性転写材料K1の作製>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET仮支持体)上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成した。次に、形成された熱可塑性樹脂層上に、下記処方P1からなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させて中間層(酸素遮断膜)を積層した。更に、この中間層上に実施例1で調製した感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続き、乾燥風量を0.5m/sとした温度100℃の乾燥装置にて2分間乾燥し、膜厚約2.3μmのブラック(K)の感光性樹脂組成物層K1を積層した。
このとき、乾燥風量は、感光性樹脂組成物層K1の層表面から0.5cmの高さの風量を、SYSTEM6243(KANOMAX社製)を用いて測定した。
【0204】
このようにして、PET仮支持体の上に、乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.3μmの感光性樹脂組成物層とを積層し、さらに感光性樹脂組成物層の表面に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着することにより、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂組成物層K1とが一体となった感光性転写材料K1を作製した。
【0205】
<熱可塑性樹脂層用塗布液の処方H1>
・メタノール ・・・ 11.1部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・ 6.36部
・メチルエチルケトン ・・・ 52.4部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃) ・・・ 5.83部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、平均分子量=1万、Tg≒100℃) ・・・ 13.6部
・2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製) ・・・ 9.1部
・前記界面活性剤1 ・・・ 0.54部
【0206】
<中間層用塗布液の処方P1>
・PVA205 ・・・ 32.2部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550)
・ポリビニルピロリドン ・・・ 14.9部
(アイエスピー・ジャパン社製、K−30)
・蒸留水 ・・・524部
・メタノール ・・・429部
【0207】
【表2】

【0208】
前記表2に示すように、実施例では、塗布形成された膜の面内均一性が高く、形成したブラックマトリクスの高さバラツキが抑えられ、面内均一性の高い(又は許容範囲内である)カラーフィルタを得ることができた。このカラーフィルタを用いた液晶表示装置は、画像表示したときの表示ムラが防止されており、高品質の画像を得ることができた。
一方、撥インク剤である含フッ素化合物を含有しない比較例1では、撥インク性に劣るばかりか、面内均一性も悪く、また、0.5m/sを超える乾燥風量で乾燥を行なった比較例2,3も面内均一性が悪く、ブラックマトリクスの高さバラツキが抑えられなかった。そのため、カラーフィルタ及び液晶表示装置を用いて画像表示した際に表示ムラが悪化し、高品質な画像表示は困難であった。
【0209】
なお、上記実施例では、含フッ素化合物(1)を用いた場合を中心に説明したが、本発明における撥インク剤として使用可能な他の含フッ素化合物を用いた場合や2種以上を組み合わせて用いた場合も、本実施例と同様の作用を発揮し得、上記同様に面内均一性を高めることができ、画像表示したときの表示ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】離画壁の上面、側面並びに基板上の凹部等を説明するためのカラーフィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0211】
1…離画壁
2…着色画素(着色領域)
3…凹部
4…離画壁上面
5…離画壁側面
6…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
塗布形成された塗布膜を、膜面からの高さ0.5cmにおける気体の流速を0.5m/s以下にして乾燥させる乾燥工程と、
を有する離画壁用感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項2】
前記乾燥は、塗布膜の表面に風速0.5m/s以下の流速で乾燥風をあてて行なうことを特徴とする請求項1に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項3】
真空度が10-3Pa以下になるように真空引きを行なって乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項4】
前記撥インク剤が、(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位と、(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項5】
前記(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位が、末端封止型のポリエーテル構造を有することを特徴とする請求項4に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項6】
仮支持体上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法により形成された感光性樹脂層を有する感光性転写材料。
【請求項7】
基板上に、撥インク剤を含有し、面内膜厚均一性が±5%以内である樹脂離画壁膜を有する離画壁付基板。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の離画壁用感光性樹脂膜の形成方法又は請求項6に記載の感光性転写材料を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成する層形成工程と、
形成された感光性樹脂層を、マスクを通してパターン状に露光し、現像して離画壁を形成する離画壁形成工程と、
前記離画壁により区画された基板上の凹部にインクジェット法により着色液体組成物を付与して着色領域を形成する着色領域形成工程と、
を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−233778(P2008−233778A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76853(P2007−76853)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】