説明

電力変換装置

【課題】半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却媒体を流通させる冷媒流路とを積層してなる半導体積層ユニット2を、ケース3に収容してなる電力変換装置1。半導体積層ユニット2は、冷媒流路の少なくとも一部を構成する流路構成部品の一部において、ケース3に固定されている。流路構成部品の一部は、固定用突出部221を備え、固定用突出部221がケース3に固定されている。半導体積層ユニット2は、内部に冷媒流路を備えた複数の冷却管220と、複数の半導体モジュール21とによって構成されており、複数の冷却管220のうちの一部が、固定用突出部221を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールと冷媒流路とを積層してなる半導体積層ユニットを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されたインバータ、コンバータ等の電力変換装置として、半導体モジュールと冷媒流路とを積層してなる半導体積層ユニットを備えたものがある(特許文献1、2)。
かかる電力変換装置においては、上記半導体積層ユニットがケース内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245472号公報
【特許文献2】特許第4003719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、上記電力変換装置が車両に搭載された場合において、車両の振動が電力変換装置に伝わる。このとき、半導体積層ユニットがケースに対しても振動することとなると、半導体モジュールと冷媒流路とがずれるおそれがある。その結果、冷媒流路による半導体モジュールの冷却効率が低下して、半導体モジュールの温度上昇を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却媒体を流通させる冷媒流路とを積層してなる半導体積層ユニットを、ケースに収容してなる電力変換装置において、
上記半導体積層ユニットは、上記冷媒流路の少なくとも一部を構成する流路構成部品の一部において、上記ケースに固定されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記電力変換装置においては、上記半導体積層ユニットが、上記流路構成部品の一部において上記ケースに固定されている。これにより、ケースに対する半導体積層ユニットの振動を抑制することができる。その結果、半導体モジュールと冷媒流路との間のずれを防ぐことができ、冷媒流路による半導体モジュールの冷却性能の低下を防ぐことができる。
以上のごとく、本発明によれば、半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、固定用突出部と被固定部とをボルトによって固定した状態を示す側面説明図。
【図4】実施例1における、固定用突出部と被固定部とをリベットによって固定した状態を示す側面説明図。
【図5】実施例2における、電力変換装置の平面図。
【図6】実施例2における、固定用突出部と被固定部との(a)固定前の状態を示す側面説明図、(b)加圧前の状態を示す側面説明図、(c)かしめによって固定した状態を示す側面説明図。
【図7】実施例3における、電力変換装置の平面図。
【図8】実施例3における、固定用突出部と被固定部とを抵抗溶接によって固定した状態を示す側面説明図。
【図9】実施例3における、固定用突出部と被固定部とをアーク溶接によって固定した状態を示す側面説明図。
【図10】実施例4における、電力変換装置の平面図。
【図11】実施例5における、電力変換装置の平面図。
【図12】実施例6における、電力変換装置の平面図。
【図13】実施例6における、(a)冷却管と被固定部とを連結した状態を示す平面図、(b)(a)のC−C線矢視断面図。
【図14】実施例7における、電力変換装置の平面図。
【図15】実施例7における、(a)冷却管と電子部品とを連結した状態を示す平面図、(b)(a)のD−D線矢視断面図。
【図16】実施例7における、(a)冷却管と電子部品とをシール材を配設して連結した状態を示す平面図、(b)(a)のE−E線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記半導体モジュールは、上記半導体素子を制御する制御回路に接続される制御端子と、上記半導体素子によって制御される被制御電流が流れる主電極端子とを、上記半導体積層ユニットの積層方向に直交する方向に突出させてなり、上記流路構成部品の一部は、積層方向に直交すると共に上記制御端子及び上記主電極端子に直交する方向に突出した固定用突出部を備え、該固定用突出部が上記ケースに固定されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記流路構成部品の一部に上記固定用突出部を形成することにより、上記半導体積層ユニットと上記ケースとの固定箇所を冷媒流路から離れた部分に形成できる。すなわち、上記半導体積層ユニットにおける上記流路構成部品の冷媒流路の形成に影響を与えることなく、上記半導体積層ユニットと上記ケースとを固定することができる。
【0010】
また、上記半導体積層ユニットは、内部に上記冷媒流路を備えた複数の冷却管と、複数の上記半導体モジュールとによって構成されており、上記複数の冷却管のうちの一部が、上記固定用突出部を備えていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記複数の冷却管のうちの一部を他の冷却管と形状を異ならせることにより、容易に上記固定用突出部を形成できる。そのため簡易な構造によって、上記半導体積層ユニットと上記ケースとを固定することができる。
【0011】
また、上記半導体積層ユニットは、積層方向の前端に、積層方向へ突出した冷媒導入管及び冷媒排出管を備え、上記半導体積層ユニットにおける積層方向の中央よりも後端に近い位置に配された上記冷却管の少なくとも一つに、上記固定用突出部が形成されていることが好ましい(請求項4)。この場合には、より振動の影響を受けやすい上記半導体積層ユニットの後端側をケースに対して固定することで、半導体積層ユニットの振動を効果的に抑制することができる。
また、上記半導体積層ユニットにおいて、上記冷媒導入管及び冷媒排出管が形成されている側を「前端側」その反対側を「後端側」として、以下、説明する。
【0012】
また、上記複数の冷却管のうち後端に配された冷却管は、上記固定用突出部を備えていることが好ましい(請求項5)。この場合には、最も振動の影響を受けやすく、最も振れやすい上記半導体積層ユニットの後端をケースに対して固定することで、半導体積層ユニットの振動を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上記複数の冷却管のうち積層方向の中央よりも前端に近い位置に配された上記冷却管の少なくとも一つにも、上記固定用突出部が形成されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、上記半導体積層ユニットの後端側のみならず前端側も固定することで、ケースに対して上記半導体積層ユニットをバランスよく固定でき、上記半導体積層ユニットの振動を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、上記半導体積層ユニットと上記ケースとは溶接によって固定されていることが好ましい(請求項7)。この場合には、上記電力変換装置の製造において、上記半導体積層ユニットの半導体モジュールとケース内に配設されるバスバとの溶接の際に、上記半導体積層ユニットのケースに対する固定を同一工程内で行うことができる。そのため、上記電力変換装置の生産効率を向上させることができる。
【0015】
また、上記ケースに固定された上記流路構成部品は、上記ケースと一体的に形成されていてもよい(請求項8)。この場合には、上記半導体積層ユニットを上記ケースに対して確実に固定することできる。
【0016】
また、上記ケースに固定された上記流路構成部品は、上記電力変換装置の一部を構成する電子部品であってもよい(請求項9)。この場合には、上記電子部品を冷却しつつ、該電子部品によって、上記半導体積層ユニットをケースに固定することができる。
また、上記ケースに固定された上記流路構成部品としての上記電子部品は、リアクトル又はコンデンサとすることが好ましい。この場合には、比較的質量が大きくなりやすいリアクトル又はコンデンサにおいて上記半導体積層ユニットをケースに固定することとなるため、上記半導体積層ユニットの振動を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置について、図1〜図4を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却媒体を流通させる冷媒流路(図示略)とを積層してなる半導体積層ユニット2を、ケース3に収容して形成されている。
また、半導体積層ユニット2は、冷媒流路の少なくとも一部を構成する流路構成部品である冷却管220の一部において、ケース3に固定されている。
【0018】
図2に示すごとく、半導体モジュール21は、半導体素子を制御する制御回路に接続される制御端子211と、半導体素子によって制御される被制御電流が流れる主電極端子212とを、半導体積層ユニット2の積層方向(以下において、適宜「X方向」という)に直交する方向(以下において、適宜「Z方向」という)に突出させて形成されている。
【0019】
また、図1に示すごとく、冷却管220の一部は、積層方向(X方向)に直交すると共に制御端子211及び主電極端子212に直交する方向(以下において、適宜「Y方向」という)に突出した固定用突出部221を有している。そして、固定用突出部221がケース3に固定されている。
【0020】
半導体積層ユニット2は、半導体モジュール21と冷却管220とを交互に積層してなる。そして、半導体モジュール21は両主面から冷却管220によって挟持されている。また、隣り合う冷却管220の間には2個の半導体モジュール21が挟持されている。
【0021】
また、複数の冷却管220は、積層方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に長く、Y方向に沿って冷媒流路を内部に形成している。そして、積層方向(X方向)に隣り合う冷却管220同士は、長手方向の両端において連結管23によって互いに連結されている。
【0022】
また、冷却管220は、積層方向(X方向)の一端(前端)に配置された冷却管220における幅方向(Y方向)の両端部において冷媒導入管223及び冷媒排出管224を有する。これにより、冷媒導入管223から導入された冷却媒体は、連結管23を適宜通り、各冷却管220に分配されると共に、その長手方向(Y方向)に流通する。そして、各冷却管220を流れる間に、冷却媒体が半導体モジュール21との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、連結管23を適宜通り、冷却排出管224に導かれ、冷却管220から排出される。
【0023】
このように構成された半導体積層ユニット2における積層方向(X方向)の中央よりも後端に近い位置に配された冷却管220の一つに、固定用突出部221が形成されている。具体的には、後端から2本目の冷却管220がY方向の双方へ、他の冷却管220よりも突出して形成されており、この突出部分が固定用突出部221を構成している。
【0024】
半導体積層ユニット2は、図1、図2に示すごとく、ケース3内に収容されている。
ケース3は、底部30と、底部30の端縁部からZ方向に立設される壁部32とによって構成されている。また、ケース3は、壁部32の立設側端部において開放されている。また、ケース3の底部30には、制御端子211を突出させる開放孔33が形成されている。そして、図1、図3に示すごとく、ケース3の底部30からケース3の内側に対して、Z方向に突出する被固定部31が形成されている。被固定部31は、ケース3の底部30の後端側において、開放孔33を挟んで一対形成されている。
【0025】
このように構成されたケース3において、半導体積層ユニット2における冷媒導入管223及び冷媒排出管224は、ケース3における一つの壁部32から突出している。また、冷媒導入管223及び冷媒排出管224は、壁部32においてクランプ等によって支持されている。
そして、半導体積層ユニット2に設けた固定用突出部221がケース3に固定されている。具体的には、ケース3の底部30から突出した一対の被固定部31に、それぞれ一対の固定用突出部221が固定されている。これにより、半導体積層ユニット2は、ケース3内に収容されると共にケース3に固定されている。
【0026】
固定用突出部221と被固定部31とは、図3に示すごとく、ボルト4によって固定することができる。すなわち、固定用突出部221及び被固定部31には、それぞれボルト4が挿通可能な挿通孔222、310が形成されている。そして、被固定部31と固定用突出部221とは、互いにX方向に重ね合わされ、被固定部31及び固定用突出部221の挿通孔310、222においてボルト4によってねじ締めされて固定されている。
【0027】
なお、固定用突出部221の被固定部31に対する固定手段については、何ら限定されるものではない。例えば、図4に示すごとく、挿通孔222、310に対してリベット5を挿嵌させて固定してもよい。或いは、後記の実施例2、3に示すごとく、固定用突出部221に対して被固定部31をかしめ固定してもよいし、或いは被固定部31に対して固定用突出部221を溶接することによって固定してもよい。
【0028】
また、本例における固定用突出部221は、半導体積層ユニット2の中央よりも後端側の一つの冷却管220に形成されている。しかし、固定用突出部221の形成数は限定されるものではなく、固定用突出部221を複数の冷却管220に形成してもよい。
【0029】
なお、固定用突出部221は、上述のごとく、冷却管220と一体的に形成されている。しかし、かかる構成に限定されるものはなく、積層した際に半導体積層ユニット2の他の部分よりもY方向に所定範囲の突出部分を形成できればよい。そのため、例えば、固定用突出部221を冷却管220とは別部品として形成し、これを冷却管220に固定して形成してもよい。
【0030】
次に、本例の電力変換装置1の作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1においては、半導体積層ユニット2が、流路構成部品(冷却管220)の一部においてケース3に固定されている。これにより、ケース3に対する半導体積層ユニット2の振動を抑制することができる。その結果、半導体モジュール21と冷媒流路との間のずれを防ぐことができ、冷媒流路による半導体モジュール21の冷却性能の低下を防ぐことができる。
【0031】
また、流路構成部品(冷却管220)の一部は、固定用突出部221を備え、固定用突出部221がケース3に固定されている。これによって、流路構成部品(冷却管220)の一部に固定用突出部221を形成することにより、半導体積層ユニット2とケース3との固定箇所を冷媒流路から離れた部分に形成できる。すなわち、半導体積層ユニット2における流路構成部品(冷却管220)の冷媒流路の形成に影響を与えることなく、半導体積層ユニット2とケース3とを固定することができる。
【0032】
また、半導体積層ユニット2は、内部に冷媒流路を備えた複数の冷却管220と、複数の半導体モジュール21とによって構成されており、複数の冷却管220のうちの一部が、固定用突出部221を備えている。これによって、複数の冷却管220のうちの一部を他の冷却管220と形状を異ならせることにより、容易に固定用突出部221を形成できる。そのため簡易な構造によって、半導体積層ユニット2とケース3とを固定することができる。
【0033】
また、半導体積層ユニット2は、積層方向(X方向)の前端に、積層方向(X方向)へ突出した冷媒導入管223及び冷媒排出管224を備え、半導体積層ユニット2における積層方向(X方向)の中央よりも後端に近い位置に配された冷却管220の少なくとも一つに、固定用突出部221が形成されている。これによって、より振動の影響を受けやすい半導体積層ユニット2の後端側をケース3に対して固定することで、半導体積層ユニット2の振動を効果的に抑制することができる。
以上のごとく、本例によれば、半導体積層ユニットの振動を抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【0034】
(実施例2)
本例は、図5、図6に示すごとく、固定用突出部221の被固定部31に対する固定手段をかしめ固定とした例である。
本例においては、図6(a)に示すごとく、かしめ固定前の被固定部31のZ方向の高さが、固定用突出部221よりも高くなるように、延出部311と基部312を有して形成されている。そして、両者をかしめ固定する際には、図6(b)に示すごとく、被固定部31の延出部311を、固定用突出部221の上端側を覆うように折り返す。
【0035】
そして、固定用突出部221を延出部311と基部312との内側に挟んだ状態において、同図に示す矢印Bの方向から延出部311と基部312とを、固定用突出部221にかしめる。これによって、図6(c)に示すごとく、固定用突出部221と被固定部31とが固定される。
その他、実施例1と同様であり、同様の作用効果を有する。
【0036】
(実施例3)
本例は、図7〜図9に示すごとく、固定用突出部221の被固定部31に対する固定手段について、被固定部31に対して、固定用突出部221を溶接した例である。
本例においては、図7に示すごとく、固定用突出部221における被固定部31との当接部分229においてX方向の厚みを冷却管220よりも薄くしている。そして、この厚みの小さい当接部分229において、固定用突出部221と被固定部31とが溶接されている。また、溶接の種類としては、抵抗溶接、アーク溶接等を用いることができる。
【0037】
抵抗溶接を採用する場合、例えば、図8に示すごとく、被固定部31に固定用突出部221側へ突出するように屈曲した屈曲部225を形成する。そして、固定用突出部221と屈曲部225との当接面を溶接部226とすることができる。
また、アーク溶接を採用する場合、例えば、図9に示すごとく、固定用突出部221及び被固定部31の上端部を溶接部226とすることができる。
その他は、実施例1と同様である。
【0038】
本例においては、半導体積層ユニット2とケース3とが溶接によって固定されている。本例の場合には、電力変換装置1の製造において、半導体積層ユニット2の半導体モジュール21とケース3内に配設されるバスバ(図示略)との溶接の際に、半導体積層ユニット2のケース3に対する固定を同一工程内で行うことができる。そのため、電力変換装置1の生産効率を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0039】
(実施例4)
本例は、図10に示すごとく、複数の冷却管220のうち後端に配された冷却管220に、固定用突出部221を形成した例である。
本例における固定用突出部221は、半導体積層ユニット2の複数の冷却管220のうち、後端に配された冷却管220に形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0040】
本例においては、複数の冷却管220のうち後端に配された冷却管220は、固定用突出部221を備えている。本例の場合には、最も振動の影響を受けやすく、最も振れやすい半導体積層ユニット2の後端をケース3に対して固定することで、半導体積層ユニット2の振動を効果的に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0041】
(実施例5)
本例は、図11に示すごとく、前端に配された冷却管220にも固定用突出部221を形成した例である。つまり、前端及び後端に配された冷却管220が、それぞれ固定用突出部221を備えている。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、半導体積層ユニット2の後端側のみならず前端側も固定することで、ケース3に対して半導体積層ユニット2をバランスよく固定でき、半導体積層ユニット2の振動を効果的に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施例6)
本例は、図12、図13に示すごとく、ケース3に固定された流路構成部品である立設プレート34が、ケース3と一体的に形成されている例である。なお、図13においては、半導体モジュール21は省略されている。
【0044】
本例においては、図12、図13に示すごとく、ケース3の底部30からZ方向に立設した立設プレート34が、ケース3と一体的に形成されている。そして、立設プレート34は、Y方向に開放孔33を跨いで長尺に形成されている。このように形成された立設プレート34は、半導体積層ユニット2における複数の冷却管220及び複数の半導体モジュール21と共に積層されている。
【0045】
また、図12に示すごとく、立設プレート34の両面には、半導体モジュール21が接触配置されている。つまり、立設プレート34に接触した半導体モジュール21は、立設プレート34とこれに隣接する冷却管220との間に挟持された状態にある。言い換えれば、本例の電力変換装置1は、実施例1に示した電力変換装置1における半導体積層ユニット2の一つの冷却管220を立設プレート34に置き換えたような構造となっている。
【0046】
そして、図13(a)、(b)に示すごとく、立設プレート34には、Y方向の両端部付近に、X方向へ貫通した連通部313が冷媒流路の一部として形成されている。それゆえ、立設プレート34は流路構成部品の一種である。そして、隣接する冷却管220との間で冷媒流路を連結する連結管23が、立設プレート34の連通部313に接続されている。この連結管23は、冷却管220同士をつなぐ連結管23と同様の形状を有するものとしてもよいし、異なる形状としてもよい。
【0047】
また、連通部313と連結管23との接続部分は、例えば、連通部313の外周部と連結管23との間において、ろう付け、接着剤による接着、或いはOリング等のシール材の配設等によって、冷却媒体の漏れを防ぐよう構成されている。ただし、Oリング等のシール材を用いる場合には、連結管23と立設プレート34とを互いに固定するために接着剤やろう材等による固定手段を併用する必要がある。
【0048】
なお、本例においては、立設プレート34が冷却管220よりもY方向の双方に突出しているが、立設プレート34のY方向の長さは冷却管220と同等であってもよい。また、連結管23と連結される一対の連通部313が形成できる範囲で、冷却管220よりも立設プレート34がY方向に短くてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、ケース3に固定された流路構成部品(立設プレート34)は、ケース3と一体的に形成されている。これによって、半導体積層ユニット2をケース3に対して確実に固定することできる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施例7)
本例は、図14〜図16に示すごとく、ケース3に固定された流路構成部品として、電力変換装置1の一部を構成する電子部品6を用いた例である。この電子部品6は、例えば、リアクトルもしくはコンデンサ等とすることが好ましい。
【0051】
図14に示すごとく、電子部品6は、ケース3の底部30において、開放孔33を跨ぐようにY方向に長尺な状態で配置され底部30に固定されている。そして、電子部品6は、半導体積層ユニット2における複数の冷却管220及び複数の半導体モジュール21と共に積層されている。電子部品6の両面には、冷却管220が接触配置されている。つまり、本例の電力変換装置1は、実施例1に示した電力変換装置1における半導体積層ユニット2において、積層方向(X方向)の一部に電子部品6を積層した構造となっている。
【0052】
電子部品6は、電子部品6に接触する冷却管220以外の冷却管220と、Y方向の長さが略同等もしくはそれよりも長く形成されている。そして、電子部品6に接触する2つの冷却管220は、Y方向の長さが他の冷却管220と同等もしくはそれよりも長く形成されている。
そして、電子部品6におけるY方向の両端部付近に、X方向へ貫通した連通部60が冷媒流路の一部として形成されている。それゆえ、電子部品6は流路構成部品の一種である。
【0053】
図15(a)、(b)に示すごとく、電子部品6に接触した冷却管220は、電子部品6と反対側に隣接する他の冷却管220と連結する連結管23の形成箇所と、Y方向及びZ方向の位置が同じ部分に開口部227を有する。この開口部227と電子部品6の連通部60が接続されることにより、電子部品6における連通部60(冷媒流路)と冷却管220における冷媒流路とが連結される。
【0054】
また、電子部品6の連通部60と冷却管220の開口部227との接続部分は、例えば、連通部60の外周部と開口部227の外周部との間において、ろう付け、接着剤による接着、或いはOリング等のシール材の配設等によって、冷却媒体の漏れを防ぐよう構成されている。
【0055】
ろう材や接着剤を用いて連通部60と開口部227とを接続する場合には、特に別の固定手段を電子部品6と冷却管220との間に設ける必要はない。また、この場合、電子部品6及びこれに接触する2つの冷却管220のY方向の長さは、他の冷却管220よりも長くする必要は特にない。
【0056】
一方、図16(a)、(b)に示すごとく、Oリング等のシール材7を用いる場合において、ボルト4等を電子部品6と冷却管220との固定手段として用いる場合には、電子部品6及びこれに隣接する2つの冷却管220のY方向の長さを、他の冷却管220よりも長くする。この突出した部分において、ボルト4等を用いて冷却管220と電子部品6とを固定することができる。つまり、この電子部品6と冷却管220との固定作業を行うために、電子部品6及び冷却管220が、他の冷却管220よりもY方向に突出していることが好ましい。なお、この場合、電子部品6の連通部60と冷却管220の開口部227の付近にはボルト4が挿通可能な挿通孔61、228が形成されている。そして、挿通孔61、228にボルト4を挿通させてネジ締めすることによって固定する。
その他は、実施例1と同様である。
【0057】
本例の場合には、冷却管220及び連通部60内の冷媒流路を流れる冷却媒体によって電子部品6を冷却しつつ、電子部品6によって半導体積層ユニット2をケース3に固定することができる。
また、上記の電子部品6としては、リアクトル又はコンデンサを用いることが好ましい。この場合には、比較的質量が大きくなりやすいリアクトル又はコンデンサにおいて半導体積層ユニット2をケース3に固定することとなるため、半導体積層ユニット2の振動を効果的に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0058】
なお、上記実施例1〜実施例7において示した電力変換装置1の半導体積層ユニット2は、上述のごとく、半導体モジュール21と冷却管220とを積層して構成したものであるが、本発明の電力変換装置1はこれ限定されるものではない。すなわち、例えば、半導体モジュール21に直接冷却媒体が接触するように冷媒流路を構成した電力変換装置1においても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 電力変換装置
2 半導体積層ユニット
21 半導体モジュール
220 冷却管
221 固定用突出部
3 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却媒体を流通させる冷媒流路とを積層してなる半導体積層ユニットを、ケースに収容してなる電力変換装置において、
上記半導体積層ユニットは、上記冷媒流路の少なくとも一部を構成する流路構成部品の一部において、上記ケースに固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記半導体モジュールは、上記半導体素子を制御する制御回路に接続される制御端子と、上記半導体素子によって制御される被制御電流が流れる主電極端子とを、上記半導体積層ユニットの積層方向に直交する方向に突出させてなり、上記流路構成部品の一部は、積層方向に直交すると共に上記制御端子及び上記主電極端子に直交する方向に突出した固定用突出部を備え、該固定用突出部が上記ケースに固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットは、内部に上記冷媒流路を備えた複数の冷却管と、複数の上記半導体モジュールとによって構成されており、上記複数の冷却管のうちの一部が、上記固定用突出部を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットは、積層方向の前端に、積層方向へ突出した冷媒導入管及び冷媒排出管を備え、上記半導体積層ユニットにおける積層方向の中央よりも後端に近い位置に配された上記冷却管の少なくとも一つに、上記固定用突出部が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、上記複数の冷却管のうち後端に配された冷却管は、上記固定用突出部を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電力変換装置において、上記複数の冷却管のうち積層方向の中央よりも前端に近い位置に配された上記冷却管の少なくとも一つにも、上記固定用突出部が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットと上記ケースとは溶接によって固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記ケースに固定された上記流路構成部品は、上記ケースと一体的に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記ケースに固定された上記流路構成部品は、上記電力変換装置の一部を構成する電子部品であることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−249503(P2012−249503A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121944(P2011−121944)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】