説明

電力用半導体装置

【課題】内部部品や金型の寸法を厳しく管理する必要のない、電極上出し構造の電力用半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の電力用半導体装置は、絶縁基板1と、絶縁基板1上面に形成された回路パターン6と、回路パターン6上に形成された電力用半導体7と、回路パターン6又は電力用半導体7上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の金属製ソケット電極端子8と、複数の金属製ソケット電極端子8にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部9が一体となった一体型樹脂製スリーブ10と、絶縁基板1、回路パターン6、電力用半導体7、電極端子8、一体型樹脂製スリーブ10を覆うモールド樹脂16と、を備える。一体型樹脂製スリーブ10は、樹脂平板12に複数のスリーブ部9が形成された構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスファーモールド型の電力用半導体装置に関し、特に上出し電極用金属ソケット電極端子を絶縁基板に対して直立するように配置する電力用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の半導体パッケージは、製造コストや生産性などの観点からトランスファーモールド成形(トランスファー成形)による樹脂封止で形成されることが多い。トランスファー成形では、樹脂組成物(モールド樹脂)が必要に応じて高周波加熱で溶融され、高温に保たれた金属金型内部の空洞(キャビティ)内に充填される。金属金型は、一般に上金型とこれに組み合わされる下金型からなり、キャビティは上金型と下金型の内壁により規定される。モールド樹脂の充填とその後に行われるモールド樹脂の加圧にはプランジャーが用いられ、モールド樹脂が加熱溶融しキャビティ内に充填された後、硬化される。型締めが行われた状態でキャビティへモールド樹脂が充填された後は、周知の方法によりモールド樹脂により樹脂封止された半導体装置が製造される。
【0003】
トランスファーモールド成形では、型締めされる際にリードフレームを代表とする金属性電極端子が上下金型と接触した状態で挟まれることによって、樹脂が封止された後も金属性電極端子は樹脂外部へ露出する。ここでいう金属製電極端子は、トランスファーモールド成形後にパッケージ外部へ露出し、パッケージ外部と電気的に接続される。一般にリードフレームを金属製電極端子として用いる場合、端子はモールド樹脂で成形されたパッケージの側面周辺から外部端子として形成される。しかし、複数のパッケージを高密度にプリント基板に実装し、システム及び半導体装置を小型化する観点からは、金属製電極端子をパッケージ側面(絶縁基板の表面と並行方向)に露出させるのではなく、パッケージ上面(絶縁基板の表面と垂直な方向)に露出させる方が良い。
【0004】
特許文献1には、金属製電極端子がパッケージ側面方向に露出する構成が開示されており、特許文献2には金属製電極端子がパッケージ上面方向に露出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−204064号公報
【特許文献2】特開2007−184315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランスファーモールド型の電力用半導体装置において、電極端子をモールド樹脂上面(絶縁基板の表面に垂直な方向)へ露出する場合、電極端子は絶縁基板に直立して実装される。電極端子はその一端が回路パターンや半導体素子の電極と接合されるが、他端はモールド樹脂の外部に露出する必要がある。よって、上金型と下金型によって半導体装置が型締めされるにあたり、金属製電極端子の絶縁基板と接合していない端部は金型の内壁に接触する必要がある。
【0007】
ところが、絶縁基板から金属製電極端子の先端までの総厚がキャビティ内部の縦方向距離より大きいと、型締めによって内部部品が損傷を受けてしまうという問題がある。一方、上記総厚がキャビティ内部の双方向距離より小さいと、型締めの際に金属製電極端子の他端が金型の内壁に接触しない。こうなると、モールド樹脂を注入した後に金属製電極端子がモールド樹脂の外部に露出せず、外部端子を接続できないという問題があった。
【0008】
こうした問題を回避するためには、内部部品である絶縁基板や電力用半導体、金属性電極端子、はんだや金型の寸法精度を厳しく管理する必要があり、製造コストの増加や歩留り低下の原因となる。
【0009】
また、モールド樹脂の上部から露出するように金属製電極端子を形成した場合、モールド樹脂の側面から露出する場合に比べて、同一面上に近接して電極配置を行う事ができるため電極配置の高密度化が可能になり、電力用半導体装置の小型化に有利である。とはいえ、金属製電極端子間の沿面距離が小さくなりすぎると沿面放電が生じるため、更なる小型化は沿面距離の制約を受ける。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、内部部品や金型の寸法を厳しく管理する必要のない、電極上出し構造の電力用半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電力用半導体装置は、絶縁基板と、絶縁基板上面に形成された回路パターンと、回路パターン上に形成された電力用半導体と、回路パターン又は電力用半導体上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子と、複数の電極端子にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部が一体となった一体型樹脂製スリーブと、絶縁基板、回路パターン、電力用半導体、電極端子、一体型樹脂製スリーブを覆う封止樹脂と、を備え、一体型樹脂製スリーブは、樹脂平板に複数のスリーブ部が形成された構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電力用半導体装置は、複数の電極端子にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部が一体となった一体型樹脂製スリーブを備え、一体型樹脂製スリーブは、樹脂平板に複数のスリーブ部が形成された構造である。これにより、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずとも、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供可能である。また、複数のスリーブ部の相対位置を正確に定めることができるので、一体型樹脂製スリーブを電極端子に位置ずれなく嵌合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1の電力用半導体装置の断面図である。
【図2】実施の形態1の一体型樹脂製スリーブの構成図である。
【図3】実施の形態1の一体型樹脂製スリーブの鳥瞰図である。
【図4】実施の形態1の一体型樹脂製スリーブの構成図である。
【図5】金属製ソケット電極端子とスリーブ部の構成図である。
【図6】実施の形態1の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図7】実施の形態1の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図8】実施の形態1の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図9】実施の形態1の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図10】実施の形態2の電力用半導体装置の断面図である。
【図11】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの断面図である。
【図12】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの変形例の断面図である。
【図13】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの変形例の断面図である。
【図14】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの変形例の断面図である。
【図15】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの変形例の断面図である。
【図16】実施の形態2の一体型樹脂製スリーブの変形例の鳥瞰図である。
【図17】一体型樹脂製スリーブと金属製ソケット電極端子の接合部分の拡大図である。
【図18】実施の形態2の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図19】実施の形態2の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図20】実施の形態2の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図21】実施の形態2の電力用半導体装置の製造工程を示す図である。
【図22】実施の形態3の電力用半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1の電力用半導体装置の断面図の一例を示す。実施の形態1の電力用半導体装置は、回路パターン6が形成された絶縁基板1、絶縁基板1の回路パターン6上に形成される電力用半導体7及び金属製ソケット電極端子8、金属製ソケット電極端子8と嵌合する一体型樹脂製スリーブ10を備えている。
【0015】
絶縁基板1は、ベース板2と、ベース板2上にはんだ4を介して形成されるセラミック基板3とで構成される。ベース板2は、電力用半導体7などからの放熱を促進するヒートスプレッダとして機能し、その背面はモールド樹脂16から露出している。材料としては、例えばAl,Cu,AISiC,Cu−Moなどが用いられる。
【0016】
すなわち、絶縁基板1は多層構造であってその最下層は金属製のベース板であり、ベース板の背面がモールド樹脂16から露出していることを特徴とする。これにより、電力用半導体7等の放熱が促進される。
【0017】
セラミック基板3には回路パターン6が形成され、回路パターン6上に電力用半導体7やチップ抵抗などの部品がはんだ4で接合される。電力用半導体7間や電力用半導体7と回路パターン6間は、ワイヤーボンド22で接続される。本実施の形態において、電力用半導体7はシリコン材料からなるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やダイオードなどである。さらに回路パターン6には、絶縁基板1に対して直立するように金属製ソケット電極端子8がはんだ4で接合される。これらの構成部品は、トランスファーモールド樹脂16で封止される。
【0018】
図1において、金属製ソケット電極端子8はセラミック基板3の回路パターン6上に直立して接合されているが、電力用半導体7の表面に接合されていても良い。このように金属製ソケット電極端子8を配置すれば、ワイヤーボンド22が省略でき、電力半導体装置の小型化が可能である。
【0019】
複数の金属製ソケット電極端子8の他端には、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9が夫々嵌合される。一体型樹脂製スリーブ10は金属製ソケット電極端子8と嵌合するスリーブ部9と、各スリーブ部9を連結するランナー部11とで構成される。図2は一体型樹脂製スリーブ10の断面図であり、図3はその鳥瞰図である。
【0020】
スリーブ部9は絞りばめの筒状の形状(以下、筒状)で金属製ソケット電極端子8の側面を覆うが、上面は覆わない。スリーブ部9の内径は、対応する金属製ソケット電極端子8の外径に依存する。例えば、信号等の小電圧/小電流用の金属製ソケット電極端子8の外径は小さく、これに嵌合するスリーブ部9の内径は小さい。一方、大電流を流す主端子用の金属製ソケット電極端子8は、電流容量に比例して外径が大きく設計され、これに嵌合するスリーブ部9の内径は大きい。このように、スリーブ部9の内径は、嵌合する金属製ソケット電極端子8の外径に合わせて設計される。
【0021】
すなわち、実施の形態1の電力用半導体装置は、絶縁基板1と、絶縁基板1上面に形成された回路パターン6と、回路パターン6上に形成された電力用半導体7と、回路パターン6又は電力用半導体7上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子(金属製ソケット電極端子8)と、複数の金属製ソケット電極端子8にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部9が一体となった一体型樹脂製スリーブ10と、絶縁基板1、回路パターン6、電力用半導体7、金属製ソケット電極端子8、一体型樹脂製スリーブ10を覆う封止樹脂16と、を備える。スリーブ部9が金属製ソケット電極端子8に嵌合することによって、トランスファーモールド法で電力用半導体装置を形成するにあたり、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずとも、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。また、複数のスリーブ部9を一体とした一体型樹脂製スリーブ10とすることにより、複数のスリーブ部9を容易に、対応する金属製ソケット電極端子8に嵌合することができる。
【0022】
また、絶縁基板1は、ベース板2と、回路パターン6が形成されたセラミック基板3で構成されることを特徴とする。このような構成によっても、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずに、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。
【0023】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10は、2種類以上の異なる内径をもつスリーブ部9を有することを特徴とする。これにより、信号用や主端子用等、外径が異なる金属製ソケット電極端子の両方と嵌合することが出来る。
【0024】
また、スリーブ部9の上面はトランスファーモールド樹脂16から露出する。
【0025】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9の上面は、モールド樹脂16から露出している特徴とする。これにより、モールド樹脂16がスリーブ部9又は金属製ソケット電極端子8へ侵入することがない。
【0026】
スリーブ部9を連結する棒状のランナー部11は、スリーブ部9側面の中段に設けられ、トランスファーモールド成形によってモールド樹脂16の中に埋没する。これにより、スリーブ部9とモールド樹脂16の接着性が向上し、スリーブ部9と金属製ソケット電極端子8の嵌合強度が向上する。
【0027】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10は、複数のスリーブ部9を結合する棒状のランナー部11を有することを特徴とする。これにより、フレキシブルな一体型樹脂製スリーブ10が得られる。
【0028】
また、ランナー部11は封止樹脂(モールド樹脂16)中に埋没することを特徴とする。これにより、スリーブ部9とモールド樹脂16の接着性が向上し、スリーブ部9と金属製ソケット電極端子8の嵌合強度が向上する。
【0029】
なお、図2に示した一体型樹脂製スリーブ10の形状は一例であり、例えばスリーブ部9は、図4に示すように金属製ソケット電極端子8と嵌合する側がテーパ形状であっても良い。
【0030】
すなわち、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8と嵌合する端部はテーパ形状であることを特徴とする。これにより、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8への挿入性が向上する。
【0031】
一体型樹脂製スリーブ10は、その線膨張係数がモールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の間の値である材料で形成される。例えばPPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はガラス繊維などによりそれらを補強した樹脂で形成される。補強に用いるガラス繊維などのフィラーの量は、線膨張係数が最適な値になるよう任意の量で配合する。
【0032】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10の線膨張係数は、モールド樹脂16の線膨張係数と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数との中間であることを特徴とする。これにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0033】
例えば、一体型樹脂製スリーブ10は、PPS、PPT、PBT、PET、ナイロン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はガラス繊維によりそれらを補強した樹脂で形成されることを特徴とする。これらの材料によって一体型樹脂製スリーブ10の線膨張係数をモールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の中間にすることにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0034】
また、スリーブ部9の内壁構造は、金属製ソケット電極端子8の外壁と密着するストレート構造が好ましいが、両部材の交差等の関係から、スリーブ部9内壁に円周上の突起を有し、線上で金属製ソケット電極端子8と嵌合するようにしても良い。
【0035】
すなわち、スリーブ部9は、内壁に周上の突起を有することを特徴とする。これにより、金属製ソケット電極端子8との嵌合がより強固になる。
【0036】
また、金属製ソケット電極端子8は細長い形状である限りにおいて様々な形状が考えられるため、金属製ソケット電極端子8は広義に解釈されるべきものである。図5は、金属製ソケット電極端子8のとり得る形状例を示したものである。金属製ソケット電極端子8は、これに挿入又は圧着される外部端子の形状により任意に選択され、円筒形状や角筒形状等を用いることが可能である。金属製ソケット電極端子8に嵌合する一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9も、これに対応して円筒、角筒形状を用いることが可能である。
【0037】
すなわち、スリーブ部9は内部形状が円筒状であることを特徴とする。これにより、円筒状の金属製ソケット電極端子8に嵌合することが可能になる。
【0038】
あるいは、スリーブ部9は内部形状が角筒状であることを特徴とする。これにより、角筒状の金属製ソケット電極端子8に嵌合することが可能になる。
【0039】
また、実施の形態1の電力用半導体装置は、スリーブ部9の開口部から金属製ソケット電極端子8に向けて挿入、圧着される外部端子(図示せず)を備える。本実施の形態では、このようにして金属製ソケット電極端子8に外部端子を接続することが可能である。
【0040】
なお、電力用半導体7はシリコン材料からなるIGBTやダイオードであるとしたが、シリコン材料の代わりに低損失で高温動作が可能なシリコンカーバイド(SiC)からなるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やダイオードを用いても良い。
【0041】
すなわち、電力用半導体7はシリコンカーバイド(SiC)から形成されることを特徴とする。このような構成によっても、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずに、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。
【0042】
<製造工程>
実施の形態1の電力用半導体装置の製造工程について説明する。
【0043】
まず、ベース基板1上に回路パターン6が施されたセラミック基板3をはんだ4で接合する。そして、セラミック基板3の回路パターン6上に電力用半導体7を形成する。次に、回路パターン6又は電力用半導体7上に金属製ソケット電極端子8を形成する。金属製ソケット電極端子8はセラミック基板3に対して垂直な方向に伸張するよう形成する。そして、アルミワイヤ22で電力用半導体7間や回路パーンと電力用半導体の間にワイヤボンディングを行う。この状態の電力用半導体装置が図6に示される。
【0044】
次に、金属製ソケット電極端子8に対して一体型樹脂製スリーブ10をセットする(図7)。一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9が金属製ソケット電極端子8に嵌合するが、嵌合は後工程の金型の型締めにおいて行うため、この段階では仮留めである。
【0045】
そして、この状態の半完成品の電力用半導体装置を、上金型17と下金型18で形成される空洞、すなわちキャビティ19(図9参照)内に設置し、金型の型締めを行う(図8)。この際、ベース板2の裏面は下金型18の内壁と接している。ここで、金属製ソケット電極端子8の上部端からベース板2までの距離は、キャビティ19内部の縦方向距離よりも小さい。上金型17、下金型18の型締め工程により一体型樹脂製スリーブ10は下方向に押下され、スリーブ部9はそれぞれ金属製ソケット8と嵌合する。スリーブ部9は例えば筒状であり、金属製ソケット電極端子8の長手方向に圧入嵌合される。
【0046】
図9は、上金型17と下金型18とで電力半導体装置が型締めされた状態を示す図である。一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は金属製ソケット電極端子8に圧入嵌合されており、その上面が上金型17の内壁と接触していると同時に、ベース板2の背面は下金型18の内壁と接触している。
【0047】
スリーブ部9が金属製ソケット電極端子8に嵌合した後、ベース板2背面からスリーブ部9上面までの距離は、ベース板2背面から金属製ソケット電極端子8の先端までの距離より長い。換言すれば、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は、金属製ソケット電極端子8単体の長手方向の長さより金属製ソケット電極端子8底部からスリーブ部9上部までの長さのほうが長くなるように、金属製ソケット電極端子8に嵌合される。
【0048】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は、電極端子(金属製ソケット電極端子8)の上面がスリーブ部9の上面より下に位置するように、金属製ソケット電極端子8に嵌合されることを特徴とする。これにより、金型を型締めした際に、絶縁基板1や金属製ソケット電極端子8等の電力半導体装置の構成部材が損傷することはない。
【0049】
次に、上述の接触を保った状態でキャビティ19内にモールド樹脂16を加圧充填し、モールド樹脂16の加熱硬化を行う。モールド樹脂16が硬化すると、金型を外し、必要なら後硬化処理を施す。以上により、本実施の形態の電力用半導体装置が形成される。
【0050】
すなわち、実施の形態1に係る電力用半導体装置の製造方法は、(a)絶縁基板1と、絶縁基板1上面に形成された回路パターン6と、回路パターン6上に形成された電力用半導体7と、回路パターン6又は電力用半導体7上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子8と、を備える樹脂封止前の電力用半導体装置を準備する工程と、(b)複数の電極端子8の各々に対応して配設され且つ両端に開口部を有する複数のスリーブ部9が一体となった一体型樹脂製スリーブ10を、各スリーブ部9が対応する各電極端子(金属製ソケット電極端子8)に嵌合するよう設置する工程と、(c)金型17,18の型締めを行うことにより一体型樹脂製スリーブ10に下方向の力を加え、スリーブ部9を金属製ソケット電極端子8に圧入する工程と、(d)スリーブ部9の上面が金型17の内壁に接した状態で、金型17,18内の空洞(キャビティ19)にモールド樹脂16を充填する工程と、(e)モールド樹脂16が硬化した後金型17,18を外す工程と、を備える。スリーブ部9を金属製ソケット電極端子8に嵌合させることにより、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずとも、電極上出し構造の電力用半導体装置をトランスファーモールド法にて製造することが可能となる。また、複数のスリーブ部9を一体とした一体型樹脂製スリーブ10とすることにより、複数のスリーブ部9を容易に、対応する金属製ソケット電極端子8に嵌合することができる。
【0051】
また、(c)スリーブ部9を圧入する工程において、金属製ソケット電極端子8の上面が、スリーブ部9の上面よりも下に位置するように、スリーブ部9を金属製ソケット電極端子8に圧入する。これにより、金型の型締め工程において金属製ソケット電極端子8が損傷することがない。
【0052】
また、(b)一体型樹脂製スリーブ10を設置する工程では、線膨張係数がモールド樹脂と電極端子の中間である一体型樹脂製スリーブ10を用いる。これにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0053】
<効果>
本実施の形態の電力用半導体装置では、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、実施の形態1の電力用半導体装置は、絶縁基板1と、絶縁基板1上面に形成された回路パターン6と、回路パターン6上に形成された電力用半導体7と、回路パターン6又は電力用半導体7上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子(金属製ソケット電極端子8)と、複数の金属製ソケット電極端子8にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部9が一体となった一体型樹脂製スリーブ10と、絶縁基板1、回路パターン6、電力用半導体7、金属製ソケット電極端子8、一体型樹脂製スリーブ10を覆う封止樹脂16と、を備える。金型の型締め工程において一体型樹脂製スリーブ10が必要に応じて、キャビティ19内部の寸法に合わせて金属製ソケット電極端子8に圧入されるため、絶縁基板1、金属製ソケット電極端子8、はんだ4の厚さを厳しくコントロールする必要がない。よって、本構造を採用することにより、電極端子が上出し構造の電力用半導体装置を製造するにあたって、厳密に製造工程を管理することによる製造コストの増加や歩留り低下を回避することができる。また、複数のスリーブ部9を一体とした一体型樹脂製スリーブ10とすることにより、複数のスリーブ部9を容易に、対応する金属製ソケット電極端子8に嵌合することができる。
【0054】
また、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9の上面は、モールド樹脂16から露出している特徴とする。これにより、モールド樹脂16がスリーブ部9又は金属製ソケット電極端子8へ侵入することがない。
【0055】
さらに、絶縁基板1は多層構造であってその最下層は金属製のベース板であり、ベース板の背面がモールド樹脂16から露出していることを特徴とする。これにより、電力用半導体7等の放熱が促進される。
【0056】
また、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8と嵌合する端部はテーパ形状であることを特徴とする。これにより、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8への挿入性が向上する。
【0057】
さらに、一体型樹脂製スリーブ10は、2種類以上の異なる内径をもつスリーブ部9を有することを特徴とする。これにより、信号用や主端子用等、外径が異なる金属製ソケット電極端子の両方と嵌合することが出来る。
【0058】
また、スリーブ部9は、内壁に周上の突起を有することを特徴とする。これにより、金属製ソケット電極端子8との嵌合がより強固になる。
【0059】
さらに、一体型樹脂製スリーブ10は、PPS、PPT、PBT、PET、ナイロン、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はガラス繊維によりそれらを補強した樹脂で形成されることを特徴とする。これらの材料によって一体型樹脂製スリーブ10の線膨張係数をモールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の中間にすることにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0060】
また、スリーブ部9は内部形状が円筒状であることを特徴とする。これにより、円筒状の金属製ソケット電極端子8に嵌合することが可能になる。
【0061】
あるいは、スリーブ部9は内部形状が角筒状であることを特徴とする。これにより、角筒状の金属製ソケット電極端子8に嵌合することが可能になる。
【0062】
また、一体型樹脂製スリーブ10は、複数のスリーブ部9を結合する棒状のランナー部11を有することを特徴とする。これにより、フレキシブルな一体型樹脂製スリーブ10が得られる。
【0063】
さらに、ランナー部11は封止樹脂(モールド樹脂16)中に埋没することを特徴とする。これにより、スリーブ部9とモールド樹脂16の接着性が向上し、スリーブ部9と金属製ソケット電極端子8の嵌合強度が向上する。
【0064】
また、一体型樹脂製スリーブ10の線膨張係数は、モールド樹脂16の線膨張係数と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数との中間であることを特徴とする。これにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0065】
さらに、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は、電極端子(金属製ソケット電極端子8)の上面がスリーブ部9の上面より下に位置するように、金属製ソケット電極端子8に嵌合されることを特徴とする。これにより、金型を型締めした際に、絶縁基板1や金属製ソケット電極端子8等の電力半導体装置の構成部材が損傷することはない。
【0066】
また、実施の形態1の電力用半導体装置は、スリーブ部9の開口部から金属製ソケット電極端子8に向けて挿入、圧着される外部端子を備える。本実施の形態では、このようにして金属製ソケット電極端子8に外部端子を接続することが可能である。
【0067】
また、絶縁基板1は、ベース板2と、回路パターン6が形成されたセラミック基板3で構成されることを特徴とする。このような構成によっても、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずに、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。
【0068】
さらに、電力用半導体7はシリコンカーバイド(SiC)から形成されることを特徴とする。このような構成によっても、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずに、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。
【0069】
本実施の形態に係る電力用半導体装置の製造方法では、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、実施の形態1に係る電力用半導体装置の製造方法は、(a)絶縁基板1と、絶縁基板1上面に形成された回路パターン6と、回路パターン6上に形成された電力用半導体7と、回路パターン6又は電力用半導体7上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子8と、を備える樹脂封止前の電力用半導体装置を準備する工程と、(b)複数の電極端子8の各々に対応して配設され且つ両端に開口部を有する複数のスリーブ部9が一体となった一体型樹脂製スリーブ10を、各スリーブ部9が各電極端子(金属製ソケット電極端子8)に嵌合するよう設置する工程と、(c)金型17,18の型締めを行うことにより一体型樹脂製スリーブ10に下方向の力を加え、スリーブ部9を金属製ソケット電極端子8に圧入する工程と、(d)スリーブ部9の上面が金型17の内壁に接した状態で、金型17,18内の空洞(キャビティ19)にモールド樹脂16を充填する工程と、(e)モールド樹脂16が硬化した後金型17,18を外す工程と、を備える。これにより、金型の型締め工程において一体型樹脂製スリーブ10が必要に応じて、キャビティ19内部の寸法に合わせて金属製ソケット電極端子8に圧入されるため、絶縁基板1、金属製ソケット電極端子8、はんだ4の厚さを厳しくコントロールする必要がない。よって、本構造を採用することにより、電極端子が上出し構造の電力用半導体装置を製造するにあたって、厳密に製造工程を管理することによる製造コストの増加や歩留り低下を回避することができる。また、複数のスリーブ部9を一体とした一体型樹脂製スリーブ10とすることにより、複数のスリーブ部9を容易に、対応する金属製ソケット電極端子8に嵌合することができる。
【0070】
また、(c)スリーブ部9を圧入する工程において、金属製ソケット電極端子8の上面が、スリーブ部9の上面よりも下に位置するように、スリーブ部9を金属製ソケット電極端子8に圧入する。これにより、金型の型締め工程において金属製ソケット電極端子8が損傷することがない。
【0071】
さらに、(b)一体型樹脂製スリーブ10を設置する工程では、線膨張係数がモールド樹脂と電極端子の中間である一体型樹脂製スリーブ10を用いる。これにより、モールド樹脂16と金属製ソケット電極端子8の線膨張係数の差に起因して温度サイクルで電力半導体装置内に生じる応力を緩和することができる。
【0072】
(実施の形態2)
<構成>
図10は、実施の形態2の電力用半導体装置の構成を示す断面図である。図1に示した実施の形態1と同様の構成要素には同一の番号を付している。実施の形態2の電力用半導体装置では、一体型樹脂製スリーブ10の構造が実施の形態1の電力用半導体装置とは異なる。実施の形態1では棒状のランナー部11がスリーブ部9を連結していたが、実施の形態2では、図11に示すように、樹脂平板12に複数個のスリーブ部9が形成されることによって一体型樹脂製スリーブ10となる。これ以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0073】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10は、樹脂平板12に複数のスリーブ部9が形成された構造であることを特徴とする。これにより、複数のスリーブ部9の相対位置を正確に定めることができ、対応する金属製ソケット電極端子8に位置ずれなく嵌合することができる。
【0074】
また、樹脂平板12で形成された一致型樹脂性スリーブ10の絶縁基板1と反対側の面は、モールド樹脂16から露出する。
【0075】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の上面はモールド樹脂16から露出する。これにより、樹脂平板12の上面に凹凸状の溝を設けた場合、製造工程にて当該溝内にモールド樹脂16が侵入することを防ぐことが出来る。
【0076】
図11に示した一体型樹脂製スリーブ10の形状は一例であり、他に様々な変形例が考えられる。例えば、図12は、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8と嵌合する部位側にテーパを施した一体型樹脂製スリーブ10の断面図である。これにより、スリーブ部9の金属製ソケット電極端子8への嵌合性能が向上する。
【0077】
また、図13に示すように、樹脂平板12のスリーブ部9以外の絶縁基板1と対向する面に凹凸状の溝を設けても良い。
【0078】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12において、スリーブ部9以外の絶縁基板1と対向する面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。これにより、モールド樹脂16と一体型樹脂製スリーブ10の接着性が向上する。また、仮に、一体型樹脂製スリーブ10がモールド樹脂16界面で剥離したとしても、凹凸状の溝により金属製ソケット電極端子8間のモールド樹脂16上の沿面距離が長くなり沿面放電を防ぐことができる。よって、金属製ソケット電極端子8をモールド樹脂16表面に対し高密度にレイアウトすることができ、電力用半導体装置の小型化が可能になる。
【0079】
図14は、樹脂平板12の側面に凹凸状の溝が設けられている一体型樹脂製スリーブ10の断面図である。
【0080】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の側面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。これにより、一体型樹脂製スリーブ10とモールド樹脂16の接着性が向上する。
【0081】
図15は、モールド樹脂16表面から露出した樹脂平板12の上面に凹凸状の溝が設けられた、一体型樹脂製スリーブ10の断面図であり、図16はその鳥瞰図である。
【0082】
すなわち、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の上面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。樹脂平板12に形成された凹凸状の溝により、金属製ソケット電極端子8間の樹脂平板12上の沿面距離を長くなり沿面放電を防ぐことができる。よって、金属製ソケット電極端子8をモールド樹脂16表面に対し高密度にレイアウトすることができ、電力用半導体装置の小型化が可能になる。
【0083】
<製造工程>
実施の形態2の電力用半導体装置の製造工程について説明する。
【0084】
まず、ベース基板1上に回路パターン6が施されたセラミック基板3をはんだ4で接合する。そして、セラミック基板3の回路パターン6上に電力用半導体7を形成する。次に、回路パターン6又は電力用半導体7上に金属製ソケット電極端子8を形成する。金属製ソケット電極端子8はセラミック基板3に対して垂直な方向に伸張するよう形成する。そして、アルミワイヤ22で電力用半導体7間や回路パターンと電力用半導体の間にワイヤボンディングを行う。この状態の電力用半導体装置が図18に示される。
【0085】
次に、金属製ソケット電極端子8に対して一体型樹脂製スリーブ10をセットする(図19)。一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9が金属製ソケット電極端子8に嵌合するが、嵌合は後工程の金型の型締めにおいて行うため、この段階では仮留めである。
【0086】
そして、この状態の半完成品の電力用半導体装置を、上金型17と下金型18で形成される空洞、すなわちキャビティ19(図21参照)内に設置し、金型の型締めを行う(図20)。この際、ベース板2の裏面は下金型18の内壁と接している。ここで、金属製ソケット電極端子8の上部端からベース板2までの距離は、キャビティ19内部の縦方向距離よりも小さい。上金型17、下金型18の型締め工程により一体型樹脂製スリーブ10は下方向に押下され、スリーブ部9はそれぞれ金属製ソケット8と嵌合する。スリーブ部9は例えば筒状であり、金属製ソケット電極端子8の長手方向に圧入嵌合される。
【0087】
図21は、上金型17と下金型18とで電力半導体装置が型締めされた状態を示す図である。一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は金属製ソケット電極端子8に圧入嵌合されており、その上面が上金型17の内壁と接触していると同時に、ベース板2の背面は下金型18の内壁と接触している。
【0088】
図17は、樹脂平板12で形成された一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9が対応する金属製ソケット電極端子8に嵌合され、トランスファーモールド法でモールド樹脂16により封止された部位の拡大図である。ベース板2背面からスリーブ部9上面までの距離は、ベース板2背面から金属製ソケット電極端子8の先端までの距離より長い。換言すれば、一体型樹脂製スリーブ10のスリーブ部9は、金属製ソケット電極端子8単体の長手方向の長さより金属製ソケット電極端子8底部からスリーブ部9上部までの長さのほうが長くなるように、金属製ソケット電極端子8に嵌合される。これにより、金型を型締めした際に、絶縁基板1や金属製ソケット電極端子8等の電力半導体装置の構成部材が損傷することはない。さらに、金属製ソケット電極端子8上部が半導体装置内部に陥没している本構造をとることにより、金属製ソケット電極端子8間の沿面距離が当該陥没している深さ分だけ長くなり、電力用半導体装置の小型化に有利となる。なお、本効果は、実施の形態1で採用したランナー部11でスレッド部9を連結する構造の一体型樹脂製スリーブ10においても実現する。
【0089】
次に、上述の接触を保った状態でキャビティ19内にモールド樹脂16を加圧充填し、モールド樹脂16の加熱硬化を行う。モールド樹脂16が硬化すると、金型を外し、必要なら後硬化処理を施す。以上により、本実施の形態の電力用半導体装置が形成される。
【0090】
<効果>
本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の電力用半導体装置に加え、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、一体型樹脂製スリーブ10は、樹脂平板12に複数のスリーブ部9が形成された構造であることを特徴とする。これにより、複数のスリーブ部9の相対位置を正確に定めることができ、対応する金属製ソケット電極端子8に位置ずれなく嵌合することができる。
【0091】
また、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の上面はモールド樹脂16から露出する。これにより、樹脂平板12の上面に凹凸状の溝を設けた場合、製造工程にて当該溝内にモールド樹脂16が侵入することを防ぐことが出来る。
【0092】
さらに、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12において、スリーブ部9以外の絶縁基板1と対向する面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。これにより、モールド樹脂16と一体型樹脂製スリーブ10の接着性が向上する。また、仮に、一体型樹脂製スリーブ10がモールド樹脂16界面で剥離したとしても、凹凸状の溝により金属製ソケット電極端子8間のモールド樹脂16上の沿面距離が長くなり沿面放電を防ぐことができる。よって、金属製ソケット電極端子8をモールド樹脂16表面に対し高密度にレイアウトすることができ、電力用半導体装置の小型化が可能になる。
【0093】
また、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の側面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。これにより、一体型樹脂製スリーブ10とモールド樹脂16の接着性が向上する。
【0094】
さらに、一体型樹脂製スリーブ10の樹脂平板12の上面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする。樹脂平板12に形成された凹凸状の溝により、金属製ソケット電極端子8間の樹脂平板12上の沿面距離を長くなり沿面放電を防ぐことができる。よって、金属製ソケット電極端子8をモールド樹脂16表面に対し高密度にレイアウトすることができ、電力用半導体装置の小型化が可能になる。
【0095】
(実施の形態3)
<構成>
図22は、実施の形態3の電力用半導体装置の構成を示す断面図である。図1に示した実施の形態1と同様の構成要素には同一の番号を付している。実施の形態3の電力用半導体装置は、実施の形態1の電力用半導体装置で用いたセラミック基板3の代わりに、絶縁性熱伝導シート5を用いるものである。ベース板2と回路パターン6を、絶縁性熱伝導シート5を介して一体化する。これ以外の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
<効果>
実施の形態3の電力用半導体装置において、絶縁基板1は、ベース板2と回路パターン6が形成された絶縁性熱伝導シート5で構成されることを特徴とする。このような構成によっても、実施の形態1と同様に、内部部品や金型の寸法を厳しく管理せずとも、電極上出し構造の電力用半導体装置を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 絶縁基板、2 ベース板、3 セラミック基板、4 はんだ、5 絶縁性熱伝導シート、6 回路パターン部、7 電力用半導体、8 金属製ソケット電極端子、9 スリーブ部、10 一体型樹脂製スリーブ、11 ランナー部、12 樹脂平板、16 モールド樹脂、17 上金型、18 下金型、19 キャビティ、22 ワイヤーボンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上面に形成された回路パターンと、
前記回路パターン上に形成された電力用半導体と、
前記回路パターン又は前記電力用半導体上に直立して形成され、外部端子と導通する複数の電極端子と、
複数の前記電極端子にそれぞれ上部から嵌合する両端が開口した複数のスリーブ部が一体となった一体型樹脂製スリーブと、
前記絶縁基板、前記回路パターン、前記電力用半導体、前記電極端子、前記一体型樹脂製スリーブを覆う封止樹脂と、を備え、
前記一体型樹脂製スリーブは、樹脂平板に複数の前記スリーブ部が形成された構造であることを特徴とする、
電力用半導体装置。
【請求項2】
前記一体型樹脂製スリーブの前記樹脂平板の上面は前記封止樹脂から露出することを特徴とする、請求項1に記載の電力用半導体装置。
【請求項3】
前記一体型樹脂製スリーブの前記樹脂平板において、前記スリーブ部以外の前記絶縁基板と対向する面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力用半導体装置。
【請求項4】
前記一体型樹脂製スリーブの前記樹脂平板の側面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電力用半導体装置。
【請求項5】
前記一体型樹脂製スリーブの前記樹脂平板の上面に凹凸状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電力用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−30792(P2013−30792A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207710(P2012−207710)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2009−196228(P2009−196228)の分割
【原出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】