説明

電動パワーステアリング装置

【課題】パワーステアリング構成物、若しくは車両前部構成物等の機械系の共振周波数成分に基づく振動、若しくは騒音の発生をも抑制し得る電動パワーステアリング制御装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、運転者の操舵トルクを補助するアシストトルク10を発生させる制御装置と、トルクセンサ23に内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分を除去し得る共振周波数帯除去手段40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動式パワーステアリング制御装置に関し、特に、自動車等の車両に搭載される電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、自動車等の車両の運転者がハンドル即ちステアリングホイールに加える操舵トルクに応じてモータを駆動し、そのモータの駆動トルクをアシストトルクとしてステアリング機構に付加して操舵輪を駆動するようにしたものである。
【0003】
周知のように、電動パワーステアリング装置には、運転者による操舵トルクを検出するトルクセンサが設けられるが、トルクセンサにはバネ要素とハンドル慣性による共振系が含まれる。従って、トルクセンサの出力に基づいてモータを制御するモータ制御系の制御ゲインを高くすると、トルクセンサの共振系による振動、若しくは騒音が発生する。一方、モータ制御系の制御ゲインを低くすると、必要なアシストトルクが得られなくなる恐れがある。電動パワーステアリング装置に於いて、振動若しくは騒音が発生することは電動パワーステアリング装置の商品価値を著しく低下させることになる。
【0004】
従来、トルクセンサに含まれるバネ要素とハンドル慣性による共振系の共振周波数成分の信号を除去するためにフィルタを設け、トルクセンサの共振系の共振による振動、若しくは騒音を抑制するようにした電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、従来、トルクセンサに含まれるバネ要素とハンドル慣性に加えて、モータ慣性を考慮し、これ等から成る共振系の共振周波数成分の信号を除去するフィルタを設けることにより共振周波数成分の信号をより確実に除去し、制御ゲインを高くしてアシストトルクを増加させることができる電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−164665号公報
【特許文献2】特開平6−183355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、トルクセンサに含まれるバネ要素にともなう共振系の共振周波数は、10〜30[Hz]であり、特許文献1及び特許文献2に示された従来の電動パワーステアリング装置に設けられる前述のフィルタは、前述の共振周波数成分の信号を除去するように構成されている。しかしながら、例えば、コラム、ラック等のパワーステアリング装置の構成物、更には、車両前部構成物の機械共振周波数成分は、トルクセンサに含まれるバネ要素等から成る共振系の共振周波数成分とは異なり、50[Hz]以上の一般には複数の共振周波数成分である。従って、前述の従来の電動パワーステアリング装置に設けられているフィルタによれば、50[Hz]以上の特定の共振周波数に対する減衰率が不足しており、パワーステアリング構成物、若しくは車両前部構成物の機械共振による振動、若しくは騒音が発生することがあり、電動パワーステアリング装置の商品性を大きく損なう可能性がある。
【0008】
一方、従来の電動パワーステアリング装置に於いて、高い周波数のノイズ等を除去するためにローパスフィルタ、若しくはそれに準じる構成で高周波成分を除去するように構成されている。しかしながら、機械共振は周波数帯域は狭いもののゲインが高い。機械共振系の共振による騒音や振動を抑制するために、ローパスフィルタ、若しくはそれに準じる手段の減衰率を上げると、電動パワーステアリング装置全体の安定性が損なわれ、別の振動が発生する恐れがある。
【0009】
この発明は、従来の電動パワーステアリング装置に於ける前述のような課題を解決するためになされたものであり、パワーステアリング構成物、若しくは車両前部構成物等の機械系の共振周波数成分に基づく振動、若しくは騒音の発生を抑制し得る電動パワーステアリング制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による電動パワーステアリング装置は、運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させる電動パワーステアリング装置であって、前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分を除去し得る共振周波数帯除去手段を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分を除去し得る共振周波数帯除去手段を備えているので、パワーステアリング構成物、若しくは車両前部構成物等の機械系の共振周波数成分に基づく振動、若しくは騒音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の制御系の構成の変形例を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の周波数特性を示す特性図である。
【図5】この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段とローパスフィルタとの周波数特性を比較する説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段と二次ローパスフィルタとの組合せの周波数特性を示す特性図である。
【0013】
【図7】この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態5による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態6による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態7による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る代表的な電動式パワーステアリング制御装置系の全体構成である。以下、電動パワーステアリング装置を図に基づいて説明する。図1に於いて、電動パワーステアリング装置は、ハンドル1からステアリング軸2に伝達される運転者による操舵トルク9と、ステアリング軸2に付加されるモータ5によるアシストトルク10とを加算し、その加算したトルクを、ステアリングギアボックス3を介してラック・アンド・ピニオン機構6を通してトルクを操舵輪であるタイヤ7に伝達して車両の操舵を行うように構成されている。
【0015】
ステアリング軸2に設けられたトルクセンサ4は、ハンドル1に加えられた運転者による操舵トルク9を検出し、その検出した操舵トルク9に対応する操舵トルク検出信号11を出力する。電子制御装置(ECU)により構成された制御装置8には、トルクセンサ4からの操舵トルク検出信号11と、モータ電流検出器により検出されたモータ5の状態量である電流検出信号13と、電圧検出器により検出されたモータ5の状態量である電圧検出信号14と、車速検出器により検出された車速に対応する車速検出信号等とが入力される。
【0016】
制御装置8は、入力された操舵トルク検出信号11と、車速検出信号等とに基づいて、モータ5がステアリング軸2に付加すべきアシストトルク10を発生させるためのモータ5を制御する指令値としての電流目標値を演算し、この演算した電流目標値、及び電流検出信号13等に基づいた印加電圧12をモータに与えてこれを駆動する。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図である。図2に於いて、車速検出器22は、車速センサが検出した車速に対応する車速検出信号221を発生し、この車速検出信号221を目標電流演算補償器25に入力する。操舵トルク検出器23は、前述のトルクセンサ4が検出した操舵トルク11に対応する操舵トルク検出信号231を発生し、この操舵トルク検出信号231を目標電流演算補償器25に入力する。モータ速度検出器24は、検出したモータ5の速度に対応するモータ速度信号241を発生し、このモータ速度信号241を目標電流演算補償器25に入力する。
【0018】
目標電流演算補償器25は、車速検出器22から入力された車速検出信号221と、操舵トルク検出器23から入力された操舵トルク検出信号231と、モータ速度検出器24から入力されたモータ速度検出信号241等とを用いて、モータ5に対する目標電流を演算し、その演算した電流目標値251を後述する共振周波数帯除去手段40に入力する。
【0019】
減算器26は、共振周波数帯除去手段40から入力された共振周波数帯除去後電流目標値421から、モータ電流検出器28から出力された電流検出信号13を減算し、その偏差をモータ電流指令値偏差261としてモータ駆動機27に入力する。モータ駆動機27は、演算されたモータ電流指令値421にモータ電流が一致するようにモータ29を駆動する。モータ5は、モータ電流指令値偏差261等に基づいてモータ駆動機27により駆動され、所望のアシストトルク10を発生してステアリング軸2に付加する。
【0020】
電流目標値251の算出について説明する。目標電演算補償器25は、アシストマップ300を備えたアシストマップ補償器31と、ダンピング補償器32と、モータ速度信号をモータ加速度信号に変換する加速度変換器33と、慣性補償器34と、加算器35等を備える。アシストマップは、操舵トルクとモータ電流即ちアシスト電流とからなるマップであり、車速によりそのマップ値が変更されるように構成されている。ダンピング補償器は、運転者がハンドルを手放した時の安定性を確保する。慣性補償器は、急操舵時に於いて慣性の影響でハンドルが重くなるのを防止しハンドルの軽さを確保するものである。又
、その他の補償があってもよく、上述の補償制御の一部がなくとも本発明内容は成立する。
【0021】
目標電流演算補償器25に於いて、その出力である電流目標値251の算出について説明する。目標電流演算補償器25による代表的な補償制御としては、概要的に述べれば、アシストマップ補償器31は、トルクセンサ4により検出した操舵トルク検出信号231に基づいて、補償トルクを発生するに必要なアシスト電流をアシストマップ300から抽出し、アシストマップ補償電流値311として出力する。
【0022】
次に、電流目標値251の算出について詳細に述べる。先ず、操舵トルク検出信号231は、アシストマップ補償器31に入力される。加算器35では、アシストマップ補償電流値311と、ダンピング補償器32から出力されたダンピング補償電流値321と、慣性補償器34から出力された慣性補償電流値341とを加算し、その加算結果を電流目標値251として出力する。尚、ダンピング補償器32、慣性補償器34、加速度変換機33等による補償の詳細については、ここでは説明を省略する。
【0023】
図2に示す車速検出器22、操舵トルク検出器23、モータ速度検出器24、目標電流演算補償器25、共振周波数帯除去手段40、減算器26、モータ電流検出器28、モータ駆動機27は、前述の制御装置8内に設けられている。
【0024】
前述の共振周波数帯除去手段40は、図2で示した以外の箇所に挿入しても効果を発揮する。たとえば、図3に共振周波数除去手段の挿入箇所例について示す。図3は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の構成の変形例を示すブロック図である。図3は、図2に対して、共振周波数除去手段の4箇所の挿入例を図示し、その他の補償器91を追加して図示している。
【0025】
尚、以下の説明に於いて、第1の共振周波数帯除去手段41、第2の共振周波数帯除去手段42、第3の共振周波数帯除去手段43、及び第4の共振周波数帯除去手段44に共通の項目説明する場合は、これらを総称して、単に、共振周波数帯除去手段と称する。共振周波数除去手段は、第1の共振周波数帯除去手段41、第2の共振周波数帯除去手段42、第3の共振周波数帯除去手段43、及び第4の共振周波数帯除去手段44に代表される操舵トルク入力からアシストトルク出力の間のいずれか1箇所以上に挿入されることで効果を発揮する。
【0026】
第1の共振周波数帯除去手段41、第3の共振周波数帯除去手段43に配置した場合は、入力信号に含まれる機械系共振を誘発する周波数帯を除去することによって、出力に該当周波数成分が含まれないようにすることが出来る。第2の共振周波数帯除去手段42、及び第4の共振周波数帯除去手段44に配置した場合は、出力電流、もしくはトルクの指令値の該当周波数帯を除去することで、出力に該当周波数成分が含まれないようにすることが出来る。
【0027】
また、第1の共振周波数帯除去手段41もしくは第2の共振周波数帯除去手段42に配置した場合は、目標電流演算補償器25に含まれるすべての補償器に影響を及ぼす。第3の共振周波数帯除去手段43もしくは及び第4の共振周波数帯除去手段44に配置した場合は、一般的な電動パワーステアリング装置では補償制御のうちでもっとも支配的なアシストマップ補償電流値に影響を及ぼす。
【0028】
もちろん、アシストマップ補償電流以外の補償電流に個別に選択して共振周波数帯除去手段を適用してもよい。たとえば、すべての補償電流値の共振周波数帯の信号を除去する場合、かつ、出力側に配置する場合は、第4の共振周波数帯除去手段44に配置すること
になり、図2の構成となる。この実施の形態1に於いては、共振周波数帯除去手段は、双二次フィルタである。
【0029】
図4は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の周波数特性を示す特性図の例である。次に示す式(1)双二次フィルタの特性を表している。
【数1】

・・・・・式(1)
ここで、
【数2】

且つ、
【数3】

且つ、
1n=f2n
である。
【0030】
尚、
1n、f2n:中心周波数
【数4】

である。
【0031】
図4に於いて、細い実線で示す特性は、
【数5】

の場合を示し、太い実線で示す特性は、
【数6】

の場合を示す。
【0032】
式(1)による双二次フィルタによれば、図4に示すように中心周波数f1n(=f2n)を中心として対称なゲイン特性のフィルタ特性を得ることができる。
【0033】
双二次フィルタをm段直列に接続することで、m個の共振周波数帯の出力を抑制することができる。例えば、1.6[kHz]、1.3[kHz]、800[Hz]、500[Hz]、200[Hz]等、複数の機械共振系の共振周波数帯の出力を除去し機械共振を抑制する必要があれば、中心周波数f1n(=f2n)を前述の各共振周波数帯に設定した5個の双二次フィルタを直列接続することで、これらの各共振周波数帯の出力を除去し機械共振を抑制することができる。
【0034】
又、前述のように、f1n=f2nである場合は、後述するf12≠f2nの場合に比べて、演算負荷を低減することができる。
【0035】
次に、共振周波数帯除去手段を構成する双二次フィルタの変形例について説明する。前述の式(1)に示す特性式に於いて、f12≠f2nとする。この場合には中心周波数f1nに対して高い中心周波数f2n、若しくは中心周波数f1nに対して低い中心周波数f2nを設定して、ゲインの異なる特性を得ることが出来る。
【0036】
又、双二次フィルタより高周波側のゲインがもともと十分低い場合は、f1n<f2nとして、高周波側のゲインを上げることで位相の遅れを小さくできる。又、後述するローパスフィルタと組合せる場合には上げたゲインをローパスフィルタで相殺することができる等、設計自由度を大きくすることができる。
【0037】
又、逆に高周波側のゲインを低減したい場合には、f1n>f2nと設定することで、高周波側のゲインを低減することができる。
【0038】
更に、前述の式(1)に於いて、特に、f1n=f2n、且つ
【数7】

とした場合は、以下に示す式(2)となる。
【数8】

・・・・・式(2)

ここで、
【数9】

である。
【0039】
式(2)の場合に於ける双二次フィルタの特性は、図4に太い実線にて示す特性を備え、図4から明らかなように、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ、若しくはノッチフィルタフィルタとしての特性を備える。この場合は、細い実線で示す前述の式(1)の特性に比べて、中心周波数でのゲインの減衰量を最大にすることが出来る。
【0040】
通常、ローパスフィルタに比べ、この実施の形態1に用いた周波数帯域除去手段は、バンドカットフィルタ、若しくはノッチフィルタとして動作し、特にゲインの減衰に比べ位相の遅れが小さいため、電動パワーステアリングのシステム安定性への悪影響を少なくすることが出来る。
【0041】
このように、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置によれば、ローパスフィルタよりも位相の遅れ量が小さくなる。
【0042】
図5は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段とローパスフィルタとの周波数特性を比較する説明図である。図5に示すように、双二次フィルタにより構成された共振周波数帯除去手段は、ローパスフィルタに比べゲイン低下が大きく、低い周波数での位相の遅れが小さい特性を有する。
【0043】
尚、前述の説明では、1箇所の共振周波数帯除去手段に1つ以上の共振周波数抑制フィルタが組み込まれている場合を説明したが、さらにローパスフィルタなどを組合せてもよい。たとえば、共振周波数帯の中でも比較的高い周波数のものは、ローパスフィルタを適用するなどしてもよい。
【0044】
また、たとえば、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される2箇所以上の共振周波数帯除去手段を機能を分割して組み込んでも効果を発揮する。又、その2箇所以上の共振周波数帯除去手段内のフィルタは、その除去すべき共振周波数の設定は重複するものであっても良い。
【0045】
以上述べたこの発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置によれば、システムへの機械共振系による振動、若しくは音の発生を抑制することができる。又、車両の運転者が音振動の感じやすい状況か否か、電動パワーステアリング装置の安定性が不足しているか否かにより、除去すべき共振周波数を選択し、その共振周波数を除去する共振周波数除去手段を設けることで、電動パワーステアリング装置の構成を簡単にすることができる。
【0046】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態2は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成について説明する。実施の形態2で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。
【0047】
図6は、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去フィルタと二次ローパスフィルタとの組合せの周波数特性を示す特性図である。実施の形態2では、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ、若しくはノッチフィルタフィルタにより構成されている共振周波数帯除去フィルタと、二次ローパスフィルタ若しくは二次以上のローパスフィルタとを組合せるように
したものである。その他の構成は、前述の実施の形態1の場合と同様である。
【0048】
即ち、図6は、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去フィルタと二次ローパスフィルタとの組合せの周波数特性を示す特性図である。図6に示すように、二次ローパスフィルタは減衰係数によってはオーバーシュート特性を有するが、双二次フィルタにより構成した共振周波数帯除去フィルタの中心周波数とローパスフィルタの特性に於ける折れ点部の周波数とを一致させ、若しくは近い周波数に設定し、この双二次フィルタを二次ローパスフィルタに組み合わせることで、二次ローパスフィルタ若しくは二次以上のローパスフィルタのオーバーシュート特性を抑制することが出来る。なお、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0049】
以上述べたこの発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置によれば、実施の形態1の場合と同様に、システムへの機械共振系による振動、若しくは音の発生を抑制することができる。又、車両の運転者が音振動の感じやすい状況か否か、電動パワーステアリング装置の安定性が不足しているか否かにより、除去すべき共振周波数を選択し、その共振周波数を除去する共振周波数除去手段を設けることで、電動パワーステアリング装置の構成を簡単にすることができる。
【0050】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態3は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成について説明する。実施の形態3で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。実施の形態3では、運転者の操舵状態、若しくは車両の状態に応じ、例えば車両速度、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、共振周波数帯除去手段の数、若しくは効果の度合いを変化させることで、共振周波数帯除去手段を追加したことによる影響を限定するようにしたものである。
【0051】
図7は、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。図7に於いて、共振周波数帯除去手段45は、共振周波数帯除去フィルタ450と、スイッチ手段SWを備える。車速が所定値以下のときには、スイッチ手段SWは図7の下方に接続される。その結果、入力信号451は所望の共振周波数が共振周波数帯除去フィルタ450により除去された共振周波数帯除去され、出力信号452が出力される。
【0052】
一方、車速検出信号221が所定値を越えたときは、スイッチ手段SWは図7の上方に切り替わり、入力信号451は共振周波数帯除去フィルタ450を介することなく直接、入力信号451が出力信号452に出力される。その他の構成は、前述の実施の形態1、又は実施の形態2と同様である。
【0053】
又、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0054】
共振周波数帯除去フィルタ450は、前述の式(1)又は式(2)による特性を備えた双二次フィルタにより構成することができる。尚、車速検出信号221の代わりに、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加
速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、スイッチ手段を切り替えるようにしても良い。
【0055】
また、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0056】
この実施の形態3によれば、車両の走行中、加速中等のようにエンジンの回転が高い場合、周囲の騒音が大きくなる場合、運転者が速く操舵している場合、運転者が音振動を感じ取り難い状況である場合等に応じて、共振周波数帯除去フィルタ450の動作、非動作を切り換えることで、共振周波数帯除去フィルタの動作により発生する影響を限定することができる。
【0057】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態4は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成について説明する。実施の形態4で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。
【0058】
図8は、この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。図8に於いて、共振周波数帯除去手段46は、共振周波数帯除去フィルタ460を備える。この共振周波数帯除去フィルタ460は、前述の式(2)により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成され、図8に示すように車速検出信号221に応じて減衰係数を変化させ得るように構成されている。その他の構成は、前述の実施の形態1、又は実施の形態2と同様である。
【0059】
図8に示すように、共振周波数帯除去フィルタ460は、車速検出信号221に応じて変化させた減衰係数に基づいて共振周波数帯除去フィルタ460の特性を変化させる。入力信号461は共振周波数帯除去フィルタ460により所望の共振周波数信号が除去され、出力信号462として共振周波数帯除去フィルタ460から出力される。
【0060】
尚、車速検出信号221の代わりに、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、共振周波数帯除去フィルタ460の減衰係数を変化させ得るようにしても良い。
【0061】
又、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0062】
この実施の形態4によれば、車両の走行中、加速中等のようにエンジンの回転が高い場合等、周囲の騒音が大きくなる場合、運転者が速く操舵している場合、運転者が音振動を感じ取り難い状況である場合等に応じて、共振周波数帯除去フィルタ460の減衰係数を変化させて減衰特性を変更した出力信号461を発生させ、共振周波数帯除去フィルタ460を追加したことによる影響を限定することができる。
【0063】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態5は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成につい
て説明する。実施の形態5で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。実施の形態5は、アシストトルク、もしくは入出力ゲインが小さい場合には周波数除去手段の効果を小さくすることにより共振周波数帯除去フィルタの動作により発生する影響を限定することができる。
【0064】
図9は、この発明の実施の形態5による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。図9に於いて、共振周波数帯除去手段47は、共振周波数帯除去フィルタ470を備える。この共振周波数帯除去フィルタ470は、前述の式(2)により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成されている。その他の構成は、前述の実施の形態1、又は実施の形態2と同様である。
【0065】
図9に示すように、共振周波数帯除去フィルタ470は、車速検出信号221に応じて変化させた減衰係数と電流目標値251に応じて変化させた係数とを乗算器473により乗算し、その乗算結果に基づいて共振周波数帯除去フィルタ470の特性を変化させる。入力信号471は共振周波数帯除去フィルタ470により所望の共振周波数信号が除去され、出力信号472として共振周波数帯除去フィルタ470から出力される。
【0066】
尚、車速の代わりに、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、双二次フィルタ470の減衰係数を変化させ得るようにしても良い。
【0067】
また、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0068】
この実施の形態5によれば、電動パワーステアリング装置の出力が小さい場合には、フィルタの効果を小さくして、共振周波数帯除去フィルタ470を追加したことによる影響を限定することができる。
【0069】
実施の形態6.
次に、この発明の実施の形態6による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態6は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成について説明する。実施の形態6で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。
【0070】
この実施の形態6では、電動パワーステアリング装置の入出力ゲインが小さい場合は、場合には周波数除去手段の効果を小さくすることにより共振周波数帯除去フィルタの動作により発生する影響を限定し、加えて、安定性が低い状態、例えば、電動パワーステアリング装置の入出力ゲインが高すぎる場合等に於いて、共振周波数帯除去手段による位相遅れ等の安定性への影響を限定するようにしたものである。
【0071】
図10は、この発明の実施の形態6による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。図10に於いて、共振周波数帯除去手段48は、共振周波数帯除去フィルタ480と、入出力ゲイン演算手段484を備える。共振周波数帯除去フィルタ480は、前述の式(2)により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成されている。入出力ゲイン演算手段484は、操舵トルク検出信号231と、前述のアシストマップ補償器の制御パラメータ483等補償制御のパラメータ、車速検出信号221と、電流目標値251とに基づいて、電動パワーステアリング装置の入
出力ゲイン4841を演算し出力する。その他の構成は、前述の実施の形態1、又は実施の形態2と同様である。尚、一般的な電動パワーステアリングシステムはアシストマップ補償の設定値によるゲインがシステム上支配的だが他の補償器を含めることで精度が向上する。
【0072】
入出力ゲイン演算手段484から出力された入出力ゲイン4841が、電動パワーステアリング装置の動作の安定性を考慮しなくても良い領域Xにあるときは、共振周波数帯除去フィルタ480の減衰係数は、入出力ゲインの値に応じて大きくなるように調整される。一方、入出力ゲイン演算手段482から出力された入出力ゲイン4841が、電動パワーステアリング装置の動作の安定性の低下を招く恐れのある領域Yにあるときは、共振周波数帯除去フィルタ480の減衰係数は、入出力ゲインの値に応じて小さくなるように調整される。
【0073】
もちろん、領域Xのみ、もしくは、Yのみで適用してもよい。
なお、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0074】
実施の形態6によれば、電動パワーステアリング装置の安定性が低い状態、例えば、電動パワーステアリング装置の入出力ゲインが高すぎる場合等に於いて、共振周波数帯除去手段により発生する影響を限定することができる。
【0075】
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態7は、共振周波数帯除去手段の内部の共振周波数除去フィルタ等の構成について説明する。実施の形態7で説明する共振周波数帯除去手段は、図2もしくは、図3に示される、第1〜4の共振周波数帯除去手段41〜44に代表される入力から出力の間の少なくとも1箇所以上に実装される。この実施の形態7は、電動パワーステアリング装置の入出力ゲインと位相の関係から、安定性が低下している場合には、フィルタの効果を小さくして、共振周波数帯除去手段による位相遅れ等の安定性への悪影響を少なくするようにしたものである。
【0076】
図11は、この発明の実施の形態7による電動パワーステアリング装置に於ける共振周波数帯除去手段の構成を示すブロック図である。図11に於いて、共振周波数帯除去手段49は、共振周波数帯除去フィルタ490と、入出力ゲイン/位相演算手段494と、乗算器495、496とを備える。共振周波数帯除去フィルタ490は、前述の式(2)により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成されている。
【0077】
入出力ゲイン/位相演算手段494は、操舵トルク検出信号231と、前述のアシストマップ補償器の制御パラメータ493等補償制御のパラメータ、車速検出信号221と、電流目標値251とに基づいて、電動パワーステアリング装置の入出力ゲイン4941及び入出力位相遅れ量4942を演算し出力する。その他の構成は、前述の実施の形態1、又は実施の形態2の場合と同様である。尚、一般的な電動パワーステアリングシステムはアシストマップ補償の設定値によるゲインがシステム上支配的だが他の補償器を含めることで精度が向上する。
【0078】
入出力ゲイン演算手段494から出力された入出力ゲイン4941が、電動パワーステアリング装置の動作の安定性を考慮しなくても良い領域Xにあるときは、共振周波数帯除去フィルタ490の減衰係数は、入出力ゲインの値に応じて大きくなるように調整される。一方、入出力ゲイン演算手段492から出力された入出力ゲイン4921が、電動パワーステアリング装置の動作の安定性の低下を招く恐れのある領域Yにあるときは、共振周波数帯除去フィルタ490の減衰係数は、入出力ゲインの値に応じて小さくなるように調整される。もちろん、領域Xのみ、もしくは、Yのみで適用してもよい。
【0079】
又、入出力ゲイン演算手段494から出力された入出力位相遅れ量4942が大きいときは、電動パワーステアリング装置の動作の安定性が低下していると判断して、共振周波数帯除去フィルタ490の減衰係数を小さくしてフィルタの効果を小さくする。一方、入出力ゲイン演算手段492から出力された入出力位相遅れ量4942が小さいときは、電動パワーステアリング装置の動作が安定していると判断して、共振周波数帯除去フィルタ490の減衰係数を大きくしてフィルタの効果を大きくするように調整される。
【0080】
乗算器496は、車速検出信号221に応じて変化させた減衰係数と、入出力位相遅れ量4922に応じて変化させた係数とを乗算する。乗算器495は、乗算器496による乗算結果と、入出力ゲイン4941に応じて変化された係数とを乗算する。共振周波数帯除去フィルタ490は、乗算器493による乗算結果に基づいて減衰量が調整される。
なお、複数のフィルタが組み合わされている場合に、その一部のみの効果を制限することや、複数のフィルタ毎に異なる効果の制限を行なう方法、或いは、複数のフィルタの効果を組合せてもよい。
【0081】
この実施の形態7によれば、電動パワーステアリング装置の入出力ゲインや位相遅れ量が大きい場合は、安定性が低下しているとし、また車速が高いときなど音を聞取りにくい環境の場合、フィルタの効果を小さくする等して、共振周波数帯除去手段により発生する影響を限定することができる。
【0082】
前述の実施の形態1乃至7は、以下の述べる本願発明を具体化したものである。
(1)運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させる電動パワーステアリング装置であって、
前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分を除去し得る共振周波数帯除去手段を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。(2)前記共振周波数帯除去手段は、前記操舵トルク検出信号もしくはトルク信号成分を含む信号から、前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分の少なくとも一部分を除去するフィルタにより構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(3)前記共振周波数帯除去手段は、前記制御装置から出力される前記アシストトルク指令値、若しくはその一部から、前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分の少なくとも一部分を除去し得るフィルタにより構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(4)前記共振周波数帯除去手段は、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ、若しくはノッチフィルタフィルタにより構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(5)前記共振周波数帯除去手段は、複数の除去周波数帯を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(6)前記共振周波数帯除去手段は、下記の式
【数10】

且つ、
【数11】

且つ、
【数12】

但し、
【数13】

により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(7)前記双二次フィルタは、前記式に於いて、下記の条件

1n=f2n

を満たすように構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
(8)前記双二次フィルタは、前記式に於いて、下記の条件
【数14】

を満たすように構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0083】
又、前述の実施の形態2は、特に、以下の述べる本願発明を具体化したものである。
(9)前記共振周波数帯除去手段は、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ若しくはノッチフィルタフィルタと、二次以上のローパスフィルタとの組合せにより構成され、前記ローパスフィルタの周波数特性に於ける折れ点部の周波数を、前記バンドカットフィルタ若しくはノッチフィルタフィルタの減衰周波数に合わせるように設定したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0084】
更に、前述の実施の形態3乃至7は、特に、以下に述べる本願発明を具体化したものである。
(10)共振周波数帯除去手段は、車両速度、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、前記共振周波数帯除去手段の動作と非動作との間の切り換え、又は、減衰特性を変化させる機能を含むことを特徴とする。
(11)共振周波数帯除去手段は、電動パワーステアリング装置の出力の大きさ、ゲイン、位相のうちの少なくとも一つに基づき、前記共振周波数帯除去手段を動作から非動作もしくは非動作から動作へ切り換える機能と、減衰特性を変化させる機能とのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
(12)共振周波数帯除去手段は、
電動パワーステアリング装置のゲイン、若しくは出力が大きいときには、前記共振周波数帯除去手段を非動作から動作へ切り換えること、及び減衰特性を減衰効果が大きい方向に変化させること、のうちの少なくとも一方を行ない、
前記電動パワーステアリング装置の動作の安定性が不足しているときには、前記共振周波数帯除去手段を動作から非動作へ切り換えること、及び前記共振周波数帯除去手段の減衰特性を減衰効果が小さい方向に変化させること、のうちの少なくとも一方を行なうことを特徴とする。
【符号の説明】
【0085】
1 ハンドル 2 ステアリング軸
3 ステアリングギアボックス 4 トルクセンサ
5、29 モータ 6 ラック・アンド・ピニオン機構
7 タイヤ 8 制御装置
9 操舵トルク 10 アシストトルク
11、231 操舵トルク検出信号 12 印加電圧
13 電流検出信号 14 電圧検出信号
22 車速検出器 23 操舵トルク検出器
24 モータ速度検出器 25 目標電流演算補償器
26 減算器 27 モータ駆動機
28 モータ電流検出器 31 アシストマップ補償器
32 ダンピング補償器 33 加速度変換器
34 慣性補償器 35 加算器
40 共振周波数帯除去手段
41 第1の共振周波数帯除去手段
42 第2の共振周波数帯除去手段
43 第3の共振周波数帯除去手段
44 第4の共振周波数帯除去手段
45、46、47、48、49 共振周波数帯除去手段
473、495、496 乗算器 SW スイッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させる電動パワーステアリング装置であって、
前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分を除去し得る共振周波数帯除去手段を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記共振周波数帯除去手段は、前記操舵トルク検出信号もしくはトルク信号成分を含む信号から、前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分の少なくとも一部分を除去するフィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記共振周波数帯除去手段は、制御装置から出力されるアシストトルク指令値若しくはその一部から、前記トルクセンサに内蔵されるバネ共振系とは異なる構成物の機械共振周波数成分の少なくとも一部分を除去し得るフィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記共振周波数帯除去手段は、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ、若しくはノッチフィルタフィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記共振周波数帯除去手段は、「−20」[dB/Dec]より大きな減衰特性を持つバンドカットフィルタ若しくはノッチフィルタフィルタと、二次以上のローパスフィルタとの組合せにより構成され、前記ローパスフィルタの周波数特性に於ける折れ点部の周波数を、前記バンドカットフィルタ若しくはノッチフィルタフィルタの減衰周波数に合わせるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記共振周波数帯除去手段は、複数の除去周波数帯を有することを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記共振周波数帯除去手段は、下記の式
【数15】

且つ、
【数16】

且つ、
【数17】

但し、
【数18】

により表される特性を備えた双二次フィルタにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記双二次フィルタは、前記式に於いて、下記の条件

1n=f2n

を満たすように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記双二次フィルタは、前記式に於いて、下記の条件
【数19】

を満たすように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
前記共振周波数帯除去手段は、車両速度、車両加速度、操舵トルク、ハンドル操舵速度、ハンドル操舵角加速度、モータ速度、モータ加速度、エンジン回転数のうちの少なくとも一つに基づき、前記共振周波数帯除去手段の動作と非動作との間の切り換え、又は、減衰特性を変化させる機能を含むことを特徴とする請求項1乃至9のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項11】
前記共振周波数帯除去手段は、電動パワーステアリング装置の出力の大きさ、ゲイン、位相のうちの少なくとも一つに基づき、前記共振周波数帯除去手段を動作から非動作もしくは非動作から動作へ切り換える機能と、減衰特性を変化させる機能とのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1乃至10のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項12】
前記共振周波数帯除去手段は、
電動パワーステアリング装置のゲイン、若しくは出力が大きいときには、前記共振周波数帯除去手段を非動作から動作へ切り換えること、及び減衰特性を減衰効果が大きい方向に変化させること、のうちの少なくとも一方を行ない、
前記電動パワーステアリング装置の動作の安定性が不足しているときには、前記共振周波数帯除去手段を動作から非動作へ切り換えること、及び前記共振周波数帯除去手段の減
衰特性を減衰効果が小さい方向に変化させること、のうちの少なくとも一方を行なう
ことを特徴とする請求項1乃至11のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−245896(P2011−245896A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118265(P2010−118265)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】