説明

電動ポンプの取付構造

【課題】電動ポンプの振動が取付対象部材に伝達されることの抑制と、電動ポンプを取付対象部材に取り付ける際の作業性の向上との両立を図る。
【解決手段】電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲した湾曲部材31と湾曲部材31の両端部を連結する連結部材32とによって取付部材30を構成し、湾曲部材31および連結部材32を連結することによって、フリーフロートパッキン40を電動ポンプ20の外周側と取付部材30の内周側との間に狭持した状態で、電動ポンプ20を保持する。これにより、電動ポンプ20の自重あるいは湾曲部材31との嵌合状態を利用して電動ポンプ20を湾曲部材31に仮保持した状態で、湾曲部材31および連結部材32を連結できるので、電動ポンプ20の振動がブラケット10に伝達されることの抑制と、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性の向上との両立を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を吸入して圧送する電動ポンプを取付対象部材に取り付ける取付構造に関し、電動ポンプを車両へ取り付ける際に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、インバータ等に冷却水を循環させる電動ポンプを、車両本体に固定されるポンプブラケットに取り付けるための取付構造が開示されている。この特許文献1の取付構造では、双方の面に複数のスタッドボルトが固定された中間プレートを用いて、一方の面のスタッドボルトに電動ポンプをナットにて締め付け固定し、他方の面のスタッドボルトにポンプブラケットをナットにて締め付け固定している。
【0003】
この際、電動ポンプと中間プレートとの間および中間プレートとポンプブラケットとの間に、ゴム製の防振用ブッシュを介在させて、電動ポンプと中間プレートとを非接触状態とするとともに、中間プレートとポンプブラケットとを非接触状態としている。これにより、電動ポンプにて発生した振動がポンプブラケットを介して、車室内に伝わることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の取付構造では、中間プレートを用いて、電動ポンプをポンプブラケットに取り付けているので、電動ポンプと中間プレートとの取付工程および中間プレートとポンプブラケットとの取付工程の2つの取付工程が必要となり、電動ポンプを取付対象部材に取り付ける際の作業性が悪い。
【0006】
上記点に鑑みて、本発明は、電動ポンプの振動が取付対象部材に伝達されることの抑制と、電動ポンプを取付対象部材に取り付ける際の作業性の向上との両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、流体を吸入して圧送する電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける取付構造であって、
取付対象部材(10)に固定されているとともに、電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置される帯状の取付部材(30)と、電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に配置されて弾性変形可能な弾性部材(40)とを有し、
取付部材(30)は、取付対象部材(10)に固定されて電動ポンプ(20)の外周形状に沿って湾曲した湾曲部材(31)、および湾曲部材(31)の両端部を連結する連結部材(32)から構成され、湾曲部材(31)および連結部材(32)が連結されることによって、取付部材(30)が電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されるとともに、弾性部材(40)が電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に狭持された状態で、電動ポンプ(20)が取付部材(30)の内周側に保持されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、取付対象部材(10)に固定された取付部材(30)を、電動ポンプ(20)の外周側に巻き付けるように環状に連結するだけで、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付けることができる。従って、取付部材(30)を電動ポンプ(20)および取付対象部材(10)の双方に取り付ける場合に対して、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を向上できる。
【0009】
さらに、湾曲部材(31)が電動ポンプ(20)の外周形状に沿って湾曲しているので、電動ポンプ(20)の自重あるいは湾曲部材(31)と電動ポンプ(20)との嵌合状態を利用して電動ポンプ(20)を湾曲部材(31)に仮保持することができる。
【0010】
その結果、湾曲部材(31)および連結部材(32)を連結する際に、取付作業者が電動ポンプ(20)を支えながら連結する必要がなくなり、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。
【0011】
さらに、湾曲部材(31)および連結部材(32)が連結されることによって、弾性部材(40)が電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に狭持されているので、電動ポンプ(20)と取付部材(30)とを非接触状態とすることができる。従って、電動ポンプ(20)の振動が取付部材(30)に伝達されることを抑制できる。延いては、電動ポンプ(20)の振動が取付部材(30)を介して、取付対象部材(10)に伝達されることを抑制できる。
【0012】
その結果、電動ポンプ(20)の振動が取付対象部材(10)に伝達されることの抑制と、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性の向上との両立を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電動ポンプの取付構造において、湾曲部材(31)および連結部材(32)の一端部同士は、ボルト(50)を締め付けることによって連結され、ボルト(50)が締め付けられるに伴って、弾性部材(40)が圧縮変形されることを特徴とする。
【0014】
これによれば、ボルト(50)の締め付け荷重を調整することで、電動ポンプ(20)が取付部材(10)から不必要な圧縮荷重を受けて変形等してしまうことなく、適切に電動ポンプ(20)を保持できる。さらに、弾性部材(40)が不必要に圧縮変形されて剛性が高くなってしまうことを抑制できるので、電動ポンプ(20)の振動が取付部材(30)に伝達されることを適切に抑制できる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の電動ポンプの取付構造において、ボルト(50)によって締め付けられることによって連結される湾曲部材(31)の一端部(31c)および連結部材(32)の一端部(32b)のうち少なくとも一方には、他方に仮固定される仮固定用爪部(32e)が形成されていることを特徴とする。これによれば、容易にボルト(50)を締め付けることできる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造において、湾曲部材(31)および連結部材(32)の他端部同士は、湾曲部材(31)の他端部(31d)および連結部材(32)の他端部のうち少なくとも一方に設けられた係止用穴(31g)に、他方に設けられた係止用爪(32c)を係止することによって連結されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、湾曲部材(31)および連結部材(32)の双方の端部同士を、ボルト(50)を締め付けることによって連結する場合に対して、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を向上できる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明では、流体を吸入して圧送する電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける取付構造であって、
取付対象部材(10)に固定されているとともに、電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置される帯状の取付部材(30)と、電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に配置されて弾性変形可能な弾性部材(40)とを有し、
取付部材(30)が環状に連結されることによって、取付部材(30)が電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されるとともに、弾性部材(40)が電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に狭持された状態で、電動ポンプ(20)が取付部材(30)の内周側に保持されており、電動ポンプ(20)の外周表面には、電動ポンプ(20)の外周側に向かって突出するポンプ部側突出部(27、28)が形成され、弾性部材(40)には、ポンプ部側突出部(27、28)に当接する弾性部材側当接部(41、42)が形成されているとともに、電動ポンプ(20)の外周側に向かって突出する弾性部材側突出部(43)が形成され、取付部材(30)には、弾性部材側突出部(43)に当接する取付部材側当接部(31e、32d)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、取付対象部材(10)に固定された取付部材(30)を、電動ポンプ(20)の外周側に巻き付けるように環状に連結するだけで、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付けることができる。従って、請求項1に記載の発明と同様に、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を向上できる。
【0020】
しかも、ポンプ部側突出部(27、28)が弾性部材側当接部(41、42)に当接し、弾性部材側突出部(43)が取付部材側当接部(31e、32d)に当接しているので、取付部材(30)を環状に連結する際に、電動ポンプ(20)および取付部材(30)に対する弾性部材(40)の位置決めが容易となり、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。
【0021】
さらに、取付部材(30)が連結されることによって、弾性部材(40)が電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に狭持されているので、請求項1に記載の発明と同様に、電動ポンプ(20)の振動が取付部材(30)に伝達されることを抑制できる。
【0022】
しかも、電動ポンプ(20)および取付部材(30)に対する弾性部材(40)の位置ずれを防止して、弾性部材(40)を電動ポンプ(20)の外周側と取付部材(30)の内周側との間に確実に狭持できるので、電動ポンプ(20)の振動が取付部材(30)に伝達されることを効果的に抑制できる。
【0023】
従って、電動ポンプ(20)の振動が取付対象部材(10)に伝達されることの抑制と、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性の向上との両立を図ることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の電動ポンプの取付構造において、弾性部材側当接部は、弾性部材(40)の表裏を貫通するように形成された穴部(41)によって形成されており、ポンプ部側突出部(27)は、前記穴部(41)に嵌め込まれていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付けた後も、電動ポンプ(20)に対して、弾性部材(40)および取付部材(30)の位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0026】
請求項7に記載の発明では、請求項5または6に記載の電動ポンプの取付構造において、弾性部材側当接部は、弾性部材(40)のうち電動ポンプ(20)の軸方向に垂直な面(42)によって形成されていることを特徴とする。
【0027】
これによれば、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付けた後も、電動ポンプ(20)に対して、弾性部材(40)および取付部材(30)の位置が電動ポンプ(20)の軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0028】
請求項8に記載の発明では、請求項5ないし7のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造において、取付部材(30)は、取付対象部材(10)に固定されて電動ポンプ(20)の外周形状に沿って湾曲した湾曲部材(31)、および湾曲部材(31)の両端部を連結する連結部材(32)から構成され、湾曲部材(31)および連結部材(32)が連結されることによって、取付部材(30)が電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されていることを特徴とする。
【0029】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様に、電動ポンプ(20)を湾曲部材(31)に仮固定した状態で、湾曲部材(31)および連結部材(32)の両端部同士を連結できる。従って、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。
【0030】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造において、取付部材(30)および弾性部材(40)は、互いに接合されて一体的に形成されていることを特徴とする。これにより、より一層、電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける際の作業性を向上できる。
【0031】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造において、弾性部材(40)のうち電動ポンプ(20)側の面には、電動ポンプ(20)側に向かって突出するように形成されたポンプ側接触部(44)が設けられ、さらに、弾性部材(40)のうち取付部材(30)側の面には、取付部材(30)側に向かって突出するように形成された取付部材側接触部(45)が設けられ、ポンプ側接触部(44)および取付部材側接触部(45)は、電動ポンプ(20)の軸方向に垂直な方向から見たときに、互いに重合しないように配置されていることを特徴とする。
【0032】
これによれば、ポンプ側接触部(44)および取付部材側接触部(45)を、電動ポンプ(20)の軸方向に垂直な方向から見たときに、互いに重合しないように配置しているので、弾性部材(40)の弾性係数を小さくできるとともに、電動ポンプ(20)から取付部材(30)への振動伝達距離を長くすることができる。その結果、電動ポンプ(20)の振動が取付対象部材に伝達されることを効果的に抑制できる。
【0033】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の電動ポンプの取付構造を示す外観斜視図である。
【図2】第1実施形態の電動ポンプの軸方向断面図である。
【図3】第1実施形態における図2のA−A断面図である。
【図4】(a)は第1実施形態のフリーフロートパッキンの正面図であり、(b)は(a)の上面図であり、(c)は(a)の側面図である。
【図5】第2実施形態の電動ポンプおよびフリーフロートパッキンの斜視図である。
【図6】第3実施形態における図2のA−A断面図である。
【図7】第4実施形態の電動ポンプの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
図1〜4により、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の取付対象部材であるブラケット10に取り付けられた状態の電動ポンプ20の外観斜視図であり、本実施形態の電動ポンプ20の取付構造を示している。また、図2は、ブラケット10に取り付けられた状態の電動ポンプ20の軸方向断面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。
【0036】
ブラケット10は、金属(例えば、鉄、ステンレス)で形成されて、電動ポンプ20が取り付けられた状態で、ハイブリッド車両本体に固定される車両用の固定部材である。なお、ハイブリッド車両とは、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得ることができる車両である。
【0037】
電動ポンプ20は、走行用電動モータに電力を供給するインバータを冷却するための冷却水を循環させる冷却水回路において、冷却水(流体)を吸入して圧送するものである。具体的には、電動ポンプ20は、電力を供給されることによって回転する電動モータ21、および電動モータ21から回転駆動力を得て冷却水を吸入して圧送するポンプ部22を樹脂製のハウジング23内に収容して構成したものである。
【0038】
本実施形態では、電動モータ21として直流モータを採用し、ポンプ部22として羽根車(インペラ)をハウジング23内に形成されたポンプ室内で回転させることで冷却水に運動エネルギを与えるターボポンプを採用している。もちろん、電動モータ21として交流モータを採用してもよいし、ポンプ部22として他の形式のポンプを採用してもよい。
【0039】
ハウジング23は、電動モータ21の回転軸方向に同軸状に延びる略円筒形状に形成されている。従って、電動ポンプ20の軸方向は、電動モータ21の回転軸方向に一致している。さらに、ハウジング23のうち電動モータ21が収容される側の軸方向垂直端面には、外部から電動モータ21へ電源を供給するための電源接続用のコネクタ24が設けられている。
【0040】
一方、ハウジング23のうちポンプ部22が収容される側の軸方向垂直端面には、ポンプ部22へ吸入される冷却水が流通する吸入ホースが接続される吸入パイプ25、およびポンプ部22から吐出された冷却水が流通する吐出ホースが接続される吐出パイプ26が設けられている。
【0041】
さらに、ハウジング23の円筒状の外周表面のうち電動モータ21が収容されてコネクタ24が設けられる側には、ハウジング23の径方向、すなわち外周側に向かって突出する第1ポンプ部側突出部27が設けられている。この第1ポンプ部側突出部27は、四角柱状に形成されて、電動ポンプ20の軸方向から見たときに、軸に対して対象となる2箇所の位置に設けられている。
【0042】
また、ハウジング23の円筒状の外周表面のうちポンプ部22が収容される側には、ハウジング23の径方向に向かって突出する第2ポンプ部側突出部28が設けられている。この第2ポンプ部側突出部28は、ハウジング23の円筒状の外周表面の全周にわたって環状に設けられている。
【0043】
このような形状の第2ポンプ部側突出部28は、ハウジング23を電動モータ側ハウジングと電動ポンプ側ハウジングとに分割して形成する場合、電動モータ側ハウジングと電動ポンプ側ハウジングとの結合部位に設けられるシール部を利用して形成することができる。
【0044】
より具体的には、電動モータ側ハウジングと電動ポンプ側ハウジングとの結合部位のシール部として、シール部材(例えば、Oリング)を介在させるシール構造を採用する。そして、このシール部材が収容される部位を、ハウジング23の円筒状の外周部分と比較して大径に形成することで、第2ポンプ部側突出部28として利用することができる。
【0045】
次に、電動ポンプ20をブラケット10に固定する取付部材30について説明する。本実施形態の取付部材30は、ブラケット10と同じ材質の金属によって形成された湾曲部材31および連結部材32の2つの部材の両端部同士を連結することによって帯状に形成されている。
【0046】
さらに、取付部材30は、ハウジング23の円筒状の外周側のうち、第1ポンプ部側突出部27および第2ポンプ部側突出部28の間の胴部の外周側に、巻き付けられるように環状に配置され、その内周側と電動ポンプ20の外周側との間にフリーフロートパッキン40を介在させた状態で、電動ポンプ20を保持する機能を果たす。
【0047】
湾曲部材31は、ブラケット10に固定されて電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲した部材である。より具体的には、図2、3に示すように、湾曲部材31には、電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲した円弧状湾曲部31a、ブラケット10に固定された固定部31b、および円弧状湾曲部31aの両端部から延設されて連結部材32に連結される第1、第2湾曲部材側連結部31c、31dが設けられている。
【0048】
円弧状湾曲部31aは、電動ポンプ20の軸方向から見たときに略半円弧状に湾曲して、電動ポンプ20の外周形状に適合する形状に形成された部位である。また、円弧状湾曲部31aには、その表裏を貫通する複数(本実施形態では4つ)の貫通穴31eが設けられている。この貫通穴31eは、ハウジング23の周方向に長軸を有する長穴形状に形成され、後述するフリーフロートパッキン40の弾性部材側突出部43に当接する取付部材側当接部として機能する。
【0049】
さらに、円弧状湾曲部31aには、後述するフリーフロートパッキン40の切り欠き穴部41に適合するように設けられた切り欠き部31hが形成されている。そして、この切り欠き部31hが形成されていることによって、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27と湾曲部材31が直接接触してしまうことを防止している。
【0050】
固定部31bは、円弧状湾曲部31aからブラケット10へ向かって延びるように形成されて円弧状湾曲部31aとブラケット10とを連結する部位である。具体的には、固定部31bは、ブラケット10に対して溶接等の接合手段によって固定されている。
【0051】
第1湾曲部材側連結部31cは、円弧状湾曲部31aの円周方向の一端側に設けられ、電動ポンプ20の軸方向から見たときに、ハウジング23の径方向に延びる平面状に形成されている。なお、第1湾曲部材側連結部31cは、水平方向に対して45度以上(本実施形態では、45度)上方に向かって延びる平面状に形成するとよい。
【0052】
さらに、第1湾曲部材側連結部31cには、その表裏を貫通するボルト穴31fが形成されている。このボルト穴31fは、湾曲部材31の一端側と連結部材32の一端側とをボルト締めにて連結する際に用いられる。
【0053】
第2湾曲部材側連結部31dは、円弧状湾曲部31aの円周方向の他端側に設けられ、電動ポンプ20の軸方向から見たときに、円弧状湾曲部31aの接線方向に延びる平面状に形成されている。さらに、第2湾曲部材側連結部31dには、その表裏を貫通する係止用穴31gが形成されている。この係止用穴31gには、連結部材32の他端側に形成された係止用爪32cが係止される。
【0054】
従って、湾曲部材31は、電動ポンプ20の軸方向から見たときに略U字状に湾曲した形状に形成されている。
【0055】
連結部材32は、電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲して湾曲部材31の長手方向の両端部(具体的には、第1、第2湾曲部材側連結部31c、31d)を連結する部材である。つまり、湾曲部材31および連結部材32の両端部同士が連結部材32によって連結されることで、取付部材30全体として、電動ポンプ20の軸方向から見たときに環状に形成される。
【0056】
より具体的には、連結部材32には、電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲した湾曲部32a、湾曲部32aの一端部から延設されて第1湾曲部材側連結部31cに連結される連結部材側連結部32b、および湾曲部32aの他端部に形成されて第2湾曲部材側連結部31dの係止用穴31gに係止される係止用爪32cが設けられている。
【0057】
湾曲部32aは、電動ポンプ20の軸方向から見たときに円弧状に湾曲して、電動ポンプ20の外周形状に適合する形状に形成された部位である。また、湾曲部32aには、湾曲部材31の切り欠き部31hおよび貫通穴31eと同様の切り欠き部32gおよび複数(本実施形態では2つ)の貫通穴32dが設けられている。
【0058】
連結部材側連結部32bは、湾曲部32aの長手方向の一端側に設けられ、電動ポンプ20の軸方向から見たときに、ハウジング23の径方向に延びる平面状に形成されている。より詳細には、連結部材側連結部32bは、湾曲部材31の第1湾曲部材側連結部31cと平行に延びて重合する平面状に形成されている。
【0059】
さらに、連結部材側連結部32bには、第1湾曲部材側連結部31cと同様のボルト穴32fが形成されているとともに、図1に示すように、第1湾曲部材側連結部31cに対して連結部材側連結部32bを仮固定するための仮固定用爪部32eが形成されている。この仮固定用爪部32eは、第1湾曲部材側連結部31cの外周側に引っかかるように折り曲げられた形状に形成されている。
【0060】
次に、フリーフロートパッキン40について説明する。フリーフロートパッキン40は、帯状の熱可塑性エラストマーで形成された弾性変形可能な弾性部材である。さらに、フリーフロートパッキン40は、取付部材30の内周側と電動ポンプ20の外周側との間に挟持されて、電動ポンプ20にて発生した振動が取付部材30へ伝達されることを抑制する機能を果たす。
【0061】
また、本実施形態のフリーフロートパッキン40は、取付部材30のうち湾曲部材31の内周側と電動ポンプ20の外周側との間で電動ポンプ20の胴部に巻き付けられるように配置される第1パッキン40aと、連結部材32の内周側と電動ポンプ20の外周側との間で電動ポンプ20の胴部に巻き付けられるように配置される第2パッキン40bとの2つの部材に分割されている。
【0062】
この第1、第2パッキン40bは、その長手方向の長さ、および弾性部材側突出部43の数が異なるものの、その基本的構成は同様である。具体的には、本実施形態の第1パッキン40aの長手方向の長さは第2パッキン40bの長手方向より長く、第1パッキン40aの弾性部材側突出部43の数は4つであり、第2パッキン40bの弾性部材側突出部43の数は2つである。
【0063】
そこで、以下の説明では、図4を用いて、第1パッキン40aについて説明する。なお、図4(a)は、フリーフロートパッキン40(第1パッキン40a)を湾曲させることなく展開した際の正面図であり、(b)は(a)の上面図であり、(c)は(a)の側面図である。
【0064】
フリーフロートパッキン40には、取付部材30の内周側と電動ポンプ20の外周側との間に挟持された際に、第1ポンプ部側突出部27が嵌め込まれて第1ポンプ部側突出部27に当接する凹形状の切り欠き穴部41、第2ポンプ部側突出部28に当接する側壁面42、および電動ポンプ20の外周側に向かって突出して取付部材30の貫通穴31e、32dに嵌め込まれる弾性部材側突出部43が設けられている。
【0065】
切り欠き穴部41は、フリーフロートパッキン40のうち第1ポンプ部側突出部27側の側面に、その表裏を貫通するように形成された穴部である。そして、その内壁面が四角柱状に形成された第1ポンプ部側突出部27の3つの側面と当接するように形成されている。従って、本実施形態の切り欠き穴部41は、弾性部材側当接部としての機能を果たす。弾性部材側突出部43は、電動ポンプ20の外周側に向かって頂点を有する略三角錐形状の頂部と、この頂部よりも外径の小さい円柱形状の根本部を有する、いわゆるキノコ形状に形成されている。
【0066】
さらに、フリーフロートパッキン40のうち電動ポンプ20側の面には、電動ポンプ20の軸方向に延びるとともに電動ポンプ29側に向かって突出するように形成された複数のポンプ側接触部44が設けられ、さらに、フリーフロートパッキン40のうち取付部材30側の面には、電動ポンプ20の軸方向に延びるともに取付部材30側に向かって突出するように形成された複数の取付部材側接触部45が設けられている。
【0067】
そして、このポンプ側接触部44および取付部材側接触部45は、図4(b)の矢印で示すフリーフロートパッキン40の表裏方向から見たときに、互いに重合しないように配置されている。従って、フリーフロートパッキン40が取付部材30の内周側と電動ポンプ20の外周側との間に配置された際には、ポンプ側接触部44および取付部材側接触部45は、電動ポンプ20の軸方向に垂直な方向から見たときに、互いに重合しないように配置されている。
【0068】
次に、本実施形態の電動ポンプ20を、取付部材30およびフリーフロートパッキン40を用いて、ブラケット10に取り付ける取付方法を説明する。
【0069】
まず、取付部材30の湾曲部材31にフリーフロートパッキン40の第1パッキン40aを取り付ける。具体的には、第1パッキン40aの弾性部材側突出部43を貫通穴31eへ嵌め込む。前述の如く、弾性部材側突出部43の頂部が略三角錐形状となっているので、弾性部材側突出部43が貫通穴31eから抜けてしまうことを防止でき、第1パッキン40aを湾曲部材31に対して固定することができる。
【0070】
次に、湾曲部材31および第1パッキン40aの内周側に電動ポンプ20を配置する。具体的には、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27を第1パッキン40aの切り欠き穴部41に嵌め込むとともに、第2ポンプ部側突出部28を第1パッキン40aの側壁面42に当接させるように電動ポンプ20を配置する(ポンプ配置工程)。
【0071】
この際、第1パッキン40aの一端と他端が、電動ポンプ20を軸に対して略対象となる位置に位置付けられて、電動ポンプ20の軸方向から見たときに、ハウジング23の外周のうち、略半周分が第1パッキン40aの内周側に当接した状態となる。これにより、電動ポンプ20が、湾曲部材31および第1パッキン40aの内周側に仮保持される。
【0072】
次に、第1パッキン40aおよび湾曲部材31と同様に、予め第2パッキン40bを取り付けた連結部材32を湾曲部材31に仮固定する。具体的には、連結部材32の係止用爪32cを、湾曲部材31の係止用穴31gに係止した状態で、連結部材32を電動ポンプ20の外周に沿うように配置する。
【0073】
この際、ポンプ配置工程と同様に、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27を第2パッキン40bの切り欠き穴部41に嵌め込むとともに、第2ポンプ部側突出部28を第2パッキン40bの側壁面42に当接させるように配置する。そして、連結部材32の仮固定用爪部32eを湾曲部材31の第1湾曲部材側連結部31cの外周側に引っかけることによって仮固定する(ポンプ仮固定工程)。
【0074】
次に、ボルト50を、湾曲部材31のボルト穴31fおよび連結部材32のボルト穴32fを貫通させて、ナット51に締め付ける。これにより、湾曲部材31と連結部材32とを連結するとともに、取付部材30の内周側と電動ポンプ20の外周側との間に、フリーフロートパッキン40を圧縮変形させた状態で挟持する(ポンプ取付工程)。
【0075】
これにより、電動ポンプ20がブラケット10に取り付けられる。本実施形態の電動ポンプ20の取付構造によれば、以下のような優れた効果を得ることができる。
【0076】
(A)本実施形態では、取付部材30を構成する湾曲部材31および連結部材32を、電動ポンプ20の外周側に巻き付けるように環状に連結するだけで、電動ポンプ20をブラケット10に取り付けることができる。従って、取付部材30を電動ポンプ20およびブラケット10の双方に取り付ける場合に対して、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性を向上できる。
【0077】
さらに、湾曲部材31が電動ポンプ20の外周形状に沿って湾曲しており、フリーフロートパッキン40が第1ポンプ部側突出部27を嵌め込む切り欠き穴部41および第2ポンプ部側突出部28を当接させる側壁面42を有しているので、ポンプ配置工程において、電動ポンプ20の自重あるいは湾曲部材31と電動ポンプとの嵌合状態を利用して電動ポンプ20を湾曲部材31に仮保持することができる。
【0078】
従って、湾曲部材31および連結部材32を連結する際に、取付作業者が電動ポンプ20を支える必要がなくなり、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。
【0079】
さらに、湾曲部材31および連結部材32が連結されることによって、フリーフロートパッキン40が電動ポンプ20の外周側と取付部材30の内周側との間に、圧縮変形した状態で狭持されているので、電動ポンプ20と取付部材30とを非接触状態とし、電動ポンプ20の振動が取付部材30に伝達されることを抑制できる。延いては、電動ポンプ20の振動が取付部材30を介して、ブラケット10に伝達されることを抑制できる。
【0080】
(B)本実施形態では、ポンプ取付工程において、湾曲部材31および連結部材32の一端部同士(具体的には、第1湾曲部材側連結部31cおよび連結部材側連結部32b)を連結する際に、ボルト50を締め付けることによって連結し、一方、他端部同士については、連結部材32の係止用爪32cを湾曲部材31の係止用穴31gに係止することによって連結している。
【0081】
従って、双方の端部同士を、ボルト50を締め付けることによって連結する場合に対して、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。この際、第1湾曲部材側連結部31cおよび連結部材側連結部32bがハウジング23の径方向で、かつ、水平方向に対して45度程度上方に向かって延びる平面状に形成されているので、電動ポンプ20の本体がボルト50に干渉することも回避できる。
【0082】
さらに、湾曲部材31および連結部材32の一端部同士を、ボルト50を締め付けることによって連結しているので、ボルト50の締め付け荷重を調整することで、電動ポンプ20に不必要な圧縮荷重をかけてしまうことなく適切に電動ポンプ20を保持できる。同様に、フリーフロートパッキン40が不必要に圧縮変形されて剛性が高くなってしまうことを抑制できるので、電動ポンプ20の振動がブラケット10に伝達されてしまうことを適切に抑制できる。
【0083】
しかも、ポンプ仮固定工程において、湾曲部材31および連結部材32の一端部同士をボルト50によって連結する際に、仮固定用爪部32eによって湾曲部材31および連結部材32を仮固定しているので、容易にボルト50を締め付けることができ、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性をより一層効果的に向上できる。
【0084】
(C)本実施形態では、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27がフリーフロートパッキン40の切り欠き穴部41に嵌め込まれた状態で当接し、第2ポンプ部側突出部28がフリーフロートパッキン40の側壁面42に当接し、フリーフロートパッキン40の弾性部材側突出部43が取付部材30の貫通穴31e、32dに嵌め込まれた状態で当接している。
【0085】
従って、取付部材30を環状に連結する際に、電動ポンプ20および取付部材30に対して、フリーフロートパッキン40の位置決めが容易になるとともに、電動ポンプ20および取付部材30に対するフリーフロートパッキン40の位置ずれを防止することができるので、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性を効果的に向上できる。
【0086】
さらに、前述の如く、電動ポンプ20および取付部材30に対するフリーフロートパッキン40の位置ずれを防止できるので、フリーフロートパッキン40を電動ポンプ20の外周側と取付部材30の内周側との間に確実に狭持できる。従って、電動ポンプ20の振動が取付部材30に伝達されることを効果的に抑制できる。
【0087】
また、本実施形態では、四角柱状の第1ポンプ部側突出部27の3つの側面とフリーフロートパッキン40の切り欠き穴部41の内周面が当接しているので、電動ポンプ20をブラケット10に取り付けた後も、フリーフロートパッキン40および取付部材30が電動ポンプ20の周方向へずれてしまうことを抑制できる。
【0088】
しかも、第2ポンプ部側突出部28がフリーフロートパッキン40の側壁面42に当接して、フリーフロートパッキン40および取付部材30が第1ポンプ部側突出部27と第2ポンプ部側突出部28との間に配置されるので、電動ポンプ20をブラケット10に取り付けた後も、フリーフロートパッキン40および取付部材30が電動ポンプ20の軸方向へずれてしまうことを抑制できる。
【0089】
(D)本実施形態では、フリーフロートパッキン40のポンプ側接触部44および取付部材側接触部45を、電動ポンプ20の軸方向に垂直な方向から見たときに、互いに重合しないように配置しているので、フリーフロートパッキン40の弾性係数を小さくできるとともに、電動ポンプ20から取付部材30への振動伝達距離を長くすることができる。その結果、電動ポンプ20の振動が取付部材30に伝達されることを抑制できる。
【0090】
本実施形態では、以上の(A)〜(D)の効果によって、電動ポンプ20の振動がブラケット10を介して車室内に伝達されてしまうことの効果的な抑制と、電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の作業性の効果的な向上との両立を図ることができる。
【0091】
(E)さらに、電動ポンプ20に対して、フリーフロートパッキン40および取付部材30が周方向および軸方向の双方にずれてしまうことが抑制されているので、電動ポンプ20のコネクタ24に電線を結線する際、あるいは、吸入パイプ25および吐出パイプ26に吸入ホースおよび吐出ホースを接続する際に電動ポンプ20が傾いてしまうことを抑制できるので、これらの接続作業についても作業性を向上できる。
【0092】
(F)さらに、電動ポンプ20に対して、フリーフロートパッキン40および取付部材30が周方向および軸方向の双方にずれてしまうことが抑制されているので、ブラケット10を車両に固定する際に、電動ポンプ20の軸方向を垂直方向あるいは水平方向のいずれの方向に向けても、電動ポンプ20がブラケット10から脱落することを防止できる。
【0093】
(第2実施形態)
第1実施形態では、フリーフロートパッキン40を第1パッキン40aおよび第2パッキン40aの2つの部材で構成した例を説明したが、本実施形態では、図5に示すように、フリーフロートパッキン40を1つの部材で円環状(円筒状)に形成した例を説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0094】
なお、図5は、本実施形態の電動ポンプ20およびフリーフロートパッキン40の組付け状態を説明するための斜視図である。また、図5では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。また、図5では、図示の明確化のためにフリーフロートパッキン40のポンプ側接触部44および取付部材側接触部45の記載を省略している。
【0095】
本実施形態では、フリーフロートパッキン40を1つの部材で円環状(円筒状)に形成しているので、第1実施形態に対して、本実施形態の電動ポンプ20をブラケット10に取り付ける際の取付方法が異なる。
【0096】
具体的には、まず、弾性変形可能に形成されたフリーフロートパッキン40の内径を広げて、電動ポンプ20の胴部に嵌め込む。この際、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27をフリーフロートパッキン40の切り欠き穴部41に嵌め込むとともに、第2ポンプ部側突出部28をフリーフロートパッキン40の側壁面42に当接させるように電動ポンプ20の胴部に嵌め込む(パッキン配置工程)。
【0097】
次に、フリーフロートパッキン40が嵌め込まれた電動ポンプ20を、取付部材30の湾曲部材31に取り付ける。この際、フリーフロートパッキン40の弾性部材側突出部43を湾曲部材31の貫通穴31eへ嵌め込む。これにより、電動ポンプ20が湾曲部材31に仮固定される(ポンプ配置工程)。
【0098】
次に、湾曲部材31に仮固定された電動ポンプ20に、連結部材32を仮固定する。この際、フリーフロートパッキン40の弾性部材側突出部43を連結部材32の貫通穴32dへ嵌めこみながら、連結部材32の係止用爪32cを、湾曲部材31の係止用穴31gに係止した状態で、連結部材32の仮固定用爪部32eを湾曲部材31の第1湾曲部材側連結部31cの外周側に引っかけて仮固定する(ポンプ仮固定工程)。
【0099】
この後の工程は、第1実施形態のポンプ取付工程と同様である。従って、本実施形態の電動ポンプ20の取付構造においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(第3実施形態)
第1実施形態では、取付部材30を湾曲部材31および連結部材32の2つの分割可能な部材で構成した例を説明したが、本実施形態では、図6に示すように、湾曲部材31および連結部材32を一体に結合して取付部材30を1つの部材で形成した例を説明する。なお、図6は、本実施形態の電動ポンプ20における図2のA−A断面図であり、第1実施形態の図3に対応する図面である。
【0101】
本実施形態の取付部材30は、第1実施形態の湾曲部材31における第2湾曲部材側連結部31dの係止用穴31g、および連結部材32の係止用爪32cを廃止して、湾曲部材31および連結部材32の他端部同士を折り曲げ可能に連結するヒンジ部30aを有している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0102】
従って、本実施形態では、湾曲部材31と連結部材32が離れる側にヒンジ部30aを折り曲げた状態の取付部材30に対して、予め第1実施形態と同様に、第1、第2パッキン40a、40bを取り付けておく。
【0103】
次に、第1実施形態と同様のポンプ配置工程を行った後、連結部材32を湾曲部材31に仮固定する。具体的には、湾曲部材31と連結部材32が近づく側にヒンジ部30aを折り曲げて、連結部材32を電動ポンプ20の外周に沿うように配置し、連結部材32の仮固定用爪部32eを湾曲部材31の第1湾曲部材側連結部31cの外周側に引っかけて仮固定する(ポンプ仮固定工程)。
【0104】
この後の工程は、第1実施形態のポンプ取付工程と同様である。従って、本実施形態の電動ポンプ20の取付構造においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態では、湾曲部材31と連結部材32とを一体に形成しているので、ポンプ仮固定工程における連結部材32の脱落等を防止できるとともに、取付部材30の部品点数の低減を図ることができる。さらに、本実施形態の取付部材30は、第2実施形態の取付構造に適用してもよい。
【0106】
(第4実施形態)
第1実施形態では、第1ポンプ部側突出部27を取付部材30の電動モータ21側に配置し、フリーフロートパッキン40に切り欠き穴部41を設け、さらに、取付部材30に切り欠き部31h、32gを設けた例を説明したが、本実施形態では、図7に示すように、第1ポンプ部側突出部27を、取付部材30のうち電動ポンプ20の軸方向略中央部に配置した例を説明する。
【0107】
なお、図7は、本実施形態の電動ポンプ20の軸方向断面図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0108】
本実施形態のフリーフロートパッキン40では、フリーフロートパッキン40のうち電動ポンプ20の軸方向略中央部に、その表裏を貫通する貫通穴41aを設けている。従って、貫通穴41aの内周側は、四角柱状に形成された第1ポンプ部側突出部27の4つの側面と当接している。
【0109】
また、フリーフロートパッキン40の貫通穴41aに適合するように設けられた穴部31h’、32g’を形成している。そして、この穴部31h’、32g’が形成されていることによって、電動ポンプ20の第1ポンプ部側突出部27と取付部材30が直接接触してしまうことを防止している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0110】
従って、本実施形態の電動ポンプ20の取付構造においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、フリーフロートパッキン40の貫通穴41aが第1ポンプ部側突出部27の4つの側面と当接しているので、電動ポンプ20をブラケット10に取り付けた後も、フリーフロートパッキン40および取付部材30が電動ポンプ20の周方向および軸方向にずれてしまうことを抑制できる。
【0111】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0112】
(1)上述の各実施形態では、本発明の電動ポンプの取付構造を、冷却水循環用の電動ポンプを車両に取り付けるために適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、オイル循環用の電動ポンプを車両に取り付けるために適用してもよい。さらに、製造工場等で各種液体圧送用の電動ポンプを取り付けるために適用してもよい。
【0113】
(2)上述の各実施形態では、取付部材30の湾曲部材31および連結部材32の一端部同士を連結する際に、ボルト50をナット51に締め付けることによって連結した例を説明したが、このナット51を予め取付部材30の湾曲部材31うちの一方に接合しておいてもよい。
【0114】
さらに、湾曲部材31および連結部材32の一端部同士を他端部同士と同様に、湾曲部材31および連結部材32のうち一方に設けられた係止用穴に他方に設けられた係止用爪にて係止することによって連結してもよい。
【0115】
(3)上述の各実施形態では、フリーフロートパッキン40を熱可塑性エラストマーで形成した例を説明したが、もちろんフリーフロートパッキン40をブチルゴム、シリコン等で形成してもよい。
【0116】
さらに、フリーフロートパッキン40を成形する際に、取付部材30をインサート成型して一体的に成形してもよい。また、接着等の接合手段によって取付部材30およびフリーフロートパッキン40を予め接合してもよい。この場合は、取付部材30の貫通穴31e、32d、およびフリーフロートパッキン40の弾性部材側突出部43を廃止しても取付部材30およびフリーフロートパッキン40の位置ずれを防止できる。
【0117】
(4)上述の実施形態では、連結部材32側に仮固定用爪部32eを設けた例を説明したが、もちろん、湾曲部材31側に仮固定用爪部32eを設けてもよい。同様に、上述の実施形態では、湾曲部材31側に係止用穴31gを設け、連結部材32側に係止用爪32cを設けた例を説明したが、湾曲部材31側に係止用爪を設け、連結部材32側に係止用穴を設けてもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 ブラケット
20 電動ポンプ
27、28 第1、第2ポンプ部側突出部
30 取付部材
31 湾曲部材
31c、31d 第1、第2湾曲部材側連結部
31e 貫通穴
31g 係止用穴
32 連結部材
32b 連結部材側連結部
32c 係止用爪
32d 貫通穴
32e 仮固定用爪部
40 フリーフロートパッキン
41 切り欠き穴部
42 側壁面
43 弾性部材側突出部
44 ポンプ側接触部
45 取付部材側接触部
50 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入して圧送する電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける取付構造であって、
前記取付対象部材(10)に固定されているとともに、前記電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置される帯状の取付部材(30)と、
前記電動ポンプ(20)の外周側と前記取付部材(30)の内周側との間に配置されて弾性変形可能な弾性部材(40)とを有し、
前記取付部材(30)は、前記取付対象部材(10)に固定されて前記電動ポンプ(20)の外周形状に沿って湾曲した湾曲部材(31)、および前記湾曲部材(31)の両端部を連結する連結部材(32)から構成され、
前記湾曲部材(31)および前記連結部材(32)が連結されることによって、前記取付部材(30)が前記電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されるとともに、前記弾性部材(40)が前記電動ポンプ(20)の外周側と前記取付部材(30)の内周側との間に狭持された状態で、前記電動ポンプ(20)が前記取付部材(30)の内周側に保持されていることを特徴とする電動ポンプの取付構造。
【請求項2】
前記湾曲部材(31)および前記連結部材(32)の一端部同士は、ボルト(50)を締め付けることによって連結され、
前記ボルト(50)が締め付けられるに伴って、前記弾性部材(40)が圧縮変形されることを特徴とする請求項1に記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項3】
前記ボルト(50)によって締め付けられることによって連結される前記湾曲部材(31)の一端部(31c)および前記連結部材(32)の一端部(32b)のうち少なくとも一方には、他方に仮固定される仮固定用爪部(32e)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項4】
前記湾曲部材(31)および前記連結部材(32)の他端部同士は、前記湾曲部材(31)の他端部(31d)および前記連結部材(32)の他端部のうち少なくとも一方に設けられた係止用穴(31g)に、他方に設けられた係止用爪(32c)を係止することによって連結されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項5】
流体を吸入して圧送する電動ポンプ(20)を取付対象部材(10)に取り付ける取付構造であって、
前記取付対象部材(10)に固定されているとともに、前記電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置される帯状の取付部材(30)と、
前記電動ポンプ(20)の外周側と前記取付部材(30)の内周側との間に配置されて弾性変形可能な弾性部材(40)とを有し、
前記取付部材(30)が環状に連結されることによって、前記取付部材(30)が前記電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されるとともに、前記弾性部材(40)が前記電動ポンプ(20)の外周側と前記取付部材(30)の内周側との間に狭持された状態で、前記電動ポンプ(20)が前記取付部材(30)の内周側に保持されており、
前記電動ポンプ(20)の外周表面には、前記電動ポンプ(20)の外周側に向かって突出するポンプ部側突出部(27、28)が形成され、
前記弾性部材(40)には、前記ポンプ部側突出部(27、28)に当接する弾性部材側当接部(41、42)が形成されているとともに、前記電動ポンプ(20)の外周側に向かって突出する弾性部材側突出部(43)が形成され、
前記取付部材(30)には、前記弾性部材側突出部(43)に当接する取付部材側当接部(31e、32d)が形成されていることを特徴とする電動ポンプの取付構造。
【請求項6】
前記弾性部材側当接部は、前記弾性部材(40)の表裏を貫通するように形成された穴部(41)によって形成されており、
前記ポンプ部側突出部(27)は、前記穴部(41)に嵌め込まれていることを特徴とする請求項5に記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項7】
前記弾性部材側当接部は、前記弾性部材(40)のうち前記電動ポンプ(20)の軸方向に垂直な面(42)によって形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項8】
前記取付部材(30)は、前記取付対象部材(10)に固定されて前記電動ポンプ(20)の外周形状に沿って湾曲した湾曲部材(31)、および前記湾曲部材(31)の両端部を連結する連結部材(32)から構成され、
前記湾曲部材(31)および前記連結部材(32)が連結されることによって、前記取付部材(30)が前記電動ポンプ(20)の外周側に環状に配置されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項9】
前記取付部材(30)および前記弾性部材(40)は、互いに接合されて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造。
【請求項10】
前記弾性部材(40)のうち前記電動ポンプ(20)側の面には、前記電動ポンプ(20)側に向かって突出するように形成されたポンプ側接触部(44)が設けられ、
さらに、前記弾性部材(40)のうち前記取付部材(30)側の面には、前記取付部材(30)側に向かって突出するように形成された取付部材側接触部(45)が設けられ、
前記ポンプ側接触部(44)および前記取付部材側接触部(45)は、前記電動ポンプ(20)の軸方向に垂直な方向から見たときに、互いに重合しないように配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の電動ポンプの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27203(P2011−27203A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175030(P2009−175030)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】