説明

電動リニアアクチュエータ

【課題】ハウジングの軽量化を図ると共に、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において検出し、信頼性を高めた電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】減速機構5を構成する出力歯車4がナット18に固定されると共に、ハウジング2がダイキャストによって、第1のハウジング2aと、その端面に衝合された第2のハウジング2bとからなる2分割構造に形成され、当該ハウジング2のどちらか一方の内側に、衝合する合せ面21bよりも軸方向に突出して円弧状に対向して突起21が一体に形成され、この突起21が、出力歯車4の逆組みの時のみ干渉するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用されるボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータ、詳しくは、自動車のトランスミッションやパーキングブレーキ等で、電動モータからの回転入力をボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換する電動リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種駆動部に使用される電動リニアアクチュエータにおいて、電動モータの回転運動を軸方向の直線運動に変換する機構として、台形ねじあるいはラックアンドピニオン等の歯車機構が一般的に使用されている。これらの変換機構は、滑り接触部を伴うため動力損失が大きく、電動モータの大型化や消費電力の増大を余儀なくされている。そのため、より効率的なアクチュエータとしてボールねじ機構が採用されるようになってきた。
【0003】
従来の電動リニアアクチュエータとしては、例えば、ハウジングに支持された電動モータにより、ボールねじを構成するボールねじ軸を回転駆動自在とし、このボールねじ軸を回転駆動することによってナットに結合された出力部材を軸方向に変位可能としている。ボールねじ機構は、摩擦が非常に低く、出力部材側に作用するスラスト荷重によって簡単にボールねじ軸が回転してしまうので、電動モータが停止時に出力部材を位置保持する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、電動モータにブレーキ手段を設けたり、あるいは伝達手段としてウオームギアのような低効率なものを設けたりすることがなされているが、その代表的なものとして、図8に示すような電動リニアアクチュエータが知られている。この電動リニアアクチュエータ50は、回転運動を直線運動に変換するボールねじ51を備えたアクチュエータ本体52と、電動モータ53の回転運動をアクチュエータ本体52に伝達する歯車減速機構54と、歯車減速機構54を構成する第1歯車55に係合してアクチュエータ本体52を位置保持する位置保持機構56とを備えている。
【0005】
ボールねじ51は、外周面に螺旋状のねじ溝57aが形成され、出力軸としてのねじ軸57と、このねじ軸57に外嵌され、内周面に螺旋状のねじ溝58aが形成されたナット58と、対向する両ねじ溝57a、58aによって形成された転動路に転動自在に収容された多数のボール59とを備えている。
【0006】
アクチュエータ本体52は、ハウジング60の内周に、ナット58が一対の玉軸受61、62を介して回転自在に支持されると共に、ねじ軸57が、ハウジング60に対して相対回転不能で、かつ軸方向に移動自在に支持されている。そして、ナット58が歯車減速機構54を介して回転駆動されることにより、ねじ軸57が直線運動に変換される。
【0007】
歯車減速機構54は、電動モータ53のモータ軸53aに固定された小径の平歯車からなる第1歯車55と、この第1歯車55に噛合し、ナット58の外周に一体に形成された大径の平歯車からなる第2歯車63とから構成されている。
【0008】
位置保持機構56は、第1歯車55に対して係脱自在に設けられているロック部材としてのシャフト64と、このシャフト64を第1歯車55に対して係脱する方向に駆動する駆動手段としてのソレノイド65とを備えている。シャフト64は棒状をなし、ソレノイド65によって直線駆動され、その先端部が受部66に係脱するようになっている。このように、ソレノイド65を制御することにより、シャフト64が第1歯車55に係合して回転が阻止されるので、振動荷重が作用した場合においても、係合面が滑ることなく安定してアクチュエータ本体52のねじ軸57を位置保持することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−156416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした従来の電動リニアアクチュエータ50では、2分割のハウジング60に歯車減速機構54とボールねじ51が内蔵され、ハウジング60の外側から挿入された電動モータ53の駆動力が歯車減速機構54を介してボールねじ51に伝達され、回転不可に支持されたボールねじ51のねじ軸57の直線運動に変換される。
【0011】
この種の自動車用の電動リニアアクチュエータ50は、その使用箇所により、泥水やオイルの浸入、あるいはグリースの飛散防止のため、ボールねじ51等の駆動部品はハウジング60内に内蔵されている。然しながら、ナット58およびこのナット58に設けられた第2歯車63や玉軸受61、62からなるナットアッセンブリーが誤組みの恐れがある。このような誤組みより第2歯車63が逆組みされた場合、第1歯車55と第2歯車63の歯面が軸方向にズレ、異音の発生や偏摩耗の原因となる。
【0012】
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ハウジングの軽量化を図ると共に、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において検出し、信頼性を高めた電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構を構成する出力歯車が前記ナットに固定されると共に、前記ハウジングがアルミ合金から形成され、第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとを備え、当該ハウジングのどちらか一方の内側に、衝合する合せ面よりも軸方向に突出して突起が形成されている。
【0014】
このように、電動モータの回転力を伝達する減速機構と、この減速機構を介して電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、ボールねじ機構が、ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、駆動軸と同軸状に一体化されて外周にナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、減速機構を構成する出力歯車がナットに固定されると共に、ハウジングがアルミ合金から形成され、第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとを備え、当該ハウジングのどちらか一方の内側に、衝合する合せ面よりも軸方向に突出して突起が形成されているので、ハウジングの断面係数が高くなり、ハウジングの軽量化を図りつつ強度を向上させることができると共に、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において検出し、信頼性を高めた電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【0015】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記ハウジングがダイキャストで形成されると共に、前記突起が当該ハウジングと一体に形成されていれば、量産性が良くなり、低コスト化を図ることができる共に、強度を高めてアルミ使用量を削減し、軽量化を達成することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明のように、前記突起が円弧状に対向して形成されていても良いし、また、請求項4に記載の発明のように、前記突起が同心円状に円形に形成されていても良い。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、前記一対の支持軸受が、前記駆動軸からのスラスト荷重および前記出力歯車を介して負荷されるラジアル荷重の両方を負荷することができる同一仕様の転がり軸受で構成されていれば、組立時に誤組み防止のための確認作業を簡便化することができ、組立作業性を向上させることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明のように、前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する前記出力歯車とを備えていても良い。
【0019】
また、請求項7に記載の発明のように、前記駆動軸が前記ねじ軸と一体に構成され、当該駆動軸の一端部の径方向に係止ピンが植設されると共に、前記ハウジングの袋孔に、軸方向に延びるガイド溝を有するガイド部材が装着され、前記ガイド溝に前記係止ピンが係合されていれば、ねじ軸を、回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持することができる。
【0020】
また、請求項8に記載の発明のように、前記ガイド部材が鋼板からプレス加工によって形成され、熱処理によって硬化処理されていれば、長期間に亘って摩耗を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0021】
また、請求項9に記載の発明のように、前記ガイド部材の端部に止め輪が装着され、この止め輪に前記係止ピンが当接するように設定されていれば、駆動軸の抜け出しを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、ハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構を構成する出力歯車が前記ナットに固定されると共に、前記ハウジングがアルミ合金から形成され、第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとを備え、当該ハウジングのどちらか一方の内側に、衝合する合せ面よりも軸方向に突出して突起が形成されているので、ハウジングの断面係数が高くなり、ハウジングの軽量化を図りつつ強度を向上させることができると共に、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において検出し、信頼性を高めた電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図である。
【図3】図1におけるハウジングの合せ面の突起部を示す要部拡大図である。
【図4】(a)は、図1のハウジング単体を示す正面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図5】(a)は、図4のハウジングの変形例を示す正面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図6】図1のナットアッセンブリーの誤組み状態を示す説明図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】従来の電動リニアアクチュエータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
アルミ軽合金製のハウジングと、このハウジングに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構を構成する出力歯車が前記ナットに固定されると共に、前記ハウジングがダイキャストによって、第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとからなる2分割構造に形成され、当該ハウジングのどちらか一方の内側に、衝合する合せ面よりも軸方向に突出して円弧状に対向して突起が一体に形成されている。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図、図3は、図1におけるハウジングの合せ面の突起部を示す要部拡大図、図4(a)は、図1のハウジング単体を示す正面図、(b)は、(a)の側面図、図5(a)は、図4のハウジングの変形例を示す正面図、(b)は、(a)の側面図、図6は、図1のナットアッセンブリーの誤組み状態を示す説明図、図7は、図6の要部拡大図である。
【0026】
この電動リニアアクチュエータ1は、図1に示すように、ハウジング2と、このハウジング2に取り付けられた電動モータ(図示せず)と、この電動モータのモータ軸(図示せず)に取付けられた入力歯車3に噛合する出力歯車4からなる減速機構5と、この減速機構5を介して電動モータの回転運動を駆動軸6の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構7と、このボールねじ機構7を備えたアクチュエータ本体8とを備えている。
【0027】
ハウジング2は、第1のハウジング2aと、その端面に衝合された第2のハウジング2bとからなり、固定ボルト9によって一体に固定されている。第1のハウジング2aには電動モータが取り付けられると共に、これら第1のハウジング2aと第2のハウジング2bの衝合部には、ねじ軸10を収容するための袋孔11、12が形成されている。
【0028】
このハウジング2は、A6061やADC12等のアルミ合金からダイキャストによって形成され、高温に加熱して固溶体を形成させる溶体化処理、それを水中で急速冷却する焼き入れ処理、続いて室温に保持あるいは低温(100〜200℃)に加熱して析出させる時効硬化処理(焼きもどし処理)で構成される熱処理によって、析出相に大きな格子ひずみを生じさせ硬化させる方法、所謂析出硬化処理が施されている。これにより、量産性が良くなり、低コスト化を図ることができる共に、強度を高めてアルミ使用量を削減し、軽量化を達成することができる。
【0029】
電動モータのモータ軸は、その端部に平歯車からなる入力歯車3が圧入により相対回転不能に取り付けられると共に、入力歯車3に噛合する出力歯車4は、後述するボールねじ機構7を構成するナット18にキー14を介して一体に固定されている。
【0030】
駆動軸6は、ボールねじ機構7を構成するねじ軸10と一体に構成され、この駆動軸6の一端部(図中右端部)に係止ピン13、13が植設され、第2のハウジング2bに装着された止め輪15に当接することにより抜け出しを防止している。ここで、16は、ハウジング2bの袋孔12に装着されたガイド部材で、軸方向に形成されたガイド溝16a、16aに係止ピン13、13を係合させることにより、ねじ軸10が、回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されている。
【0031】
ガイド部材16は、SCr420やSCM415等の浸炭鋼からなる板材またはパイプ材から塑性加工によって形成されている。具体的には、パイプ材からプレス加工によって形成されている。そして、浸炭焼入れによって表面硬さを50〜64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、長期間に亘って摩耗を防止することができ、耐久性を向上させることができる。なお、ガイド部材16の材質としてこれ以外にも、SCM440等の浸炭鋼、あるいは冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)やS45C等の炭素鋼を例示することができる。冷間圧延鋼板や炭素鋼の場合、高周波焼入れによって表面硬さを50〜64HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0032】
ボールねじ機構7は、図2に拡大して示すように、ねじ軸10と、このねじ軸10にボール17を介して外挿されたナット18を備えている。ねじ軸10は、外周に螺旋状のねじ溝10aが形成され、軸方向移動自在に、かつ回転不可に支承されている。一方、ナット18は、ねじ軸10に外挿されると共に、内周にねじ軸10のねじ溝10aに対応する螺旋状のねじ溝18aが形成され、これらねじ溝10a、18aとの間に多数のボール17が転動自在に収容されている。そして、ナット18は、ハウジング(図示せず)に対して、2つの支持軸受20、20を介して回転自在に、かつ軸方向移動不可に支承されている。19は、ナット18のねじ溝18aを連結して循環部材を構成する駒部材で、この駒部材21によって多数のボール17が無限循環することができる。
【0033】
各ねじ溝10a、18aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール17との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
【0034】
ナット18はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、真空浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、熱処理後のスケール除去のためのバフ加工等を省略することができ、低コスト化を図ることができる。一方、ねじ軸10はS55C等の中炭素鋼あるいはSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、高周波焼入れ、あるいは浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0035】
ナット18の外周面18bには減速機構6を構成する出力歯車4が一体に固定されると共に、この出力歯車4の両側に2つの支持軸受20、20が所定のシメシロを介して圧入されている。これにより、駆動軸6からスラスト荷重が負荷されても支持軸受20、20と出力歯車4の軸方向の位置ズレを防止することができる。また、2つの支持軸受20、20は、両端部にシールド板20a、20aが装着された密封型の深溝玉軸受で構成され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から摩耗粉等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0036】
また、本実施形態では、ナット18を回転自在に支持する支持軸受20が同じ仕様の深溝玉軸受で構成されているので、前述した駆動軸6からスラスト荷重および出力歯車4を介して負荷されるラジアル荷重の両方を負荷することができると共に、組立時に誤組み防止のための確認作業を簡便化することができ、組立作業性を向上させることができる。なお、ここで、同一仕様の転がり軸受とは、軸受の内径、外径、幅寸法をはじめ、転動体サイズ、個数および軸受内部すきま等が同一なものを言う。
【0037】
ここで、図3に拡大して示すように、ハウジング2a、2bの合せ面21a、21bのどちらか一方の内側に突起21が一体に形成されている。ここでは、ハウジング2bの合せ面21bに形成されている。この突起21は、図4に示すように、合せ面21bから軸方向に突出して円弧状に対向して形成されている。これにより、ハウジング2bの断面係数が高くなり、ハウジング2bの軽量化を図りつつ強度を向上させることができると共に、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において検出し、信頼性を高めた電動リニアアクチュエータ1を提供することができる。
【0038】
なお、図5に示すように、突起22を合せ面21bから軸方向に突出して同心円状に円形に形成するようにしても良い。これにより、ハウジング2b’の断面係数が一層高くなり、強度を向上させることができる。
【0039】
こうしたハウジング2b、2b’を組み立てた状態を図6に示す。すなわち、ナット18と出力歯車4および一対の支持軸受20、20のアッセンブリーをねじ軸10に外挿してハウジング2a、2bに組み立てる場合、左右を逆向きに装着しても、ハウジング2b、2b’の突起21(22)が出力歯車4の側面に干渉し、図7に拡大して示すように、ハウジング2a、2b(2b’)の合せ面21a、21bが噛合わなくなってすきまが生じる。この突起21(22)が、出力歯車4の逆組みの時のみ干渉するように構成されているので、ナットアッセンブリーの誤組みを組立工程において容易に検出することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用され、電動モータからの回転入力を、ボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換するボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータに適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電動リニアアクチュエータ
2 ハウジング
2a 第1のハウジング
2b、2b’ 第2のハウジング
3 入力歯車
4 出力歯車
5 減速機構
6 駆動軸
7 ボールねじ機構
8 アクチュエータ本体
9 固定ボルト
10 ねじ軸
10a、18a ねじ溝
11、12 袋孔
13 係止ピン
14 キー
15 止め輪
16 ガイド部材
16a ガイド溝
17 ボール
18 ナット
18b ナットの外周面
19 駒部材
20 支持軸受
20a シールド板
21、22 突起
21a、21b ハウジングの合せ面
50 電動リニアアクチュエータ
51 ボールねじ
52 アクチュエータ本体
53 電動モータ
53a モータ軸
54 歯車減速機構
55 第1歯車
56 位置保持機構
57 ねじ軸
57a、58a ねじ溝
58 ナット
59 ボール
60 ハウジング
61、62 玉軸受
63 第2歯車
64 シャフト
65 ソレノイド
66 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
このハウジングに取り付けられた電動モータと、
この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、
この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、
このボールねじ機構が、前記ハウジングに装着された一対の支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、
このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ハウジングに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、
前記減速機構を構成する出力歯車が前記ナットに固定されると共に、
前記ハウジングがアルミ合金から形成され、第1のハウジングと、その端面に衝合された第2のハウジングとを備え、
当該ハウジングのどちらか一方の内側に、衝合する合せ面よりも軸方向に突出して突起が形成されていることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記ハウジングがダイキャストで形成されると共に、前記突起が当該ハウジングと一体に形成されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記突起が円弧状に対向して形成されている請求項1または2に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記突起が同心円状に円形に形成されている請求項1または2に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記一対の支持軸受が、前記駆動軸からのスラスト荷重および前記出力歯車を介して負荷されるラジアル荷重の両方を負荷することができる同一仕様の転がり軸受で構成されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1のハウジングに前記電動モータが取り付けられ、前記第1のハウジングと第2のハウジングの衝合部に前記ねじ軸を収容するための袋孔が形成されると共に、前記減速機構が、前記モータ軸に固定された入力歯車と、この入力歯車に噛合する前記出力歯車とを備えている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記駆動軸が前記ねじ軸と一体に構成され、当該駆動軸の一端部の径方向に係止ピンが植設されると共に、前記ハウジングの袋孔に、軸方向に延びるガイド溝を有するガイド部材が装着され、前記ガイド溝に前記係止ピンが係合されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記ガイド部材が鋼板からプレス加工によって形成され、熱処理によって硬化処理されている請求項7に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記ガイド部材の端部に止め輪が装着され、この止め輪に前記係止ピンが当接するように設定されている請求項7または8に記載の電動リニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79700(P2013−79700A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220795(P2011−220795)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】