説明

電動二輪車における電力供給システム

【課題】電動二輪車において、放電抵抗等のような大きな部材を必要とすることなく、走行中にメインスイッチがオフ状態となった場合においても、過剰な回生電力の発生を防止できる電力供給システムを得る。
【解決手段】サブバッテリ5と、電源供給ライン22と、モータ8の出力制御及び発電制御を行うモータ駆動部2と、電力供給ライン22を介して電力供給されてモータ駆動部2の制御を行う制御部1とを備え、電源供給ライン22に対して分岐して接続されたスイッチ制御ライン21と、スイッチ制御ライン21に接続されたメインスイッチS1が一旦オン状態となった時に制御部1からの指示によりオン状態が維持されるリレースイッチS2を備えて電力供給ライン22から制御部1に電力供給を行う自己保持電力供給部7とを設け、制御部1はスイッチS1がオフ状態で前記モータ8が発電機として機能する場合の発電量を低減させるようにモータ駆動部2を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動スクータなどの電動二輪車における電源供給システムに関し、特に、電動二輪車に装着された電動機の回生電力発生時において、バッテリへの過充電や過電圧発生を防止して発生電圧の安定化を図ることができる電動二輪車における電源供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電動二輪車は、車軸を回転駆動するための電動機、例えば永久磁石式ブラシレスモータや、バッテリから電力供給を受けて電動機を駆動する電源供給機構を搭載している。この電源供給機構は、電動スクータが惰性で走行する時や下り坂を走行する時などに電動機を発電機として使用し、これにより発電された回生電力でバッテリを充電する回生機能と、電動機に電力を供給する電力供給ラインの電圧を安定化する制御機能とを有する制御部を備えている。
【0003】
電動二輪車において、走行中にメインスイッチが切断された場合に、制御部へ電源供給されず、電動機制御ができなくなることにより電力供給ラインの電圧安定化が行われず、回生電圧が過大になり、電源供給機構を構成するPDU等に対する影響が懸念される場合があった。このような現象を防止するため、過剰な回生電力を放電抵抗等で消費させる構成が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3919002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成によれば、余剰分の回生電力を放電電力等で消費させることができる。しかしながら、電動二輪車への適用を考慮した場合、バッテリ等の機能部材の配置スペースが四輪車に比較して大きく制限されるため、放電抵抗のような大きな部材の配置、放電抵抗の発熱スペースの確保、放電抵抗を冷却する構造等を考慮する必要があるという課題が生じていた。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、電動二輪車において、放電抵抗等のような大きな部材を必要とすることなく、走行中にメインスイッチがオフ状態となった場合においても、過剰な回生電力の発生を防止できる構成を有する電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、バッテリ(5)と、前記バッテリ(5)に接続された電力供給ライン(22)と、モータ(8)と、前記モータ(8)の出力制御及び発電制御を行うモータ駆動部(2)と、前記電力供給ライン(22)を介して電力供給されて前記モータ駆動部(2)の制御を行う制御部(1)とを備えた電動二輪車における電力供給システムにおいて、前記電力供給ライン(22)に対して分岐して接続されたスイッチ制御ライン(21)と、前記スイッチ制御ライン(21)に接続されたメインスイッチ(S1)と、前記メインスイッチ(S1)が一旦オン状態となった時に前記制御部(1)からの指示によりオン状態が維持されるリレースイッチ(S2)を備えて前記電力供給ライン(22)から前記制御部(1)に電力供給を行う自己保持電力供給部(7)と、を設け、前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で前記モータ(8)が発電機として機能する場合の発電量が所定値よりも大きい場合に、その発電量を低減させるように前記モータ駆動部(2)を駆動することを第1の特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の電動二輪車における電力供給システムにおいて、前記電動二輪車の速度である車速を検知する車速検知部(9)を備え、前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で前記車速が所定の速度以下の状態になった場合に、前記リレースイッチ(S2)をオフ状態にして前記自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させることを第2の特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の電動二輪車における電力供給システムにおいて、前記制御部(1)は、前記車速が一定時間以上継続して所定の速度以下の場合に、前記自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させることを第3の特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3にいずれか1項に記載の電動二輪車における電力供給システムにおいて、緊急用バッテリ(12)を備え、前記制御部(1)は、常時微量の電力を前記緊急用バッテリ(12)から供給され前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で車速が所定の速度よりも大きい状態であることを検知した場合に、前記自己保持電力供給部(7)からの電力供給を許可することを第4の特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電動二輪車における電力供給システムにおいて、前記モータ駆動部(2)に生じる回生電力を昇圧又は降圧する昇圧/降圧コンバータ(15)を備え、前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態となり車両が停止した後の走行時において、前記昇圧/降圧コンバータ(15)からの電力供給が行われることを第5の特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴によれば、電動二輪車の走行中にメインスイッチ(S1)が切断された場合であっても、制御部(1)には電力供給がなされているので、この制御部(1)によりモータ(8)が発電機として機能する場合の発電量を低減させるようにモータ駆動部(2)が駆動されるので、メインスイッチ(S1)切断時での走行中において、モータの発電量(回生電力)が大きくなりすぎることを防止でき、放電抵抗等の大きな部品が不要となる。
【0013】
第2の特徴によれば、メインスイッチ(S1)がオフ状態で車速が所定の速度以下の状態になった場合に、自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させることで、メインスイッチ(S1)のオフ時におけるバッテリ(5)の省エネルギー効果を図ることができる。
【0014】
第3の特徴によれば、メインスイッチ(S1)がオフ状態で車速が一定時間以上継続して所定の速度以下の場合に、自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させることで、低速度の持続により回生電力が大きすぎることがない状態を確実に検出してから制御部(1)に対する電力供給を停止させることができる。
【0015】
第4の特徴によれば、一旦、自己保持電力供給部(7)が切断された後に、メインスイッチ(S1)がオフされたまま車両が走行された場合にも、緊急用バッテリ(12)により再度電力供給が許可された自己保持電力供給部(7)から制御部(1)への電力供給を行うことで、制御部(1)による前記モータ駆動部(2)の回生制御を継続して行うことができる。
【0016】
第5の特徴によれば、一旦、自己保持電力供給部(7)が切断された後に、メインスイッチ(S1)がオフされたまま車両が走行された場合にも、モータ駆動部(2)に生じる回生電力が昇圧又は降圧され昇圧/降圧コンバータ(15)から制御部(1)への電力供給を行うことで、制御部(1)による前記モータ駆動部(2)の回生制御を継続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムが搭載された電動二輪車の外観説明図である。
【図2】図1に示した電動二輪車が搭載するパワーユニットの軸方向断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電力供給システムのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電力供給システムにおいて車両状態を管理する場合のフローチャート図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電力供給システムにおいてイグニッションホールドリレーを制御する場合のフローチャート図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電力供給システムにおいて車両停止判定を行う場合のフローチャート図である。
【図7】走行負荷を検知してモータ駆動とエンジン駆動の切替を行う場合の切替ポイント(切替条件境界線)を示すグラフである。
【図8】(a)(b)は、走行負荷を検出する場合の積分値を示すグラフである。
【図9】ワンウェイクラッチの摩耗状態を検知してエンジンの回転制御を行う場合において、モータ駆動による車両走行開始からの時間に対して、車速に対応したエンジン回転数を示すグラフである。
【図10】電動二輪車の前方部分の一部を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る電力供給システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電動二輪車における電力供給システムの実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の電力供給システムが搭載されたハイブリッド型の電動スクータの一例を示す概略側面図である。ハイブリッド型の電動スクータは、動力源としてエンジン及びモータを備え、走行状況に応じて両者を単体で駆動して走行、若しくは併用して走行するものである。
【0019】
図1において、車体フレーム50は、メインフレーム51と、メインフレーム51から左右に分かれて後方に延びるリヤフレーム52とを備えて構成されている。メインフレーム51の前端部にはヘッドパイプ53が結合されている。ヘッドパイプ53には回転自在に操向軸55が支持され、操向軸55の下端部にフロントフォーク56が結合されている。
【0020】
フロントフォーク56の下部には車軸57で支持された車輪58Fが取り付けられ、上部にはハンドル59が設けられている。操向軸55、フロントフォーク56およびハンドル59は、操舵手段を構成する。
【0021】
フロントフォーク56の上部はフロントカバー60で覆われている。フロントカバー60の上方にはハンドルカバー61が設けられている。ハンドルカバー61から車体左右に向けてハンドル59のグリップ部分が突き出している。
【0022】
フロントカバー60の下部にセンタカバー62が結合されている。センタカバー62の後部にボディカバー63が結合されている。ボディカバー63の上方にはシート64が支持されている。
【0023】
メインフレーム51の下側にはエンジン72が懸架され、その後方にモータ8が装着され、エンジン72のクランク軸とモータ8の回転軸とが同軸に配置されるように構成されている。エンジン72のクランク軸(モータ8の回転軸8a)は動力伝達手段を介してドライブスプロケット73に伝達され、スイングアーム65に対して回転可能に支持された後輪58Rをチェーン74により駆動するようになっている。
【0024】
また、スイングアーム65とサイドフレーム52との間には取付ブラケットを介してリアクッション67が取り付けられている。メインフレーム51の下側にはピボット軸69が取り付けられ、このピボット軸69によりスイングアーム65の他方側が支持されている。ボディカバー63後部にはテールランプ71が設けられている。
【0025】
メインフレーム51の上部にはモータ8に72Vの供給するメインバッテリ6が配置され、ヘッドパイプ53の前方側に電装品に12Vを供給するためのサブバッテリ5が配置されている。
メインバッテリ6からの電力は、メインフレーム51の前方に配置されたモータ駆動部(PDU)2を介してモータ8に供給される。なお、エンジン72及びモータ駆動部(PDU)2に対する出力指令は、ハンドル59に設けられているスロットルグリップの操作に従って出力される。
サブバッテリ5からの電力は、シート64の下方に配置されたマネジメントECU(制御部)1及び各種電装品に供給される。
【0026】
エンジン72のクランク軸8aの後方位置には、クランク軸8aに連動するメインシャフト75及びカウンタシャフト76を有する変速機が装着されている。
そして、カウンタシャフト76の近傍位置には、電動二輪車の速度である車速を検知する車速センサ(車速検知部)9が設置されている。車速センサ(車速検知部)9は、カウンタシャフト76の回転数を検出し、この回転数に係数を乗算することで後輪車輪速度を計算し、後輪車輪速度の移動平均から車速を求めるよう構成される。
【0027】
また、エンジン72のクランク軸8aにはエンジン回転センサ10が設置され、クランク角度を検出することで、エンジン回転数を求める。
【0028】
次に、電動二輪車に搭載されたパワーユニットの構造について、図2を参照しながら説明する。図2はパワーユニットの断面図であり、Oが幅方向の中心を示す車体中心線である。
パワーユニットPは、主として、駆動源としてのエンジン72及びモータ8と、エンジン72とモータ8の動力を後輪58Rに伝達する動力伝達機構700と、エンジン72と動力伝達機構700との間でエンジン72の動力を変速して動力伝達機構700に伝達する変速機構としての2段遠心クラッチ800と、を備えて構成されている。
【0029】
エンジン72は、クランク軸8aにコンロッド51を介して連結されたピストン552を備えている。ピストン552は、シリンダブロック553に設けられたシリンダ554内を摺動可能に配設されている。シリンダブロック553の前面にはシリンダヘッド555aとヘッドカバー555bが固定され、シリンダヘッド555aおよびシリンダ554ならびにピストン552で混合気を燃焼させる燃焼室が形成されている。
【0030】
シリンダヘッド555aには、燃焼室への混合気の吸気または排気を制御するバルブ(不図示)と、点火プラグ556とが配設されている。バルブの開閉は、シリンダヘッド555aに軸支されたカム軸337の回転により制御される。カム軸337は一端側に従動スプロケット338を備え、従動スプロケット338とクランク軸8aの一端に設けた駆動スプロケット440との間には無端状のカムチェーン339が掛け渡されている。また、駆動スプロケット440に隣接したクランク軸8aには、スタータモータに接続される始動用ドリブンギヤ414がスプライン嵌合により一体に取り付けられている。
【0031】
クランク軸8aは軸受442、442を介してクランクケース557(左クランクケース557L及び右クランクケース557R)にそれぞれ支持され、クランクケース557の幅方向左側にはステータケース443が連結されており、その内部にアウターロータ形式のモータであるオルタネータ444(交流発電機ACG)が収納されている。クランクケース557の幅方向右側には、2段遠心クラッチ800を収納するクランクケースカバー880が連結されており、さらにクランクケースカバー880の右側端部は軸受445を介してクランク軸8aを支持するクラッチカバー885が連結されている。シリンダブロック553の側方に位置するクランクケースカバー880内の前方の空間にはモータケース660が連結されている。モータケース660の内部には、モータ出力軸661にモータドライブギヤ662が取り付けられたモータ8が一体に収容されている。
【0032】
そして、クランク軸50の左側端部には、オルタネータ444を構成するインナーステータ441に対向するアウターロータ442が取り付けられ、その右側端部には、2段遠心クラッチ8の第1クラッチインナ881がスプライン嵌合されている。また、クランク軸8aには、コンロッド551と第1クラッチインナ881との間に、プライマリドライブギヤ558と外周軸446がクランク軸8aと相対回転自在にその外周を覆うように配置されている。
【0033】
プライマリドライブギヤ558は、後述する動力伝達機構700のメインシャフト75に取り付けられたプライマリドリブンギヤ772と噛み合うとともに、プライマリドライブギヤ558にはプライマリドライブギヤ558より大径のモータドリブンギヤ559が隣接して一体で回転するように取り付けられている。
【0034】
モータドリブンギヤ559は、モータドライブギヤ662と噛み合い、内径部が右側に開口する空間を有して構成され、該空間に収容されたワンウェイクラッチ447を介して外周軸446に接続されている。
【0035】
このワンウェイクラッチ447は、外周軸446の回転数がモータドリブンギヤ559の回転数より高いときに接続されて外周軸446の動力がモータドリブンギヤ559に伝達され、モータドリブンギヤ559の回転数が外周軸446の回転数より高いときに切り離されて動力伝達が遮断される。
【0036】
モータ8は、前述したように、モータ出力軸661にモータドライブギヤ662が取り付けられて構成され、モータドライブギヤ662がクランク軸8a周りに設けられたモータドリブンギヤ559と常時噛み合っている。これにより、モータ8の動力は、モータドライブギヤ662とモータドリブンギヤ559との噛合によりモータドリブンギヤ559に伝達され、モータドリブンギヤ559と一体に回転するプライマリドライブギヤ558から、プライマリドライブギヤ558との噛合によりプライマリドリブンギヤ772を介して動力伝達機構700に伝達される。
ここで、モータドリブンギヤ559はワンウェイクラッチ447を介して外周軸446に接続されるため、モータドリブンギヤ559の回転数が外周軸446の回転数より高いときにのみ、モータ8の動力が動力伝達機構700に伝達される。このとき、ワンウェイクラッチ447が切り離されているため、モータ8の動力が外周軸446に伝達されることはない。
一方、外周軸446の回転数がモータドリブンギヤ559の回転数より高いときには、クランク軸8aの動力が動力伝達機構700に伝達されるので、モータ8はクランク軸8aに連れまわされる。このとき、バッテリのSOC(充電状態)に応じてモータ8でアシストしてもよく、回生充電してもよく、零トルク制御により負荷を軽減することもできる。
【0037】
動力伝達機構700は、メインシャフト75とカウンタシャフト76との間に変速部773を備えて構成され、メインシャフト75の右側端部には、前述したようにクランク軸8aの外周に配設されたプライマリドライブギヤ558と噛み合うプライマリドリブンギヤ772が取り付けられ、カウンタシャフト76の左側端部には、ドライブスプロケット774が取り付けられ、メインシャフト75に伝達された動力がドライブスプロケット774に巻き掛けられたドライブチェーン74(図1参照)を介して、駆動輪58Rに伝達される。また、カウンタシャフト76の右側端部には、サブシャフト775に回転自在に配設された車速検出用入力ギヤ776と噛合する車速検出用出力ギヤ777が設けられている。また、クランクケース557には、車速検出用入力ギヤ776と対向する位置に速度を検出する検出部778が設けられている。
【0038】
変速部773は、メインシャフト75の外周に相対回転自在に配設された低速駆動ギヤ731と、メインシャフト75の外周に配置されメインシャフト75と一体回転しその軸線に沿って摺動自在に設けられた高速駆動シフターギヤ732と、カウンタシャフト76の外周にスプライン嵌合されてカウンタシャフト76と一体に回転する低速従動ギヤ733と、カウンタシャフト76の外周に相対回転自在に配設された高速従動ギヤ734と、カウンタシャフト76の外周に配置されカウンタシャフト76と一体回転しその軸線に沿って摺動自在に設けられたシフター735と、を備えて構成されている。ここで、低速駆動ギヤ731と低速従動ギヤ733は常時噛合して低速ギヤ対736を構成し、高速駆動シフターギヤ732と高速従動ギヤ734は常時噛合して高速ギヤ対737を構成している。
【0039】
このように構成された電動二輪車のパワーユニットPでは、下述する第1及び第2伝達経路の2通りの伝達経路で動力を伝達して電動二輪車1の走行を行なうことができる。
第1伝達経路は、いわゆるエンジン走行における伝達経路であり、エンジン72の動力が、クランク軸8a、2段遠心クラッチ800、外周軸446、ワンウェイクラッチ447、モータドリブンギヤ559(プライマリドライブギヤ558)、プライマリドリブンギヤ772、動力伝達機構700を介して駆動輪56Rに伝達される伝達経路である。この第1伝達経路においては、2段遠心クラッチ800と動力伝達機構700の変速部773においてそれぞれ2段階の変速を行うことができる。なお、第1伝達経路で動力を伝達しながら走行中に、モータ8を駆動することでアシスト走行を行なうことができ、また、モータ8を負荷として回生充電することもできる。
第2伝達経路は、いわゆるEV走行における伝達経路であり、モータ8の動力が、モータ出力軸661、モータドライブギヤ662、モータドリブンギヤ559(プライマリドライブギヤ558)、プライマリドリブンギヤ772、動力伝達機構700、ドライブチェーン74を介して駆動輪WRに伝達される伝達経路である。このとき、モータ8の動力は、ワンウェイクラッチ447の空転によりクランク軸8aに伝達されることはない。また、この第2伝達経路においては、動力伝達機構700の変速部773において2段階の変速を行うことができる。
【0040】
この第1及び第2伝達経路の切替はワンウェイクラッチ447により機械的になされ、ワンウェイクラッチ447の外径側のモータドリブンギヤ559の回転数と内径側の外周軸446の回転数に基づき、外周軸446の回転数がモータドリブンギヤ559の回転数より高ければ第1伝達経路により動力が伝達され、モータドリブンギヤ559の回転数が外周軸446の回転数より高ければ第2伝達経路により動力が伝達される。
【0041】
本発明の電動二輪車における電力供給システムは、図3のブロック図に示すように、システム全体の制御を行うマネジメントECU(制御部)1と、モータ8の制御を行うモータ駆動部2と、グリップ角度を検出するTBW制御部3と、エンジンへの燃料制御を行うFI−ECU4と、マネジメントECU(制御部)1に12Vの電圧供給を行うサブバッテリ5と、モータ8にモータ駆動部2を介して72Vの電圧供給を行うメインバッテリ6と、マネジメントECU(制御部)1とサブバッテリ5との間に接続されたイグニッションホールドリレー7を備えている。
マネジメントECU(制御部)1には、車速センサ9及びエンジン回転センサ10から検出された車速及びエンジン回転数の信号が入力されるようになっている。
【0042】
マネジメントECU(制御部)1は、サブバッテリ5に接続された電力供給ライン20からイグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)7及び電力供給ライン22を介して電源電圧(12V)が供給される(ラインY)。また、前記電源供給ライン22に対して分岐してスイッチ制御ライン21が接続され、スイッチ制御ライン21に接続されたメインスイッチS1を介してサブバッテリ5からマネジメントECU(制御部)1に対して電源電圧(12V)が供給される(ラインX)。
【0043】
イグニッションホールドリレー7は、ホールドライン23に接続されたコイルL1に電流が流れることでリレースイッチS2がオンする。スイッチ制御ライン21は、マネジメントECU(制御部)1内のダイオードD1を介してホールドライン23に接続されるとともに、マネジメントECU(制御部)1内の電圧供給部30及びダイオードD2を介してホールドライン23に接続される。
また、電源供給ライン22は、車速センサ9及びエンジン回転センサ10に接続されることで、これらに対して電源電圧を供給している。
【0044】
したがって、メインスイッチS1が一旦オンすると、スイッチ制御ライン21からホールドライン23に電流が流れてリレースイッチS2がオンし、その後にメインスイッチS1がオフとなっても、電圧供給部30からホールドライン23に電圧が供給されることで、ホールドライン23に電流が流れ続けるので、リレースイッチS2はオン状態を維持し、サブバッテリ5から電力供給ライン20及び電力供給ライン22を介してマネジメントECU(制御部)1に電力が供給される。
【0045】
マネジメントECU(制御部)1は、各種センサ(車速センサ9、エンジン回転センサ10等)に接続されるとともに、これらのセンサからの情報を基に車両状態を車両状態管理部40で管理し、モータ駆動部2、TBW制御部3、FI−ECU4へ制御信号を出力してモータ8やエンジン72(図1)の各種制御を行う。
マネジメントECU(制御部)1によるモータ8の制御としては、モータ8が発電機として機能する場合の発電量が所定値よりも大きい場合に、その発電量を低減させるようにモータ駆動部2を駆動(回生制御)することが行われる。
【0046】
電圧供給部30は、容量成分を含むことで電圧供給を行うとともに、車両状態管理部40からの制御信号により電圧供給の有無が制御される。
すなわち、車速センサ(車速検知部)9から検出される車速が一定速度を超える場合は、車両状態管理部40が走行状態であると判断し、イグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)7に対して電圧供給部30からの電圧の供給が行われ、リレースイッチS2がオンの状態を維持して、第2の電源供給ライン22からマネジメントECU(制御部)1への電力供給が継続する。
メインスイッチ(S1)がオフ状態であり、車速センサ(車速検知部)9から検出される車速が、一定時間以上継続し所定の車速以下(カウンタシャフトの回転数が低回転数以下)の状態になったと車両状態管理部40が判断した場合、電圧供給部30からの電圧の供給が停止される制御が行われることで、イグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)7のリレースイッチS2がオフとなり、電源供給ライン22からマネジメントECU(制御部)1への電力供給が停止する。これにより、低速度の持続により回生電力が大きすぎることがない状態を確実に検出してから、マネジメントECU(制御部)1に対する電力供給を停止させることができる。
【0047】
また、メインスイッチ(S1)がオフ状態であり、車速センサ(車速検知部)9から検出される車速が、所定の速度以下の状態になったと車両状態管理部40が判断した場合、電圧供給部30からの電圧の供給が停止される制御としてもよい。この場合、イグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)7を介した電力供給を停止させることで、メインスイッチ(S1)のオフ時におけるバッテリ(5)の省エネルギー効果を図ることができる。
【0048】
モータ駆動部2は、リレースイッチS3を介してメインバッテリ6に接続されることで、モータ8の駆動を制御する。リレースイッチS3は、コイルL2に電流が流れることでオンし、コイルL2に接続された制御線は、外部スイッチS4を介して電源供給ライン20に接続されている。また、モータ駆動部2は、マネジメントECU(制御部)1との間でCAN通信を行うことでモータ8を駆動制御及び回生制御するとともに、マネジメントECU(制御部)1へ信号を出力する。
【0049】
TBW制御部3は、ハンドルに装着されたスロットルグリップの角度を検出し、マネジメントECU(制御部)1との間で信号の送受信を行うことで、マネジメントECU(制御部)1によりモータ駆動制御やエンジン制御が行われる。
【0050】
FI−ECU4は、エンジンへの燃料供給の制御を行うもので、マネジメントECU(制御部)1からエンジン停止要求信号を受信し、マネジメントECU(制御部)1へ燃料制御信号を送信する。
【0051】
次に、上述した電動二輪車における電力供給システムの動作について説明する。
マネジメントECU(制御部)1は、メインスイッチS1のスイッチオン信号の読取(A)、車両の車速の算出(B)、車両状態の管理(C)、イグニッションホールドリレーの制御(D)の各処理を一定時間毎に常時実施する。
【0052】
メインスイッチS1のスイッチオン信号の読取(A)は、メインスイッチS1のスイッチオン信号を検知することで、メインスイッチS1のオン・オフを判定するものである。
車両の車速の算出(B)は、車速センサ(車速検知部)9がカウンタシャフトの回転数を検出し、この回転数に係数を乗算することで後輪車輪速度を計算し、後輪車輪速度の移動平均から車速を算出する。
【0053】
車両状態の管理(C)及びイグニッションホールドリレーの制御(D)は、メインスイッチS1のオン・オフ、車速センサ9に基づく車両停止判定フラグの有無、エンジンへの燃料噴射を行うフェールフラグの有無を判断するマネジメントECU(制御部)1で行われる。
マネジメントECU(制御部)1の車両状態管理部40による車両状態の管理(C)は、(1)モータの駆動を行う通常制御状態、(2)エンジンの駆動を行うフェール状態、(3)モータ駆動・エンジン駆動されないが車速があるイグニッションホールド状態、(4)車両が停止するシャットダウン状態、(5)メインスイッチ「オン」前の初期化状態、のいずれの状態であるかを管理する。
【0054】
すなわち、車両状態の管理(C)は、図4に示すように、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1のスイッチオン信号の読み取りから所定時間が経過したかを判断し(ステップ101)、所定時間が経過していない場合には初期化状態(ステップ102)となる。
所定時間が経過している場合、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)がオフであるかどうかを判断し(ステップ103)、オンである場合はフェールフラグの有無を判断し(ステップ104)、フェールフラグが無い場合にモータの駆動を行う通常制御が行われる(ステップ105)。
ステップ104においてフェールフラグが有りの場合は、エンジンの状態はフェール状態であると判断され、エンジンが停止するように制御される(ステップ106)。
【0055】
ステップ103においてメインスイッチ(イグニッションスイッチ)がオフである場合は、車両停止フラグの有無(車速の有無)を判断し(ステップ107)、車両停止フラグが有り(車速がない)の場合、シャットダウン状態(ステップ108)となる。
ステップ107において車両停止フラグが無い(車速がある)場合、更にフェールフラグの有無を判断し(ステップ109)、フェールフラグが有りの場合は、エンジンの駆動を行うフェール状態となる(ステップ106)。
ステップ109においてフェールフラグが無い場合は、モータ駆動やエンジン駆動が行われていない状態であるが車速があるのでマネジメントECU(制御部)1による制御が必要であると判断し、イグニッションホールド状態となる(ステップ110)。
【0056】
イグニッションホールド状態では、マネジメントECU(制御部)1による各制御が必要となるので、電圧供給部30からの供給電圧により、イグニッションホールドリレー回路7のリレースイッチS2がオンである必要がある。
すなわち、マネジメントECU(制御部)1の車両状態管理部40においては、図5に示すようなイグニッションホールドリレーの制御(D)が行われる。
【0057】
車両起動後において、図5におけるシャットダウン状態であるかどうかを判断し(ステップ201)、シャットダウン状態でない場合(通常制御状態、フェール状態、イグニッションホールド状態のいずれかの場合)、電圧供給部30から電圧供給がされてホールドライン23に電流が流れることで、リレースイッチS2がオンするイグニッションホールドリレー7のリレー駆動を行う(ステップ202)。
ステップ201において、シャットダウン状態であると判断された場合は、電圧供給部30からホールドライン23への電圧供給を遮断することで、リレースイッチS2がオフするイグニッションホールドリレー7のリレー駆動を行う(ステップ203)。
【0058】
車両停止の判定は一定時間毎に行い、判定を行うための車両停止判定フラグの設定は、図6で示した手順により行われる。
先ず、車速センサ9で検出された車速が予め設定された車両停止判定車速度以下であるかどうかを判断する(ステップ301)。車両停止判定車速度以下でない場合、車両は走行中であると判断し、車両停止判定フラグの有無の設定を確認し(ステップ302)、フラグがない場合(OFFの場合)は車両停止カウント値を「0」にする(ステップ303)。
【0059】
ステップ302において車両停止判定フラグが既にある場合(ONの場合)は、車両停止判定カウント値をインクリメントする(ステップ304)。
次に、車両停止判定カウント値が規定時間以上継続しているかを判断する(ステップ305)。
車両停止判定カウント値が規定時間継続していない場合は、車両停止判定フラグ有りを維持する。ステップ305において規定時間以上になった場合には、車両は走行状態にあると判断し車両停止判定フラグを無し「0」にし(ステップ306)、車両停止カウント値を「0」にする(ステップ303)。
【0060】
ステップ301において車速が車両停止判定車速度以下の場合、車両停止判定フラグの有無の設定を確認し(ステップ307)、車両停止判定フラグが有りの場合(ONの場合)は車両停止カウント値を「0」にする(ステップ308)。つまり、ここでは、車両の停止状態にあるか否かの判断を行う。
【0061】
ステップ307において車両停止判定フラグが無しの場合(OFFの場合)は、車両停止判定カウント値をインクリメントする(ステップ309)。
次に、車両停止判定カウント値が規定時間以上継続しているかを判断する(ステップ310)。
車両停止判定カウント値が規定時間継続していない場合は、車両停止判定フラグ無しを維持する。ステップ310において規定時間以上になっている場合は、車両は停止状態にあると判断し車両停止判定フラグを有り「1」にし(ステップ311)、車両停止カウント値を「0」にする(ステップ308)。
【0062】
前記したフェール状態においてエンジン駆動を行うに際して、モータ駆動からエンジン駆動への切替制御は、図7に示すように、予め設定された車速とグリップ角度のマップを参照して行われる。車速は、上述した車速センサ(車速検知部)9で検出される。また、グリップ角度は、上述したTBW制御部3で検出し、グリップ全開時を100%、全閉時を0%としている。そして、図7に示すように、車速とグリップ角度(%)の関係が斜線部分の領域にある場合には、モータ駆動による走行が行われ、車速とグリップ角度(%)の関係が斜線部分より右側に位置する場合には、エンジン単独の駆動による走行が行われる。
【0063】
この際、道路形状等から生じる走行負荷に応じて、図7における切替ポイント(切替条件境界線)が可変するようにしている。通常の走行負荷である場合は、切替ポイント(切替条件境界線)が細線の位置となり、車速がV4以上ではエンジン単独走行、車速がV2以下ではモータエンジン単独走行、車速がV2〜V4の間ではグリップ操作によるグリップ開度に応じて切り替わる。
走行負荷が大きい場合は、切替ポイント(切替条件境界線)が切替車速補正量の範囲で検出される走行負荷の大きさに応じて段階的に左側に移動し、最大の走行負荷の場合に、切替ポイント(切替条件境界線)が太線の位置となり、車速がV3以上ではエンジン単独走行、車速がV1以下ではモータエンジン単独走行、車速がV1〜V3の間ではグリップ操作によるグリップ開度に応じて切り替わる。
【0064】
走行負荷の大きさは、図8(a)(b)に示すように、予め決められた走行抵抗判定時間に対する車速の増加量に対応する積分値(斜線で示される三角形部分の面積)で求める。積分値が小さいほど走行負荷が大きいと判定する。例えば、図8(b)で求められる積分値は、図8(a)で求められる積分値より小さいので、走行負荷が大きい。走行負荷に対応する算出された積分値は、例えば、「走行抵抗標準値」「走行抵抗やや高い」「走行抵抗高い」「走行抵抗非常に高い」の四段階に分類し、各段階に応じて切替車速補正量の範囲で補正されるマップによる切替ポイント(切替条件境界線)で切替制御が行われる。
【0065】
また、モータエンジン単独走行からエンジン単独走行に切り替える場合に、切替時の車速を一定にするため、発進(ワンウェイ)クラッチの摩耗状態を検知し、その状態に応じてエンジンの回転制御が行われる。
すなわち、図9に示すように、モータ駆動による車両走行開始からの時間に対して、車速に対応したエンジン回転数を示すグラフ図において、エンジンが始動し、その後はアイドリング回転を維持するエンジンスタートポイント、ワンウェイクラッチの理想的な切替ポイント、ワンウェイクラッチが摩耗しているときの切替ポイントが示される。
ワンウェイクラッチが摩耗していない通常状態においては、図9における太線で表示されるように、例えば走行開始から一定時間経過したt0においてエンジン回転が上昇し、エンジン回転数がO/W(ワンウェイ)クラッチの基準締結Neに達した時間t1においてエンジン駆動に切り替わる。
【0066】
その一方、ワンウェイクラッチが摩耗している場合は、図9における細線で表示されるように、エンジン回転数が基準締結Neより高い摩耗時締結Neに達した時間t2においてエンジン駆動に切り替わるので、エンジン始動からクラッチ締結までの時間差(t2−t1)が生じることになる。
【0067】
本例のエンジンの回転制御によれば、ワンウェイクラッチの摩耗が検知された場合は、TBW制御部3においてグリップ開度を大きくする(回転を上昇させる)制御を行うことで、図9の細線で示した摩耗時のエンジン回転の上昇を、通常時の太線の傾きに近づけるようにすることで、基準締結Neに達した時点でモータ駆動からエンジン駆動に切り替わるようにする。なお、ワンウェイクラッチの摩耗の検知は、ワンウェイクラッチにおける入力側と出力側との回転による差動を検出することで判断する。
【0068】
上述した電動二輪車におけるモータ駆動(EVモード)、エンジン駆動に対してモータを駆動するアシスト走行(ハイブリッドモード)、エンジン駆動(ENGモード)の各モードは、図10に示すように、車両メータ901の前方におけるハンドルカバー61にそれぞれ配置されたEVモード・インジケータ902,ハイブリッドモード・インジケータ903,ENGモード・インジケータ904により、いずれかが点灯することでどの駆動状態であるかを表示できるように構成されている。
また、各モードの選択は、ハンドルカバー61に設置されたモードスイッチ910により、ユーザが切替可能なように構成されている。モードスイッチ910は、押圧する毎に状態が変化するロータリースイッチで構成され、EVモード,ハイブリッドモード,ENGモードの各モードを選択可能としている。また、この切替は、メインバッテリ6の充電状態が常時検知されることで、SOCが少ない時など、車両状態や走行状態によっては、EVモードの選択が禁止されるようになっている。
なお、図10において、911はキルスイッチ、912はハザードランプスイッチ、913はヘッドライト光軸切替スイッチ、914はウインカスイッチ、915はホーンスイッチである。
【0069】
マネジメントECU(制御部)1の電圧供給部30及び車両状態管理部40が上述したように動作するので、車両状態が(1)の通常制御状態である場合、マネジメントECU(制御部)1においては、グリップの角度、車速、運転状況等に基づく通常のモータ8の駆動制御や回生制御が行われる。
この場合、回生電力発生時において、モータ8の発電量が所定値よりも大きい場合に、その発電量を低減させるようにモータ駆動部2を駆動する。
例えば、下り坂で回生電力を得るような場合、モータ8の発電量が所定値以下であれば、メインバッテリ6への充電を行うが、発電量が所定値よりも大きい場合には、過剰な回生電力の発生からモータ駆動部2の回路を保護するために、発電量を低減させるモータ8の駆動を行うようにモータ駆動部2をマネジメントECU(制御部)1が制御する。
【0070】
車両状態が(2)のフェール状態である場合、グリップ開度を閉じたり、燃料噴射量を低減させたり、点火時期を遅角等させ、また、モータの駆動を低減させるようにして、車両の停止を図るようにする。
【0071】
また、車両の走行中にメインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された場合は、車両管理部40においてイグニッションホールド状態(モータ駆動及びエンジン駆動なしで車速がある状態)と判断されるので、電圧供給部30からの電圧供給でイグニッションホールドリレー7のリレースイッチS2がオン状態を維持し、電力供給ライン22を介してマネジメントECU(制御部)1に電力供給が行われるので、モータ8において(1)の通常制御状態と同様の回生制御が行われる。その結果、モータ8の回生時の発電量が所定値よりも大きい場合には、モータ駆動部2により発電量を低減させるようにモータ8を制御することが可能となる。
また、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された後、その後の一定期間に車速の検知がない場合(図4における車両停止判定フラグない場合)は、車両管理部40においてシャットダウン状態(メインスイッチS1「オフ」で車速がない状態)と判断されるので、電圧供給部30からの電圧供給が遮断され、イグニッションホールドリレー7のリレースイッチS2がオフとなる。
【0072】
上述の構成によれば、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された場合において、車両の車速を検知してマネジメントECU(制御部)1への電力供給が行われてモータ駆動部2の制御が行われるので、走行中にメインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1がオフされた場合であっても、過剰な回生電力を放電抵抗等で消費させる構成を必要することなく、過剰な回生電力の発生からモータ駆動部2の回路を保護することができる。
また、電圧供給部30からの電圧供給で動作するイグニッションホールドリレー7を設けるだけで、特別な回路を必要としないため、過剰な回生電力の発生の防止について、簡易な構成で実現することができる。
【0073】
また、図3の電力供給システムにおいて、マネジメントECU(制御部)1の電圧供給部30に対して、常時微量の電力を供給する緊急用バッテリ12を備えるようにしてもよい。この緊急用バッテリ12を設けることで、車両状態管理部40でメインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1がオフ状態で車速が所定の速度よりも大きい状態であることを検知した場合に、電圧供給部30によりホールドライン23に電流を流してイグニッションホールドリレー7をオンさせるように制御を行うことが可能となる。
この構成により、一旦車両が停止する等して、イグニッションホールドリレー7が切断された後に、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1がオフされたまま車両が下り坂を走行するような場合にも、緊急用バッテリ12による電力供給でマネジメントECU(制御部)1において再度イグニッションホールドリレー7のリレースイッチS2をオンさせることで、マネジメントECU(制御部)1への電力供給を行うことができる。
【0074】
次に、電動二輪車における電力供給システムの他の例について、図11を参照して説明する。図11において、図3の電力供給システムと同様の構成をとる部分については同一符号を付している。
図11の電力供給システムでは、モータ駆動部2の出力側に昇圧/降圧コンバータ15を接続し、昇圧/降圧コンバータ15の出力側をイグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)7とマネジメントECU(制御部)1との間に接続することで、昇圧/降圧コンバータ15の出力が電圧供給ライン22を介してマネジメントECU(制御部)1に入力されるよう接続されている。
【0075】
昇圧/降圧コンバータ15は、モータ駆動部2に生じるモータ8の回生電力について、昇圧若しくは降圧を行うことでサブバッテリ5と同じ12Vを出力するものである。すなわち、モータ駆動部2に生じるモータ8の回生電力が12V以下である場合は昇圧することで12Vを出力し、12Vを超える場合は降圧することで12Vを出力する。昇圧/降圧コンバータ15からの出力は、マネジメントECU(制御部)1に直接入力されることで、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された場合においても、走行による回生電力が生じた場合は、イグニッションホールドリレー7の作動にかかわらずモータ駆動部2を動作させ、過剰な回生電力の発生からモータ駆動部2の回路を保護することができる。
【0076】
図3の電力供給システムの構成では、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された後に車両が一旦停止し、イグニッションホールドリレー7が切断された場合は、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1がオンしない限りマネジメントECU(制御部)1に対して電力供給が行われない。
これに対して図11の構成によれば、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1が切断された後に車両が一旦停止し、イグニッションホールドリレー7が切断された後に、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)S1がオフされたまま車両が下り坂を走行するような場合においても、走行による回生電力が生じ、イグニッションホールドリレー7の作動にかかわらずモータ駆動部2を動作させるので、過剰な回生電力の発生からモータ駆動部2の回路を保護することができる。
【0077】
上述した各例の電力供給システムでは、マネジメントECU(制御部)1に対して、サブバッテリ5から電力が供給されるように構成したが、メインバッテリ6から降圧手段を介して降圧された電圧が電源供給ライン20を介してマネジメントECU(制御部)1に供給される構成でもよい。この場合には、サブバッテリ5は不要になる。
【符号の説明】
【0078】
1…マネジメントECU(制御部)、 2…モータ駆動部、 3…TBW制御部、
4…FI−ECU、 5…サブバッテリ、 6…メインバッテリ、
7…イグニッションホールドリレー(自己保持電力供給部)、
8…モータ、 9…車速センサ(車速検知部)、 12…緊急用バッテリ、
15…昇圧/降圧コンバータ、
20…電力供給ライン、 21…スイッチ制御ライン、
22…電力供給ライン、 23…ホールドライン、
30…電圧供給部、 40…車両状態管理部、
S1…メインスイッチ(イグニッションスイッチ)、 S2…リレースイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(5)と、前記バッテリ(5)に接続された電源供給ライン(22)と、モータ(8)と、前記モータ(8)の出力制御及び発電制御を行うモータ駆動部(2)と、前記電力供給ライン(22)を介して電力供給されて前記モータ駆動部(2)の制御を行う制御部(1)とを備えた電動二輪車における電力供給システムにおいて、
前記電源供給ライン(22)に対して分岐して接続されたスイッチ制御ライン(21)と、
前記スイッチ制御ライン(21)に接続されたメインスイッチ(S1)と、
前記メインスイッチ(S1)が一旦オン状態となった時に前記制御部(1)からの指示によりオン状態が維持されるリレースイッチ(S2)を備えて前記電力供給ライン(22)から前記制御部(1)に電力供給を行う自己保持電力供給部(7)と、を設け、
前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で前記モータ(8)が発電機として機能する場合の発電量が所定値よりも大きい場合に、その発電量を低減させるように前記モータ駆動部(2)を駆動する
ことを特徴とする電動二輪車における電力供給システム。
【請求項2】
前記電動二輪車の速度である車速を検知する車速検知部(9)を備え、
前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で前記車速が所定の速度以下の状態になった場合に、前記リレースイッチ(S2)をオフ状態にして前記自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電動二輪車における電力供給システム。
【請求項3】
前記制御部(1)は、前記車速が一定時間以上継続して所定の速度以下の場合に、前記自己保持電力供給部(7)による電力供給を停止させる
ことを特徴とする請求項2に記載の電動二輪車における電力供給システム。
【請求項4】
緊急用バッテリ(12)を備え、
前記制御部(1)は、常時微量の電力を前記緊急用バッテリ(12)から供給され前記メインスイッチ(S1)がオフ状態で車速が所定の速度よりも大きい状態であることを検知した場合に、前記自己保持電力供給部(7)からの電力供給を許可する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電動二輪車における電力供給システム。
【請求項5】
前記モータ駆動部(2)に生じる回生電力を昇圧又は降圧する昇圧/降圧コンバータ(15)を備え、
前記制御部(1)は、前記メインスイッチ(S1)がオフ状態となり車両が停止した後の走行時において、前記昇圧/降圧コンバータ(15)からの電力供給が行われる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電動二輪車における電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−223856(P2011−223856A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260408(P2010−260408)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】