説明

電動式パワーステアリング装置

【課題】部品点数を抑える事により低コストで、しかも、歯打ち音の如き不快な異音や振動が発生する事を防止でき、且つ、ウォーム軸6の先端部外周面と滑り軸受17の内周面との滑り接触部での発熱を十分抑えられる、電動式パワーステアリング装置を実現する。
【解決手段】ウォーム歯をウォームホイールに向け押圧する為の付勢部材10aとコイルばね11aとを、上記滑り軸受17に直接支持する。又、この滑り軸受17を構成する通孔21の内周面に、グリースを保持自在な複数の凹溝22を形成する。この様な構成により、運転時に、これら各凹溝22から上記滑り接触部に十分量のグリースを安定して供給する事ができて、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る電動式パワーステアリング装置は、自動車の操舵装置として利用するもので、電動モータを補助動力として利用する事により、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図るものである。本発明は、この様な電動式パワーステアリング装置を構成するウォーム軸の先端部外周面とこのウォーム軸の先端部を回転自在に支持する為の滑り軸受の内周面との、滑り接触部での発熱を抑えられる構造を実現すべく発明したものである。
【背景技術】
【0002】
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年普及している。電動式パワーステアリング装置は、油圧式のパワーステアリング装置に比べて、小型・軽量にでき、補助動力の大きさ(トルク)の制御が容易で、しかもエンジンの動力損失が少ない等の利点がある。
【0003】
電動式パワーステアリング装置の構造は、各種知られているが、何れの構造の場合でも、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸に、電動モータの補助動力を、減速機を介して付与する。この減速機として一般的には、ウォーム減速機が使用されている。ウォーム減速機を使用した電動式パワーステアリング装置の場合、上記電動モータにより回転駆動されるウォームと、上記回転軸と共に回転するウォームホイールとを噛合させて、上記電動モータの補助動力をこの回転軸に伝達自在とする。
【0004】
例えば特許文献1には、図9〜10に示す様な、電動式パワーステアリング装置が開示されている。ステアリングホイール1により所定方向に回転させられる、回転軸であるステアリングシャフト2の前端部は、ハウジング3の内側に回転自在に支持しており、この部分にウォームホイール4を固定している。このウォームホイール4と噛合するウォーム歯5をウォーム軸6の軸方向中間部に設け、電動モータ7により回転駆動されるウォーム8の両端部は、深溝型玉軸受等の1対の転がり軸受9a、9bにより、上記ハウジング3内に回転自在に支持されている。又、このハウジング3内にはグリース等の潤滑剤が充填されており、上記ウォームホイール4と上記ウォーム歯5との噛合部、並びに、上記各転がり軸受9a、9bの転がり接触部等を潤滑している。
【0005】
更に、上記ウォームホイール4と上記ウォーム歯5との噛合部のバックラッシュをなくす為に、上記ウォーム軸6の先端部(図10の右端部)を上記ウォームホイール4に向け弾性的に押圧する様にしている。即ち、上記ウォーム軸6の先端部で先端側の転がり軸受9aよりも突出した部分に、付勢部材10を外嵌し、この付勢部材10と上記ハウジング3との間にコイルばね11等の弾性部材を設けている。
【0006】
具体的には、上記ハウジング3内で上記ウォーム軸6の先端部に対向する部分に、保持凹部12を設け、この保持凹部12内にホルダ13を保持している。又、上記ウォーム軸6の先端寄り部分はこのホルダ13に、ゴムの如きエラストマー等の弾性材により造られた弾性リング14と、この弾性リング14の外径側に保持された上記転がり軸受9aとにより、回転及び上記ウォームホイール4に対する遠近動を可能に支持している。上記付勢部材10は、上記ウォーム軸6の先端部で上記転がり軸受9aよりも突出した部分に、この転がり軸受9aに対する相対回転を自在に(実際には付勢部材10の内側でのウォーム軸6の回転を自在に)外嵌している。この付勢部材10は、回転はしないが、上記ウォームホイール4に対する遠近動を可能に、上記ホルダ13の軸方向外側面(軸方向に関して外とは、ウォーム軸6の先端側を、反対に軸方向に関して内とは、ウォーム軸6の基端側を言う。本明細書全体で同じ。)に保持されている。又、上記コイルばね11の両端部は、上記ホルダ13の軸方向外側面に係止されている。この状態で、このコイルばね11の内周面は、上記付勢部材10の外周面のうちで上記ウォームホイール4とは反対側の面に、弾性的に当接した状態となる。そして、上記コイルばね11により、上記付勢部材10を介して、上記ウォーム歯5を上記ウォームホイール4に向け押圧している。この様な構成により、これらウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑え、前記ステアリングシャフト2の回転方向を変える際に、歯打ち音と呼ばれる不快な異音や振動が発生する事を防止している。
【0007】
上述の様な従来構造の場合には、ウォーム歯5をウォームホイール4に向け弾性的に押圧した状態で、ウォーム軸6をこのウォームホイール4に対する遠近動を可能に支持する為に、このウォーム軸6の先端寄り部分を、弾性リング14と、転がり軸受9aと、ホルダ13と、付勢部材10と、コイルばね11とにより支持している。この様な構造の場合、部品点数が多く、その分、組み付け作業が面倒になると共に、製造コストが増大する可能性がある。
【0008】
これに対して、特許文献2には、ウォーム軸の先端部を滑り軸受により回転自在に支持すると共に、円環状のコイルばねにより、この滑り軸受を介してウォーム軸の先端部をウォームホイールに向け弾性的に押圧する構造が記載されている。又、特許文献3には、ハウジングの内側に弾性変形させた(撓ませた)状態で内嵌固定した滑り軸受により、ウォーム軸の先端部を回転自在に支持し、この撓みに基づく滑り軸受自身の弾性力により、ウォーム軸の先端部をウォームホイールに向け弾性的に押圧する構造が記載されている。
【0009】
これら特許文献2、3に記載された発明の構造の場合は、転がり軸受に代えて、滑り軸受を用いている分、部品点数の低減、延いては、電動式パワーステアリング装置のコスト低減を図れる。但し、ウォーム軸の先端部を滑り軸受を用いて支持した場合、この滑り軸受の内周面(滑り面)とこのウォーム軸の先端部外周面との滑り接触部が、摩擦熱により高温になり易くなる。即ち、一般的な滑り軸受の場合、内周面である滑り面を単一円筒面としている為、滑り接触部に十分量の潤滑剤を安定して供給する事が難しくなる。この為、この滑り接触部で油膜切れを生じ易く、この滑り接触部が高温になり易くなる。そして、この様にして滑り接触部が高温になる事で、焼き付きの発生や摩耗量の増加等により軸受寿命が低下し易くなり、ウォーム軸の回転精度を低下させる(軸振れを増大させる)と言った問題を生じる可能性がある。特に、上記特許文献2、3に記載された発明の構造の様に、ウォーム軸の先端部を滑り軸受により直接押圧する構造の場合には、滑り接触部での接触面圧が高くなる為、発熱の程度が著しくなり、上述の様な問題が、より一層発生し易くなる。
【0010】
尚、本発明に関連するその他の先行技術文献として、特許文献4に記載された発明がある。この特許文献4には、調心輪付きころ軸受を対象として、調心輪の内周面及び外輪の外周面に、固体潤滑剤を保持する為のポケットを形成する発明が記載されている。但し、この様な特許文献4に記載された発明は、相対的に揺動変位する調心輪と外輪との間の発熱防止を意図した発明であり、本発明の様に、互いに相対回転するウォーム軸と滑り軸受との滑り接触部での発熱を対象とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−306898号公報
【特許文献2】特許3624309号公報
【特許文献3】特許3658682号公報
【特許文献4】特開2006−214469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、部品点数を抑える事により低コストで、しかも、歯打ち音の如き不快な異音や振動が発生する事を防止でき、且つ、ウォーム軸の先端部外周面とこのウォーム軸の先端部を回転自在に支持する為の滑り軸受の内周面との滑り接触部での発熱を十分抑えられる、電動式パワーステアリング装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電動式パワーステアリング装置は、前記図9〜10に示した従来構造の電動式パワーステアリング装置と同様に、ハウジングと、回転軸と、ウォームホイールと、ウォームと、電動モータと、付勢部材と、弾性部材とを備え、上記ハウジング内にグリース等の潤滑剤を充填している。
このうちのハウジングは、車体等の固定の部分に支持されて、操舵時にも回転する事はない。
又、上記回転軸は、上記ハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する。この様な回転軸としては、例えば前述の図9に示した構造でのステアリングシャフト2、或いは、中間シャフト15、更には、ステアリングギヤユニット16の入力軸(ピニオン軸)が採用可能である。
又、上記ウォームホイールは、上記ハウジングの内部で上記回転軸の一部に、この回転軸と同心に(締り嵌めによる外嵌固定、キー係合、スプライン係合等により相対回転を阻止された状態で)支持されて、この回転軸と共に回転する。
又、上記ウォームは、ウォーム軸の軸方向中間部にウォーム歯を設けて成る。そして、このウォーム歯を上記ウォームホイールに噛合させた状態で、上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ軸受により、上記ハウジングに対し回転自在に支持している。
又、上記電動モータは、上記ウォーム軸の基端部と出力軸の先端部とを回転力の伝達を自在に係合させて、このウォーム軸を両方向に回転駆動自在としている。
又、上記付勢部材は、このウォーム軸の先端部を回転自在に支持した状態で、上記ウォームホイールに対する遠近動を可能に設けられている。
更に、上記弾性部材(例えばコイルばね、板ばね)は、上記付勢部材を介して上記ウォーム歯を、上記ウォームホイールに向け押圧している。
【0014】
特に、請求項1に記載した電動式パワーステアリング装置に於いては、上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ支持する上記各軸受のうち、少なくともこのウォーム軸の先端部を支持する(電動モータから遠い側の)軸受を、滑り軸受としている。
又、この滑り軸受は、上記付勢部材と上記弾性部材とを組み合わせた状態で、直接支持しており、その内周面(滑り面)に、上記潤滑剤を保持自在な保油部を形成している。
【0015】
又、請求項2に記載した電動式パワーステアリング装置に於いても、上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ支持する上記各軸受のうち、少なくともこのウォーム軸の先端部を支持する(電動モータから遠い側の)軸受を、滑り軸受としている。
又、この滑り軸受は、上記付勢部材と上記弾性部材とを組み合わせた状態で、直接支持している。
更に、上記ウォーム軸の先端部外周面のうち、運転時に上記滑り軸受の内周面(滑り面)と滑り接触する部分に、上記潤滑剤を保持自在な保油部を形成している。
【0016】
更に、上述した様な請求項1及び請求項2に記載した発明を実施する場合に、請求項3に記載した発明の様に、上記保油部を、油溝として機能する凹溝、或いは、油溜りとして機能する凹部とする。
【発明の効果】
【0017】
上述の様な構成を有する本発明の電動式パワーステアリング装置によれば、歯打ち音の如き不快な異音や振動が発生する事を防止でき、且つ、滑り接触部での発熱を十分に抑えられる構造を、部品点数を少なく抑えて、低コストに構成できる。
即ち、本発明の電動式パワーステアリング装置の場合には、ウォーム軸の先端部を滑り軸受により支持すると共に、この滑り軸受に、ウォーム歯をウォームホイールに向け押圧する為の付勢部材と弾性部材とを直接支持している。この為、本発明の場合には、歯打ち音の如き不快な異音や振動の発生を防止できる構造を、部品点数を少なく抑えて、低コストで構成できる。
【0018】
又、本発明の場合には、上記滑り軸受の内周面(請求項1に記載した発明の場合)或いは上記ウォーム軸の先端部外周面(請求項2に記載した発明の場合)に、ハウジング内に充填した潤滑剤を保持自在な保油部を形成している。この為、本発明の場合には、この保油部から上記滑り接触部に潤滑剤を安定して供給する事ができる。従って、この滑り接触部での油膜切れを防止できて、この滑り接触部での発熱を抑える事ができる。しかも、本発明の場合には、上記ウォーム軸の先端部を、上記滑り軸受により直接押圧せずに、上記付勢部材を介して押圧する為、上記滑り接触部での接触面圧が過大になる事を防止できて、この面からもこの滑り接触部での発熱を抑えられる。この結果、本発明の場合には、運転時に於ける、滑り接触部での発熱を十分に抑える事ができて、焼き付きの発生や摩耗量の増加等を防止する事ができる。従って、本発明によれば、上記滑り軸受の軸受寿命の向上を図れると共に、上記ウォーム軸の回転精度の向上(軸振れの低減)も図れる。
【0019】
更に、本発明の場合には、上記滑り軸受と上記付勢部材と上記弾性部材とを組立体(サブアッセンブリ)として一体的に取り扱える為、電動式パワーステアリング装置の組立作業の容易化を図れる。又、部品点数の低減を図れ、部品製作、部品管理の軽減も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、図9のA−A拡大断面に相当する図。
【図2】同じく図1のB部拡大図。
【図3】同じく本例に使用可能な滑り軸受の4例を示す断面図。
【図4】同じく滑り軸受を取り出して、図2の左側から見た図。
【図5】同じく滑り軸受と付勢部材とコイルばねとを取り出して示す分解斜視図。
【図6】同じく図2のC矢視図。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2に相当する図。
【図8】同じく本例に使用可能なウォーム軸の先端部の3例を示す図。
【図9】従来構造の1例を示す、部分切断側面図。
【図10】同じく図9のA−A拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の電動式パワーステアリング装置の特徴は、ウォーム軸6の先端部外周面と、このウォーム軸6の先端部を回転自在に支持する為の滑り軸受17の内周面との、滑り接触部での発熱を抑えるべく、この滑り軸受17の構造を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用・効果に就いては、前述の図9〜10に示した従来構造とほぼ同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0022】
本例の場合にも、ウォーム8は、上記ウォーム軸6の軸方向中間部にウォーム歯5を設けて成る。そして、このウォーム歯5をウォームホイール4に噛合させた状態で、上記ウォーム軸6の軸方向両端部のうち、電動モータ7から近い側の基端部を、単列深溝型の玉軸受である転がり軸受9bにより、同じく電動モータ7から遠い側の先端部を、上記滑り軸受17により、それぞれハウジング3aに対し回転自在に支持している。又、本例の場合にも、上記ウォームホイール4と上記ウォーム歯5との噛合部、上記転がり軸受9bの転がり接触部、並びに、上記滑り軸受17と上記ウォーム軸6との滑り接触部等を潤滑すべく、上記ハウジング3a内にグリースを充填している。又、上記転がり軸受9bは、このハウジング3aに対し上記ウォーム軸6を、若干の揺動変位を可能に支持している。
【0023】
一方、上記滑り軸受17は、上記ハウジング3aの内側で上記ウォーム軸6の先端部に対向する部分に形成した保持凹部12aに内嵌固定されており、この状態で、その内側に上記ウォーム軸6の先端部(付勢部材10aを外嵌した部分よりも基端寄り部分)を回転自在に支持している。本例の場合、上記保持凹部12aを、上記ハウジング3aの内側に開口した、軸方向に亙り直径が変化しない(内径が一定の)有底円筒面状の凹部としている。これに対して、上記滑り軸受17は、ポリアミド樹脂、ポリ四弗化エチレン樹脂等の滑り易い(摺動抵抗の小さい)合成樹脂、或いは、銅若しくは銅系合金の様に自己潤滑性を有する代わりに比較的(ハウジング3aを構成するアルミニウム合金等に比べて)軟らかい金属等の単一部材により、一体に造られており、軸受本体部18と、円筒部19と、1対のガイド壁部20、20とを備える。
【0024】
このうちの軸受本体部18は、滑り軸受本来の機能を発揮する部分であり、断面円形の外周面を有し、中心部に上記ウォーム軸6の先端部を回転自在に支持する為の通孔21を有する。又、上記円筒部19は、上記軸受本体部18の外周面と連続する(同じ外径の)外周面を有し、この軸受本体部18の軸方向外側面の外径寄り部分から軸方向外方に突出する状態で、この軸受本体部18と一体に設けられている。又、上記両ガイド壁部20、20は、上記円筒部19の内径側に、上記軸受本体部18の軸方向外側面から軸方向外方に突出する状態で、この軸受本体部18と一体に設けられている。又、上記両ガイド壁部20、20の内側面は、互いに平行な平面である。
【0025】
特に、本例の場合には、図3の(A)に示した様に、上記通孔21の内周面である滑り面に、上記ハウジング3a内に充填したグリース(の一部)を保持自在な、特許請求の範囲に記載した保油部に相当する、複数の凹溝22、22を形成している。これら各凹溝22、22は、油溝として機能するもので、上記通孔21の内周面から径方向外方に凹入する状態で、上記滑り軸受17の軸方向に(軸方向と平行に)形成されている。又、上記各凹溝22、22は、上記通孔21の内周面に円周方向に亙り等間隔に配置されている。これら各凹溝22、22の断面形状は、例えば円弧状、矩形状、台形状、V字状、U字状等、グリースを保持自在な形状であれば特に問わない。又、この様な凹溝22、22を有する滑り軸受17は、例えば分割型の金型を利用して一度の射出成形で造る事もできるし、通孔21の内周面を単一円筒面状に加工した後、切削加工等により上記各凹溝22、22を形成する事により造る事もできる。
【0026】
何れにしても、本例の場合には、上述の様な凹溝22、22を有する上記通孔21の内径を、上記ウォーム軸6の先端部のうちで、この通孔21内に挿通する部分の外径よりも大きくしている。これにより、上記ウォーム軸6がこの通孔21内で(径方向に)変位する事を許容している。より具体的には、図4に示した様に、この通孔21を小判型の長円形とし、上記滑り軸受17を上記保持凹部12aに内嵌した状態で、この通孔21の短径が上記ウォームホイール4の中心軸と平行な方向に、且つ、この通孔21の長径がこのウォームホイール4の中心軸に対し直角方向に、それぞれ向く様に配置している。従って、本例の場合、上記ウォーム軸6の先端部は、上記ウォームホイール4の中心軸と平行な方向の変位許容量に比べ、このウォームホイール4の中心軸に対し直角方向の変位許容量が大きくなる。
【0027】
又、図4に詳示する様に、上記滑り軸受17を構成する軸受本体部18の外周面に、この外周面から径方向外方に突出する状態で、少なくとも1対の係止凸部23、23を設けている。又、これと共に、上記保持凹部12aの内面のうち、上記滑り軸受17をこの保持凹部12aに内嵌した状態で上記各係止凸部23、23と整合する部分に、上記内面から径方向外方に凹入する係止凹溝24を、全周に亙り設けている。そして、上記保持凹部12aに上記滑り軸受17を内嵌した状態で、上記各係止凸部23、23と上記係止凹溝24とを凹凸係合させている。
【0028】
又、本例の場合は、上記滑り軸受17を弾性変形させた状態で、上記保持凹部12a内に(締り嵌めにより)がたつきなく内嵌している。この為に、上記軸受本体部18の自由状態での外径(例えば、図4に示す様に、軸受本体部18の外径をD18とし、係止凸部23の高さをhとした場合の、この係止凸部23の高さhも含めた外径D=D18+h)を、上記保持凹部12aの内径(例えば図2に示す様に、保持凹部12aの内径をd12とし、係止凹溝24の深さをfとした場合の、この係止凹溝24の深さfも含めた内径d=d12+f)よりも、少しだけ大きくしている(D>d)。又、これと共に、上記軸受本体部18の軸方向内側面で、上記各係止凸部23、23の内径側部分に、この軸方向内側面から軸方向外方に凹入する弾性変形許容凹部25を設けている。
【0029】
この様な本例の場合、上記滑り軸受17を上記保持凹部12aに内嵌した状態で、この滑り軸受17の一部、即ち、上記弾性変形許容凹部25の周囲部分が、上記軸受本体部18の径方向内方に弾性変形する。そして、この弾性変形に基づく上記滑り軸受17自身の弾性力に基づいて、上記各係止凸部23、23が上記係止凹溝24の底部に向けて押圧され、上記滑り軸受17が上記保持凹部12a内にがたつきなく内嵌(保持)される。この様な本例の場合には、上記弾性変形許容凹部25により上記滑り軸受17を所定方向に弾性変形させ易くできる為、この滑り軸受17を弾性変形させた状態で上記保持凹部12aに組み込む作業を容易に行える(組み込み作業性の向上を図れる)。又、上記滑り軸受17の軸方向への変位は、上記各係止凸部23、23と上記係止凹溝24との凹凸係合に基づいて阻止される。尚、上記1対の係止凸部23、23に代えて、図6に示す様に、軸受本体部18の外周面に、全周に亙り係止凸部23aを設ける事もできる。又、以上の様に、上記滑り軸受17を上記保持凹部12aに内嵌した状態で、前記両ガイド壁部20、20の内側面(互いに対向する側面)は、それぞれウォームホイール4の中心軸に対し直角方向に配置される。
【0030】
又、本例の場合には、上記滑り軸受17に、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け弾性的に押圧する為の、付勢部材10aとコイルばね11aとを、互いに組み合わせた状態で組み付けている。具体的には、このうちの付勢部材10aを、前記円筒部19の内径側で上記両ガイド壁部20、20の内側面同士の間に挟持すると共に、上記付勢部材10aの周囲に上記コイルばね11aを配置した状態で、このコイルばね11aの両端部に設けた折り曲げ部26、26を、上記両ガイド壁部20、20に形成した係止部27、27に係止している。
【0031】
ここで、上記両ガイド壁部20、20の内側面は、上記滑り軸受17の組み付け状態で、それぞれ上記ウォームホイール4の中心軸に対し直角方向に配置される為、上記両ガイド壁部20、20の内側面同士の間に挟持された上記付勢部材10aは、これら両ガイド壁部20、20の内側面に沿った変位を可能に、且つ、上記ウォームホイール4の中心軸の方向の変位を抑えた状態で支持される。従って、この様な付勢部材10aをその先端部に外嵌(遊嵌)した前記ウォーム軸6は、上記両ガイド壁部20、20により上記付勢部材10aを介して、上記ウォームホイール4に対する遠近動のみを可能に案内される。又、この付勢部材10aと上記コイルばね11aとを上記滑り軸受17に支持した状態で、このコイルばね11aの内周面は、上記付勢部材10aの外周面のうちで上記ウォームホイール4とは反対側の面に、弾性的に当接した状態となる。従って、この様な本例の場合にも、上記コイルばね11aにより、上記付勢部材10aを介して、上記ウォーム歯5を上記ウォームホイール4に向け押圧する。
【0032】
以上の様な構成を有する本例の場合、歯打ち音の如き不快な異音や振動が発生する事を防止でき、且つ、滑り接触部での発熱を十分に抑えられる構造を、部品点数を少なく抑えて、低コストに構成できる。
即ち、本例の場合には、上記ウォーム軸6の先端部を上記滑り軸受17により支持すると共に、この滑り軸受17に、上記ウォーム歯5を上記ウォームホイール4に向け押圧する為の、上記付勢部材10aと上記コイルばね11aとを、互いに組み合わせた状態で、直接支持している。この為、本例の場合には、転がり軸受に比べて簡易な構成を有する滑り軸受を使用した事による部品点数の低減を図れると共に、上記付勢部材10a及び上記コイルばね11aを支持する為の専用の部材(図10に示す様なホルダ13)を省略した事による部品点数の削減を図れる。従って、本例の場合には、歯打ち音の如き不快な異音や振動の発生を防止できる構造を、部品点数を少なく抑えて、低コストで構成できる。
【0033】
特に本例の場合には、上記滑り軸受17を構成する通孔21の内周面(滑り面)に、複数の凹溝22、22を形成している為、これら各凹溝22、22内に、前記ハウジング3a内に充填したグリース(の一部)を保持する事ができる。この為、運転時に、上記ウォーム軸6の先端部外周面と上記通孔21の内周面との滑り接触部に、上記各凹溝22、22を通じて十分量のグリースを安定して供給できる。又、本例の場合には、これら各凹溝22、22を軸方向に長い形状としている為、上記滑り接触部の軸方向全幅に亙りグリースを供給し易くなる。従って、本例の場合には、この滑り接触部での油膜切れを有効に防止できて、この滑り接触部での発熱を抑える事ができる。更に、本例の場合には、前述した特許文献2、3に記載された発明の構造の場合の様に、ウォーム軸6の先端部を滑り軸受により直接押圧せずに、上記付勢部材10aを介して押圧する為、上記滑り接触部での接触面圧が過大になる事を防止できて、この面からもこの滑り接触部での発熱を抑えられる。しかも、本例の場合には、この滑り接触部で発生した摩擦熱を、上記各凹溝22、22から(これら各凹溝22、22に出入りする潤滑剤を介して)放熱する事もできる。この結果、本例の場合には、運転時に於ける、上記滑り接触部での発熱を十分に抑える事ができて、焼き付きの発生や摩耗量の増加等を防止する事ができる。従って、上記滑り軸受17の軸受寿命の向上を図れると共に、上記ウォーム軸6の回転精度の向上(軸振れの低減)も図れる。
【0034】
又、本例の場合は、上記滑り軸受17に一体に設けたガイド壁部20、20により上記付勢部材10aを案内する為、この付勢部材10aを介して上記ウォーム軸6を変位させる方向を、所定の方向(ウォーム歯5をウォームホイール4に向け押し付ける方向)に厳密に規制できる。この為、このウォーム軸6が所定の方向以外に変位する事に基づき電動モータ7から付与される補助力が不安定になる(補助トルクが変動し易くなる)事を有効に防止できる。又、上記滑り軸受17と上記付勢部材10aとの間に前記コイルばね11aを設けている為、例えば前記図10に示した従来構造の場合の様に、弾性部材をハウジングとの間に設ける場合に比べ、前記ウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け押圧する力の設定をより微細に行う事ができ、歯打ち音の如き不快な異音や振動が発生する事をより効果的に防止できる。
【0035】
更に、本例の場合には、上記滑り軸受17と上記付勢部材10aと上記コイルばね11aとを組立体(サブアッセンブリ)として一体的に取り扱える為、電動式パワーステアリング装置の組立作業の容易化を図れる。又、部品点数の低減を図れ、部品製作、部品管理の軽減も図れる。
【0036】
本例の場合には、上述した通り、滑り軸受17を構成する通孔21の内周面に、前記図3の(A)に示した様な凹溝22、22を形成した場合に就いて説明したが、同図の(B)、(C)に示した様な凹溝22a、22b、或いは、同図の(D)に示した様な凹部28、28を形成する事もできる。
先ず、同図の(B)に示した構造の場合には、通孔21の内周面の軸方向複数個所(図示の例では3個所)に、環状の凹溝22a、22aを形成している。この様な構成を採用した場合には、上記通孔21の内周面とウォーム軸6の先端部外周面との間に、全周に亙りグリースを行き渡らせ易くなる。又、このウォーム軸6の回転抵抗を抑える面からも有利になる。
又、同図の(C)に示した構造の場合には、通孔21の内周面に、螺旋状の(円周方向に対して傾斜した)凹溝22b、22bを形成している。この様な構成を採用した場合には、上記ウォーム軸6の回転に伴って、このウォーム軸6の先端部外周面と上記通孔21の内周面との間に、軸方向及び円周方向に亙りグリースを供給し易くなる。
更に、同図の(D)に示した構造の場合には、通孔21の内周面に、油溜りとして機能する複数の凹部28、28を形成している。この様な構成を採用した場合には、これら各凹部28、28の数、大きさ、形状及び深さ等を、上記通孔21の円周方向並びに軸方向位置に応じて適宜変更する事により、滑り接触部に供給するグリース量を容易に細かく設定できる。
又、本例の場合には、通孔21を小判型の長円形とした場合に就いて説明したが、この通孔21は、ウォーム軸6の先端部のうちで、この通孔21に挿通する部分の外径よりも大きな内径を有する円形としても良い。この様な構成を採用した場合には、上記通孔21の加工性を向上する事ができて、加工コストを抑える面から有利になる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
図7〜8は、請求項2、3に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。尚、上述した実施の形態の第1例では、滑り軸受17を構成する通孔21の内周面に、グリースを保持自在な凹溝22、22(凹溝22a、22b、凹部28)を形成する場合に就いて説明した。これに対して、本例の場合には、滑り軸受17aを構成する通孔21aの内周面には、上述の様な凹溝22、22は形成せず、ウォーム軸6aの先端部外周面に、グリースを保持自在な凹溝29、29を形成している。本例の滑り軸受17aの構造に就いては、通孔21aの内周面の形状(凹溝22、22a、22b、凹部28の有無)を除いて、上記第1例の滑り軸受17と同様である。
【0038】
本例の場合には、図7に示す様に、上記ウォーム軸6aの先端部外周面のうち、運転時に上記通孔21aの内周面(滑り面)と滑り接触する部分に、このウォーム軸6aの軸方向に(軸方向と平行に)複数の凹溝29、29を形成している。又、これら各凹溝29、29は、上記ウォーム軸6aの先端部外周面に円周方向に等間隔に配置されている。又、これら各凹溝29、29の断面形状は、例えば円弧状、矩形状、台形状、V字状、U字状等、グリースを保持自在な形状であれば特に問わない。
【0039】
この様な構成を有する本例の場合にも、上記各凹溝29、29内に、ハウジング3a内に充填したグリース(の一部)を保持する事ができる。この為、上記ウォーム軸6aの先端部外周面と上記通孔21aの内周面との滑り接触部に、上記各凹溝29、29を通じて十分量のグリースを安定して供給できる。特に、これら各凹溝29、29を上記ウォーム軸6aの先端部外周面に形成した本例の場合には、これら各凹溝29、29内に保持したグリースを、遠心力を利用して、滑り接触部に効率良く供給できる。又、本例の場合には、上記各凹溝29、29を軸方向に長い形状としている為、上記滑り接触部の軸方向全幅に亙りグリースを供給し易くなる。従って、本例の場合には、この滑り接触部での油膜切れを有効に防止できて、この滑り接触部での発熱を抑える事ができる。更に、本例の場合にも、前述した特許文献2、3に記載された発明の構造の場合の様に、ウォーム軸6aの先端部を滑り軸受により直接押圧せずに、付勢部材10aを介して押圧する為、上記滑り接触部での接触面圧が過大になる事を防止できて、この面からもこの滑り接触部での発熱を抑えられる。しかも、この滑り接触部で発生した摩擦熱を、上記各凹溝29、29から放熱する事もできる。この結果、本例の場合にも、運転時に於ける、上記滑り接触部での発熱を十分に抑える事ができて、焼き付きの発生や摩耗量の増加等を防止する事ができる。従って、上記滑り軸受17aの軸受寿命の向上を図れると共に、上記ウォーム軸6aの回転精度の向上(軸振れの低減)も図れる。
【0040】
本例の場合には、上述した通り、ウォーム軸6aの先端部外周面に、上記図7に示した様な凹溝29、29を形成した場合に就いて説明したが、図8の(A)、(B)に示した様な凹溝29a、29b、或いは、同図の(C)に示した様な凹部30、30を形成する事もできる。
先ず、同図の(A)に示した構造の場合には、ウォーム軸6aの先端部外周面の軸方向複数個所(図示の例では3個所)に、環状の凹溝29a、29aを形成している。この様な構成を採用した場合には、通孔21aの内周面とウォーム軸6aの先端部外周面との間に、全周に亙りグリースを行き渡らせ易くなる。又、このウォーム軸6aの回転抵抗を抑える面からも有利になる。
又、同図の(B)に示した構造の場合には、ウォーム軸6aの先端部外周面に、螺旋状の(円周方向に対して傾斜した)凹溝29b、29bを形成している。この様な構成を採用した場合には、上記ウォーム軸6aの回転に伴って、このウォーム軸6aの先端部外周面と上記通孔21aの内周面との間に、軸方向及び円周方向に亙りグリースを供給し易くなる。
更に、同図の(C)に示した構造の場合には、ウォーム軸6aの先端部外周面に、油溜りとして機能する多数の凹部30、30を形成している。この様な構成を採用した場合には、これら各凹部30、30の数、大きさ、形状及び深さを、上記ウォーム軸6aの軸方向位置に応じて適宜変更する事により、滑り接触部に供給するグリース量を容易に細かく(軸方向に関して細かく)設定できる。
その他の構成及び作用・効果に就いては、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
前述した実施の形態の第1例では、凹溝22、22を通孔21の内周面に円周方向に亙り等間隔で配置した例を説明したが、本発明はこの様な構造に限定されるものではなく、上記各凹溝22、22は、上記通孔21の内周面に不等間隔で配置しても良い。即ち、この通孔21の内周面のうちで、ウォーム軸6の先端部外周面と滑り接触し易い部分、或いは、このウォーム軸6の先端部外周面が押し付けられ易い部分には、数多くの凹溝22、22を形成し、その他の部分には凹溝22、22を形成しないか、若しくは、形成する凹溝22、22の数を少なくする事ができる。又、同様の観点から、凹溝22、22の溝深さをその形成位置に応じて適宜変更する事もできる。この様に、凹溝の数並びに溝深さをその形成位置に応じて適宜変更する事は、図3の(B)(C)に示した凹溝22a、22bに適用できる事は勿論、例えば図3の(D)に示した様な凹部28、28に就いても、同様に適用できる。
【0042】
又、通孔21の内周面に、図3の(A)〜(C)に示した様な凹溝22、22a、22b及び同図の(D)に示した様な凹部28、28を、適宜組み合わせて形成する事もできる。又、同様に、ウォーム軸6aの先端部外周面に、図7に示した様な凹溝29及び図8に示した様な凹溝29a、29b、凹部30を適宜組み合わせて形成する事もできる。更に、必要に応じて、通孔21(21a)の内周面とウォーム軸6(6a)の先端部外周面との両周面に、グリースを保持自在な保油部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3、3a ハウジング
4 ウォームホイール
5 ウォーム歯
6 ウォーム軸
7 電動モータ
8 ウォーム
9a、9b 転がり軸受
10、10a 付勢部材
11、11a コイルばね
12、12a 保持凹部
13 ホルダ
14 弾性リング
15 中間シャフト
16 ステアリングギヤユニット
17、17a 滑り軸受
18 軸受本体部
19 円筒部
20 ガイド壁部
21、21a 通孔
22 凹溝
23、23a 係止凸部
24 係止凹溝
25 弾性変形許容凹部
26 折り曲げ部
27 係止部
28 凹部
29 凹溝
30 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定の部分に支持されて回転する事のないハウジングと、このハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸と、上記ハウジングの内部でこの回転軸の一部に、この回転軸と同心に支持されて、この回転軸と共に回転するウォームホイールと、ウォーム軸の軸方向中間部にウォーム歯を設けて成り、このウォーム歯をこのウォームホイールと噛合させた状態で、上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ軸受により上記ハウジングに対し回転自在に支持されたウォームと、上記ウォーム軸の基端部と出力軸の先端部とを回転力の伝達を自在に係合させた電動モータと、このウォーム軸の先端部を回転自在に支持した状態で、上記ウォームホイールに対する遠近動を可能に設けられた付勢部材と、この付勢部材を介して上記ウォーム歯を上記ウォームホイールに向け押圧する弾性部材とを備え、上記ハウジング内に潤滑剤を充填した電動式パワーステアリング装置に於いて、
上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ支持する上記各軸受のうち、少なくともこのウォーム軸の先端部を支持する軸受が滑り軸受であり、
この滑り軸受は、上記付勢部材と上記弾性部材とを組み合わせた状態で直接支持しており、その内周面に、上記潤滑剤を保持自在な保油部が形成されている事を特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項2】
固定の部分に支持されて回転する事のないハウジングと、このハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸と、上記ハウジングの内部でこの回転軸の一部に、この回転軸と同心に支持されて、この回転軸と共に回転するウォームホイールと、ウォーム軸の軸方向中間部にウォーム歯を設けて成り、このウォーム歯をこのウォームホイールと噛合させた状態で、上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ軸受により上記ハウジングに対し回転自在に支持されたウォームと、上記ウォーム軸の基端部と出力軸の先端部とを回転力の伝達を自在に係合させた電動モータと、このウォーム軸の先端部を回転自在に支持した状態で、上記ウォームホイールに対する遠近動を可能に設けられた付勢部材と、この付勢部材を介して上記ウォーム歯を上記ウォームホイールに向け押圧する弾性部材とを備え、上記ハウジング内に潤滑剤を充填した電動式パワーステアリング装置に於いて、
上記ウォーム軸の軸方向両端部をそれぞれ支持する上記各軸受のうち、少なくともこのウォーム軸の先端部を支持する軸受が滑り軸受であり、
この滑り軸受は、上記付勢部材と上記弾性部材とを組み合わせた状態で直接支持しており、
上記ウォーム軸の先端部外周面のうち、運転時に上記滑り軸受の内周面と滑り接触する部分に、上記潤滑剤を保持自在な保油部が形成されている事を特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項3】
保油部が、凹溝或いは凹部である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−93485(P2011−93485A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251792(P2009−251792)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】