説明

電動式建設機械

【課題】急発進を抑制することができる電動式建設機械を提供する。
【解決手段】電動モータ26によって駆動する油圧ポンプ29と、油圧ポンプ29からの圧油により駆動する走行用油圧モータ13A,13Bを含む複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されているか否かを検出する圧力スイッチ41と、走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されているか否かを検出する圧力スイッチ43と、通常運転又はアイドル運転に切換える場合に電動モータ26が所定の定常回転数又は所定の低速回転数となるようにインバータ46を制御する車体制御部48とを備えた電動式油圧ショベルにおいて、車体制御部48は、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されて通常運転に切換える場合、インバータ46への指令回転数として、まず、所定の中間回転数を出力し、その後、所定の定常回転数を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプを駆動する電動モータを備えた電動式建設機械に係わり、特に、アイドル制御機能を有する電動式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の一つである油圧ショベルは、エンジンを搭載したものが知られている。このエンジン式油圧ショベルは、例えば、エンジンによって駆動する油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、例えばブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダ、旋回用油圧モータ、及び走行用油圧モータ等)と、複数の油圧アクチュエータの動作をそれぞれ指示する複数の操作手段(詳細には、例えば操作レバーの操作位置に対応するパイロット圧を出力する操作手段)と、これら複数の操作手段の操作に応じて油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、エンジンの目標回転数を指示する回転数指示手段(詳細には、例えばレバー又はダイヤル等)と、この回転数指示手段で指示された目標回転数となるように、エンジンの燃料噴射量を制御するガバナとを備えている。
【0003】
ここで、エンジンの燃料消費の低減を図るため、通常運転からアイドル運転に切換えて、エンジン回転数を所定の低速回転数に低下させるアイドル制御機能が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の従来技術では、例えば掘削作業中に油圧アクチュエータが一時的に操作されないことを圧力スイッチで検出した場合に、エンジン回転数を所定の低速回転数L1に低下させるようになっている。また、例えば掘削作業が終了して切換スイッチが手動操作された場合に、エンジン回転数を所定の低速回転数L0(但し、L0<L1)に低下させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−138979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、排気ガスを排出せず、騒音及び振動も大幅に低減する利点を有することから、エンジンの代わりに電動モータを搭載した電動式油圧ショベルが提唱されている。この電動式油圧ショベルは、例えば、電動モータによって駆動する油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧アクチュエータの動作をそれぞれ指示する複数の操作手段と、これら複数の操作手段の操作に応じて油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、電動モータの目標回転数を指示する回転数指示手段と、電動モータの回転数を可変制御するインバータと、回転数指示手段で指示された目標回転数となるようにインバータを制御する制御手段とを備えている。
【0006】
このような電動式油圧ショベルにおいても、電動モータの電力消費の低減を図るため、アイドル制御機能を設ける。ここで、上述したエンジン式油圧ショベルにおいては、エンジンの回転数を所定の低速回転数から所定の定常回転数(例えば2000rpm程度)へ復帰させる制御応答が比較的遅いため、エンスト等が発生しないように、所定の低速回転数を例えば1300rpm程度に設定している。これに対し、電動式油圧ショベルにおいては、電動モータの回転数を所定の低速回転数から所定の定常回転数(例えば2000rpm程度)へ復帰させる制御応答が比較的速いことから、所定の低速回転数を例えば300rpm程度まで下げて設定することが可能である。すなわち、例えばアイドル運転中にいずれかの油圧アクチュエータが操作されて通常運転へ切換える場合、電動モータの回転数を所定の低速回転数(例えば300rpm)から所定の定常回転数(例えば2000rpm)まで素早く復帰させて、油圧アクチュエータを動作させることが可能である。ところが、アイドル運転中に走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合に、電動モータの回転数を所定の低速回転数から所定の定常回転数まで素早く復帰させると、急発進してしまう。
【0007】
本発明は、上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、急発進を抑制することができる電動式建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、電動モータと、前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作をそれぞれ指示する複数の操作手段と、前記複数の操作手段の操作に応じて前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、前記電動モータの回転数を可変制御するインバータと、前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されているか否かを検出する第1操作検出手段と、通常運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれも操作されないでアイドル運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が低速回転数領域に予め設定した第1の回転数となるように前記インバータを制御するアイドル制御手段と、アイドル運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されて通常運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が前記第1の回転数より高い回転数領域に設定した第2の回転数に復帰するように前記インバータを制御する復帰制御手段とを備えた電動式建設機械において、前記走行用油圧モータが操作されているか否かを検出する第2操作検出手段を備え、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数として、まず、前記第1の回転数と前記第2の回転数との間の所定の中間回転数を出力し、その後、前記第2の回転数を出力する。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合に、前記電動モータの実回転数が前記第1の回転数から前記第2の回転数に変化するまでの時間を、アイドル運転中に前記他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合より長くなるように制御する。
【0010】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数として、直ちに前記第2の回転数を出力する。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数を、前記第1の回転数から前記第2の回転数まで段階的に増加させながら出力する。
【0012】
(5)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数を、前記第1の回転数から前記第2の回転数まで連続的に増加させながら出力する。
【0013】
(6)上記目的を達成するために、本発明は、動モータと、前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、前記電動モータの回転数を可変制御するインバータと、前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されているか否かを検出する第1操作検出手段と、通常運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれも操作されないでアイドル運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が低速回転数領域に予め設定した第1の回転数となるように前記インバータを制御するアイドル制御手段と、アイドル運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されて通常運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が前記第1の回転数より高い回転数領域に設定した第2の回転数に復帰するように前記インバータを制御する復帰制御手段とを備えた電動式建設機械において、前記走行用油圧モータが操作されているか否かを検出する第2操作検出手段を備え、前記復帰制御手段は、アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合に、前記電動モータの実回転数が前記第1の回転数から前記第2の回転数に変化するまでの時間を、アイドル運転中に前記走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合より長くなるように制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、急発進を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における電動式の油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における電動式油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の要部構成を表す油圧回路図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるインバータ装置の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるインバータ装置の車体制御部の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態におけるインバータへの指令回転数及び電動モータの実回転数の経時変化を表すタイムチャートであり、アイドル運転中に走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換わる場合を示す。
【図6】本発明の一実施形態におけるインバータへの指令回転数及び電動モータの実回転数の経時変化を表すタイムチャートであり、アイドル運転中に走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換わる場合を示す。
【図7】本発明の一変形例におけるインバータへの指令回転数及び電動モータの実回転数の経時変化を表すタイムチャートであり、アイドル運転中に走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換わる場合を示す。
【図8】本発明の他の変形例におけるインバータへの指令回転数及び電動モータの実回転数の経時変化を表すタイムチャートであり、アイドル運転中に走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換わる場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の適用対象として電動式の油圧ショベルを例にとり、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における電動式の油圧ショベル(詳細には、運転質量6トン未満のミニショベル)の構造を表す側面図である。なお、以降、電動式油圧ショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0018】
この図1において、電動式油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2の基礎下部構造をなす旋回フレーム3と、この旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト4と、このスイングポスト4に上下方向に回動可能(俯仰可能)に連結された多関節型の作業機5と、旋回フレーム4上に設けられたキャノピータイプの運転室6と、旋回フレーム4上の後側に設けられバッテリ7(後述の図3参照)を収納するバッテリ搭載部8とを備えている。
【0019】
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪10,10と、トラックフレーム9の左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)11,11と、左右それぞれの駆動輪10と従動輪11とで掛けまわされた左右の履帯(クローラ)12,12とを備えている。そして、左の走行用油圧モータ13Aの駆動により左の駆動輪10(すなわち、左の履帯12)が回転し、右の走行用油圧モータ13B(図示せず)の駆動により右の駆動輪10(すなわち、右の履帯12)が回転するようになっている。
【0020】
トラックフレーム9の前側には排土用のブレード14が上下動可能に設けられており、このブレード14はブレード用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により上下動するようになっている。
【0021】
トラックフレーム9の中央部には旋回輪15が設けられ、この旋回輪15を介し旋回フレーム3が旋回可能に設けられており、旋回フレーム3(すなわち、上部旋回体2)は旋回用油圧モータ(図示せず)の駆動により旋回するようになっている。
【0022】
スイングポスト4は、旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられており、スイング用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により左右方向に回動するようになっている。これにより、作業機5が左右にスイングするようになっている。
【0023】
作業機5は、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム16と、このブーム16に上下方向に回動可能に連結されたアーム17と、このアーム17に上下方向に回動可能に連結されたバケット18とを備えている。ブーム16、アーム17、及びバケット18は、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21により上下方向に回動するようになっている。なお、バケット18は、例えばオプション用油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能になっている。
【0024】
運転室6には、運転者が着座する運転席(座席)22が設けられている。運転席22の前方には、手または足で操作可能とし前後方向に操作することで左右の旋回用油圧モータ13A,13Bの動作をそれぞれ指示する左右の走行用操作レバー23A,23B(但し、図中23Aのみ示す)が設けられている。左の走行用操作レバー23Aのさらに左側の足元部分には、左右方向に操作することでオプション用油圧アクチュエータの動作を指示するオプション用操作ペダル(図示せず)が設けられている。右の走行用操作レバー23Bのさらに右側の足元部分には、左右方向に操作することでスイング用油圧シリンダの動作を指示するスイング用操作ペダル(図示せず)が設けられている。
【0025】
運転席22の左側には、前後方向に操作することでアーム用油圧シリンダ20の動作を指示し、左右方向に操作することで旋回用油圧モータの動作を指示する十字操作式のアーム・旋回用操作レバー24Aが設けられている。運転席22の右側には、前後方向に操作することでブーム用油圧シリンダ19の動作を指示し、左右方向に操作することバケット用油圧シリンダ21の動作を指示する十字操作式のブーム・バケット用操作レバー24B(図示せず)が設けられている。また、運転席22の右側には、前後方向に操作することでブレード用油圧シリンダの動作を指示するブレード用操作レバー(図示せず)が設けられている。
【0026】
また、運転席22の左側(言い換えれば、運転室6の乗降口)には、ロック解除位置(詳細には、運転者の乗降を妨げる下降位置)とロック位置(詳細には、運転者の乗降を許容する上昇位置)に操作されるロックレバー25が設けられている。また、運転席22の右側には、後述する電動モータ26(図2及び図3参照)の目標回転数を指示する回転数指示手段としての回転数ダイヤル27(図3参照)が設けられている。
【0027】
図2は、上述の電動式油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の要部構成を表す油圧回路図である。なお、この図2においては、左右の走行用油圧モータ13A,13Bを代表して左の走行用油圧モータ13Aを示し、走行用油圧モータ13A,13B以外の他の油圧アクチュエータ(詳細には、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダ)を代表してブーム用油圧シリンダ19を示し、それらに係わる構成を表している。
【0028】
図2において、電動モータ26と、この電動モータ26を駆動制御するインバータ装置28と、電動モータ26によって駆動する油圧ポンプ29及びパイロットポンプ30と、上述した左走行用操作レバー23Aを備えた油圧パイロット式の操作装置31Aと、左走行用操作レバー23Aの前後方向の操作に応じて油圧ポンプ29から左走行用油圧モータ13Aへの圧油の流れを制御する左走行用方向切換弁32Aとが設けられている。また、上述したバケット・ブーム用操作レバー24Bを備えた油圧パイロット式の操作装置33と、バケット・ブーム用操作レバー26の前後方向の操作に応じて油圧ポンプ29からブーム用油圧シリンダ19への圧油の流れを制御するブーム用方向切換弁34とが設けられている。なお、図示しないが、右走行用油圧モータ13B、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダに係わる構成もほぼ同様である。
【0029】
左走行用方向切換弁32A及びブーム用方向切換弁34等(詳細には、図示しない右走行用方向切換弁32B、アーム用方向切換弁、バケット用方向切換弁、旋回用方向切換弁、スイング用方向切換弁、及びブレード用方向切換弁を含む)は、センタバイパス型のものであり、センタバイパスライン35上に位置するセンタバイパス通路をそれぞれ有している。各方向切換弁のセンタバイパス通路は、センタバイパスライン35に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にある場合に連通し、図2中左側又は右側の切換位置に切換えられると遮断するようになっている。センタバイパスライン35の上流側は油圧ポンプ29の吐出ライン36に接続され、センタバイパスライン35の下流側はタンクライン37に接続されている。
【0030】
また、左走行用方向切換弁32A及びブーム用方向切換弁34等は、油圧信号ライン38上に位置する信号通路をそれぞれ有している。すなわち、各方向切換弁の信号通路は、油圧信号ライン38に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にある場合に連通し、図2中左側又は右側の切換位置に切換えられると遮断するようになっている。油圧信号ライン38の上流側はパイロットポンプ30の吐出ライン39から分岐するように接続され、油圧信号ライン38の下流側はタンクライン37に接続されている。油圧信号ライン38における最上流の方向切換弁32Aの上流側には固定絞り40が設けられ、この固定絞り40と方向切換弁32Aとの間に圧力スイッチ41(第1操作検出手段)が設けられている。圧力スイッチ41は、方向切換弁32Aの上流側の油圧を導入し、これが予め設定された閾値に達した場合に接点を閉じるようになっている。これにより、全ての方向切換弁のうちのいずれかが切換えられたか否か、すなわち、全ての油圧アクチュエータ(詳細には、左右の走行用油圧モータ13A,13B、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダ)のうちのいずれかが操作されているか否かを検出し、いずれかの油圧アクチュエータが操作されている場合にON信号を出力するようになっている。
【0031】
ブーム用方向切換弁34は、操作装置33からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置33は、ブーム・バケット用操作レバー24Bと、この操作レバー24Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプ30の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。そして、例えば操作レバー24Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁34の図2中右側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁34が図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が縮短し、ブーム16が下がるようになっている。一方、例えば操作レバー24Bを後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁34の図2中左側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁34が図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が伸張し、ブーム16が上がるようになっている。
【0032】
左走行用方向切換弁32Aは、操作装置31Aからのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置31Aは、前述した左走行用操作レバー23Aと、この操作レバー23Aの前後方向の操作に応じパイロットポンプ30の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー23Aを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁32Aの図2中右側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁32Aが図2中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが前方向に回転し、左の駆動輪10及び履帯12が前方向に回転するようになっている。一方、例えば操作レバー23Aを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁32Aの図2中左側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁32Aが図2中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが後方向に回転し、左の駆動輪10及び履帯12が後方向に回転するようになっている。
【0033】
右走行用方向切換弁32Bは、操作装置31B(図示せず)からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置31Bは、上述した操作装置31Aと同様の構成である。そして、操作装置31Aから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁42Aと、操作装置31Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁42B(図示せず)と、これらシャトル弁42A,42Bで抽出されたパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁42Cと、このシャトル弁42Cの出力側に接続された圧力スイッチ43(第2操作検出手段)とが設けられている。圧力スイッチ43は、操作装置31A,31Bから出力されるパイロット圧のうちの最高圧を導入し、これが予め設定された閾値に達した場合に接点を閉じるようになっている。これにより、走行用方向切換弁32A又は32Bが切換えられたか否か、すなわち、走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されているか否かを検出し、走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されている場合にON信号を出力するようになっている。
【0034】
パイロットポンプ30の吐出ライン39には、パイロットポンプ30の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ30の吐出ライン39にはロック弁44が設けられており、このロック弁44は、上述したロックレバー25の操作に応じて切換えられるようになっている。詳細には、ロックレバー25がロック解除位置(下降位置)にある場合に開き状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に閉じ状態となるロックスイッチ(図示せず)が設けられている。そして、例えばロックスイッチが閉じ状態になると、このロックスイッチを介してロック弁44のソレノイド部が通電されて、ロック弁44が図2中下側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ30の吐出ライン39を連通して、パイロットポンプ30の吐出圧が操作装置31A,31B,33等に導入される。一方、ロックスイッチが開き状態になると、ロック弁44のソレノイド部が通電されず、バネの付勢力で、ロック弁44が図2中上側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ30の吐出ライン39を遮断する。その結果、操作装置31A,31B,33等を操作してもパイロット圧が生成されず、油圧アクチュエータが作動しないようになっている。
【0035】
図3は、本実施形態の要部であるインバータ装置28の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0036】
この図3において、インバータ装置28は、バッテリ7からの直流の電圧150〜180V程度を270V程度まで昇圧する昇圧器45と、この昇圧器45からの直流電力を元に生成した交流電力を電動モータ26に供給し、電動モータ26の回転数を可変制御するインバータ46と、制御プログラム等を記憶する記憶部47と、この記憶部47で記憶された制御プログラム等に基づいて演算処理を行い、インバータ46へ指令回転数を出力する車体制御部48とを有している。インバータ46は、電動モータ26の実回転数が指令回転数となるように、電動モータ26に供給する交流電力を生成している。
【0037】
車体制御部48は、上述した回転数ダイヤル27及び圧力スイッチ41,43からの信号が入力されている。回転数ダイヤル27は、通常運転中における電動モータ26の目標回転数(定常回転数)を例えば1500〜2000rpmの範囲内で可変設定することが可能であり、車体制御部48は、通常運転中、インバータ46への指令回転数として、回転数ダイヤル27で設定された所定の定常回転数(第2の回転数)を出力するようになっている。また、車体制御部48は、通常運転中に全ての油圧アクチュエータが操作されないで所定時間が経過した場合に、インバータ46への指令回転数として、予め設定された所定の低速回転数(第1の回転数)、例えば300rpmを出力する。これにより、通常運転からアイドル運転に切換えるようになっている。
【0038】
また、車体制御部48は、アイドル運転中にいずれかの油圧アクチュエータが操作された場合、通常運転へ切換えるようになっている。ここで、本実施形態の大きな特徴として、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されて通常運転に切換える場合は、インバータ46への指令回転数として、低速回転数と定常回転数との間の所定の中間回転数を出力し、その後、所定の定常回転数を出力するようになっている。
【0039】
上述した車体制御部48の制御手順を図4により説明する。図4は、車体制御部48の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0040】
この図4において、ステップ100において、通常運転中は、インバータ46への指令回転数として、回転数ダイヤル27で設定された所定の定常回転数を出力する。そして、ステップ110に進み、圧力スイッチ41からの信号により、全ての油圧アクチュエータが操作されていないか否かを判定する。例えばいずれかの油圧アクチュエータが操作されている場合(言い換えれば、圧力スイッチ41がON状態である場合)は、ステップ110の判定が満たされず、ステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、例えば全ての油圧アクチュエータが操作されていない場合(言い換えれば、圧力スイッチ41がOFF状態である場合)は、ステップ110の判定が満たされ、ステップ120に移る。ステップ120では、全ての油圧アクチュエータが操作されていない状態で所定時間(例えば4秒)が経過したか否かを判定する。例えば所定時間が経過しない場合は、ステップ120の判定が満たされず、ステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。
【0041】
一方、例えば図5及び図6で示すように、全ての油圧アクチュエータが操作されていない状態で所定時間が経過した場合は、ステップ120の判定が満たされ、ステップ130に移る。ステップ130では、インバータ46への指令回転数として、所定の低速回転数を直ちに出力する(図5及び図6参照)。これにより、通常運転からアイドル運転に切換わる。このとき、電動モータ26の実回転数は、所定の定常回転数から所定の低速回転数に0.4〜0.8秒程度で変化する(図5及び図6参照)。
【0042】
その後、ステップ140に進んで、アイドル運転中は、圧力スイッチ43からの信号により、走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されているか否かを判定する。例えば走行用油圧モータ13A,13Bが操作されていない場合は、ステップ140の判定が満たされず、ステップ150に移る。ステップ150では、圧力スイッチ41からの信号により、走行用油圧モータ13A,13B以外の他の油圧アクチュエータが操作されているか否かを判定する。例えば他の油圧アクチュエータが操作されていない場合は、ステップ150の判定が満たされず、ステップ130に戻って、上記同様の手順を繰り返す。
【0043】
一方、例えば図5で示すように、他の油圧アクチュエータが操作されている場合(言い換えれば、圧力スイッチ43がOFF状態、圧力スイッチ41がON状態である場合)は、ステップ150の判定が満たされ、ステップ100に移る。すなわち、インバータ46への指令回転数として、所定の定常回転数を直ちに出力する(図5参照)。これにより、アイドル運転から通常運転に切換わる。このとき、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に0.4〜0.8秒程度で変化する(図5参照)。
【0044】
また、例えば図6で示すように、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されている場合(言い換えれば、圧力スイッチ43がON状態である場合)は、ステップ140の判定が満たされ、ステップ160に移る。ステップ160では、記憶部47に記憶された回転数復帰パターンを読込む。そして、この回転数復帰パターンに基づき、インバータ46への指令回転数を出力する。すなわち、低速回転数と定常回転数との間の予め設定された所定の中間回転数を出力し(ステップ170)、その後、所定の定常回転数を出力する(ステップ100)。具体例としては図6で示すように、圧力スイッチ43がON状態となってから直ちに第1段階の中間回転数(400rpm)を出力し、その1秒経過後に第2段階の中間回転数(720rpm)を出力し、その1秒経過後に第3段階の中間回転数(1200rpm)を出力し、その1秒経過後に所定の定常回転数を出力する(言い換えれば、3秒経過後に、所定の定常回転数を出力する)。これにより、アイドル運転から通常運転に切換わる。このとき、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に3.2〜3.4秒程度で変化する(図6参照)。すなわち、所定の低速回転数から所定の定常回転数に変化するまでの時間は、アイドル運転中に他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合よりも、長くなっている。なお、本実施形態では、前述した中間回転数(400rpm,720rpm,1200rpm)は固定しているが、回転数ダイヤル27による定常回転数の設定変更に応じて変更するようにしてもよい。
【0045】
なお、上記において、インバータ装置28の車体制御部48が行う図4のステップ110〜130は、特許請求の範囲記載の通常運転中に複数の油圧アクチュエータのうちのいずれも操作されないでアイドル運転に切換える場合、電動モータの回転数が予め設定された所定の低速回転数となるようにインバータを制御するアイドル制御手段を構成する。また、インバータ装置28の車体制御部48が行う図4のステップ140〜170及び100は、特許請求の範囲記載のアイドル運転中に複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されて通常運転に切換える場合、電動モータの回転数が所定の低速回転数より高い所定の定常回転数に復帰するようにインバータを制御する復帰制御手段を構成する。
【0046】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0047】
通常運転中は、例えば運転者が走行用操作レバー23A,23Bを前後方向に操作すると、操作装置31A,31Bからパイロット圧が出力されて走行用方向切換弁32A,32Bが切換わり、走行用油圧モータ13A.13Bが駆動する。これにより、電動式油圧ショベルが走行する。また、例えば運転者がブーム・バケット用操作レバー24Bを前後方向に操作すると、操作装置33からパイロット圧が出力されてブーム用方向切換弁34が切換わり、ブーム用油圧シリンダ19が駆動する。これにより、掘削作業等を行う。
【0048】
そして、例えば通常運転中に全ての油圧アクチュエータが操作されない状態(言い換えれば、全ての操作レバーが操作されない状態)で所定時間が経過すると、インバータ装置28の車体制御部48は、インバータ46への指令回転数として所定の低速回転数を直ちに出力する。これにより、通常運転からアイドル運転に切換わる。その結果、電動モータ26の電力消費の低減を図ることができる。
【0049】
その後、例えばアイドル運転中に走行用油圧モータ13A,13B以外の他の油圧アクチュエータとしてブーム用油圧シリンダ19が操作されると、インバータ装置28の車体制御部48は、インバータ46への指令回転数として、所定の定常回転数を直ちに出力する。これにより、アイドル運転から通常運転に切換わる。このとき、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に速やかに復帰するので、掘削作業等を速やかに行うことができる。
【0050】
一方、例えばアイドル運転中に走行用油圧モータ13A,13Bが操作されると、インバータ装置28の車体制御部48は、インバータ46への指令回転数として、まず、中間回転数を段階的に出力し、その後、所定の定常回転数を出力する。これにより、アイドル運転から通常運転に切換わる。このとき、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に穏やかに復帰するので、急発進を抑制することができる。特に、本実施形態のように、所定の低速回転数(300rpm)と第1段階の中間回転数(400rpm)との差分を100rpm程度と小さくとれば、より効果的に急発進を抑制することができる。
【0051】
なお、上記一実施形態においては、回転数復帰パターンは、所定の低速回転数(300rpm)から所定の定常回転数(2000rpm)となるまでに4段階で増加する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0052】
例えば図7で示す変形例のように、回転数復帰パターンは、所定の低速回転数(例えば300rpm)から所定の定常回転数(例えば2000rpm)となるまでに2段階で増加するようにしてもよい。具体的には、インバータ装置28の車体制御部48は、インバータ44への指令回転数として、圧力スイッチ43がON状態となってから直ちに中間回転数(720rpm)を出力し、その2秒経過後に所定の定常回転数を出力するようにしてもよい。この場合、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に2.3〜2.6秒程度で変化する。このような変形例においても、上記一実施形態と同様、急発進を抑制することができる。
【0053】
また、例えば図8で示す変形例のように、回転数復帰パターンは、所定の低速回転数(例えば300rpm)から所定の定常回転数(例えば2000rpm)となるまで連続的に増加するようにしてもよい。具体的には、インバータ装置28の車体制御部48は、インバータ46への指令回転数として、10ms毎に8.5rpm増加するような中間回転数を連続的に出力し、最終的に(言い換えれば、2秒経過後に)所定の定常回転数を出力するようにしてもよい。この場合、電動モータ26の実回転数は、所定の低速回転数から所定の定常回転数に2.1秒程度で変化する。このような変形例においても、上記一実施形態と同様、急発進を抑制することができる。
【0054】
また、上記一実施形態においては、前述の図5で示すように、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A,13B以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合、インバータ46への指令回転数として、所定の定常回転数を直ちに出力する制御を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されて通常運転に切換える場合と同様、インバータ46への指令回転数として、所定の低速回転数と所定の定常回転数との間の中間回転数を出力し、その後、所定の定常回転数を出力するようにしてもよい。このとき、所定の低速回転数から所定の定常回転数に復帰させるまでの変化時間を、アイドル運転中に走行用油圧モータ13A又は13Bが操作されて通常運転に切換える場合より短くすることが好ましいものの、同じとしてもよい。このような変形例においても、上記一実施形態と同様、急発進を抑制することができる。
【0055】
また、上記一実施形態においては、特に説明しなかったが、インバータ装置28は、例えばロックレバー25がロック位置に操作された場合(言い換えれば、ロック弁44が遮断状態に切換えられた場合)にアイドル運転に切換えるように制御してもよい。すなわち、インバータ装置28の車体制御部48は、前述の図4のステップ120の判定が満たされなくとも(すなわち、圧力スイッチ41がOFF状態にあって所定時間が経過しなくとも)、ロックスイッチからのON信号に応じてアイドル運転に切換えてもよい。あるいは、例えば別途設けたスイッチが操作された場合にアイドル運転に切換えるように制御してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、上記一実施形態においては、油圧アクチュエータの動作を指示する操作手段として、操作レバーの操作位置に対応するパイロット圧を出力する油圧パイロット式の操作装置31A,31B,33等を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、操作装置は操作レバーの操作位置に対応する電気操作信号を出力するもの(電気レバー式)とし、この操作装置からの電気操作信号に応じパイロットポンプ30の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する対の減圧弁を設けてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、上記一実施形態においては、操作検出手段として、圧力スイッチ41,43等を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば油圧信号ライン38、各方向切換弁の信号通路、固定絞り40、及び圧力スイッチ41を設けないで、走行用油圧モータ13A,13B以外の他の油圧アクチュエータに係わる操作装置から出力されるパイロット圧のうちの最高圧を抽出するシャトル弁群を設け、そのシャトル弁群における最終段のシャトル弁の出力側に圧力スイッチを設け、この圧力スイッチと圧力スイッチ43からの信号により、インバータ装置28の車体制御部48が全ての油圧アクチュエータが操作されていないか否かを判定するようにしてもよい。また、例えば圧力スイッチ41,43に代えて圧力センサを設け、これらの圧力センサで検出された圧力が所定の閾値に達したか否かをインバータ装置28の車体制御部48が判定するようにしてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記一実施形態においては、インバータ46及び車体制御部48が一体的に構成されたインバータ装置28を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、インバータ46及び車体制御部48が別体として構成されてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、内部のバッテリ7からの電力によって電動モータ26を駆動するタイプの電動式油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、例えば外部の電源設備(商用電源)からの電力によって電動モータ26を駆動するタイプの電動式油圧ショベル等に適用してもよい。また、電動式油圧ショベルに限られず、他の電動式建設機械に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
13A,13B 走行用油圧モータ
19 ブーム用油圧シリンダ
20 アーム用油圧シリンダ
21 バケット用油圧シリンダ
23A,23B 走行用操作レバー
24A アーム・旋回用操作レバー
24B ブーム・バケット用操作レバー
26 電動モータ
28 インバータ装置
29 油圧ポンプ
31A,31B 操作装置
32A,32B 走行用方向切換弁
33 操作装置
34 ブーム用方向切換弁
41 圧力スイッチ(第1操作検出手段)
43 圧力スイッチ(第2操作検出手段)
46 インバータ
48 車体制御部(アイドル制御手段、復帰制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、
走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作をそれぞれ指示する複数の操作手段と、
前記複数の操作手段の操作に応じて前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、
前記電動モータの回転数を可変制御するインバータと、
前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されているか否かを検出する第1操作検出手段と、
通常運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれも操作されないでアイドル運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が低速回転数領域に予め設定した第1の回転数となるように前記インバータを制御するアイドル制御手段と、
アイドル運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されて通常運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が前記第1の回転数より高い回転数領域に設定した第2の回転数に復帰するように前記インバータを制御する復帰制御手段とを備えた電動式建設機械において、
前記走行用油圧モータが操作されているか否かを検出する第2操作検出手段を備え、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数として、まず、前記第1の回転数と前記第2の回転数との間の所定の中間回転数を出力し、その後、前記第2の回転数を出力することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合に、前記電動モータの実回転数が前記第1の回転数から前記第2の回転数に変化するまでの時間を、アイドル運転中に前記他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合より長くなるように制御することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の電動式建設機械において、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数として、直ちに前記第2の回転数を出力することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の電動式建設機械において、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数を、前記第1の回転数から前記第2の回転数まで段階的に増加させながら出力することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の電動式建設機械において、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合、前記インバータへの指令回転数を、前記第1の回転数から前記第2の回転数まで連続的に増加させながら出力することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項6】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、
走行用油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、
前記電動モータの回転数を可変制御するインバータと、
前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されているか否かを検出する第1操作検出手段と、
通常運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれも操作されないでアイドル運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が低速回転数領域に予め設定した第1の回転数となるように前記インバータを制御するアイドル制御手段と、
アイドル運転中に前記複数の油圧アクチュエータのうちのいずれかが操作されて通常運転に切換える場合、前記電動モータの回転数が前記第1の回転数より高い回転数領域に設定した第2の回転数に復帰するように前記インバータを制御する復帰制御手段とを備えた電動式建設機械において、
前記走行用油圧モータが操作されているか否かを検出する第2操作検出手段を備え、
前記復帰制御手段は、
アイドル運転中に前記走行用油圧モータが操作されて通常運転に切換える場合に、前記電動モータの実回転数が前記第1の回転数から前記第2の回転数に変化するまでの時間を、アイドル運転中に前記走行用油圧モータ以外の他の油圧アクチュエータが操作されて通常運転に切換える場合より長くなるように制御することを特徴とする電動式建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−41716(P2012−41716A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183176(P2010−183176)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】