説明

電動機付過給機の制御装置

【課題】エンジン(内燃機関)に備えられる電動機付過給機の制御装置において、エンジン回転速度の低下時に異音が発生することを抑制する。
【解決手段】エンジンのエンジン回転速度の低下によるエンジン騒音の減少に伴うターボ異音の発生を回避するために、減速時にエンジン回転数Neが所定の判定閾値th以下であるときに、電動機付ターボチャージャ100の電動機104の回生制御を実行することで、ターボ回転速度を強制的に低下させてターボ異音を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に備えられる電動機付過給機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関(以下、エンジンともいう)には、排気エネルギを利用した過給機(以下、ターボチャージャともいう)が装備されている。
【0003】
ターボチャージャは、一般に、エンジンの排気通路を流れる排気ガスによって回転するタービンホイールと、吸気通路内の空気を強制的に燃焼室へと送り込むコンプレッサインペラと、これらタービンホイールとコンプレッサインペラとを連結する連結シャフトとを備えている。このような構造のターボチャージャにおいて、タービンホイールに排気ガスが吹き付けられて当該タービンホイールが回転すると、その回転が連結シャフトを介してコンプレッサインペラに伝達される。こうしてコンプレッサインペラが回転することによって吸気通路内の空気が強制的に燃焼室に送り込まれる。
【0004】
また、ターボチャージャには、電動機にて動力のアシストを行う電動機付ターボチャージャが知られている。このような電動機付ターボチャージャでは、排気によるタービンホイールの動力が十分でないときに、電動機を作動してコンプレッサインペラを回転駆動することにより、タービン動力をアシストしてターボラグを解消するようにしている。さらに、電動機付ターボチャージャにおいては、電力の回生が可能な電動機を用い、非アシスト時に回生電力を回収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−075565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ターボチャージャにおいて、連結シャフトを支持するボールベアリングには、スプリングによって外輪(または内輪)等に予圧を付与する構造のスプリング予圧式ボールベアリングが採用されていた。しかしながら、スプリング予圧式ボールベアリングでは、ターボチャージャの使用環境(ターボ回転域等)において、スプリングによるばね力で作用する一定スラスト荷重によって、ベアリングの転動体(ボール)にバンド摩耗が発生するので信頼性の点で問題があった。
【0007】
このような点を考慮して、予圧を付与しない構造で一定隙間が存在するボールベアリング(以下、この構造のものを単に「ボールベアリング」ともいう)が、一般的なターボチャージャや電動機付ターボチャージャに用いられている。このようなボールベアリングを用いた場合、上記した転動体のバンド摩耗の発生を抑制することは可能であるが、隙間の存在により転動体の回転軌道が不安定となってしまい、非線形性(ばねマス系のばね変位とばね荷重との関係が非線形になること)に伴い、回転次数成分の異音が発生する領域が存在する。この発生音は、特にエンジン減速時に異音として聞こえやすい。
【0008】
その理由は、図6に示すように、車両の減速時において、エンジン本体の騒音(暗騒音)がエンジン回転速度の低下に伴って急激に下がるのに対し、ボールベアリングを用いたターボチャージャでは、軸受のフリクションが低い(通常のフローティング軸受に対して低い)ため、ターボ回転速度が急激には下がらず(慣性で回り続けるため)、ターボチャージャの音のみが車室内に伝播しやすくなって、ターボ異音として聞こえてしまうためである。
【0009】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、内燃機関に備えられる電動機付過給機の制御装置において、機関回転速度の低下時に異音が発生することを抑制することが可能な制御の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関に備えられる過給機であって、吸入空気の過給アシスト及び回生が可能な電動機を備えた過給機の制御装置を前提とし、このような電動機付過給機の制御装置において、機関回転数が判定閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記機関回転数が判定閾値以下であることを条件に前記電動機の回生制御を実行する回生制御手段とを備えていることを技術的特徴としている。
【0011】
本発明によれば、減速時に機関回転数が判定閾値以下になった場合に、電動機付過給機の電動機の回生制御を実行して、過給機の回転速度(ターボ回転速度)を強制的に低下させるので、ターボ異音の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明において、上記した機関回転数に対する判定閾値は、内燃機関の騒音の減少に伴う過給機騒音の発生を考慮して設定する。具体的には、減速時における機関回転低下時の内燃機関の騒音レベル(暗騒音レベル)の時間変化(減少)と、過給機回転低下時の電動機付過給機の騒音レベルの時間変化(減少)とに基づいて、過給機音(ターボ音)が気にならない機関回転数(ターボ異音が発生しない機関回転数)の低下限界値を求め、その低下限界値に基づいて判定閾値を設定する。
【0013】
本発明において、内燃機関のスロットル開度をスロットル開度検出手段にて検出し、そのスロットル開度の変化(単位時間当たりの変化)が所定の判定閾値以下であり、機関回転数が所定の判定閾値以下であるときに回生制御を実行する。また、スロットル開度に替えて、アクセル開度を検出し、そのアクセル開度の変化(単位時間当たりの変化)が所定の判定閾値以下であり、機関回転数が所定の判定閾値以下であるときに回生制御を実行するようにしてもよい。
【0014】
ここで、本発明は、特に、ボールベアリング(予圧を付与しない構造で一定隙間が存在するボールベアリング)を採用した電動機付過給機に有効に利用することができ、減速時のターボ異音を効果的に抑制することができる。
【0015】
なお、本発明は、ボールベアリングを採用した電動機付過給機に限られることなく、他の軸受を採用した過給機であって、機関回転速度の低下による内燃機関騒音(エンジン騒音)の減少に伴う過給機異音(ターボ異音)が発生する電動機付過給機にも適用可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、減速時に機関回転数が判定閾値以下になった場合に、電動機付過給機の電動機の回生制御を実行して、過給機の回転速度を強制的に低下させているので、機関回転速度の低下時に異音(ターボ異音)が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用するエンジンの一例を示す概略構成図である。
【図2】電動機付ターボチャージャの概略構成図である。
【図3】減速時の回生制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】減速時のエンジン回転数とターボ回転数との変化を示すタイミングチャートである。
【図5】回生制御からアシスト制御に移行する場合の例を示すタイミングチャートである。
【図6】減速時におけるエンジン本体の騒音レベルの変化とターボチャージャの騒音レベルの変化とを示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、本発明を適用するエンジン(内燃機関)について説明する。
【0020】
−エンジン−
図1は車両に搭載されるエンジン1の一例を示す概略構成を示す図である。
【0021】
この例のエンジンは、ディーゼルエンジンであって、複数の気筒(図1では4つの気筒)を有するエンジン本体1を備えている。エンジン本体1の出力軸であるクランクシャフト1aの回転数つまりエンジン回転数はエンジン回転数センサ31によって検出される。
【0022】
エンジン本体1には、燃料を燃焼室内に直接噴射するためのインジェクタ21が設けられている。インジェクタ21は気筒毎に設けられており、コモンレール22に接続されている。
【0023】
コモンレール22は、サプライポンプ(図示せず)から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ21に分配する。インジェクタ21は所定電圧が印加されたときに開弁して、各気筒の燃焼室内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。
【0024】
エンジン本体1の吸気側には、各気筒に吸入空気を分配するためのインテークマニホールド2が接続されている。インテークマニホールド2の入口には、空気を大気中から取り込んで当該インテークマニホールド2に導くための吸気通路4が接続されている。吸気通路4の入口にはエアクリーナ6が取り付けられている。
【0025】
また、インテークマニホールド2の上流(吸気流れの上流)には、エンジンの吸入空気量を調整するスロットルバルブ7が配置されている。スロットルバルブ7はスロットルモータ(図示せず)によって駆動される。スロットルバルブ7の開度はスロットル開度センサ32によって検出される。スロットルバルブ7のスロットル開度はECU(Electronic Control Unit)200によって制御される。
【0026】
エンジン本体1の排気側には、各気筒から排出される排気ガスを集合させるエキゾーストマニホールド3が接続されている。エキゾーストマニホールド3の出口には、排気通路5が接続されている。排気通路5の途中には、NOx触媒、DPF、またはDPNR等の排気浄化装置14が配置されている。また、排気通路5における排気浄化装置14の上流(排気流れの上流)に排気絞り弁13が設けられている。この排気絞り弁13は通常は全開に開かれている。
【0027】
この例のエンジンには、エンジン本体1によって駆動されるオルタネータ23が装備されている。オルタネータ23の入力軸はベルト24等の動力伝達部材を介してエンジン本体1のクランクシャフト1aに連結されている。オルタネータ23によって発電された電力は、車両に搭載されているバッテリ25に充電される。車両に搭載されている様々な電気機器は、バッテリ25からの電力の供給を受けて作動する。後述する電動機付ターボチャージャ100の電動機104もそのような機器の1つであり、アシスト制御時に、インバータコントローラ110を介してバッテリ25から電力が供給される。
【0028】
また、この例のエンジンには、ターボチャージャ及びEGR装置が装備されている。これらの構成について説明する。
【0029】
−ターボチャージャ−
電動機付ターボチャージャ100は、図2にも示すように、排気通路5に配置されたタービンホイール101、吸気通路4に配置されたコンプレッサインペラ102、タービンホイール101とコンプレッサインペラ102とを一体に連結する連結シャフト103、及び、3相交流式の電動機(モータジェネレータ)104などによって構成されており、排気通路5に配置のタービンホイール101が排気のエネルギによって回転し、これに伴って吸気通路4に配置のコンプレッサインペラ102が回転する。そして、コンプレッサインペラ102の回転により吸入空気が過給され、エンジン本体1の各気筒の燃焼室に過給空気が強制的に送り込まれる。なお、コンプレッサインペラ102の下流側(吸気流れの下流側)の吸気通路4には、コンプレッサインペラ102によって過給された空気を冷却するインタークーラ8が設けられている。
【0030】
タービンホイール101とコンプレッサインペラ102とを連結する連結シャフト103は、2つのボールベアリング105,106(図2参照)によって支持されている。これらボールベアリング105,106は、予圧を付与しない構造で一定隙間が存在するボールベアリングである。また、連結シャフト103は電動機104のロータにもなっており、電動機104を作動させることで、コンプレッサインペラ102を強制駆動(タービン動力のアシスト)することも可能である。
【0031】
電動機104は、タービン動力のアシストと電力の回生とが可能なモータジェネレータであり、インバータコントローラ110を介してバッテリ25に接続されている。インバータコントローラ110は、ECU200に接続されており、ECU200によってその駆動が制御される。
【0032】
電動機104はインバータコントローラ110によって駆動制御される。電動機104をモータとして作動させるアシスト制御(過給圧のアシスト制御)時には、バッテリ25の電力がインバータコントローラ110を介して電動機104に供給される。
【0033】
また、電動機104をジェネレータとして作動させる回生制御時には、電動機104にて発電された回生電力がインバータコントローラ110を介してバッテリ25に充電される。電動機104の回生制御は、例えば、インバータコントローラ110のスイッチング素子(例えば、MOSFET)をスイッチングすることによって実行され、そのスイッチングのタイミングを制御することにより発電負荷(ターボ回転の減速)の大小を調整することができる。
【0034】
そして、インバータコントローラ110は、電動機104のロータ(連結シャフト103)の回転数つまりターボ回転数Ntを検出する機能も備えている。なお、ターボ回転数Ntは個別の回転数センサで検出するようにしてもよい。
【0035】
−EGR装置−
EGR装置はEGR通路(排気還流通路)9を備えている。EGR通路9の一端部はインテークマニホールド2とスロットルバルブ7との間の吸気通路4に接続されている。EGR通路9の他端部はエキゾーストマニホールド3に接続されており、排気ガス(EGRガス)の一部がEGR通路9を通って吸気通路4に導入される。EGRガス(空気に比較して比熱が高く酸素量の少ないガス)を吸気通路4に導入することで、筒内の燃焼温度を低下させてNOxの生成量を低減させることができる。
【0036】
EGR通路9の途中には、当該EGR通路9を開閉するEGRバルブ12が設けられている。EGR通路9におけるEGRバルブ12の上流(排気側)には、EGR通路9内を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ10が設けられている。このEGRクーラ10による冷却によってEGRガスの密度が高まり、吸入空気量を確保しながらEGR率を向上させることが可能になる。
【0037】
EGRクーラ10とEGRバルブ12との間には、EGRクーラ10をバイパスしてEGRガスを流すためのバイパス通路11aが設けられている。このバイパス通路11aとEGR通路9との接続部(EGRガス流れの下流側の接続部)には、EGR通路9の開度とバイパス通路11aの開度とを調整する切替制御バルブ11が設けられている。
【0038】
−ECU−
ECU200は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。
【0039】
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、例えばエンジンの停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0040】
ECU200の入力部には、エンジン回転数センサ31、スロットル開度センサ32、及び、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ33などのエンジン運転状態を示す各種情報を取得するための各種センサ類が接続されている。
【0041】
ECU200の出力部には、インジェクタ21、スロットルバルブ7(スロットルモータ)、インバータコントローラ110(電動機付ターボチャージャ100の電動機104)、EGRバルブ12、及び、切替制御バルブ11などが接続されている。
【0042】
そして、ECU200は、上記した各種センサの検出信号に基づいて、インジェクタ21の駆動制御(燃料噴射制御)、スロットルバルブ7のスロットルモータの駆動制御、及び、EGR量の制御(EGRバルブ12及び切替制御バルブ11の制御等)などを含むエンジンの各種制御を実行する。また、ECU200は、過給圧のアシスト制御、及び、下記の減速時の回生制御を実行する。
【0043】
以上のECU200により実行されるプログラムによって、本発明の電動機付過給機の制御装置が実現される。
【0044】
−減速時の回生制御−
まず、予圧を付与しない構造で一定隙間が存在するボールベアリングが採用されたターボチャージャにおいては、上述したように、エンジン減速時にターボ音が異音として聞こえやすくなる領域が存在する。つまり、エンジン本体の騒音(暗騒音)がエンジン回転速度の低下に伴って急激に下がるのに対し、ボールベアリングを用いたターボチャージャでは、軸受のフリクションが低いため、ターボ回転速度が急激には下がらず(慣性で回り続けるため)、ターボチャージャの音のみが車室内に伝播しやすくなって、ターボ異音として聞こえてしまう(図6参照)。
【0045】
このような点を考慮して、この例では、エンジン回転速度の低下によるエンジン騒音の減少に伴うターボ異音の発生を回避するために、減速時にエンジン回転数が所定の判定閾値以下のときに、電動機付ターボチャージャ100の電動機104の回生制御を実行することで、ターボ回転速度を強制的に低下させてターボ異音を抑制することを技術的特徴としている。
【0046】
その具体的な制御の例について図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
図3の制御ルーチンはECU200において所定時間(例えば8ms)毎に繰り返して実行される。
【0048】
まず、ステップST101では、スロットル開度センサ32の出力信号に基づいて、スロットル開度αの単位時間当たりの変化(以下、スロットル開度変化dα/dtという)を算出し、そのスロットル開度変化dα/dtが判定閾値(0)以下(dα/dt≦0)であるか否かを判定する。ステップST101の判定結果が否定判定(NO)である場合(0<dα/dtである場合)は通常制御を実行(継続)して(ステップST104)、リターンする。ステップST101の判定結果が肯定判定(YES)である場合(dα/dt≦0である場合)はステップST102に進む。
【0049】
なお、スロットル開度変化dα/dtは、[(前回のスロットル開度αn-1)−(今回のスロットル開度αn)]/t t:1制御周期の時間(例えば8ms)]に基づいて算出する。また、車両減速時にはスロットル開度変化dα/dtはマイナス(dα/dt<0)となる。
【0050】
ステップST102では、エンジン回転数センサ31の出力信号から得られるエンジン回転数Neが所定の判定閾値th(図4参照)以下(Ne≦th)であるか否かを判定する。ステップST102の判定結果が否定判定である場合(th<Neである場合)は通常制御を実行(継続)して(ステップST104)、リターンする。ステップST102の判定結果が肯定判定(YES)である場合(Ne≦thである場合)はステップST103に進む。
【0051】
このステップST102の判定に用いる判定閾値thは、車両の減速時においてエンジン回転数Neが低下しているときに、ターボ異音発生に至るか否かを判定するための閾値である。
【0052】
この判定閾値thについては、エンジン回転低下時のエンジン本体1の車室内での騒音レベル(暗騒音レベル)の時間変化(減少)と、ターボ回転低下時の電動機付ターボチャージャ100の車室内での騒音レベルの時間変化(減少)とを予め実験等によって取得しておき、それらの騒音レベルデータに基づいて、エンジン回転数がどこまで低下すると、車室内でターボ音が異音として聞こえるのか(ターボ異音が発生するのか)を経験的に把握し、その結果(エンジン回転数の低下限界値)を基に適合した値(例えば、エンジン回転数の低下限界値+マージン)を判定閾値として設定する。
【0053】
なお、判定閾値thは、固定値であってもよいし、エンジン運転状態などに応じて可変に設定するようにしてもよい。
【0054】
ステップST103においては、電動機付ターボチャージャ100の電動機104の回生制御を実行してターボ回転速度を強制的に下げる。
【0055】
具体的には、インバータコントローラ110により検出されるターボ回転数Ntに基づいて、ターボ回転数Ntが図4に示す異音許容ゾーンZを通過するように、電動機104の回生制御(インバータのスイッチング制御)を実行してターボ回転速度を強制的に低下させる。なお、図4には、回生制御を実行しない場合でタービン回転数Ntが成り行きで下がる場合を破線で示している。
【0056】
ここで、異音許容ゾーンZはターボ音が気にならないターボ回転域である。この異音許容ゾーンZについては、上記と同様に実験等により、エンジン回転低下時のエンジン本体1の車室内での騒音レベル(暗騒音レベル)の時間変化(減少)と、ターボ回転低下時の電動機付ターボチャージャ100の車室内での騒音レベルの時間変化(減少)とを予め取得しておき、それらの騒音レベルデータに基づいて、車室内においてターボ音が気にならないターボ回転域を経験的に求め、その結果を基に図4に示すような異音許容ゾーンZを設定する。
【0057】
以上のステップST103での回生制御は、ステップST101の判定結果が否定判定となる(0<dα/dtとなる)まで継続される。そして、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで、スロットル開度変化dα/dtが0よりも大きくなったときに、例えば図5に示すように、回生制御からアシスト制御に移行して加速モードに入る。このように加速要求があったときには直ぐにアシスト制御に移行することで、加速への影響を少なくすることができる。
【0058】
ここで、ステップST101の判定処理を行っている理由は、車両が減速時であることを判定するためである。すなわち、車両が減速モードに入った場合、スロットル開度変化dα/dtはマイナス(dα/dt<0)となるので、この点を利用して車両の減速を判定するようにしている。また、この例では、スロットル開度変化dα/dtが0の場合においても回生制御を継続してターボ回転速度を減少させるようにするため、ステップST101の判定条件を[dα/dt≦0]としている。
【0059】
なお、このような判定条件に限られることなく、[dα/dt≦−β]という判定条件としてもよい。この場合、[−β]は、例えば、回生制御とアシスト制御とのハンチングを考慮して設定すればよい。
【0060】
以上のように、この例の制御によれば、車両の減速時において、エンジン回転数Neが低下して判定閾値th以下になったとき、つまり、エンジン回転数Neが低下する過程においてエンジン騒音の減少に伴うターボ異音発生の前に、電動機付ターボチャージャ100の電動機104の回生制御を実行して、ターボ回転速度(ターボ回転数Nt)を強制的に下げているので、ターボ異音の発生を回避することができる。また、ターボ異音の発生を抑制するために回生制御を実行しているときに、回生電力がバッテリ25に供給されるので、減速時にバッテリ25の充電を行うことがきる。
【0061】
−他の実施形態−
以上の例では、図3のステップST101の判定処理において、スロットル開度の変化(dα/dt)を判定閾値と比較しているが、これに替えて、アクセル開度センサ33によって検出されるアクセル開度θの単位時間当たりの変化(dθ/dt)を判定閾値と比較するようにしてもよい。
【0062】
以上の例では、ボールベアリングを採用した電動機付ターボチャージャの制御に本発明を適用した例を示したが、これに限られることなく、他の軸受を採用した電動機付ターボチャージャであって、エンジン回転速度の低下による内燃エンジン騒音(暗騒音)の減少に伴うターボ異音が発生する電動機付ターボチャージャにも本発明は適用可能である。
【0063】
以上の例では、ディーゼルエンジンの電動機付過給機の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、ガソリンエンジン等の他のエンジンに装備される電動機付過給機の制御にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、内燃機関に備えられる過給機であって、吸入空気の過給アシスト及び電力の回生が可能な電動機を備えた過給機の制御に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 エンジン本体
4 吸気通路
5 排気通路
7 スロットルバルブ
25 バッテリ
31 エンジン回転数センサ
32 スロットル開度センサ
33 アクセル開度センサ
100 電動機付ターボチャージャ(電動機付過給機)
101 タービンホイール
102 コンプレッサインペラ
103 連結シャフト
104 電動機(モータジェネレータ)
105、106 ボールベアリング
200 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に適用され、吸入空気の過給アシスト及び回生が可能な電動機を備えた過給機の制御装置であって、
機関回転数が判定閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記機関回転数が判定閾値以下であることを条件に前記電動機の回生制御を実行する回生制御手段とを備えていることを特徴とする電動機付過給機の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動機付過給機の制御装置において、
前記内燃機関のスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段を備え、前記スロットル開度の変化が判定閾値以下であり、前記機関回転数が判定閾値以下であるときに前記回生制御を実行することを特徴とする電動機付過給機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動機付過給機の制御装置において、
前記機関回転数に対する判定閾値は、当該内燃機関の騒音の減少に伴う前記過給機騒音の発生を考慮して設定されていることを特徴とする電動機付過給機の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動機付過給機の制御装置において、
前記電動機付過給機の連結シャフトを支持する軸受がボールベアリングであることを特徴とする電動機付過給機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157881(P2011−157881A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20498(P2010−20498)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】