説明

電動機駆動システム

【課題】電源側に回り込むノイズを低減することができる電動機駆動システムを提供すること。
【解決手段】電動機駆動システムは、電源ラインに接続された複数のスイッチング素子を有するインバータ装置100と、インバータ装置100から出力される交流電圧によって駆動される電動機200と、インバータ装置100と電動機200との間に挿入されるLCフィルタ回路300と、電導部材によって形成されて複数のスイッチング素子が固定される冷却体400と、複数のスイッチング素子の電源ライン側端子と冷却体400との間に挿入されるコンデンサと抵抗からなる直列回路とを備える。LCフィルタ回路300は、インバータ装置100から電動機200に動作電力を供給する電力供給線202等に挿入されるインダクタ310等と、一方端がインダクタ310等の一方端に接続されるとともに他方端が冷却体400に接続されるコンデンサ320等とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を交流電圧に変換して電動機を駆動する電動機駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直流電圧を交流電圧に変換して交流モータを駆動する電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電力変換装置では、各スイッチング素子の電源ライン側端子と導電ベースとの間にコンデンサを追加することで、各スイッチング素子から電源ライン用導体へ回り込むコモンモードノイズを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136333号公報(第10−18頁、図1−17)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された電力変換装置では、スイッチング素子の電源ライン側端子から電源ライン用導体へ回り込むコモンモードノイズは低減できるが、他の経路についてはノイズの発生や回り込みが考慮されていないため、ノイズ低減の効果が十分でないという問題があった。例えば、スイッチングノイズ低減のために電力変換装置と交流モータとの間にLCフィルタを挿入することが考えられるが、この場合にはこのLCフィルタを通してグランド側にノイズが回り込むことになるため、結局電源側にノイズが回り込むことになる。また、各スイッチング素子のオンオフ動作時にその両端に発生するノイズについては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、電源側に回り込むノイズを低減することができる電動機駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の電動機駆動システムは、電源ラインに接続された複数のスイッチング素子を有し、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置と、インバータ装置から出力される交流電圧によって駆動される電動機と、インバータ装置と電動機との間に挿入されるLCフィルタ回路と、電導部材によって形成され、複数のスイッチング素子が固定される冷却体と、複数のスイッチング素子の電源ライン側端子と冷却体との間に挿入される第1のコンデンサと第1の抵抗からなる直列回路とを備え、LCフィルタ回路は、インバータ装置から電動機に動作電力を供給する電力供給線に挿入されるインダクタと、一方端がインダクタの一方端に接続されるとともに他方端が冷却体に接続される第2のコンデンサとを有している。
【0007】
具体的には、上述したインバータ装置は、高電位側電源ラインに一方端が接続される上アーム素子としてのスイッチング素子と低電位側電源ラインに一方端が接続される下アーム素子としてのスイッチング素子とを有するハーフブリッジ回路が複数備わっていることが望ましい。
【0008】
このように、直列回路を介してノイズを冷却体側に流すことで、スイッチング素子の電源ライン側端子から電源ラインを介して電源側に回り込むノイズを低減することができる。また、インバータ装置に含まれるスイッチング素子をオン/オフする際に発生するノイズをLCフィルタで低減するとともに、このLCフィルタを介して冷却体側にノイズが回り込むようにすることで、LCフィルタを介して電源側に回り込むノイズを低減することができる。
【0009】
また、上述したスイッチング素子と並列接続された第3のコンデンサをさらに備えることが望ましい。これにより、スイッチング素子周辺のインダクタ成分により発生するスイッチング動作に伴うノイズを第3のコンデンサを介して流すことで低減することができ、スイッチング素子の電源ライン側端子から電源ラインを介して電源側に回り込むノイズをさらに低減することができる。
【0010】
また、上述した電動機は、接地用端子を有しており、接地用端子と冷却体との間を第2の抵抗を介して接続することが望ましい。これにより、電動機の接地用端子を介して電源側に回り込むノイズを低減することができる。
【0011】
また、上述したインダクタは、電力供給線の配線を用いて形成されることが望ましい。これにより、LCフィルタを用いた場合の部品点数の増加を防止することができる。
【0012】
また、上述したインダクタは、配線と、配線の一部に装着された磁性体コアとを用いて形成されることが望ましい。これにより、短い配線により大きなインダクタンスを実現することができ、しかも、LCフィルタの小型化が可能となる。
【0013】
また、上述したスイッチング素子は、MOS−FETであることが望ましい。これにより、安価で許容電流が大きいスイッチング素子を容易に実現することができる。
【0014】
また、上述したスイッチング素子は、樹脂成形されたケース本体を有し、冷却体へのケース本体の固定と、冷却体への直列回路の一方端の接続とを、共通のねじを用いた締め付け固定により行うことが望ましい。これにより、スイッチング素子の固定と同時に、直列回路の一方端を冷却体に接続する際の配線長を短くすることができる。
【0015】
また、上述した第1のコンデンサおよび第1の抵抗は、ケース本体に密着配置されていることが望ましい。これにより、直列回路の固定を確実に行うことができる。
【0016】
また、上述したインダクタの端部となる配線の端部には、電動機の接続および取り外しが可能な端子台が設けられており、端子台を冷却体の表面に固定するとともに、端子台に沿って第2のコンデンサを設置することが望ましい。これにより、配線の端部に取り付けられる第2のコンデンサの固定が容易となる。
【0017】
また、上述した第2のコンデンサは、端子台に密着配置されていることが望ましい。これにより、第2のコンデンサの固定をさらに確実に行うことができる。
【0018】
また、上述した配線を冷却体に重ねて配置することが望ましい。これにより、配線部分によって発生するノイズを冷却体によって遮蔽することができるため、その他の部位(例えば接地面)を介して電源側に回り込むノイズを低減することができる。
【0019】
また、上述したインバータ装置、LCフィルタ回路、直列回路は、モジュール化されて形成され、冷却体に固定されていることが望ましい。一体化されたモジュールとすることにより、電動機とともに組み付ける際の手間を低減することができるとともに、誤配線を防止することができる。
【0020】
また、上述したインバータ装置および直列回路と、LCフィルタ回路のそれぞれは、別々にモジュール化されて形成されており、インバータ装置の出力端子と電動機との間に、モジュール化されたLCフィルタ回路が挿入されるようにしてもよい。2つのモジュールとすることにより、電動機とともに組み付ける際の手間を低減することができるとともに、誤配線を防止することができる。
【0021】
また、上述した冷却体へのLCフィルタの固定と、冷却体への第2のコンデンサの他方端の接続とを、共通のねじを用いた締め付け固定により行うことが望ましい。モジュール化されたLCフィルタ回路の固定と同時に第2のコンデンサの他方端の冷却体への接続を行うことができ、組み付け工程の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態の電動機駆動システムの全体構成を示す図である。
【図2】インバータ装置等の実装状態を示す平面図である。
【図3】インバータ装置等の実装状態を示す側面図である。
【図4】上アーム素子としてのスイッチング素子の実装の詳細を示す拡大平面図である。
【図5】上アーム素子としてのスイッチング素子の実装の詳細を示す拡大側面図である。
【図6】下アーム素子としてのスイッチング素子の実装の詳細を示す拡大平面図である。
【図7】下アーム素子としてのスイッチング素子の実装の詳細を示す拡大側面図である。
【図8】別々にモジュール化されたインバータ装置とLCフィルタ回路の組み付け状態を示す斜視図である。
【図9】別々にモジュール化されたインバータ装置とLCフィルタ回路を冷却体400に固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した一実施形態の電動機駆動システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、一実施形態の電動機駆動システムの全体構成を示す図である。図1に示す本実施形態の電動機駆動システムは、インバータ装置100、電動機200、LCフィルタ回路300、冷却体400を含んで構成されている。
【0025】
インバータ装置100は、電源ラインに接続された複数のスイッチング素子を有し、直流電圧を交流電圧に変換する。具体的には、インバータ装置100は、電源500から延びる高電位側電源ライン502に一方端が接続される上アーム素子としてのスイッチング素子111と電源500から延びる低電位側電源ライン504に一方端が接続される下アーム素子としてのスイッチング素子112とが直列に接続された第1のハーフブリッジ回路110と、高電位側電源ライン502に一方端が接続される上アーム素子としてのスイッチング素子121と低電位側電源ライン504に一方端が接続される下アーム素子としてのスイッチング素子122とが直列に接続された第2のハーフブリッジ回路120と、高電位側電源ライン502に一方端が接続される上アーム素子としてのスイッチング素子131と低電位側電源ライン504に一方端が接続される下アーム素子としてのスイッチング素子132とが直列に接続された第3のハーフブリッジ回路130とが備わっている。
【0026】
上述した各スイッチ素子は、例えばMOS−FETを用いて構成され、それぞれのソース・ドレイン間には寄生ダイオードが形成されており、ソース・ドレイン間に並列にコンデンサ(第3のコンデンサ)が接続されている。具体的には、スイッチング素子111のソース・ドレイン間にコンデンサ113が接続されている。同様に、スイッチング素子112のソース・ドレイン間にコンデンサ114が接続されている。スイッチング素子121のソース・ドレイン間にコンデンサ123が接続されている。スイッチング素子122のソース・ドレイン間にコンデンサ124が接続されている。スイッチング素子131のソース・ドレイン間にコンデンサ133が接続されている。スイッチング素子132のソース・ドレイン間にコンデンサ134が接続されている。
【0027】
また、各スイッチング素子の電源ライン側端子と冷却体400との間には、コンデンサ(第1のコンデンサ)と抵抗(第1の抵抗)からなる直列回路が挿入されている。具体的には、スイッチング素子111の電源ライン側端子としてのドレイン端子と冷却体400との間には、コンデンサ116と抵抗115からなる直列回路が挿入される。なお、図1に示す例では、抵抗115をスイッチング素子111のドレイン端子側に配置したが、コンデンサ116をドレイン端子側に配置してもよい。同様に、スイッチング素子112の電源ライン側端子としてのソース端子と冷却体400との間には、コンデンサ118と抵抗117からなる直列回路が挿入される。スイッチング素子121の電源ライン側端子としてのドレイン端子と冷却体400との間には、コンデンサ126と抵抗125からなる直列回路が挿入される。スイッチング素子122の電源ライン側端子としてのソース端子と冷却体400との間には、コンデンサ128と抵抗127からなる直列回路が挿入される。スイッチング素子131の電源ライン側端子としてのドレイン端子と冷却体400との間には、コンデンサ136と抵抗135からなる直列回路が挿入される。スイッチング素子132の電源ライン側端子としてのソース端子と冷却体400との間には、コンデンサ138と抵抗137からなる直列回路が挿入される。
【0028】
このような構成を有するインバータ装置100において、各ハーフブリッジ回路を構成する上アーム素子と下アーム素子を交互にオン/オフするとともに、各ハーフブリッジ回路の動作タイミングの位相を120度ずつずらすことにより、各ハーフブリッジ回路の出力端(上アーム素子と下アーム素子の接続点)からは三相交流電圧が出力される。なお、図1では、インバータ装置100の各上アーム素子と各下アーム素子をオン/オフする制御回路については、図示が省略されている。
【0029】
また、インバータ装置100と電動機200との間は、インバータ装置100から電動機200に動作電力を供給する電力供給線202、204、206によって接続されており、これらの電力供給線202、204、206を介して、インバータ装置100から出力される三相交流電圧が電動機200に印加される。電動機200は、電力供給線202、204、206を介してインバータ装置100から印加される三相交流電圧によって駆動される。
【0030】
さらに、インバータ装置100と電動機200との間には、インバータ装置100内の各スイッチング素子をオン/オフする際に発生するノイズを低減するLCフィルタ回路300が挿入されている。LCフィルタ回路300は、3つのインダクタ310、312、314と3つのコンデンサ320、322、324(第2のコンデンサ)とを含んで構成されている。インダクタ310とコンデンサ320によって第1のLCフィルタが構成される。このインダクタ310は、第1のハーフブリッジ110から延びる電力供給線202に挿入されており、その一方端(電動機200側)と冷却体400との間にコンデンサ320が接続されている。同様に、インダクタ312とコンデンサ322によって第2のLCフィルタが構成される。このインダクタ312は、第2のハーフブリッジ120から延びる電力供給線204に挿入されており、その一方端(電動機200側)と冷却体400との間にコンデンサ322が接続されている。また、インダクタ314とコンデンサ324によって第3のLCフィルタが構成される。このインダクタ314は、第3のハーフブリッジ130から延びる電力供給線206に挿入されており、その一方端(電動機200側)と冷却体400との間にコンデンサ324が接続されている。
【0031】
冷却体400は、電導部材(例えばアルミニウム)によって形成されており、インバータ装置100の各スイッチング素子が固定され、これらの各スイッチング素子を伝熱により冷却する。各スイッチング素子の冷却体400への実装の具体例については後述する。
【0032】
また、電動機200は、接地用端子210を有している。例えば、電動機200の金属製(例えばアルミニウム)の筐体の一部が接地用端子210として用いられる。接地用端子210は、接地面600に設けられた接続点602に接地線604を介して接続されている。また、接地面600の接続点602は、抵抗402(第2の抵抗)を介して冷却体400と接続されている。
【0033】
このように、本実施形態の電動機駆動システムでは、抵抗115やコンデンサ116等からなる直列回路を介して各スイッチング素子の電源ライン側端子に現れるノイズを冷却体400側に流すことで、各電源ライン側端子から高電位側電源ライン502あるいは低電位側電源ライン504を介して電源500側に回り込むノイズを低減することができる。また、インバータ装置100に含まれるスイッチング素子をオン/オフする際に発生するノイズをLCフィルタ回路300で低減するとともに、このLCフィルタ回路300を介して冷却体400側にノイズが回り込むようにすることで、LCフィルタ回路300を介して電源500側に回り込むノイズを低減することができる。
【0034】
また、各スイッチング素子とコンデンサ113等を並列接続することにより、スイッチング素子周辺のインダクタ成分により発生するスイッチング動作に伴うノイズをコンデンサ113等を介して流すことで低減することができ、スイッチング素子の電源ライン側端子から高電位側電源ライン502あるいは低電位側電源ライン504を介して電源500側に回り込むノイズをさらに低減することができる。
【0035】
また、電動機200の接地用端子210が接地線604と抵抗402を介して冷却体400に接続されている。この接地線604は接地面600の接続点602にも接続されているが、接地面600を介して電源500に接続される経路のインピーダンスに比べて抵抗402を介して冷却体400に接続される経路のインピーダンスの方が小さいため、電動機200の接地用端子210から出力されるノイズが主に冷却体400側に回り込むようにすることができ、電源500側に回り込むノイズをさらに低減することができる。
【0036】
また、インバータ装置100内に各スイッチング素子をMOS−FETを用いて構成することにより、安価で許容電流が大きいスイッチング素子を容易に実現することができる。
【0037】
次に、インバータ装置100およびLCフィルタ回路300の実装の具体例について説明する。図2は、インバータ装置100等の実装状態を示す平面図である。図3は、インバータ装置100等の実装状態を示す側面図である。
【0038】
インバータ装置100に含まれる各スイッチング素子は、樹脂成形されたケース本体を有する。そして、冷却体400へのこのケース本体の固定と、冷却体400へのコンデンサと抵抗とからなる直列回路の一方端の接続とは、共通のねじを用いた締め付け固定により行われる。冷却体400は絶縁体610を介して接地面600上に配置されており、冷却体400と接地面600との間で電気的な絶縁がなされている。
【0039】
図4は、上アーム素子としてのスイッチング素子111の実装の詳細を示す拡大平面図である。図5は、上アーム素子としてのスイッチング素子111の実装の詳細を示す拡大側面図である。なお、他の上アーム素子としてのスイッチング素子121、131についても同様であり、実装についての重複した説明は省略する。
【0040】
図4および図5に示すように、上アーム素子としてのスイッチング素子111は、ケース本体111Aを有し、その一側面からゲート(g)、ドレイン(d)、ソース(s)の順に各端子が突出している。これらの各端子は、冷却体400の上面と垂直に配置されたプリント基板410表面の配線(図示せず)に接続されている。
【0041】
また、ケース本体111Aは、直方体形状を有しており、最も面積が広い一方の側面が冷却体400と接するように配置されており、他方の面から貫通する取り付け穴111Bにねじ111Cを通して冷却体400にケース111Aを締め付け固定している。また、コンデンサ116と抵抗115のそれぞれはチップ部品であって、ケース本体111Aの表面に密着した状態で配置されている。これらのコンデンサ116と抵抗115からなる直列回路の一方端からは環状の端子111Dが突出しており、ケース本体111Aをねじ111Cを用いて締め付け固定する際に、同時にこの端子111Dも同じねじ111Cを用いて締め付け固定される。このようにして直列回路の一方端を固定することにより、直列回路の一方端と冷却体400とを接続する際に配線長を短くすることができるとともに、別部品による固定が不要となるため配線構造の簡素化が可能となる。なお、コンデンサ116と抵抗115からなる直列回路の他方端は、スイッチング素子111の電源ライン側端子としてのドレイン端子に接続されている。
【0042】
図6は、下アーム素子としてのスイッチング素子112の実装の詳細を示す拡大平面図である。図7は、下アーム素子としてのスイッチング素子112の実装の詳細を示す拡大側面図である。なお、他の下アーム素子としてのスイッチング素子122、132についても同様であり、実装についての重複した説明は省略する。
【0043】
図6および図7に示すように、下アーム素子としてのスイッチング素子112は、ケース本体112Aを有し、その一側面からゲート(g)、ドレイン(d)、ソース(s)の順に各端子が突出している。これらの各端子は、冷却体400の上面と垂直に配置されたプリント基板410表面の配線(図示せず)に接続されている。
【0044】
また、ケース本体112Aは、直方体形状を有しており、最も面積が広い一方の側面が冷却体400と接するように配置されており、他方の面から貫通する取り付け穴112Bにねじ112Cを通して冷却体400にケース112Aを締め付け固定している。また、コンデンサ118と抵抗117のそれぞれはチップ部品であって、ケース本体112Aの表面に密着した状態で配置されている。これらのコンデンサ118と抵抗117からなる直列回路の一方端からは環状の端子112Dが突出しており、ケース本体112Aをねじ112Cを用いて締め付け固定する際に、同時にこの端子112Dも同じねじ112Cを用いて締め付け固定される。このようにして直列回路の一方端を固定することにより、直列回路の一方端と冷却体400とを接続する際に配線長を短くすることができるとともに、別部品による固定が不要となるため配線構造の簡素化が可能となる。なお、コンデンサ118と抵抗117からなる直列回路の他方端は、スイッチング素子112の電源ライン側端子としてのソース端子に接続されている。
【0045】
ところで、図2および図3に示すように、本実施形態のフィルタ回路300に含まれる3つのインダクタ310、312、314のそれぞれは、インダクタとして機能する単体部品を追加せずに電力供給線202、204、206の配線の一部に磁性体コア330を装着することにより構成されている。これにより、部品点数の増加を防止することが可能となる。電力供給線202、204、206の配線を冷却体400に重ねて配置することにより、配線部分によって発生するノイズを冷却体400によって遮蔽することができるため、その他の部位(例えば接地面600)を介して電源500側に回り込むノイズを低減することができる。なお、インダクタンスを大きくするために磁性体コア330を追加したが、電力供給線202、204、206の長さを調整したり、組み合わせるコンデンサ320、322、324の静電容量値を調整することで、磁性体コア330を省略するようにしてもよい。
【0046】
また、図2および図3に示すように、電力供給線202、204、206の配線の端部には、電動機200の接続および取り外しが可能な端子台420が設けられ、冷却体400の表面の一部にねじ422によって固定されている。また、この端子台420の側面に沿って、フィルタ回路300に含まれる3つのコンデンサ320、322、324が密着配置された状態で取り付けられている。これにより、3つのコンデンサ320、322、324の固定が容易となる。
【0047】
また、各スイッチング素子と冷却体400との間に挿入されたコンデンサと抵抗からなる直列回路を含むインバータ装置100とLCフィルタ回路300の全体がモジュール化された一部品として構成されている。これにより、電動機200とともに組み付ける際の手間を低減することができるとともに、誤配線を防止することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、3つのハーフブリッジ回路110、120、130を備えるインバータ装置100について説明したが、駆動対象となる電動機200に合わせてハーフブリッジ回路の数は変更可能であり、2あるいは4以上のハーフブリッジ回路を有するインバータ装置を備える場合についても本発明を適用することができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、各スイッチング素子としてMOS−FETを用いる場合について説明したが、MOS−FET以外、例えばIGBTをスイッチング素子として用いるようにしてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、電力供給線202、204、206の配線を利用してインダクタ310、312、314を構成したが、ノイズの回り込み防止の観点からは、インダクタとして機能する単体部品によってインダクタ310等を構成するようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、各スイッチング素子と冷却体400との間に挿入されたコンデンサと抵抗からなる直列回路を含むインバータ装置100とLCフィルタ回路300の全体を1つのモジュールとして形成する場合を説明したが、各スイッチング素子と冷却体400との間に挿入されたコンデンサと抵抗からなる直列回路を含むインバータ装置100と、LCフィルタ回路300のそれぞれを、別々にモジュール化して形成し、インバータ装置100の出力端子と電動機200との間に、モジュール化されたLCフィルタを挿入するようにしてもよい。
【0052】
図8は、別々にモジュール化されたインバータ装置とLCフィルタ回路の組み付け状態を示す斜視図である。また、図9は別々にモジュール化されたインバータ装置とLCフィルタ回路を冷却体400に固定した状態を示す斜視図である。モジュール化されたインバータ装置100Mと、モジュール化されたLCフィルタ回路300Mは、冷却体400上に配置されている。2つのモジュールとすることにより、電動機200とともに組み付ける際の手間を低減することができるとともに、誤配線を防止することができる。
【0053】
インバータ装置100Mは、図2に示した一体構成から、LCフィルタ回路300を取り除いた構成を有しており、3つのハーフブリッジ回路110、120、130の各出力端子となる3つの端子150、152、154を有する。
【0054】
LCフィルタ回路300Mは、インダクタ310、312、314の一方端(インバータ装置100M側)が接続された3つの端子350、352、354と、インダクタ310、312、314の他方端(電動機200側)が接続された3つの端子360、362、364と、コンデンサ320、322、324の一方端(冷却体400側)が接続された3つの端子370、372、374を有している。
【0055】
インバータ装置100Mの3つの端子150、152、154のそれぞれと、LCフィルタ回路300Mの3つの端子350、352、354のそれぞれとがねじ等を用いて接続される。また、LCフィルタ回路300Mの3つの端子370、372、374は、ねじ380、382、384を用いて冷却体400に固定されている。このようにして、冷却体400へのLCフィルタ回路300Mの固定と、冷却体400へのコンデンサ320、322、324の接続とを、ねじ380、382、384を用いた締め付け固定により行っている。これにより、組み付け工程の簡略化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、直列回路を介してノイズを冷却体400側に流すことで、インバータ装置100内の各スイッチング素子の電源ライン側端子から電源ラインを介して電源500側に回り込むノイズを低減することができる。また、インバータ装置100に含まれる各スイッチング素子をオン/オフする際に発生するノイズをLCフィルタ回路300で低減するとともに、このLCフィルタ回路300を介して冷却体400側にノイズが回り込むようにすることで、LCフィルタ回路300から接地面600を介して電源500側に回り込むノイズを低減することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 インバータ装置
110 第1のハーフブリッジ回路
111、112、121、122、131、132 スイッチング素子
113、114、123、124、133、134 コンデンサ
115、117、125、127、135、137、402 抵抗
116、118、126、128、136、138 コンデンサ
120 第2のハーフブリッジ回路
130 第3のハーフブリッジ回路
200 電動機
202、204、206 電力供給線
300 LCフィルタ回路
310、312、314 インダクタ
320、322、324 コンデンサ
330 磁性体コア
400 冷却体
410 プリント基板
420 端子台
500 電源
502 高電位側電源ライン
504 低電位側電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインに接続された複数のスイッチング素子を有し、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置と、
前記インバータ装置から出力される交流電圧によって駆動される電動機と、
前記インバータ装置と前記電動機との間に挿入されるLCフィルタ回路と、
電導部材によって形成され、前記複数のスイッチング素子が固定される冷却体と、
前記複数のスイッチング素子の電源ライン側端子と前記冷却体との間に挿入される第1のコンデンサと第1の抵抗からなる直列回路と、
を備え、前記LCフィルタ回路は、前記インバータ装置から前記電動機に動作電力を供給する電力供給線に挿入されるインダクタと、一方端が前記インダクタの一方端に接続されるとともに他方端が前記冷却体に接続される第2のコンデンサとを有することを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記インバータ装置は、高電位側電源ラインに一方端が接続される上アーム素子としての前記スイッチング素子と低電位側電源ラインに一方端が接続される下アーム素子としての前記スイッチング素子とを有するハーフブリッジ回路が複数備わっていることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記スイッチング素子と並列接続された第3のコンデンサをさらに備えることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記電動機は、接地用端子を有しており、
前記接地用端子と前記冷却体との間を第2の抵抗を介して接続したことを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記インダクタは、前記電力供給線の配線を用いて形成されることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記インダクタは、前記配線と、前記配線の一部に装着された磁性体コアとを用いて形成されることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記スイッチング素子は、MOS−FETであることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記スイッチング素子は、樹脂成形されたケース本体を有し、
前記冷却体への前記ケース本体の固定と、前記冷却体への前記直列回路の一方端の接続とを、共通のねじを用いた締め付け固定により行うことを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1のコンデンサおよび前記第1の抵抗は、前記ケース本体に密着配置されていることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項10】
請求項5または6において、
前記インダクタの端部となる前記配線の端部には、前記電動機の接続および取り外しが可能な端子台が設けられており、
前記端子台を前記冷却体の表面に固定するとともに、前記端子台に沿って前記第2のコンデンサを設置することを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2のコンデンサは、前記端子台に密着配置されていることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項12】
請求項10において、
前記配線を前記冷却体に重ねて配置することを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記インバータ装置、前記LCフィルタ回路、前記直列回路は、モジュール化されて形成され、前記冷却体に固定されていることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記インバータ装置および前記直列回路と、前記LCフィルタ回路のそれぞれは、別々にモジュール化されて形成されており、前記インバータ装置の出力端子と前記電動機との間に、モジュール化された前記LCフィルタ回路が挿入されることを特徴とする電動機駆動システム。
【請求項15】
請求項14において、
前記冷却体への前記LCフィルタの固定と、前記冷却体への前記第2のコンデンサの他方端の接続とを、共通のねじを用いた締め付け固定により行うことを特徴とする電動機駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228100(P2012−228100A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94645(P2011−94645)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501429829)
【出願人】(000201777)双信電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】