説明

電動車両の冷却システム

【課題】冷却効率を向上できる電動車両の冷却システムを提供する。
【解決手段】車両の前方から見たときの投影面積が大きな圧縮機7や中間熱交換器8をラジエータ3通過後の空気の流出経路内に配設しないように構成した。これにより、ラジエータ3を通過する空気の圧力損失を低下させて、冷却システムの効率を向上できる。また、ラジエータ3を通過して温度上昇した空気が圧縮機7や中間熱交換器8に当たってこれらを温めてしまうことによる、冷却システムの効率低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の車両駆動用モータとそのインバータ電源を冷却する電動車両の冷却システムが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献には、電動車両の冷却システムの構成機器の配設位置について、冷却システムの効率の観点からの開示はない。しかし、これら構成機器の配置の善し悪しが冷却システムの効率に大きな影響を及ぼす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による電動車両の冷却システムは、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、電動圧縮機は、熱交換手段で熱交換を行った後の外気が熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明による電動車両の冷却システムは、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路とを備え、熱交換対象物には、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段が含まれ、中間熱交換手段は、熱交換手段で熱交換を行った後の外気が熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路をさらに備え、熱交換対象物には、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段が含まれ、中間熱交換手段は、主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動車両の冷却システムにおいて、冷媒循環路は、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換対象物の一部を含んだ第2のアッセンブリーとの間が継手で接続されていて、継手の前後で第1のアッセンブリーと第2のアッセンブリーとが接続および分離可能であることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明による電動車両の冷却システムは、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、冷媒循環路は、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換対象物の一部を含んだ第2のアッセンブリーとの間が継手で接続されていて、継手の前後で第1のアッセンブリーと第2のアッセンブリーとが接続および分離可能であることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明は、請求項5に記載の電動車両の冷却システムにおいて、継手は、冷却媒体が第1のアッセンブリーから第2のアッセンブリーへ向かって流れる第1の継手と、冷却媒体が第2のアッセンブリーから第1のアッセンブリーへ向かって流れる第2の継手とを有し、第1および第2の継手がともに車両の上方または下方に配設されていることを特徴とする。
(7) 請求項7の発明は、請求項5または請求項6に記載の電動車両の冷却システムにおいて、第2のアッセンブリーは、複数の熱交換対象物を含み、複数の熱交換対象物のうち、上限温度の低い熱交換対象物が上限温度の高い熱交換対象物よりも冷却媒体の流れに対して上流に配設されることを特徴とする。
(8) 請求項8の発明による電動車両の冷却システムは、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動圧縮機および中間熱交換手段を含んだ第2のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動駆動装置を含んだ第3のアッセンブリーとを備え、第1のアッセンブリーの冷媒循環路と、第2のアッセンブリーの冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第1のアッセンブリーの冷媒循環路と第2のアッセンブリーの冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であり、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路と、第3のアッセンブリーの別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路と第3のアッセンブリーの別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする。
(9) 請求項9の発明による電動車両の冷却システムは、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段と電動圧縮機と中間熱交換手段とを含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動駆動装置を含んだ第2のアッセンブリーとを備え、第1のアッセンブリーの別冷媒循環路と、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第1のアッセンブリーの別冷媒循環路と第2のアッセンブリーの別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電動車両の冷却システムの冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用した電動車両用冷却システムの構成を示す図である。
【図2】本発明を適用した電動車両用冷却システムを搭載した車両を正面から見たときの模式図である。
【図3】車両の前部を上方から見たときの模式図である。
【図4】車両に搭載されている電動車両用冷却システムを車両の斜め前方から見たときの模式図である。
【図5】電動車両用冷却システムのASSY化の一例を示す図である。
【図6】インバータ電源2をモータ1の下方に配設した例を示す図である。
【図7】変形例を示す図である。
【図8】変形例を示す図である。
【図9】変形例を示す図である。
【図10】変形例を示す図である。
【図11】変形例を示す図である。
【図12】本発明の熱サイクルシステムが適用される電気自動車の駆動系の構成及びその一部を構成する電動機駆動システムの各コンポーネントの電気的な接続構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を説明する。以下に説明する実施例では、本発明を、電動機を車両の唯一の駆動源とする純粋な電気自動車の熱サイクルシステムに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0009】
以下に説明する実施例の構成は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源とする電動車両、例えばハイブリッド自動車(乗用車)、ハイブリッドトラックなどの貨物自動車、ハイブリッドバスなどの乗合自動車などの熱サイクルシステムに適用しても構わない。
【0010】
まず、図12を用いて、本発明の熱サイクルシステムが適用される純粋な電気自動車(以下、単に「EV」と記述する)の電動機駆動システムについて説明する。
【0011】
図12は、EV1000の駆動系の構成及びその一部を構成する電動機駆動システムの各コンポーネントの電気的な接続構成を示す。
尚、図12において、太い実線は強電系を示し、細い実線は弱電系を示す。
図示省略した車体のフロント部或いはリア部には車軸820が回転可能に軸支されている。車軸820の両端には一対の駆動輪800が設けられている。図示省略したが、車体のリア部或いはフロント部には、両端に一対の従動輪が設けられた車軸が回転可能に軸支されている。図12に示すEV1000では、駆動輪800を前輪とし、従動輪を後輪とした前輪駆動方式を示しているが、駆動輪800を後輪とし、従動輪を前輪とした後輪駆動方式もある。
【0012】
車軸820の中央部にはデファレンシャルギア(以下、「DEF」と記述する)830が設けられている。車軸820はDEF830の出力側に機械的に接続されている。DEF830の入力側には変速機810の出力軸が機械的に接続されている。DEF830は、変速機810によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の車軸820に分配する差動式動力分配機構である。変速機810の入力側にはモータジェネレータ200の出力側が機械的に接続されている。
【0013】
モータジェネレータ200は、電機子巻線211を備えた電機子(図12に示すEV1000では固定子が相当)210と、電機子210に空隙を介して対向配置されると共に、永久磁石221を備えた界磁(図12に示すEV1000では回転子が相当)220とを有する回転電機であり、EV1000の力行時にはモータとして機能し、回生時にはジェネレータとして機能する。
【0014】
モータジェネレータ200がモータとして機能する場合には、バッテリ100に蓄積された電気エネルギーがインバータ装置300を介して電機子巻線211に供給される。これにより、モータジェネレータ200は電機子210と界磁220との間の磁気的作用により回転動力(機械エネルギー)を発生する。モータジェネレータ200から出力された回転動力は、変速機810及びDEF830を介して車軸820に伝達され、駆動輪800を駆動する。
【0015】
モータジェネレータ200がジェネレータとして機能する場合には、駆動輪800から伝達された機械エネルギー(回転動力)がモータジェネレータ200に伝達され、モータジェネレータ200を駆動する。このように、モータジェネレータ200が駆動されると、電機子巻線211には界磁220の磁束が鎖交して電圧が誘起される。これにより、モータジェネレータ200は電力を発生する。モータジェネレータ200から出力された電力はインバータ装置300を介してバッテリ100に供給される。これにより、バッテリ100は充電される。
【0016】
モータジェネレータ200、特に電機子210は、後述する熱サイクルシステムによってその温度が許容温度範囲内になるように調節されている。電機子210は発熱部品であるので冷却が必要であると共に、周囲温度が低温の時には所定の電気特性が得られるように、暖気が必要になる場合もある。
【0017】
モータジェネレータ200は、電機子210とバッテリ100との間の電力がインバータ装置300によって制御されることにより駆動する。すなわちインバータ装置300はモータジェネレータ200の制御装置である。インバータ装置300は、スイッチング半導体素子のスイッチング動作によって電力を直流から交流に、交流から直流に変換する電力変換装置であり、パワーモジュール310、パワーモジュール310に実装されたスイッチング半導体素子を駆動する駆動回路330、パワーモジュール310の直流側に電気的に並列に接続され、直流電圧を平滑する電解コンデンサ320、及びパワーモジュール310のスイッチング半導体素子のスイッチング指令を生成し、このスイッチング指令に対応する信号を駆動回路330に出力するモータ制御装置340を備えている。
【0018】
パワーモジュール310は、二つの(上アーム及び下アームの)スイッチング半導体素子を電気的に直列に接続し直列回路(一相分のアーム)が三相分、電気的に並列に接続(三相ブリッジ接続)されて電力変換回路が構成されるように、六つのスイッチング半導体素子を基板上に実装し、アルミワイヤなどの接続導体によって電気的に接続した構造体である。
【0019】
スイッチング半導体素子としては金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)或いは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。ここで、電力変換回路をMOSFETによって構成する場合、ドレイン電極とソース電極との間には寄生ダイオードが存在するので、別途、それらの間にダイオード素子を実装する必要がない。一方、電力変換回路をIGBTによって構成する場合、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはダイオード素子が存在していないので、別途、それらの間にダイオード素子を電気的に逆並列に接続する必要がある。
【0020】
各上アームの下アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、コレクタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ100の正極側に電気的に接続されている。各下アームの上アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、エミッタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ100の負極側に電気的に接続されている。各アームの中点、すなわち上アームの下アーム接続側(IGBTの場合、上アームのエミッタ電極側)と下アームの上アーム接続側(IGBTの場合、下アームのコレクタ電極側)との接続点はパワーモジュール310の交流側から外部に導出され、電機子巻線211の対応する相の巻線に電気的に接続されている。
【0021】
電解コンデンサ320は、スイッチング半導体素子の高速スイッチング動作及び電力変換回路に寄生するインダクタンスに起因して生じる電圧変動を抑制するために、すなわち直流成分に含まれる交流成分を除去する平滑コンデンサである。平滑コンデンサとしては電解コンデンサ320の代わりにフィルムコンデンサを用いることもできる。
【0022】
モータ制御装置340は、車両全体の制御を司る車両制御装置840から出力されたトルク指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路330に出力する電子回路装置である。
【0023】
駆動回路330は、モータ制御装置340から出力されたスイッチング指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成し、六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置である。
【0024】
インバータ装置300、特にパワーモジュール310及び電解コンデンサ320は、後述する熱サイクルシステムによってその温度が許容温度範囲内になるように調節されている。パワーモジュール310及び電解コンデンサ320は発熱部品であるので冷却が必要であると共に、周囲温度が低温の時には所定の動作特性や電気特性が得られるように、暖気が必要になる場合もある。
【0025】
車両制御装置840は、運転者からのトルク要求(アクセルペダルの踏み込み量或いはスロットルの開度)、車両の速度など、車両の運転状態を示す複数の状態パラメータに基づいて、モータ制御装置340に対するモータトルク指令信号を生成し、そのモータトルク指令信号をモータ制御装置340に出力する。
【0026】
バッテリ100は、モータジェネレータ200の駆動用電源を構成する、公称出力電圧200ボルト以上の高電圧であり、ジャンクションボックス400を介してインバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。バッテリ100としてはリチウムイオンバッテリを用いている。
【0027】
尚、バッテリ100としては、鉛電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなど、他の蓄電器を用いることもできる。
【0028】
バッテリ100は、インバータ装置300及び充電器500によって充放電される蓄電装置であり、主要部として電池部110及び制御部を備えている。
【0029】
電池部110は電気エネルギーの貯蔵庫であり、電気エネルギーの蓄積及び放出(直流電力の充放電)が可能な複数のリチウムイオン電池が電気的に直列に接続されたものから構成され、インバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。
【0030】
制御部は、複数の電子回路部品から構成された電子制御装置であり、電池部110の状態を管理及び制御すると共に、インバータ装置300及び充電器500に許容充放電量を提供して、電池部110における電気エネルギーの出入りを制御する。
【0031】
電子制御装置は、機能上、2つの階層に分かれて構成されており、バッテリ100内において上位(親)に相当するバッテリ制御装置130と、バッテリ制御装置130に対して下位(子)に相当するセル制御装置120とを備えている。
【0032】
セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された指令信号に基づいてバッテリ制御装置130の手足となって動作し、複数のリチウムイオン電池のそれぞれの状態を管理及び制御する複数の電池管理手段を備えている。複数の電池管理手段はそれぞれ集積回路(IC)によって構成されている。複数の集積回路は、電気的に直列に接続された複数のリチウムイオン電池をいくつかのグループに分けたとき、そのグループのそれぞれに対応して設けられ、対応するグループが有する複数のリチウムイオン電池のそれぞれの電圧及び過充放電異常を検出すると共に、対応するグループが有する複数のリチウムイオン電池間に充電状態のバラツキがある場合には、所定の充電状態よりも大きなリチウムイオン電池を放電して、対応するグループが有する複数のリチウムイオン電池間の充電状態が揃うように、対応するグループが有する複数のリチウムイオン電池のそれぞれの状態を管理及び制御する。
【0033】
バッテリ制御装置130は、電池部110の状態を管理及び制御すると共に、車両制御装置840又はモータ制御装置340に許容充放電量を通知して、電池部110における電気エネルギーの出入りを制御する電子制御装置であり、状態検知手段を備えている。状態検知手段は、マイクロコンピュータやディジタルシグナルプロセッサなどの演算処理装置である。
【0034】
バッテリ制御装置130の状態検知手段1には、電池部110の充放電電流を計測するための電流計測手段、電池部110の充放電電圧を計測するための電圧計測手段及び電池部110及びいくつかのリチウムイオン電池の温度を計測するための温度計測手段から出力された計測信号、セル制御装置120から出力された、複数のリチウムイオン電池の端子間電圧に関する検出信号、セル制御装置120から出力された異常信号、イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置840又はモータ制御装置340から出力された信号を含む複数の信号が入力されている。
【0035】
バッテリ制御装置130の状態検知手段は、それらの入力信号から得られた情報、予め設定された、リチウムイオン電池の特性情報及び演算に必要な演算情報を含む複数の情報に基づいて、電池部110の充電状態(SOC:State of charge)及び劣化状態(SOH:State of health)などを検知するための演算、複数のリチウムイオン電池の充電状態をバランスさせるための演算、及び電池部110の充放電量を制御するための演算を含む複数の演算を実行する。そして、バッテリ制御装置130の状態検知手段は、それらの演算結果に基づいて、セル制御装置120に対する指令信号、電池部110の充放電量を制御するための許容充放電量に関する信号、電池部110のSOCに関する信号、及び電池部110のSOHに関する信号を含む複数の信号を生成して出力する。
【0036】
また、バッテリ制御装置130の状態検知手段は、セル制御装置120から出力された異常信号に基づいて、第1正極及び負極リレー410,420を遮断するための指令信号、及び異常状態を通知するための信号を含む複数の信号を生成して出力する。
【0037】
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、信号伝送路によってお互いに信号の授受ができるようになっているが、電気的には絶縁されている。これは、お互いの動作電源が異なり、お互いに基準電位が異なるためである。このため、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120の間を結ぶ信号伝送路上にはフォトカプラ、容量性結合素子、変圧器などの絶縁140が設けられている。これにより、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、お互いに基準電位の異なる信号を用いて信号伝送ができる。
【0038】
バッテリ100は、特に電池部110は、後述する熱サイクルシステムによってその温度が許容温度範囲内になるように調節されている。電池部110は発熱部品であるので冷却が必要であると共に、周囲温度が低温の時には所定の入出力特性が得られるように、暖気が必要になる場合もある。
【0039】
バッテリ100に蓄積された電気エネルギーは、EV1000を走行させる電動機駆動システムの駆動用電力として使用される。バッテリ100への電気エネルギーの蓄積は、電動機駆動システムの回生動作により生成された回生電力、或いは家庭向け商用電源から取り込んだ電力、若しくは電気スタンドから購入した電力により行われる。
【0040】
家庭の商用電源600或いは電気スタンドの給電装置からバッテリ100を充電する場合、充電器500の外部電源接続端子に電気的に接続された電源ケーブルの先端の電源プラグ550を商用電源600側のコンセント700に差し込み或いは電気スタンドの給電装置から延びる電源ケーブルを充電器500の外部電源接続端子に接続し、充電器500と商用電源600或いは電気スタンドの給電装置とを電気的に接続する。これにより、交流電力が商用電源600或いは電気スタンドの給電装置から充電器500に供給される。充電器500は、供給された交流電力を直流電力に変換し、かつバッテリ100の充電電圧に調整した後、バッテリ100に供給する。これにより、バッテリ100は充電される。
【0041】
尚、電気スタンドの給電装置からの充電も基本的には家庭の商用電源600からの充電と同じように行われる。但し、家庭の商用電源600からの充電と電気スタンドの給電装置からの充電とでは、充電器500に供給される電流容量及び充電時間が異なり、電気スタンドの給電装置からの充電の方が、家庭の商用電源600からの充電よりも電流容量が大きく、かつ充電時間が速い、すなわち急速充電ができる。
【0042】
充電器500は、家庭の商用電源600から供給された交流電力或いは電気スタンドの給電装置から供給された交流電力を直流電力に変換すると共に、この変換された直流電力をバッテリ100の充電電圧に昇圧してバッテリ100に供給する電力変換装置であり、交直変換回路510、昇圧回路520、駆動回路530及び充電制御装置540を主な構成機器として備えている。
【0043】
交直変換回路510は、外部電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換回路であり、例えば複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、外部電源から供給された交流電力を直流電力に整流するために設けられた整流回路、及び整流回路の直流側に電気的に接続され、整流回路の出力の力率を改善するために設けられた力率改善回路を備えている。交流電力を直流電力に変換する回路としては、ダイオード素子が逆並列に接続された複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成された回路を用いても構わない。
【0044】
昇圧回路520は、交直変換回路510(力率改善回路)から出力された直流電力をバッテリ100の充電電圧まで昇圧するための電力変換回路であり、例えば絶縁型のDC−DCコンバータにより構成されている。絶縁型のDC−DCコンバータは、変圧器、変圧器の一次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成され、交直変換回路510から出力された直流電力を交流電力に変換して変圧器の一次側巻線に入力する変換回路、変圧器の二次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、変圧器の二次側巻線に発生した交流電力を直流電力に整流する整流回路、整流回路の出力側(直流側)の正極側に電気的に直列に接続された平滑リアクトル、整流回路の出力側(直流側)の正負極間に電気的に並列に接続された平滑コンデンサから構成されている。
【0045】
充電制御装置540は、充電器500によるバッテリ100の充電終始や、充電時に充電器500からバッテリ100に供給される電力、電圧、電流などを制御するために、車両制御装置840から出力された信号や、バッテリ100の制御装置から出力された信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路530に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0046】
車両制御装置840は、例えば充電器500の入力側の電圧を監視し、充電器500と外部電源の両者が電気的に接続されて充電器500の入力側に電圧が印加され、充電開始状態になったと判断した場合には、充電を開始するための指令信号を、バッテリ100の制御装置から出力されたバッテリ状態信号に基づいてバッテリ100が満充電状態になったと判断した場合には、充電を終了するための指令信号を、それぞれ充電制御装置540に出力する。このような動作は、モータ制御装置340或いはバッテリ100の制御装置が行ってもよいし、バッテリ100の制御装置と協調して充電制御装置540が自ら行ってもよい。
【0047】
バッテリ100の制御装置は、充電器500からバッテリ100に対する充電が制御されるように、バッテリ100の状態を検知してバッテリ100の許容充電量を演算し、この演算結果に関する信号を充電器500に出力する。
【0048】
駆動回路530は、充電制御装置540から出力された指令信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対する駆動信号を発生し、複数のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0049】
尚、交直変換回路510がスイッチング半導体素子によって構成されている場合には、充電制御装置540から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号が駆動回路530に出力され、駆動回路530から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対する駆動信号が交直変換回路510のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力され、交直変換回路510のスイッチング半導体素子のスイッチングが制御される。
【0050】
ジャンクションボックス400の内部には第1及び第2正極側リレー410,430及び第1及び第2負極側リレー420,440が収納されている。
【0051】
第1正極側リレー410はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側とバッテリ100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第1負極側リレー420はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流負極側とバッテリ100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2正極側リレー430は充電器500(昇圧回路520)の直流正極側とバッテリ100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2負極側リレー440は充電器500(昇圧回路520)の直流負極側とバッテリ100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。
【0052】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420は、モータジェネレータ200の回転動力が必要な運転モードにある場合及びモータジェネレータ200の発電が必要な運転モードにある場合に投入され、車両が停止モードにある場合(イグニションキースイッチが開放された場合)、電動駆動装置或いは車両に異常が発生した場合及び充電器500によってバッテリ100を充電する場合に開放される。一方、第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440は、充電器500によってバッテリ100を充電する場合に投入され、充電器500によるバッテリ100の充電が終了した場合及び充電器500或いはバッテリ100に異常が発生した場合に開放される。
【0053】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、車両制御装置840から出力される開閉指令信号によって制御される。第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、他の制御装置、例えばモータ制御装置340或いはバッテリ100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、充電制御装置540から出力される開閉指令信号によって制御される。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、他の制御装置、例えば車両制御装置840或いはバッテリ100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。
【0054】
以上のように、EV1000では、バッテリ100とインバータ装置300と充電器500との間に第1正極側リレー410、第1負極側リレー420、第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440を設けて、それらの間の電気的な接続を制御するようにしているので、高電圧である電動駆動装置に対する高い安全性を確保できる。
【0055】
以下、図1〜6を参照して、EV1000に搭載される熱サイクルシステムの一実施の形態を説明する。なお、上述したように、以下の説明内容は、電気自動車に限定されず、ハイブリッド自動車、あるいは電気鉄道や建設車両などの電動車両に対しても適用することができる。また、この一実施の形態ではインバータ電源により駆動される交流モータを例に挙げて説明するが、本発明は交流モータに限定されず、たとえばサイリスタレオナード装置などのコンバータ電源により駆動される直流モータ、あるいはチョッパ電源により駆動されるパルスモータなど、あらゆる種類の回転電機(モータ・ジェネレータ)に適用することができる。
【0056】
図1は本実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。この電動車両用冷却システムは、冷却媒体の熱を外気に放熱する第一冷却系と、この第一冷却系と中間熱交換器8を介して熱交換を行って走行駆動用モータ1(図12のモータジェネレータ200に該当)と、このモータを駆動するインバータ電源(インバータ)2(図12のインバータ装置300に該当)を冷却する第二冷却系とから構成される。
【0057】
第一冷却系は、ラジエータ3、ファン4、冷媒循環路6a、電動圧縮機(圧縮機)7、中間熱交換器8および調節弁9を備えており、冷媒循環路6aでは中間熱交換器8→圧縮機7→ラジエータ3→調節弁9→中間熱交換器8の経路で冷却媒体を循環する。この第一冷却系は冷凍サイクルであり、第一冷却媒体にはHFC−134aなどの冷凍サイクル用の冷媒が用いられ、ラジエータ3は凝縮器として、調節弁9は膨張弁として、中間熱交換器8は蒸発器としてそれぞれ機能する。中間熱交換器8で第二冷却系の第二冷却媒体の熱を吸収した第一冷却媒体は圧縮機7で圧縮され、ラジエータ3でファン4により送風された空気により冷却された後、調節弁9を介してふたたび中間熱交換器8へ戻る。第一冷却系では、中間熱交換器8が冷却する対象物である熱交換対象物に該当する。
【0058】
第二冷却系は、ポンプ5、冷媒循環路6b、中間熱交換器8、冷却対象のモータ1およびインバータ電源2を備えており、冷媒循環路6bではポンプ5→中間熱交換器8→インバータ電源2→モータ1→ポンプ5の経路で第二冷却媒体を循環する。ポンプ5から圧送された第二冷却媒体は、中間熱交換器8において第一冷却系の冷却媒体との間で熱交換を行って冷却され、インバータ電源2およびモータ1を冷却してふたたびポンプ5へ戻る。第二冷却系では、モータ1およびインバータ電源2が冷却する対象物である熱交換対象物に該当する。
【0059】
この実施の形態では、中間熱交換器8で熱交換されて冷却された第二冷却媒体をまずインバータ電源2へ送り、インバータ電源2を冷却した後にモータ1へ送ってモータ1を冷却している。一般に、インバータ電源2などの半導体電力変換装置はモータ1よりも熱時定数が小さく温度上昇が急であり、また、許容される温度の上限もモータ1よりも低い。そのため、本実施の形態のように、第二冷却媒体を先にインバータ電源2へ循環して冷却し、その後でモータ1へ循環して冷却する経路とすることが望ましい。
【0060】
なお、図示はしないが、モータ1とインバータ電源2を冷媒循環路6bに対して並列に接続し、ポンプ5から圧送された第二冷却媒体を中間熱交換器8を介してモータ1とインバータ電源2へ並行に循環させてもよい。さらには、モータ1用の冷媒循環路と、インバータ電源2用の冷媒循環路とを別個に設け、それぞれの冷媒循環路に中間熱交換器8とポンプ5を設けてもよい。
【0061】
この一実施の形態では、モータ1とインバータ電源2を電動車両用冷却システムの冷却対象とした例を示すが、モータ1とインバータ電源2の内のいずれか一方のみを冷却対象としてもよい。また、モータ1とインバータ電源2の他にインバータ電源2との間で直流電力の授受を行う蓄電装置を冷却対象に加えてもよい。
【0062】
図1において、制御装置23はCPU23cやメモリ23mなどから構成され、冷却制御プログラムを実行してファン駆動装置21a、圧縮機駆動装置21b、およびポンプ駆動装置22を制御し、モータ1とインバータ電源2の冷却を制御する。制御装置23には、自動車の車速を検出する車速センサ24、自動車のアクセルペダル開度を検出するアクセルセンサ25などが接続されている。制御装置23は、各センサなどからの信号に基づいて各駆動装置を制御する。
【0063】
−−−各機器の配設位置について−−−
このように構成される本実施の形態の電動車両用冷却システムは、車両に対して次のように搭載されている。図2は、本実施の形態の電動車両用冷却システムを搭載した車両を正面から見たときの模式図であり、図3は、当該車両の前部を上方から見たときの模式図であり、図4は、車両に搭載されている電動車両用冷却システムを車両の斜め前方から見たときの模式図である。図2〜4に示すように、本実施の形態の電動車両用冷却システムでは、車両の前方から後方に向かってラジエータ3を外気(空気)が通過するようにラジータ3が車両の前方に配設されている。また、圧縮機7や中間熱交換器8は、ラジエータ3を通過した空気が車外へ流出する際の主たる流出経路から外れるように、ラジエータ3の後方で、ラジエータ3の配設位置よりも左右方向にずれた位置に配設されている。
【0064】
これは、車両の前方から見たときの投影面積が大きな圧縮機7や中間熱交換器8をラジエータ3通過後の空気の流出経路内に配設しないようにすることで、ラジエータ3を通過する空気の圧力損失を低下させて、冷却システムの効率向上を図るためである。また、ラジエータ3を通過して温度上昇した空気が圧縮機7や中間熱交換器8に当たってこれらを温めてしまうことによる、冷却システムの効率低下を防止するためである。なお、圧縮機7および中間熱交換器8のいずれか一方をラジエータ3通過後の空気の流出経路内に配設しないように構成してもよいが、冷却システムの効率の観点からは、上述のように圧縮機7および中間熱交換器8の双方をラジエータ3通過後の空気の流出経路内に配設しないように構成することが望ましい。
【0065】
ポンプ5については、ラジエータ3を通過した後の空気の流出経路内に配設している。これは、車両の前方から見たときのポンプ5の投影面積が小さいためラジエータ3を通過する空気の圧力損失に大きく影響することがなく、また、ラジエータ3を通過して温度上昇した空気によって温められても冷却システムの効率低下があまり問題とはならないからである。また、ラジエータ3の後方の領域を有効に活用して、冷却システム全体の小型化を図るためでもある。なお、本実施の形態の上述したポンプ5のように、ラジエータ3を通過した後の空気の流出経路内に配設しても上述したような悪影響のない機器を、冷却システムの小型化の観点から、あえてラジエータ3後方に配設するようにしてもよい。
【0066】
たとえば図3において、モータ1やインバータ電源2の配設位置を明記していないが、モータ1やインバータ電源2は、車室よりも前方であって、後述する室外系統ASSYや冷却系統ASSYよりも後方の空間に配設されている。なお、モータ1やインバータ電源2を車室よりも後方に配設してもよい。
【0067】
−−−各部のASSY化について−−−
本実施の形態の電動車両用冷却システムでは、車両への組み付ける際の作業性向上のためや、メンテナンス性向上のために、系統毎にアッセンブリー化(ASSY化)している。図5は、本実施の形態の電動車両用冷却システムのASSY化の一例を示す図である。図5に示す例では、ラジエータ3およびファン4を室外系統ASSYという1つのアッセンブリーとしてASSY化し、ポンプ5、圧縮機7、中間熱交換器8、調節弁9を冷却系統ASSYという1つのアッセンブリーとしてASSY化し、モータ1およびインバータ電源2を排熱系統ASSYという1つのアッセンブリーとしてASSY化している。各ASSYは、それぞれ車両に搭載される前に組み立てられ、ASSYを構成する各機器同士の配管等の接続がなされて、ASSYとして一体化されている。このように、各ASSYを車両搭載前に予め組み立てておくことで、車両へ搭載後に各機器へのアクセスが限られるような状況となっても、ASSY内の各機器同士の配管接続などをする必要がないため、組み立て性が向上する。
【0068】
上述のように予め組み立てられている各ASSYは、その後、車両の不図示のフレームに搭載される。なお、図示はしないが、たとえばASSYのフレームを車両のフレームに容易に接続できるように設計しておくことで、各ASSYの車両への搭載を容易化することが考えられる。ASSYをそれぞれ車両へ搭載した後、各ASSY間を冷却媒体が流通するように、各ASSYの冷媒循環路同士が継手で接続される。ここで使用される継手は、いわゆる急速継手と呼ばれる迅速な着脱が可能な継手であってもよく、急速継手ではない一般的な継手であってもよく、特に種類を問わない。
【0069】
なお、各ASSYの冷媒循環路同士の接続の便宜を図るため、各ASSYの冷媒循環路同士を接続する部分は、各ASSYの上方または下方に設けられている。すなわち、当該接続部分を各ASSYの上方または下方に設けることで、車両に搭載された各ASSYの冷媒循環路同士を接続する際に、作業者の手が届きやすい位置に接続部分が位置することになるので、接続作業が容易となる。なお、当該接続部分をASSYの下方に設ければ、当該接続部分を分離した際の冷媒循環路内の冷却媒体の排出が容易となり、冷却媒体の交換作業が容易となる。
【0070】
また、隣り合ったASSYの冷媒循環路同士を接続する接続部分は、接続時の作業効率を考慮すれば、上方または下方のいずれか一方に設けることが望ましい。たとえば、図5に示す例では、室外系統ASSYから冷却系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分、および冷却系統ASSYから室外系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分が、ともに各ASSYの下方に設けられているが、ともに各ASSYの上方に設けられていてもよい。同様に、図5に示す例では、冷却系統ASSYから排熱系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分、および排熱系統ASSYから冷却系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分が、ともに各ASSYの下方に設けられているが、ともに各ASSYの上方に設けられていてもよい。
【0071】
なお、上述のように冷媒循環路の接続部分を各ASSYの上方または下方に設けたことや、上方または下方のいずれか一方に設けたことなどによるメリットは、冷媒循環路に限らず、たとえば、電気配線についても当てはまる。すなわち、電気系統の配線接続部分(コネクタ)を各ASSYの上方または下方に設けることや、上方または下方のいずれか一方に設けることなどによって、上述した作用効果と同様の作用効果を奏する。また、電気系統のコネクタを冷媒循環路の接続部分の近傍に設けることで、組み立て作業性がより向上する。なお、メンテナンス作業時に冷媒循環路の継手部分から排出される冷却媒体で電気系統のコネクタを濡らさないように、電気系統のコネクタを冷媒循環路の継手部分よりも上方に配設することが望ましい。
【0072】
−−−排熱系統ASSYにおける各機器の配設について−−−
排熱系統ASSYでは、上述したように、第二冷却媒体を先にインバータ電源2へ循環して冷却し、その後でモータ1へ循環して冷却するようにしている。一般的に、各機器では冷却媒体を機器の下方から上方に向かって流すように設計されている。そのため、一般的には、冷却媒体の供給口は機器の下部に、排出口は機器の上部に設けられている。従来の電動車両用冷却システムでは、モータ1よりも上方にインバータ電源2を配設していたため、インバータ電源2の下部から供給して上部から排出された第二冷却媒体を、インバータ電源2の下方に配設されているモータ1の下部へ供給しなければならなかった。したがって、冷媒循環路6bが長くなり、冷媒循環路6b内の第二冷却媒体の容積が増加するため、第二冷却媒体の熱容量も増加し、冷却温度の応答性の悪化(すなわち、第二冷却媒体の温度が中間熱交換器8で下がり難くなること)や、重量の増加が懸念される。
【0073】
そこで、本実施の形態の排熱系統ASSYでは、図6に示すように、インバータ電源2をモータ1の下方に配設し、インバータ電源2の上部から排出された第二冷却媒体を、インバータ電源2の上方に配設されているモータ1の下部へ供給できるように構成した。このように構成することで、冷媒循環路6bを短縮でき、冷媒循環路6b内の第二冷却媒体の容積を減らせるため、第二冷却媒体の熱容量が減少して、冷却温度の応答性が向上し、第二冷却媒体の重量減、ひいては、電動車両用冷却システムを軽量化できる。なお、上述した冷却媒体を流す順序と各機器の上下方向の配設順序との関係については、モータ1とインバータ電源2とを例に説明したが、モータ1やインバータ電源2以外の機器についても適用できる。
【0074】
上述した本実施の形態の電動車両の冷却システムでは、次の作用効果を奏する。
(1) 車両の前方から見たときの投影面積が大きな圧縮機7や中間熱交換器8をラジエータ3通過後の空気の流出経路内に配設しないように構成した。これにより、ラジエータ3を通過する空気の圧力損失を低下させて、冷却システムの効率を向上できる。また、ラジエータ3を通過して温度上昇した空気が圧縮機7や中間熱交換器8に当たってこれらを温めてしまうことによる、冷却システムの効率低下を防止できる。
【0075】
(2) ポンプ5の配設位置を、ラジエータ3を通過した後の空気の流出経路内とするように構成した。これにより、ラジエータ3の後方の領域を有効に活用して、冷却システム全体を小型化できる。
【0076】
(3) 電動車両用冷却システムを構成する各機器を車両に搭載した後には、周囲の機器等が障害となって各機器へのアクセスが制限されるため、配管接続等の組み立て作業が困難となる恐れがある。これに対して、本実施の形態の電動車両用冷却システムでは、系統毎にASSY化するように構成したので、車両搭載後にASSY内の各機器同士の配管接続などをする必要がなく、各ASSYの冷媒循環路同士を継手で接続するだけで、冷媒循環路の接続が完了するので、組み立て性が向上する。
【0077】
(4) 図5に示すように、室外系統ASSYから冷却系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分、および冷却系統ASSYから室外系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分を、ともに各ASSYの下方または上方のいずれか一方に設けるように構成した。同様に、冷却系統ASSYから排熱系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分、および排熱系統ASSYから冷却系統ASSYへ冷却媒体が流れる冷媒循環路の接続部分を、ともに各ASSYの下方または上方のいずれか一方に設けるように構成した。これにより、隣り合ったASSYの冷媒循環路同士の接続、分離に際して、車両の下方または上方のいずれか一方から同時に接続、分離作業ができるので、作業性、メンテナンス性が向上する。
【0078】
(5) 許容される温度の上限が低い機器(インバータ電源2)を先に冷却し、許容される温度の上限が高い機器(モータ1)を後から冷却するように第二冷却媒体の流通順序を決定した。これにより、各機器を効率的に冷やすことができる。また、各機器を効率的に冷却することで、第二冷却媒体で奪う熱量が増えて、中間熱交換器8に流入する直前の第二冷却媒体の温度を高くなる。これにより、第一冷却媒体と第ニ冷却媒体との温度差が広がって中間熱交換器8における熱伝達量(交換できる熱量)を増やすことができるので、電動車両用冷却システムの冷却効率を向上できる。
【0079】
(6) インバータ電源2をモータ1の下方に配設し、インバータ電源2の上部から排出された第二冷却媒体を、インバータ電源2の上方に配設されているモータ1の下部へ供給できるように構成した。これにより、冷媒循環路6bを短縮でき、冷媒循環路6b内の第二冷却媒体の容積を減らせるため、第二冷却媒体の熱容量が減少して、冷却温度の応答性が向上し、第二冷却媒体の重量減、ひいては、電動車両用冷却システムを軽量化できる。
【0080】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、ラジエータ3およびファン4を室外系統ASSYとしてASSY化し、ポンプ5、圧縮機7、中間熱交換器8、調節弁9を冷却系統ASSYとしてASSY化し、モータ1およびインバータ電源2を排熱系統ASSYとしてASSY化しているが、本発明のASSY化の範囲は、これに限定されない。たとえば、図7に示すように、ラジエータ3、ファン4、ポンプ5、圧縮機7、中間熱交換器8、調節弁9を冷却系統ASSYとしてASSY化し、モータ1およびインバータ電源2を排熱系統ASSYとしてASSY化してもよい。なお、図8は、図7で示すように電動車両の冷却システムを冷却系統ASSYと排熱系統ASSYとで構成した場合に、この冷却システムを車両の斜め前方から見たときの模式図である。
【0081】
(2) 上述の説明では、中間熱交換器8が1基であったが、本発明はこれに限定されない。たとえば、図9〜11に示すように、第二冷却系を冷却対象冷却用の循環路6cと車室内空調用の循環路6dの二つの経路に分け、下記経路にそれぞれ中間熱交換器8a,8bを設けるようにしてもよい。図9は、このように循環路を二つの経路に分けたときの電動車両用冷却システムの構成を示す図である。図10は、当該電動車両用冷却システムを搭載した車両の前部を上方から見たときの模式図であり、図11は、車両に搭載されている当該電動車両用冷却システムを車両の斜め前方から見たときの模式図である。
【0082】
なお、図9〜11では、上述した機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、上述したファン駆動装置21a、圧縮機駆動装置21b、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される各センサ24,25,31などの機器の図示と説明を省略する。
【0083】
まず冷却対象冷却用循環路6cでは、ポンプ5aから圧送された第二冷却媒体が熱交換器8aで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、インバータ電源2とモータ1へ順次導かれてそれらの冷却対象を冷却する。また車室内空調用経路6dでは、ポンプ5bから圧送された第二冷却冷媒が熱交換器8bで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、ラジエータ3bでファン4aにより送風された車室内空気から吸熱して車室内を冷却する。
【0084】
一方、第一冷却系では、第二冷却系の第二冷却媒体と熱交換を行う経路が二つに分かれており、冷却対象冷却用経路には調節弁9aと熱交換器8aが設けられ、車室内空調用経路には調節弁9bと熱交換器8bが設けられる。それ以外のラジエータ3、ファン4および圧縮機7については上述した第一冷却系と同様である。
【0085】
この冷却システムによれば、モータ1やインバータ電源2などの冷却対象用と車室内の冷房用とに別々に冷凍サイクルを構築することなく、一つの冷凍サイクルで電動車両用駆動装置、すなわちモータ1とインバータ電源2の冷却と、車室内冷房とを実現することができる。
【0086】
図10,11に示すように、この電動車両用冷却システムでは、車両の前方から後方に向かってラジエータ3を外気(空気)が通過するようにラジータ3が車両の前方に配設されている。また、圧縮機7や中間熱交換器8a,8bは、ラジエータ3を通過した空気が車外へ流出する際の主たる流出経路から外れるように、ラジエータ3の後方で、ラジエータ3の配設位置よりも左右方向にずれた位置に配設されている。ポンプ5a,5bについては、ラジエータ3を通過した後の空気の流出経路内に配設している。なお、図10,11に示した各機器の配置は一例であり、本発明は、図10,11に示した各機器の配置に限定されない。たとえば、圧縮機7と中間熱交換器8a,8bの配設位置の左右を入れ替えてもよく、前後に並んだ中間熱交換器8a,8bを左右に並べてもよく、左右に並んだポンプ5a,5bを前後に並べてもよい。
【0087】
(3) 上述した変形例では、熱サイクルシステムとして、室内の空気状態を調整する空調システムと、バッテリ100、モータジェネレータ200(すなわち走行駆動用モータ1)及びインバータ装置300(すなわちインバータ電源2)などの発熱体の温度を調整する温調システムとを備えているが、この温調システムを次のように構成してもよい。
【0088】
空調システム及び温調システムを作動させるためにはエネルギー源が必要になる。このため、EV1000では、モータジェネレータ200の駆動電源であるバッテリ100をそれらのエネルギー源として用いている。ここで、空調システム及び温調システムがバッテリ100から消費する電気的エネルギーは他の電気負荷よりも比較的高い。
【0089】
EV1000は、地球環境に与える影響がハイブリッド自動車(以下、「HEV」と記述する)よりも小さいことから(ゼロであることから)注目を集めている。
【0090】
しかし、EV1000は、バッテリ100の一充電あたりの走行距離が短く、さらには充電ステーションなどのインフラ設備の整備も遅れていることから、その普及率がHEVよりも低い。また、EV1000は、要求される航続距離の走行にHEVよりも多くの電気エネルギーが必要であることから、バッテリ100の容量がHEVよりも大きくなる。このため、EV1000は、バッテリ100のコストがHEVよりも高く、車両価格がHEVよりも高くなることから、その普及率がHEVより低い。
【0091】
EV1000の普及率を高くするためには、バッテリ100の一充電あたりのEVの走行距離を延ばすことが必要である。バッテリ100の一充電あたりのEVの走行距離を延ばすためには、バッテリ100に蓄積された電気エネルギーのモータジェネレータ200駆動以外での消費を抑える必要がある。
【0092】
バッテリ100、モータジェネレータ200及びインバータ装置300などの発熱体は温調システムによりその温度が許容温度範囲に調整される。また、発熱体は、EV1000の負荷変動によって瞬時的に出力が変化し、これに伴って発熱量が変化する。発熱体を高効率に作動させるためには、発熱体の発熱量(温度)の変化に応じて発熱体の温調能力を変化させ、発熱体の温度を常に適温にすることが好ましい。
【0093】
一方、EV1000の普及率を高くするためには、バッテリ100、モータジェネレータ200及びインバータ装置300などの発熱体の低コスト化を図り、EV1000の車両価格をHEVと同等の車両価格まで低下させる必要がある。発熱体の低コスト化を図るためには発熱体の小型高出力化を図る必要がある。ところが、発熱体を小型高出力化すると、発熱体の発熱量(温度)が大きくなるので、発熱体の温調能力を大きくする必要がある。
【0094】
そこで、上述した変形例において、EV1000の熱サイクルシステム内において熱エネルギーを有効利用して室内空調及び発熱体の温調が行えるように、温調システムと空調システムとの統合した熱サイクルシステムを構築するようにしてもよい。
【0095】
具体的には、熱サイクルを、室外側と熱交換を行う1次側熱サイクル(第一冷却系)と、室内側及び発熱体側と熱交換を行う2次側熱サイクル(第二冷却系)とに分けて、1次側熱サイクルを冷凍サイクルシステムにより、2次側熱サイクル回路を、熱媒体が独立して流通する2つの熱移動システムにより、それぞれ構成し、冷凍サイクルシステムの冷媒と2つの熱移動システムのそれぞれの熱媒体とが熱交換できるように、冷凍サイクルシステムと2つの熱移動システムのそれぞれとの間に中間熱交換器8a,8bを設けると共に、発熱体側と熱交換を行う熱移動システムの熱媒体と、室内に取り込まれる空気とが熱交換できるように、発熱体側と熱交換を行う熱移動システムに室内熱交換器を設けるように構成してもよい。
【0096】
このように温調システムを構成することで、発熱体の温度調整によって得られる熱エネルギーを室内空調に利用して、室内空調に必要なエネルギーの最小化を図ることができるので、室内空調の省エネ化を図ることができる。しかも、このように温調システムを構成することで、発熱体の温度調整によって得られる熱エネルギーを直接、室内空調に利用するので、室内空調の省エネ効果を高めることができる。従って、このように温調システムを構成することで、空調システムが発熱体のエネルギー源から持ち出すエネルギーを抑えることができる。
【0097】
以上のような熱サイクルシステムは、バッテリ100の一充電あたりのEV1000の走行距離を延ばす場合に好適である。また、以上のような熱サイクルシステムは、バッテリ100の一充電あたりの走行距離がこれまでと同様であるときには、バッテリ100の容量を小さくする場合に好適である。バッテリ100の容量を小さくできると、EV1000の低コスト化、EV1000の普及促進、EV1000の軽量化に繋げることができる。
【0098】
また、上記のように温調システムを構成することで、室内空調に用いられる熱エネルギーを発熱体の温度調整に利用して、発熱体の温度を調整するための熱媒体の温度を幅広く調整できるので、周囲の環境状態に影響されずに、発熱体の温度を可変できる。従って、このように温調システムを構成することで、発熱体の温度を、発熱体が高効率に作動できる適温に調整でき、発熱体を高効率に作動させることができる。
【0099】
以上のような熱サイクルシステムはEV1000の低コスト化を図る上で好適である。EV1000を低コスト化できればEV1000の普及の拡大を図ることができる。
【0100】
(4) また、上述した変形例のように、温調システムと空調システムとの統合を図った熱サイクルシステムをEV1000に搭載するにあたっては、流路を構成する配管や構成部品が狭い設置スペース内において複雑に入り組むことが考えられる。熱サイクルシステムのメインテナンス性や小型化及び低コスト化の必要性などを考慮すると、熱サイクルシステムをEV1000に搭載するにあたっては、構成部品の小型化や削減、共用化などによるシステム構成の簡素化が好ましい。
【0101】
そこで、冷媒が循環する冷凍サイクルシステムに中間熱交換器8aを介して熱的に接続された、発熱体の温度を調整するための熱媒体が循環する第1熱移動システムと、冷媒が循環する冷凍サイクルシステムに中間熱交換器8bを介して熱的に接続された、室内の空気状態を調整するための熱媒体が循環する第2熱移動システムとの循環路を連通させていると共に、第1及び第2熱移動システムの循環路内の圧力を調整するためのリザーバータンクを第1及び第2熱移動システムに対して共通に設けてもよい。
【0102】
このように温調システムを構成することで、第1及び第2熱移動システムにおいて構成部品の共用化を図ることができるので、熱サイクルシステムの簡素化を図ることができる。熱サイクルシステムの構成の簡素化は、EV1000に搭載された熱サイクルシステムのメインテナンス性を向上させることができると共に、熱サイクルシステムの小型化及び低コスト化に貢献することができる。
【0103】
(5) 上述の説明では、電動車両用冷却システムを車室よりも前方に配設するように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、電動車両用冷却システムを車室よりも後方に配設するように構成してもよい。なお、図示はしないが、電動車両用冷却システムを車室よりも後方に配設した場合、たとえば、車両の床下に設けられて車両の前後方向に延在する導風路を経由して車室よりも後方に配設されたラジエータ3に外気を導入できる。
【0104】
(6) 上述の説明では、第二冷却媒体でモータ1やインバータ電源2の冷却を行うように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、モータ1やインバータ電源2の冷却を空冷で行い、車室内の空調を冷凍サイクルで行うように構成してもよい。すなわち上述した図9において冷却対象冷却用循環路6cが存在しなくてもよい。このような場合であっても、圧縮機7や中間熱交換器8bを、ラジエータ3を通過した空気が車外へ流出する際の主たる流出経路から外れるように、ラジエータ3の後方で、ラジエータ3の配設位置よりも左右方向にずれた位置に配設することで、上述した作用効果と同様の作用効果を奏する。
(7) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0105】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、電動圧縮機は、熱交換手段で熱交換を行った後の外気が熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする各種構造の電動車両の冷却システムを含むものである。
【0106】
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路とを備え、熱交換対象物には、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段が含まれ、中間熱交換手段は、熱交換手段で熱交換を行った後の外気が熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする各種構造の電動車両の冷却システムを含むものである。
【0107】
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、冷媒循環路は、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換対象物の一部を含んだ第2のアッセンブリーとの間が継手で接続されていて、継手の前後で第1のアッセンブリーと第2のアッセンブリーとが接続および分離可能であることを特徴とする各種構造の電動車両の冷却システムを含むものである。
【0108】
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動圧縮機および中間熱交換手段を含んだ第2のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動駆動装置を含んだ第3のアッセンブリーとを備え、第1のアッセンブリーの冷媒循環路と、第2のアッセンブリーの冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第1のアッセンブリーの冷媒循環路と第2のアッセンブリーの冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であり、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路と、第3のアッセンブリーの別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路と第3のアッセンブリーの別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする各種構造の電動車両の冷却システムを含むものである。
【0109】
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、冷媒循環路に設けられて冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、冷却媒体と別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも熱交換手段と電動圧縮機と中間熱交換手段とを含んだ第1のアッセンブリーと、電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも電動駆動装置を含んだ第2のアッセンブリーとを備え、第1のアッセンブリーの別冷媒循環路と、第2のアッセンブリーの別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、第1のアッセンブリーの別冷媒循環路と第2のアッセンブリーの別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする各種構造の電動車両の冷却システムを含むものである。
【符号の説明】
【0110】
1 走行駆動用モータ(モータ) 2 インバータ電源(インバータ)
3 ラジエータ 4 ファン
5,5a,5b ポンプ 6a,6b 冷媒循環路
6c 冷却対象冷却用循環路 6d 車室内空調用経路
7 電動圧縮機(圧縮機) 8,8a,8b 中間熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられて前記冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、
前記冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、
前記電動圧縮機は、前記熱交換手段で熱交換を行った後の前記外気が前記熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項2】
電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられて前記冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、
前記冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、
前記冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に前記冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路とを備え、
前記熱交換対象物には、前記冷却媒体と前記別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段が含まれ、
前記中間熱交換手段は、前記熱交換手段で熱交換を行った後の前記外気が前記熱交換手段から車外へ流出する際の主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に前記冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路をさらに備え、
前記熱交換対象物には、前記冷却媒体と前記別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段が含まれ、
前記中間熱交換手段は、前記主たる流出経路から外れた位置に配設されていることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記冷媒循環路は、前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換対象物の一部を含んだ第2のアッセンブリーとの間が継手で接続されていて、前記継手の前後で前記第1のアッセンブリーと前記第2のアッセンブリーとが接続および分離可能であることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項5】
電動駆動される車両に搭載された熱交換対象物に冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられて前記冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、
前記冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段とを備え、
前記冷媒循環路は、前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換対象物の一部を含んだ第2のアッセンブリーとの間が継手で接続されていて、前記継手の前後で前記第1のアッセンブリーと前記第2のアッセンブリーとが接続および分離可能であることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記継手は、前記冷却媒体が前記第1のアッセンブリーから前記第2のアッセンブリーへ向かって流れる第1の継手と、前記冷却媒体が前記第2のアッセンブリーから前記第1のアッセンブリーへ向かって流れる第2の継手とを有し、前記第1および第2の継手がともに前記車両の上方または下方に配設されていることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記第2のアッセンブリーは、複数の前記熱交換対象物を含み、前記複数の熱交換対象物のうち、上限温度の低い前記熱交換対象物が上限温度の高い前記熱交換対象物よりも前記冷却媒体の流れに対して上流に配設されることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項8】
冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、
前記冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられて前記冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、
前記冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に前記冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、
前記冷却媒体と前記別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、
前記電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、前記電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換手段を含んだ第1のアッセンブリーと、
前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記電動圧縮機および前記中間熱交換手段を含んだ第2のアッセンブリーと、
前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記電動駆動装置を含んだ第3のアッセンブリーとを備え、
前記第1のアッセンブリーの前記冷媒循環路と、前記第2のアッセンブリーの前記冷媒循環路との間が継手で接続されていて、前記第1のアッセンブリーの前記冷媒循環路と前記第2のアッセンブリーの前記冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であり、
前記第2のアッセンブリーの前記別冷媒循環路と、前記第3のアッセンブリーの前記別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、前記第2のアッセンブリーの前記別冷媒循環路と前記第3のアッセンブリーの前記別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項9】
冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段と、
前記冷却媒体を循環させる冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられて前記冷却媒体を圧縮する電動圧縮機と、
前記冷媒循環路とは異なる冷媒の循環路であって、モータおよびインバータ電源を含む電動駆動装置に前記冷却媒体とは異なる別冷却媒体を循環させる別冷媒循環路と、
前記冷却媒体と前記別冷却媒体との間で熱交換を行う中間熱交換手段とを有し、
前記電動駆動装置によって電動駆動される車両に搭載されて、前記電動駆動装置を冷却する電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記熱交換手段と前記電動圧縮機と前記中間熱交換手段とを含んだ第1のアッセンブリーと、
前記電動車両に搭載される前に組み立てられていて少なくとも前記電動駆動装置を含んだ第2のアッセンブリーとを備え、
前記第1のアッセンブリーの前記別冷媒循環路と、前記第2のアッセンブリーの前記別冷媒循環路との間が継手で接続されていて、前記第1のアッセンブリーの前記別冷媒循環路と前記第2のアッセンブリーの前記別冷媒循環路とが当該継手の前後で接続および分離可能であることを特徴とする電動車両の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−111139(P2011−111139A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272306(P2009−272306)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】