説明

電動車両の高電圧部活線作業防止装置

【課題】ケースに収容されたインバータ等の高電圧部に対する高電圧部活線作業を防止する電動車両の高電圧部活線作業防止装置を提供する。
【解決手段】インバータ14を収容するハウジング40に電動アクチュエータ50によるロック機構45を設ける。電動アクチュエータ50の動作電源を、バッテリ12から電線30を介して供給される電力とする。電線30から電動アクチュエータ50に電力が供給されている場合に限り、ロック機構45はロック状態に保持され、電線30から電動アクチュエータ50に電力が供給されていない場合に限り、インバータ14を収容するケース部44のカバー部42を開くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧の蓄電装置に充電された電力により駆動される電動モータ(以下、モータという。)を動力発生源として走行する電動車両の高電圧部活線作業防止装置に関する。なお、この発明が適用される電動車両には、前記蓄電装置のみを電力源とする電気自動車の他、前記蓄電装置の電力と内燃機関とを併用するハイブリッド自動車、前記蓄電装置と燃料電池とを併用するハイブリッド自動車等、高電圧の蓄電装置を搭載する全ての電動車両が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、直流の高電圧の蓄電装置の電力により駆動されるモータの回転トルクを車輪に伝達することで走行する電動車両においては、前記蓄電装置と前記モータとの間に前記モータを回転させるために直流を交流に変換する電力変換装置が挿入される構成が採用されている。
【0003】
このような電動車両では、高電圧部活線作業を防止するため、例えば、特許文献1に示すように、インバータユニットを、ケースと上蓋とからなる導電性のハウジングに収容する機構が設けられる。
【0004】
この特許文献1に係る技術では、前記インバータユニットに対する作業時に、前記上蓋を開けるために、前記ハウジングに設けたインターロック検出端子を前記ハウジングから取り外す。これにより、当該インターロック検出端子と前記ハウジングとの電気的接続状態が開放され、この開放状態がECU(電子制御ユニット)により検出される。
【0005】
開放状態を検出した前記ECUは、前記ハウジングの外側であって前記インバータユニットと二次電池との間に挿入されているメインリレーを閉状態から開状態にする開指令を前記メインリレーに付与する。
【0006】
これにより、メインリレーが開状態となって前記二次電池から前記インバータユニットに対して高電圧が供給されなくなり、作業者は、前記インバータユニットに対する前記二次電池からの高電圧の電力の供給が許可されない状態で、前記インバータユニットの保守点検作業を行う。
【0007】
また、特許文献2に係る技術では、蓋付きケース内に収容されている蓄電器に対して高電圧が印加されている状態を検出する検出回路を独立に設け、この検出回路により高電圧の印加が検出されなかったときに、前記蓋の鍵(ロック)となっているリニアアクチュエータ(保護カバー閉状態固定手段)のロッドを退出させて、前記蓋が開けられるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−14577号公報([0040]−[0050]、図1)
【特許文献2】特開平6−98403号公報(要約、図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に係る技術では、前記メインリレーが溶着して閉故障(リレーが閉じた状態のままの故障)している場合には、前記インターロック検出端子と前記ハウジングの電気的接続状態の開放状態を検出した前記ECUが、前記メインリレーに開指令を送出しても前記メインリレーが開状態とはならずに閉状態のままになる。
【0010】
従って、上記特許文献1に係る技術では、保守点検作業時には、高電圧部活線状態での作業とならないように、作業前にテスターにて電圧測定を行い、前記メインリレーの故障の有無を確認する等の煩雑な作業が必要となっている。
【0011】
また、特許文献2に係る技術では、蓄電器に高電圧が印加されている状態を検出する独立の検出回路が必要とされ、当該検出回路は、高電圧を検出する電気部品(例えば、高電圧電源の電源出力端子間に接続される電流制限抵抗器とフォトカプラ)と、該電気部品により検出された電圧が高電圧かどうかを判定する判定回路用電気部品とが必要となり、電気部品が多くなるという問題がある。
【0012】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、高電圧部活線作業を確実に防止することを可能とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る電動車両の高電圧部活線作業防止装置は、例えば、図2、図3及び図4の第1実施例に示すように、蓄電装置と、電力変換装置と、一端側が前記蓄電装置に接続され、他端側が前記電力変換装置に接続される電線と、前記電力変換装置により駆動される走行用のモータと、前記電力変換装置と前記電線の他端側とを収容するケース部と前記ケース部の開口部を覆い開閉可能なカバー部とからなるハウジングと、前記ハウジングの外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され電気的接続を手動で開閉する手動開閉器と、前記ハウジングの外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され電気的接続を、当該電動車両のイグニッションスイッチのオフオンに連動して開閉するリレーと、前記ハウジング内に収容され、前記カバー部が開かないようにロックするロック状態と、前記カバー部が開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子に電力が供給されていないときに前記アンロック状態に切り換えられ、前記電源端子に電力が供給されているときに前記ロック状態に切り換えられる電動アクチュエータと、を備え、前記電動アクチュエータの電源端子に、前記ハウジング内で前記電線からの電力が供給されるように配線したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、電力変換装置を収容するケース部を覆うカバー部が開かないようにするロック状態と、開くことを許容するアンロック状態とに切換可能な電動アクチュエータを設け、蓄電装置から電線を通じて前記電力変換装置に印加される電力を前記電動アクチュエータの動作電源とする。
【0015】
前記電動アクチュエータの電源端子に電力が供給されていないとき、前記電動アクチュエータにより前記カバー部はアンロック状態になる。その一方、前記電動アクチュエータの前記電源端子に電力が供給されているとき前記電動アクチュエータが作動し前記カバー部はロック状態になる。よって、前記電線を通じて前記電力変換装置に電力が供給されていない場合に限り、前記カバー部を開けることができる。これにより、高圧部活線作業を確実に防止することができる。
【0016】
この場合、例えば、図6の第2実施例に示すように、さらに、降圧型DC/DCコンバータを有し、前記電動アクチュエータを低電圧駆動型電動アクチュエータに代替し、前記ハウジング内で前記電線からの電力が前記降圧型DC/DCコンバータを介して前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子に供給されるように配線することで、電動アクチュエータの選択の範囲を広げることができる。よって、低コストの電動アクチュエータを採用することができる。
【0017】
この発明に係る電動車両の高電圧部活線作業防止装置は、例えば、図10の第5実施例に示すように、蓄電装置と、電力変換装置と、一端側が前記蓄電装置に接続され、他端側が前記電力変換装置に接続される電線と、前記電力変換装置により駆動される走行用のモータと、車両の運転席より前方に形成され、少なくとも前記電力変換装置と前記電線の他端側とを収容する車両前部室と、前記車両前部室の上側を覆うボンネットと、前記車両前部室の外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を手動で開閉する手動開閉器と、前記車両前部室の外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を当該電動車両のイグニッションスイッチのオフオンに連動して開閉するリレーと、前記ボンネットの前記車両前部室側に設けられ、前記ボンネットが開かないようにロックするロック状態と、前記ボンネットが開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子に電力が供給されていないときに前記アンロック状態に切り換えられ、前記電源端子に電力が供給されているときに前記ロック状態に切り換えられる電動アクチュエータと、を備え前記電動アクチュエータの電源端子に、前記車両前部室内で前記電線からの電力が供給されるように配線したことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、電力変換装置を収容する車両前部室を覆うボンネットが開かないようにするロック状態と、開くことを許容するアンロック状態に切換可能な電動アクチュエータを設け、蓄電装置から電線を通じて前記電力変換装置に印加される電力を前記低電圧駆動型電動アクチュエータの動作電源とする。
【0019】
前記電動アクチュエータの電源端子に電力が供給されていないときボンネットはアンロック状態になる。その一方、前記電動アクチュエータの電源端子に電力が供給されているときボンネットはロック状態になる。
【0020】
よって、前記電線を通じて前記電力変換装置に電力が供給されていない場合に限り、前記ボンネットを開けることができる。これにより、高圧部活線作業を確実に防止することができる。
【0021】
この場合、さらに、降圧型DC/DCコンバータを有し、前記電動アクチュエータを低電圧駆動型電動アクチュエータに代替し、前記車両前部室内で前記電線からの電力が前記降圧型DC/DCコンバータを介して前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子に供給されるように配線することで、電動アクチュエータの選択の範囲を広げることができる。よって、低コストの電動アクチュエータを採用することができる。
【0022】
この場合において、前記降圧型DC/DCコンバータを、例えば、図9の第4実施例に示すように、さらに、絶縁型降圧型DC/DCコンバータとし、前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータから前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子への配線の一方を、当該電動車両の車体に接地する構成とすることで、前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータの降圧側、すなわち低電圧側が、車体に接地された電源となる。
【0023】
そのため、前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータの低電圧側である降圧側の配線接続を、高電圧の前記電線に接続される高電圧入力側の配線接続より長くすることで、高電圧の前記電線から前記電動アクチュエータに至るまでの配線領域中、高電圧管理領域を狭い領域とすることができる。逆に言えば、低電圧領域を広い領域とすることができる。よって、高電圧管理領域を広げないで済むことになる。
【0024】
さらに、例えば、図7及び図8の第3実施例に示すように、前記車両前部室内に、前記電力変換装置と前記電線の他端側と前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータとを収容するケース部と、前記ケース部の開口部を覆い開閉可能なカバー部と、からなるハウジングを設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、高圧部活線作業を確実に防止することができるので、電動車両の保守点検作業効率が向上するという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施形態に係る電動車両の高電圧部活線作業防止装置が適用された電動車両の主要部品等を透視的に描いた側面模式図である。
【図2】この実施形態に係る第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオフ時における正常状態を示す模式図である。
【図3】第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオン時における正常状態を示す模式図である。
【図4】第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオフ時においてリレーが閉故障を発生している状態を示す模式図である。
【図5】図5Aは、電動アクチュエータの作動状態であってロック機構のロック状態を示す説明図である。図5Bは、電動アクチュエータの非作動状態であってロック機構のアンロック状態を示す説明図である。
【図6】この実施形態に係る第2実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置の説明図である。
【図7】他の実施形態に係る第3実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオン時における動作説明図である。
【図8】第3実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオフ時における動作説明図である。
【図9】他の実施形態に係る第4実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオン時における動作説明図である。
【図10】他の実施形態に係る第5実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置のイグニッションスイッチのオン時における動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、この実施形態に係る電動車両の高電圧部活線作業防止装置が適用された電動車両10及び後述する他の実施形態に係る電動車両10Aの主要部品等を透視的に描いた側面模式図を示している。
【0029】
電動車両10は、基本的には、数百ボルト程度の高電圧の直流電圧を発生する蓄電装置としてのバッテリ12と、バッテリ12の高電圧の直流電力を交流電力に変換する電力変換装置としてのインバータ14と、インバータ14により回転駆動される動力発生源としてのモータ16とを備える。
【0030】
インバータ14により回転駆動されたモータ16の回転トルクは、図示しないギアボックスを介して前輪64に伝達される。この実施形態の電動車両10において、前輪64は駆動輪であり、後輪66は従動輪である。
【0031】
バッテリ12は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の2次電池あるいはキャパシタ等が採用され、車両18の後部座席20bのフロア22の下部と床下パネル21との間に固定される。
【0032】
[第1実施例]
図2は、バッテリ12とインバータ14とモータ16との間の電気的配線関係を示すとともに、第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100の構成を示す模式図である。
【0033】
図2に示すように、バッテリ12は、サブバッテリ12aとサブバッテリ12bとの直列接続により構成され、サブバッテリ12aの負側とサブバッテリ12bの正側との間には、手動で開閉が可能な手動開閉器26が挿入されている。手動開閉器26は、インバータ14等の保守時にサービスマン等により開状態にされ、保守点検の終了時に閉状態に戻される。
【0034】
サブバッテリ12aの正側は、比較的に短い絶縁被覆された電力ケーブルとしての電線28pを通じてリレー24を構成する正側(P側)のリレー24pの一端側に接続される。
【0035】
サブバッテリ12bの負側(N側)は、比較的に短い絶縁被覆された電力ケーブルとしての電線28nを通じてリレー24を構成する負側のリレー24nの一端側に接続される。
【0036】
リレー24は、電動車両10のダッシュボードに設けられたイグニッションスイッチ(IG SW)68の運転者等によるオフオン操作に対応して制御装置であるECU(電子制御ユニット)70を通じて開閉される。リレー24は、IG SW68のオフ(OFF)時に開状態とされ、IG SW68のオン(ON)時に閉状態とされる。
【0037】
正側のリレー24pの他端側には、比較的長い絶縁被覆された電力ケーブルである電線30p(図1も参照)の一端側30paが接続される。負側のリレー24nの他端側には、比較的に長い絶縁被覆された電力ケーブルである電線30n(図1も参照)の一端側30naが接続される。
【0038】
電線30(30p、30n)は、図1に示すように、車両18の前部座席20f(運転席と乗員席)下部のフロア22と床下パネル21との間を通じて、リレー24からボンネット72下の車両前部室80内に収容されているインバータ14の間に渡されて配線される。
【0039】
この場合、正側の一方の電線30pの一端側30paがリレー24pの他端側に接続され、前記一方の電線30pの他端側30pbがインバータ14の直流の高電圧印加側に接続される。また、負側の他方の電線30nの一端側30naがリレー24nの他端側に接続され、他方の電線30nの他端側30nbがインバータ14の直流の高電圧印加側に端側に接続される。
【0040】
インバータ14は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の電力半導体により3相のフルブリッジ型の構成とされたものが採用され、モータ16を3相の交流磁界により回転させる。
【0041】
インバータ14は、図2に示す第1実施例において、車両18のボンネット72下で運転席より前方に形成される車両前部室80内に配置固定されたハウジング40(図2参照)の中に収容固定される。
【0042】
第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100は、基本的には、ハウジング40と、電動アクチュエータ50と、この電動アクチュエータ50を含むロック機構45とによりが構成される。
【0043】
ハウジング40は、直方体状の中空の箱体からなるケース部44と、ケース部44の上部開口部を覆い、ヒンジ46を介して開閉可能なカバー部42と、から構成されている。
【0044】
ケース部44の中空部内に、インバータ14と、電線30の他端側30pb、30nbとが収容されるとともに、電線30に高電圧が印加されているときにカバー部44が開かないようにロックするロック機構45が収容される。
【0045】
ロック機構45は、後に、図5A、図5Bを参照して説明するように、ケース部44の側面部に固定された電動アクチュエータ50(のロッド58)と、カバー部42からケース部42の中空部側に延びて設けられ、孔部56が開けられたキー孔部54とから構成される。
【0046】
ロック機構45を構成する電動アクチュエータ50は、図5A、図5Bに示すように、基本的には、コイル52と、ロッド58と、圧縮バネ60等を有し、図5Aに示すように、電線30側からコイル52に電線32を通じて電動アクチュエータ50の電源端子51に電力が供給されることにより、ロッド58が電磁力により圧縮バネ60に抗って矢印F方向に移動することで、ロッド58を構成するロッドキー部58bがキー孔部54の孔部56に挿入され、ロック機構45がロック状態とされる。このロック状態において、カバー部42は閉じた状態に固定され、サービスマン等によりカバー部42を開くことができない状態になっている。
【0047】
図5Bに示すように、電線30側からコイル52への電線32を通じての電力が非供給状態になると、圧縮バネ60の圧縮力によりフランジ部58aに力がかかりロッド58が矢印B方向に移動する。これにより、ロッド58を構成するロッドキー部58bがキー孔部54の孔部56から抜け、ロック機構45がアンロック状態とされる。ロック機構45のアンロック状態において、カバー部42は、サービスマン等により開くことが可能な状態とされる。
【0048】
以上のように、第1実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100は、バッテリ12と、インバータ14と、一端側30pa、30naがバッテリ12側に接続され、他端側30pb、30nbがインバータ14に接続される電線30(30p、30n)と、インバータ14により駆動される走行用のモータ16と、ハウジング40(インバータ部14と、インバータ14に接続される電線30の他端側30pb、30nbと、電線32と、電動アクチュエータ50と、を収容するケース部44と、ケース部44の開口部を覆いヒンジ46により開閉可能なカバー部42とからなる。)と、ハウジング40の外側であって、バッテリ12とインバータ14との間に挿入され電気的接続を手動で開閉する手動開閉器26と、ハウジング40の外側であって、バッテリ12とインバータ14との間に挿入され電気的接続を、当該電動車両10のイグニッションスイッチ68のオフオンに連動して開閉するリレー24(24p、24n)と、ハウジング40内に収容され、カバー部42が開かないようにロック機構45によりロックするロック状態と、カバー部42が開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子51に電力が供給されていないときにロック機構45をアンロック状態に切り換え、電源端子51に電力が供給されているときにロック機構45をロック状態に切り換える電動アクチュエータ50と、を備え、電動アクチュエータ50の電源端子51に、ハウジング40内でバッテリ12から電線30を通じて電力が供給されるように電線32を通じて配線している。電線30と電線32の接続部84は、ケース部44内であればよい。
【0049】
この第1実施例によれば、インバータ14を収容するケース部44を覆うカバー部42が開かないようにするロック状態と、カバー部42が開くことを許容するアンロック状態に切換可能な電動アクチュエータ50を設け、この電動アクチュエータ50の電源端子51に、バッテリ12から電線30、32を通じてインバータ14に印加される電力を配線を分岐して供給するようにしている。すなわち、バッテリ12の直流電力を、そのまま電動アクチュエータ50の動作電源としている。
【0050】
従って、図2に示すように、イグニッションスイッチ68がオフ状態であるとき、又は保守点検作業のためにサービスマンにより手動開閉器26が開状態(図2は閉状態)とされたときには、電動アクチュエータ50の電源端子51に電力が供給されないので、コイル52による電磁力が発生しない。このため、ロッド58は、圧縮バネ60の圧縮力により矢印B方向に移動され、ロック機構45がアンロック状態とされ、カバー部42がアンロック状態になる。
【0051】
その一方、図3に示すように、イグニッションスイッチ68がオン状態であるときには、リレー24が閉状態とされ、電動アクチュエータ50の電源端子51に電力が供給されるで、コイル52により発生する電磁力がロッド58に作用する。このため、ロッド58は、圧縮バネ60の圧縮力に抗って矢印F方向に移動され、ロック機構45がロック状態とされることで、カバー部42がロック状態になる。
【0052】
また、図4に示すように、イグニッションスイッチ68をオフ状態にしても、リレー24が溶着故障(閉状態)を発生していた場合には、手動開閉器26が閉状態にあると、電動アクチュエータ50の電源端子51に電力が供給されることになるので、同様に、ロック機構45がロック状態とされることで、カバー部42がロック状態を保持する。
【0053】
図4の状態で、手動開閉器26を開くと、電動アクチュエータ50の電源端子51に電力が供給されなくなるので、電動アクチュエータ50は、ロック機構45をアンロック状態にする。
【0054】
よって、この実施形態では、バッテリ12から電線30を通じてインバータ14に電力が供給されている場合には、ハウジング40のカバー部42を開けることができず、バッテリ12から電線30を通じてインバータ14に電力が供給されていない場合に限り、ハウジング40のカバー部42を開けることができる。これにより、高圧部活線作業を確実に防止することができる。
【0055】
[第2実施例]
図6は、この実施形態に係る第2実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100Aの構成を示している。
【0056】
この第2実施例では、ハウジング40のケース部44により形成される収容室内において、電線30に接続されている電線32に、降圧型DC/DCコンバータ88を介装し、降圧型DC/DCコンバータ88の低電圧直流出力側に低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aを接続するようにした構成に変更している。すなわち、図2等に描いた電動アクチュエータ50を低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aに代替し、ハウジング40内で電線30、32からの電力が降圧型DC/DCコンバータ88を介して低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aに供給される構成とすることで、電動アクチュエータの選択の範囲を広げることができ、低コストで小型の電動アクチュエータを採用することができる。なお、降圧型DC/DCコンバータ88の種類としては、チョッパ型の非絶縁型のDC/DCコンバータあるいはトランスを利用した絶縁型のDC/DCコンバータのいずれも用いることができる。
【0057】
[第3実施例]
図7(ロック機構45がロック状態)、図8(ロック機構45がアンロック状態)は、他の実施形態に係る第3実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100Bが適用された電動車両10A(図1も参照)の構成を示している。
【0058】
低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aが、ロック機構45のキー孔部54の基部が取り付けられたボンネット72下の車両前部室80と図示しない運転席側の車室内とを遮断する遮断壁120の車両前部室80側に固定されている。ロック機構45を構成する低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aには、ハウジング40内に設けられた絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88から低耐圧の電線110、112を通じて低電圧の電源が供給されるように配線されている。
【0059】
この第3実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100Bは、バッテリ12と、インバータ14と、一端側30pa、30naがバッテリ12に接続され、他端側30pb、30nbがインバータ14に接続される電線30(30p、30n)と、インバータ14により駆動される走行用のモータ16と、少なくともインバータ14と電線30の他端側30pb、30nbとを収容する車両前部室80を覆うボンネット72と、車両前部室80の外側であって、バッテリ12とインバータ14との間に挿入され電気的接続を手動で開閉する手動開閉器26と、車両前部室80の外側であって、バッテリ12とインバータ14との間に挿入され電気的接続を当該電動車両10Aのイグニッションスイッチ68のオフオンに連動して開閉するリレー24(24p、24n)と、ボンネット72の車両前部室80側に設けられ、ロック機構45を構成し該ロック機構45をボンネット72が開かないようにロックするロック状態と、ボンネット72が開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子51aに電力が供給されていないときに前記アンロック状態に切り換えられ、電源端子51aに電力が供給されているときにロック状態に切り換えられる低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aと、車両前部室80内に設けられ、入力端子90に電線30からの電力が供給されるように配線され、出力端子92が低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aに接続される絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iと、を備える。
【0060】
このように絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iを用いる場合、絶縁型DC/DCコンバータ88iの出力端子92から低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aへの配線(電線)110及び配線(電線)112の一方{図7では、配線(電線)112側}を、当該電動車両10Aの車体に接地する構成とすることで、絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iの降圧側、すなわち低電圧側が、車体に接地された電源となる。
【0061】
この第3実施例によれば、インバータ14を収容する車両前部室80を覆うボンネット72が開かないようにするロック状態と、開くことを許容するアンロック状態に切換可能な低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aを設け、バッテリ12から電線30を通じてインバータ14に印加される高電圧を絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iにより降圧した電圧による電力を低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの動作電源とする。
【0062】
低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aに電力が供給されていないときロック機構45がアンロックされボンネット72はアンロック状態になる。低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aの電源端子51aに電力が供給されているときロック機構45がロックされボンネット72はロック状態になる。よって、電線30を通じてインバータ14に電力が供給されていない場合に限り、ボンネット72を開けることができる。これにより、高圧部活線作業を確実に防止することができる。
【0063】
しかも、絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iの低電圧側である降圧側の配線(電線)110、112の接続長さを、高電圧の電線30に接続される高電圧入力側の電線32、32の接続長さより長くすることで、高電圧の電線30から低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aに至るまでの配線領域中、高電圧管理領域(絶縁型DC/DCコンバータ88iの入力端子90側)を狭い領域とすることができる。逆に言えば、低電圧領域(絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iの出力端子92側)を広い領域とすることができる。よって、高電圧管理領域を広げないで済むことになる。
【0064】
[第4実施例]
図9は、他の実施形態に係る第4実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100Cの構成を示している。この第4実施例では、図7、図8の第3実施例の構成からハウジング40を取り除いた構成としている。この場合においても、絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iの低電圧側である降圧側の配線(電線)110、112の接続長さを、高電圧の電線30に接続される高電圧入力側の電線32の接続長さより長くすることで、高電圧の電線30から低電圧駆動型電動アクチュエータ50Aに至るまでの配線領域中、高電圧管理領域(絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iの入力端子90側)を狭い領域とすることができる。
【0065】
なお、ボンネット72を車両前部室80のロック機構45と一体的に作動するようにした図7、図8の第3実施例及び図9の第4実施例においては、絶縁型降圧型DC/DCコンバータ88iを、図6の第2実施例に示した非絶縁型のDC/DCコンバータ88に代替してもよい。ただし、代替した場合には、DC/DCコンバータ88の出力側は、車体アースから浮いているので、高電圧管理領域になる。
【0066】
[第5実施例]
また、ボンネット72が車両前部室80のロック機構45として一体的に作動する場合には、図10に示す他の実施形態に係る第5実施例の電動車両の高電圧部活線作業防止装置100Dに示すように、図2例と同様、DC/DCコンバータを省略し、電動アクチュエータ50の電源端子に、電線30から電線32を通じて直接配線するようにしてもよい。
【0067】
図7、図8、図9、及び図10に示すボンネット72をロック機構45と一体的に構成している他の実施形態では、ボンネット72下の車両前部室80内に複数の高電圧部品が設けられるときに、特に有利になる。高電圧部品の例としては、上述したインバータ14の他、12V系のバッテリの当該低電圧(12[V])に高電圧(数百[V]程度)を降圧するDC/DCコンバータ(ダウンバータ)、バッテリ12を充電するための充電器、及び燃料電池のエアコンプレッサ等を挙げることができる。
【0068】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0069】
10、10A…電動車両 12…バッテリ
12a、12b…サブバッテリ 14…インバータ
16…モータ 18…車両
21…床下パネル 22…フロア
24…リレー 26…手動開閉器
30、32…電線 40…ハウジング
42…カバー部 44…ケース部
45…ロック機構 46…ヒンジ
50、50A…電動アクチュエータ 51…電源端子
52…コイル 54…キー孔部
56…孔部 58…ロッド
58a…フランジ部 58b…ロッドキー部
68…イグニッションスイッチ 72…ボンネット
80…車両前部室 88…DC/DCコンバータ
100、100A〜100D…電動車両の高電圧部活線作業防止装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
電力変換装置と、
一端側が前記蓄電装置に接続され、他端側が前記電力変換装置に接続される電線と、
前記電力変換装置により駆動される走行用のモータと、
前記電力変換装置と前記電線の他端側とを収容するケース部と、前記ケース部の開口部を覆い開閉可能なカバー部と、からなるハウジングと、
前記ハウジングの外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を手動で開閉する手動開閉器と、
前記ハウジングの外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を当該電動車両のイグニッションスイッチのオフオンに連動して開閉するリレーと、
前記ハウジング内に収容され、前記カバー部が開かないようにロックするロック状態と、前記カバー部が開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子に電力が供給されていないときに前記アンロック状態に切り換えられ、前記電源端子に電力が供給されているときに前記ロック状態に切り換えられる電動アクチュエータと、を備え、
前記電動アクチュエータの電源端子に、前記ハウジング内で前記電線からの電力が供給されるように配線した
ことを特徴とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両の高電圧部活線作業防止装置において、
さらに、降圧型DC/DCコンバータを有し、前記電動アクチュエータを低電圧駆動型電動アクチュエータに代替し、前記ハウジング内で前記電線からの電力が前記降圧型DC/DCコンバータを介して前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子に供給されるように配線した
ことを特徴とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置。
【請求項3】
蓄電装置と、
電力変換装置と、
一端側が前記蓄電装置に接続され、他端側が前記電力変換装置に接続される電線と、
前記電力変換装置により駆動される走行用のモータと、
車両の運転席より前方に形成され、少なくとも前記電力変換装置と前記電線の他端側とを収容する車両前部室と、
前記車両前部室の上側を覆うボンネットと、
前記車両前部室の外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を手動で開閉する手動開閉器と、
前記車両前部室の外側であって、前記蓄電装置と前記電力変換装置との間に挿入され、電気的接続を当該電動車両のイグニッションスイッチのオフオンに連動して開閉するリレーと、
前記ボンネットの前記車両前部室側に設けられ、前記ボンネットが開かないようにロックするロック状態と、前記ボンネットが開くことを許容するアンロック状態とに切り換え可能で、電源端子に電力が供給されていないときに前記アンロック状態に切り換えられ、前記電源端子に電力が供給されているときに前記ロック状態に切り換えられる電動アクチュエータと、を備え
前記電動アクチュエータの電源端子に、前記車両前部室内で前記電線からの電力が供給されるように配線した
ことを特徴とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置。
【請求項4】
請求項3記載の電動車両の高電圧部活線作業防止装置において、
さらに、降圧型DC/DCコンバータを有し、前記電動アクチュエータを低電圧駆動型電動アクチュエータに代替し、前記車両前部室内で前記電線からの電力が前記降圧型DC/DCコンバータを介して前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子に供給されるように配線した
ことを特徴とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置。
【請求項5】
請求項4記載の電動車両の高電圧部活性作業防止装置において、
前記降圧型DC/DCコンバータが、絶縁型降圧型DC/DCコンバータであり、
前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータから前記低電圧駆動型電動アクチュエータの前記電源端子への配線の一方を、当該電動車両の車体に接地した
ことを特徴とする電動車両の高電圧部活線作業防止装置。
【請求項6】
請求項5記載の電動車両の高電圧部活線作業防止装置において、
さらに、前記車両前部室内に、前記電力変換装置と前記電線の他端側と前記絶縁型降圧型DC/DCコンバータとを収容するケース部と、前記ケース部の開口部を覆い開閉可能なカバー部と、からなるハウジングを設けた
ことを特徴とする電動車両の高電圧活線作業防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193546(P2011−193546A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54832(P2010−54832)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】