説明

電子キーの通信形式切換装置及び通信形式切換方法

【課題】例えば通信相手となる機器ごとに電子キーの通信形式を切り換えることができ、しかも通信切り換えに柔軟に対応することができる電子キーの通信形式切換装置及び通信形式切換方法を提供する。
【解決手段】電子キーとしてソフトウェア無線機を使用するとともに、通信パラメータ情報30を書き込んだメモリ29をエマージェンシー用メカニカルキー24に設ける。そして、キー本体23にエマージェンシー用メカニカルキー24が収納された際、メモリ29に書き込まれた通信パラメータ情報30を読み出し、これをソフトウェア無線機に登録することで、電子キーの通信形式をエマージェンシー用メカニカルキー24の種類に応じた形式に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自ら1つで複数の機器を無線通信により動作可能な電子キーに係り、機器ごとに通信形式を切り換えることが可能な電子キーの通信形式切換装置及び通信形式切換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のキーシステムとして、キーコードを無線通信により車両に発信する電子キーを車両キーとして用いる電子キーシステム(例えば、特許文献1等参照)が広く使用されている。電子キーシステムは、電子キーからキーコードとして無線発信されたIDコードを車両が受信するとID照合を実行し、このID照合が成立すれば車両ドアのドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。この電子キーシステムには、車両からのリクエストに応答してIDコードを車両に自動発信して車両にID照合を実行させるキー操作フリーシステムや、電子キーの各種ボタンを操作する遠隔操作によって車両を動作させるワイヤレスキーシステム等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、場合によっては、1ユーザが複数の車両を所有することも想定される。このとき、従来通り、車両ごとに個別の電子キーを所持するのは煩わしいことから、利便性向上を目的として、例えば1つの電子キーで複数の車両を動かす技術が考えられる。しかし、各車両において使用する電子キーシステムの通信形式は、各車両で異なる場合が多く、1つの電子キーで複数車両を動かすことを可能とするには、各車両で電子キーシステムの通信形式を切り換える必要がある。また、この種の通信形式切換装置を電子キーに搭載する場合、通信形式切換装置を汎用性の高いものとして、切り換えに柔軟性を持たせたい要望もある。
【0005】
本発明の目的は、例えば通信相手となる機器ごとに電子キーの通信形式を切り換えることができ、しかも通信切り換えに柔軟に対応することができる電子キーの通信形式切換装置及び通信形式切換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、電子キーによる遠隔操作によってその通信相手である機器を動作させる際に、当該機器との無線通信を介したID照合の成立を条件に前記動作の実行が可能な電子キーの通信形式切換装置において、キー本体に着脱可能に収納されたメカニカルキーに、前記無線通信に関係する情報として設けられた通信パラメータ情報と、ソフトウェアの信号処理により機能を切り換え可能なソフトウェア無線機が使用された通信手段と、前記通信パラメータ情報を読み取る情報読取手段と、当該情報読取手段で読み取った前記通信パラメータ情報を前記ソフトウェア無線機に登録することにより、前記電子キーの通信形式を設定する通信形式設定手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、キー本体にメカニカルキーが挿し込まれると、同メカニカルキーに付与された通信パラメータ情報がソフトウェア無線機に登録されることにより、電子キーの通信形式が設定される。このため、キー本体に収納されるメカニカルキーを挿し変えることによって、電子キーの通信形式を適宜変更することが可能となる。また、挿し込むメカニカルキーの種類に応じて、各々個別の通信形式に設定することも可能となるので、キー種類ごとの別個の通信形式に設定可能という汎用性の高い形式によって、電子キーの通信形式を切り換えることも可能となる。
【0008】
本発明では、前記通信パラメータ情報は、前記無線通信の設定項目を定義する通信制御プログラムであることを要旨とする。
この構成によれば、無線通信の通信形式を決める例えば数値や設定値等の各種情報を、キー本体に収納されるメカニカルキーの種類に応じて、各々別のものに切り換えることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記ソフトウェア無線機は、電波の受信及び発信の両方が可能な送受信機であることを要旨とする。
この構成によれば、ソフトウェア無線機を送受信の両方の通信を可能としたので、送受信両方の通信形式を適宜切り換えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記情報読取手段は、前記メカニカルキーの前記通信パラメータ情報を無接により取得する無接点式であることを要旨とする。
この構成によれば、メカニカルキーに付与された通信パラメータ情報は、無線通信によってキー本体側に送られる。ところで、もし仮に通信パラメータ情報が有接点式で送られる場合には、この接点部分の使用劣化が問題になるが、本構成のように無接点式とすれば、この種の問題を気にせずに済む。
【0011】
本発明では、電子キーによる遠隔操作によってその通信相手である機器を動作させる際に、当該機器との無線通信を介したID照合の成立を条件に前記動作が実行される電子キーの通信形式切換方法において、キー本体に取り付けられるメカニカルキーに、前記無線通信に関係する情報として通信パラメータ情報が設けられ、前記電子キーの通信機に、ソフトウェアの信号処理により機能が可変可能なソフトウェア無線機が使用され、前記メカニカルキーに設けられた前記通信パラメータ情報を前記ソフトウェア無線機に登録することにより、前記電子キーの通信形式を設定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば通信相手となる機器ごとに電子キーの通信形式を切り換えることができ、しかも通信切り換えに柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】チャレンジレスポンス認証の概略を示す説明図。
【図3】エマージェンシー用メカニカルキーを持つ電子キーの外観形状を示す斜視図。
【図4】通信形式切換装置の概略構成を示すブロック図。
【図5】電子キーのキー本体側の具体的構成を示すブロック図。
【図6】第1エマージェンシー用メカニカルキーが収納された電子キーを示すブロック図。
【図7】第2エマージェンシー用メカニカルキーが収納された電子キーを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した電子キーの通信形式切換装置及び通信形式切換方法の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用される電子キー2との間で無線通信によりキー照合を行って、このキー照合の成立を条件にドアロックの施解錠やエンジン始動等が許可又は実行される電子キーシステム3が設けられている。また、電子キー2は、車両1との間で狭域無線通信が可能であって、電子キー2が固有に持つIDコードをキーコードとして無線通信により車両1に発信して車両1にキー照合を行わせることが可能なキーのことをいう。なお、車両1が機器(通信相手)に相当する。
【0015】
電子キーシステム3には、電子キー2からキーコードとしてIDコードを発信するときに個別のキー操作が不要であるキー操作フリーシステムが含まれている。このキー操作フリーシステムには、ドアロックの施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車両1の電源系を管理するメインボディECU5とが設けられ、これらECU4,5が車内の一ネットワークであるLIN(Local Interconnect Network)6を介して接続されている。照合ECU4には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波(約134KHz)を発信可能な車外発信機7と、車内に同様のLF電波を発信可能な車内発信機8と、UHF(Ultra High Frequency)帯の一種であるRF(Radio Frequency:約312MHz)の電波を受信可能な車両チューナ9とが接続されている。また、メインボディECU5には、ドアロックの施解錠を実行するときの駆動源としてドアロックモータ10が接続されている。
【0016】
また、電子キー2には、キー側において通信動作を管理するコントロールユニットとして通信部11が設けられている。通信部11には、IDコード発信等の各種動作を管理する通信制御部12と、データ変換等の各種処理を実行する通信回路部13とが設けられている。通信回路部13には、LF電波を受信可能な受信アンテナ14と、RF電波を発信可能な発信アンテナ15とが接続されている。なお、通信部11が通信手段に相当する。
【0017】
照合ECU4は、車外発信機7からIDコード返信要求としてLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させることにより、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリアを形成して、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身に登録されたIDコードCdを乗せたID信号SidをRF電波で返信する。照合ECU4は、車両チューナ9でID信号Sidを受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、自身に登録されたIDコードCdと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU4は、この車外照合が成立したことを確認すると、メインボディECU5によるドアロック施解錠動作を許可する。
【0018】
また、キー操作フリーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン16の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。この場合、メインボディECU5には、エンジン16の点火制御や燃料噴射制御を管理するエンジンECU17が、車内の一ネットワークであるCAN(Controller Area Network)18を介して接続されている。また、車内には、同システムの操作系としてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ19が設けられ、同スイッチ19がメインボディECU5に接続されている。エンジンスイッチ19の操作機能には、エンジン始動停止機能の他に、電源遷移機能も割り当てられている。また、メインボディECU5には、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー20と、走行系の各種電装品に繋がるIG(Ignition)リレー21と、エンジンスタータ(図示略)に繋がるスタータリレー22とが接続されている。
【0019】
照合ECU4は、例えばカーテシスイッチ(図示略)により運転者の車内への乗車を確認すると、今度は車内発信機8からリクエスト信号Srqを発信して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU4は、電子キー2がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号Sidを車両チューナ9で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、自身に登録されたIDコードCdと電子キー2のIDコードCdとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU4は、この車内照合が成立したことを確認すると、エンジンスイッチ19のプッシュ操作による電源状態切り換えを許可する。
【0020】
図2に示すように、車両1及び電子キー2のID照合は、チャレンジレスポンス認証により暗号化された暗号通信となっている。チャレンジレスポンス認証とは、車両1が電子キー2にチャレンジSchを投げかけて、電子キー2にチャレンジSchのレスポンスSrsを演算させ、このレスポンスSrsが正しい演算結果をとるかどうかを見る認証の一種である。この場合、照合ECU4には、車両1側のチャレンジレスポンス認証用の暗号演算式として暗号鍵Kが登録されている。また、電子キー2にも、車両1と同様の暗号鍵Kが登録されている。これら暗号鍵Kは、例えば秘密鍵が使用され、暗号列が並んだアルゴリズムからなる。
【0021】
この場合、照合ECU4は、リクエスト信号Srqを発信する際、発信の度に値が毎回変わる乱数コードをチャレンジSchとして発信機7(8)からLF電波で発信させる。電子キー2は、車両1から発信されたチャレンジSchを受信すると、このチャレンジSchを自身の暗号鍵Kにより演算する。そして、電子キー2は、暗号鍵Kによって求めた演算結果(演算値)を、ID信号Sidの発信時にレスポンスSrsとしてIDコードCdとともにRF電波により車両1に返信する。
【0022】
一方、照合ECU4は、電子キー2にチャレンジSchを発信した際、このチャレンジSchを自身の暗号鍵Kによって演算し、自らもレスポンスSrsを生成する。そして、照合ECU4は、電子キー2からレスポンスSrsを受信すると、電子キー2のレスポンスSrsと、自ら求めたレスポンスSrsとを照らし合わせてレスポンス照合を実行する。照合ECU4は、電子キー2のIDコードの照合成立のみならず、このレスポンス照合もID照合の成立条件に含ませ、これら両方の照合が成立すると、ドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。
【0023】
図3に示すように、電子キー2のキー本体(筐体)23には、エマージェンシーキー用のキーとしてエマージェンシー用メカニカルキー24が収納されている。このエマージェンシー用メカニカルキー24は、主に電子キー2が電池切れになった際に使用するキーである。キー本体23には、エマージェンシー用メカニカルキー24の収納先として挿込穴25が形成されている。エマージェンシー用メカニカルキー24は、同キー24の把持部分である把持部26と、キー溝が切られた板状のキープレート27とを備えている。エマージェンシー用メカニカルキー24は、キープレート27をキー本体23に挿し込み、把持部26の一部がキー本体23から飛び出した収納状態をとる。なお、エマージェンシー用メカニカルキー24がメカニカルキーに相当する。
【0024】
図4及び図5に示すように、電子キー2には、同キー2の通信形式の種別を切り換える通信形式切換装置28が設けられている。本例の場合、エマージェンシー用メカニカルキー24(把持部26)にメモリ29を設けるとともに、このメモリ29に通信パラメータ情報30を書き込んでおく。通信パラメータ情報30は、電子キー2の通信形式に関係する情報群である。そして、キー本体23にエマージェンシー用メカニカルキー24が収納された際、メモリ29内の通信パラメータ情報30を電子キー2に実行プログラムとして設定することにより、電子キー2の通信形式をエマージェンシー用メカニカルキー24に応じた形式に設定する。即ち、キー本体23に収納するエマージェンシー用メカニカルキー24の種類に応じて、電子キー2の通信形式が切り換えられる。
【0025】
ここで、通信形式とは、例えば通信周波数、電波強度、通信範囲、通信プロトコル、暗号鍵等の種々の通信に関係するパラメータの組み合わせにより決まる一種の通信の様式であって、例えば各車両1のメーカに応じて設定されている。よって、通信形式は、各メーカの車両1と、その車両1の専用の電子キー2との組み合わせに応じて、各々個別のものが設定されている。本例の場合、メーカAの車両1を第1車両1a(図6参照)とし、メーカBの車両1を第2車両1b(図7参照)とした場合、これら車両1a,1bには、各々異なる通信形式が設定されている。
【0026】
また、本例においては、エマージェンシー用メカニカルキー24の種類に応じて、電子キー2の通信形式が設定されるので、それぞれの車両1a,1bごとにエマージェンシー用メカニカルキー24が用意されている。本例の場合、第1車両1a用のエマージェンシー用メカニカルキー24が第1エマージェンシー用メカニカルキー24a(図6参照)とされ、第2車両1b用のエマージェンシー用メカニカルキー24が第2エマージェンシー用メカニカルキー24b(図7参照)とされている。
【0027】
第1エマージェンシー用メカニカルキー24aのメモリ29には、第1車両1aの通信形式に関係する通信パラメータ情報30として第1通信パラメータ情報30aが登録されている。第1通信パラメータ情報30aには、第1車両1aのID照合用の通信制御プログラムとして第1車両用通信制御プログラムPaと、第1車両1aの車両IDである第1車両用IDコードCdaと、第1車両1aのチャレンジレスポンス認証用の第1車両用暗号鍵Kaとが含まれている。また、第2エマージェンシー用メカニカルキー24bのメモリ29には、第2車両1bの通信形式に関係する通信パラメータ情報30として第2通信パラメータ情報30bが登録されている。第2通信パラメータ情報30bには、第2車両1bのID照合用の通信制御プログラムとして第2車両用通信制御プログラムPbと、第2車両1bの車両IDである第2車両用IDコードCdbと、第2車両1bのチャレンジレスポンス認証用の第2車両用暗号鍵Kbとが含まれている。また、通信制御プログラムPa,Pbとは、通信形式(通信環境、OS(Operating System)、アプリケーション)を決める数値や設定値の各種情報をいい、いわゆるコンフィグレーション情報(回路情報)とも言う。
【0028】
エマージェンシー用メカニカルキー24には、メモリ29内の各種データの出力口として無線インターフェース部31が設けられている。エマージェンシー用メカニカルキー24は、メモリ29に登録された通信パラメータ情報30を、この無線インターフェース部31を介して外部に出力可能となっている。なお、無線インターフェース部31が情報読取手段を構成する。
【0029】
また、電子キー2(通信部11)は、電子キー2の通信機能をソフトウェア的な処理により設定及び変更することが可能なソフトウェア無線機が使用されている。ここで、ソフトウェア無線機とは、自身が持つハードウェア回路の特性を、ソフトウェアによりプログラマブル的に変更することにより、通信機能を設定及び変更することが可能な通信機のことをいい、例えば発信周波数、変調方式、発信電波のコードフォーマット等の各種発信パラメータをソフトウェア的に切り換え可能となっている。
【0030】
図5に示すように、通信制御部12及び通信回路部13には、受信機能と発信機能との両方の機能に関係する各種回路が設けられている。通信回路部13は、受発信される電波の周波数を変更したり、或いは電波をデジタル信号やアナログ信号に変換したりする回路群である。また、通信制御部12は、電波の変復調及び通信プロトコルの処理を司る、いわゆるデジタル信号処理部に相当する回路群である。ソフトウェア無線機は、これら通信制御部12及び通信回路部13がプログラマブル的に書き換えられることにより、実行機能が変更可能となっている。
【0031】
更に詳しく述べると、通信回路部13には、受信電波を中間周波(IF信号)に落とし込む周波数変換部32と、この中間周波の信号を通信制御部12に送り渡すインターフェース33と、中間周波の信号をA/D変換するA/D変換部34とが設けられている。通信制御部12には、デジタル変換後の信号を直交検波するデータ変換部35と、直交検波後の信号を相関処理する相関処理部36と、相関処理後の信号を復調方式に合わせて復号する復調部37と、電子キー2の各種動作(データ解釈、信号発信等)を統括管理するデータ処理部38とが設けられている。
【0032】
また、通信制御部12には、発信データを発信方式に合わせて変調する変調部39と、変調後の発信データを発信アンテナ15側に送るインターフェース40と、変調後の発信データに波形生成及び直交変調の処理を加えるデータ変換部41とが設けられている。通信回路部13には、波形生成及び直交変調後の信号をD/A変換するD/A変換部42と、アナログ変換後の信号を発信アンテナ15側に送り渡すインターフェース43と、インターフェース43から受け付けた信号を発信用の高周波に変換する周波数変換部44とが設けられている。
【0033】
また、図3に示すように、キー本体23には、エマージェンシー用メカニカルキー24(24a,24b)が挿込穴25に挿し込まれたかどうかを監視するキー挿入検出部45が設けられている。キー挿入検出部45は、例えばマイクロスイッチからなり、エマージェンシー用メカニカルキー24(24a,24b)が挿込穴25に完挿されたことを検出すると、例えばオン信号を出力可能となっている。
【0034】
キー本体23には、キー本体23に収納されたエマージェンシー用メカニカルキー24のメモリ29から通信パラメータ情報30を無線により読み取る無線インターフェース部46が設けられている。無線インターフェース部46は、キー本体23にエマージェンシー用メカニカルキー24が挿し込まれた際、これをキー挿入検出部45により検出すると、メモリ29からのデータ読み取りを開始する。このとき、無線インターフェース部46は、エマージェンシー用メカニカルキー24に設けられた無線インターフェース部31から、無線通信によりメモリ29のデータ群を読み取る。なお、無線インターフェース部46が情報読取手段を構成する。
【0035】
キー本体23には、電子キー2における通信形式の切り換え動作を統括制御する通信形式切換制御部47が設けられている。通信形式切換制御部47は、無線によりエマージェンシー用メカニカルキー24から読み取った通信パラメータ情報30を、実行プログラムとして通信部11(通信制御部12及び通信回路部13)にプログラマブル的に書き込むことにより、電子キー2の通信形式を設定する。即ち、通信形式切換制御部47は、エマージェンシー用メカニカルキー24から読み取った通信パラメータ情報30を通信制御部12及び通信回路部13に送り込み、これらを通信パラメータ情報30に応じた回路とすることにより、電子キー2の通信機能をエマージェンシー用メカニカルキー24に応じた形式に設定する。
【0036】
さて、図6に示すように、まずはキー本体23に第1エマージェンシー用メカニカルキー24aが収納された場合を想定する。第1エマージェンシー用メカニカルキー24aがキー本体23に完挿されると、キー挿入検出部45からはオン信号が通信形式切換制御部47に出力される。通信形式切換制御部47は、キー挿入検出部45からオン信号を入力してキーの完挿を確認すると、無線インターフェース部46にデータ取り込みを開始させる。このとき、無線インターフェース部46は、第1エマージェンシー用メカニカルキー24aの無線インターフェース部31と無線通信を開始して、同メカニカルキー24aのメモリ29に書き込まれた第1通信パラメータ情報30aを取得する。無線インターフェース部46は、読み取った第1通信パラメータ情報30aを通信形式切換制御部47に出力する。
【0037】
通信形式切換制御部47は、無線インターフェース部46から第1通信パラメータ情報30aを入力すると、この第1通信パラメータ情報30aを通信制御部12及び通信回路部13に書き込んで、これらを第1通信パラメータ情報30aの仕様とする。これにより、電子キー2の通信形式が第1通信パラメータ情報30aに準じた形式、即ち第1車両1aに対応した形式をとり、電子キー2が第1車両1a用のキーとして機能する。よって、この電子キー2を所持して第1車両1aに近づけば、第1車両1aとの間でID照合が成立し、第1車両1aへの乗降車及びエンジン始動操作が可能となる。
【0038】
今度は、図7に示すように、キー本体23に第2エマージェンシー用メカニカルキー24bが収納された場合を想定する。通信形式切換制御部47は、キー本体23に第2エマージェンシー用メカニカルキー24bが完挿されたことを確認すると、第1エマージェンシー用メカニカルキー24aが挿し込まれたときと同様の形式で以て、第2エマージェンシー用メカニカルキー24bのメモリ29に書き込まれた第2通信パラメータ情報30bを読み取り、これを通信形式切換制御部47に出力する。
【0039】
通信形式切換制御部47は、無線インターフェース部46から第2通信パラメータ情報30bを入力すると、この第2通信パラメータ情報30bを通信制御部12及び通信回路部13に書き込んで、これらを第2通信パラメータ情報30bの仕様とする。これにより、電子キー2の通信形式が第2通信パラメータ情報30bに準じた形式、即ち第2車両1bに対応した形式をとり、電子キー2が第2車両1b用のキーとして機能する。よって、この電子キー2を所持して第2車両1bに近づけば、第2車両1bとの間でID照合が成立し、第2車両1bへの乗降車及びエンジン始動操作が可能となる。
【0040】
このように、本例においては、電子キー2としてソフトウェア無線機を使用するとともに、通信パラメータ情報30を書き込んだメモリ29をエマージェンシー用メカニカルキー24に設ける。そして、キー本体23にエマージェンシー用メカニカルキー24が収納された際、メモリ29に書き込まれた通信パラメータ情報30を読み出し、これを電子キー2に登録することで、電子キー2の通信形式をエマージェンシー用メカニカルキー24の種類に応じた形式に設定する。これにより、エマージェンシー用メカニカルキー24を挿し変えることにより、電子キー2の通信形式を切り換えることが可能となる。
【0041】
また、本例の場合は、メモリ29に書き込まれた通信パラメータ情報30により、各々個別の通信形式に設定される。このため、エマージェンシー用メカニカルキー24を挿し変えれば、その挿し変えキーに応じた形式に通信形式を設定することが可能となるので、柔軟に通信形式を切り換えることが可能な切り換え形式をとる。また、もし仮に車両1を買い替えた場合であっても、電子キー2のキー本体23は継続使用することが可能となるので、キー本体23を高級化したり、或いはカスタマイズ化したりしても、これが無駄になることがない。
【0042】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)通信パラメータ情報30を記憶したメモリ29を各エマージェンシー用メカニカルキー24に設け、キー本体23にエマージェンシー用メカニカルキー24が収納された際、同メカニカルキー24のメモリ29に書き込まれた通信パラメータ情報30に電子キー2の通信形式を設定する。このため、エマージェンシー用メカニカルキー24を挿し変えることによって、電子キー2の通信形式を適宜切り換えることができる。また、エマージェンシー用メカニカルキー24の種類毎の形式に電子キー2の通信形式を設定可能という柔軟な形式によって、電子キー2の通信形式を切り換えることもできる。
【0043】
(2)電子キー2の通信形式をエマージェンシー用メカニカルキー24に応じて変更する場合、無線通信のやり方を定義する通信制御プログラムPを変更可能としたので、この種の通信制御プログラムPを、エマージェンシー用メカニカルキー24の挿し変えにより適宜切り換えることができる。
【0044】
(3)電子キー2を送受両方の対応とし、この送受両対応の通信形式を変更可能としたので、電子キー2の電波発信及び電波受信において両方とも通信形式を変更することができる。
【0045】
(4)エマージェンシー用メカニカルキー24に付与された通信パラメータ情報30は、無線通信(無接点式)によってキー本体23に読み取られる。ところで、もし仮に通信パラメータ情報30が有接点式でキー本体23に送られる場合には、この接点部分の使用劣化が問題になるが、本例のように無接点式にすれば、この種の問題を考えずに済む。
【0046】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下のように変更してもよい。
・ IDコードCdは、第1車両1aと第2車両1bとで異なることに限定されず、例えばキー本体23側に予め持たせておき、これを2車間で共用するものでもよい。なお、このことは、暗号鍵Kについても同様に言える。
【0047】
・ IDコードCdや暗号鍵Kは、メモリ29にて保持される形式とし、通信の際には、このメモリ29からこれら情報を取り込む形式を採用してもよい。
・ 通信パラメータ情報30は、必ずしも通信制御プログラムP、IDコードCd及び暗号鍵Kの3種を含むことに限らず、少なくともこれらの1つであればよい。また、通信パラメータ情報30は、これら3つのどれかであることに限定されず、種々のデータが採用可能である。
【0048】
・ 無線インターフェース部31,46を無線接点式とした場合、この接点形式は、例えば光学式や磁気式など、種々の形式が採用可能である。
・ 情報読取手段(無線インターフェース部31,46)は、必ずしも無線接点式であることに限定されず、有線接点式でもよい。
【0049】
・ 通信パラメータ情報30は、エマージェンシー用メカニカルキー24がキー本体23に挿し込まれたタイミングで読み取られることに限定されず、例えばID照合を開始する際に読み取られるものでもよい。
【0050】
・ 電子キー2は、必ずしも送受信の両方が可能な通信端末であることに限定されず、これら2機能のうち一方の機能のみを持つものでもよい。
・ メモリ29は、例えばROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable PROM)等の種々のメディアを使用することが可能である。
【0051】
・ ID照合の双方向通信で使用する周波数は、必ずしもLFやRFであることに限定されず、これら以外の周波数を使用してもよい。また、双方向通信の往路と復路とでそれぞれ異なる周波数をとることに限らず、両者とも同じ周波数としてもよい。
【0052】
・ 電子キーシステム3は、必ずしもキー操作フリーシステムに限定されず、例えばイモビライザーシステム等の他の照合システムを使用してもよい。
・ 通信形式切換装置28は、必ずしも車両1に使用されることに限らず、無線通信を行う機器や装置であれば、その採用対象は特に限定されない。即ち、機器は車両1に限定されないし、電子キー2は車両キーに限定されず、種々のものが採用可能である。
【0053】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記キー本体に前記エマージェンシー用メカニカルキーが挿し込まれたことを検出するキー挿込検出手段を備え、前記情報読取手段は、前記エマージェンシー用メカニカルキーが前記キー本体に挿し込まれたことを検出した際に、前記通信パラメータ情報の読み取りを実行する。この構成によれば、通信パラメータ情報の読み取りを、好適なタイミングで実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1…機器(通信相手)としての車両、2…電子キー、11…通信手段としての通信部、23…キー本体、24(24a,24b)…メカニカルキーとしてのエマージェンシー用メカニカルキー、28…通信形式切換装置、30(30a,30b)…通信パラメータ情報、31…情報読取手段を構成する無線インターフェース部、46…情報読取手段を構成する無線インターフェース部、47…通信形式設定手段としての通信形式切換制御部、P(Pa,Pb)…通信制御プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーによる遠隔操作によってその通信相手である機器を動作させる際に、当該機器との無線通信を介したID照合の成立を条件に前記動作の実行が可能な電子キーの通信形式切換装置において、
キー本体に着脱可能に収納されたメカニカルキーに、前記無線通信に関係する情報として設けられた通信パラメータ情報と、
ソフトウェアの信号処理により機能を切り換え可能なソフトウェア無線機が使用された通信手段と、
前記通信パラメータ情報を読み取る情報読取手段と、
当該情報読取手段で読み取った前記通信パラメータ情報を前記ソフトウェア無線機に登録することにより、前記電子キーの通信形式を設定する通信形式設定手段と
を備えたことを特徴とする電子キーの通信形式切換装置。
【請求項2】
前記通信パラメータ情報は、前記無線通信の設定項目を定義する通信制御プログラムであることを特徴とする請求項1に記載の電子キーの通信形式切換装置。
【請求項3】
前記ソフトウェア無線機は、電波の受信及び発信の両方が可能な送受信機であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キーの通信形式切換装置。
【請求項4】
前記情報読取手段は、前記メカニカルキーの前記通信パラメータ情報を無接により取得する無接点式であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーの通信形式切換装置。
【請求項5】
電子キーによる遠隔操作によってその通信相手である機器を動作させる際に、当該機器との無線通信を介したID照合の成立を条件に前記動作が実行される電子キーの通信形式切換方法において、
キー本体に取り付けられるメカニカルキーに、前記無線通信に関係する情報として通信パラメータ情報が設けられ、前記電子キーの通信機に、ソフトウェアの信号処理により機能が可変可能なソフトウェア無線機が使用され、前記メカニカルキーに設けられた前記通信パラメータ情報を前記ソフトウェア無線機に登録することにより、前記電子キーの通信形式を設定することを特徴とする電子キーの通信形式切換方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−265644(P2010−265644A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116813(P2009−116813)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】