説明

電子レンジによる食品の真空調理法とそれに用いる真空密閉容器

【課題】電子レンジを用いた食品の真空調理法及びこれに用いる真空密閉容器を提供する。
【解決手段】耐熱、耐冷にしてマイクロ波透過性の容器からなり、蓋14は、気体を通気孔16を通じて容器外へのみ一方的に流出するように構成された逆止弁18と、容器周縁にパッキンを装着してなり、蓋14と容器本体12がパッキン32を介して気密に接し止め具38a、38bの係合により密閉する如く構成した容器に一定量の食品、調理水を入れて止め具を係合して電子レンジの強出力で高温に加熱して沸騰させ、容器内の気体を排出した後加熱を停止して冷却すれば容器は密閉されて容器内は真空となる。次いで弱出力によって『所要時間加熱したのち、ファン冷却後停止する』を1サイクルとし、調理素材とレシピに対応してサイクル数を予め設定し、電子レンジを駆動して食品を低温真空調理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを用いた食品の真空調理法及びそれに用いる真空密閉容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジによる一般調理の煮物にはパイレックス(登録商標)(アメリカ・コーニング社の登録商標)などの耐熱ガラス製の蓋付鍋を使用して、強出力によって加熱調理しており、また味の浸透を要する煮込み調理をするような場合には、電子レンジ強出力と弱出力の二段加熱により大気圧下で長時間加熱している。
また、従来の真空調理法としては食品をパックフイルムに充填し真空ポンプで吸引し真空パックして湯煎によって肉などを長時間かけて低温調理する方法が知られている。
【0003】
【非特許文献1】谷 孝之著・真空調理の全技法 柴田書店 発行 p8〜9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子レンジによる調理において特に、味の浸透をはかる煮込み調理をするような場合には、また肉類を調理するような場合、長時間電子レンジでマイクロ波加熱することによって肉類などは硬くなることがあり、さらに旨み成分などが流れ出てしまい、あまり旨いものは期待できない。
【0005】
一方、真空パックによる肉類などの調理では、よい結果が得られるが湯煎による低温処理であるため長時間を要することと、外部からの伝導加熱であるから内部まで火が通らないことがあり、また食品の間に空気が残存して火が通らないこともあり衛生上の問題がある。有害細菌が残存したり、とくに豚肉の場合はトリキネラなどの人体に有害な寄生虫がおり、生煮えで食べるのは危険である。
【0006】
本発明の目的とするところは、これらの問題を克服して電子レンジ加熱によって優れた調理結果を得る調理法とそれに用いる真空密閉容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る電子レンジによる食品の真空調理法は、先ず請求項1に記載のように、次の如くする。
請求項2に記載の真空密閉容器を用いて一定量の食品及び調理水を電子レンジの強出力にて一気に高温に加熱して沸騰させることにより食品を内部から加熱して汚染菌、寄生虫を短時間に殺菌、殺虫し同時に、水が蒸発するとその体積は大気圧で千倍を越えることを利用して食品及び調理水から発生する水蒸気により空気の大部分を排出脱気させ、真空密閉容器を冷却すれば容器内の温度が下がり水蒸気は凝縮し残存の空気は濃度が極めて希薄となり容器は自動的に密閉され容器内は真空となる。ついで容器内の真空を維持して調理するために、電子レンジの弱出力によって『所要時間加熱したのち停止し、所要時間ファン冷却後停止する』ことを1サイクルとし、調理素材、レシピの種類に対応してサイクル数を予め設定し、調理に際してサイクル数を指定して食品を低温調理することができる
【0008】
容器内が真空であり、低温で時間をかけて加熱するため肉類を含む調理でも柔らかく仕上がり従来の調理法にない美味しいものができ、そのとき旨み成分は水溶性で素材から出てくるが密閉された真空状態で加熱することにより、調理水は緩やかに沸騰して撹拌され味の浸透と旨み成分は、外部へ流出することなく食品への均一的なしみこみが期待でき所要時間の加熱処理後冷却すれば容器内の水蒸気は凝縮し、残存空気は容積を縮小してその濃度は極めて希薄となるから食品は酸化、変敗することもない。
【0009】
電子レンジの・出力で所定時間加熱、冷却して真空密閉容器内を空気の極めて希薄な真空状態をつくり、ついで弱出力によって加熱ー冷却のサイクル数を予め設定して調理することにより電子レンジの駆動ソフトを簡単につくることが可能である
【0010】
請求項2は、請求項1に記載の真空密閉容器に関するもので、耐熱、耐冷にしてマイクロ波透過性を有する容器本体と蓋とからなり、蓋は、その上面に容器内の気体を通気孔を通じて容器外へのみ一方的に流出するように構成された耐熱、耐冷性のゴム又はゴム状弾性体によって傘状に形成された逆止弁と、その周縁に連設されたパッキンケースとを備え、該パッキンケース内には耐熱、耐冷性のゴム又はゴム状弾性体からなるパッキンを装着してなり、前記逆止弁はその弁軸を蓋に設けられた開口に表から挿入しその周縁部が蓋面に均一に密着し且つ前記通気孔に覆いかぶさって閉塞する如く止め輪にて下方に軽度の引っ張りを与えて止着し、蓋及び容器本体が前記パッキンを介して全周に亘り気密接する如く且つ止め具により係合して密閉するように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
食品素材、調理水を入れた真空密閉容器を電子レンジの強出力で加熱し水を加熱、沸騰させると、水は蒸発するとその体積は大気圧で千倍を越えることを利用し、この間に逆止弁下の通気孔より膨張した空気を排出脱気させて、加熱を停止して冷却すると容器は密閉され自動的に高真空となり容器内の空気濃度は極めて希薄となる。次いで電子レンジの弱出力によって60〜70℃の温度帯で低温調理することにより調理水は低温沸騰し撹拌されて肉類は柔らかく仕上がり、とくにゼラチン質を多く含むような部分の肉は本発明の真空調理法によってよい結果が得られる。
また、根菜類や黒豆などの豆類も味がよく染み込んで柔らかく仕上げることができる。
さらに、60〜70℃の温度帯の真空密閉状態で調理する際に、電子レンジの弱出力によって『所要時間加熱したのち停止し、所要時間ファン冷却後停止する』を1サイクルとし、調理素材、レシピの種類に対応してサイクル数を予め設定しておき調理に際してサイクル数を指定することによって本発明の調理法よって電子レンジを駆動して食品を真空調理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の電子レンジによる食品の真空調理法とそれに用いる真空密閉容器の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は請求項2の真空密閉容器10の全体構成を示す断面図であり、図2はこれの平面図を示したものである。
【0013】
図示の真空容器10は、耐熱、耐冷にしてマイクロ波透過性を有するポリエーテル樹脂、ポリサルホン樹脂のような合成樹脂製の容器本体12と被着される蓋14とからなり、蓋14は、その上面に容器内の気体を通気孔16を通じて容器外へのみ一方的に流出させ、外気の流入を阻止するように構成された耐熱、耐冷性のゴムまたはゴム状弾性体で傘状に形成された逆止弁18と、その周縁に連設されたパッキンケース30とを備え、パッキンケース30内には耐熱、耐冷性のゴムまたはゴム状弾性体からなるパッキン32を装着してなり、逆止弁の弁軸2は開口24に表から挿入し、傘状弁体20の周縁部20aが蓋14の面に均等に密着する如く弁軸22に止め輪28にて下方に軽度の引張りを与えて止着し且つ通気孔16、16…のすべてに覆いかぶさって閉塞する如くし、蓋14と、容器本体12の上周縁34とがパッキン32を介して気密に接し且つ脱着可能な止め具38a,38bによって係合して密閉するように構成した容器である。
【0014】
請求項1は、請求項2の真空容器の容器本体12に一定量の食品、調理水を入れて、蓋14をし止め具38a、38bを係合して密閉した後、電子レンジ強出力で加熱し90℃〜100℃まで容器内温度を上げて沸騰させると水蒸気の発生と空気の膨張により容器内の圧力が上昇して内部の気体が蓋14と容器本体12の及び逆止弁18下の通気孔16、16…を通じて排出、脱気され、この間に食品は殺菌され、加熱を停止し冷却すれば容器は自動的に密閉され容器内は真空となり60℃まで下がったところで電子レンジの弱出力によって『所要時間加熱したのち停止し、所要時間ファン冷却後停止する』を1サイクルとし、調理素材、レシピの種類に対応してサイクル数を予め設定して調理に際してサイクル数を指定して食品を低温調理する電子レンジによる食品の真空調理法である。
【0015】
請求項2の真空密閉容器の容器本体12に一定量の食品、調理水を入れて、蓋14をし止め具38a、38bを係合して密閉した後電子レンジ強出力で加熱し90℃〜100℃まで容器内温度を上げて沸騰させると水蒸気の発生と空気の膨張により容器内の圧力が上昇して内部の気体が蓋14と容器本体12の間及び逆止弁18下の通気孔16、16…を通じて排出、脱気され、この間に食品は殺菌され加熱を停止し冷却することによって容器は自動的に密閉されて容器内は真空となり60℃まで下がったところで弱出力にて加熱し60℃〜70℃に維持して加熱を続ければ真空状態で調理することができ、所要時間加熱した後、これを放冷し冷蔵すれば容器内はさらに高真空となって食品への味の浸透と旨みの熟成を計ることができる。
【0016】
[実施例1]
この発明によつて構成された真空密閉容器を用いて角煮用の豚肉と調理水を入れ蓋をし止め具をかけて容器を密閉して次の表1,表2のごとく電子レンジで調理した。
【0017】
【表1】

【表2】

評価 ◎ 肉…柔らかい
赤身・脂身ともに味のしみ込みともに最良
【0018】
[実施例2]
この発明によって構成された真空密閉容器を開いて筑前煮用の豚もも肉や調理水などを入れ蓋をし止め具をかけて容器を密閉して次の表3,表4のごとく電子レンジで調理した。
【0019】
【表3】

【表4】

1日冷蔵( 5℃)再加熱 700w8分すればさらに美味しい
評価 ◎ 美味しい。電子レンジ向き 最高のレシピ
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の真空容器の断面図である。
【図2】同じく真空容器の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 真空容器
12 容器本体
14 蓋
16、16…通気孔
18 逆止弁
24 開口
28 止め輪
30 パッキンケース
32 パッキン
38a、38b 止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱、耐冷にしてマイクロ波透過性を有する真空密閉容器を用いて一定量の食品及び調理水を電子レンジの強出力でマイクロ波加熱して沸騰させ発生する水蒸気により容器内の膨張した空気を排出させて所要時間加熱調理をしたのち停止して内蔵ファンにより冷却して真空密閉容器内を真空にした後、容器内の真空を維持して調理するために、電子レンジの弱出力によって『所要時間加熱したのち停止し、所要時間フアン冷却後停止する』を1サイクルとし、調理素材、レシピの種類に対応してサイクル数を予め設定し調理に際しサイクル数を指定して低温調理することを特徴とする電子レンジによる食品の真空調理法。
【請求項2】
耐熱、耐冷にしてマイクロ波透過性を有する容器本体と蓋とからなり、蓋は、その上面に、容器内の気体を通気孔を通じて容器外へのみ一方的に流出するように構成された耐熱、耐冷性のゴム又はゴム状弾性体によって傘状に形成された逆止弁と、その周縁に連設されたパッキンケ−スを備え、パッキンケース内には耐熱、耐冷性のゴムまたはゴム状弾性体からなるパッキンを装着してなり、前記逆止弁は、その弁軸を蓋に設けられた開口に表から挿入しその周縁部が蓋面に均一に密着し且つ前記通気孔に覆いかぶさって閉塞する如く止め輪にて下方に軽度の引っ張りを与えて止着し、蓋及び容器本体がパッキンを介して全周に亘り気密に接する如く且つ止め具により係合して密閉するように構成した容器であり食品及び調理水を入れ蓋をし止め具により係合して電子レンジで加熱、沸騰させ停止し冷却すれば容器は自動的に密閉されることを特徴とする請求項1の電子レンジによる食品の真空調理法に用いる真空密閉容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−314265(P2006−314265A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140639(P2005−140639)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000167059)光金属工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】