説明

電子写真感光体、中間転写体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】 表面の潤滑性やクリーニング性に優れた電子写真感光体および中間転写体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該中間転写体を有する電子写真装置を提供する。
【解決手段】 電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層が、マトリックス成分、および、マトリックス成分に結着されておらず、かつ、該マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、中間転写体、ならびに、中間転写体を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面には、転写材(紙など)に転写しきれなかったトナー(転写残トナー)などが不要物として残留しやすい。これらの不要物は、次の画像形成プロセスで画像品位の低下を招くため、その都度除去することが好ましい。
【0003】
電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の転写残トナーを除去する方法としては、例えば、ブラシ形状やブレード形状のクリーニング部材を電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に当接させて不要物を掻き取る方法や、不要物を吸引除去する方法が知られている。これらの中でも、ブレード形状のクリーニング部材、いわゆるクリーニングブレードを用いる方法は、簡単な構成で効率的にクリーニングを行うことができるため、広く用いられている方法である。クリーニングブレードの材質としては、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面との密着性を確保しやすいゴム(特にウレタンゴム)が用いられることが多い。
【0004】
一方で、ゴムは、摩擦係数が高い材料でもある。このことは、異音の発生(ブレード鳴き)や、クリーニングブレードの振動によるトナーの掻き取り能力の低下(トナー摺り抜け)や、クリーニングブレードが捲れる現象(ブレード捲れ)の原因になる。
【0005】
特許文献1には、クリーニングブレードと電子写真感光体との間の摩擦を下げる技術として、クリーニングブレードにフッ素系またはシリコーン系の固体潤滑成分を塗布する方法が開示されている。
【0006】
特許文献9には、クリーニングブレードと中間転写体との間の摩擦を下げる技術として、クリーニングブレードに固体潤滑成分を塗布する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2および3には、フッ素樹脂成分を電子写真感光体の表面層に含有させる方法が開示されており、特許文献4には、シリコーン樹脂成分を電子写真感光体の表面層に含有させる方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献5および6には、電子写真感光体の表面に凹凸を設け、潤滑性やクリーニング性を向上させる方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献7および8には、電子写真感光体の表面層に無機粒子を含有させて摩擦係数を低下させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−220962号公報
【特許文献2】特開2005−043623号公報
【特許文献3】特開2008−090214号公報
【特許文献4】特開2007−072164号公報
【特許文献5】特開2004−302452号公報
【特許文献6】特開2010−237657号公報
【特許文献7】特開平8−262752号公報
【特許文献8】特開2002−116571号公報
【特許文献9】特開2008−276103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜9に開示されている従来の技術には、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の潤滑性やクリーニング性にいまだ改善の余地がある。
【0012】
具体的には、特許文献1および9に開示されている技術では、画像形成が繰り返し行われると、固体潤滑成分がクリーニングブレードから剥がれ落ちるため、クリーニングブレードと電子写真感光体あるいは中間転写体との間の摩擦を下げる効果を長期間維持することが困難である。
【0013】
また、特許文献2および3に開示されている技術では、電子写真感光体の帯電プロセスによってフッ素樹脂成分が変質しやすく、画像形成が繰り返し行われると、クリーニングブレードと電子写真感光体との間の摩擦を下げる効果が消失しやすい。
【0014】
また、特許文献4に開示されている技術では、シリコーン樹脂成分は電子写真感光体の表面層において表面側に偏在しやすいため、画像形成が繰り返し行われると、シリコーン樹脂成分が削り取られ、クリーニングブレードと電子写真感光体との間の摩擦を下げる効果が消失しやすい。
【0015】
また、特許文献5および6に開示されている技術では、画像形成が繰り返し行われると、電子写真感光体の表面の凹凸が削り取られ、クリーニングブレードと電子写真感光体との間の摩擦を下げる効果が消失しやすい。
【0016】
また、特許文献7および8に開示されている技術では、クリーニングブレードに用いられるゴムに比べて硬度が高い無機粒子が電子写真感光体の表面層中のマトリックス成分に結着されて固定されているため、画像形成が繰り返し行われると、クリーニングブレードのエッジが欠けやすく、欠けたところにおいてトナーが摺り抜けやすい。
【0017】
本発明の目的は、表面の潤滑性(低摩擦性)やクリーニング性に優れた電子写真感光体および中間転写体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該中間転写体を有する電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
マトリックス成分、および、
該マトリックス成分に結着されておらず、かつ、該マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子
を含有する表面層を有する電子写真感光体である。
【0019】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。
【0020】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段と、画像露光手段と、現像手段と、転写手段と、該電子写真感光体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを有する電子写真装置である。
【0021】
また、本発明は、
マトリックス成分、および、
該マトリックス成分に結着されておらず、かつ、該マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子
を含有する表面層を有する中間転写体である。
【0022】
また、本発明は、電子写真感光体と、画像露光手段と、現像手段と、一次転写手段と、上記中間転写体と、二次転写手段と、該中間転写体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを有する電子写真装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、表面の潤滑性やクリーニング性に優れた電子写真感光体および中間転写体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該中間転写体を有する電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層にマトリックス成分および被包球状粒子が含有されている状態の例を示した図である。
【図2】電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層に含有されている被包球状粒子を拡大して示した図である。
【図3】電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層にマトリックス成分および被包球状粒子が含有されている状態の例を示した図である。
【図4】電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層に含有されている被包球状粒子を拡大して示した図である。
【図5】電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の例を示した図である。
【図6】フッ化水素酸処理前の電子写真感光体の表面の顕微鏡像である。
【図7】フッ化水素酸処理後の電子写真感光体の表面の顕微鏡像である。
【図8】中間転写体を有する電子写真装置の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の潤滑性を高める手法として、コロの原理の利用が有効であるということを見出した。具体的には、球状粒子を電子写真感光体あるいは中間転写体とクリーニングブレードとの当接部位(以下単に「当接部位」ともいう。)に介在させることで、クリーニングブレードの安定した摺擦状態を実現できることが確認できた。ただし、単に球状粒子を当接部位に介在させるだけでは、画像形成が繰り返し行われることによって球状粒子が散逸してしまい、潤滑効果が十分に持続しない。
【0026】
当接部位からの球状粒子の散逸を抑制しながら、球状粒子が当接部位において転がる状態を持続させる構成として、本発明者らは、画像形成の際に電子写真感光体あるいは中間転写体の表面が図1に示すような状態になる構成が有効であることを見出した。図1では、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層のマトリックス成分中の細孔に球状粒子が包まれており、かつ、球状粒子が表面層のマトリックス成分に結着されていない。ここで、細孔に球状粒子が包まれているとは、細孔に球状粒子が転がり可能(回転可能)に保持されていることを意味する。また、このような状態の球状粒子を、本発明においては「被包球状粒子」と呼ぶ。被包球状粒子は、転がり可能(回転可能)に保持されている球状粒子である。そして、図1では、被包球状粒子(の一部)が電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出している。
【0027】
このような状態であれば、コロの原理(電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出している被包球状粒子の転がり運動)により、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の潤滑性が確保される。さらに、被包球状粒子を包んでいる細孔の開孔径が被包球状粒子の直径(Dp)以下であれば、被包球状粒子の散逸は抑制され、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の潤滑性が持続する。
【0028】
ここで、画像形成の繰り返しにより、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層が摩耗していくと、いずれ細孔の開孔径が被包球状粒子の直径(Dp)を超え、被包球状粒子が電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層から脱け出しやすくなり、被包球状粒子が散逸しやすくなる。
【0029】
画像形成の繰り返しによる電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層の摩耗を考慮した場合、図3に示すように、被包球状粒子は、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出しているものだけでなく、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出せず、表面層の内部に含有されているものも存在していることが好ましい。このような状態であれば、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層の摩耗が進んでも、表面層中に被包球状粒子が存在する限り、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面の潤滑性が持続する。
【0030】
一方、画像形成による電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層の摩耗によって、表面層の内部に含有されている被包球状粒子が電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出するようにすれば、画像形成当初は電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に被包球状粒子が表出していなくてもよい。
【0031】
図2および4は、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層に含有されている被包球状粒子を拡大して示した図である。
【0032】
図1〜4中、aは被包球状粒子であり、bはマトリックス成分であり、Dpは被包球状粒子の直径を示し、Dmは被包球状粒子を包んでいるマトリックス成分中の細孔の直径を示す。
【0033】
また、(Dm−Dp)/Dpの値を間隙率と定義したとき、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層における、間隙率が0.05〜0.65の範囲にある被包球状粒子と細孔の組の割合が、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層中の被包球状粒子と細孔の組の総数に対して40〜100%であることが好ましい。間隙率が小さすぎると、被包球状粒子が、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に表出しても、滑らかな転がり運動をしにくくなる。間隙率が大きすぎると、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層がわずかに摩耗しただけで、細孔の開孔径が被包球状粒子の直径(Dp)を超え、被包球状粒子が電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層から脱け出しやすくなる。
【0034】
また、被包球状粒子の直径(Dp)は、0.3〜10μmの範囲であることが好ましい。被包球状粒子の直径が小さすぎると、被包球状粒子の、図1のような状態で電子写真感光体あるいは中間転写体の表面から飛び出している部分の高さが低くなる。すると、当接しているクリーニングブレードがその弾性変形によって電子写真感光体あるいは中間転写体の表面に密着した状態に近づくため、十分な潤滑効果が得られない場合がある。被包球状粒子の直径が大きすぎると、被包球状粒子の電子写真感光体あるいは中間転写体の表面から飛び出している部分の高さが高くなり、トナーの摺り抜けが生じやすくなる。したがって、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層における、直径が0.3〜10μmの範囲にある被包球状粒子の割合は、電子写真感光体あるいは中間転写体の表面層中の被包球状粒子の総数に対して50〜100%であることが好ましい。
【0035】
また、被包球状粒子の外面とマトリックス成分中の細孔の内面との間隙には、間隙へのトナーの外添剤、紙粉、電子写真感光体あるいは中間転写体の削れ粉などの侵入を抑制するために、液体が充填されていることが好ましい。被包球状粒子の外面とマトリックス成分中の細孔の内面との間隙に外添剤、紙粉、削れ粉など侵入すると、被包球状粒子が滑らかな転がり運動をしにくくなる場合がある。
【0036】
被包球状粒子の外面とマトリックス成分中の細孔の内面との間隙に充填する液体の粘度は100〜10000csであることが好ましい。液体の粘度が高すぎると、粘性抵抗により、被包球状粒子が滑らかな転がり運動をしにくくなる場合がある。液体の粘度が低すぎると、間隙から液体がすぐに流出しやすくなる。
【0037】
被包球状粒子の外面とマトリックス成分中の細孔の内面との間隙に充填する液体としては、水溶性が乏しく、絶縁性であり、無着色であり、pHが中性に近い液体であることが好ましい。具体的には、フッ素系オイル、シリコーンオイル、ポリαオレフィン系オイル、ポリオールエステル、フェニルエーテル、流動パラフィン、ポリブテン、アルキル芳香族化合物が好ましく、これらの中でも、シリコーンオイル、フッ素系オイルがより好ましい。
【0038】
また、被包球状粒子としては、絶縁性であり、無着色であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、窒化アルミニウムなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂などの有機粒子や、有機無機ハイブリッド粒子などが挙げられる。これらの中でも、高い圧力や放電による変形・破壊が起きにくい無機粒子や有機無機ハイブリッド粒子が好ましい。有機無機ハイブリッド粒子としては、ポリメチルシルセスキオキサン粒子が好ましい。また、無機粒子としては、シリカ粒子が好ましい。
【0039】
被包球状粒子は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
被包球状粒子には、表面層形成時の分散性や、マトリックスとの間隙を調整する目的で表面修飾を施すことができる。表面修飾の具体的な方法としては、被包球状粒子の表面の水酸基やアミノ基などの官能基を利用し、カップリング剤やシロキサン化合物を結合させる方法や、重合性モノマーを用いて、被包球状粒子の表面から分子鎖を伸ばす方法などを用いることができる。カップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤、チタネートカップリング剤などが挙げられる。
【0041】
マトリックス成分に結着されていない状態で被包球状粒子を表面層に含有させる方法としては、例えば、被包球状粒子とマトリックス成分を含有する表面層用塗布液を用いて塗膜を形成した後に、マトリックス成分よりも被包球状粒子の溶解性が高い液体を塗膜に対して作用させることで、被包球状粒子の直径を小さくする方法が挙げられる。具体的には、被包球状粒子として、酸化チタン(チタニア)粒子、酸化ケイ素(シリカ)粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、ポリメチルシルセスキオキサン粒子などのシロキサン結合を含む有機無機ハイブリッド粒子などを用いた場合、これらはフッ化水素酸や水酸化ナトリウム水溶液などに溶解するため、フッ化水素酸や水酸化ナトリウム水溶液などの溶剤に対して耐性がある材料をマトリックス成分として選ぶことで、マトリックス成分に非結着の被包球状粒子を表面層に含有させることができる。
【0042】
また、マトリックス成分と被包球状粒子とを含有する表面層用塗布液において、被包球状粒子が揮発性の低い溶剤で膨潤された状態であれば、表面層用塗布液の塗膜を形成し、マトリックス成分を溶解させていた溶剤を揮発させた後、被包球状成分を膨潤させていた溶剤を揮発させることで、被包球状粒子の直径を小さくすることができる。また、表面層用塗布液の塗膜の乾燥を高温で行う場合は、マトリックス成分と被包球状粒子の冷却時の体積収縮の差を利用することによって、マトリックス成分に非結着の被包球状粒子を表面層に含有させることができる。
【0043】
また、マトリックス成分と被包球状粒子の表面エネルギーが大きく異なる場合、第三物質として、被包球状粒子に対する親和性が高い低分子量の化合物を添加しておくと、第三物質が、被包球状粒子の周りに凝集し、膜構造をとる場合がある。このような状態になった第三物質の膜に対して、第三物質が選択的の溶出しやすい溶剤を作用させ、第三物質の膜を溶出させることで、マトリックス成分に非結着の被包球状粒子を表面層に含有させることができる。具体的には、極性の低い架橋ポリスチレン粒子をポリエステルなどの比較的極性の高い樹脂に分散させる際に、アルキル基を有するフェニル基とエチレンオリゴマーユニットを持つ低分子の界面活性剤を混合しておき、塗膜形成後にこの表面を界面活性剤だけが溶解するアルコール溶剤に浸漬させることで、架橋ポリスチレン粒子の周囲に間隙を有させることができる。
【0044】
また、被包球状粒子として無機酸化物粒子を選択し、無機酸化物粒子の表面の水酸基に対してSi−H結合を有するシリコーン成分を反応させることで、シリコーンで修飾した無機粒子を得ることができる。そして、この粒子とマトリックス成分を含有する表面層用塗布液にシリコーンオイルを別途加えることで、マトリックス成分に非結着の被包球状粒子を表面層に含有させることができる。
【0045】
次に、電子写真感光体の層構成について説明する。
【0046】
電子写真感光体は、一般的に、支持体および該支持体上に形成された感光層を有する。
【0047】
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質とを同一の層に含有させてなる単層型の感光層であってもよいし、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型の感光層であってもよい。また、積層型の感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層してなる順層型の感光層であってもよいし、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層してなる逆層型の感光層であってもよい。
【0048】
また、感光層上に保護層を設けてもよい。保護層は、導電性金属酸化物粒子などの導電性粒子を含有してもよい。
【0049】
電子写真感光体の表面層とは、電子写真感光体の最表面側に位置する層(支持体から最も離隔した層、トナーを担持する面を有する層)を意味する。例えば、保護層を設ける場合、電子写真感光体の表面層は保護層である。保護層を設けない場合であって感光層が単層型の感光層である場合、電子写真感光体の表面層は単層型の感光層である。保護層を設けない場合であって感光層が順層型の感光層である場合、電子写真感光体の表面層は電荷輸送層である。保護層を設けない場合であって感光層が逆層型の感光層である場合、電子写真感光体の表面層は電荷発生層である。
【0050】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましい。具体的には、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄などの金属または合金製の支持体や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金などの金属や、酸化インジウム、酸化スズなどの導電性材料の薄膜を形成してなるものや、カーボンブラックや導電性フィラーを樹脂中に分散し、導電性を付与してなるものなどが挙げられる。
【0051】
支持体の表面には、電気的特性や密着性の改善のために、陽極酸化などの電気化学的な処理を施すことができる。また、支持体の表面を、アルカリリン酸塩やリン酸やタンニン酸を主成分とする酸性水溶液に金属塩の化合物やフッ素化合物の金属塩を溶解してなる溶液で化学処理を施すこともできる。
【0052】
また、レーザー光などの単一波長光を画像露光光として用いる場合、干渉縞を抑制するため、支持体の表面を粗面化することが好ましい。具体的には、支持体の表面を、ホーニング、ブラスト、切削、電界研磨などの処理を施したり、支持体の表面に導電性金属酸化物および結着樹脂からなる導電性皮膜を設けたりすることによって、支持体の表面を粗面化することができる。
【0053】
ホーニング処理としては、乾式および湿式での処理方法がある。湿式ホーニング処理は、水などの液体に粉末状の研磨剤を懸濁させ、高速度で支持体の表面に吹き付けて、支持体の表面を粗面化する方法である。支持体の表面粗さは、吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重、懸濁温度などにより制御することができる。乾式ホーニング処理は、研磨剤をエアーにより、高速度で支持体の表面に吹き付けて、支持体の表面を粗面化する方法であり、湿式ホーニング処理と同じようにして、支持体の表面粗さを制御することができる。ホーニング処理に用いられる研磨剤としては、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、鉄、ガラスなどの粒子が挙げられる。
【0054】
支持体と感光層または後述の下引き層との間には、レーザー光などの単一波長光による干渉縞の抑制や、支持体の表面の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。
【0055】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子などの導電性粒子を結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られる導電層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥/硬化させることによって形成することができる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子などが挙げられる。また、導電性粒子として、硫酸バリウム粒子を用いることもできる。また、導電性粒子は、芯材粒子に被覆層を設けてなる複合粒子であってもよい。
【0056】
導電性粒子の体積抵抗率は、0.1〜1000Ω・cmであることが好ましく、1〜1000Ω・cmであることがより好ましい。この体積抵抗率は、三菱油化(株)製の抵抗測定装置ロレスタAPを用いて測定して求めた値である。測定サンプルは、導電性粒子を49MPaの圧力で固めてコイン状としたものである。
【0057】
導電性粒子の平均粒径は、0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.07〜0.7μmであることがより好ましい。この平均粒径は、遠心沈降法により測定した値である。
【0058】
導電層中の導電性粒子の含有量は、導電層全質量に対して1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましい。
【0059】
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルなどが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、混合または共重合体として2種以上用いてもよい。これらの中でも、支持体に対する接着性が良好であるとともに、導電性粒子の分散性が高く、導電層形成後の耐溶剤性が良好である点で、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミドが好ましい。
【0060】
導電層の膜厚は、0.1〜30μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。
【0061】
導電層の体積抵抗率は、1013Ω・cm以下であることが好ましく、10〜1012Ω・cmであることがより好ましい。この体積抵抗率は、測定対象の導電層と同じ材料によってアルミニウム板上に膜を形成し、この膜上に金の薄膜を形成して、アルミニウム板と金の薄膜との間を流れる電流値をpAメーターで測定して求めた値である。
【0062】
導電層には、導電層の表面性を高めるために、レベリング剤を添加してもよい。
【0063】
支持体または導電層と感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、バリア機能や接着機能を有する下引き層(中間層とも呼ばれる。)を設けてもよい。下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために設けられる。
【0064】
下引き層は、樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0065】
下引き層に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ユリア樹脂などが挙げられる。また、酸化アルミニウムなどを用いて下引き層を形成することもできる。
【0066】
下引き層の膜厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、0.3〜3μmであることがより好ましい。
【0067】
支持体、導電層または下引き層の上には感光層が形成される。
【0068】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0069】
電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
【0070】
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、液衝突型高速分散機などを用いる方法が挙げられる。
【0071】
電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、シアニン、トリスアゾ、ビスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニンなどの染料または顔料が挙げられる。これらの中でも、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料としては、例えば、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンなどが挙げられる。
【0072】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルメタクリレート、ポリビニルアクリレート、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂が好ましい。これらは、単独、混合または共重合体として、1種または2種以上用いることができる。
【0073】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
【0074】
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがより好ましく、0.05〜0.3μmであることがより好ましい。
【0075】
電荷発生層には、増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、電子搬送性剤などを添加してもよい。
【0076】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送層が表面層である場合、上述の被包球状粒子などが電荷輸送層用塗布液に添加される。
【0077】
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物およびトリアリールメタン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0078】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリアリレート、ポリカーボネートが好ましい。
【0079】
電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
【0080】
電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、7〜30μmであることがより好ましい。
【0081】
電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フッ素原子含有樹脂粒子、シリコーン化合物などの添加剤を添加してもよい。
【0082】
また、感光層が単層型の感光層である場合は、上述の電荷発生物質や電荷輸送物質を上述の結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られる感光層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0083】
単層型の感光層の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。
【0084】
本発明において、電子写真感光体の表面層のマトリックス成分とは、表面層の被包球状粒子以外の成分であって、被包球状粒子を包む細孔を形作っている成分である。例えば、電子写真感光体の表面層が電荷輸送層である場合、上述の結着樹脂や電荷輸送物質がマトリックス成分を構成する。電荷輸送層に被包球状粒子以外の添加剤を添加した場合、それらもマトリックス成分を構成する。
【0085】
電子写真感光体により高い耐久性を付与する目的で、電子写真感光体の表面層の樹脂(結着樹脂)として、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ゾルゲル法によるシロキサン樹脂、熱硬化性ポリイミド、アルキッド樹脂などが挙げられる。また、不飽和結合を有するアクリル化合物(アクリル樹脂のモノマー)、メタクリル化合物(メタクリル樹脂のモノマー)、アリル化合物、ビニル化合物、環状部分構造を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物を紫外線や電子線などの放射線を利用して架橋させて得られる樹脂を用いることもできる。また、表面層中における電荷の滞留を抑制するため、近年、電荷輸送性構造とアクリロイルオキシ基やヒドロキシ基などの重合性官能基を併有する化合物を熱、紫外線、電子線などを用いて架橋させてなる樹脂を表面層に用いる方法が提案されている。本発明においても、このような架橋性材料を電子写真感光体の表面層のマトリックス成分の樹脂(結着樹脂)としても用いることもできる。
【0086】
表面層のマトリックス成分に架橋性材料を用いる場合には、架橋反応として脱水縮合反応をとる場合、架橋時に材料の体積収縮が進むため、上記間隙率((Dm−Dp)/Dpの値)を0.05〜0.65の範囲に収めにくくなる。したがって、表面層のマトリックス成分に架橋性材料を用いる場合、その架橋反応は、重付加反応や不飽和重合反応であることが好ましい。
【0087】
電子写真感光体の表面層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フッ素原子含有樹脂粒子、シリコーン化合物などの添加剤を添加してもよい。
【0088】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。また、塗布液の粘度は、塗工性の観点から、5〜500mPa・sであることが好ましい。塗布によって得られた塗膜の処理としては、熱風乾燥処理が一般的であるが、層の強度を高めるため、紫外線、電子線、赤外線などを照射することもできる。
【0089】
次に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置について説明する。
【0090】
本発明のプロセスカートリッジおよび電子写真装置は、本発明の電子写真感光体と、その表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを有する。電子写真感光体の表面の転写残トナーは、クリーニング手段のクリーニングブレードにより除去される。電子写真感光体とクリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧は、300〜1200mN/cmとすることが一般的である。このような線圧の範囲であっても、本発明の表面の潤滑性(低摩擦性)に優れた電子写真感光体を用いれば、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0091】
図5に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0092】
図5において、本発明の円筒状の電子写真感光体111は、軸112を中心に図中の矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0093】
回転駆動される電子写真感光体111の表面(周面)は、帯電手段113により正または負の電位に帯電され、次いで、露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)114を受ける。こうして電子写真感光体111の表面には、目的の画像に対応した静電潜像が形成されていく。帯電手段としては、例えば、コロトロン、スコロトロンなどを用いたコロナ帯電手段や、ローラー、ブラシ、フィルムなどを用いた接触帯電手段などが挙げられる。また、帯電手段に印加する電圧は、直流電圧のみであってもよいし、交流電圧を重畳した直流電圧であってもよい。また、露光手段としては、例えば、スリット露光、レーザービーム走査露光などが挙げられる。
【0094】
電子写真感光体111の表面に形成された静電潜像は、現像手段115のトナーにより現像されてトナー画像となる。現像方式としては、磁性または非磁性の一成分または二成分トナーを接触または非接触させて現像する方式が挙げられる。トナーとしては、例えば、懸濁重合、乳化重合などによる重合トナーや、機械式粉砕法や球形化処理などによって球形化処理されたトナーなどが挙げられる。トナーの重量平均粒径は4〜7μmであることが好ましく、トナーの平均円形度は0.95〜0.99であることが好ましい。
【0095】
電子写真感光体111の表面に形成されたトナー画像は、転写手段116によって、転写材(紙など)117に順次転写されていく。転写材117は、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体111と転写手段116との間(当接部)に電子写真感光体111の回転と同期して取り出されて転写部に給送される。
【0096】
トナー画像が転写された転写材117は、電子写真感光体111の表面から分離されて定着手段118へ導入されて像定着を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
【0097】
トナー画像転写後の電子写真感光体111の表面は、クリーニング手段であるクリーニングブレード119によって転写残トナーの除去を受けた後、前露光手段(不図示)からの前露光光120により除電処理され、繰り返し画像形成に使用される。
【0098】
上述の電子写真感光体111、帯電手段113、現像手段115、転写手段116、クリーニング手段であるクリーニングブレード119などから選択される構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図5では、電子写真感光体111と、帯電手段113、現像手段115およびクリーニング手段であるクリーニングブレード119とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段122を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ121としている。
【0099】
次に、中間転写体の構成について、基層および表面層を有するベルト状(ベルト状の中間転写体を、以下「中間転写ベルト」ともいう。)のものを例に挙げて説明する。
【0100】
基層は、樹脂および導電剤を用いて形成することができる。
【0101】
基層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルなどの硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、単独、混合または共重合体として、1種または2種以上用いることができる。
【0102】
基層に用いられる導電剤としては、例えば、カーボンブラック、アンチモンドープの酸化スズ、酸化チタン、導電性高分子など電子伝導性物質や、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウムなどのイオン電導性物質などが挙げられる。カチオン性またはアニオン性のイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、オキシアルキレン繰り返しユニットを持つオリゴマー、ポリマー化合物なども導電剤として用いることができる。
【0103】
基層の体積抵抗率は、1.0×10〜1.0×1012Ω・cmであることが好ましい。また、基層の表面抵抗率は、1.0×10〜1.0×1014Ω/□であることが好ましい。基層の体積抵抗率を上記範囲にすることによって、連続駆動時のチャージアップや転写バイアス不足による画像不良を抑制することができる。また、基層の表面抵抗率を上記範囲にすることによって、転写材が中間転写体(中間転写ベルト)から離れる際の剥離放電やトナー飛散による画像不良を抑制することができる。
【0104】
表面層の形成方法については、上述のとおり、マトリックス成分と被包球状粒子とを含有する表面層用塗布液を用いて形成することができる。
【0105】
中間転写体の表面層のマトリックス成分とは、電子写真感光体の場合と同じく、表面層の被包球状粒子以外の成分であって、被包球状粒子を包む細孔を形作っている成分である。
【0106】
また、基層の好適な上記特性(体積抵抗率、表面抵抗率)は、基層上に表面層を形成して得られる中間転写体(中間転写ベルト)全体に対しても同様のことがいえる。このため、表面層にも、基層と同様な導電剤が含有されていることが好ましい。
【0107】
中間転写体の表面層とは、中間転写体の最表面側に位置する層(トナーを担持する面を有する層)を意味する。例えば、2層以上からなる中間転写体の場合、2層以上の層のうち最も表面側に位置する層が、中間転写体の表面層である。1層からなる中間転写体の場合、当該1層が、中間転写体の表面層である。
【0108】
図8に、本発明の中間転写体を有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0109】
図8において、本発明のベルト状の中間転写体(中間転写ベルト)7は、駆動ローラー71、テンションローラー72、従動ローラー73に張架されており、図中の矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0110】
また、中間転写体7の平面になっている部分に沿って、中間転写体7の表面の移動方向に順に、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色成分の画像形成部である画像形成ユニットPy、Pm、Pc、Pkが配設されている。各画像形成ユニットの基本的な構成は同一であるので、以下、画像形成ユニットの詳細については、イエロー成分用の画像形成ユニットPyを例に挙げて説明する。
【0111】
イエロー画像形成ユニットPyは、円筒状の電子写真感光体1Yを有する。
【0112】
また、イエロー画像形成ユニットPyは、帯電手段2Yを備えている。電子写真感光体1Yの表面(周面)は、帯電手段2Yにより正または負の電位に帯電される。電子写真感光体1Yの上方には、露光手段3Yが配設されている。露光手段3Yは、帯電された電子写真感光体1Yの表面に、イエロー成分の静電潜像を形成する。帯電手段としては、例えば、コロトロン、スコロトロンなどを用いたコロナ帯電手段や、ローラー、ブラシ、フィルムなどを用いた接触帯電手段などが挙げられる。また、帯電手段に印加する電圧は、直流電圧のみであってもよいし、交流電圧を重畳した直流電圧であってもよい。また、露光手段としては、例えば、スリット露光、レーザービーム走査露光などが挙げられる。
【0113】
電子写真感光体1Yの表面に形成された静電潜像は、現像手段4Yのイエロートナーにより現像されてイエロートナー像となる。なお、現像手段4Yは、現像剤担持体としての現像ローラー4Yaおよび現像剤量規制部材としての規制ブレード4Ybを備えており、イエロートナーを収容している。イエロートナーが供給された現像ローラー4Yaは、現像部において電子写真感光体1Yと軽圧接されており、電子写真感光体1Yと順方向に速度差を持って回転される。現像ローラー4Yaによって現像部に搬送されたイエロートナーは、現像ローラー4Yaに現像バイアスが印加されることで、電子写真感光体1Yに形成された静電潜像に付着する。
【0114】
一次転写部Tyに到達したイエロートナー像は、一次転写手段(一次転写ローラー)5Yによって、中間転写体7の表面に転写(一次転写)される。
【0115】
以上の動作は、中間転写体7の回転に伴って、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各画像形成ユニットPm、Pc、Pkにおいて行われ、中間転写体7の表面には、イエロートナー像、マゼンダトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が重ね合わされる。4色のトナーが重ね合わされたトナー画像は、二次転写部T’において、二次転写手段(二次転写ローラー)8により、転写材(紙など)Sに転写(二次転写)される。転写材Sは、転写材収納部であるカセット12に収納されており、ピックアップローラー13によって機内に分離供給され、搬送ローラー対14およびレジストローラー対15により、中間転写体7の回転と同期して二次転写部T’に給送される。
【0116】
トナー画像が転写された転写材Sは、中間転写体7の表面から分離されて定着手段9へ導入されて像定着を受ける。定着手段9は、加熱手段を備えた定着ローラー91と加圧ローラー92とを有し、転写材S上の未定着トナー画像を加熱および加圧することにより、転写材Sにトナー画像を定着する。転写材Sは、搬送ローラー対16および排出ローラー対17により、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
【0117】
また、中間転写体7のクリーニング手段としてのクリーニングブレード11が、中間転写体7の回転方向の二次転写部T’の下流に配設されており、転写材Sに転写(二次転写)されずに中間転写体7の表面に残った転写残トナー(二次転写残トナー)を除去する。
【0118】
なお、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとして、本発明の電子写真感光体を用いることもできる。
【実施例】
【0119】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の「部」は質量部を意味する。
【0120】
(実施例1)
直径30mm、長さ260mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。
【0121】
次に、10質量%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メトキシプロパノール30部、メタノール30部、および、シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、重量平均分子量:3000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、2時間分散処理することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を20分間140℃で硬化させることによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0122】
次に、N−メトキシメチル化6ナイロン5部をメタノール95部に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を20分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
【0123】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、下記構造式(2)で示される化合物0.1部、
【0124】
【化1】

【0125】
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部、および、シクロヘキサノン250部を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、1時間分散処理し、これに酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
【0126】
次に、下記構造式(3)で示される化合物(電荷輸送物質)40部、
【0127】
【化2】

【0128】
下記構造式(4)で示される化合物(電荷輸送物質)5部、
【0129】
【化3】

【0130】
および、下記構造式(5)で示される構成単位を有するポリアリレート(重量平均分子量:115000、テレフタル酸骨格とイソフタル酸骨格のモル比:テレフタル酸骨格/イソフタル酸骨格=50/50)50部
【0131】
【化4】

【0132】
を、モノクロロベンゼン300部に溶解させることによって、電荷輸送物質溶解液を得た。一方、モノクロロベンゼン100部、および、有機無機ハイブリッド粒子である平均粒径4.5μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子(商品名:トスパール145、東芝シリコーン社製)10部をペイントシェーカーに入れ、3時間分散処理することによって、球状粒子分散液を得た。得られた電荷輸送物質溶解液および球状粒子分散液を撹拌しながら混合することによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成した。次に、この電荷輸送層の表面を濃度20質量%のフッ化水素酸溶液で処理することによって、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を得た。
【0133】
フッ化水素酸処理前後の電子写真感光体の表面の顕微鏡写真を図6および7に示す。図6はフッ化水素酸処理前、図7はフッ化水素酸処理後である。フッ化水素酸処理前では、球状粒子(被包球状粒子)がマトリックス成分に結着されているのに対して、フッ化水素酸処理後では、マトリックス成分に結着されておらず、マトリックス成分中の細孔の内面との間隙を有する球状粒子(被包球状粒子)が多く存在していた。
【0134】
作製した電子写真感光体を、以下の評価装置に装着し、画像形成を行い、出力画像の評価を行った。なお、実機での評価環境は高温高湿(32.5℃/85%RH)環境下で行った。
【0135】
評価は、まず、作製した電子写真感光体を、ヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター(LBP)(商品名:レーザージェット4300n(モノクロ機))用のプロセスカートリッジに装着した。このLBPにて2000枚の画像出力(耐久試験)を行って、最初の5枚(初期)と最後の5枚(耐久試験後半)の段階でブレード捲れやブレード鳴きの有無を評価した。
【0136】
さらに、翌朝、ハーフトーン画像を10枚出力して、画像流れの発生の有無を評価した。
【0137】
次に、ヒューレットパッカード社製のLBP(商品名:レーザージェット4600(カラー機))に上記評価後の電子写真感光体を装着しなおした。この際、電子写真感光体とクリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧は、750mN/cmになるように設定した。また、クリーニングブレードには、レーザージェット4600では行われている潤滑剤の塗布を行わなかった。使用するトナーには、懸濁重合法による重合トナーを用いた。このトナーの重量平均粒径は5.0μm、平均円形度は0.985であった。この条件で、50枚の画像出力を行い、クリーニング状態を確認し、トナー摺り抜けの有無を評価した。
【0138】
以上の評価結果を表2に示す。
【0139】
(比較例1)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液調製の際に球状粒子であるポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0140】
(比較例2)
実施例1において、電荷輸送層の表面のフッ化水素酸溶液による処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。比較例2では、フッ化水素酸溶液による処理を施さなかったため、ポリメチルシルセスキオキサン粒子がマトリックス成分に結着されていた。
【0141】
(実施例2および3)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液調製の際に用いた平均粒径4.5μmのポリメチルシルセスキオキサン粒子を、それぞれ、平均粒径2μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子および平均粒径11μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0142】
(実施例4)
実施例1において、電荷輸送層用塗布液調製の際に用いた平均粒径4.5μmのポリメチルシルセスキオキサン粒子を、無機粒子である平均粒径0.3μmの球状のシリカ粒子に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0143】
(実施例5および6)
実施例4において、電荷輸送層用塗布液調製の際に用いた平均粒径0.3μmの球状のシリカ粒子を、それぞれ、平均粒径1.0μmの球状のシリカ粒子および平均粒径2μmの球状のシリカ粒子に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0144】
(実施例7)
比較例1と同様にして電荷輸送層まで形成した。
【0145】
次に、下記構造式(6)で示される化合物(メタクリル樹脂のモノマー)8部、
【0146】
【化5】

【0147】
有機無機ハイブリッド粒子である平均粒径4.5μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子(商品名:トスパール145、東芝シリコーン社製)2部、および、エタノール40部をペイントシェーカーに入れ、2時間分散処理することによって、保護層用塗布液を調製した。この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜に、窒素雰囲気下、電子線を照射し、塗膜を硬化させることによって、架橋型の保護層を形成した。次に、この保護層の表面を濃度20質量%のフッ化水素酸溶液で処理することによって、保護層が表面層である電子写真感光体を得た。
【0148】
作製した電子写真感光体を比較例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0149】
(実施例8)
比較例2において、電荷輸送層用塗布液調製の際に用いた平均粒径4.5μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子を、シリコーンで表面修飾した平均粒径3μmの球状のシリカ粒子に変更し、さらに電荷輸送層用の塗布液に粘度200csのシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業(株)製)3部を追加した以外は、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。実施例8では、電荷輸送層の表面のフッ化水素酸溶液による処理を施さなかったが、シリコーンで表面修飾したシリカ粒子を用い、電荷輸送層用塗布液にシリコーンオイルを加えたため、球状粒子であるシリカ粒子がマトリックス成分に結着されていなかった。
【0150】
(実施例9)
実施例7において、保護層用塗布液調製の際に用いた平均粒径4.5μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子を、シリコーンで表面修飾した平均粒径3μmの球状のシリカ粒子に変更し、さらに保護層用塗布液に粘度200csのシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業(株)製)1部を追加し、保護層の表面のフッ化水素酸溶液による処理を施さなかった以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。実施例9では、保護層の表面のフッ化水素酸溶液による処理を施さなかったが、シリコーンで表面修飾したシリカ粒子を用い、保護層用塗布液にシリコーンオイルを加えたため、球状粒子であるシリカ粒子がマトリックス成分に結着されていなかった。
【0151】
(比較例3)
実施例7において、保護層用塗布液調製の際に球状粒子であるポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いなかった以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0152】
(比較例4)
実施例7において、保護層の表面のフッ化水素酸溶液による処理を施さなかった以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。比較例4では、フッ化水素酸溶液による処理を施さなかったため、ポリメチルシルセスキオキサン粒子がマトリックス成分に結着されていた。
【0153】
また、実施例1〜9および比較例1〜4の電子写真感光体の表面層の構成をまとめて表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
※1:比較例2および4では、ポリメチルシルセスキオキサン粒子がマトリックス成分に結着されていたため、比較例2および4におけるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、本発明の被包球状粒子には当たらない。
【0156】
※2:比較例2および4におけるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、マトリックス成分に密着していたため、被包球状粒子の外面とマトリックス成分中の細孔の内面との間隙は存在せず、その間隙の充填物も存在しない。
【0157】
【表2】

【0158】
(実施例11)
キヤノン(株)製の複写機(商品名:iRC2620)に備え付けられているポリイミド製の中間転写ベルトを基層として用いた。
【0159】
次に、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(アクリル樹脂のモノマー)30部、アンチモンドープ酸化スズ粒子(SNシリーズ、石原産業(株)製)4.5部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)2部、メチルエチルケトン23部、および、エチレングリコール15部を、撹拌式ホモジナイザーに入れて混合分散した後、これらを分散装置ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)に入れて分散処理し、分散液Aを調製した。
【0160】
次に、シリコーンで表面修飾した平均粒径2μmの球状のシリカ粒子5部、シリコーンオイル(粘度200cs)(商品名:KF−96、信越化学工業(株)製)3部、シリコーン系界面活性剤(商品名:KF−6105、信越化学工業(株)製)1部、メチルエチルケトン20部、および、シリコーン系溶剤であるヘキサメチルジシロキサン3部を撹拌式ホモジナイザーに入れて混合分散し、分散液Bを調製した。
【0161】
次に、分散液Bに分散液Aを加え、これらを撹拌式ホモジナイザーに入れて混合分散した後、これらを分散装置ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)に入れて分散処理することによって、表面層用塗布液を調製した。この表面層用塗布液を基層に塗布し、得られた塗膜を5分間100℃で乾燥させた後、塗膜に500mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させることによって、膜厚が5μmの表面層を形成した。
【0162】
このようにして、ベルト状の中間転写体を得た。
【0163】
得られた中間転写体の体積抵抗率は、1.8×1010Ω・cmであり、表面抵抗率は4.4×1011Ω/□であった(三菱化学(株)製のハイレスタで測定した。)。
【0164】
また、得られた中間転写体の表面を観察したところ、球状粒子(被包球状粒子)であるシリカ粒子は、マトリックス成分であるアクリル樹脂に結着されていなかった。
【0165】
得られた中間転写体を、キヤノン(株)製の複写機(商品名:iRC2620)に装着し、高温高湿(32.5℃/85%RH)環境下において4000枚の画像出力(耐久試験)を行った。
【0166】
さらに、翌朝、ハーフトーン画像を10枚出力し、次いで、ベタ白画像を100枚出力した。
【0167】
以上の条件で、初期(耐久試験の最初の5枚)、耐久試験後半(耐久試験の最後の5枚)および翌朝における、中間転写体とクリーニングブレードの摺擦状態およびクリーニング状態を評価した。この際、中間転写体とクリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧は、580mN/cmになるように設定した。また、クリーニングブレードには、iRC2620で行われている潤滑剤の塗布を行わなかった。
【0168】
評価結果を表3に示す。
【0169】
(実施例12)
実施例11において、表面層用塗布液調製の際に用いたシリコーンで表面修飾した平均粒径2μmの球状のシリカ粒子5部を、平均粒径2.0μmの球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子(商品名:トスパール120、東芝シリコーン(株)製)5部に変更した以外は、実施例11と同様にして中間転写体を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。
【0170】
なお、得られた中間転写体の表面を観察したところ、球状粒子(被包球状粒子)であるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、マトリックス成分であるアクリル樹脂に結着されていなかった。
【0171】
(比較例11)
実施例11において、表面層用塗布液調製の際に用いたシリコーンで表面修飾した平均粒径2μmの球状のシリカ粒子5部を、表面修飾していない平均粒径2μmの球状のシリカ粒子5部に変更し、かつ、シリコーンオイル(商品名:KF−96)およびシリコーン系界面活性剤(商品名:KF−6105)を用いなかった以外は、実施例11と同様にして中間転写体を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。
【0172】
なお、得られた中間転写体の表面を観察したところ、球状粒子(被包球状粒子)であるシリカ粒子は、マトリックス成分であるアクリル樹脂に結着されていた。
【0173】
(比較例12)
実施例11において、表面層用塗布液調製の際に用いたシリコーンで表面修飾した平均粒径2μmの球状のシリカ粒子5部を用いなかった以外は、実施例11と同様にして中間転写体を作製し、評価した。評価結果を表3に示す。

【符号の説明】
【0174】
a 被包球状粒子
b マトリックス成分
Dp 被包球状粒子の直径
Dm 被包球状粒子を包んでいるマトリックス成分中の細孔の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス成分、および、
該マトリックス成分に結着されておらず、かつ、該マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子
を含有する表面層を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記被包球状粒子の外面と前記細孔の内面との間隙に液体が充填されている請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記被包球状粒子が、シリカ粒子またはポリメチルシルセスキオキサン粒子である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記被包球状粒子がシリカ粒子であり、前記被包球状粒子の外面と前記細孔の内面との間隙にシリコーンオイルが充填されている請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記マトリックス成分が、ポリアリレートまたはメタクリル樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記電子写真感光体と前記クリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧が300〜1200mN/cmである請求項6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段と、画像露光手段と、現像手段と、転写手段と、該電子写真感光体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを有する電子写真装置。
【請求項9】
前記電子写真感光体と前記クリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧が300〜1200mN/cmである請求項8に記載の電子写真装置。
【請求項10】
マトリックス成分、および、
該マトリックス成分に結着されておらず、かつ、該マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子
を含有する表面層を有する中間転写体。
【請求項11】
前記被包球状粒子の外面と前記細孔の内面との間隙に液体が充填されている請求項10に記載の中間転写体。
【請求項12】
前記被包球状粒子が、シリカ粒子またはポリメチルシルセスキオキサン粒子である請求項10または11に記載の中間転写体。
【請求項13】
前記被包球状粒子がシリカ粒子であり、前記被包球状粒子の外面と前記細孔の内面との間隙にシリコーンオイルが充填されている請求項10に記載の中間転写体。
【請求項14】
前記マトリックス成分が、ポリアリレートまたはメタクリル樹脂を含有する請求項10〜13のいずれか1項に記載の中間転写体。
【請求項15】
電子写真感光体と、画像露光手段と、現像手段と、一次転写手段と、請求項10〜14のいずれか1項に記載の中間転写体と、二次転写手段と、該中間転写体の表面に当接されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを有する電子写真装置。
【請求項16】
前記中間転写体と前記クリーニングブレードとの当接部位における長手方向の単位長さ当たりの線圧が300〜1200mN/cmである請求項15に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29812(P2013−29812A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113640(P2012−113640)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】