説明

電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成装置、並びにプロセスカートリッジ

【課題】 従来の帯電方式の欠点である帯電時におけるオゾン、窒素酸化物などの発生を押さえることにより異常画像の発生を抑制し、また感光体周りの作像部材の劣化を抑制することにより優れた静電荷潜像の形成及び画像形成装置を可能にすること。
【解決手段】 少なくとも、感光体に像露光を行なう工程と該像露光と同時または露光後に、該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して感光体に印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成する工程を有する画像形成方法に用いる電子写真感光体において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層と少なくとも前記像露光で電荷を発生する電荷発生物質を含有する光電荷充電層とを有し、且つ該光電荷充電層が感光体の表面にあることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、および複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置ならびに画像形成装置用のプロセスカートリッジに関するものである。さらに詳しくは、カールソンプロセスを用いず、感光体に露光と感光体表面への電圧印加により、静電荷潜像を形成する電子写真感光体、該感光体を使用した複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に使われているカールソンプロセスを用いた電子写真方式での画像形成方法は、以下のとおりである。
1)まず、感光体表面に均一帯電を行なう。
2)像露光によって感光体表面近傍にある静電荷を消去し、感光体表面に静電荷潜像を形成する。
3)この静電荷潜像をトナーと呼ばれる荷電した着色微粒子で現像し感光体表面にトナー像を形成する。
4)このトナー像を直接、または中間転写体を介して転写体上に転写する。
5)トナー像を加熱等の方法で転写体上に定着する。
6)次の画像を形成するために画像形成後に感光体表面に残留したトナーをクリーニング手段によって除去する。
7)次の画像を形成するために画像形成後に感光体上に残留した静電荷を除電手段で除電する。
【0003】
このように、静電荷潜像を形成するために、まず、感光体表面に均一な帯電を行なう必要があり、その帯電には、コロナ放電を利用した帯電方法が用いられるのが一般的である。
コロナ放電を利用した帯電方法としては、金属ワイヤに高電圧を印加して帯電を行なう方法、抵抗値をある範囲に制御した帯電ローラを感光体表面に接触又は近接させ、高電圧を印加して感光体に帯電する方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、コロナ放電を用いて感光体に帯電を行なった場合、オゾンや窒素酸化物などの酸化作用の強い物質やNHNOなどのコロナ生成物が発生する。斯かるオゾンや窒素酸化物は感光体組成物(感光体の構成物質)を劣化させ、感光体上の表面電荷の漏洩や感光体内部の残留電荷を増大するなどを誘発し、それに基づく画像濃度低下や地肌部の汚れを引き起こす。
また、感光層表面の機械的強度を低下させ、感光層の摩耗量増加を引き起こし、感光体寿命を低下させる。また、NHNOなどの吸湿性物質が感光体表面に付着すると、特に高湿度環境下において感光体の表面抵抗が低下し、感光体表面の静電荷潜像が乱れ、画像ぼけ、画像流れが発生し、感光体の寿命を低下させる。
このようにコロナ放電を利用した帯電では、形成される画像品質を著しく損ない、画像形成システムの耐久性、安定性を保持するための種々の対策が必要となり、画像形成のコストを高くするという欠点を有している。
【0005】
また、近年、電子写真方式を利用した画像形成装置はコンピューターのアウトプット記録、デジタル印刷への応用がなされ、より高精細な画像形成が望まれている。従来の電子写真方法では静電荷潜像形成のため、均一帯電後に感光体に像露光を行ない、感光体内部に電荷を発生させる。この光によって生成した電荷は感光体に均一に帯電された帯電電荷が形成する電界に沿って感光層の中を移動して感光体表面、裏面の帯電電荷を消去し、所望の静電荷潜像を形成する。
感光層内部で光によって生成した電荷は感光層内部を移動する間に電界方向に対して垂直な方向に拡散が起こり、そのために、露光された光像よりも広がった領域の電荷が消去され、静電荷潜像の解像性やシャープさが低下するという欠点を有する。この光で生成した電荷の拡散は感光層の厚みが厚くなるほど激しくなる。
【0006】
一方、従来のカールソン方式を用いた画像形成方法に使用される電子写真用感光体は高感度、高耐久性の観点から感光層の厚みを厚く設計されており、これらの感光体は上記理由により解像性が低下する欠点を有している。
また、従来の電子写真法では感光体表面全体に均一に高い帯電を行なう必要がある。
一般に感光体の感光層内部には高電界がかかると局部的に帯電電荷がリークしてしまう電気的なピンホールが存在する。そのため、高い帯電が行なわれ、局所的なリークが発生すると、画像上には、微少径の黒点(地肌よごれ)や白点(色抜け)状の欠陥が発生してしまう欠点を有していた。
【0007】
特に近年、電子写真方式を用いたプリンタにおいては、レーザ等の書き込み光によって露光され、表面電位が低くなった感光体表面の部分に感光体表面の帯電電荷と同極性に荷電したトナーを用いて、トナーを付着させる反転現像方式が多く用いられている。この場合、感光体の大部分を占める地肌部分は高い帯電が行なわれており、上記の電荷リークが起こると、地肌部にはトナーが付着してしまい地汚れとなってしまう。
このような、従来の画像形成方法の欠点をなくすために、感光体表面全体にコロナ放電による帯電を行なうことなく、感光体表面の像露光部位にのみ帯電が行なわれて、静電荷潜像を形成する方法が望まれている。
【0008】
従来、感光体表面全体に均一な帯電を行なうことなく、感光体表面の像露光部に直接、静電荷潜像を形成する方法としては以下の方法が開示されている。即ち、導電性支持体上に酸化亜鉛や酸化チタンのような光起電力を発現する物質を含有した層を設けた感光体に光像を照射し、光が照射された部分に発生した光起電圧を利用して静電荷潜像を形成し、現像を行なう方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、この方法では、光起電圧は300〜500mVぐらいの電圧であり、通常の電子写真で用いられている現像剤を用いて現像した場合、画像濃度が低く、現像に要する時間が長く、特に高速プリントを行なう場合には難がある。そのためには、数100mV程度の電圧で高速に現像できる現像システムの開発が必要であるが、現在そのような低電位の静電荷潜像を現像できる現像方法は開発されていない。
【0009】
他に、光透過性支持体上にp型、n型、i型の非晶質シリコーン膜を多層に積層した薄膜発電層を有し、光照射によって、18v程度の起電圧が発現する感光体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この非晶質シリコーン膜を多層に積層した薄膜発電層を使用する方法は、前述の酸化亜鉛や酸化チタンを用いた光起電圧法に比べて、発現した電位は高く現像にはより優位ではあるが、シリコーン膜を多層に積層しなければならず、感光体の製造コストが高くなる欠点を有している。
さらに、感光体の感光層に電圧を印加しながら、露光を行なって、感光層中に光で発生した正負極性の電荷を外部電界によって、感光層内部で分極させて電位を発現させ静電荷潜像を形成する方法(内部分極型帯電法)も知られている(例えば、特許文献2または特許文献3参照)。
【0010】
しかし、これらの内部分極型帯電法では、瞬時には、数10Vから数100V以上の電圧が発現可能であるが、外部電圧が除去されると、外部電圧で分離された正負極性の電荷自身で形成されている自己電界によって両電荷が互いに引かれあい、再結合したり又は分離している電荷の拡散によって、電位が低減したり、形成された潜像が乱れるため、安定した静電荷潜像の形成が困難である。
また、この方法では、上記電荷の再結合や拡散を防ぐために帯電工程から現像工程までの時間を短くしなければならないプロセス上の制約が生じる。また、感光体表面には印加電圧と逆極性の電荷を誘起することになり、外部の電圧印加部材や感光体の導電性支持体、導電性下引き層などへの電荷リークが起こりやすく、静電荷潜像の安定性に欠ける。
また、感光体表面側にある帯電時の光照射により電荷を発生する第1の電荷発生電層と画像露光時の光照射で電荷を発生する第2の電荷発生層を有した積層感光体を用いて、負極性帯電が可能なように感光体表面側に正極性電圧を印加しながら、感光層中に光で発生した正負極性の電荷を外部電圧によって、感光層内部で分極させて負帯電させ、その後、像露光を行なうことで、静電荷潜像を形成する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
しかしながら、この方法も前記特許文献2または特許文献3と同じ内部分極型帯電法を用いたものであり、上述と同じ欠点を有する。
さらに別の方法として、光導電性を有する静電潜像担持体に光照射を行ない、光導電性部分の電気抵抗を下げた部分に電圧印加部材を接触させ、潜像担持体に帯電を行なう方法、及び、帯電後、静電潜像形成用の露光を行なって、静電潜像担持体に静電電荷潜像を形成し、画像を形成する装置が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
しかし、この方法では、コロナ放電を利用した帯電に基づく欠点は解消されるが、潜像形成が感光体表面への均一帯電後に像露光を行なう従来の電子写真方法を用いているために、前述の欠点を免れない。
【0012】
【特許文献1】特開平7−168384号公報
【特許文献2】特開平8−76559号公報
【特許文献3】特開平9−26681号公報
【特許文献4】特開2001−183853号公報
【特許文献5】特開2001−147576号公報
【非特許文献1】井上英一編集、印写工学IV、P280
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来の帯電方法の上記欠点(放電型帯電方式における酸化性ガスの発生による感光体構成材料の劣化、電荷注入帯電方式における画像ボケなどの異常画像の発生や感光体周りの作像部材の劣化等)を解決することにある。具体的には、帯電時におけるオゾン、窒素酸化物などの発生を押さえることにより異常画像の発生を抑制し、また感光体周りの作像部材の劣化を抑制することで、繰り返し使用を行なっても良好な画像を作像することができるとともにコンパクトで、省エネルギーで対環境性に優れた静電荷潜像の形成及び画像形成装置を可能にする電子写真感光体を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記感光体を用いた画像形成装置の提供であり、繰り返し使用においても異常画像の発生しない高耐久性及び高信頼性を有する、省エネルギー型の静電荷潜像形成装置並びに画像形成装置を提供することにある。更に、本発明は前記感光体を用いた取り扱い性が良好でコンパクトな設計が可能であるプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、従来の欠点を解消するコロナ放電による帯電工程を用いることなく、電子写真感光体へ静電荷潜像を形成する方法を鋭意検討した結果、導電性支持体上に少なくとも感光層と、少なくとも露光で電荷発生可能な物質を含有させた層(以下、『光電荷充電層』という)を表面に設けた感光体に導電性電圧印加部材を接触させ、像露光と同時又は像露光後に電圧印加部材を介して感光体に電圧を印加することで、露光部が非露光部より高く帯電させることが可能であり、感光体に静電荷潜像を形成できることを見い出した。
これらの光帯電現象は、印加電圧と同極性の電位が発現し、印加電圧と逆極性の帯電が行なわれる従来公知の内部分極型帯電とは異なる現象によるものであり、本発明者らは、光電荷充電層に印加電圧と同極性の電荷が充電された(以下、『光電荷充電』という)ためと考えている。また、この光電荷充電による静電荷潜像の形成方法はオゾンやNOxガスの発生が殆どないため、従来の放電型帯電に伴う感光体の劣化が押さえられ、コンパクトで環境汚染の少ない画像形成装置の提供が可能であることを見出した。
更に感光層の感光域の露光によって、感光体上の残留電荷の除去が可能であり、簡易で、省エネルギーな除電手段が可能である。
本発明者らは上記の知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0015】
すなわち、上記課題は本発明の(1)〜(26)によって解決される。
(1)「少なくとも、感光体に像露光を行なう工程と該像露光と同時または露光後に、該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して感光体に印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成する工程を有する画像形成方法に用いる電子写真感光体において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層と少なくとも前記像露光で電荷を発生する電荷発生物質を含有する光電荷充電層とを有し、且つ該光電荷充電層が感光体の表面にあることを特徴とする電子写真感光体」;
(2)「前記光電荷充電層に含有される電荷発生物質が有機顔料であることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体」;
(3)「前記有機顔料がアゾ顔料であることを特徴とする前記(2)に記載の電子写真感光体」;
(4)「前記アゾ顔料が下記一般式(I)で表わされるアゾ顔料であることを特徴とする前記(3)に記載の電子写真感光体。
【0016】
【化1】

[式中、Cp、Cpはカップラー残基を表わす。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表わし、同一でも異なっていてもよい。また該Cp、Cpは下記一般式(II)
【0017】
【化2】

(式中、R203は、水素原子、アルキル基、アリール基を表わす。R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表わし、同一でも異なっていてもよい。Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表わす。)で表わされる基である。]」;
(5)「前記アゾ顔料のCpとCpとが互いに異なるものであることを特徴とする前記(4)に記載の電子写真感光体」;
(6)「前記有機顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記(2)に記載の電子写真感光体」;
(7)「前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記(6)に記載の電子写真感光体」;
(8)「前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、かつ前記7.3°のピークと9.4°のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないことを特徴とする前記(7)に記載の電子写真感光体」;
(9)「前記光電荷充電層に電荷輸送物質を含有することを特徴とする前記(1)〜(8)の何れかに記載の電子写真感光体」;
(10)「前記電荷輸送物質が正孔輸送物質であることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真感光体」;
(11)「前記正孔輸送物質が、少なくともトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする前記(10)に記載の電子写真感光体」;
(12)「前記電荷輸送性物質が高分子電荷輸送性物質であることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真感光体」;
(13)「前記高分子電荷輸送性物質が正孔輸送物質であることを特徴とする前記(12)に記載の電子写真感光体」;
(14)「前記高分子電荷輸送性物質が架橋構造を有することを特徴とする前記(12)に記載の電子写真感光体」;
(15)「前記感光層が有機顔料を含有し、前記光電荷充電層に用いられる有機顔料と該感光層に用いられる有機顔料とが異なるものであり、該光電荷充電層に用いられる有機顔料の最大吸収波長と該感光層に用いられる有機顔料の最大吸収波長とが、200nm以上離れていることを特徴とする前記(1)〜(14)の何れかに記載の電子写真感光体」;
(16)「前記光電荷充電層中にフィラーが含有されることを特徴とする前記(1)〜(15)の何れかに記載の電子写真感光体」;
(17)「前記感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなることを特徴とする前記(1)〜(16)の何れかに記載の電子写真感光体」;
(18)「前記導電性支持体がエンドレスベルト形状であることを特徴とする前記(1)〜(17)の何れかに記載の電子写真感光体」;
(19)「少なくとも、感光体と該感光体に像露光を行なう像露光手段、該像露光と同時または像露光後に該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して該感光体表面に印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成するための電圧印加手段を有する画像形成装置において、該感光体が前記(1)〜(18)の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置」;
(20)「少なくとも、感光体と該感光体に像露光を行なう像露光手段、該像露光と同時または像露光後に該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して該感光体表面に印加電圧と同極性の静電潜像を形成するための電圧印加手段、及び感光体上の静電荷を除去するための除電用露光手段を有する画像形成装置において、該感光体が前記(1)〜(18)の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置」;
(21)「前記像露光手段として400nm以上の波長の光源を用いることを特徴とする前記(19)または(20)に記載の画像形成装置」;
(22)「前記像露光手段に用いられる光を光電荷充電層が80%以上吸収することを特徴とする前記(21)に記載の画像形成装置」;
(23)「前記像露光手段に用いられる光の波長が、感光層に用いられる電荷発生物質への吸収のない領域の光であることを特徴とする前記(19)〜(22)の何れかに記載の画像形成装置」;
(24)「前記感光体上の静電荷を除去するための除電用露光手段による除電光が、光電荷充電層を30%以上透過することを特徴とする前記(19)〜(23)の何れかに記載の画像形成装置」;
(25)「前記感光体の光電荷充電層が正極性電荷の輸送機能を有しており、電圧印加部材に負極性電圧が印加されることを特徴とする前記(19)〜(24)の何れかに記載の画像形成装置」;
(26)「感光体と、像の露光手段、電圧印加手段、現像手段、クリーニング手段、除電手段及び転写手段から選ばれる少なくとも1つとを一体化し、画像形成装置本体に着脱自在に設けたプロセスカートリッジであって、該感光体が前記(1)〜(18)の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ」。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果は以下のとおりである。
なお、前記(1)〜(26)の発明を本発明(1)〜(26)と云う。
本発明(1):導電性支持体上に少なくとも感光層と像露光で電荷を発生する電荷発生物質又は電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する光電荷充電層を有し、且つ光電荷充電層が感光体の表面にあることにより、感光体に像露光と同時又は像露光後に、該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して、光電荷充電層に印加電圧と同極性の電荷を充電し、感光体の劣化要因であるコロナ放電を伴わない静電荷潜像形成を行なうことを可能にする感光体を提供することができると共に、環境に優しい静電荷潜像形成方法、画像形成装置を提供することができる。
また感光層を有するために、光による省エネルギーな感光体表面の静電荷除去が可能な感光体を提供できる。
【0019】
本発明(2):光電荷充電層に含有される電荷発生物質が有機顔料であることで、静電荷潜像形成のための像露光光源として、可視光を使用することができるため、紫外光による感光体の劣化が防止でき、長寿命な感光体の提供が可能になる。また、無機顔料と比較して吸収スペクトルのバラエティーに富み、感光体の設計が容易になる。
【0020】
本発明(3):光電荷充電層に含有される有機顔料がアゾ顔料であることで光電荷充電の効率の高い感光体を提供できる。
本発明(4):特に前記一般式(I)で表わされるアゾ顔料は電荷発生能力が高く、繰り返し使用における光疲労にも強く、光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(5):前記一般式(I)で表わされるアゾ顔料の中でも、2つのカップラー成分の異なる非対称顔料は、極めて高い光キャリア発生能力を有し、光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
【0021】
本発明(6):光電荷充電層に含有される有機顔料がチタニルフタロシアニンであることで光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(7):特定結晶のチタニルフタロシアニン(最大回折ピークを27.2度に有する)であることで、より光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(8):特に特定結晶のチタニルフタロシアニンであることで、より光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(9):光電荷充電層に電荷輸送物質を含有することで、より光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(10):光電荷充電層に含有される電荷輸送物質が正孔輸送物質であることで負極性電荷の光電荷充電効率が高い感光体を提供できる。
本発明(11):光電荷充電層に含有される正孔輸送物質が少なくともトリアリールアミン構造を有する化合物の1種以上であることで、高速な光電荷充電による静電荷潜像の形成が可能になる。
【0022】
本発明(12):光電荷充電層に電荷輸送物質として高分子電荷輸送性物質を用いることで、感光体表面の摩耗やキズが少なくなり、均一な光充電帯電による静電荷潜像が安定して得られる耐久性の高い感光体を提供できる。
本発明(13):光電荷充電層に含有される高分子電荷輸送性物質が正孔輸送物質であることで負極性電荷の光電荷充電効率が高く、且つ、感光体表面の摩耗やキズが少なくなり、均一な光充電帯電による静電荷潜像が安定して得られる耐久性の高い感光体を提供できる。
本発明(14):光電荷充電層に架橋構造を有する高分子電荷輸送性物質が含有されることで、光電荷充電層の硬度がより高くなり、感光体表面の摩耗やキズがより少ない、均一な光充電帯電による静電荷潜像が安定して得られる耐久性の高い感光体を提供できる。
【0023】
本発明(15):光電荷充電層と感光層(電荷発生層)に含有される電荷発生物質の最大吸収ピークが200nm以上離れることで、互いの吸収領域が重ならず、効率のよい光電荷充電による静電荷潜像の形成と残留静電荷の光除電が可能になる。
本発明(16):光電荷充電層中にフィラーが含有されることで感光体表面の摩耗が少なくなり、静電荷潜像の形成が安定した長寿命な感光体を提供できる。
本発明(17):感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層からなることで光感度及び光応答性の高い感光層の設計が可能となり、光除電効率が高く省エネルギーな光除電可能な感光体を提供できる。
本発明(18):感光体がフレキシブルなエンドレスベルト形状であることで、電圧印加手段と感光体間の幅広い接触を可能にし、均一で、安定な光電荷充電による静電荷潜像の形成が可能となり、感光体表面と現像部材間の現像ニップ、感光体と転写部材間の転写ニップ等を安定確保して、画像流れ、画像ボケ、ざらつき、スジ状地汚れなどの異常画像の発生しない信頼性の高い画像形成装置を設計できる感光体を提供できる。
【0024】
本発明(19):画像流れ、画像ボケ、ざらつき、スジ状地汚れなどの異常画像の発生しない、信頼性の高い画像が形成でき、且つ放電生成物の発生がなく、省エネルギーな画像形成装置を提供できる。
本発明(20):光除電を用いることで、省エネルギーな画像形成装置を提供できる。
【0025】
本発明(21):像露光手段として紫外線を用いずに、400nm以上の光源を用いることで感光体の劣化が少なく、信頼性の高い画像形成装置を提供できる。
本発明(22)、(23):静電荷潜像形成用の像露光を電荷発生層に吸収させないことで、効率のよい光電荷充電による静電荷潜像の形成が可能な画像形成装を提供できる。
本発明(24):光除電光を光電荷充電層に吸収させないことで、除電効率の低下しない画像形成装置を提供できる。
本発明(25):感光体の光電荷充電層が正極性電荷の輸送機能を有し、電圧印加手段に負極性電圧が印加されることによって、光電荷充電による静電荷形成効率が高く、信頼性の高い、省エネルギーな画像形成装置を提供できる。
本発明(26):画像流れ、画像ボケ、ざらつき、スジ状地汚れなどの異常画像の発生しない、信頼性の高いプロセスカートリッジを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の電子写真感光体(なお;本件明細書中では単に感光体とも云う)の基本的な層構成は図1に示すごとく、導電性支持体(11)上に少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する感光層(12)とその上に積層された少なくとも電荷発生物質を含有する光電荷充電層(13)とからなる。
本発明の光電荷充電層を設けた感光体への帯電機構は、新規方式に基づくものであり、その詳細メカニズムは現時点では明確になっていないが、本発明者らは光電荷充電による潜像形成のメカニズムは下記に示されるようなものであると考えている。
【0027】
上記メカニズムを図2に基づいて説明する。
[1]感光体表面に少なくとも露光で電荷を発生する電荷発生物質を含有する光電荷充電層を設けた感光体に、光電荷充電層が吸収する光を用いて所望の像露光を行なうと、光電荷充電層の露光部位には正負両極性の電荷が発生する(図2(a))。
[2]この電荷が再結合して消失する前に感光体表面に接触した電圧印加部材(以下、「帯電部材」と表記することがある)に電圧を印加すると、印加電圧と逆極性の電荷が電圧印加部材に移動し、光電荷充電層には電圧印加部材と同極性の電荷が充電される。(図2(b))。
[3]感光体の導電性支持体側には印加電圧と逆極性の電荷が誘起され、感光体の露光部には印加電圧と同極性の電位が発現する(図2(c))。
一方、非露光部も光充電層中に暗所で熱励起などによって生成された電荷がある場合は電圧印加で若干の充電が行なわれるが、電位は露光部に較べれば低い。
[5]以上のように、感光体には、像露光に応じた、印加電圧と同極性の静電荷潜像が形成される。
[6]このとき光電荷充電層と導電性支持体の間にある感光層は発現する電位を増幅する役割を有しその静電容量が小さいほど、電位は高く発現することになる。
[7]このように光電荷充電層へ充電された電荷は光電荷充電層内部、または光電荷充電層と感光層界面にトラップされ、支持体側の電荷と容易に結合することがないため従来公知の内部分極型帯電法で形成された静電荷潜像に較べて一段と安定した静電荷潜像が形成されることになる。
[8]また、感光体表面上にある薄い光電荷充電層内に静電荷が充電されるため、電荷の拡散も少なく形成された静電荷潜像は解像力の高い鮮鋭なものとなる。
[9]本発明における静電荷潜像は、光電荷充電層に形成された内部電荷によって形成されるものであり、そのためには光電荷充電層に光を吸収して電荷を発生する電荷発生物質が含有されている必要がある。
【0028】
次に本発明における感光体の層構成について述べる。
<光電荷充電層>
本発明の光電荷充電層(13)に用いられる電荷発生物質としては、従来、電子写真用の電荷発生物質として公知の材料を用いることができる。中でも、有機材料は有効に使用できる。これは、有機材料は化学構造によりその吸収波長を任意にコントロールすることが可能で、後述のように静電荷潜像形成用の像露光と感光体表面の残留電荷を除電するための除電露光をいずれも感光体表面側から行なう場合、光電荷充電層に用いられる電荷発生物質と、光電荷充電層の下層である感光層(電荷発生層)の電荷発生物質の吸収波長領域を異ならせることで、効率よく光キャリア発生を行なわせることができるなどの利点を生み出すことができる。このため、無機材料に比較して有機材料は本発明に有効に使用できるものである。
【0029】
このような有機材料の例としては、各種金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
【0030】
これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。特に、前記一般式(I)で表わされるアゾ顔料や前記特定の結晶型を有する(CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有する)チタニルフタロシアニンは高感度で耐久性が高く、特に光疲労に強いため、本発明の電荷発生物質として有効に用いることができる。中でも、前記一般式(I)において、CpとCpが異なるものは前記一般式(I)で表わされる材料の中でも特に高感度を示し、本発明の感光体の電荷発生物質として非常に良好に使用される。また、27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンの中でも、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶は特に高感度を示し、また感光体繰り返し使用における帯電性の低下も小さく、本発明の感光体の電荷発生物質として非常に良好に使用できる。
【0031】
光電荷充電層に用いられる電荷発生物質は、光除電用の露光を吸収してしまうと、それだけ後述する感光層(電荷発生層)に到達する光量が低下する。これにより感光体の光感度が低下することになり、光除電効率が低下し、鮮明な画像を安定して形成し難くなる。このため、光電荷充電層に用いられる電荷発生物質は静電荷潜像形成用像露光の波長領域の光を充分に吸収するのが好ましい。このためには、光電荷充電層に用いる電荷発生物質と後述する感光層(電荷発生層)に用いる電荷発生物質が異なるものであり、その吸収波長領域が異なるようにすることが好ましい。
【0032】
感光体の電荷発生物質として好適に使用される有機顔料は、一般的に高度な分子会合体であることが多い。従って、一般的にはその吸収スペクトルはブロードである。従って、上述のように光電荷充電層に用いる電荷発生物質と後述する感光層(電荷発生層)に用いる電荷発生物質の吸収波長領域を異ならせるようにするためには、その吸収ピーク位置を大きくずらす必要がある。具体的に述べれば、400nm〜1200nmの範囲において、両電荷発生物質の最大吸収ピーク波長が200nm以上離れていれば、両者の吸収領域が重なることは少なく、重なってもその波長領域はわずかである。
このような電荷発生物質(有機顔料)の吸収波長領域の評価方法は下記のようにして行なうことができる。
【0033】
感光体に用いる光電荷充電層用の塗工液と感光層(電荷発生層)用の塗工液を、それぞれ光学的に透明な支持体上に塗布・乾燥したサンプルを作製する。次いで、市販の分光光度計により各々の吸収スペクトルを測定することにより、電荷発生物質の吸収プロフィール及び最大吸収波長が求まる。このような測定結果の一例を図9に示す。
電荷発生物質(図中では、CGM A,B,Cと記載)の吸収スペクトルをそれぞれ示すが、例えば電荷発生物質Cを感光層の電荷発生物質に用いたとする。ここで、電荷発生物質Aを光電荷充電層に用いる場合には、両者の吸収スペクトルの重なりが小さく、概ね700nm以上の除電露光を行なえば、光電荷充電層に吸収されることはほとんどない。一方、電荷発生物質Bを光電荷充電層に用いた場合には、両者の吸収スペクトルの重なりが非常に大きく、除電用の露光波長が非常に限定されるばかりでなく、光電荷充電層での吸収が大きくなり、感光体の光感度が低下してしまう場合がある。このように、光電荷充電層と感光層に用いられる電荷発生物質の吸収スペクトルの分布は重要であり、図9に示すように両者の最大吸収ピーク波長が200nm以上離れている場合に良好な組み合わせとなる。
【0034】
感光層上に光電荷充電層を設けるには、上述した電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン、メチルエチルケトン等の有機溶媒を用いてボ−ルミル、アトライター、サンドミル等により微粒子に分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。
光電荷充電層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂などが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0035】
また、本発明者らは、光電荷充電層に上記電荷発生物質と共に電荷輸送物質を添加することで、光電荷充電の効率が高くなり、より高い帯電電位の発現が可能となることを見出した。これは、電荷発生物質と同時に電荷輸送物質を含有させることで、電荷発生物質と電荷輸送物質の接触界面近傍で光と電界によって比較的容易に分離される正負両極性の電荷対が新たに生成し、印加電圧と逆極性の電荷が電荷輸送物質、または電荷発生物質を経由して帯電部材まで輸送され、帯電部材に移動し、印加電圧と同極性の電荷が光電荷充電層に充電されるためと考えられる。
【0036】
光電荷充電層(13)に添加することのできる電荷輸送物質としては正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。先に示したように、本発明の光電荷充電層は像露光により生じた電荷を感光体表面まで到達させる必要があるが(図2)、この際、帯電部材に印加された電圧と逆極性の電荷を運ぶ必要がある。このため、帯電部材に負極性を印加する場合には正孔輸送物質、正極性を印加する場合には電子輸送物質が有効に用いられる。
【0037】
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0038】
正孔輸送物質としては、たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体など、従来公知の物が有効に使用できる。
中でも、トリアリールアミン構造を分子中に有する化合物は、電荷輸送能が高く、高速のプロセスにも対応することが可能で、本発明において極めて有効に用いることができる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0039】
なお、これらの電子輸送物質と正孔輸送物質は同時に含有してもよい。光電荷充電層上(感光体表面)に帯電されるべき極性は、使用する画像形成装置のシステム設計思想により、負極性か正極性かが決定されるべきものである。しかしながら、ここまでの画像形成装置のほとんどが有機系感光体を用いており、そのほとんどが負帯電型の感光体を採用している。また、昨今の画像形成装置ではデジタル方式の書き込み・現像が主流であり、使用する現像方式もこれに併せたものが用いられている。更に、感光体に用いられる電荷輸送物質のうち電荷の高速移動を可能にできる材料としては、正孔輸送物質がその大半を占める。このような状況から、本発明においても、光電荷充電層の下層である感光層は公知の技術を最大限に生かすべきであり、また画像形成装置にも応用展開すべきである。従って、本発明における電子写真感光体も負帯電型が極めて有利であり、このことから光電荷充電層には正孔輸送物質が有効に使用されるものである。
【0040】
また、光電荷充電層(13)には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。
これら高分子電荷輸送物質から構成される光電荷充電層(13)は、耐キズ性、耐摩耗性に優れたものである。
高分子電荷輸送物質としては、基本的には正孔輸送性、電子輸送性いずれの高分子電荷輸送物質も使用可能であるが、前述の理由から、光電荷充電層には正孔輸送性の高分子電荷輸送物質がより有効に使用されるものである。
【0041】
正孔輸送性の高分子電荷輸送物質としては公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記(III)〜(XII)式で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0042】
【化3】

式中、R、R、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基またはハロゲン原子、Rは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、R、Rは置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表わし、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表わし5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表わされる2価基を表わす。尚、(III)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0043】
【化4】

101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表わす。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表わす。)、または
【0044】
【化5】

(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表わす)を表わす。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0045】
【化6】

式中、R、Rは置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(IV)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0046】
【化7】

式中、R、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(V)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0047】
【化8】

式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar、Ar、Arは同一または異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(VI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0048】
【化9】

式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一または異なるアリレン基、X、Xは置換もしくは無置換のエチレン基、または置換もしくは無置換のビニレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(VII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0049】
【化10】

式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一または異なるアリレン基、Y、Y、Yは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(VIII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0050】
【化11】

式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(IX)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0051】
【化12】

式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(X)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0052】
【化13】

式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(XI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0053】
【化14】

式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一または異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、前記(III)式の場合と同じである。尚、(XII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
【0054】
また、光電荷充電層に用いられる他の正孔輸送性の高分子電荷輸送物質としては、公知単量体の共重合物や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーも使用可能である。更に、例えば、特開平3−109406号公報、特開平5−216249号公報、特開2000−206723号公報、特開2001−34001号公報などに開示されているような、製膜時に電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、製膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元、あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も使用可能である。
【0055】
本発明の電子写真感光体は画像形成工程において、現像剤、転写紙、クリーニング部材等と擦れあい、感光体表面にある光電荷充電層(13)には機械的な負荷がかかり、場合によっては傷ついたり、摩耗したりする。また、画像形成装置への装着時、画像形成装置からの取り外し時などに種々の部材と接触することによって、感光体表面にある光電荷充電層(13)には局部的に傷がつく可能性がある。
光電荷充電層(13)の局所的傷部や摩耗部は電荷発生物質が少なくなるか、傷や摩耗がひどい場合は電荷発生材料がなくなり、本発明の特徴である光電荷充電機能が低下してしまう。
そのため、光電荷充電層の傷部や摩耗部は傷や摩耗のない部分より帯電電位が低くなり、静電荷潜像の均一性が損なわれ、画像形成を行なった場合、キズ状、摩耗形状の異常画像が発生し易くなる。
【0056】
一般に有機光導電性膜の機械強度はバインダー樹脂によって補強することが可能であるが、絶縁性の高分子樹脂を多くすると電荷輸送性が低下し、光キャリアの発生効率が低下する。本発明の如く電荷輸送機能とバインダー樹脂機能を合わせ持った高分子電荷輸送物質を用いることで、光充電効率を低下させることなく、耐キズ性、耐摩耗性のより高い光電荷充電層の形成を可能にする。更に架橋型の高分子電荷輸送物質を用いることで、光電荷充電層の膜硬度がより高くなり、感光体の耐キズ性、耐摩耗性を更に高めることができる。このように、光電荷充電層に高分子電荷輸送物質を用いることは、より高耐久な光電荷充電による静電荷潜像形成が可能な感光体、及び、画像形成方法、画像形成装置を提供するに非常に有効である。
また、光電荷充電層(13)には、層の膜強度を強化するために、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーには、有機フィラーと無機フィラーがある。
【0057】
有機フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機フィラー材料としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。更に高画質化に有効なフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラーが好ましく、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が特に有効に使用できる。これら電気絶縁性が高いフィラーは、電気絶縁性が高いフィラー同士あるいは他のフィラーとを2種類以上を混合することも可能である。
【0058】
本発明の電子写真感光体においては、感光体上にある残留電荷を除去する際に、感光層の感光波長領域の光を用いて除電用の露光が行なわれ場合があるが、除電に用いられる露光はこの光電荷充電層を充分に透過させる必要がある。上述のように膜強度を強化するために添加するフィラーは、その除電用露光の透過を妨げるものであってはならない。従って、充分に分散され、除電用露光の透過率が、フィラー無添加の場合と同じように充分確保される必要がある。このためには、上述のフィラーのうち、一次粒径が充分に小さいもの(一次粒径が0.3μm以下が好ましい)、分散性の良好なもの(必要に応じて分散剤や分散助剤が用いられる)が有効に用いられる。
【0059】
<導電性支持体>
導電性支持体(11)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルムもしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの方法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
本発明において、エンドレスベルト状の感光体を用いた場合、光電荷充電層と帯電部材との接触部分が感光体の駆動方向に長くすることができ、電圧印加時間が長くとれるため、電荷充電効率が高くなり、帯電電位の高い、均一な安定した静電荷潜像の形成が行なわれる。このため、エンドレスベルト状の感光体を用いることは非常に有効である。
【0060】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(11)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。
【0061】
また、同時に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0062】
<感光層>
本発明における感光層は主として2つの機能を有する。
第1の機能は、1つの画像形成後、次の画像を形成するために感光体上に残留している不要な静電荷を感光層の感光領域の光を用いて効率よく光除電することである。
そのためには感光層は除電光の吸収率が高く、且つ光による電荷の発生効率が高い方がよい。
【0063】
第2の機能は光電荷充電で形成された静電荷潜像の電位を増幅させることである。
本発明においては、像露光と電圧印加によって光電荷充電層に充電された電荷と導電性支持体側に誘起された逆極性の電荷が感光層を挟んで、相対峙し、静電荷潜像の電位を発現する。そのため感光層はコンデンサーとして機能を有する必要があり、感光層の静電容量が小さいほど電位増幅効果は高くなる。一般に有機材料は無機材料に比べて誘電率が小さく、この点において、感光層に有機材料を用いることは有効である。
【0064】
本発明における感光層(12)は、単層型でも積層型でもよいが、ここでは説明の都合上、まず積層型について述べる。図3に積層型感光層を有する発明の感光体の一例の層構成を示す。
この場合、感光体構成は導電性支持体(11)上に感光層として電荷発生層(12a)と電荷輸送層(12b)、が設けられ、表面に光電荷充電層(13)が積層されている。更に導電性支持体と感光層との間に下引き層(14)が設けられている。
初めに、電荷発生層(12a)について説明する。電荷発生層は除電用露光を吸収して正負両極性の光電荷を生成する機能を有する。そのため電荷発生層は電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダ−樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0065】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0066】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0067】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。更に、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。
【0068】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。例えば、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0069】
電荷発生層を形成する方法は、大きく分けて真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とがある。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0070】
次に、電荷輸送層(12b)について説明する。
電荷輸送層は、電荷発生層で生成した電荷を受け取り、その電荷を光電荷充電層との界面(ひいては感光体表面)まで輸送し、光電荷充電層中または表面の残留電荷と中和して、次の画像形成のために感光体上の残留電荷を除電する機能を有する。そのために電荷輸送層は電荷輸送物質を主成分とした層であり、必要に応じて電荷輸送物質をバインダー樹脂とともに溶解、塗工して形成される。必要に応じて使用できるバインダー樹脂としてはフィルム性のよいポリカーボネート(ビスフェノ−ルAタイプ、ビスフェノ−ルZタイプ、ビスフェノールCタイプ等、あるいはこれら共重合体)、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダー、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0071】
電荷輸送層に使用される電荷輸送物質は、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、特開昭52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭58−190953号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号公報、特開昭55−156954号公報、特開昭55−52063号公報、特開昭56−81850号公報などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号公報、特開昭58−198043号公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体などを使用することができる。また、前述の光電荷充電層に使用可能な高分子電荷輸送物質も使用することができる。
前述の如く、感光層には静電荷潜像の電位を増幅する機能が求められる。電荷輸送層の膜厚を厚くして、感光層の静電容量を小さくすることが有効である。
【0072】
本発明の感光体が用いられる画像形成方法では、感光体上の静電荷潜像は感光体表面にある光電荷充電層によって形成され、感光層は表面電荷を除電するためにある。そのため静電潜像を形成する通常の電子写真用感光体の感光層とは異なり、電荷輸送層の膜厚を厚くすることで起こる電荷の拡散による解像力の低下を懸念する必要がない。
電荷輸送層の膜厚は10μmから500μmであることが好ましい。10μm未満では、感光体の静電容量が大きくなるため像露光部の光電荷充電で発現する電位が低くなり、静電荷潜像の電位コントラストが低くなる。500μm超えると光キャリアの移動時間が長くなり、光除電の応答性が低くなる。より好ましくは20〜300μmである。
【0073】
次に感光層が単層構成の場合について述べる。上述した電荷発生物質をバインダー樹脂中に分散した感光体が使用できる。単層感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質およびバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。さらに、この感光層には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしてもよく、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0074】
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層(12b)の項で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層(12a)の項で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。バインダー樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましい。電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、バインダー樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、10〜300μm程度が適当である。10μm未満では、感光体の静電容量が大きくなるため露光部の光電荷充電で発現する電位が低くなり、静電荷潜像のコントラストが低くなる。
300μmを超えると光キャリアの感光層内の移動時間が長くなり、光除電の応答性が低くなる。より好ましくは20〜200μmである。
【0075】
<下引き層>
次に下引き層(14)について説明する。
本発明の電子写真感光体には、必要に応じて導電性支持体と感光層との間に(感光層が積層タイプの場合は、導電性支持体と電荷発生層との間に)下引き層を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、電荷ブロッキング、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなど、更には、除電光として、蛍光灯やレーザのような可干渉性の光源を用いた場合に発生する光干渉に基づくモアレ状の不均一除電防止の目的で設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
【0076】
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂、共重合性ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂など挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。
【0077】
更に、本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。この他に、本発明の下引き層には酸化アルミを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
また、本発明の感光体においては、環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は、有機物を含む層ならばいずれに添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加すると良好な結果が得られる。
【0078】
本発明に用いることができる酸化防止剤としては下記のものが挙げられる。
(モノフェノ−ル系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど。
【0079】
(ビスフェノ−ル系化合物)
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0080】
(高分子フェノ−ル系化合物)
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0081】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0082】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0083】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネ−トなど。
【0084】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0085】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、より好ましくは2〜30重量部である。
【0086】
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
図4は、本発明の実施例で画像形成に用いたもので、画像形成装置を説明するための概略図である。図4において、感光体(1)は、導電性支持体上に、少なくとも除電光に光感度を有する感光層と、少なくとも像露光で電荷を発生する電荷発生物質を含有する光電荷充電層を有する感光体である。
【0087】
像露光手段(2)は感光体(1)の光電荷充電層が吸収する波長の光が含まれる光源であれば、使用可能である。例えば、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀灯、キセノンランプ、レーザ光源、LEDが使用可能である。また感光体は一般に紫外線によって光劣化し易く、そのため像の光としては400nm以上の光を使うのが好ましい。そのために、像露光手段としてはフィルターや光回折格子や装置などの紫外光をカットする手段を組み込んだものを用いることができる。また、像露光手段は電圧印加部材や感光体など、他の部材と一体化することも可能である。例えば、電圧印加手段としてガラスやプラスチック製の円筒状中空体の表面が透光性で且つ導電性に加工された透明電圧印加部材の内側に像露光手段を組み入れることも可能である。像露光手段をこのように設置することで、画像形成装置をコンパクトに設計することが可能となるのみならず、像露光と電圧印加を同時に行なうことができるため、光充電効果を高めることができる。
【0088】
像露光に際しては、光電荷充電層に充分光を吸収させることは重要であるが、感光層(電荷発生層)に光を到達させないことも重要なことである。図2(c)の状態において、感光層(電荷発生層)に像露光が充分に到達してしまうと、感光体の光除電の場合と同様に光キャリアが発生してしまう。このため、光電荷充電層内に蓄えられた正負電荷の片方(どちらかは帯電極性によって決定される)をキャンセルしてしまい、像露光の露光部の帯電電位が不充分になってしまう場合がある。
【0089】
このため、本発明の画像形成装置においては、像露光に用いられる光を光電荷充電層が80%以上吸収することが好ましく、より好ましくは100%吸収することが望ましい。
また像露光として、感光層(電荷発生層)の吸収のない波長領域の光を用いることは本発明において有効に利用される。即ち、上述のように光電荷充電層において像露光を充分に吸収できればよいが、そうでない場合でも感光層(電荷発生層)に用いられる電荷発生物質が像露光を吸収しなければ、光キャリアが発生しないものであって、上述のような不具合を生じないものである。
【0090】
このような一例を図面を用いて説明する。図8に示す電荷発生物質(CGM A)を
感光層の電荷発生物質、電荷発生物質(CGM C)を光電荷充電層の電荷発生物質として用いるとする。この際、像露光波長を800nm近傍の光とすることで、CGM Cの吸収は非常に大きく(吸収効率が高く)、光電荷充電層中の電荷発生物質濃度を高めにするか、光電荷充電層の膜厚を厚めにすることで、像露光を80%以上(好ましくは100%)吸収させることができる。感光体のその他の特性への影響等を考慮して、電荷発生物質濃度や膜厚を上記の水準にできない場合でも、感光層(電荷発生層)に用いられる電荷発生物質(CGM A)には800nm近傍に吸収がなく、仮に像露光が光電荷充電層を一部通過したとしても、感光層(電荷発生層)で光キャリア発生が起きず、感光体へは充分な電位コントラストを持った静電荷潜像の形成が行なわれるものである。
【0091】
この際、像露光をレーザ光、あるいはLED光のように半値幅の極めて狭い(中心波長に対して、半値幅が±30nmに収まるような)略単色光を用いることで、より一層の効果が発現される。このような書き込み波長を実現するためには、上述のようにLD光やLED光を用いる他に、白色光源に短波長側および長波長側をカットすることのできるフィルターを組み合わせて用いることによっても可能である。
電圧印加手段(3)は、感光体(1)と接触し、感光体への像露光と同時または像露光後に図示しない電源によって感光体(1)に電圧を印加して光電荷充電層に電荷を充電し、感光体(1)を所望の電位にまで帯電させ、静電荷潜像を形成する手段である。
そのため、感光体表面と接触する電圧印加部材は充分な導電性を有している必要がある。
導電性は電圧印加部材の抵抗値で記述することができ、1010Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下、更には10Ω・cm以下がより好ましい。
【0092】
電圧印加部材としては、金属や導電性ゴム、導電性プラスチック等の導電性材料をローラ状、板状、ブラシ状に加工したものが使用可能である。金属等の導電性芯ロール上にシリコーンゴムやウレタンゴム中にカーボン等の導電性微粒子を分散させた導電性ゴムをコートした弾性のある導電性ローラが使用可能である。この導電性ローラの抵抗は1010Ω・cm以下が好ましい。本発明の実施例では直径8mmのステンレス製軸上に体積抵抗率約10Ω・cmの導電性ウレタン弾性層を設けた導電性ローラを用いた。
また、固定支持されたマグネットロールと、このマグネットロール外側に回転自在に設けられた非磁性スリーブと、マグネットロールの磁力によって非磁性スリーブ上に吸着させられた磁性粒子とを有し、マグネットロールの磁力により穂立ちさせられて磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシと感光体とが接触するように設計された所謂磁気ブラシ電圧印加部材を用いることも可能である。
【0093】
更には、導電性のプラスチックを加工した導電性繊維、それらを導電性の金属ロールや板状の支持体に緻密に植毛した所謂導電性ブラシや導電性炭素繊維布をロールや板状の支持体に張り付けた導電性織布を用いることも可能である。
【0094】
また前述の如く、像露光手段と一体化するために光透過性中空体の表面を透光性で且つ導電性に加工された透明電圧印加部材を用いてもよい。光透過性中空体としては像露光光源に対して透明であれば特に制限はないが、例えば、ガラス(パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス等)、石英、サファイア等の透明な無機材料やフッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、エポキシ樹脂等の透明な樹脂で形成されたものが用いられる。中空帯の形状は、ローラ状、エンドレスベルト状のものが有効に使用できる。光透過性の導電性加工はITO(インジウム・スズ酸化物)、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅などの透明導電材料を直接もしくは樹脂等に分散し表面に形成したり、あるいはアルミニウム、ニッケル、金、ハステロイなどの金属を半透明になる程度薄く形成してもよい。導電層を設ける場合には、スパッタリングや湿式法などの方法により設けることができ、金属を表面に設ける場合には、蒸着法やスパッタリングが用いられる。
感光体表面に静電荷潜像を形成した後、現像手段(4)で、トナー像を形成する。
【0095】
本発明で用いられる現像方式としては、従来電子写真で用いられている公知の現像手段が全て使用可能である。
従来の電子写真法を用いたレーザープリンター、デジタル複写機の現像は、感光体表面への帯電極性と同極性に荷電したトナーを用いて現像する反転現像が主流である。
本発明の静電荷潜像は露光部の電位が非露光部の電位より高くなる。
そのため、本発明で使用される現像は、通常、光電荷充電での帯電電荷の極性とは逆極性に帯電されたトナーを用いる所謂正規現像が有効に用いられる。
勿論、反転現像を行なってもよいが、その場合は地肌部にトナー感光体表面に形成されたトナー像はオリジナル画像に対して白黒反転された画像となる。
【0096】
次に感光体上に現像されたトナー画像は転写紙(8)などの転写体へ転写手段(5)によって転写される。転写体へのトナー像の転写は図4に示すように転写体への直接転写以外に、中間転写体へ転写した後、最終的転写体へ転写する、所謂中間転写方式を用いてもよい。
転写時に転写部材にかける転写電圧は、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。
その後、転写紙は図示されない定着手段によってトナー像が定着される。
感光体(1)上の残留トナーはクリーニングファーブラシやクリーニングブレードなどのクリーニング手段(6)により除去される。
また、転写工程、クリーニング工程を経た感光体の表面には残留電荷が残っている。
そのため次の画像形成を行なう前に感光体表面は除電しておく必要がある。
【0097】
除電の方法としては、
(1)加熱除電
(2)残留電荷と逆極性の直流、又は、交流電圧の放電
などで、従来電子写真法で用いられてきた除電法が可能であるが、本発明の感光層を有する感光体の場合は、感光層の感光波長領域の光を感光層に露光して有効に除電することが可能である。
【0098】
除電露光手段(7)は、電子写真で一般に用いられる露光手段であれば、すべて使用可能である。例えば、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀灯、キセノンランプ、LD、LED、蛍光体ドットアレイ等が用いられる。
感光体は一般に紫外線によって光劣化し易く、そのため除電光としては400nm以上の光を使うのが好ましい。そのために、除電用露光手段としては、像露光手段と同様にフィルターや光回折格子などの紫外光をカットする手段を組み込んだものも用いることができる。
更に、ここで用いられる光源の露光波長は、感光層での吸収効率を高くするため、前記光電荷充電層での光透過率はできる限り高いことが好ましく、光電荷充電層での透過率が50%以上の波長を用いるのがよい。
【0099】
この点に関して図8を用いて説明する。図8は、光電荷充電層に用いられる電荷発生物質(図中にはCGM Aと記載)と感光層(電荷発生層)に用いられる電荷発生物質(図中にはCGM Cと記載)それぞれの吸収スペクトルと、除電露光用の光源波長領域の関係を示した。図8におけるY軸に平行な破線(波長Aと記載)が、CGM Aにおける透過率50%の波長である。この波長よりも長波長側の除電露光を用いることにより、感光層(電荷発生層)に充分な画像露光が到達し、除電のための光感度が充分に得られるものである。更に、好ましくは光電荷充電層に含有される有機顔料の吸収がない波長の光を用いて除電用露光を行なうことである。
【0100】
ここでいう有機顔料の吸収のない波長とは、次のとおりである。一般的な用語からすれば、「吸収のない」は文字通り、吸収がまったくない(即ち、図8における吸光度が0の状態)を表わす。しかしながら、有機顔料の分散膜のような状態は、分散が非常に良好で一次粒子がサブミクロン以下のような状態にならないと、光学的な測定上吸光度が0を示すことがほとんどない。そこで本発明においては、顔料分散膜の状態で透過率が90%以上の場合を、「吸収のない」状態と定義することにする。
【0101】
図8に示すY軸に平行な実線(波長Bと記載)が、CGM Aにおける吸収の90%より大きい透過率を示す波長領域の境界線である。このような波長Bよりも長波長側の除電露光を行なうことにより、除電用の光感度の低下が実質上認められない感光体が設計でき、本発明の画像形成装置には有効に使用される。この際、除電用露光をレーザ光、あるいはLED光のように半値幅の極めて狭い(中心波長に対して、半値幅が±30nmに収まるような)略単色光を用いることで、より一層の効果が発現される。このような除電光波長を実現するためには、上述のようにLD光やLED光を用いる他に、白色光源に短波長側および長波長側をカットすることのできるフィルターを組み合わせて用いることによっても可能である。この除電露光によって感光体表面の残留電荷が効率よく除去される。
【0102】
感光体表面に静電荷潜像を形成した後、現像手段(4)で、トナー像を形成する。感光体表面に形成されたトナー像は、転写紙(8)などの転写体へ転写手段(5)によって転写される。転写体へのトナー像の転写は図4に示すように転写体への直接転写以外に、中間転写体へ転写した後、最終的転写体へ転写する、所謂中間転写方式を用いてもよい。その後、転写紙は図示されない定着手段によってトナー像が定着される。感光体(1)上の残留トナーはクリーニングファーブラシやクリーニングブレードなどのクリーニング手段(6)により除去される。
【0103】
図5には、本発明による電子写真プロセス、装置の別の例を示す。感光体(1)は導電性支持体上に少なくとも、感光層と電荷発生物質を含有した光電荷充電層を有するエンドレスベルト状感光体である。このエンドレスベルト状感光体は駆動ローラ及び従動ローラ(9a,9b)により駆動、支持され、矢印方向に移動する。感光体(1)は画像露光手段(2)と電圧印加手段(3)によって充電帯電され静電荷潜像を形成する。
この静電荷潜像は現像手段(4)でトナー現像され、転写手段(5)によって紙等の転写体上に転写される。転写体は図示していない定着手段によって画像が定着される。
感光体(1)上の残留トナーはクリーニングファーブラシやクリーニングブレードなどのクリーニング手段(6)により除去され、除電光源(7)で残留電荷を除去され、次の電子写真サイクルに移る。
感光体(1)の支持体が光透過性の場合は、画像露光手段や除電光源などをベルトの内側に設置して、支持体側より光照射が行なわれる。この場合は装置がコンパクトになる利点がある。尚、ベルト状感光体と駆動、支持ローラとが一体で、装置への脱着が自在にできるようにユニット化することも可能である。
【0104】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、上記例に限定されるものではなく、少なくとも、電荷発生物質を含有した光電荷充電層を有する感光体に像露光と電圧印加によって印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成する工程を含む画像形成装置であれば、どのようなものであってもかまわない。
【0105】
以上に示すような画像形成装置は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電用の露光手段、電圧印加手段、現像手段、クリーニング手段、除電手段、転写手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0106】
図6に本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。感光体(1)の周辺には電圧印加ローラ(帯電部材)(3)、感光体(1)表面に現像剤を適量供給する現像手段(4)、画像転写後に感光体表面をクリーニングするブレードを備えたクリーニング手段(6)が一体に組み込まれている。このカートリッジは画像露光手段、転写手段、除電手段、定着手段、記録紙の搬送手段などの画像形成に必要な手段を具備した画像形成装置に着脱自在に取り扱い可能なように形成されている。
尚、該カートリッジに搭載される感光体(1)は、導電性支持体上に少なくとも、感光層と電荷発生物質を含有した光電荷充電層を有する感光体である。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
<下引き層の形成>
外径100mmφのアルミ製円筒管上に、下記組成の下引き層塗工液を乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
【0108】
(下引き層用塗工液)
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307-60-EL:大日本インキ化学工業) 3重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミンG-821-60:大日本インキ化学工業) 2重量部
酸化チタン(CR−EL:石原産業) 20重量部
メチルエチルケトン 100重量部
【0109】
<電荷発生層の形成>
この下引き層上にチタニルフタロシアン顔料(XDスペクトルを図10に示す。CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、かつ前記7.3°のピークと9.4°のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン)を含む下記電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、110℃、20分、加熱乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
なお、上記チタニルフタロシアン顔料は、特開2001−19871号公報の段落番号[0140]に記載の合成例1に準じて合成した。
【0110】
(電荷発生層用塗工液)
上記チタニルフタロシアニン顔料 5重量部
ブチラール樹脂(エスレックBMS:積水化学) 2重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0111】
<電荷輸送層の形成>
次に、この電荷発生層上に下記構造式(1)の電荷輸送物質を含む電荷輸送層用塗工液を用いて浸漬塗工し、80℃、10分の前乾燥後140℃、30分加熱乾燥させ、膜厚40μmの電荷輸送層を形成した。
【0112】
(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量5万) 1重量部
下記構造式(1)の電荷輸送物質 1重量部
テトラヒドロフラン 10重量部
【0113】
【化15】

【0114】
<光電荷充電層の形成>
このように作製した電荷輸送層の上に、下記光電荷充電層塗工液をスプレー塗工法で塗布、室温乾燥後、160℃、20分加熱乾燥して、膜厚1μmの光電荷充電層を形成し、電荷充電帯電用の感光体を作製した。
【0115】
(光電荷充電層塗工液)
下記構造式(2)のビスアゾ顔料 3重量部
下記構造式(3)の電荷輸送物質 3重量部
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量5万) 1重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
シクロヘキサノン 40重量部
【0116】
【化16】

【0117】
【化17】

【0118】
<評価>
上述のようにして作製した電荷発生層用塗工液と光電荷充電層用塗工液をそれぞれ、石英ガラス基板上に感光体と同じ条件で塗布・乾燥して、各々の吸収スペクトルを市販の分光光度計(日立:UV−3100)にて吸収スペクトルを測定した。その結果、電荷発生層の吸収スペクトルは、図8に示すCGM Cの吸収スペクトルにほぼ一致し、最大吸収ピーク波長は800nmであった。また、光電荷充電層の吸収スペクトルは図8に示すCGM Aの吸収スペクトルにほぼ一致し、最大吸収ピーク波長は583nmであった。また、光電荷充電層の645nmの透過率は10%であった。更に、光電荷充電層は、780nmに吸収を有しなかった。
【0119】
このように作製した感光体の光充電帯電特性を図7に示す帯電特性測定装置を構成する表面電位計(22)を用いて、下記のようにして測定を行なった。
即ち、200mm/sの速度で回転する感光体(1)に、露光光源として645nmの波長領域のLED(20)を用いて、露光を行った後、φ16mm、電気抵抗10Ω・cmのシリコンゴムローラからなる電圧印加部材(3)を接触させ、連れ周り状態で−500Vの電圧を印加し、画像形成装置の現像部を想定した位置に設置した表面電位計(22)で露光部の帯電電位を測定した。又、非露光部の帯電電位として、LEDを点灯せずに電圧印加部材(3)に−500Vの電圧を印加した場合の帯電電位を測定した。LEDを露光しない場合の帯電電位をV(OFF)、LEDを露光した場合の帯電電位をV(ON)とし、静電荷潜像のコントラストΔVは下記式で求めた。
【0120】
【数1】

V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−400V、ΔV=−200Vであった。
【0121】
実施例1の感光体は電子写真方式での現像に充分な静電コントラストを持っている。
更に、上記の如く帯電を行った感光体に図7に示す除電部材(21)として700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部、非露光部の電位ともに0Vとなった。
【0122】
次にこの感光体を用いて、図4に示す画像形成装置で画像形成を行なった。以下に画像形成方法を説明する。
感光体(1)に、像露光手段(2)として、645nmの波長領域のLEDを用いて600dpiのドット画像露光した直後に、電圧印加手段(3)の電圧印加部材として、直径8mmのステンレス製軸上に体積抵抗率約10Ω・cmの導電性ウレタン弾性層を設けた導電性ローラを用い、これを感光体表面に接触させて、−500Vの電圧を印加し静電荷潜像を形成した。現像手段(4)としては正極性に帯電したトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を用い、現像バイアスを−200Vに設定して正規現像を行なった。
転写手段(5)は、導電性の帯電ローラに負極性の電圧を印加し、感光体表面のトナー画像を紙上に転写し、図示しない加熱定着装置で定着を行った。
感光体表面のクリーニング手段(6)は、ファーブラシクリーニングを用いた。除電手段(7)として、700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で、除電した。
上記条件で画像を形成したところ、地汚れのない鮮明なドット画像が得られた。
【0123】
次に本発明の帯電方法を繰り返した場合の感光体の劣化を調べるために下記の強制疲労テストを行なった。
感光体に645nmのLED光照射と−500Vの電圧印加および700nm以長の光の全面露光のみを5000回繰り返して、強制疲労テストを行なった後、25℃、50%、と30℃、85%の温湿度環境下で初期の画像形成と同様の方法で画像を作成したところ、いずれも画像ボケ、画像流れのない初期と同様の鮮明なドット画像が得られた。
【0124】
(実施例2)
実施例1における光電荷充電層の645nmでの透過率が18%になるように光電荷充電層の付着量を変更した以外は実施例1と同様に感光体を作製し、同様な評価を行なった。
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−380V、ΔV=−180Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は0Vとなった。
更に、図4に示す画像形成装置で画像形成を行なったところ、−500Vの印加電圧で感光体の初期帯電電位は−320Vであった。実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、中間調部も均一でざらつき感のない鮮明な画像が得られた。
【0125】
(実施例3)
実施例1における光電荷充電層の645nmでの透過率が30%になるように光電荷充電層の付着量を変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様な評価を行なった。
実施例1の場合と同様に、−500Vの電圧を印加したときの帯電電位を測定した。
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−150V、−250V、ΔV=−100Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は10Vとなった。
更に、図4に示す画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケは発生しなかったが、実施例1と比較してやや画像濃度の低い画像が得られた。
【0126】
(実施例4)
実施例1の光電荷充電層の構造式(3)で表わされる電荷輸送物質の代わりに下記構造式(4)の化合物を含有させた以外は、実施例1と同様に感光体を作製し、同様の評価を行なった。
【0127】
【化18】

【0128】
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−150V、−450V、ΔV=−300Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は0Vとなった。
【0129】
この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、鮮明な画像が得られた。更に実施例1と同様に−500Vの電圧印加と780nmのレーザの全面露光のみを10000回繰り返して、強制疲労テストを行なった後、25℃、50%、と30℃、85%の温湿度環境下で初期の画像形成と同様の方法で画像を形成したところ、いずれも画像ボケ、画像流れのない初期と同様の鮮明なドット画像が得られた。
【0130】
(実施例5)
実施例1における光電荷充電層の電荷輸送物質を下記構造式(5)で表わされる化合物に変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製し、同様の評価を行なった。
【0131】
【化19】

【0132】
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−400V、ΔV=−200Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は10Vとなった。
この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、実施例1の画像と比較すると画像濃度がやや低めだが、鮮明な画像が得られた。
【0133】
(実施例6)
実施例1の光電荷充電層の電荷発生物質を下記構造式(6)で表わされるビスアゾ顔料を用いた以外は実施例1と同様に感光体を作製し、実施例1と同様に帯電特性測定装置用いてを測定した。
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−450V、ΔV=−250Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、70nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は0Vとなった。
【0134】
【化20】

この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、画像ボケがなく、鮮明な画像が得られた。実施例1と比較してコントラストの高い画像であった。
【0135】
(実施例7)
実施例1の光電荷充電層の電荷発生物質を下記構造式(7)で表わされるビスアゾ顔料を用いた以外は実施例1と同様に感光体を作製し、同様の評価した。
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−320V、ΔV=−120Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は0Vとなった。
【0136】
【化21】

この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、実施例1と比較してやや濃度の低い鮮明な画像が得られた。
【0137】
[比較例1]
実施例1で光電荷充電層を設けなかった以外は実施例1と同様に感光体を作製した。
実施例1と同様に−500Vの電圧印加で帯電特性を測定したが、V(OFF)=0V、V(ON)=+20Vであった。
印加電圧と同極性で電子写真用の現像に充分な静電コントラストは得られなかった。
【0138】
次に比較例1の感光体を用いて実施例1で用いた画像形成装置の電圧印加ローラの代わりに、放電帯電用の非接触帯電ローラを搭載し、放電により感光体表面に−400Vの帯電を行ない、実施例1のLEDを用いて画像部電位が−400V、地肌部電位が−200Vのドット状の静電荷潜像を形成して、実施例1と同様に画像形成をしたところ、実施例1と同様に鮮明な初期画像が得られた。
その後、コロナ放電による−400Vの帯電と700nm以長の光の全面露光のみを5000回繰り返した後、25℃、50%、と30℃、85%の環境下で上記と同様に画像を形成したところ、25℃、50%RH環境下で画像が太くぼけていた。また30℃、90%RH環境下では、画像流れが発生した。
【0139】
以上のように、本発明の導電性支持体上に少なくとも感光層と光電荷充電層で構成される感光体を用いて、光電荷充電による静電か潜像を行なえば、従来の放電帯電を用いた場合より、感光体の劣化がなく、画像ボケや画像流れが発生しにくい画像形成装置が提供できる。
【0140】
(実施例8)
導電性支持体を電鋳法で作製した厚さ30μm、周長180mm、ベルト幅340mmの円筒状ニッケルベルトを用いて、その上に実施例1と同じ組成、膜厚の下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、光電荷充電層を設けてエンドレスベルト状感光体を作製した。
この感光体を図5記載の画像形成装置で画像形成を行なった。その際、エンドレスベルト感光体は直径25mmの2本のローラで、支持駆動され100mm/sの速度で回転させた。像露光手段(2)は645nmの波長領域のLEDを用い、電圧印加部材(3)としてφ16mm、電気抵抗10Ω・cmのシリコンゴムローラを接触させ、連れ周り状態で−500Vの電圧を印加したときの帯電電位を測定した。
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−450V、−250Vであった。
実施例8のエンドレスベルト状感光体は電子写真方式での現像に充分な静電コントラストを持った静電荷潜像を形成できる。
【0141】
現像手段(4)は、正帯電トナーとキャリアからなる2成分現像剤を用いて正規現像を行なった。転写手段(5)は、導電性ローラに負極性の電圧を印加し、トナー画像を紙に転写した。クリーニング手段(6)は感光体表面の摩耗を少なくするために、ファーブラシを用いた。除電手段(7)は700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用いた。700nm以長の光での露光後の電位は0Vであった。
また、感光体(1)と2本の駆動ローラと電圧印加ローラ(3)は一体化し、電子写真装置から着脱できるようユニット化された。
このような装置を用いて画像を形成したところ、実施例1と同様に鮮明な画像が得られた。
【0142】
(実施例9)
下記光電荷充電層塗工液を用いて乾燥膜厚1μmの光電荷充電層を感光層の表面に設けた以外は、実施例1と同様に充電帯電用の感光体を作製し、評価した。
【0143】
(光電荷充電層塗工液)
前記構造式(2)のビスアゾ顔料 3重量部
前記構造式(3)の電荷輸送物質 3重量部
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量5万) 1重量部
アルミナ 2重量部
(平均一次粒径:0.3μm、「AA03」住友化学工業製)
テトラヒドロフラン 100重量部
シクロヘキサノン 40重量部
【0144】
V(OFF)、V(ON)、ΔVはそれぞれ、−200V、−400V、ΔV=−200Vであった。
また、LEDを点灯して帯電させた感光体に700nm以短の波長域の光をカットするフィルターをかけたハロゲンランプを用い、700nm以長の光で露光したところ、露光部の電位は0Vとなった。
この感光体を用いて実施例1と同様に画像形成を行なったところ、鮮明な画像が得られた。
【0145】
またこの感光体に実施例1と同様に帯電と露光のみの繰り返し強制疲労テストを行なった後に25℃、50%と30℃、85%の温湿度環境下で初期の画像形成と同様の方法で画像を形成したところ、いずれの環境下においても、画像ボケ、画像流れのない初期と同様の鮮明なドット画像が得られた。
更に、実施例1の感光体と実施例9の感光体を図4に示す画像形成装置にて、1万枚の連続画像形成を行なった。実施例1の感光体は、1万枚の画像形成後に感光体表面にわずかにスジ状の傷が発生し、出力画像にはわずかなスジ状の画像欠陥が発生した。一方、実施例9の感光体においては、感光体表面に傷等が認められず、1万枚後の画像にも欠陥は認められなかった。
【0146】
(実施例10)
<下引き層の形成>
外径100mmφのアルミ製円筒管上に、下記組成の下引き層塗工液を乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
【0147】
(下引き層用塗工液)
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307-60-EL:大日本インキ化学工業) 3重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミンG-821-60:大日本インキ化学工業) 2重量部
酸化チタン(CR−EL:石原産業) 20重量部
メチルエチルケトン 100重量部
【0148】
<電荷発生層の形成>
この下引き層上に下記電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、110℃、20分、加熱乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0149】
(電荷発生層用塗工液)
前記構造式(6)のビズアゾ顔料 5重量部
ブチラール樹脂(エスレックBMS:積水化学) 2重量部
シクロヘキサノン 60重量部
メチルエチルケトン 20重量部
【0150】
<電荷輸送層の形成>
次に、この電荷発生層上に下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて浸積塗工し、80℃、10分の前乾燥後140℃、30分加熱乾燥させ、膜厚40μmの電荷輸送層を形成した。
【0151】
(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量5万) 1重量部
前記構造式(1)の電荷輸送物質 1重量部
テトラヒドロフラン 10重量部
【0152】
<光電荷充電層の形成>
このように作製した電荷輸送層の上に、下記組成の光電荷充電層塗工液をスプレー塗工法で塗布、室温乾燥後、160℃、20分加熱乾燥して、膜厚1μmの光電荷充電層を形成し、電荷充電帯電用の感光体を作製した。
【0153】
(光電荷充電層塗工液)
チタニルフタロシアニン顔料 3重量部
(XDスペクトルを図10に示す)
前記構造式(3)の電荷輸送物質 3重量部
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量5万) 1重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
シクロヘキサノン 40重量部
【0154】
<評価>
上述のように作製した電荷発生層用塗工液と光電荷充電層用塗工液をそれぞれ、石英ガラス基板上に感光体と同じ条件で塗布・乾燥して、各々の吸収スペクトルを市販の分光光度計(日立:UV−3100)にて吸収スペクトルを測定した。その結果、光電荷充電層の吸収スペクトルは、図8に示すCGM Cの吸収スペクトルにほぼ一致し、最大吸収ピーク波長は800nmであった。また、電荷発生層の吸収スペクトルは図8に示すCGM Aの吸収スペクトルにほぼ一致し、最大吸収ピーク波長は583nmであった。また、光電荷充電層の780nmの透過率は10%であった。
【0155】
このように作製した感光体の光充電帯電特性を露光光源としてポリゴンミラーで偏向された780nmの波長領域のLD光を、除電部材として565nmのLEDを用いた以外は実施例1と同様に図7に示す帯電特性測定装置を用いて、下記のごとく測定を行なった。
即ち、200mm/sの速度で回転する感光体(1)に、780nmの波長領域の(20)に相当するLD光をポリゴンミラーを介して露光し、φ16mm、電気抵抗10Ω・cmのシリコンゴムローラからなる電圧印加部材(3)を接触させ、連れ周り状態で−500Vの電圧を印加し、実施例1と同様に帯電電位を測定した。
V(OFF)は−180V、V(ON)は−400V、静電コントラストΔVは−220Vであった。
又上記のように帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部、非露光部の電位はともに−10Vとなった。
【0156】
次にこの感光体を用いて、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で画像形成を行なった。以下に画像形成方法を説明する。
線速100mm/sで回転する感光体(1)に780nmの波長領域のLD光をポリゴンミラーを介して600dpiのドット画像を露光し、電圧印加部材として、直径8mmのステンレス製軸上に体積抵抗率約10Ω・cmの導電性ウレタン弾性層を設けた導電性の電圧印加ローラ(3)を用いて、感光体(1)表面に接触し、−500Vの電圧を印加して静電潜像を形成した。
【0157】
現像手段(4)としては正極性に帯電したトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を用い現像バイアスを−200Vに設定して正規現像を行なった。転写手段としては、導電性の転写ローラを用い、ローラに負極性の電圧を印加してトナー画像を紙に転写した。トナー画像は加熱定着装置で定着を行ない、クリーニング手段(6)として、ファーブラシクリーニングを用いて感光体表面をクリーニングした。上記条件で画像を形成したところ、画像ボケがなく、中間調部も均一でざらつき感のない鮮明な画像が得られた。
また、565nmのLED光の全面露光で感光体上の残留電荷を除去した。除電後の感光体表面の電位は−10Vであった。
【0158】
次に本発明の帯電方法を繰り返した場合の感光体の劣化を調べるために下記の強制疲労テストを行なった。
感光体に780nmのLD光照射と−500Vの電圧印加および565nmのLED光の全面露光の5000回繰り返しテストを行なった後、25℃、50%、と30℃、85%の温湿度環境下で初期の画像形成と同様の方法で画像を作成したところ、いずれも画像ボケ、画像流れのない初期と同様の鮮明なドット画像が得られた。
【0159】
(実施例11)
実施例10で使用したチタニルフタロシアニンを図11にXDスペクトルを示すチタニルフタロシアニン(最低角が7.5度にピークを有し、最大ピークが27.2度に有するチタニルフタロシアニン)に変更した以外は、実施例10と同様に感光体を作製し、評価を行なった。V(OFF)は−200V、V(ON)は−350V、静電コントラストΔVは−150Vであった。
LDを点灯して帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部の電位は−10Vとなった。
【0160】
更に、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、中間調部も均一でざらつき感のない鮮明な画像が得られた。画像コントラストは、実施例10の画像にやや劣っていた。
【0161】
(実施例12)
実施例10に使用したチタニルフタロシアニンを図12にXDスペクトルを示すチタニルフタロシアニン(26.3度に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン)に変更した以外は、実施例10と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
実施例10の場合と同様に、−500Vの電圧を印加したときの帯電電位を測定した。V(OFF)は−180V、V(ON)は−280V、静電コントラストΔVは−100Vであった。LDを点灯して帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部の電位は−10Vとなった。
【0162】
更に、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、実施例10の画像と比較してやや画像濃度の低い画像が得られた。
【0163】
(実施例13)
実施例10において、光電荷充電層の780nmでの透過率が20%になるように光電荷充電層の付着層を変更した以外は実施例10と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
実施例10の場合と同様に、−500Vの電圧を印加したときの帯電電位を測定した。
V(OFF)は−180V、V(ON)は−380V、静電コントラストΔVは−200Vであった。
【0164】
LDを点灯して帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部の電位は−10Vとなった。
更に、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、中間調部も均一でざらつき感のない鮮明な画像が得られた。
【0165】
(実施例14)
実施例10において、光電荷充電層の780nmでの透過率が30%になるように光電荷充電層の付着量を変更した以外は実施例10と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
V(OFF)は−150V、V(ON)は−300V、静電コントラストΔVは−150Vであった。
LDを点灯して帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部の電位は−20Vとなった。
【0166】
更に、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、実施例10と比較するとわずかに画像濃度の低い画像が得られた。
【0167】
(実施例15)
実施例14において、電荷発生層に用いる電荷発生物質を下記構造式(8)のものに変更した以外は実施例14と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
【0168】
【化22】

【0169】
電荷発生層の吸収スペクトルは、図9におけるCGM Bに相当し、帯電用露光波長780nmに吸収を有するものである。
実施例14の場合と同様に、−500Vの電圧を印加したときの帯電電位を測定した。V(OFF)は−180V、V(ON)は−280V、静電コントラストΔVは−100Vであった。
【0170】
LDを点灯して帯電させた感光体に565nmのLED光を露光したところ、帯電電位は光減衰し、露光部の電位は−40Vとなった。
更に、図6に示すプロセスカートリッジを用いた画像形成装置で実施例1と同様に画像形成を行なったところ、画像ボケがなく、実施例14と比較するとかなり画像濃度の低い画像が得られた。
【0171】
(実施例16)
外径100mmφのアルミ製円筒管上に、実施例1と同じ下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を作製した。次に電荷輸送層上に下記組成液を用いた以外は実施例1と同様に、乾燥膜厚1μmの光電荷充電層を形成し、感光体を作製した。
【0172】
(光電荷充電層塗工液)
前記構造式(2)のビスアゾ顔料 3重量部
下記構造式(9)の高分子電荷輸送物質 3重量部
(重量平均分子量:約135000)
テトラヒドロフラン 100重量部
シクロヘキサノン 40重量部
【0173】
【化23】

【0174】
この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、画像ボケがなく鮮明な画像が得られた。
更に、実施例9と同様に、1万枚の連続画像形成を行なったところ感光体表面に傷等が認められず、1万枚後の画像にも欠陥は認められなかった。
【0175】
(実施例17)
実施例16の高分子電荷輸送物質の代わりに下記構造式(10)の高分子電荷輸送物質(重量平均分子量:約130000)を使用した以外は実施例16と同様に感光体を作製した。
この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、画像ボケがなく鮮明な画像が得られた。
更に、実施例9と同様に、1万枚の連続画像形成を行なったところ感光体表面に傷等が認められず、1万枚後の画像にも欠陥は認められなかった。
【0176】
【化24】

【0177】
(実施例18)
実施例17の光電荷充電層を下記の如く形成した以外は実施例17と同様に感光体を作製、評価した。
光電荷充電層は下記の光電荷充電層塗工液を電荷輸送層表面にスプレー塗工によって塗布し、150℃で30分加熱乾燥を行なって、約1μmの硬化膜を形成した。
【0178】
(光電荷充電層塗工液)
前記構造式(2)のビスアゾ顔料 1.5重量部
メチルメタアクリレート−スチレン−n−ブチルメタアクリレート共重合樹脂
(平均分子量:15000、組成比:20/30/30(重量比))0.06重量部
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 0.5重量部
下記構造式(11)の電荷輸送性化合物 1重量部
ベンゾイルパーオキサイド 0.01重量部
テトラヒドロフラン 50重量部
シクロヘキサノン 15重量部
【0179】
【化25】

【0180】
この感光体を用いて、実施例1と同様の画像形成装置を用いて同じ条件で画像を形成したところ、画像ボケがなく鮮明な画像が得られた。
更に、実施例9と同様に、1万枚の連続画像形成を行なったところ感光体表面に傷等が認められず、1万枚後の画像にも欠陥は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の電子写真感光体は、繰り返し使用においても異常画像が発生せず、高耐久性及び高信頼性を有するので、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置としての利用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の電子写真感光体の基本層構造を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体における帯電及び潜像形成の原理を示す図である。
【図3】積層型感光層を有する本発明の電子写真感光体の例の層構成を示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置の構成の例を示す図である。
【図5】エンドレスベルト状感光体を用いた場合の本発明の画像形成装置の例を示す図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジの例を示す図である。
【図7】感光体の帯電特性を測定するための測定装置を示す図である。
【図8】画像露光用の光源波長と電荷発生物質の吸収スペクトルとの関係を示した図である。
【図9】三種類の電荷発生物質の吸収スペクトルを対比した図である。
【図10】実施例1で用いたチタニルフタロシアンのXDスペクトルを示した図である。
【図11】実施例11で用いたチタニルフタロシアンのXDスペクトルを示した図である。
【図12】実施例12で用いたチタニルフタロシアンのXDスペクトルを示した図である。
【符号の説明】
【0183】
1 感光体
2 像露光手段
3 電圧印加手段、電圧印加ローラ、電圧印加部材
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 除電露光手段、除電手段
8 転写紙
9a 駆動ローラ
9b 従動ローラ
11 導電性支持体
12 感光層
12a 電荷発生層
12b 電荷輸送層
13 光電荷充電層
14 下引き層
15 トナー搬送コイル
16 現像剤セットケース
17 ドクターブレード
18 搬送スクリュー
19 現像スリーブ
20 LED光源
21 除電ローラ、除電部材
22 表面電位計





【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、感光体に像露光を行なう工程と該像露光と同時または露光後に、該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して感光体に印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成する工程を有する画像形成方法に用いる電子写真感光体において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層と少なくとも前記像露光で電荷を発生する電荷発生物質を含有する光電荷充電層とを有し、且つ該光電荷充電層が感光体の表面にあることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記光電荷充電層に含有される電荷発生物質が有機顔料であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記有機顔料がアゾ顔料であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記アゾ顔料が下記一般式(I)で表わされるアゾ顔料であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
【化1】

[式中、Cp、Cpはカップラー残基を表わす。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表わし、同一でも異なっていてもよい。また該Cp、Cpは下記一般式(II)
【化2】

(式中、R203は、水素原子、アルキル基、アリール基を表わす。R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表わし、同一でも異なっていてもよい。Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表わす。)で表わされる基である。]
【請求項5】
前記アゾ顔料のCpとCpとが互いに異なるものであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記有機顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、かつ前記7.3°のピークと9.4°のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないことを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記光電荷充電層に電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電荷輸送物質が正孔輸送物質であることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記正孔輸送物質が、少なくともトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記電荷輸送性物質が高分子電荷輸送性物質であることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記高分子電荷輸送性物質が正孔輸送物質であることを特徴とする請求項12に記載の電子写真感光体。
【請求項14】
前記高分子電荷輸送性物質が架橋構造を有することを特徴とする請求項12に記載の電子写真感光体。
【請求項15】
前記感光層が有機顔料を含有し、前記光電荷充電層に用いられる有機顔料と該感光層に用いられる有機顔料とが異なるものであり、該光電荷充電層に用いられる有機顔料の最大吸収波長と該感光層に用いられる有機顔料の最大吸収波長とが、200nm以上離れていることを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項16】
前記光電荷充電層中にフィラーが含有されることを特徴とする請求項1〜15の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項17】
前記感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなることを特徴とする請求項1〜16の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項18】
前記導電性支持体がエンドレスベルト形状であることを特徴とする請求項1〜17の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項19】
少なくとも、感光体と該感光体に像露光を行なう像露光手段、該像露光と同時または像露光後に該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して該感光体表面に印加電圧と同極性の静電荷潜像を形成するための電圧印加手段を有する画像形成装置において、該感光体が請求項1〜18の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
少なくとも、感光体と該感光体に像露光を行なう像露光手段、該像露光と同時または像露光後に該感光体と接触している導電性電圧印加部材を介して該感光体に電圧を印加して該感光体表面に印加電圧と同極性の静電潜像を形成するための電圧印加手段、及び感光体上の静電荷を除去するための除電用露光手段を有する画像形成装置において、該感光体が請求項1〜18の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
前記像露光手段として400nm以上の波長の光源を用いることを特徴とする請求項19または20に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記像露光手段に用いられる光を光電荷充電層が80%以上吸収することを特徴とする請求項21に記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記像露光手段に用いられる光の波長が、感光層に用いられる電荷発生物質への吸収のない領域の光であることを特徴とする請求項19〜22の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記感光体上の静電荷を除去するための除電用露光手段による除電光が、光電荷充電層を30%以上透過することを特徴とする請求項19〜23の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項25】
前記感光体の光電荷充電層が正極性電荷の輸送機能を有しており、電圧印加部材に負極性電圧が印加されることを特徴とする請求項19〜24の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項26】
感光体と、像の露光手段、電圧印加手段、現像手段、クリーニング手段、除電手段及び転写手段から選ばれる少なくとも1つとを一体化し、画像形成装置本体に着脱自在に設けたプロセスカートリッジであって、該感光体が請求項1〜18の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−195056(P2006−195056A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5056(P2005−5056)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】