説明

電子写真用ローラの製造方法

【課題】本発明の目的は、表面へのピンホール等の発生を抑制しつつ、コロナ放電処理を用いて電気抵抗が調整された表面層を有する電子写真用ローラの製造方法を提供することにある。
【解決手段】導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有している電子写真用ローラの製造方法であって、下記(1)〜(3)の工程を有する。(1)該導電性軸芯体の周囲に、樹脂と該樹脂に分散されているカーボンブラックを含む樹脂層を形成する工程、(2)該樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させる工程、(3)シリカ粒子が付着してなる該樹脂層の表面にコロナ放電処理を施す工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真用ローラの製造方法、再生電子写真用ローラの製造方法、及び導電性ローラの電気抵抗の低減化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置には、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ等として、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックとを含む導電性の表面層を備えた導電性ローラが用いられている。近年、電子写真用画像形成装置のより一層の高性能化の進展に伴って、導電性ローラの電気抵抗をより精密に制御することが要求されてきている。一般に、樹脂に導電剤を分散させて導電化する場合、導電剤の分散状態等によって電気抵抗が変動しやすい。
【0003】
一方、導電性ローラは、電子写真装置内で継続的に通電された結果、電気抵抗が上昇してくる傾向がある。その原因の一つとして、導電性軸芯体に印加される電圧や当接する他部材との電位差により、表面層中の導電剤の分散状態が変化するためであると言われている。ところで、環境負荷の低減の観点から、このような、使用に伴って電気抵抗が変化してしまった導電性ローラを再利用するための技術開発の必要性が高まってきている。
【0004】
特許文献1には、金属製の軸体の外周に弾性導電層を設けた電子写真用の導電性ロールの表面へのコロナ処理により、当該表面に現像剤等が均一に付着するようにしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−40759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載されているようなコロナ処理を、カーボンブラックを含む導電性の表面層に施したところ、コロナ放電電極を近づける、或いはコロナ放電電極への印加電力を増加させることで、電気抵抗を変化させることができることを見出した。
【0007】
しかしながら、電気抵抗を変化させることのできるようなコロナ処理を施した場合、放電による短絡リーク現象の発生により、表面層の表面にピンホールが形成されたり、表面が粗面化されるといった課題があることが分かった。
【0008】
従って、本発明の目的は、表面性に与える影響を抑えつつ、コロナ放電処理することにより、電気抵抗が調整された表面層を有する電子写真用ローラの製造方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、使用に伴って電気抵抗が上昇した導電性表面層の電気抵抗を低下させて高品位な再生電子写真用ローラを製造する方法を提供することにある。
【0009】
更に本発明の他の目的は、カーボンブラックを含む導電性の表面層を有する電子写真用ローラの該表面層の電気抵抗を低下させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子写真用ローラの製造方法は、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有している電子写真用ローラの製造方法であって、
(1)該導電性軸芯体の周囲に、樹脂と該樹脂に分散されているカーボンブラックを含む樹脂層を形成する工程と、
(2)該樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
(3)シリカ粒子が付着してなる該樹脂層の表面にコロナ放電処理を施す工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る再生電子写真用ローラの製造方法は、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有している電子写真用ローラの表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
シリカ粒子が付着している該電子写真用ローラの表面にコロナ放電処理を施す工程とを有することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明に係る導電性ローラの電気抵抗の低減化方法は、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している表面層とを有している導電性ローラの表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
シリカ粒子が付着している該表面層にコロナ放電処理を施す工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子写真用ローラの表面へのピンホールなどの発生を抑えつつ表面層の電気抵抗を調整することができる。その結果、高品位な電子写真画像の形成に資する電子写真用ローラを得ることができる。また、本発明によれば、使用によって電気抵抗が上昇した表面層を有する電子写真用ローラの当該表面層の電気抵抗を低減させることにより、再び高品位な電子写真画像の形成に用い得る再生電子写真用ローラを得ることができる。
【0014】
更に本発明によれば、カーボンブラックを含む導電性の表面層を有する電子写真用ローラの当該表面層の電気抵抗を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子写真用ローラの一例を示す、(a)長手方向に平行、(b)長手方向に垂直な概略断面図である。
【図2】本発明に係わるシリカ粒子付着装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係わるコロナ放電処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係わる抵抗測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係わる電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係わる電子写真プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、上述のとおり、カーボンブラックを分散した樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させた後にコロナ放電処理を施すことで、導電性ローラの表面を破壊することなく、電気抵抗を低下させた表面層を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明者らは、その理由を以下のように推察している。
【0017】
樹脂層中のカーボンブラックは、樹脂層中で完全に均一に分散されているわけではなく、密な部分と疎な部分が存在する。そのため、カーボンブラックを分散した樹脂層の表面に直接コロナ放電処理を施した場合、カーボンブラックの密な部分にコロナ電流が集中する。その結果、カーボンブラックの密な部分に過剰なコロナ電流が流れ続けて短絡リーク現象が発生し易く、表面にピンホール等が生じることがある。このような電子写真用ローラを現像ローラや帯電ローラとして電子写真画像の形成に用いると、電子写真画像に黒点や白点等の欠陥を生じさせることがある。
【0018】
そこで、本発明者らは、表面層の電気抵抗を、導電性ローラの表面にコロナ放電処理を施すことによって調整する際に生じることがある短絡リークの抑制方法を鋭意検討した。その結果、カーボンブラックを分散した樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させた後にコロナ放電処理を施すことが、短絡リーク現象の抑制に有効であることを見出した。
【0019】
導電性ローラの表面に付着しているシリカ粒子は、表面層の特定の箇所に過剰にコロナ電流が流れ続けるのを妨げ、コロナ放電処理の際の短絡リークの発生を抑制し、短絡リークの発生に伴うロール表面の損傷の発生を抑制しているものと考えられる。すなわち、シリカ粒子が表面に付着している導電性ローラの当該表面にコロナ放電処理を施した場合、コロナ放電中でシリカ粒子が負に帯電する。そのため、コロナ放電の電界の作用により、コロナ電流の集中部には、シリカ粒子がより高密度に存在するようになる。その結果、導電性ローラ表面のコロナ電流の集中部の導電性が相対的に低下し、短絡リークの発生が抑制されるものと考えられる。
【0020】
本発明に係る導電性ローラの電気抵抗の低減化方法は以下の工程を有する。
・導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している表面層とを有している導電性ローラの表面にシリカ粒子を付着させる工程。
・シリカ粒子が付着している該表面層にコロナ放電処理を施して、該表面層の電気抵抗を低下させる工程。
【0021】
導電性ローラ表面へのシリカ粒子の付着量としては、0.005mg/cm2〜0.100mg/cm2とすることが好ましい。シリカ粒子の付着量を0.005mg/cm2以上にすることで、短絡リーク現象をより確実に抑制することができる。また、シリカ粒子の付着量を0.100mg/cm2以下にすることで、電気抵抗の低減化効果をより効果的に得られる。
【0022】
さらに、導電性軸芯体に正バイアスを印加してコロナ放電処理を施すことが好ましい。導電性軸芯体に正バイアスを印加することで、コロナ放電中で負帯電したシリカ粒子をローラ表面に高密度に保持することができ、短絡リーク現象をより確実に抑制して画像欠陥を生じにくい。
【0023】
また、本発明に係る導電性ローラの電気抵抗の低減化方法は、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有し、使用によって電気抵抗が上昇した電子写真用ローラを再生せしめ、再生電子写真用ローラを製造する方法に適用できる。具体的には、以下の工程を含むことで表面層の電気抵抗を低下させた再生電子写真用ローラを製造することを特徴とする。
・電気抵抗が上昇した電子写真用ローラの表面層にシリカ粒子を付着させる工程。
・シリカ粒子が付着している表面層にコロナ放電処理を施す工程。
【0024】
また、本発明は、この再生電子写真用ローラの製造方法により製造された再生電子写真用ローラを包含する。
【0025】
使用した電子写真用ローラはシリカ粒子を付着させる前に、使用後の電子写真用ローラ表面に付着している現像剤由来の付着物を除去する工程を有することができる。除去方法としては特に限定されないが、例えばエアーブローで処理し、さらに粘着テープに付着させて除去することができ、除去の程度は粘着テープの付着物による着色がなくなる程度まで行うことができる。
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
<本発明に係わる電子写真用ローラ>
本発明に係わる電子写真用ローラの一例を、図1の模式図に示す。導電性軸芯体と表面層の間には弾性層を形成しても形成しなくても良い。また、表面層を2層以上形成しても良い。
【0028】
図中の(a)は電子写真用ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、(b)は長手方向に垂直な断面を表したものである。図1において、電子写真用ローラ10は、円柱状の導電性軸芯体11の周囲に弾性層12、その周囲に表面層13が形成されている。
【0029】
以下、図1の電子写真用ローラについて詳細に説明する。
【0030】
(導電性軸芯体)
導電性軸芯体11の材料は、導電性であればとくに限定されない。炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0031】
(弾性層)
弾性層は、使用される装置において要求される弾性を弾性ローラに付与するために設けられる。具体的な構成としては、中実体、発泡体のいずれであってもよい。また、弾性層は、単層であっても、複数の層からなっていてもよい。例えば、現像ローラや帯電ローラにおいては、感光ドラム、及びトナーと常に圧接しているので、これらの部材間において相互に与えるダメージを低減するため、低硬度、低圧縮永久歪みの特性を持つ弾性層が設けられる。
【0032】
弾性層の材質としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
弾性層12の厚さは、電子写真用ローラ10に充分な弾性を与えるために0.5mm乃至10.0mmであることが好ましい。弾性層12の厚さを0.5mm以上にすることで、電子写真用ローラ10に充分な弾性が得られ、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。また、弾性層12の厚さを10.0mm以下にすることで、電子写真用ローラ10のコストを抑えることができる。
【0034】
弾性層12の硬度は、Asker−C硬度10度乃至80度であることが好ましい。弾性層12の硬度を10度以上にすることで、弾性層の変形に起因する画像弊害の発生を抑制することができる。また、弾性層12の硬度を80度以下にすることで、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。
【0035】
弾性層12には、低硬度及び低圧縮永久歪の特性を阻害しない範囲内で、充填剤を添加しても良い。
【0036】
電子写真用ローラ10は、半導体領域の電気抵抗を有する必要がある。そのため、弾性層12が導電剤を含有し、体積抵抗率1×104Ω・cm乃至1×1010Ω・cmのゴム材料から形成されていることが好ましい。ここで、弾性層材料の体積抵抗率が1×104Ω・cm乃至1×1010Ω・cmであれば、トナーに対して均一な帯電制御性を得ることが可能である。さらに、より好ましくは1×104Ω・cm乃至1×109Ω・cmである。
【0037】
弾性層材料の体積抵抗率の測定は、以下の方法で求めることができる。
【0038】
はじめに、弾性層12の材料を、弾性層12の成形時と同じ条件で、弾性層12と同じ厚さに硬化させた平板状のテストピースを作製する。次に、テストピースから直径30mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設け、もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径15mmの主電極膜と、内径18mm、外径28mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0039】
次に、下記表1に示した装置を用いて、下記表1に示した条件下で、測定サンプルの体積抵抗の測定を行う。測定時には、主電極を測定サンプルの主電極膜からはみ出さないように置く。また、ガードリング電極を測定サンプルのガードリング電極膜からはみ出さないように置く。測定は、温度23℃、湿度50%RHの環境で行うが、測定に先立って、測定サンプルを、その環境に12時間以上放置しておく。
【0040】
【表1】

【0041】
測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)とするとき、弾性層材料の体積抵抗率RR(Ωcm)は、以下の式によって求めることができる。
【0042】
RR(Ωcm)=π×0.75×0.75×RM(Ω)÷t(cm)
弾性層12の材料を導電化する手段としては、イオン導電機構、または電子導電機構による導電付与剤を上記材料に添加することにより導電化する手法が挙げられる。
【0043】
イオン導電機構による導電付与剤の具体例を以下に挙げる。LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaClの周期律表第1族金属の塩、NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3のアンモニウム塩、Ca(ClO42、Ba(ClO42の周期律表第2族金属の塩等。また、電子導電機構による導電付与剤の具体例を以下に挙げる。カーボンブラック、グラファイトの炭素系物質、アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金の金属或いは合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀の金属酸化物。これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することが出来る。この中でも、カーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるといった観点から好適に用いられる。
【0044】
(表面層)
表面層13として用いられる材料としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。現像ローラや帯電ローラにおいては、特に含窒素化合物であるウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂を用いることがトナーの帯電を制御する上で好ましく、中でもイソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるウレタン樹脂からなることがより好ましい。イソシアネート化合物の具体例を以下に挙げる。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0045】
また、ここで用いるポリオールとしては、以下のものが挙げられる。2価のポリオール(ジオール)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール等。3価以上のポリオールとしては、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等。さらに、ジオール、トリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した高分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド‐プロピレンオキサイドブロックグリコールといったポリオールも使用可能である。また、これらの混合物を用いることもできる。
【0046】
さらに、これらの表面層13に導電性を付与して使用することが出来る。本発明においては、表面層13の材料を導電化する手段として、電子導電機構による導電付与剤であるカーボンブラックを上記材料に添加して用いる。これは、表面層材料に対する分散性が良好なカーボンブラックを用いることで、コロナ放電処理による電気抵抗の低減化効果を得やすく、導電性の制御が容易であるためである。
【0047】
表面層13の厚さは、1.0μm乃至500.0μmが好ましい。さらには、1.0μm乃至50.0μmであることがより好ましい。表面層13を1.0μm以上にすることで、耐久性を与えることができる。また、500.0μm以下、さらに好ましくは50.0μm以下にすることで、MD−1硬度を低くでき、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。本発明における表面層13の厚さとは、キーエンス株式会社製のデジタルマイクロスコープVHX−600を用いて表面層の厚み方向の断面を観察し、表面層と弾性層の界面から表面層表面の平坦部までの距離の任意の5点の相加平均値をいう。
【0048】
電子写真用ローラ10のMD−1硬度は、25.0°乃至40.0°が好ましい。25.0°以上にすることで、当接部材による変形を抑制することができる。また、40.0°以下にすることで、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。ここで、MD−1硬度は、マイクロゴム硬度計(商品名:MD−1 capa タイプA、ピークホールドモード使用、高分子計器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度50%RHに制御した室内で測定したマイクロゴム硬度の値をいう。
【0049】
電子写真用ローラ10の表面粗さの目安としては、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが0.01μm乃至5.00μmであることが好ましい。
【0050】
表面粗さを制御する手段としては、表面層13に所望の粒径の粒子を含有させることが有効である。また、表面層形成前後に、適宜研磨処理を施すことにより所望の表面粗さに形成することも可能である。その場合、弾性層を複数層形成する場合には、複数層を形成後に研磨処理を施せば良い。また、弾性層と表面層を形成する場合には、弾性層を形成後に研磨処理を施した後に表面層を形成しても、表面層を形成後に研磨処理を施しても良い。
【0051】
表面層13に含有させる粒子としては、粒径0.1μm乃至30.0μmの金属粒子及び樹脂粒子を用いることができる。中でも、柔軟性に富み、比較的比重が小さくて塗料の安定性が得やすい樹脂粒子がより好ましい。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子を挙げることができる。これらの樹脂粒子は単独、又は複数種を混合して使用することができる。表面層を複数層形成する場合には、複数層全てに粒子を含有させても良いし、複数層のうちの少なくとも一層に粒子を含有させても良い。
【0052】
<シリカ粒子>
本発明に係る電子写真用ローラまたは導電性ローラの表面に付着させるシリカ粒子について以下に述べる。シリカ粒子の平均一次粒径の目安としては、70nm以上300nm以下であることが好ましい。ここで、平均一次粒径は、BET比表面積測定値より求めた球相当換算径である。そして、BET比表面積は、窒素ガスの吸着量から、BET一点法にて求めることができる。後述する実施例において、BET比表面積の測定には、湯浅アイオニクス社製の「マルチソープ16型」(商品名)を用いた。また、測定条件として、脱気温度は150℃、脱気時間は20分とした。
【0053】
シリカ粒子の平均一次粒径を上記の範囲内とすることでシリカ粒子の樹脂層表面での過度の凝集を抑制し、樹脂層の表面に、より均一に付着させることができる。
【0054】
本発明で用いるシリカ粒子の製造法としては、乾式法、湿式法など任意の方法が用いられる。乾式法は、四塩化珪素を酸素、水素、希釈ガス(例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素など)の混合ガスとともに高温で燃焼させ、製造する方法である。大きな粒径のシリカを製造するためには、水が存在する有機溶媒中で、アルコキシシランを触媒により加水分解、縮合反応させ後、得られたシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥するゾルゲル法を用いることが好ましい。また、シリカ以外の無機微粒子をコアとし、表面をシリカで被覆した構成の微粉体を使用しても良い。
【0055】
本発明に係るシリカ粒子は、表面を化学的に処理したものであっても良い。中でも、疎水化及び帯電性制御の目的で、疎水化処理したものを用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、以下のものが挙げられる。シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機硅素化合物。これらを組み合わせて使用することも可能である。
【0056】
<本発明に係わるシリカ粒子付着装置>
図2は、本発明に用いるシリカ粒子を樹脂層の表面に付着させるための装置(以降、「シリカ粒子付着装置」ともいう)の一例の概略構成図である。図2において、シリカ粒子付着装置20は、電子写真用ローラ10、シリカ粒子21、シリカ粒子供給ローラ22により構成される。
【0057】
回転可能なシリカ粒子供給ローラ22に当接して、電子写真用ローラ10が回転可能に配置される。シリカ粒子供給ローラ22及び電子写真用ローラ10の軸芯体には、不図示のモーターが回転駆動可能に接続される。
【0058】
シリカ粒子供給ローラ22には、発泡セルが外周面に開口した発泡弾性層を軸芯体の周りに形成して用いることが好ましい。
【0059】
発泡弾性層の基材としては、以下のものが挙げられる。ポリウレタン樹脂、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴム原料、または、これらゴム原料の製造原料である単量体。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。この中でも特にポリウレタン樹脂を用いることが耐久性の面で好ましく、中でもイソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるポリウレタン樹脂を用いることがより好ましい。シリカ粒子供給ローラ22の発泡弾性層は、開口径が0.01mm以上1mm以下、発泡弾性層の表面に対する開口部の面積比率が30%以上90%以下の範囲で形成されていることが、シリカ粒子を安定して供給できるため好ましい。
【0060】
次に、シリカ粒子付着装置の動作について説明する。
【0061】
まず、予めシリカ粒子21を充分に含ませたシリカ粒子供給ローラ22を設置する。含ませるシリカ粒子の量は、電子写真用ローラ10に付着させるシリカ粒子の量よりも充分に多いことが好ましい。目安としては、電子写真用ローラ10に付着させる量(質量)の5倍以上1000倍以下である。次に、シリカ粒子21を付着させる電子写真用ローラ10を所望の侵入量になるように設置する。シリカ粒子供給ローラ22に対する侵入量の目安は、0.5mm以上5mm以下である。
【0062】
その後、シリカ粒子供給ローラ22と電子写真用ローラ10をモーターにより所望の回転速度で回転駆動して、電子写真用ローラ10の表面層表面へのシリカ粒子21の付着を開始する。回転速度及び回転方向は、任意に選択すれば良い。また、回転駆動は、シリカ粒子供給ローラ22或いは電子写真用ローラ10の両方を回転駆動してもよいし、いずれか一方にモーターを接続してもう一方を従動回転させても良い。所望の処理時間が経過したら、回転駆動を停止し、電子写真用ローラ10を取り外して処理を完了する。シリカ粒子の付着量は、電子写真用ローラ10のシリカ粒子供給ローラ22に対する侵入量、シリカ粒子供給ローラ22と電子写真用ローラ10の回転速度、処理時間を適宜調整して制御することができる。
【0063】
<本発明に係わるシリカ粒子の付着量測定>
シリカ粒子の付着量は、以下の方法で測定することができる。シリカ粒子を付着させたローラ表面に、任意の面積(例えば1cm×1cm)の粘着テープ(商品名:スコッチメンディングテープ、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けて剥がし取る。シリカ粒子が付着する前後で増加した粘着テープの重量と、実際にシリカ粒子を剥がし取った面積を測定し、単位面積当たりのシリカ粒子の付着量を算出する。シリカ粒子が電子写真用ローラ表面に残った場合は、新たに粘着テープを用意して繰返し剥がし取り、粘着テープの重量増加分を合計して算出すればよい。なお、本発明のシリカ粒子の付着量は、電子写真用ローラ表面の任意の10点の相加平均値とした。
【0064】
<コロナ放電処理装置>
本発明に適用可能なコロナ放電処理装置について、その概要を図3により説明する。図3は本発明の電子写真用ローラの製造方法、及び導電性ローラの電気抵抗の低減化方法を実現するコロナ放電処理装置の一例を示す概略構成図である。図3において、コロナ放電処理装置30は、チャンバー31、コロナ電流計32、高周波電源33、支持部34、回転駆動部35、コロナ電極36、直流バイアス電源37により構成される。コロナ放電処理装置の一例として、コロナ放電表面処理装置(春日電機株式会社製)が挙げられる。
【0065】
被処理物である電子写真用ローラ10は、チャンバー31内に設置された支持部34により芯金の両端を支持し、コロナ電極36と平行に所望の間隔を隔てて配置する。さらに、電子写真用ローラ10の軸芯体は支持部34を介して、直流バイアス電源37に接続するとともに、もう一方の指示部を回転駆動部35に接続する。コロナ電極36はチャンバー31とは絶縁し、さらに所望の周波数の高周波電力を出力する高周波電源33を接続する。コロナ電極36と高周波電源33の間にはコロナ電流計32が接続され、コロナ放電に供給される電流値を測定することができる。コロナ電極36は、異常放電の発生を抑制するため、高周波電力を供給する金属の導電体部と、その周囲を覆う絶縁体部で構成したものが好ましく用いられる。導電体部は導電体であれば特に制限はされないが、AlやCuといった金属を用いることが好ましい。絶縁体部は絶縁性であれば特に制限はされないが、耐久性の面でセラミックを用いることが好ましい。本発明では、直流バイアス電源37より電子写真用ローラ10の導電性軸芯体に任意のバイアスを印加することができる。
【0066】
次に、コロナ放電処理装置の動作について説明する。まず、コロナ放電処理を行う電子写真用ローラ10を所望の位置に設置する。次に、電子写真用ローラ10を所望の回転数で回転駆動させる。次に、直流バイアス電源37より電子写真用ローラ10の導電性軸芯体に任意のバイアスを印加する。その後、高周波電源33より所望の高周波電力をコロナ電極36に供給し、電子写真用ローラ10とコロナ電極36の間にコロナ放電を発生させて処理を開始する。所望の処理時間が経過したら、電力の供給及び回転駆動を停止し、電子写真用ローラ10を取り出して処理を完了する。
【0067】
コロナ放電の発生条件は、所望の電気抵抗の低減化が達成できるように適宜調整することが好ましい。コロナ放電処理の時間は、所望の電気抵抗の低減化を達成するために適宜選択することが好ましい。具体的には、処理時間は30秒間以上300秒間以下が好ましい。30秒間以上にすることで、周方向に均一な処理効果が得られるため好ましい。また、300秒間以下にすることで、過昇温による弾性層の損傷を抑制できるため好ましい。コロナ放電を発生させる際のチャンバー31内の圧力は、とくに制限を受けないが、コロナ放電中の荷電粒子密度を高めて効率良く処理するためには、92kPa乃至111kPaの大気圧近傍下でコロナ放電を形成して処理することが好ましい。
【0068】
コロナ電極36に供給する高周波電力は、周波数及び投入電力を適宜選択することが好ましい。具体的には、周波数は1kHz乃至3GHzの範囲が好ましい。また、大気中でコロナ放電を発生させる場合には、コロナ放電を安定して形成できることから、1kHz乃至15MHz、特には、5乃至100kHzが好ましい。
【0069】
投入電力は、装置構成及びコロナ放電発生領域に依存するためとくに限定はされないが、異常放電の発生や弾性層の過昇温が起きない範囲で高くすることが好ましい。電気抵抗の低減化をより短時間で達成できるためである。
【0070】
本発明においては、直流バイアス電源37より電子写真用ローラ10の導電性軸芯体に正バイアスを印加してコロナ放電処理を施すことが好ましい。具体的には、+10V乃至+300Vの範囲が好ましい。+10V以上とすることで、シリカ粒子をローラ表面に高密度に保持することができるため好ましい。+300V以下とすることで異常放電の発生を抑制できるため好ましい。
【0071】
コロナ電極36と電子写真用ローラ10の間隔は、長手方向でほぼ均一であれば特に制限されない。コロナ放電が安定して形成されるように、使用する電源周波数に応じて適正な範囲を選べばよいが、一般的には1mm乃至10mmの間隔が好ましい。1mm以上とすることで、異常放電の発生を抑制できるため好ましい。また、10mm以下とすることで、コロナ放電を均一に形成できるため好ましい。コロナ放電処理は、電子写真用ローラ10を回転させて周方向に均一に行うことが好ましい。
【0072】
電子写真用ローラ10の回転数の目安としては、60rpm以上3000rpm以下の回転数が好ましい。
【0073】
<抵抗測定装置>
導電性ローラの電気抵抗の低減化は、図4に示す抵抗測定装置40を用いて確認することができる。図4において、抵抗測定装置40は、金属電極41、電子写真用ローラ10の軸芯体11に接続された直流電源42、金属電極41それぞれに接続された内部抵抗43及び電圧計44により構成される。金属電極41は、電子写真用ローラ10の長手方向全体に当接するように設けられる。金属電極41は、不図示の駆動モーターにより回転駆動が可能である。直流電源42には小型電源PL−650−0.1(松定プレシジョン社製商品名)を使用した。また、電圧計44にはデジタルマルチメーター(商品名:フルーク83、フルーク社製)を使用した。
【0074】
次に、抵抗測定装置40の操作手順について説明する。温度23℃、湿度50%RHの環境に設置した抵抗測定装置40に、電子写真用ローラ10を金属電極41に所定の荷重で圧接して設置する。荷重は、軸芯体11の両端に各500gの荷重をし、計1kgの荷重とした。次に、金属電極41を回転駆動して回転数を調整し、従動して回転する電子写真用ローラ10の回転数が32rpmになるように調整する。直流電源42により軸芯体11に50Vの電圧を印加する。このとき、電子写真用ローラ10の両端部及び中央部の抵抗値を以下の方法で測定する。金属電極41に接続された内部抵抗43の両端の電圧Vrを電圧計44により測定する。内部抵抗43の抵抗値R[Ω]は、電圧計44で測定される電圧が0.1〜1Vになるように、適宜選択すれば良い。測定電圧Vr[V]は、電圧印加後3秒後から3秒間の平均値とする。電子写真用ローラ10の抵抗値Rr[Ω]を下記式(2)により求める。
【0075】
Rr=R×(50/Vr−1) ・・・式(2)
<電子写真画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジ>
本発明の電子写真用ローラを帯電部材及び現像部材の少なくとも一方として用いる電子写真画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体と、該感光体を帯電する帯電部材と、感光体上の静電潜像を現像する現像部材とを具備する。本発明の電子写真用ローラを搭載する電子写真用画像形成装置の一例を、図5で説明する。本発明の電子写真用画像形成装置の一例を図5に示す。図5において、電子写真用画像形成装置500には、イエロートナー、マゼンダトナー、シアントナー、ブラックトナーの各色トナー毎に設けられる画像形成ユニットa、b、c、dが設けられる。各画像形成ユニットには、それぞれ矢印方向に回転する静電潜像担持体としての感光体501が設けられる。各感光体の周囲には、感光体を一様に帯電するための帯電装置507、一様に帯電処理した感光体にレーザー光506を照射して静電潜像を形成する露光手段、静電潜像を形成した感光体にトナーを供給し静電潜像を現像する現像装置505が設けられる。一方、給紙ローラ519により供給される紙等の記録材518を搬送する転写搬送ベルト516が駆動ローラ512、従動ローラ517、テンションローラ515に懸架されて設けられる。転写搬送ベルト516には吸着ローラ520を介して吸着バイアス電源521の電荷が印加され、記録材518を表面に静電気的に付着させて搬送するようになっている。各画像形成ユニットの感光体上のトナー像を、転写搬送ベルト516によって搬送される記録材518に転写するための電荷を印加する転写バイアス電源514が設けられる。転写バイアスは転写搬送ベルト516の裏面に配置される転写ローラ513を介して印加される。各画像形成ユニットにおいて形成される各色のトナー像は、画像形成ユニットに同期して可動される転写搬送ベルト516によって搬送される記録材518上に、順次重畳して転写されるようになっている。更に、カラー電子写真用画像形成装置には、記録材上に重畳転写したトナー像を加熱などにより定着する定着装置511、画像形成された記録材518を装置外に排出する搬送装置(不図示)が設けられる。一方、各画像形成ユニットには各感光体上に転写されずに残存する転写残トナーを除去し表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置508が設けられる。更に、その他感光体から掻き取られたトナーを収納する不図示の廃トナー容器が設けられる。クリーニングされた感光体は画像形成可能状態とされて待機するようになっている。
【0076】
上記各画像形成ユニットに設けられる現像装置505には、一成分現像剤として非磁性トナーを収容したトナー容器503と、トナー容器の開口を閉塞するように設置され、トナー容器から露出した部分で感光体と対向するように現像ローラ10が設けられる。トナー容器内には、トナー供給ローラ502と、SUS304製の現像剤規制ブレード504とが設けられている。トナー供給ローラ502は現像ローラにトナーを供給すると同時に、現像後現像ローラ上に使用されずに残留するトナーを掻き取ることために設けられる。現像剤規制ブレード504は、現像ローラ上のトナーを薄層状に形成すると共に、摩擦帯電するために設けられる。これらはそれぞれ現像ローラ10に当接配置されている。現像剤規制ブレード504には現像剤規制ブレードバイアス電源509が接続され、現像ローラには現像ローラバイアス電源510が接続され、画像形成時において、現像剤規制ブレード504と現像ローラ10にはそれぞれ電圧が印加される。現像剤規制ブレードバイアス電源509から出力される電圧は、現像ローラバイアス電源510から出力される電圧より50V乃至400V低い電圧が出力される。この電圧差は、現像ローラ10上に供給される現像剤の供給量及び摩擦帯電量を考慮して設定すればよい。
【0077】
本発明の電子写真用ローラを帯電部材及び現像部材の少なくとも一方として用いる電子写真プロセスカートリッジは、静電潜像が形成される感光体と、該感光体を帯電する帯電部材と、感光体上の静電潜像を現像する現像部材とを具備する。電子写真プロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置の本体に脱着可能な形態で用いることができる。本発明の現像ローラを搭載するプロセスカートリッジの断面を図6に示す。プロセスカートリッジ600は、現像装置505と、感光体501、クリーニング装置508を有し、これらが一体化されて電子写真装置の本体に着脱自在に構成されている。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。
【0079】
[実施例1]
<電子写真用ローラの作製>
以下の手順により、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として、弾性層と表面層としての樹脂層を1層ずつ設けた電子写真用ローラを作製した。導電性軸芯体として、直径6mm、長さ279mmのSUS304製の芯金を用いた。弾性層の材料として、以下の要領で液状シリコーンゴムを準備した。まず、下記表2に記載の材料を混合し液状シリコーンゴムのベース材料とした。
【0080】
【表2】

【0081】
次に、上記ベースに各成分をそれぞれ配合した以下の(i)および(ii)を質量比1:1で混合して液状シリコーンゴムを得た。
(i)上記ベース材料に硬化触媒として白金化合物(東レダウコーニング社製、Pt濃度1%)を微量配合したもの。
(ii)上記ベース材料にオルガノハイドロジェンポリシロキサン(東レダウコーニング社製、重量平均分子量500)3質量部を配合したもの。
【0082】
内径12mmの円筒型金型内の中心部に導電性軸芯体を配置し、円筒型金型内に注入口から上記液状シリコーンゴムを注入し、温度120℃で5分間加熱硬化させ、室温まで冷却後、導電性軸芯体と一体となった弾性層を脱型した。さらに温度150℃で4時間加熱して硬化反応を完了させ、厚さ3mmのシリコーンゴムを主成分とする弾性層を導電性軸芯体の外周面上に設けた。
【0083】
次いで、弾性層の表面にエキシマ処理を以下のとおりに施した。導電性軸芯体を回転軸として30rpmで回転させながら、波長172nmの紫外線を照射可能な細管エキシマランプ(ハリソン東芝ライティング製)を用いて、弾性層の表面における積算光量が120mJ/cm2となるように弾性層の表面に紫外線を照射した。照射時の弾性層表面とエキシマランプの距離は2mmとした。エキシマ処理を施した表面層の表面に樹脂層を形成した。樹脂層の材料としては下記表3に記載のものを用いた。
【0084】
【表3】

【0085】
上記表3に記載の材料をメチルエチルケトン溶媒中で段階的に混合して、窒素雰囲気下80度にて6時間反応させた。その結果、重量平均分子量Mw=10000、水酸基価20.0(mg・KOH/g)、分子量分散度Mw/Mn=2.9、Mz/Mw=2.5の2官能のポリウレタンプレポリマーを得た。
【0086】
このポリウレタンプレポリマー100.0質量部にイソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン工業株式会社製)35.0質量部を加えて、NCO当量を1.4となるようにした。なお、NCO当量は、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数とポリオール成分中の水酸基のモル数との比([NCO]/[OH])を示すものである。
【0087】
さらに、カーボンブラック(商品名:#1000、pH3.0、三菱化学社製)を21.0質量部添加した。この原料混合液に有機溶剤を加えて、15μm前後の膜厚が得られるように固形分20質量%に調整した。さらに、ウレタン樹脂粒子(商品名:C400透明、直径14μm、根上工業株式会社製)を35.0質量部加え、均一分散、混合したものを樹脂層形成用の塗料とした。この塗料中に、上記の弾性層を形成した導電性軸芯体を浸漬した後、引上げて自然乾燥させ、弾性層の表面に塗料の塗膜を形成した。次いで、表面に塗膜を形成した弾性層を備えた導電性軸芯体を、温度140℃にて60分間加熱し、塗膜を硬化させて、膜厚が15.0μmの樹脂層を形成した。さらに、被覆層の両端部を導電性軸芯体に垂直に切取って除去し、被覆層の長さを235mmに調整した。このようにして、外径が約12mm、被覆層の長さ235mm、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが1.7μmの電子写真用ローラを作製した。さらに、前述の抵抗測定装置を用いて、作製した電子写真用ローラの抵抗値を測定した。その結果、抵抗値は5.0×105Ωであった。
【0088】
<電子写真用ローラの使用>
得られた電子写真用ローラを現像ローラとして、電子写真画像形成装置(商品名:ColorLaser Jet3600、Hewlett−Packard社製)により画像出力を行った。電子写真プロセスカートリッジとして、ブラック用の専用カートリッジを用意し、現像剤規制ブレード504のみを厚さ100μmのSUS304製に交換して用いた。これを温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、この電子写真プロセスカートリッジを、電子写真画像形成装置の本体に装填し、温度15℃、湿度10%RHの環境において、印字率が1%の画像を、現像剤残量が20gになるまで出力した。なお、現像剤規制ブレード504には、現像剤規制ブレードバイアス電源509より、現像ローラバイアス電源510から出力される電圧よりも200V低い電圧を供給して用いた。使用後の電子写真用ローラ表面に付着している現像剤由来の付着物を、エアーブローで除去後、さらに粘着テープ(商品名:スコッチメンディングテープ、住友スリーエム株式会社製)を用いて全面清掃を行った。その際、粘着テープに付着物による着色がなくなるまで、繰返し清掃を行った。その後、前述の抵抗測定装置を用いて、使用後の電子写真用ローラの抵抗値の測定を行った。その結果、使用後の電子写真用ローラの抵抗値(R1)は2.0×107Ωであった。従って、電子写真画像形成装置で画像出力に使用したことによって、電気抵抗が上昇したことを確認した。
【0089】
<電子写真用ローラへのシリカ粒子付着>
次に、使用後の電子写真用ローラの表面層に前述したシリカ粒子付着装置を用いて、シリカ粒子を付着させた。シリカ粒子付着装置には、平均一次粒径が100nmであるシリカ粒子300mgを均一に含ませたシリカ粒子供給ローラを設置し、さらにシリカ粒子供給ローラに対する侵入量が2mmになるように使用後の電子写真用ローラを設置した。シリカ粒子供給ローラの発泡弾性層には、開口径が平均0.1mm、発泡弾性層の表面に対する開口部の面積比率が50%のものを用いた。その後、シリカ粒子供給ローラと使用後の電子写真用ローラを、各々に接続したモーターにより図2の矢印の方向に回転駆動させて、使用後の電子写真用ローラ表面にシリカ粒子を付着させた。このとき、シリカ粒子供給ローラを30rpm、使用後の電子写真用ローラを120rpmの回転数で10秒間回転駆動した。その結果、シリカ粒子の付着量は0.020mg/cm2であった。
【0090】
<電子写真用ローラのコロナ放電処理>
次に、表面層にシリカ粒子を付着させた電子写真用ローラ表面に、前述したコロナ放電処理装置を用いてコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理装置に、コロナ電極との間隔が2mmになるように電子写真用ローラを設置した。導電体部がAl、絶縁体部がセラミックから成るものを用いた。その後、電子写真用ローラを600rpmの回転数で回転駆動させた。次に、導電性軸芯体に+100Vの正バイアスを印加した後、大気圧下で10kHzの高周波電力を200Wの投入電力で供給してコロナ放電を発生させ、電子写真用ローラの表面層に30秒間のコロナ放電処理を行った。その後、前述の抵抗測定装置を用いて、コロナ放電処理後の電子写真用ローラの電気抵抗(R2)を測定した。
【0091】
その結果、電気抵抗(R2)は5.0×105Ωであった。ここで、電気抵抗低減化処理後の電気抵抗(R2)をコロナ放電処理前の電気抵抗(R1)で割って、電気抵抗の低減化率R2/R1を算出した。本実施例においては、電気抵抗の低減化率R2/R1は0.0250であった。R2/R1が1.000未満であることから、電気抵抗低減化処理により表面層の電気抵抗を低減化できたことが確認できた。電気抵抗低減化処理の程度としては、電気抵抗の低減化率R2/R1を目安にすることができ、0.002以上0.05以下の範囲とすることが好ましい。0.002以上にすることで、画像形成時にリークによる画像弊害を抑制することができる。0.05以下にすることで、画像形成時の濃度変化を抑制することができる。さらには、0.005以上0.04以下の範囲が好ましい。
【0092】
<電子写真画像形成装置による評価>
(濃度変化評価)
次に、電気抵抗を低減化した電子写真用ローラを、再度現像ローラとして、同じ電子写真画像形成装置により画像評価を行った。電子写真プロセスカートリッジとして、同じくブラック用の専用カートリッジを新たに用意し、現像剤規制ブレード504のみを厚さ100μmのSUS304製に交換して用いた。これを温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、この電子写真プロセスカートリッジを、電子写真画像形成装置の本体に装填し、温度15℃、湿度10%RHの環境において、ベタ黒画像を連続して10枚を出力し、その間の濃度変化を評価した。なお、このとき同じく、現像剤規制ブレード504には、現像剤規制ブレードバイアス電源509より、現像ローラバイアス電源510から出力される電圧よりも200V低い電圧を供給して用いた。濃度変化は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)を用いて、1枚目と10枚目の反射濃度を測定し、その差分を濃度変化値とした。反射濃度の測定は、画像全面の任意の9点を測定し、その平均値を反射濃度とした。電気抵抗が上昇したままの電子写真用ローラを現像ローラに用いて、ベタ黒画像を連続して出力した際には、電子写真用ローラの表面電位が徐々に増加し、画像濃度が変動してしまう。従って、濃度変化値を、電子写真用ローラの電気抵抗低減化の指標として用いることができる。濃度変化値について、下記表4に示した基準により評価した。ここで、濃度変化値は小さいほど電気抵抗低減化の効果がよりよく得られたものと考えられる。また、下記評価A及び評価Bは、目視では濃度変化を認識できないレベルである。一方、評価C及び評価Dは、目視で濃度変化を明らかに認識できるレベルである。
【0093】
【表4】

【0094】
(リーク評価)
次に、同じく温度15℃、湿度10%RHの環境において、同じ電子写真プロセスカートリッジと同じ電子写真画像形成装置を用いてハーフトーン画像を出力し、リーク評価を行った。このとき、現像剤規制ブレード504には、現像剤規制ブレードバイアス電源509から、現像ローラバイアス電源510から出力される電圧よりも250V低い電圧を供給して用いた。電気抵抗低減化処理において放電による短絡リーク現象が発生すると、画像形成時に現像ローラバイアスが変動するリーク現象起因の画像弊害が発生しやすくなる。とくに、現像剤規制ブレードにブレードバイアスを印加して現像バイアスと電位差を持たせた場合に、リーク電流が流れて現像バイアスが変動し、横スジ状の画像弊害を生じやすくなる。従って、横スジの程度を、電子写真用ローラの電気抵抗低減化によるリーク弊害の指標として用いることができる。リーク評価は、ハーフトーン画像上の横スジの有無を目視で判断した後、反射濃度計(商品名:GreatagMacbeth RD918、マクベス社製)を用いて、横スジ部と正常部の濃度差を測定し、下記表5に記載の基準により評価した。ここで、下記評価A及び評価Bは、実用上問題の無いレベルである。一方、評価C及び評価Dは、目視で濃度変化を明らかに認識できるレベルである。
【0095】
【表5】

【0096】
以上の評価結果を、表6に示す。
【0097】
[比較例1]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製し、電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラの抵抗値R1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着およびコロナ放電処理の双方を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして評価した。評価時の抵抗値R2は2.0×107Ωであった。
【0098】
[比較例2]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して、電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラの抵抗値R1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着を行なわず、コロナ放電処理のみ実施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後の抵抗値R2は2.0×104Ωであった。
【0099】
[実施例2]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して、電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は8.0×104Ωであった。
【0100】
[実施例3]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラの抵抗値R1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.005mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は1.0×105Ωであった。
【0101】
[実施例4]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.020mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は3.0×105Ωであった。
【0102】
[実施例5]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製し、電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.100mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は8.0×105Ωであった。
【0103】
[実施例6]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して、電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.150mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施した以外は、実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は1.0×106Ωであった。
【0104】
[実施例7]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更し、導電性軸芯体に+10Vの正バイアスを印加してコロナ放電処理を施した。それ以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は4.0×105Ωであった。
【0105】
[実施例8]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更し、導電性軸芯体に+100Vの正バイアスを印加してコロナ放電処理を施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は5.0×105Ωであった。
【0106】
[実施例9]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更し、導電性軸芯体に+300Vの正バイアスを印加してコロナ放電処理を施した以外は実施例1と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は5.0×105Ωであった。
【0107】
[実施例10]
実施例1と同様にして電子写真用ローラを作製して電子写真画像形成装置で使用した。使用後の電子写真用ローラのR1は2.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更し、導電性軸芯体に−100Vの正バイアスを印加してコロナ放電処理を施した以外は実施例1と同様にして評価し。コロナ放電処理後のR2は8.0×104Ωであった。
【0108】
[実施例11]
電子写真画像形成装置(商品名:Color Laser Jet3600、Hewlett−Packard社製)のブラック用の専用カートリッジより、帯電ローラを取り出して、電子写真用ローラとして評価を行った。帯電ローラは、導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有しており、使用前の抵抗値は2.0×105Ωであった。これを再度帯電ローラとして、実施例1と同じく現像剤規制ブレードのみを交換したブラック用の専用カートリッジに装填して、実施例1と同じ条件で画像出力を行った。帯電ローラとして使用した後の電子写真用ローラのR1は5.0×106Ωであった。従って、電子写真画像形成装置で画像出力に使用したことによって、電気抵抗が上昇したことを確認した。次に、実施例1と同じく付着量が0.020mg/cm2になるように、電子写真用ローラ表面にシリカ粒子を付着させた後、実施例1と同じ条件でコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理後のR2は2.0×105Ωであった。従って、表面層の電気抵抗を低減できたことが分かった。次に、電気抵抗を低減化した電子写真用ローラを、再度帯電ローラとして、同じ電子写真画像形成装置により、実施例1と同じ画像評価を行った。電子写真プロセスカートリッジとして、同じくブラック用の専用カートリッジを新たに用意し、現像剤規制ブレード504のみを厚さ100μmのSUS304製に交換して用いた。
【0109】
電気抵抗が上昇した電子写真用ローラを帯電ローラに用いて、ベタ黒画像を連続して出力した際には、感光体の表面電位が徐々に増加し、画像濃度が変動してしまう。従って、濃度変化値を、電子写真用ローラの電気抵抗低減化の指標として用いることができる。濃度変化評価は、実施例1と同じ基準により評価を行った。
【0110】
また、電気抵抗低減化処理において放電による短絡リーク現象が発生すると、画像形成時にドラム電位が変動するリーク現象起因の横スジ状の画像弊害が発生しやすくなる。従って、横スジの程度を、電子写真用ローラの電気抵抗低減化によるリーク弊害の指標として用いることができる。リーク評価は、実施例1と同じ基準により評価を行った。
【0111】
[比較例3]
実施例11と同様にして帯電ローラを取り出して、電子写真用ローラとして評価を行った。使用前の抵抗値は2.0×105Ωであった。実施例11と同じく、帯電ローラとして使用した後の電子写真用ローラのR1は5.0×106Ωであった。次に、シリカ粒子の付着とコロナ放電処理を実施しなかった以外は実施例11と同様にして評価した。評価時のR2は5.0×106Ωであった。
【0112】
[比較例4]
実施例11と同様にして帯電ローラを取り出して、電子写真用ローラとして評価を行った。使用前の抵抗値は2.0×105Ωであった。実施例11と同じく、帯電ローラとして使用した後の電子写真用ローラのR1は5.0×106Ωであった。次に、シリカ粒子を付着させずにコロナ放電処理を実施した以外は実施例11と同様にして評価した。コロナ放電処理後のR2は4.0×103Ωであった。
【0113】
[実施例12]
実施例1と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。このとき、樹脂層に使用するカーボンブラック(商品名:#1000、pH3.0、三菱化学社製)の添加量を16.0質量部に変更した以外は実施例1と同じ条件とした。作製したローラの抵抗値R1は3.0×107Ωであった。
【0114】
次に、樹脂層の電気抵抗低減化処理を実施して表面層を形成し、電子写真用ローラを得た。このとき、実施例1と同様にして付着量が0.020mg/cm2になるように、ローラ表面にシリカ粒子を付着させた後、導電性軸芯体にバイアスを印加しなかった以外は実施例1と同じ条件でコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理後のローラのR2は5.0×105Ωであった。従って、樹脂層の電気抵抗を低下できたことが分かった。
【0115】
次に、得られたローラを現像ローラとして、実施例1と同様に電子写真画像形成装置による評価を行った。電気抵抗が高過ぎる電子写真用ローラを現像ローラに用いて、ベタ黒画像を連続して出力した際には、電子写真用ローラの表面電位が徐々に増加し、画像濃度が変動してしまう。従って、濃度変化値を、電子写真用ローラの電気抵抗低下効果の指標として用いることができる。濃度変化評価は、実施例1と同じ基準により評価した。
【0116】
また、電気抵抗低減化処理において放電による短絡リーク現象が発生すると、画像形成時に現像ローラバイアスが変動するリーク現象起因の画像弊害が発生しやすくなる。とくに、現像剤規制ブレードにブレードバイアスを印加して現像バイアスと電位差を持たせた場合に、リーク電流が流れて現像バイアスが変動し、横スジ状の画像弊害を生じやすくなる。従って、横スジの程度を、電子写真用ローラの電気抵抗低下によるリーク弊害の指標として用いることができる。リーク評価は、実施例1と同じ基準により評価を行った。
【0117】
[比較例5]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着とコロナ放電処理を実施しなかった以外は、実施例12と同様にして電子写真画像形成装置による評価した。評価時のR2は3.0×107Ωであった。
【0118】
[比較例6]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子を付着させずにコロナ放電処理を実施した以外は、実施例12と同様にして電子写真画像形成装置による評価した。コロナ放電処理後のローラのR2は2.0×104Ωであった。
【0119】
[実施例13]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.003mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施して表面層を形成した以外は実施例12と同様にして評価した。コロナ放電処理後のローラのR2は7.0×104Ωであった。
【0120】
[実施例14]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.005mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施して表面層を形成した以外は、実施例12と同様にして評価した。コロナ放電処理後のローラのR2は3.0×105Ωであった。
【0121】
[実施例15]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.100mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施して表面層を形成した以外は実施例12と同様にして評価を行った。コロナ放電処理後のローラのR2は6.0×105Ωであった。
【0122】
[実施例16]
実施例12と同じく、円柱状の導電性軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と樹脂層を1層ずつ設けたローラを作製した。作製したローラのR1は3.0×107Ωであった。次に、シリカ粒子の付着量を0.200mg/cm2に変更してコロナ放電処理を実施して表面層を形成した以外は、実施例12と同様にして評価した。コロナ放電処理後のローラのR2は1.0×106Ωであった。実施例1〜16および比較例1〜6の評価結果を表6に示す。
【0123】
【表6】

【0124】
実施例1乃至11において次のことを見出した。使用によって電気抵抗が上昇した電子写真用ローラの表面層にシリカ粒子を付着させ、シリカ粒子が付着している表面層にコロナ放電処理を施すことにより表面層の電気抵抗を低減させて、再利用可能な再生電子写真用ローラが得られることである。
【0125】
実施例12乃至16において次のことを見出した。樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させ、シリカ粒子が付着している樹脂層の表面にコロナ放電処理を施して樹脂層の電気抵抗を低下させて表面層を形成することにより、良好な画像形成ができる電子写真用ローラが得られることである。
【0126】
実施例1乃至16において、表面にシリカ粒子を付着させた表面層にコロナ放電処理を施すことで、導電性ローラの電気抵抗を低減化できることを見出した。
【0127】
さらに、表6の実施例1、実施例3乃至5、実施例11及び12、実施例14及び15において、シリカ粒子の付着量を0.005mg/cm2〜0.100mg/cm2にすることで、効果的且つ弊害無く、電気抵抗を低減化できることを見出した。さらに、表6の実施例7乃至9において、導電性軸芯体に正バイアスを印加してコロナ放電処理を施すことで、効果的且つ弊害無く、電気抵抗を低減化できることを見出した。
【符号の説明】
【0128】
30 コロナ放電処理装置
31 チャンバー
32 コロナ電流計
33 高周波電源
34 支持部
35 回転駆動部
36 コロナ電極
37 直流バイアス電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有している電子写真用ローラの製造方法であって、
(1)該導電性軸芯体の周囲に、樹脂と該樹脂に分散されているカーボンブラックを含む樹脂層を形成する工程と、
(2)該樹脂層の表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
(3)シリカ粒子が付着してなる該樹脂層の表面にコロナ放電処理を施す工程とを有することを特徴とする電子写真用ローラの製造方法。
【請求項2】
導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している導電性の表面層とを有している電子写真用ローラの表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
シリカ粒子が付着している該電子写真用ローラの表面にコロナ放電処理を施す工程とを有することを特徴とする再生電子写真用ローラの製造方法。
【請求項3】
導電性軸芯体と、樹脂及び該樹脂に分散されているカーボンブラックを含有している表面層とを有している導電性ローラの表面にシリカ粒子を付着させる工程と、
シリカ粒子が付着している該表面層にコロナ放電処理を施す工程と、を有することを特徴とする導電性ローラの電気抵抗の低減化方法。
【請求項4】
前記コロナ放電処理が、該導電性軸芯体に正バイアスを印加する工程を含む請求項3に記載の導電性ローラの電気抵抗の低減化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−150296(P2011−150296A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262256(P2010−262256)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】