説明

電子写真用中間転写ベルト及び電子写真装置

【課題】 本発明は、耐摩耗性、耐クリープ性、寸法安定性、耐久性、耐傷性に優れ、一定の表面光沢度を維持し、感光体や用紙等の転写媒体の表面性状によらず高い転写率及び転写性能を発現し、中抜けや濃度むら、色むらのような異常画像がなく、高品質なフルカラー画像を提供する長寿命なフルカラー電子写真装置の中間転写ベルトおよびそれを用いたフルカラー電子写真装置を提供するものである。
【解決手段】 基層上に、少なくともエポキシ−シリコーン共重合体を含む中間層を積層し、前記中間層上に表面層を順次積層した3層構造であることを特徴とする電子写真用中間転写ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にフルカラー電子写真に用いられる中間転写ベルト及びそれを装備する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置においては、その装置内においてさまざまな機能、用途でシームレスベルト部材が用いられている。例えば、定着ベルト、転写ベルト、紙搬送ベルトなどが挙げられる。
【0003】
その中でも、フルカラー電子写真装置において、感光体上に形成された4色のトナー画像を、一旦中間転写ベルトに転写することにより、中間転写ベルト上にフルカラー画像を形成し、その後に紙などの転写媒体に一括転写する方式における中間転写ベルトがある。
【0004】
中間転写ベルトは、複写機のフルカラー化が進み、需要が急増している。中間転写ベルトとしては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、ゴムやエラストマーなどの材料が使用されている。
しかしながら、この方式においては、高速性を得るため、中間転写ベルトに対峙する各色の色現像装置を直列に配置したタンデム方式といわれる方式が主流となっている。
【0005】
このタンデム方式に使用される中間転写ベルトは、走行中に変形による色重ねずれが生じず、繰返し使用に耐えうる高強度のものが要求され、また、難燃性も要求されるため、ポリイミドやポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられている。とりわけクリープ変形性や耐久性の点でポリイミド樹脂が好ましく用いられている。
【0006】
ポリイミド樹脂による中間転写ベルトにおいては、高強度であるためその表面硬度も高いので、トナー像を転写する際にトナー層に高い圧力がかかり、トナーが局部的に凝集し画像の一部が転写されない、いわゆる中抜け画像が発生することがある。また、感光体や用紙などの転写部での接触部材との接触追従性が劣るため、転写部において部分的な接触不良部(空隙)が発生し、転写むらが発生することがある。
【0007】
近年、フルカラー電子写真を用いてさまざまな用紙に画像を形成することが多くなり、通常の平滑な用紙だけでなく、コート紙のようなスリップ性のある平滑度の高いものからリサイクルペーパーやエンボス紙や和紙やクラフト紙のような表面性の粗いものが使用されることが増えてきている。このような表面性状の異なる用紙への追従性は重要であり、追従性が悪いと、用紙の凹凸状の濃淡むらや色調のむらが発生する。また、用紙と接触する中間転写ベルトにおいては用紙への追従性だけでなく耐摩耗性も必要となる。
さらに、ベルト表面の光沢度制御が必要となる。光沢度が低いと電子写真装置内の光反射を用いたセンサに不具合が生じる。このため、要求される光沢度を維持し、プリント出力数が増加するにつれ低下してはいけない。中間転写ベルトの寿命が短くなる。
これらの課題を解決するために比較的柔軟性のある層を基層上に積層した様々な中間転写ベルトが提案されている。
【0008】
特許文献1では、基層上に弾性層を設け、その弾性層の厚みと基層の厚みの関係を規定することで、中抜け画像を低減しつつ、膜の破損のないものが提案されている。しかしながら、この技術において効果を発現するための弾性層の厚みを設ける場合、基層の膜厚も厚くなり、そのために基層としてはポリイミドのような弾性率の大きなものは使用できない。このため、クリープ変形や耐久性に問題がある。
【0009】
特許文献2では、積層において基層と表面層の体積抵抗値を規定し、さらには表面層の材料の吸水率を規定することにより体積抵抗の環境安定性を付与することが提案されているが、使用する材料として特別なものではなく、その他物性についての言及もなく、本発明における中間ベルトのための技術的思想とは異なる。
【0010】
特許文献3では、基層に基層よりも弾性層が小さく、基層との密着性に優れたバインダー層を設け、その上に微粒子を付着されることによりバインダー層の柔軟性を損なうことなく良好な転写性・耐久性を実現できる安価なものを提案している。ここでは、微粒子の粒径の規定はあるものの、粒子の塗布状態を安定的に制御することが難しい。また、摩耗しやすく耐摩耗性に劣る。
【0011】
特許文献4では、基層に液状シリコーンゴムからなる表面層を積層する構成が提案されており、基層はポリイミドやポリアミドイミドを好適に用い、表面層はトナー離型性と弾性、優れた表面性を得ることが提案されている。しかしながら、シリコーンゴムではポリイミドと接着性が悪いため接着層を設ける必要がある。また、カーボンブラックの分散性も良好ではないため抵抗がばらつきやすく生産安定性に劣っている。
【0012】
特許文献5では表面層の主成分として硬化メタアクリル樹脂または硬化アクリル樹脂を用いることが提案されている。しかし、光沢度制御についての記述がなく、特に中間層の有無が必須ではないので本発明とは異なる。
【0013】
特許文献6ではポリエーテルスルホン樹脂の基層の上に中間層として弾性層を設け、前記中間層の上に表面層を設けることで用紙への追従性と耐摩耗性を向上させた中間転写ベルトが提案されている。この中間層を設けることにより追従性が向上し、用紙の凹凸状の濃淡むらや色調のむらは改善され、同時に表面層を設けることにより耐摩耗性が得られたと記述されている。しかし、これも光沢度制御についての記述がなく、本発明とは異なる。
【0014】
特許文献7では、熱可塑性の基層に300℃以下の熱硬化樹脂を硬化剤にて硬化させる層を積層することが提案されている。明細書中では中間層として弾性を付与する層を設けることによって感光体や記録媒体に対して広い幅で接触させることができ、高い転写効率を得ることができる。さらに表面層の耐擦傷性を向上させ光沢度低下を抑制することができるという記述もなされている。しかし、基層として熱可塑性樹脂を用いるため表面層の熱硬化時において変形や抵抗の変化が生じ、生産安定性に劣っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであり、耐摩耗性、耐クリープ性、寸法安定性、耐久性、耐傷性に優れ、一定の表面光沢度を維持し、感光体や用紙等の転写媒体の表面性状によらず高い転写率及び転写性能を発現し、中抜けや濃度むら、色むらのような異常画像がなく、高品質なフルカラー画像を提供する長寿命なフルカラー電子写真装置の中間転写ベルトおよびそれを用いたフルカラー電子写真装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は本発明の下記(1)〜(7)によって解決される。
(1) 基層上に、少なくともエポキシ−シリコーン共重合体を含む中間層を積層し、前記中間層上に表面層を順次積層した3層構造であることを特徴とする電子写真用中間転写ベルト。
(2) 少なくともポリイミド樹脂を含む基層上に、少なくともエポキシ−シリコーン共重合体を含む中間層を積層し、前記中間層上に表面層を順次積層した3層構造であることを特徴とする電子写真用中間転写ベルト。
(3) 前記表面層表面の鉛筆硬度がF〜6Hの範囲であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の中間転写ベルト。
(4) 前記表面層が少なくともアクリルウレタン系の硬化性樹脂を含むものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の中間転写ベルト。
(5) 前記表面層が少なくとも180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリイミド樹脂を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の中間転写ベルト。
(6) 前記表面層が少なくとも180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の中間転写ベルト。
(7) 像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置において、該中間転写ベルトが前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の中間転写ベルトであることを特徴とする電子写真装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基層上に中間層としてエポキシ−シリコーン共重合体を用いることにより、転写部で接触する感光体や転写媒体の表面性状への追従性が良好で、表層を用いることにより、耐摩耗性及び耐傷性が向上し、表面の20°光沢度が60〜200を維持することで電子写真装置内のセンサに不具合が生じず、長寿命な中間転写ベルトができる。
基層として、特にポリイミド樹脂を用いることにより、電子写真装置における駆動時においても寸法変化がなく、長期停止時においても塑性変形が発生しない。また、中間層のエポキシ−シリコーン共重合体との接着性にも優れる。
【0018】
また、本発明によれば、前記表面層の鉛筆硬度範囲がF〜6Hであることにより、用紙への表面性状への追従性を低下させることなく、高い耐摩耗性及び耐傷性を実現することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、前記表面層としてアクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂を選択することによって、最適な硬度範囲とすることができ、この領域で必要に応じた硬度を制御することが可能となる。
さらに、本発明によれば、前記表面層として180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリイミド樹脂を選択することによって、最適な硬度範囲とすることができ、耐擦傷に優れた表面層とすることができる。
さらに、本発明によれば、前記表面層として180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を選択することによって、最適な硬度範囲とすることができ、耐擦傷に優れた表面層とすることができる。
【0020】
さらにまた、本発明によれば、感光体や用紙等の転写媒体の表面性状によらず高い転写性能を発現し、中抜けや濃度むら、色むらのような異常画像がない高品質なフルカラー画像を提供するフルカラー電子写真装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電子写真装置のベルト構成部に用いられるシームレスベルトと装置を説明するための要部模式図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置のベルト構成部に配備される1つの中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されている一構成例を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[基層]
本発明で用いる電子写真用シームレスベルトに用いる基層樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、などが挙げられる。近年のフルカラー電子写真装置の高画質化および高速化に伴い、中間転写ベルトとしても色ずれが発生しないための寸法安定性や高強度が求められている。この点において、基層としてポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0023】
本発明で用いる電子写真用シームレスベルトに用いる基層樹脂としてのポリイミド樹脂は、熱可塑性タイプ、溶剤可溶タイプ、熱硬化タイプのいずれも使用可能であるが、種種の材料を配合させる必要性、特に電気抵抗を調整するための抵抗調整剤を配合させるために、有機極性溶媒を用いたポリイミド前駆体を含む溶液(ポリイミドワニス)を塗布し、熱硬化させて成形する熱硬化タイプのものが好適である。
【0024】
本発明における塗工液の組成分であるポリイミド前駆体および当該前駆体の加熱処理(イミド化)により生成するポリイミドについて詳しく説明する。
【0025】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、まず一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。すなわち、ポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を持つため、酸無水物と芳香族ジアミンから、まず有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、またはポリアミド酸)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行なわれ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとする。反応の概略を下記化学反応式(I)に示す。
【0026】
【化1】

(式中、Arは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Arは少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。)
【0027】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。また、エチレンテトラカルボン酸二無水物やシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物のような他の(非芳香族系の)多価カルボン酸無水物を、本発明の目的を損なわない範囲(50モル%未満の範囲)で、併用することができる。
【0028】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4'−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4'−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0029】
上記多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
なお、ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0030】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種あるいは複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、あるいはスラリー状に拡散させる。この溶液に、前記した少なくとも1種の多価カルボン酸無水物あるいは、その誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず前記多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
上記のようにして、前記多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と、前記ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸組成物が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
【0031】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
このような例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0032】
また、熱可塑性タイプとしては、オーラム(三井化学)、ベスペル(デュポン)などがある。また、溶剤可溶タイプとしては、リカコート(新日本理化)、ブロック共重合ポリイミド(ピーアイ技研)、GPI(群栄化学工業)等がある。これらは、本発明の目的を損なわない範囲の副成分樹脂として、熱硬化性タイプの材料に添加混合して用いることができる。
【0033】
合成あるいは入手したポリアミック酸溶液に、必要に応じた配合物を配合して塗工液が調製される。塗工液は支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行なわれる。
【0034】
ポリアミック酸からポリイミドへ転化させる方法は、加熱のみの方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱のみの方法(1)は、ポリアミック酸を200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱のみの方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。
しかしながら最近では、(2)の方法の一種であるが、イミダゾールやキノリンなどのアミン類を触媒としてワニスに含有させることによって乾燥時におけるイミド化を促進させる方法がとられることも多い。ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが必要であるが、これによると、より低温でイミド化が促進され、機械的耐久性も向上するといわれている。しかし、これらの触媒は極少量であり、乾燥中に分解・昇華するものもあるが、不純物として残留するものもあり好ましくない。
【0035】
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行なわれているイミド化率の測定手法により評価することができる。
このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フ−リエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフ−リエ変換赤外分光法(FT−IR法)は最も一般的な方法である。
【0036】
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)では、イミド化率を、例えば、次のように定義する。すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次により表わされる。
【0037】
【数1】

【0038】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm−1との吸光度比
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm−1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1とアミド基の特性吸収1,670cm−1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
また、3000〜3300cm−1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0039】
本発明の基層を形成する塗布液では、上記ポリイミドに他の樹脂を併用してもよい。また、中間転写ベルトとしての必要な機能を付与するための種種の材料を配合する。
配合する材料としては、例えば抵抗調整剤、補強材、レベリング剤、界面活性剤、滑剤、酸化防止剤、触媒等を配合することができる。この中でも特に抵抗調整剤は重要である。
【0040】
次に、抵抗調整材について説明する。抵抗調整材は、中間転写ベルトを所定の抵抗値に調整する必要上、添加が欠かせない。
抵抗制御剤としては、ポリイミドの抵抗値を調整しうるものなら適用できる。例えば、カーボンブラック、黒鉛、あるいは、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属や、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物微粉末などの充填材やポリエーテルアミドやポリエーテルエステルアミド、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどのような導電性高分子材料、また、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジル、アンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウムなどのようなイオン導電性材料を用いてもよい。また、これらを併用することも可能である。なお、本発明における抵抗制御剤は、これらの例示化合物に限定されるものではない。
【0041】
本基層においては、上記抵抗制御剤のうち、カーボンブラックが好ましく用いられる。 カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、などのものが使用できるが、これらの表面を酸化処理した酸化処理カーボンブラックが好ましい。
また、必要に応じて分散助剤を用いてもよい。さらには、カーボンブラックの表面官能基と、その官能基と反応性を有する有機化合物とを反応させて表面処理したものでもよい。
【0042】
次に、前記ポリイミド前駆体を含む塗工液を用いてシームレスベルトを製造する方法について説明する。例えば、以下のような工程にて作製する。
ポリアミック酸溶液に抵抗調整剤を分散させる分散液作製工程、該工程により得られる分散液を所定の抵抗調整材の含有量に調整する塗布液作製工程、該工程により作製された塗布液を支持体(成形用の型)に塗布・流延する工程、支持体に塗布・流延された塗膜中の溶媒を加熱により除去する工程、昇温加熱して塗膜中に含まれる前駆体のイミド化を促進する工程、形成された薄膜を支持体から離型しシームレスベルトとすることにより製造される。
【0043】
抵抗調整剤を分散させる工程では、ポリイミド前駆体溶液に直接抵抗制御剤を分散・混合させる方法またはあらかじめ溶媒に抵抗制御剤を分散させてからポリイミド前駆体溶液と混合させる方法がある。
ここでは、抵抗制御剤としてカーボンブラックを分散させる方法を例として説明する。なお、一例でありこれに限定されるものではない。
【0044】
N−メチル−2−ピロリドンにカーボンブラックとポリイミド前駆体少量を混合し、ジルコニアビーズを用いて、ボールミルやペイントシェーカー、ビーズミル等にて所定時間分散させる。ある程度の粒径に分散された後、取り出した液を分散液とする。
該分散液にポリイミド前駆体溶液を混合することにより所定のカーボンブラック濃度になるように希釈する。このときの混合方法としては、遠心式攪拌機、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、遊星式攪拌機などを用いて行なうことができる。
必要に応じて、レベリング剤や触媒などの添加剤をこのときに添加することもできる。 また、攪拌後は真空脱泡機などを用いて脱泡することが好ましい。
【0045】
次に、上記作製の塗布液を塗布する工程について説明する。
支持体に製膜する方法としては、遠心成形、ロールコート、ブレードコート、リングコート、ディッピング、スプレーコート、ディスペンサーコート、ダイコートなどがある。ポリイミドのシームレスベルトの製膜方法としては、遠心成形法がよく用いられるが、支持体の内面に製膜するため、その表面に層を積層する場合、製膜後、一旦脱型し、別の型に移し別のコーティング方法にて表面層を形成する必要があり、工程が煩雑になる。
このため、本発明の場合、支持体の外面に塗布し、基層、中間層を順次積層可能な工法として、ロールコート、ディスペンサーコート、リングコート、ダイコート、スプレー塗工が好ましい。
【0046】
上記方法にてあらかじめ離型剤を塗布した金属製の円筒支持体外面に所定膜厚にポリアミック酸を含む塗布液を塗布後、熱風乾燥機、IHヒーター、遠赤外線ヒーターなどにより塗膜を乾燥させる。乾燥においては、まず、80〜120℃程度の温度にて10〜60分間乾燥させ、その後、2〜5℃/分程度の昇温速度にて昇温させ、300〜400℃でイミド化焼成を行なう。その後、充分冷却した後に表面層の塗布を実施する。なお、基層と中間層、表面層は必ずしも同様の工法で成形する必要はない。
【0047】
本発明で形成する基層の膜厚としては、50〜100μmが好ましい。膜厚が薄すぎると強度が不足し耐久性に劣り、厚すぎると剛性が大きすぎて曲率の小さい駆動ローラにて安定して駆動させるのが困難になる。また、抵抗調整剤としてのカーボンブラックの含有量としては、5〜25wt%が好ましく、体積抵抗値として10〜1010Ωcmとなることが好ましい。カーボンブラックの含有量が少なすぎると抵抗値のばらつきを制御するのが難しく、また多すぎると膜が脆く屈曲性に劣り耐久性に劣る。抵抗値は、低くすぎると転写時にトナーが非画像部に散り鮮明性が低下する。一方、高すぎると転写電界がうまく作用せず転写効率上、好ましくない。
【0048】
[中間層]
次に、本発明で用いる中間層について説明する。
<エポキシ−シリコーン共重合体>
本発明における中間層は、エポキシ−シリコーン共重合体を用いる。この共重合体樹脂は、ポリイミドとの接着性に優れ、予めプライマー処理などが必要なく層を形成することができる。また、適度な柔軟性を有するため中間転写ベルトの屈曲においても亀裂を生じることがない。また感光体や転写媒体の表面性状へも充分に追従することができる。
【0049】
さらに、液状であるため基層と同様な工法にて製造することが可能であり、連続生産に好適である。また、必要に応じて溶媒などにて粘度の調整も可能であり、種種の添加材料の配合も容易である。
【0050】
本発明のエポキシ−シリコーン共重合体は、エポキシ部とシリコーン部のブロックコポリマーを架橋硬化させることにより形成する。
当ブロックコポリマーは、Si−H基やSi−OH基含有ポリシロキサンを活性水素基含有材料として、該活性水素基(Si−H基やSi−OH基)量に対して当量分より多い量のエポキシ基含有ビスフェノールA型−ジ−グリシジルエーテル、ビスフェノールF型−ジ−グリシジルエーテルのようなエポキシ材料をポリシロキサンの前記活性水素基と反応させることによりエポキシ基含有(残存)ポリシロキサンを得ることができる。又は旧くから知られるように、ビスフェノールA型二重結合基含有グリシジルエーテル、ビスフェノールF型二重結合基含有グリシジルエーテルのような、ポリシロキサンの有するSi−H基やSi−OH基にも反応する反応基(CH=CH基やCH=C(R)H基のような二重結合性基)を有する付加反応性エポキシ材料とSi−H又はSi−OH基含有シロキサンユニットをブロック共重合させることにより得ることができ、この場合には典型的には末端がエポキシ基のものである。る。
このシリコーン部位を導入することにより先に述べた柔軟性を付与された層を得ることができる。シリコーン量(特にストレートシリコン量)が多い方が柔軟性が増すが、導入するシリコーンの量としては、エポキシ基含有部位の構造(コンホメーション及びコンフィギュレーション)にもよるが、40〜60wt%が好ましい。40%未満では硬く柔軟性に劣り、60%を超えると膜強度が低く実使用耐久に耐えられない。
このコポリマーに、エポキシ樹脂用の汎用の触媒、硬化剤を用いて熱硬化することによりポリマー化する。
加熱温度としては、120℃〜250℃程度の加熱を要する。このため一般的な熱可塑性樹脂を用いる場合、本表層の加熱時に熱変形(収縮)を発生する場合があるため耐熱性の高いものを選択する必要がある。このような樹脂を用いる場合、高い温度で溶融成形させる必要があり生産上好ましくない。従って、本発明の基層ではポリイミドを好適に用いる。
【0051】
中間層のエポキシ−シリコーン共重合体の硬化剤としては、活性水素基(又はその前駆体)含有材料が用いられ、ジ−、トリ−又はテトラ−カルボン酸、酸無水物化合物、アミン系化合物、ポリフェノール系化合物が好適に用いられる。
酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコースビスアンヒドロトリメリート、グリセリンビス(アンヒドロトリメトリート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、無水クロレンド酸などがある。
アミン系化合物としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド樹脂、イミダゾール系化合物等がある。特にイミダゾール系化合物は好適に用いられ、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1')−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−ウンデシルイミダゾリル−(1')−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−エチルイミダゾリル−(1')−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1')−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、イミダゾールシラン等がある。
フェノール系化合物としては、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂が好適に用いられる。その他、フェノール変性ポリイミドなども用いることができる。 これら硬化剤は、単独のみならず組み合わせて使用することができる。
【0052】
これら硬化剤のうち、液状のものは当該液状樹脂への混合が容易であり好適に用いられる。固形のものでも溶媒に溶解させてから混合する方法にて配合することも可能である。 また配合量は、エポキシ−シリコーン共重合体のエポキシ当量と反応基当量が合致するように算出された量を配合する。
【0053】
この樹脂にも、基層と同様に必要に応じて種種の添加剤を配合することができる。
特に、抵抗調整剤の配合について説明する。抵抗調整剤としては前述と同様のものが適用できる。特に、カーボンブラックは好適に用いられる。本発明のエポキシ−シリコーン共重合体は、カーボンブラックに対する分散性がよく、抵抗値のばらつきの小さいものが得られやすい。
【0054】
当樹脂へのカーボンブラックの配合方法の一例を以下に示す。
溶剤にカーボンブラック、エポキシ−シリコーンコポリマー少量を混合し、ジルコニアビーズを用いて、ボールミルやペイントシェーカー、ビーズミル等にて所定時間分散させる。ある程度の粒径に分散された後、取り出した液を分散液とする。
該分散液にエポキシ−シリコーンコポリマーを適量混合することにより所定のカーボンブラック濃度になるように希釈する。次いで、硬化剤を所定量混合する。
このときの混合方法としては、遠心式攪拌機、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、遊星式攪拌機などを用いて行なうことができる。
必要に応じて、レベリング剤や触媒、滑剤などの添加剤をこのときに添加することもできる。
また、攪拌後は真空脱泡機などを用いて脱泡することが好ましい。
【0055】
また、以下には、当樹脂へのカーボンブラックの配合方法の一例を示す。
溶剤にカーボンブラック、エポキシ−シリコーンコポリマー少量を混合し、ジルコニアビーズを用いて、ボールミルやペイントシェーカー、ビーズミル等にて所定時間分散させる。ある程度の粒径に分散された後、取り出した液を分散液とする。
この分散液にエポキシ−シリコーンコポリマーを混合することにより所定のカーボンブラック濃度になるように希釈する。次いで、硬化剤を所定量混合する。
このときの混合方法としては、遠心式攪拌機、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、遊星式攪拌機などを用いて行なうことができる。必要に応じて、レベリング剤や触媒、滑剤などの添加剤をこのときに添加することもできる。また、攪拌後は真空脱泡機などを用いて脱泡することが好ましい。
【0056】
次に、得られた塗布液を前述した同様の工法から好適に選ばれる工法を用いてポリイミドを含む基層上に所定膜厚になるように塗布を行なう。最終的な膜厚としては、好ましい転写性能を発現させるために、50〜300μm程度にすることが好ましい。薄すぎると感光体や転写媒体の表面性状に対する追従性が充分でなく、また、厚すぎるとベルトの張架ローラの曲率部で駆動時に膜に割れが生じやすくなるため好ましくない。
【0057】
塗布後は、乾燥機にて加熱硬化させる。加熱温度は、使用する架橋剤の種類にて適正な温度に設定されるが、おおむね120℃〜250℃程度の温度域で硬化させることが好ましい。乾燥後は冷却して、金型から脱型し、シームレスベルトを得る。
【0058】
[表面層]
次に、本発明で用いる表面層について説明する。
本発明で用いる表面層としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂などの熱、光、又は電子線による硬化樹脂や熱可塑性樹脂が適用でき、これらの中から適宜選択することができる。
これらの中で、アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂が耐擦傷性、トナーとの離型性、トナーのクリーニング性の面から特に好ましい。
【0059】
<アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂>
本発明における表面層は、アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。この樹脂は、エポキシ−シリコーン共重合樹脂との接着性に優れる。また、適度な硬度を有しかつ硬度を制御できるため、耐摩耗性及び耐傷性が向上し、かつ表面の20°光沢度が60〜200を維持することで電子写真装置内の光反射を用いたセンサに不具合が生じず、長寿命化できる。
【0060】
さらに、アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂は液状であるため基層と同様な工法にて製造することが可能であり、連続生産に好適である。また、必要に応じて溶媒などにて粘度の調整も可能であり、種種の添加材料の配合も容易である。
【0061】
本発明に用いたアクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂は少なくともポリオール(イソシアネート基とウレタン反応するための活性水素基含有の架橋性成分)、イソシアネート、アクリレートを含む。紫外線照射後の硬化樹脂の物性は、ポリオールの構造、イソシアネートの種類、アクリル基の数などによって決まるため、組み合わせを変えて設計できる。これらの組み合わせにより、樹脂の硬さ、伸びの度合い、中間層との密着性などの物性を制御することができる。
【0062】
本発明の表面層のアクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂のアクリル重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)を用いている。重合開始剤はこれだけに縛られない。
例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
これら重合開始剤は、単独のみならず組み合わせて使用することができ、必要に応じてアミン類等のウレタン反応開始助剤(活性水素基含有の架橋性材料)と併用することも可能である。
【0063】
これらの重合開始剤うち、液状のものは当該液状樹脂への混合が容易であり好適に用いられる。固形のものでも溶媒に溶解させてから混合する方法にて配合することも可能である。
【0064】
次に、得られた塗布液を前述した同様の工法から好適に選ばれる工法を用いて少なくともエポキシ−シリコーン共重合樹脂を含む中間層上に所定膜厚になるように塗布を行なう。最終的な膜厚としては、0.5〜10μm程度にすることが好ましい。薄すぎると耐摩耗性及び耐傷性が発現せず、また、厚すぎると下層の中間層の柔軟性が損なわれ、転写性能を発現できないため好ましくない。
【0065】
塗布後は、紫外線照射装置にて硬化させる。樹脂の硬化に必要な紫外線露光量は樹脂の種類によって異なる。本発明での照射条件は全て140W/cm×5m/min×3パスであったが、必ずしもこの条件に限られるわけではない。
アクリルウレタン系の紫外線硬化樹脂の硬度は鉛筆硬度がF〜6Hが好ましい。硬度が低すぎると充分な硬度が得られず、耐摩耗性及び耐傷性が得られない。また、高すぎると下層の中間層の柔軟性が損なわれ、転写性能を発現できないため好ましくない。
【0066】
<シリコーン変性ポリイミド樹脂>
次に、本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂について説明する。シリコーン変性ポリイミド樹脂は化学式(II)で記載することができる。
【0067】
【化2】

【0068】
(式中、Xは4価の芳香族環若しくは脂肪族環基、R、R、Rは2価の有機基、R〜Rはアルケニル基、アルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、m、nは3以上の整数を表わす)
このようなシリコーン変性ポリイミド樹脂は、シロキサンジアミン、芳香族ジアミン、テトラカルボン酸二無水物とからなる混合物を原料として製造することができる。シロキサンジアミン化合物としては、化学式(III)に記載するω,ω’−ジアミノ置換ポリシロキサンを好ましく使用することができる。
【0069】
【化3】

【0070】
(R、Rは2価の有機基、R〜Rはアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは5〜50の整数を示す)が一般式として示され、具体的には、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、アミノプロピル末端基を有するジメチルシロキサン4量体、8量体、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0071】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂に用いられる芳香族ジアミンは、例えば、(1)ビフェニル系ジアミン化合物、ジフェニルエーテル系ジアミン化合物、ベンゾフェノン系ジアミン化合物、ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ジフェニルメタン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)プロパンなどのジフェニルアルカン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ジフェニレンスルホン系ジアミン化合物、(2)ジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、ジ(フェニル)ベンゼン系ジアミン化合物、(3)ジ(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物物などの「芳香族環(ベンゼン環など)を2個以上、特に2〜5個有する芳香族ジアミン化合物」を主として含有する芳香族ジアミンを挙げることができ、それらを単独、あるいは、混合物として使用することができる。
【0072】
前記芳香族ジアミンとしては、特に、1,4−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ジアミノジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル系ジアミン化合物、1,3−ジ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどのジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等のビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物を挙げることができる。
【0073】
次に本発明に用いるテトラカルボン酸二無水物を具体的に説明すると、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリト酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられる。
【0074】
本発明で用いられるシリコーン変性ポリイミド樹脂は、上記に挙げた化合物を用いて公知の方法により製造することができる。例えばこれらを有機溶媒中、必要に応じてトリブチルアミン、トリエチルアミン、亜リン酸トリフェニル等の触媒存在下で加熱し直接ポリイミドを得る方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中反応させポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を得た後、必要に応じてp−トルエンスルホン酸等の脱水触媒を加え、加熱によりイミド化を行うことでポリイミドを得る方法、或いはこのポリアミド酸を、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等の脱水閉環剤と必要に応じてピリジン、イソキノリン、イミダゾール、トリエチルアミン等の閉環触媒を添加して化学閉環させる方法等がある。
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂は、化学式(II)のシリコーン変性量、ポリイミド部の構造などの組み合わせにより硬度等の物性を適宜変えることが可能であるが、耐擦傷性を十分に発現するためには、180℃以上の硬化温度により十分に加熱硬化するものが好ましい。
中間層であるエポキシ−シリコーン共重合体は、表面層の前記加熱温度でも劣化することがないため問題なく使用することができる。
【0075】
<シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂>
次に、本発明のシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂について説明する。
シリコーン変性ポリアミドイミドは化学式(IV)で記載することができる。
【0076】
【化4】

【0077】
(式中、Rは芳香族テトラカルボン酸残基、Arは芳香族ジイソシアネート残基、Siloxaneはジアミノシロキサン残基を表わす)
【0078】
このようなシリコーン変性ポリアミドイミドは、公知の製造方法により製造することができる。一般的にポリアミドイミドを製造する方法としては、イソシアネート法(例えば、特公昭44−19274号公報、特公昭45−2397号公報等)、酸クロライド法(例えば、特公昭42−15637号公報等)、直接重縮合法(例えば、特公昭49−1077号公報等)、溶液重縮合法(例えば、特公昭40−8910号公報等)等記載のものがあるが何れの方法も用いることができる。
【0079】
例えばイソシアネートを用いる方法としては、シロキサンジアミン、芳香族トリカルボン酸及びその誘導体、ジイソシアネートを原料として合成する方法がある(例えば、特開2000−122964等)。
【0080】
ここでシロキサンジアミン化合物としては、化学式(V)に示すものを好ましく使用することができる。
【0081】
【化5】

【0082】
(R、Rは2価の有機基、R〜Rはアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは5〜50の整数を示す)が一般式として示され、具体的には、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、アミノプロピル末端基を有するジメチルシロキサン4量体、8量体、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0083】
本発明のシリコーン変性ポリアミドイミドの製造にはシロキサンジアミンの他に芳香族ジアミンを混合して用いることができる。例えば、(1)ビフェニル系ジアミン化合物、ジフェニルエーテル系ジアミン化合物、ベンゾフェノン系ジアミン化合物、ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ジフェニルメタン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)プロパンなどのジフェニルアルカン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ジフェニレンスルホン系ジアミン化合物、(2)ジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、ジ(フェニル)ベンゼン系ジアミン化合物、(3)ジ(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物物などの「芳香族環(ベンゼン環など)を2個以上、特に2〜5個有する芳香族ジアミン化合物」を主として含有する芳香族ジアミンを挙げることができ、それらを単独、あるいは、混合物として使用することができる。
【0084】
前記芳香族ジアミンとしては、特に1,4−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ジアミノジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル系ジアミン化合物、1,3−ジ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどのジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物を挙げることができる。
【0085】
本発明のシリコーン変性ポリアミドイミドの製造に用いる芳香族トリカルボン酸及びその誘導体を具体的に挙げると、トリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物モノクロライド、1,4−ジカルボキシ−3−N,N−ジメチルカルバモイルベンゼン、1,4−ジカルボメトキシ−3−カルボキシベンゼン、1,4−ジカルボキシ−3−カルボフェノキシベンゼン、2,6−ジカルボキシ−3−カルボメトキシピリジン、1,6−ジカルボキシ−5−カルバモイルナフタリン、上記芳香族トリカルボン酸類とアンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミンなどからなるアンモニウム塩類などが挙げられる。これらのうちではトリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物モノクロライドが好ましい。
【0086】
本発明で用いる芳香族ジイソシアネートとして具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−,m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示できる。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イシホロンジイソシアネートなどのイソシアネートを単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明のシリコーン変性ポリアミドイミドの製造で使用する溶媒としては、生成した樹脂の溶解性に優れる非プロトン性極性溶媒が好ましい。このような非プロトン性極性溶媒として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、4−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサン等が例示できる。イミド化反応には、高温を有するため沸点の高い、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0088】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂は、化学式(IV)のシリコーン変性量、ポリアミドイミド部の構造などの組み合わせにより硬度等の物性を適宜変えることが可能であるが、耐擦傷性を十分に発現するためには、180℃以上の硬化温度により十分に加熱硬化するものが好ましい。
中間層であるエポキシ−シリコーン共重合体は、本表面層の加熱温度でも劣化することがないため問題なく使用することができる。
【0089】
[中間転写ベルト]
なお、前述の説明では基層と中間層、表面層の3層構成であるが、必ずしも本構成に限定されるのではなく、必要に応じて多数層に積層してもよい。
【0090】
次に、本発明における電子写真装置に装備されるベルト構成部に用いられるシームレスベルトについて、要部模式図を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、模式図は一例であってこれに限定されるものではない。
図1の模式図に、ベルト構成部等を装備した電子写真装置の要部概略構成を示す。
図1に示すベルト構成部である中間転写ユニット(500)は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト(501)などにより構成されている。この中間転写ベルト(501)の周りには、2次転写ユニット(600)の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ(605)、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード(504)、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ(505)などが対向するように配設されている。
【0091】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト(501)の外周面あるいは内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト(501)の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード(504)の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト(501)の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ(514)は、中間転写ベルト(501)が架け渡されている1次転写バイアスローラ(507)とベルト駆動ローラ(508)との間の位置に設けられる。位置検知は中間転写ベルト表面からの光反射を検知することによって行なっている。よって、中間転写ベルト表面の光沢度が低下する、または不均一になると検出が安定しない。本発明の中間転写ベルトを用いることで表面光沢度の低下を抑制でき、検出を安定化することができる。
【0092】
この中間転写ベルト(501)は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ(507)、ベルト駆動ローラ(508)、ベルトテンションローラ(509)、2次転写対向ローラ(510),クリーニング対向ローラ(511)、及びフィードバック電流検知ローラ(512)に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ(507)以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ(507)には、定電流または定電圧制御された1次転写電源(801)により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0093】
中間転写ベルト(501)は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ(508)により、矢印方向に駆動される。このベルト構成部である中間転写ベルト(501)は、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明のシームレスベルトが好ましく用いられ、これによって耐久性が向上すると共に、優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム(200)上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0094】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)との間に被記録媒体である転写紙Pを挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源(802)によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0095】
レジストローラ(610)は、2次転写バイアスローラ(605)と2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙(P)を送り込む。また、2次転写バイアスローラ(605)には、クリーニング手段であるクリーニングブレード(608)が当接している。該クリーニングブレード(608)は、2次転写バイアスローラ(605)の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0096】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム(200)は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、それぞれのカラーに応じ、帯電チャージャ(203)による帯電、露光手段(L)による像露光の後、該感光体ドラム(200)上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行なわれる。中間転写ベルト(501)はベルト駆動ローラ(508)によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト(501)の回転に伴って、1次転写バイアスローラ(507)に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行なわれ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト(501)上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0097】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行なわれる。
図1において、帯電チャージャ(203)は、コロナ放電によって感光体ドラム(200)の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行なう。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム(200)の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。このBk静電潜像に、Bk現像機(231K)の現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム(200)の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷のない部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0098】
このようにして感光体ドラム(200)上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム(200)と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト(501)のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム(200)の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム(200)の再使用に備えて、感光体クリーニング装置(201)で清掃される。この感光体ドラム(200)側では、Bk画像形成工程の次にY画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるY画像データの読み取りが始まり、そのY画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム(200)の表面にY静電潜像を形成する。
【0099】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つ(T)静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット(230)の回転動作が行なわれ、Y現像機(231Y)が現像位置にセットされ、Y静電潜像がYトナーで現像される。以後、Y静電潜像領域の現像を続けるが、Y静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機(231K)の場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行ない、次のC現像機(231C)を現像位置に移動させる。これもやはり次のC静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、C及びMの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Yの工程と同様であるので説明は省略する。
【0100】
このようにして感光体ドラム(200)上に順次形成されたBk、Y,C、Mのトナー像は、中間転写ベルト(501)上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト(501)上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙(P)が転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ(610)のニップで待機している。
【0101】
そして、2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)と2次転写バイアスローラ(605)によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト(501)上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙(P)の先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ(610)が駆動されて、転写紙ガイド板(601)に沿って転写紙(P)が搬送され、転写紙(P)とトナー像とのレジスト合わせが行なわれる。
【0102】
このようにして、転写紙(P)が2次転写部を通過すると、2次転写電源(802)によって2次転写バイアスローラ(605)に印可された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト(501)上の4色重ねトナー像が転写紙(P)上に一括転写(2次転写)される。この転写紙としては従来、比較的平滑である普通紙が用いられているが、近年、リサイクルペーパーなど比較的表面性の粗い紙も用いられる。さらには、写真画像などをコート紙やエンボス紙のような多種多様な紙を用いて印刷することが多くなってきている。特に、エンボス加工紙のような表面に凹凸や模様がある用紙を用いる場合、その凹凸によってトナー像がうまく転写できない問題が発生する。従来のようなポリイミドによる中間転写ベルトでは、この凹凸形状に追従できないため、凹部へトナーが転写せず転写むらが発生する。この現象は特に2色以上が重なる色の部分では模様上に色調が異なる色むら画像となってしまう。本発明の中間転写ベルトを用いることで、用紙の凹凸によるむらを発生させることがない良好な転写が実現できる。
【0103】
この転写紙(P)は、転写紙ガイド板(601)に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ(606)との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置(210)により定着装置(270)に向けて送られる(図1参照)。そして、この転写紙(P)は、定着装置(27
0)の定着ローラ(271)、(272)のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置(270)は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0104】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム(200)の表面は、感光体クリーニング装置(201)でクリーニングされ、上記除電ランプ(202)で均一に除電される。また、転写紙(P)にトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード(504)によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード(504)は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0105】
このベルトクリーニングブレード(504)の上記中間転写ベルト(501)の移動方向上流側には、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材(503)が設けられている。このトナーシール部材(503)は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード(504)から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙(P)の搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材(503)は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード(504)とともに、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離される。
【0106】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト(501)のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)により削り取られた潤滑剤(506)が塗布される。該潤滑剤(506)は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ(505)に接触するように配設されている。この潤滑剤塗布機構は、転写性能又はクリーニング性能を長期的に良好な状態に維持するためのものであるが、中間転写ベルトの性能によって必要がない場合には敢えて当機能を使用しなくてもよい。また、この中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0107】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム(200)への画像形成は、1枚目の4色目(M)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト(501)は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード(504)でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行なうことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット(230)の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード(504)を中間転写ベルト(501)に接触させたままの状態にしてコピー動作を行なう。
【0108】
上記実施形態では、感光体ドラム1を一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、図2に示すような複数の感光体ドラムを一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置にも適用できる。
図2は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム(21BK),(21Y),(21M),(21C)を備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【0109】
図2において、プリンタ本体(10)は電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための、画像書込部(12)、画像形成部(13)、給紙部(14)、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部(12)に送信する。画像書込部(12)は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)に各色信号に応じた画像書込を行なう。
【0110】
画像形成部(13)は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)を備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)の周囲には、帯電装置、上記書込部(12)からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置(20BK)、(20M)、(20Y)、(20C)、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ(23BK)、(23M)、(23Y)、(23C)、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置(20BK)、(20M)、(20Y)、(20C)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト(22)は、各感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)と、各1次転写バイアスローラ(23BK)、(23M)、(23Y)、(23C)との間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0111】
一方、転写紙(P)は、給紙部(14)から給紙された後、レジストローラ(16)を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト(50)に坦持される。そして、中間転写ベルト(22)と転写搬送ベルト(50)とが接触するところで、上記中間転写ベルト(22)上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ(60)により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙(P)上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙(P)は、転写搬送ベルト(50)により定着装置(15)に搬送され、この定着装置(15)により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0112】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト(22)上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング装置(25)によって中間転写ベルト(22)から除去される。このベルトクリーニング装置(25)の下流側には、潤滑剤塗布装置(表示略)が配設されている。この潤滑剤塗布装置は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト(22)に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。該導電性ブラシは、中間転写ベルト(22)に常時接触して、中間転写ベルト(22)に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト(22)のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【0113】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト(22)の外周面あるいは内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト(22)の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニング装置(25)の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト(22)の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ(28)は、2次転写バイアスローラ(60)とベルト駆動ローラ(24)との間の位置に設けられる。位置検知は中間転写ベルト表面からの光反射を検知することによって行なっている。よって、中間転写ベルト表面の光沢度が低下する、または不均一になると検出が安定しない。本発明の中間転写ベルトを用いることで表面光沢度の低下を抑制でき、検出を安定化することができる。
【0114】
なお、本発明におけるシームレスベルトは、上述したような中間転写ベルト(501)または(22)を装備した中間転写ベルト方式の画像形成装置に好適に適用できる他、該中間転写ベルト(501)または(22)の代りに転写搬送ベルトを装備した転写搬送ベルト方式の画像形成装置にも適用できる。さらに、転写搬送ベルト方式の画像形成装置の場合においても、前記1感光体ドラム方式あるいは4感光体ドラム方式の何れにも適用可能である。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
【実施例1】
【0116】
[中間転写ベルトAの作製]
[基層用塗布液の調製]
まず、下記に示す各構成材料を混合し、φ1mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズ
ミル分散機にて5時間分散し、カーボン分散液を作製した。
<基層用分散液構成材料>
・ポリイミド溶液U−ワニスA(宇部興産 固形分18%) 2重量部
・カーボンブラックSpecialblack4(デグサ) 10重量部
・N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学) 88重量部
【0117】
<基層用塗布液構成材料>
上記分散液を用いて、下記の構成材料を混合し、遠心式攪拌脱泡機にて、混合、脱泡し、塗布液を得た。
・上記カーボンブラック分散液 50重量部
・ポリイミド溶液U−ワニスA(宇部興産 ;固形分18wt%) 50重量部
・ポリエーテル変性シリコンFZ2105(東レダウコーニング) 0.01重量部
【0118】
[シームレスベルトの作製]
次に、外径100mm、長さ300mmの外面を鏡面仕上げした上に離型剤を施した金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒外面に均一にディスペンサーを用いて流延して塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が70μmになるような液量の条件とした。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度3℃/分で100℃まで昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、昇温速度2℃/分で310℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。加熱を停止した後、常温まで徐冷した。
【0119】
[中間層用塗布液Aの調製]
まず、下記に示す各構成材料を混合し、φ1mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミル分散機にて5時間分散し、カーボン分散液を作製した。
<中間層用分散液A構成材料>
・エポキシ−シリコーン共重合体
ALBIFLEX348(シリコーン60wt%Nanoresins社) 1重量部
・カーボンブラックSpecialblack4(デグサ社) 10重量部
・N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社) 89重量部
上記分散液Aを用いて、下記の構成材料を混合し、遠心式攪拌脱泡機にて、混合、脱泡
し、塗布液Aを得た。
【0120】
<中間層用塗布液A構成材料>
・上記カーボンブラック分散液A 52重量部
・エポキシ−シリコーン共重合体
ALBIFLEX348(シリコーン60wt%Nanoresins社)40重量部
・メチルテトラヒドロ無水フタル酸
HN−2000(日立化成工業社) 8重量部
【0121】
[基層上への中間層Aの作製]
先に作製したポリイミド基層上に、上記中間層塗布液Aを同様に外面に均一にディスペンサーを用いて流延して塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が200μmになるような液量の条件とした。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。引き続き、昇温速度4℃/分で250℃まで昇温して120分加熱処理した。加熱を停止した後、常温まで徐冷した。
【0122】
[表面層用塗布液Aの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液A構成材料>
・ウレタンアクリレートオリゴマー
UN−3320HA 1500mw(根上工業) 20重量部
・重合開始剤
イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社) 1重量部
・2−ブタノン 78.5重量部
塗膜硬度:鉛筆硬度7H
【0123】
[中間層上への表面層Aの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Aをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、紫外線照射装置に入れ、露光(140[W/cm]×5[m/min]×3パス)を行ない、シームレスベルトAを得た。
【実施例2】
【0124】
[中間転写ベルトBの作製]
実施例1と同様の基層と中間層の積層の上に以下の表面層を形成し、中間転写ベルトBを得た。
【0125】
[表面層用塗布液Bの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液B構成材料>
・ウレタンアクリレートオリゴマー
UN−901T 4000mw(根上工業) 20重量部
・重合開始剤
イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社) 1重量部
・2−ブタノン 78.5重量部
塗膜硬度:鉛筆硬度6H
【0126】
[中間層上への表面層Bの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Bをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、紫外線照射装置に入れ、露光(140[W/cm]×5[m/min]×3パス)を行ない、シームレスベルトBを得た。
【実施例3】
【0127】
[中間転写ベルトCの作製]
実施例1と同様の基層と中間層の積層の上に以下の表面層を形成し、中間転写ベルトCを得た。
【0128】
[表面層用塗布液Cの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液C構成材料>
・ウレタンアクリレートオリゴマー
UN−904 4900mw(根上工業) 14重量部
・ウレタンアクリレートオリゴマー
UN−7600 11500mw(根上工業) 6重量部
・重合開始剤
イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社) 1重量部
・2−ブタノン 78.5重量部
塗膜硬度:鉛筆硬度F
【0129】
[中間層上への表面層Cの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Cをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、紫外線照射装置に入れ、露光(140[W/cm]×5[m/min]×3パス)を行ない、シームレスベルトCを得た。
【実施例4】
【0130】
[中間転写ベルトDの作製]
実施例1と同様の基層と中間層の積層の上に以下の表面層を形成し、中間転写ベルトDを得た。
【0131】
[表面層用塗布液Dの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液D構成材料>
・ウレタンアクリレートオリゴマー
UN−7600 11500mw(根上工業) 20重量部
・重合開始剤
イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社) 1重量部
・2−ブタノン 78.5重量部
塗膜硬度:鉛筆硬度HB
【0132】
[中間層上への表面層Dの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Dをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、紫外線照射装置に入れ、露光(140[W/cm]×5[m/min]×3パス)を行ない、シームレスベルトDを得た。
【実施例5】
【0133】
[中間転写ベルトEの作製]
実施例1と同様の基層と中間層の積層の上に以下の表面層を形成し、中間転写ベルトEを得た。
[表面層用塗布液Eの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液E構成材料>
・シリコーン変性ポリイミド樹脂
SMP2001(信越化学工業社製) 20重量部
メチルエチルケトン 60重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0134】
[中間層上への表面層Eの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Eをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、180℃で1h加熱硬化を行い、シームレスベルトEを得た。硬度は、3Hである。
【実施例6】
【0135】
[中間転写ベルトFの作製]
実施例1と同様の基層と中間層の積層の上に以下の表面層を形成し、中間転写ベルトFを得た。
[表面層用塗布液Fの調製]
下記に示す各構成材料を混合した。
<表面層用塗布液F構成材料>
・シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂
HR13NX(東洋紡績社製) 30重量部
N-メチル-2-ピロリドン 70重量部
【0136】
[中間層上への表面層Fの作製]
先に作製したエポキシ−シリコーン共重合樹脂からなる中間層上に、上記表面層塗布液Fをスプレーガン用いたスプレー塗工で均一に塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が1μmになるような液量の条件とした。3分間指触乾燥後、100℃で1時間乾燥、さらに200℃で1h加熱硬化を行い、シームレスベルトFを得た。硬度は、2Hである。
【実施例7】
【0137】
[中間転写ベルトGの作製]
実施例3の基層を以下のものとする他は同じとした。
[基層の作製]
ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学(株)製ユーピロンE−2000) 73重量部
ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱化成(株)製ノバドール5020)15重量部
アセチレンブラック(電気化学(株)製) 12重量部
【0138】
上記混合物を、二軸押出機を用いて280℃の温度にて溶融混練し、環状ダイより溶融チューブ状態にて押し出し、内径100mm、肉厚150μmのシームレスベルトを作製した。
【0139】
(比較例1)
中間転写ベルトAにおける表面層を設けない基層と中間層の積層のみの二層構造のベルトHを用いた。
【0140】
実施例1〜7、比較例1の各シームレスベルトを図2に記載の中間転写ベルトとして装備し、電子写真装置に装備した状態で1週間静置した後に、シアンのベタ画像をプリントした。用紙としては、さざなみ紙FC和紙(リコー)を用いた。当用紙は、和紙風に模様があり、平滑度が5の表面性があらい紙である。当用紙にプリントされたベタ画像を観察し、転写性を評価した。
その後、各シームレスベルトを取り出して表面の20°光沢度を測定し、再び中間転写ベルトとして装備し、連続1万枚プリント出力を行なった。その後、シームレスベルトを取り出してもう一度表面の20°光沢度を測定した。用紙はTYPE6200(リコー)を用いた。光沢度測定には光沢度計PG−1(日本電色工業(株))を用いた。測定面積は10.0×10.6mmである。
【0141】
ベタ画像観察にて評価した結果、本発明においては、中間層を設けることにより、感光体や用紙表面性状によらず高い転写率・転写性能を発現し、中抜けや色むらのような異常画像がないこと、ただし、表層の硬度が高くなりすぎるとこの機能が低下すること、が確認された。本実施例では、表層硬度が7H(実施例1)では、本評価結果がやや低下している。また、本発明の表層を設けることで、耐擦傷性に優れ、一定の光沢度を維持すること、ただし、表層の硬度が低くなるとこの機能が低下すること、が確認された。本実施例では、表面硬度がHB(実施例4)では、本評価結果がやや低下している。また、実施例7ではベタ画像に横帯状の異常画像が発生したが、これはベルトが装置内で1週間静置されたことで、張架された形状に塑性変形したことが原因であった。他の実施例ではこのような現象はなく、基層としてポリイミドを含む樹脂層を使用することにより、耐クリープ性・寸法安定性が向上することが確認された。
結果を、表1に示す。
ベタ画像観察の評価指標は◎がベタ濃度均一で、○が凹部に濃度がやや薄い、×凹部が完全に抜けているとした。
【0142】
【表1】

【0143】
必要とされるベルト表面の20°光沢度が60〜200の範囲で、さらにその範囲の中でもより好ましくは80〜150であることから、表1のプリント出力前後の表面の20°光沢度測定の結果より鉛筆硬度がF以上では光沢度が十分に維持されており、耐摩耗性、耐傷性に優れていると言える。また、表1のベタ画像観察結果により鉛筆硬度が6H以下であると特にベタ画像に特に異常もなく画質も良好であることから、鉛筆硬度が6H以下では感光体や用紙等への表面性状によらず高い転写率及び転写性能を発現していると言える。以上のことから、高い耐摩耗性、耐傷性に優れ、一定の表面光沢度を維持し、感光体や用紙等の転写媒体の表面性状によらず高い転写率及び転写性能を発現し、中抜けや濃度むら、色むらのような異常画像がなく、高品質なフルカラー画像を実現することができる中間転写ベルトの表面層の鉛筆硬度範囲はF〜6Hである。本発明により、中間転写ベルトの寿命を延ばすことが可能となった。
【符号の説明】
【0144】
(図1について)
P 転写紙
L 露光手段
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
204 電位センサ
205 トナー画像濃度センサ
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271 定着ローラ
272 定着ローラ
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
503 トナーシール部材
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
513 トナー画像
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源
(図2について)
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK 現像装置
20M 現像装置
20Y 現像装置
20C 現像装置
21BK 感光体
21M 感光体
21Y 感光体
21C 感光体
22 中間転写ベルト
23BK 1次転写バイアスローラ
23M 1次転写バイアスローラ
23Y 1次転写バイアスローラ
23C 1次転写バイアスローラ
24 ベルト駆動ローラ
25 ベルトクリーニング装置
26 ベルト従動ローラ
27 除電手段
28 光学センサ
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
70 バイアスローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特開2001−100545号公報
【特許文献2】特開2001−125388号公報
【特許文献3】特開2004−354716号公報
【特許文献4】特開2006−285048号公報
【特許文献5】特開2007−316622号公報
【特許文献6】特開2004−310016号公報
【特許文献7】特開2005−266793号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層上に、少なくともエポキシ−シリコーン共重合体を含む中間層を積層し、前記中間層上に表面層を順次積層した3層構造であることを特徴とする電子写真用中間転写ベルト。
【請求項2】
少なくともポリイミド樹脂を含む基層上に、少なくともエポキシ−シリコーン共重合体を含む中間層を積層し、前記中間層上に表面層を順次積層した3層構造であることを特徴とする電子写真用中間転写ベルト。
【請求項3】
前記表面層表面の鉛筆硬度がF〜6Hの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記表面層が少なくともアクリルウレタン系の硬化性樹脂を含むものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記表面層が少なくとも180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリイミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記表面層が少なくとも180℃以上で加熱硬化してなるシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行ない、該一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する電子写真装置において、該中間転写ベルトが請求項1乃至6のいずれかに記載の中間転写ベルトであることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−79245(P2010−79245A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93643(P2009−93643)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】