説明

電子取引での個人を識別するためのシステム

本システムは端末10、12と、データ処理手段を含む独立の携帯デバイス20と、前記端末と前記携帯デバイスとの間の個人識別データの交換のための無線結合手段(RF通信)とを備える。端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される物理的接触による取引の開始時に、端末から携帯デバイスへ接続コード(接続コード)を送信するために、端末中のトランスミッタと携帯型デバイス中のレシーバを含む、身体を媒体とする通信手段(OSC通信)が提供される。携帯デバイスの制御手段は、所定の基準に従った前記接続コードに応じて、前記取引のさらなる実行を可能にするために、受信された前記接続コードを確認し、前記無線結合手段(RF通信)を介して信号を端末に条件付で発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電子取引での個人の識別に関する。
【背景技術】
【0002】
制限されたエリアに対するアクセス制御、輸送および電子チケット販売、商業および金融取引での認証、コンピュータおよびネットワークへのアクセス、道路通行料管理など、個人の識別を必要とする応用例は数多く存在する。
【0003】
典型的に電子識別は、一方で制御されるシステムに接続された端末を必要とし、もう一方で、識別を必要とする個人によって処理されるチップカードまたはバッジの形態を通常とる携帯デバイスを必要とする。
【0004】
結合は、電気接点か、または、端末のスロットへカードを挿入することを必要としないためますます一般的な技術となっている、誘導もしくは高周波(RF)結合などの無線結合のいずれかを介して、端末と携帯デバイスとの間で行われる。
【0005】
個人の識別は、PINコードなどのパスワード、および/または個人から感知される生物測定データをしばしば必要とする。無線結合が使用される場合は常に、端末と携帯デバイスとの間の、識別プロトコルによって必要とされる信号交換のエミュレーション(emulation)によるタンパリング(tampering)を回避するために、さらなるセキュリティ機能が設けられなければならない。
【0006】
いくつかの応用例で必要とされるセキュリティのレベルの高さから、関係する応用例に専用の特定の解決法が数多く生じることになり、設計および製造費の高さに加え、解決法は柔軟性の乏しい複雑なものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、低費用での大量製造が可能で、様々な異なる応用例に簡単に適用することが可能であり、なおかつ識別過程での高いセキュリティレベルで使用するために信頼に耐えうるかつ簡単な、多用途の汎用システムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的はこのようなシステムを提供することである。本発明のシステムは端末、データ処理手段を含む独立の携帯デバイス、および前記端末と前記携帯デバイスとの間の個人識別データの交換のための無線結合手段を備えた種類のシステムである。
【0009】
本発明によれば、このシステムは、端末中のトランスミッタおよび携帯デバイス中のレシーバを含む身体を媒体とする(body−medium)通信手段であって、端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される物理的接触による取引の開始時に、端末から携帯デバイスに接続コードを送信するように構成された身体を媒体とする通信手段をさらに備えることを特徴とする。携帯デバイスの制御手段は、所定の基準に従った前記接続コードに応じて、前記取引のさらなる実行を可能にするために、受信された前記接続コードを確認し、前記無線結合手段を介して端末に条件付で信号を発生するように構成されている。
【0010】
本発明の特定の、好ましい実施形態によれば、
前記制御手段は、前記取引のさらなる実行の前に、前記無線結合手段の動作を可能にするために、条件付で信号を発生するようにさらに構成され、
携帯デバイスの前記確認手段は、個人によって確立された物理的接触による個人の生物測定データを確認するための、特には指紋センサ、声紋センサ、および皮下超音波センサのうちの1つである生物測定センサを含み、
システムは、端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される前記物理的接触の妨害を検出するための手段をさらに含み、
前記身体を媒体とする通信手段は、直接拡散式スペクトル拡散(Direct Sequence Spread Spectrum)手段を含み、単方向かつノンセキュア(non−secure)の通信手段、および/またはノンセキュアの通信手段であり、
携帯デバイスに送信される接続コードは端末型識別データを含み、前記制御手段が携帯デバイスに記憶された対応のデータに関して、携帯デバイスによって受信された前記端末型識別データを確認し、携帯デバイスに記憶された対応のデータに従った前記端末型識別データに応じて、取引の実行をさらに可能にするために、条件付で前記信号を発生するようさらに構成され、
携帯デバイスに送信される接続コードは第1ランダムデータを含み、前記制御手段が前記無線結合手段を介して端末に前記第1ランダムデータを再送信するようにさらに構成され、端末が接続コードで送信された前記第1データに関して、前記再送信された第1ランダムデータを確認するように構成され、
携帯デバイスに送信された接続コードは第2ランダムデータを含み、前記制御手段が受信された前記第2ランダムデータを記憶するようにさらに構成され、端末が前記無線結合手段を介して携帯デバイスに再送信要求を発生するようにさらに構成され、前記制御手段が前記再送信要求を受信すると前記記憶された第2ランダムデータを端末に再送信するようにさらに構成され、端末が最初に送信された第2ランダムデータに関して、前記再送信された第2ランダムデータを確認するようにさらに構成される。
【0011】
本発明の上記およびその他の目的、態様、ならびに利点は、添付の図面を参照した以下に述べる本発明の好ましい実施形態の詳細な説明から、よりよく理解されよう。図中、同じ符合は異なる図面にわたり、同一の特徴、または機能的に類似した特徴を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで図を参照すると、図1は制御されるメインシステム(メインフレームコンピュータ、アクセス制御等)に接続された端末10、および携帯デバイス20を本質的に含む、本発明のシステムの基本的な構成要素を示す。
【0013】
端末10には、識別を要求する個人の直ぐ近く、具体的には、例えばトランシーバ12の接触パッド、ハンドル、その他の金属部品に触れることによって、個人がトランシーバ12と物理的に接触をもってよい位置に置かれたトランシーバ(トランスミッタ/レシーバ)12が設けられている。トランシーバ12は、双方向(有線または無線)通信を介して端末10以外のものに接続されている。システムのその他の重要な構成要素は、識別を求める個人が持っていてもよい、具体的にはこの個人によって物理的に接触されてもよい携帯デバイス20である。この携帯デバイスは好ましくは、個人の身体のマス(mass)と常時電気接触することを可能にする、金属製の裏面を有するブレスレットや腕時計等の物体に埋め込まれている。
【0014】
トランシーバ12と携帯デバイス20との間で、2つの異なる通信チャネルが確立されてもよい。
【0015】
「皮膚上通信(Over Skin Communication,OSC)」と呼ぶこととする第1通信チャネルは(OSCトランスミッタ手段を含むだけの)トランシーバ12から(OSCレシーバ手段を含むだけの)携帯デバイス20への単方向で低データ速度の通信チャネルである。
【0016】
本質的に、OSC通信は個人の身体のマスを通信媒体として利用する通信(身体を媒体とする通信)である。この通信は、OSC信号が端末から携帯デバイスへ送信されるようにするために、一方ではトランシーバ12の適切な部分と、他方では携帯デバイス20の適切な部分とユーザが物理的に接触することを必要とする。
【0017】
OSC通信の詳細は以下に、特に図3を参照して示される。
【0018】
「RF通信」と呼ぶこととする第2通信チャネルは、どちらもRFトランスミッタおよびレシーバ手段を備える、トランシーバ12と携帯デバイス20との間の両方向の、高データ速度の通信チャネルである。
【0019】
RF通信はBluetooth(IEEE802.15.1)、WPAN(IEEE802.15.3)、HiperLan2、ETSI−BRAN等の、知られている無線短距離通信技術のうちの任意のものであってよい。このような通信規格は全て、低い伝送電力で、短距離(典型的には数十cm〜数m)での高速(典型的には2〜100Mbit/s)の両方向データ交換を可能にする。
【0020】
識別手順の第1のステップは、OSC通信チャネルを介した端末から携帯デバイスへの、いわゆる「接続コード」の送信である。このような送信は、個人の身体を介して双方の部分を接続するために、一旦個人がトランシーバ12のある部分と物理的に接触し、また携帯デバイス20のどこか他の部分とも接触することで開始されてもよい。
【0021】
接続コードは2つの乱数AとB、および端末が属するクラスの識別を含有するメッセージCを含む。
【0022】
携帯デバイスのOSCレシーバが一旦接続コードを受信すると、数Aはデバイスの記憶装置に留められる。デバイス20に含まれるデータ処理手段は、コードを受信した特定の携帯デバイスが、識別を要求される端末のクラスに属することを確認する。この確認は、メッセージCに含まれるクラス識別と、携帯デバイス20のメモリに記憶された対応するデータとを比較することによって行われる。
【0023】
端末と携帯デバイスとの各々のクラスが確かに一致することが一旦確認されると、携帯デバイスはRF通信を開始し、数Bを発生する。
【0024】
Bを含むRF信号は、この数Bが接続コードの中の最初に送信されたものと同じ数であることを確認する端末のトランシーバ12によって受信される。このような比較は、トランシーバ12の環境に複数の携帯デバイスが同時に存在し、トランシーバ12が異なる携帯デバイスから発信されている複数のRF信号を同時に受信する場合に対処することを特に目的としている。
【0025】
さらなるステップで、端末はRF通信チャネルを介して数Aの送信要求(RTSA)を携帯デバイスに送信する。この要求は、OSCレシーバによる接続コードの受信の後に記憶装置に留められていた値Aを、RF通信チャネルを介して送信する携帯デバイスによって受信される。
【0026】
一旦この確認がうまく実行されれば、RF通信チャネルを介して、端末と携帯デバイスとの間の取引がさらに進行してもよい。端末と携帯デバイスとの間の接続が次に開始されなければならないとき、いかなる携帯デバイスによっても決定不可能な乱数AとBとの新しい値が選択される。
【0027】
説明してきた本発明のシステムの第1の利点は、例えば個人が、自身の手または指の先端で、端末機器の接触部分(金属パッド、金属ハンドル等)に触れることによって、端末の機器と物理的に接触した後にだけ識別が実行されてよく、ゆえに取引が進行してよいということである。このことは、(完全に識別された)個人の自主的な行為を伴わない、携帯デバイスの使用のいかなるものも禁ずる。このセキュリティ機能は、カードを所持する個人の認識および承認を伴わない、RF通信の不正な確立の事故のいかなるものも回避するために、無線通信を利用する携帯デバイスにおいて特に重要である。
【0028】
本発明の第2の利点は、端末と携帯デバイスとの間のさらなる信号交換の全てが、高データ速度、かつ修正コード、暗号化、ノイズおよび混信の排除を伴う高度な技術で、RF通信を介して実行されるにもかかわらず、接続コードのOSC送信のために、端末の接触部分が個人によって短時間接触されること(例えばほんの少しのタッチ)だけを必要とすることである。
【0029】
本発明は特に、OSC通信の欠点(特には低データ速度)を伴わずに、同通信の全ての利点(通信の開始に必要とされる個人の積極的行為(positive action))の保持を可能にする。
【0030】
その上、OSC通信は比較的高い伝送電力を必要とするという事実にもかかわらず、本発明のOSC通信は単方向のみであるので、携帯デバイスにOSCトランスミッタを有する必要がなく、低消費回路および小型のバッテリで考案されてもよい。
【0031】
指紋センサ(容量センサ、熱センサ、または光学センサのいずれか)、声紋センサ、皮下超音波センサ等の特定のセンサを含む生物測定識別デバイスを携帯デバイスに設けることによって、さらなるセキュリティレベルが加えられてもよい。生物測定識別は、携帯デバイスを持ち、端末との物理的接触によってOSC通信を開始しようとする個人が、例えば許可を受けたユーザの携帯デバイスを盗んだ人ではなく、確かに許可を受けたユーザであるということを確かめる。
【0032】
図2は、携帯デバイス20の好ましい実施形態の主要な機能ブロックを示す。
【0033】
データ処理手段22は、非揮発性メモリ24、OSCレシーバ26、RFトランスミッタ/レシーバ28、光学生物測定センサ30、光学的光/音声インジケータ36、および時間/日付スタンプ回路38を含めた複数の周辺デバイスとの通信のために、CPU、RAM等を備えたマイクロコントローラ、ならびに一連のバスおよびインタフェースを含む。デバイス全体は、充電器34に接続された再充電型バッテリ32によって電力を供給される。
【0034】
OSCレシーバ26に関する限り、これは個人の身体を介して送信された信号を受信するための、知られている型のデバイスである。OSC通信は、生物学的なマスを伝送媒体として利用することによって個人の身体の範囲に限定される「Personal Area Network」を考案したT.Zimmermannの論文で特に研究されている、知られている技術である。
【0035】
図3は、擬似静電気領域の使用に基づいた、そのような伝送の原理を示す。OSCシステム40は、生物学的コンダクタ46によって結合されたトランスミッタ42およびレシーバ44、グラウンド48を通るリターンループを含む。トランスミッタ42によって発生される信号の減衰は非常に高く(典型的には60dB)、主にグラウンドを通るリターン(10fF)に左右されるので、送信信号はレシーバ44によって正しく復号されるために十分に強くなければならない。しかしながら、より感度の高いレシーバ、およびDSSS(直接拡散式スペクトル拡散)技術などの混信除去技術を使用することによって、送信される信号のためにより低い振幅が選択されてもよい。
【0036】
しかしながらいずれの場合でも、データ速度は低いままで、典型的には10kbit/sより低い。それにもかかわらず、上で説明したように、本発明のシステムはOSCレシーバによって受信されるために非常に小さなデータ量(数百ビット)を必要とするのみである。
【0037】
OSCは個人の身体の一部である通信媒体を伴うので、OSCレシーバ26は個人の身体と接触する、好ましくは固定的に接触する感知要素を含む。携帯デバイスもまた、感知要素が個人の身体と確かに接触しており、離れていないということを検出し、それ以外ではいかなるデバイスの動作も抑制するためのデバイス(不図示)を含む。そのようなデバイスは、例えば心拍を検出するための電気または熱センサを含んでもよい。そうしたセンサは当業者にはよく知られており、さらに説明することはしない。優先の実装は、腕時計の形態をとる携帯デバイスであり、時計がユーザの腕から離れた場合、携帯デバイスの埋め込まれた電子回路は自動的に停止する。
【0038】
(端末のトランシーバ12に含まれるものとしての)OSCトランスミッタ50のための典型的な配置は図4に示される。配置は、携帯デバイスに送信される接続コードを受信するコードジェネレータ52と拡散スペクトルジェネレータ44とを含む。HFジェネレータ60を動かすモジュレータ58を制御する乗算器56で双方の信号は結合される。変調されたHF信号は、個人の身体のマスを通した携帯デバイスへの送信のために、ボディカプラ62に印加される。
【0039】
上で説明したセキュリティ機能が与えられることで、OSC通信を介して送信された情報を暗号化する必要はなく、信号損失または変更のリスクの低い、単純で確実な信号送信が可能になる。
【0040】
再び図2を参照すると、OSCレシーバ26に加えて、携帯デバイス20は処理手段22と結びついたRFトランスミッタ/レシーバ28もまた含む。
【0041】
上述のように、RF通信はBluetooth、WPAN、HiperLan2、ESTI−BRAN等の任意の知られている手段を介したものでもよい。携帯デバイスのトランスミッタは、携帯デバイスと端末との距離の短さに起因する(1mW未満の)低いRF伝送電力によって、(20mW未満の)低消費量となるように考案されている。さらに、DSSSなどの混信低減技術を実施することによって、高データ速度(応用例の必要条件によって、典型的には2Mbit/s〜100Mbit/sの間)を可能にしながらも、携帯デバイスのトランスミッタのサイズの小ささを維持することが可能である。混信の低減は、直接拡散式スペクトル拡散(DSSS)変調、または当業者からよく知られている、任意のその他の知られている技術によって達成されてもよい。RF通信はさらに、IETF−TLSなどの相互接続性規格、および/またはTCP/IPなどの標準的な通信プロトコルを実施してもよい。
【0042】
携帯デバイス20全体は、充電器34に結合された再充電型バッテリ32によって電力を供給される。充電器34は好ましくは、例えば磁気誘導、光電池、またはEM領域レシーバアンテナ(EM field receiver antenna)を使用する、非接触型の充電器である。
【0043】
携帯デバイスの待機状態では、OSCレシーバ26、および時間/日付スタンプ38だけが(部分的に)アクティブであることに注意すべきである。OSCレシーバ26によって一旦データ信号が受信されると、その後デバイスの主要な機能の全て、特にデータ処理手段22はスリープ解除される(waked up)。通常の使用、すなわち識別を除いた使用では、個人は本発明のシステムと互換性を持つ可能性もある幅広い種類の機器と接触していてもよいので、生物測定センサ30およびRFトランスミッタ/レシーバ28のいかなるアクティブ化の前にも、OSCレシーバによって受信される、端末クラスインジケータでの事前チェックが実行される。このことは、個人が、許可を受けた(携帯デバイスのメモリ中に記憶されたような)機器のクラスに実際に対応する端末と接触している場合にのみ、相当量の電力供給を必要とするこれらのモジュールがアクティブ化することを回避する。
【0044】
時間/日付スタンプ回路38は好ましくは、例えばRFC1119およびRFC1305などのネットワーク時間プロトコルの手段によって、通信ネットワークを通って設定されるように構成される。
【0045】
インジケータ36は光インジケータ(LEDまたはLCDディスプレイ)、および/またはシステムに関して個人に与えられる肯定的(または否定的)識別の確認を可能にするブザーであってもよい。
【0046】
上述の発明は、複数の異なる応用例で使用されてもよい。
【0047】
第1の典型的な応用例は電話の分野にあり、この分野では端末は、(例えば個人の身体と固定的に接触している腕時計の形態をとる)携帯デバイスを持っているユーザによって一旦電話が渡されると(handed)、電話が自動的に電話呼び出しを受信するように設定され、構成されるように、接触パッドを組み込んだ携帯電話か、または電話ハンドセットである。電話は携帯デバイスに記憶された電話番号簿にアクセスしても、および/または自動的にユーザの優先パラメータを設定してもよい。さらに、支払い要求は明細が携帯デバイスに記憶されている特定の加入者の請求書に記入されてよい。
【0048】
その他の典型的な応用例は自動販売機に伴うものであり、ここでは現金、クレジットカード等を機械に差し込む必要は一切無く、取引を可能にするためにはユーザが機械のディスペンサの引き出し、またはドアに触れるだけでよい。
【0049】
その他の典型的な応用例は、(物理的または論理的な)条件付アクセスの分野にある。例えば、ユーザにとっては、コンピュータまたはネットワークにアクセスする本人の権限の確認を開始し、ユーザのプロフィールをコンピュータに読み込ませるために、パスワードを尋ねられる必要はなく、コンピュータに触れるだけで十分であってもよい。RF通信を維持するのに十分ではない距離までユーザがコンピュータから離れる場合、コンピュータを自動的にロックする手段が提供されてもよい。
【0050】
本発明の携帯デバイスはまた輸送手段へのアクセスを与えることもできる。これは、携帯デバイスが自動車の接触型キーに機能上対応しており、さらには運転免許、保険、レンタルの詳細等についての情報を記憶している、個人の輸送手段であってもよい。デバイスはまた、出入り口のドアを押すこと(このドアとの接触から生じる、端末との物理的な接触)すなわち、入口点および出口点で確認するだけで、個人ユーザが公共輸送機関にアクセスできるようにしてもよく、システムは移動した距離に応じて、自動的にユーザに請求を出してもよい。
【0051】
自動条件付アクセスを備えた個人データを記憶すること、
オンザフライで暗号化/暗号解読を行い、データを記憶すること、
制限されたエリアへのアクセス、すなわちドアのハンドルに接触し、回すだけで電子ロック、またはアラームの無効化が達成されるということ、
銃などの危険な器具に対する保護、すなわち本発明のシステムが、銃の柄を掴んだとたんに自動的に識別される、許可を受けた個人によってのみ銃の引き金が引かれることが可能となるように実装されているということ、
構内の個人を追跡すること、すなわち個人がドアに触れ、開ける度に、システムによって自動的にその人物が識別され、対応する時間および位置がシステムの中央データベースに記録されるということ、
もはや安全なRF通信が可能でなくなる距離まで個人が端末から離れる場合、アラームを発すること、
知られている位置にある特別な柱に触れさせることのみによる個人の位置測定、すなわちシステムはここで、要求する人物の位置および身元を示すメッセージを中央サイトに自動的に送信するということ、
などの(当然ながら、以上のリストは限定されたものではない)、その他多くの応用例が、同じく本発明のシステムの利点の恩恵を被る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の重要な完全体(integers)、およびそれらが互いに作用する方法を概略的に示す図である。
【図2】本発明の携帯デバイスを構成する様々な機能ブロックを示す図である。
【図3】本発明のシステムによって使用される、身体を媒体とする通信のタイプを説明する概略図である。
【図4】本発明のシステムによって使用される、端末に含まれる身体を媒体とする通信トランスミッタの機能ブロックを概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末(10、12)と、
データ処理手段(22)を含む独立の携帯デバイス(20)と、
前記端末と前記携帯デバイスとの間で個人識別データを交換するための無線結合手段(RF通信)とを備える、電子取引で個人を識別するためのシステムであって、
該システムが、
端末中のトランスミッタ(50〜62)と携帯デバイス中のレシーバ(26)とを含む、身体を媒体とする通信手段(OSC通信)であって、
端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される物理的接触による取引の開始時に、端末から携帯デバイスへ接続コード(接続コード)を送信するように構成された身体を媒体とする通信手段と、
所定の基準に従った前記接続コードに応じて、前記取引のさらなる実行を可能にするために、受信された前記接続コードを確認し、前記無線結合手段(RF通信)を介して、信号を端末に条件付で発生するように構成された制御手段とをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記取引のさらなる実行の前に、前記無線結合手段の動作を可能にするために信号を条件付で発生するようにさらに構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
携帯デバイスの前記確認手段が、個人によって確立される物理的接触による個人の生物測定データを確認するための生物測定センサ(30)を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記生物測定センサ(30)が、指紋センサ、声紋センサ、および皮下超音波センサのうちの1つである請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される前記物理的接触の妨害を検出するための手段をさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記身体を媒体とする通信手段(OSC通信)が、直接拡散式スペクトル拡散手段を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記身体を媒体とする通信手段(OSC通信)が、単方向の通信手段である請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記身体を媒体とする通信手段(OSC通信)が、ノンセキュアの通信手段である請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
携帯デバイスに送信される前記接続コード(接続コード)が、端末型識別データ(C)を含み、
前記制御手段が、携帯デバイスに記憶された対応のデータに関して、携帯デバイスによって受信された前記端末型識別データを確認するようにさらに構成され、
前記制御手段が、携帯デバイスに記憶された対応のデータに従った前記端末型識別データに応じて、取引のさらなる実行を可能にするために、前記信号を条件付で発生するようにさらに構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
携帯デバイスに送信される前記接続コードが第1ランダムデータ(B)を含み、
前記制御手段が、前記無線結合手段(RF通信)を介して、前記第1ランダムデータを端末に再送信するようにさらに構成され、
端末が、接続コードの中の送信された前記第1データに関して、前記再送信された第1ランダムデータを確認するように構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
携帯デバイスに送信された前記接続コード(接続コード)が第2ランダムデータ(A)を含み、
前記制御手段が、受信された前記第2ランダムデータを記憶するようにさらに構成され、
端末が前記無線結合手段(RF通信)を介して、携帯デバイスに再送信要求(RTSA)を発生するようにさらに構成され、
前記制御手段が、前記再送信要求を受信すると、前記記憶された第2ランダムデータを端末に再送信するようにさらに構成され、
端末が最初に送信された第2ランダムデータに関して、前記再送信された第2ランダムデータを確認するようにさらに構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
データ処理手段(22)と、
端末(10、12)と個人識別データを交換するための無線結合手段(RF通信)とを含む、電子取引で個人を識別するための、請求項1から11のいずれかによるシステムでの使用のための独立の携帯デバイス(20)であって、
該携帯デバイスが、
端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される物理的接触による取引の開始時に、端末から接続コード(接続コード)を受信するように構成された、身体を媒体とする通信レシーバ(26)と、
所定の基準に従った前記接続基準に応じて、前記取引のさらなる実行を可能にするために、受信された前記接続コードを確認し、信号を条件付で発生するように構成された制御手段とをさらに含むことを特徴とする携帯デバイス。
【請求項13】
携帯デバイス(20)と個人識別データを交換するための無線結合手段(RF通信)を含む、電子取引で個人を識別するための、請求項1から11のいずれかによるシステムでの使用のための端末(10、12)であって、
該端末が、
端末と携帯デバイスとの間の、個人によって確立される物理的接触による取引の開始時に、携帯デバイスに接続コード(接続コード)を送信するように構成された身体を媒体とする通信トランスミッタと、
所定の基準に従った前記接続コードに応じて、前記取引のさらなる実行を可能にするために、前記無線結合手段を介して携帯デバイスによって発生された信号を受信する手段とをさらに含むことを特徴とする端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528054(P2007−528054A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544589(P2006−544589)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004156
【国際公開番号】WO2005/062236
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504326572)アクサルト・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】