説明

電子式セキュリティシステムおよびそれに用いられる遠隔操作用携帯電子鍵

【課題】携帯用の電子鍵が電池切れを起したとしても、他の電子機から給電することができて、緊急対応性に優れた小型の電子セキュリティシステムおよびその遠隔操作用携帯電子鍵を得る。
【解決手段】車両機器の遠隔操作システムに適用される電子セキュリティシステムである。電子鍵を電源が搭載される電子鍵筐体と、この電子鍵筐体に着脱可能とされ、送受信アンテナを具備し信号照合手段と前記車両機器の操作制御手段を具備した電子鍵モジュールとから構成する。前記電子鍵モジュールは他の電子機器の交換モジュールと給電端子配置を共通にするとともに外観形状を同じくして、前記電子鍵筐体に挿入された通常動作状態で電池切れにより動作不能となった場合に、前記電子鍵モジュールを他の電子機器に差し替えることで緊急動作可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式セキュリティシステムおよびそれに用いられる遠隔操作用携帯電子鍵に係り、特に車両や家屋等のドアの開錠および閉錠を遠隔から操作することができるようにした電子式セキュリティシステムおよびその遠隔操作用携帯電子鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアキーや家屋のドアキーなどを開閉する際に、手を使わずに開閉操作することができるようにした電子式セキュリティシステムが知られている。例えば、自動車のドアやエンジンを開閉させるのに、携帯しているキーにより、メカニカルに開閉させることなく、送受信操作により電子照合を行ったり、ロック解除を行ったりするものが知られている。そのようなシステムの例としては、スマートキーシステム(登録商標)やインテリジェントキー(登録商標)システムなどがある。
【0003】
ところが、これらのシステムでは、携帯しているキーを操作し、電子錠側の電子照合により開閉できるが、そのキーは電池で駆動しているため、電池切れが必然的に発生する。このため、従来から電池切れの対策のための技術的手段が各種講じられている。
【0004】
例えば、携帯回路内に電源を用いたもの(特許文献1)、腕時計に鍵機能信号の生成回路を持たせるとともにメカニカルキーを内蔵させるものがある(特許文献2)。更に、電力受信手段により外部から電源を得るようにしたものも知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−96891号公報
【特許文献2】特開2004−100346号公報
【特許文献3】特開2005−314962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の電子セキュリティシステムでは、携帯すべき電子鍵は、複数の電源やメカニカルキーを付加するなどしなければならないという問題があり、これがコスト増大や電子鍵の大型化を招いているという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
ドアの開錠及び閉錠を行う電子式セキュリティシステムであって、電池を備えた電子鍵筐体と、前記電子鍵筐体と着脱可能とされ、前記電池から給電され駆動する電子鍵モジュールと、を備えた遠隔操作用携帯電子鍵と、前記遠隔操作用携帯電子鍵との間で無線通信を行い前記ドアの開錠及び閉錠を行うドア側電子錠装置と、を備え、前記電子鍵筐体の前記電池が電池切れになった場合、前記電子鍵モジュールを他の電子機器に取付けることにより前記他の電子機器から前記電子鍵モジュールへ電源が供給され、前記電子鍵モジュールと前記ドア側電子錠装置との間で無線通信を行うことを可能としたことを特徴とする電子式セキュリティシステム。
【0008】
この構成によれば、遠隔操作用携帯電子鍵の電池切れが生じても、利用者が携帯している他の電子機器等から電源供給を受けて、開錠、閉錠などの緊急動作を行わせることが可能なシステムを構築できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の電子式セキュリティシステムであって、前記電子鍵モジュールは、前記ドア側電子錠装置と前記無線通信を行う電子鍵基本回路を有し、前記電子鍵筐体は、前記電子鍵モジュールが差し込まれるモジュール差込ソケットを有し、前記モジュール差込ソケットに給電端子が形成され、前記給電端子は前記電池と接続されており、前記電子鍵モジュールは前記モジュール差込ソケットの前記給電端子と対応する位置に電源端子を有し、前記電源端子は前記電子鍵基本回路に接続されていることを特徴とする電子セキュリティシステム。
【0010】
この構成により、電子鍵筐体の電池が切れた場合は、電子鍵モジュールを電子鍵筐体から取り外し、外部の電子機器のソケット(スロット)に差し込むことにより、電子鍵モジュールへ電源が供給され、電子セキュリティシステムを緊急動作させることが可能となる。
【0011】
[適用例3]
適用例2に記載の電子式セキュリティシステムであって、前記電子鍵モジュールは、前記他の電子機器に着脱可能な交換モジュールと少なくとも給電電源端子の配置とおよび外観形状を同じにして、当該前記他の電子機器から給電可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電子セキュリティシステムの遠隔操作用携帯電子鍵。
【0012】
この構成により、コンピュータや携帯端末機器、あるいはゲーム機器などの他の電子機器における差込ソケットにて着脱される交換モジュールと給電端子位置や外観が同じであるため、それらに電子鍵モジュールを差し込むことで、電子機器から電源の供給を受けることができ、緊急対応できるものとなる。
【0013】
[適用例4]
適用例1に記載の電子式セキュリティシステムであって、前記電子鍵モジュールは、SDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード(登録商標)、USB、およびスモールPCカードの少なくとも何れか1つに準拠した外形および前記電源端子の配置を有することを特徴とする電子セキュリティシステム。
【0014】
この構成により、薄型メモリーカードと同一、あるいはゲームカートリッジ、更にはコンピュータや携帯端末に利用されているメディア類が装着されるソケットに交換装着でき、電源の供給を受けて電子鍵モジュールを緊急動作させることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1に記載の電子式セキュリティシステムに用いられる遠隔操作用携帯電子鍵であって、前記電子鍵モジュールは、前記ドア側電子錠装置と前記無線通信を行う電子鍵基本回路を有し、前記電子鍵筐体は、前記電子鍵モジュールが差し込まれるモジュール差込ソケットを有し、前記モジュール差込ソケットに給電端子が形成され、前記給電端子は前記電池と接続されており、前記電子鍵モジュールは前記モジュール差込ソケットの前記給電端子と対応する位置に電源端子を有し、前記電源端子は前記電子鍵基本回路に接続されていることを特徴とする遠隔操作用携帯電子鍵。
【0016】
上述の電子セキュリティシステムで用いられる遠隔操作用携帯電子鍵は、電池が切れた場合に、携帯電話等の他の電子機器から電源を供給しドアの緊急開錠を行うことができる。
【0017】
[適用例6]
適用例5に記載の遠隔操作用携帯電子鍵であって、前記電子鍵モジュールは、前記他の電子機器に着脱可能な交換モジュールと電源端子の配置および外観形状を同じにして、前記他の電子機器から給電可能としたことを特徴とする遠隔操作用携帯電子鍵。
【0018】
この構成により、コンピュータや携帯端末機器、あるいはゲーム機器などの他の電子機器における差込ソケットにて着脱される交換モジュールと給電端子位置や外観が同じであるため、それらに電子鍵モジュールを差し込むことで、電子機器から電源の供給を受けることができ、緊急対応できる遠隔操作用携帯電子鍵を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る電子式セキュリティシステムおよびこれに用いられる遠隔操作用携帯電子鍵の具体的実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る遠隔操作用携帯電子鍵10を電子鍵筐体12と電子鍵モジュール14に分離した状態の平面図を示し、図2は電子鍵筐体12に電子鍵モジュール14を装着した状態を示している。また、図3はこれらの回路の概略構成を示している。
【0020】
遠隔操作用携帯電子鍵10は、通常は図2に示すように、電子鍵筐体12に電子鍵モジュール14を装着した状態で携帯しておき、電池が切れた場合、電子鍵モジュール14を取り外して、この電子鍵モジュール14を他の電子機器の交換モジュールソケットに差し込んで、当該他の電子機器から給電を受けて緊急的に使用できるようにしたものである。
【0021】
この実施形態では、電子鍵モジュール14をSDメモリーカード形状に形成したものである。まず、電子鍵モジュール14が装着される電子鍵筐体12には、モジュール差込ソケット16が形成されており、ここに電子鍵モジュール14を差し込んで両者の電気的な接続を図るようにしている。そして、携帯用の電子鍵が電池切れを起したとしても、他の電子機器から給電することができて、緊急対応性に優れた小型の電子セキュリティシステムの遠隔操作用携帯電子鍵10を形成している。
【0022】
また、図3に示すように、電子鍵筐体12側にはモジュール差込ソケット16の内奥部に、接続端子として、少なくとも電子鍵モジュール14へ電源を供給する給電端子18a、18bと、2本の受信アンテナに接続されるアンテナ端子20y、20zが設けられている。そして、電子鍵筐体12には、前記給電端子18a、18bに給電する電源電池22を搭載している。また、受信アンテナは指向性の高い電波を利用するため、直交3軸方向に向けられたアンテナが必要であるが、そのうち、少なくとも2軸(Y軸、Z軸)に沿った受信アンテナ24y、24zを電子鍵筐体12に実装して、前記アンテナ端子20y、20zにて受信するようにしている。なお、電子鍵筐体12のモジュール差込ソケット16は、SDメモリーカードの規格で定められたソケット(スロット)と同じ形状とされ、電子鍵モジュール14を差込および取り外し可能になっている。
【0023】
一方、電子鍵筐体12に着脱可能となっている電子鍵モジュール14の外形はSDメモリーカードの規格で定められた外形と同形状とされ、前記給電端子18a、18bと接続される電源端子26a、26bと、アンテナ端子20y、20zと接続される受信端子28y、28zが設けられている。電源端子26a、26bは、SDメモリーカードの規格で定められた電源端子の位置と同じ位置に形成されている。電子鍵モジュール14には、これらの端子26a、26b、28y、28zに接続された信号処理回路30が実装されている。また、残りの受信アンテナ24xと送信アンテナ32が取り付けられ、これらと前記アンテナ受信端子28y、28zは送受信回路34に接続されている。すなわち、電子鍵モジュール14には、車両機器の操作制御手段を構成する電子鍵基本回路を備えた構成となっており、電子鍵筐体12から取り外した場合でも、電源電池22とは接続は切れるものの、電子鍵としての機能は保持するようになっている。
【0024】
このような構成に係る遠隔操作用携帯電子鍵10は、通常は図2に示すように電子鍵モジュール14が電子鍵筐体12に装着されて一体になっており、この状態で電源電池22から給電を受け、車両駆動制御システムとの間でいわゆるスマートエントリーシステムを使用できるようになっている。この電源電池22が切れたとき、図1に示すように、電子鍵モジュール14を電子鍵筐体12から取り外して、他の電子機器のメモリースロットに電子鍵モジュール14を差し込んで緊急避難的に使用する。
【0025】
図4はこの状態を示しており、車両機器の遠隔操作システムに適用している例を示している。車両側に設けられたドア側電子錠装置70は、図4の上部ブロック図に示しているように、送信アンテナ40、受信アンテナ42を備え、これは車両駆動制御手段としてのエンジンコントロールユニット(ECU)44に接続されている。ECU44にはメモリー46が接続されているとともに、制御対象としてのドアロック部48、エンジン制御部50、ステアリングロック部52、警報部54などの駆動機器が接続されている。また、ECU44には、照合演算部56が接続されている。この遠隔操作システムは、遠隔操作用携帯電子鍵10との間で送信アンテナ40および受信アンテナ42を用いて電波を送受信し無線通信を行い、この照合演算部56において、ID番号の照合をメモリー46との間で行って、ID番号が適正なものであれば、ドアロック部48によりドア72の開錠又は閉錠を行う。
【0026】
この実施形態では、電池の切れた電子鍵筐体12から電子鍵モジュール14を取り外し、これを他の電子機器としての携帯電話58のスロット60に差し込んで、携帯電話58から給電を受けることができる。給電を受けると、電子錠モジュール14は、開錠を行うための信号をドア側電子錠装置70へ無線通信で送信し、ドア72が開錠される。これによって車両機器の遠隔操作を電池切れのときに緊急避難的に携帯電話58にて稼動させることができるのである。
【0027】
また、この実施形態では、電子鍵モジュール14の外形を、SDメモリーカードの規格で定められた外形と同形状とし、電子鍵筐体12のモジュール差込ソケット16の形状をSDメモリーカードの規格で定められたソケット(スロット)と同形状としたが、このSDメモリーカードの規格以外にも、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード(登録商標)、USB、又はスモールPCカード等のメモリーカードの規格を適用することができる。
【0028】
以上のように、遠隔操作用携帯電子鍵10を電源電池22を搭載した電子鍵筐体12と電子鍵基本回路を具備した電子鍵モジュール14とに分離して着脱できるようにし、電子鍵モジュール14を他の電子機器でも利用できるように外観形態と電源端子を共通規格化することにより、遠隔操作用携帯電子鍵10に何らの付帯的な機器、例えば二次電源やメカニカルキーなどを設けることが必要なくなる。よって、極めて簡便に電池切れ対策を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る遠隔操作用電子鍵の平面図である。
【図2】同電子鍵のモジュールを取り外した状態の平面図である。
【図3】同電子鍵の回路構成のブロック図である。
【図4】実施形態に係る車両機器遠隔操作システムに適用した電子セキュリティシステムを示し、電子鍵モジュールを携帯電話のソケットから給電を受ける状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10………遠隔操作用携帯電子鍵、12………電子鍵筐体、14………電子鍵モジュール、16………モジュール差込ソケット、18a、18b………給電端子、20y、20z………アンテナ端子、22………電源電池、24x、24y、24z………アンテナ、26a、26b………電源端子、28y、28z………受信端子、30………信号処理回路、32………送信アンテナ、40………送信アンテナ、42………受信アンテナ、44………エンジンコントロールユニット(ECU)、46………メモリー、48………ドアロック部、50………エンジン制御部、52………ステアリングロック部、54………警報部、56………照合演算部、58………携帯電話、60………スロット、70………ドア側電子錠装置、72………ドア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの開錠及び閉錠を行う電子式セキュリティシステムであって、
電池を備えた電子鍵筐体と、前記電子鍵筐体と着脱可能とされ、前記電池から給電され駆動する電子鍵モジュールと、を備えた遠隔操作用携帯電子鍵と、
前記遠隔操作用携帯電子鍵との間で無線通信を行い前記ドアの開錠及び閉錠を行うドア側電子錠装置と、
を備え、
前記電子鍵筐体の前記電池が電池切れになった場合、前記電子鍵モジュールを他の電子機器に取付けることにより前記他の電子機器から前記電子鍵モジュールへ電源が供給され、前記電子鍵モジュールと前記ドア側電子錠装置との間で無線通信を行うことを可能としたことを特徴とする電子式セキュリティシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子式セキュリティシステムであって、
前記電子鍵モジュールは、前記ドア側電子錠装置と前記無線通信を行う電子鍵基本回路を有し、
前記電子鍵筐体は、前記電子鍵モジュールが差し込まれるモジュール差込ソケットを有し、前記モジュール差込ソケットに給電端子が形成され、前記給電端子は前記電池と接続されており、
前記電子鍵モジュールは前記モジュール差込ソケットの前記給電端子と対応する位置に電源端子を有し、前記電源端子は前記電子鍵基本回路に接続されていることを特徴とする電子セキュリティシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子式セキュリティシステムであって、
前記電子鍵モジュールは、前記他の電子機器に着脱可能な交換モジュールと電源端子の配置および外観形状を同じにして、前記他の電子機器から給電可能としたことを特徴とするに記載の電子セキュリティシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の電子式セキュリティシステムであって、
前記電子鍵モジュールは、SDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード(登録商標)、USB、およびスモールPCカードの少なくとも何れか1つに準拠した外形および前記電源端子の配置を有することを特徴とする電子セキュリティシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の電子式セキュリティシステムに用いられる遠隔操作用携帯電子鍵であって、
前記電子鍵モジュールは、前記ドア側電子錠装置と前記無線通信を行う電子鍵基本回路を有し、
前記電子鍵筐体は、前記電子鍵モジュールが差し込まれるモジュール差込ソケットを有し、前記モジュール差込ソケットに給電端子が形成され、前記給電端子は前記電池と接続されており、
前記電子鍵モジュールは前記モジュール差込ソケットの前記給電端子と対応する位置に電源端子を有し、前記電源端子は前記電子鍵基本回路に接続されていることを特徴とする遠隔操作用携帯電子鍵。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔操作用携帯電子鍵であって、
前記電子鍵モジュールは、前記他の電子機器に着脱可能な交換モジュールと電源端子の配置および外観形状を同じにして、前記他の電子機器から給電可能としたことを特徴とする遠隔操作用携帯電子鍵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−280833(P2008−280833A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99324(P2008−99324)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】