説明

電子機器、供給電力制御方法及びプログラム

【課題】高いパフォーマンスを極力維持しながらも、筐体の温度上昇を適切に抑制することが可能な電子機器、当該電子機器における供給電力制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】マルチメディアプレーヤ10のフラッシュメモリ12は、過去に供給された電力値ほど低く重み付けされるように電力値を積算していくことで、測定電力値から第1の筐体1の温度上昇を推定することが可能な熱制御関数を記憶しておき、メインCPU11は、電力計22による電力測定値に基づいて熱制御関数の値を算出し、当該産出値が第1の閾値T1を超えた場合には、リミッタアプリを作動して、電力供給部19からメインCPU11やその他のブロックへの電力供給を抑制し、熱制御関数の値が第2の閾値T2を下回った場合にはリミッタアプリの作動を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがその筐体を手で保持して使用可能な携帯型の電子機器、当該電子機器における供給電力制御方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器においては多機能化及びハイスペック化が顕著であるが、これに伴い、その電子機器の消費電力も増加することとなる。そこで、電子機器によっては、例えば所定の閾値を設定することによってその消費電力を制御することも行われている。しかし、一方で、消費電力をむやみに制御してしまうと、電子機器のパフォーマンスを低下させてしまい、ユーザの要望に反する結果となってしまう。
【0003】
そこで、電子機器のパフォーマンスを極力維持しながら消費電力を制御するために、例えば下記特許文献1におけるコンピュータシステムは、コンピュータシステム本体の消費電力がACアダプタの最大出力電力を実際に超えたことを認識してから、電池によって電力を供給し、その間に電力制御機能を働かせることで、消費電力を下げるように構成している。
【特許文献1】特開2002−328754号公報(段落[0048]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器における消費電力の増加は、単にエネルギーの無駄使いとなるのみならず、周知の通り、電子機器内部のCPU(Central Processing Unit)等の電子部品の発熱量を増加させることとなる。そしてこの発熱量の増加は、電子機器の筐体温度の上昇に繋がる。特に携帯型の電子機器の場合には、ユーザが当該電子機器を手で保持して使用するため、筐体の温度上昇はユーザに不快感を与え、ユーザにとって大きな使用の妨げとなる。
【0005】
この筐体の温度上昇は、消費電力を制御することにより抑えることが可能であるが、上記特許文献1に記載の技術においては、ACアダプタの最大出力電力を最大限に利用することでパフォーマンスの低下を極力防ぐこととしているため、コンピュータシステムの筐体の温度上昇は考慮されていない。すなわち、このコンピュータシステムにおいては、ACアダプタの出力電力が最大出力電力を超えない間は筐体の温度も上昇し続けるため、このコンピュータシステムを携帯型の電子機器として構成した場合には、この温度上昇によりユーザに多大な不快感を与える結果となってしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高いパフォーマンスを極力維持しながらも、筐体の温度上昇を適切に抑制することが可能な電子機器、当該電子機器における供給電力制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の主たる観点に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられ、所定の処理を実行可能な処理部と、前記処理部へ電力を供給する電力供給部と、前記供給される電力の電力値を所定間隔で測定する測定手段と、前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを記憶する記憶手段と、前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記電力供給部から前記処理部への前記電力の供給量を制御する制御手段とを具備する。
【0008】
ここで電子機器とは、例えば通信機能やコンテンツ再生機能等を有するポータブルマルチメディアプレイヤー、モバイルPC(Personal Computer)、携帯電話機、携帯型ゲーム機等、ユーザが手で筐体を保持して使用する電子機器である。また上記電力供給部は、商用電源、バッテリ、USB(Universal Serial Bus)電源等に接続される。また基準温度とは例えば室温や気温等であり、所定値とは例えば10℃、15℃等であるが、これに限られるものではない。また上記処理部とは、例えばCPUや通信部、RAM(Random Access Memory)等である。
【0009】
この構成によれば、上記関数データを用いることで、測定される電力値から筐体の温度を推定し、処理部への電力供給に伴う筐体の温度上昇を抑制することができ、ユーザの不快感を低減することができる。また、筐体の温度上昇が所定値を超えるまでの間は電力を最大限に供給して、処理部の処理を最大性能で実行させることができるため、電力の供給量制御に伴うユーザの不便も最小限に抑えることができる。また上記関数データを用いることで、実際に温度センサを設けて筐体の温度を測定する必要がないため、コストアップ及び部品点数の増加も防ぐことができる。
【0010】
上記電子機器において、前記制御手段は、前記関数データに基づいて、前記測定された各電力値のうち、第1の時間に測定された電力値が、前記第1の時間より後の第2の時間に測定された電力値よりも低く重み付けされるように前記各電力値を重み付けし、当該重み付けされた各電力値を積算し、当該積算値が第1の値を超えた場合に前記電力の供給量を抑制するようにしてもよい。
【0011】
一般に、筐体の温度は、供給電力の増減に即応して上下するわけではなく、過去から現在までに供給された電力の影響が蓄積されることで、供給電力の増減に比べて緩やかに上下していく。また、筐体の熱は時間の経過に伴って周囲の空気等により放熱されていくため、過去に供給された電力ほど、現在の筐体の温度に与える影響は少ないと言える。したがって、上記構成によれば、上記関数により過去に測定された電力値ほど影響度が小さくなるように重み付けして、この電力値を積算していくことで、測定された電力値の遷移をより正確に温度の遷移に反映させることができ、筐体の温度をより精密に制御することが可能となる。
【0012】
上記電子機器は、前記電力供給部から前記処理部への前記電力供給及び前記測定手段による前記電力値の測定を停止し、当該停止された電力供給及び電力値の測定を再開する手段を更に具備し、前記制御手段は、前記電力供給及び電力値の測定が再開されたときに、当該電力供給の停止時刻及び再開時刻を取得し、当該停止時刻から再開時刻までの間に前記電力値が前記測定手段により測定されたものと見なして当該電力値を重み付け及び積算するようにしても構わない。
【0013】
この構成によれば、電力供給部からの電力供給が停止された場合、すなわち当該電子機器の電源がOFFまたは休止状態の間は、上記測定手段による電力値測定は実際には行われない。しかし、この間も電力値が測定されたものと見なして重み付け及び積算を行うことで、電源がOFFまたは休止状態の間の筐体の温度変化も反映した、より精密な温度制御が可能となる。例えば、上記停止時刻までの間に筐体の温度が高温となっていた場合であって、停止時刻から再開時刻までの時間がわずかである場合には、再開時刻においても停止前の高温状態の影響が大きく残っているが、上記構成によれば、この影響を考慮して温度制御を再開することができる。なお、停止時刻から再開時刻までの間に上記測定手段により測定されたものと見なされる電力値は、当然ながら0(W)となる。
【0014】
上記電子機器において、前記制御手段は、前記積算された電力値が、前記第1の値よりも小さい第2の値を下回った場合に前記供給量の抑制を解除するようにしてもよい。
【0015】
これにより、電力供給量を抑制するための閾値と、当該抑制を解除するための閾値との間にヒステリシスを設けることで、例えばノイズ等による誤動作で電力供給量の抑制処理とその解除処理とが頻繁に切り替わってしまうのを防ぎ、電力供給量の制御による筐体の温度制御を安定して行うことができる。
【0016】
上記電子機器において、前記処理部は、第1の処理部と第2の処理部とを有し、前記制御手段は、前記積算された電力値が前記第1の値を超えた場合に、前記第1の処理部に対する前記供給量の抑制を前記第2の処理部に対する前記供給量の抑制に対して優先させるよう制御しても構わない。
【0017】
これにより、各処理部における消費電力の相違や、上記抑制によるユーザへの影響度等を考慮して、より柔軟に電力供給量を制御しながら筐体の温度制御を行うことができる。例えば、第1の処理部が第2の処理部よりも消費電力が高い場合には、第1の処理部に対する電力供給量の抑制を優先的に行うことで筐体の温度をより効率的に低下させることができる。また、例えば、第1の処理部が、上記第1の処理として無線LAN(Local Area Network)による通信処理を行う無線通信部であり、第2の処理部が、上記第2の処理としてコンテンツ再生処理等を行うCPUである場合、CPUへの電力供給量を抑制してコンテンツ再生効率が低下すると、それがユーザにリアルタイムに認識され悪影響を及ぼす。一方、無線通信部への電力供給量を抑制して通信効率が低下しても、コンテンツ再生処理に比べるとユーザへの悪影響は小さいと考えられる。したがってこの場合には、CPUよりも無線通信部に対する電力供給量の抑制を優先して行うようにすることで、ユーザビリティを極力維持しながら筐体の温度を低下させることができる。なお、上記処理部の数は2つに限られるものではなく、多数の処理部に対してそれぞれ優先度を設けて電力供給量の抑制を行うことも可能である。
【0018】
上記電子機器において、前記筐体は、前記処理部と、ユーザの操作を入力可能な操作部とを有する第1の筐体と、前記電力供給部から前記電力を供給されて所定の情報を表示する表示部を有し、前記第1の筐体から所定距離だけ離間した位置へ移動可能なように当該第1の筐体に接続された第2の筐体とを有し、前記制御手段は、前記積算された電力値が前記第1の値を超えた場合に、前記処理部への前記電力の供給量を抑制するとともに、前記表示部への前記電力の供給量を抑制しないよう制御しても構わない。
【0019】
ここで、第2の筐体が「第1の筐体から所定距離だけ離間した位置へ移動可能な」構造としては、例えば第2の筐体が第1の筐体に対してその主面に平行な方向へスライド可能な構造や、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ機構により接続されて開閉(折りたたみ)可能なクラムシェル構造等が挙げられる。このような構造においては、電力供給時において第1の筐体はユーザの手に触れるため、第1の筐体の温度が上昇するとユーザに不快感を与える可能性がある。一方、第2の筐体は第1の筐体とは離間した位置にあり、ユーザの手に触れないため、第2の筐体の温度が上昇してもユーザに不快感を与えることはない。したがって、上記構成により、第1の筐体が有する処理部に対しては電力供給量の制御を行うことで第1の筐体の温度上昇を抑制することができるとともに、第2の筐体が有する表示部に対しては電力供給量の制御を行わないことで、表示部の処理能力を最大限に維持することができる。
【0020】
上記電子機器は、表示部を更に具備し、前記制御手段は、前記積算値が第1の値を超えたときに、当該電力の供給量を抑制することを示す情報を前記表示部に表示させるよう制御してもよい。
【0021】
これにより、ユーザは電力の供給量が抑制されること、及びこれにより処理部の処理速度が低下することを事前に認識して、その状態に備えることができる。
【0022】
上記電子機器において、前記制御手段は、前記積算値が第1の値を超えたときに、前記電力の供給量を抑制するか、維持するかをユーザに選択させるための情報を前記表示部に表示させる手段と、前記選択を入力し、当該入力に応じて前記電力の供給量を制御する手段とを有していても構わない。
【0023】
これにより、常に最大限の電力供給による動作を所望するか、筐体の温度上昇による不快感を防止したいのかというユーザの要望に柔軟に対応して電力供給の制御を行うことができる。
【0024】
本発明の他の観点に係る供給電力制御方法は、電子機器の筐体内に設けられた処理部へ供給される電力の電力値を所定間隔で測定し、前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを予め記憶し、前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記処理部への前記電力の供給量を制御するものである。
【0025】
本発明のまた別の観点に係るプログラムは、筐体と、前記筐体内に設けられ所定の処理を実行可能な処理部と、前記処理部へ電力を供給する電力供給部とを有する電子機器に、前記供給される電力の電力値を所定間隔で測定するステップと、前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを記憶するステップと、前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記電力供給部から前記処理部への前記電力の供給量を制御するステップとを実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、高いパフォーマンスを極力維持しながらも、筐体の温度上昇を適切に抑制することが可能な電子機器、当該電子機器における供給電力制御方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯型のマルチメディアプレーヤの外観を示した正面図である。同図に示すように、本実施形態におけるマルチメディアプレーヤ10は、第1の筐体1と第2の筐体2とが同図A方向にスライド可能に接続されて構成されている。第1の筐体1の上面1aには、例えばQWERTY配列のキーボード3が設けられている。第2の筐体2には、例えばTFT(Thin Film Transistor)等からなるLCD(Liquid Crystal Display)4、十字キー5、タッチキー6等が設けられている。タッチキー6としては、例えば後述するメイン画面を表示させるためのメイン画面キー6a、各種画面をスクロール操作するためのスクロールキー6b、メニュー画面を表示するためのメニューキー6c、メニュー画面に各種オプションアイテムを追加させるための設定を行うオプションキー6d、LCD4に関する各種設定を行うディスプレイキー6e及び各種入力をキャンセルして元の画面に戻るためのキャンセルキー6fが設けられている。
【0028】
マルチメディアプレーヤ10の非使用時には、ユーザは、上述したように第1の筐体1を同図A1方向へスライドさせることで、第1の筐体1の上面1aと第2の筐体2の底面(図示せず)とが重なり、第1の筐体1を第2の筐体2に収容させることができる。マルチメディアプレーヤ10の使用時には、ユーザは、非使用時の状態から第1の筐体1を同図A2方向へスライドさせてキーボードを露出させ、当該第1の筐体1を両手で把持しながら各種入力や閲覧を行う。
【0029】
図2は、上記マルチメディアプレーヤ10の内部構成を示したブロック図である。同図に示すように、マルチメディアプレーヤ10はメインCPU11とサブCPU18を有し、その他の各ブロックがそれらの何れかに接続されている。
【0030】
フラッシュメモリ12は、例えば4GB(Giga Bytes)の容量を有するNAND型のものであるが、4GB以上の記憶容量を有していてももちろん構わない。このフラッシュメモリ12は、例えばOS(Operating System)や、メインCPU11が各部を制御するための制御プログラム、各種初期データ、動画コンテンツ、音楽コンテンツ等のコンテンツデータや、ブラウジング、電子メール送受信、チャット、P2P(Peer to Peer)による音声通話(VoIP(Voice over Internet Protocol))、各種コンテンツ再生等のための各種アプリケーション等を記憶する。また、フラッシュメモリ12は、メインCPU11をはじめマルチメディアプレーヤ10の各ブロックへ供給される電力を必要に応じて制限して各部の動作を制限するためのアプリケーション(以下、リミッタアプリと称する)も記憶する。このリミッタアプリの動作については後述する。
【0031】
RAM(Random Access Memory)15は、例えば1GBの容量を有するDDR(Double Data Rate)−RAMであり、メインCPU11の各種データ処理の際の作業領域として、随時データやプログラムを格納する。
【0032】
メモリカードインタフェース13は、例えばメモリースティック等の各種メモリカード14と接続して、当該メモリカード14に記録されたコンテンツデータやその他のデータを入力する。当該データは、RAM15へ読み出されて再生されたり、フラッシュメモリ12へ記録されたりする。
【0033】
無線LANモジュール16は、例えばIEEE 802.11b/g等の諸規格に従い、無線LANに接続するためのインタフェースである。当該無線LANモジュール16により、マルチメディアプレーヤ10は、他のマルチメディアプレーヤやPCその他の外部機器と接続して各種コンテンツをストリーミングにより送受信したり、インターネット上のWebサーバから各種コンテンツをダウンロードまたはストリーミング受信したりすることが可能である。
【0034】
USBインタフェース17は、例えばUSB OTG(On-the-Go)等の規格に従い、他のマルチメディアプレーヤや各種外部機器と接続し、例えば各種コンテンツを入出力したり、後述する電力供給部19へ電力を供給したり、バッテリ20へ充電用の電力を供給したりする。
【0035】
メインCPU11は、必要に応じてRAM15等の各ブロックに適宜アクセスし、各種演算処理を行いながらマルチメディアプレーヤ10の各ブロック全体を統括的に制御する。またメインCPU11は、例えば動画コンテンツの再生時においては、映像信号のデコード処理等も行う。
【0036】
サブCPU18は、メインCPU11に各種演算処理が集中するのを防ぎ、マルチメディアプレーヤ10の全体としての処理効率を上げるために、メインCPU11の補助的な各種演算処理を行う。また、サブCPU18は、上記十字キー5やタッチキー6等の各種キーやスイッチから各種操作信号を入力し、メインCPU11へ送信する。さらに、サブCPU18には、RTC(Real Time Clock)が実装され、メインCPU11に電源が供給されていない(OSが起動していない)場合でも計時を行うことが可能となっている。
【0037】
電力供給部19は、例えばリチウムイオンバッテリ等のバッテリ20や、商用電源をACアダプタを介して入力するためのDCジャック21と接続され、これらを介してマルチメディアプレーヤ10の各部へ(矢印は図示せず)電力を供給する。
【0038】
電力計22は、上記バッテリ20、DCジャック21及びUSBインタフェース17と接続され、これら各部から供給される電力の電力値(電流値)を計測し、この計測値をメインCPU11へ送信する。この計測値は、上記リミッタアプリによる電力リミット処理に用いられるが、詳細は後述する。
【0039】
カメラ23は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサやCCD(Charge Coupled Devices)センサ等の撮像素子により、静止画及び動画を撮像可能となっている。撮像データは上記フラッシュメモリ12へ保存される。
【0040】
上述したLCD4は、上記動画コンテンツの再生時や、各種アプリケーションの実行時に映像信号を出力する。このLCD4は、タッチパネル24及びバックライト25を有する。タッチパネル24は、ユーザから上記タッチキー6やLCD4上におけるタッチ操作を入力する。タッチパネルコントローラ26は、当該入力信号をメインCPU11へ伝え、当該操作に応じた各種処理を実行させる。バックライト25は、バックライトコントローラ27の制御の下、LCD4を第2の筐体2の背面側から照明し、また当該照明光の調整を行う。
【0041】
再生用スピーカ29は、フラッシュメモリ12に保存された、または無線LANモジュール16を介して受信した動画コンテンツや音声コンテンツ等の音声信号を出力するためのスピーカである。また通話用スピーカ30及びヘッドフォン32は、例えばSkype(登録商標)等のアプリケーションを利用してVoIPによる音声通話時に音声信号を出力し、マイク31は、当該音声通話時に音声信号を入力する。
【0042】
音声制御部28は、上記マイク31から入力されたアナログ音声信号をデジタル音声信号へ変換したり、再生用スピーカ29、メインCPU11により生成されたデジタル音声信号をアンプにより増幅して、通話用スピーカ30及びヘッドフォン32へ出力するためにアナログ音声信号へ変換したりする。
【0043】
なお、以上の各ブロックのうち、LCD4(タッチパネル24及びバックライト25を含む)を除くほとんどの構成ブロック(メインCPU11、サブCPU18、RAM15、無線LANモジュール16、音声制御部28等)は第1の筐体1に内蔵されている。
【0044】
上述したように、本実施形態に係るマルチメディアプレーヤ10は、Webページのブラウジング、各種コンテンツの再生、電子メール、チャット、音声通話等のアプリケーションを有し、これらのアプリケーションを同時に実行することが可能である。そして、マルチメディアプレーヤ10は、これらの各種アプリケーションの実行画面を例えば1つの画面で一度に閲覧及び選択できるように構成された画面をメイン画面としてLCD4に表示する。図3は、このメイン画面の例を示した図である。
【0045】
同図に示すように、このメイン画面の左側には、例えばRSS(Rich Site Summary)を利用したニュース情報を表示するRSSニュース領域41、同じくRSSを利用して天気情報及びカレンダー情報をそれぞれ表示する天気情報領域42及びカレンダー領域43、インターネット上の所定の書籍検索エンジンでユーザの所望の書籍を検索するためのブック検索領域44、同じくインターネット上の所定の検索エンジンで各種検索を行うWeb検索領域45がそれぞれ表示される。
【0046】
また、メイン画面の中央には、例えばSkype(登録商標)等により音声通話やインスタントメッセンジャー(以下、IM)を用いたチャットやファイル転送を行う相手先をリスト化して、その相手先のオンライン状況(プレゼンス)を表示するためのプレゼンス領域46、電子メールソフトにより受信した新着メールを表示する新着メール領域47、インターネット上のSNS(Social Networking Service)を介して受信した新着メッセージを表示するSNS新着メッセージ領域48、上記プレゼンス領域46に表示された相手先からの音声通話の不在着信の有無を示す不在着信領域49、上記SNSの掲示板への新着書込を表示するSNS新着書込領域50がそれぞれ表示される。
【0047】
さらに、メイン画面の右側には、例えばインターネット上の所定のサイトに存在する静止画やフラッシュメモリ12に記憶された静止画等を例えばスライドショー形式で表示する静止画スライドショー領域51と、現在再生中の音楽コンテンツのアルバムジャケット画像や再生/停止、早送り/巻き戻し、音量大/小等を調整するウィンドウを表示する音楽コンテンツ領域52とが表示される。
【0048】
この各領域が表示されたメイン画面から、例えばユーザのタッチ操作やキーボード入力により1つの領域が選択された場合には、当該領域がLCD4の全画面に拡大表示され、当該各領域に該当する機能が実行される。
【0049】
以上のように構成されたマルチメディアプレーヤ10においては、例えば各種コンテンツのストリーミング再生等の処理を最大電力で長時間行うと、当該処理を担うメインCPU11等の消費電力が高くなることで、第1の筐体1及び第2の筐体2の表面温度が上昇する。特に、ユーザに把持される第1の筐体1の底面が発熱すると、ユーザに不快感を与えることとなる。そこで、本実施形態においては、必要に応じてメインCPU11等への供給電力を、上述したリミッタアプリによりリミットすることで、当該第1の筐体1の発熱を抑えることとしている。
【0050】
図4は、本実施形態において、リミッタアプリによる発熱制御を行わない場合の供給電力の推移と第1の筐体1の温度上昇との関係を示したグラフである。同図において、縦軸は供給電力(10秒毎の平均値)、及び室温を基準とした上昇温度(ΔT)、横軸は時間を示している。同図において棒グラフaが供給電力、線グラフbが温度を示している。
【0051】
同図に示すように、第1の筐体1の温度は、供給電力の変化に即応して変化するわけではなく、供給電力の変化に比べて緩やかに変化している。これは、第1の筐体1の温度が現在のみならず過去の供給電力の影響も受けながら変化するからである。ただ、第1の筐体1の熱は時間の経過に伴って周囲の空気等へ放熱されるため、過去に供給された電力ほど、現在の第1の筐体1の温度に与える影響は少ないと言える。
【0052】
そこで、本実施形態においては、図4のグラフaのような供給電力の変化から、グラフbのような温度変化を推定する関数(以下、熱制御関数と称する)を用いて、過去に測定された電力値ほど影響度が小さくなるように重み付けして、この電力値を積算していき、この積算された電力値が所定の閾値を超えた場合に供給電力を制限することとしている。この閾値は、例えば上記図4におけるΔT10℃に対応する電力値1.6Wとするが、これに限られるものではない。
【0053】
図5は、上記熱制御関数の関数式を示した図である。同図に示すように、この熱制御関数において、「a」及び「b」はそれぞれ定数ゲイン、「Wa(n)」は過去10秒間の平均供給電力値、「P(n)」は上記「Wa(n)」にローパスフィルタ(LPF)をかけた値、rは上記ローパスフィルタの時定数を決めるゲインをそれぞれ示している。
【0054】
同図Aの項は、供給電力の変化に対する即応性を高めるための項であり、急激な電力増加により第1の筐体1の温度が急激に上昇した場合等に利用可能である。なお、本実施形態においては、第1の筐体1の熱制御を目的としているため、この項は利用していないが、消費電力自体を抑制したい場合にこの項は有効となる。
【0055】
同図Bの項は、上述した供給電力の積算値に関する項である。すなわち、第1の筐体1の温度上昇は消費電力の積算を反映するものであるため、この項により上記定数ゲイン「b」の値を調整しながら、熱制御関数T(n)の上昇カーブを上記図4のグラフbで示した温度上昇のカーブに近づけることで、消費電力の測定値から温度上昇を推定することを可能としている。
【0056】
なお、「Wa(n)」のうち同図Cの項で示すように、供給電力の抑制対象としてLCD4は除外している。これは、上述したように、LCD4が、マルチメディアプレーヤの使用時においてユーザに把持されない第2の筐体2に設けられており、当該LCD4からの発熱は第1の筐体1の温度上昇には影響しないと考えられるからである。すなわち、当該使用時においては上記スライド動作により第1の筐体1に対して第2の筐体2が図1の矢印A1方向へ所定距離だけ離間することとなり、かつ、第1の筐体1の上面1aと第2の筐体2の底面との間には僅かながら空気層が存在し、第2の筐体2の熱が第1の筐体1へ伝わりにくい構造となっているため、LCD4への供給電力の抑制により第1の筐体1の温度が低下することはなく、逆にLCD4へ常に最大消費電力を供給しても、そのために第1の筐体1の温度が上昇することもないと考えられるからである。
【0057】
マルチメディアプレーヤ10は、この熱制御関数データを上記フラッシュメモリ12へ記憶しておき、上記電力計22により電力供給部19から各ブロックへの供給電力値を測定し、当該測定値に対応する上記熱制御関数の値を算出して、この値が所定の閾値(例えば1.6W)を超えた場合に、上記リミッタアプリを用いて上記電力供給部19からのメインCPU11及びその他の各ブロックへの電力供給量を抑制(リミッタを作動)することとしている。
【0058】
なお、マルチメディアプレーヤ10は、上記リミッタが作動している状態において、上記熱制御関数の値が上記閾値を下回った場合でも、すぐにはリミッタを解除せずに、上記熱制御関数の値が上記閾値から所定値低い値(例えば1.5W)まで下がった場合にリミッタを解除することとしている。すなわち、リミッタの作動と解除の各基準となる閾値にヒステリシスを設けている。以下、リミッタを作動するための閾値を第1の閾値(T1)と称し、作動したリミッタを解除するための閾値を第2の閾値(T2)と称する。
【0059】
また、上記リミッタが作動する場合には、マルチメディアプレーヤ10は、上記リミッタアプリにより、その旨をユーザに通知し、またリミッタを解除するか否かを選択させる確認ダイアログをLCD4に表示させる。そして、この選択に基づくリミッタの作動中及び解除中には、その旨を示すアイコンをそれぞれ表示させる。図6は、当該確認ダイアログ及びアイコンの例を示した図である。
【0060】
同図(a)に示すように、確認ダイアログ61には、リミッタが作動することでメインCPU11のスピードが低減され、メインCPU11への供給電力及び第1の筐体1の発熱が抑制される旨を通知する文章と、リミッタを作動させずに解除させて、メインCPU11をハイスピードに維持させるか否かを選択させるためのボタン(「はい」及び「いいえ」ボタン)が表示される。なお、リミッタを解除した場合には第1の筐体1が熱くなることを喚起する文章も表示される。さらに、確認ダイアログ61には、リミッタの作動に際し当該確認ダイアログ61を表示するか否かを選択させるチェックボックスや、供給電力に関わらずリミッタを常に作動させないか、それとも必要に応じて(熱制御関数の値が上記閾値T1を超えた場合に)リミッタを作動させるかを選択させるためのラジオボタンも表示される。
【0061】
また、上記確認ダイアログ61において、リミッタを解除しない(リミッタを作動させる)ことが指示された場合(「いいえ」ボタンが押下された場合)には、同図(b−1)に示すようなリミッタが作動中であることを示すリミッタ作動アイコン62を例えばLCD4の隅に表示させる。一方、上記確認ダイアログ61において、リミッタを解除する(リミッタを作動させない)ことが指示された場合(「はい」ボタンが押下された場合)には、リミッタが解除され第1の筐体1が熱くなる可能性があることを示すリミッタ解除アイコン63を例えばLCD4の隅に表示させる。
【0062】
このように、リミッタの作動及び解除をユーザに確認させることで、ユーザが予期せずにメインCPU11の動作速度が遅くなり、不具合や故障等の誤解を与えることを防ぐことができる。また、上記ラジオボタンにより、リミッタの作動または非作動を設定させることで、確認ダイアログ61を都度確認する煩雑さをユーザに回避させることができる。
【0063】
次に、本実施形態におけるマルチメディアプレーヤ10の具体的な動作について詳述する。図7は、マルチメディアプレーヤ10の動作の流れを示したフローチャートである。
【0064】
同図に示すように、まず、マルチメディアプレーヤ10のメインCPU11は、上記電力計22からの測定値を基に、上記熱制御関数の値を算出し、当該算出値が上記閾値T1を超えたか否かを判断する(ステップ101)。この算出値がT1を超えない場合(No)は上記リミッタが作動することはないため、メインCPU11は最大消費電力で動作することができる。
【0065】
図8は、このようにリミッタが作動しない場合におけるマルチメディアプレーヤ10の消費電力及び第1の筐体1の温度と時間との関係を示したグラフである。このグラフでは、縦軸が消費電力及び温度、横軸が時間を示す。またこのグラフでは、測定電力値にローパスフィルタをかけた値(すなわち、上記熱制御関数の値)を実線で示し、メインCPU11の消費電力、マルチメディアプレーヤ10のトータルでの消費電力、同じくマルチメディアプレーヤ10の過去10秒間の平均消費電力及びリミッタアプリによる制御状態をそれぞれ異なる種類の破線で示している。
【0066】
同図に示すように、例えば無線LANモジュール16によりインターネット上から動画コンテンツをストリーミング再生する場合でも、その処理効率(無線通信環境)が良好な場合には、上記熱制御関数の値がT1(1.6W)を超えないため、マルチメディアプレーヤ10は、リミッタを作動させることなく、メインCPU11に対してその最大消費電力である0.8Wの供給を維持し、最大パフォーマンスを維持することができる。
【0067】
図7に戻り、上記ステップ101において、熱制御関数の値が第1の閾値T1を越えた場合(Yes)には、メインCPU11は、上記図6(a)に示した確認ダイアログ61の表示設定が上記チェックボックスよりONに設定されているか否かを判断する(ステップ102)。確認ダイアログ61の表示設定がONに設定されている場合(Yes)、すなわち、前回の確認ダイアログ61の表示時において上記チェックボックスにチェックが入力されていなかった場合には、上記リミッタアプリにより確認ダイアログ61をLCD4に表示させる(ステップ103)。
【0068】
続いて、メインCPU11は、この確認ダイアログ61上において、ユーザによりリミッタ解除が指示されたか否かを判断する(ステップ105)。リミッタ解除が指示されなかった場合(Yes)、すなわち、確認ダイアログ61上で「いいえ」ボタンが押下されることでリミッタ作動が指示された場合には、メインCPU11はリミッタアプリによりリミッタを作動させて、電力供給部19からメインCPU11やその他各ブロック(LCD4を除く)への供給電力を抑制するとともに(ステップ106)、上記リミッタ作動アイコン62をLCD4に表示させる(ステップ106)。なお、メインCPU11への供給電電力の抑制は、実際にはクロック周波数を下げることにより行われる。
【0069】
そして、メインCPU11は、リミッタが作動している状態で、上記熱制御関数の値が第2の閾値T2を下回ったか否かを判断し(ステップ108)、下回った場合(Yes)にはリミッタアプリによりリミッタを解除させるとともに(ステップ109)、上記リミッタ作動アイコン62を消去させる(ステップ110)。
【0070】
図9は、リミッタが作動した場合におけるマルチメディアプレーヤ10の消費電力及び第1の筐体1の温度と時間との関係を上記図8と同様に示したグラフである。同図に示すように、例えば無線LANモジュール16により動画コンテンツをストリーミング再生する場合において、無線通信環境が悪い場合には、測定電力値にローパスフィルタをかけた値(上記熱制御関数の値)がT1(1.6W)を超えるため(約20分経過後)、上記リミッタが作動し、メインCPU11への供給電力はその最大供給電力である0.8Wから0.4Wに抑制され、マルチメディアプレーヤ10の各部トータルでの供給電力も2.0Wから1.6Wに抑制される。これによりメインCPU11の動作速度が低下し、例えば動画コンテンツの再生においてコマ落ち等のエラーが生じるため、ユーザは動画コンテンツの再生を中止してWebの閲覧を行う。動画コンテンツの再生処理に比べてWebページのダウンロード処理は消費電力が低いため、これによりさらにメインCPU11の消費電力が低減し、上記熱制御関数の値が第2の閾値T2である1.5Wを下回る(約35分経過後)。この場合には、メインCPU11は、作動中のリミッタを解除して、メインCPU11に対して最大消費電力の0.8Wを供給する。そして、ユーザがWeb閲覧を終了して動画コンテンツのストリーミング再生を再開した場合には、上記熱制御関数の値も再び上昇して上記T1に達する。この場合には、メインCPU11は、再びリミッタを作動させ、メインCPU11等への供給電力を再び0.4Wに制限する。
【0071】
このように、上記熱制御関数を用いることで、測定された電力値の遷移に伴う第1の筐体1の温度変化を正確に反映させて、的確な温度制御を行うことができる。また、閾値に達しない間はメインCPU11等を最大電力で動作させることができるため、単純に供給電力のみに基づいて電力供給を制御する場合に比べて、最大電力の供給を極力維持することができ、ユーザの不便を最小限に抑えることができる。
【0072】
図7に戻り、上記ステップ102において、確認ダイアログ61の表示設定がOFFである場合、すなわち、前回の確認ダイアログ61の表示時において上記チェックボックスにチェックが入力された場合には、メインCPU11は、同じく前回の確認ダイアログ61において、リミッタの作動設定がONに設定されているか否かを判断する(ステップ111)。
【0073】
リミッタの作動設定がONに設定されている場合(Yes)、すなわち、前回の確認ダイアログ61の表示時において、リミッタを作動させるよう設定するためのラジオボタンがONに設定されていた場合には、上述と同様にリミッタを作動させる(ステップ106)。一方、リミッタの作動設定がOFFに設定されている場合(No)、すなわち、前回の確認ダイアログ61の表示時において、リミッタを常に作動させないよう設定するためのラジオボタンがONに設定されていた場合には、メインCPU11は、現在の供給電力を維持するとともに、上記図6(b−2)で示したリミッタ解除アイコン63をLCD4に表示する(ステップ112)。
【0074】
その後、熱制御関数の値が第2の閾値T2を下回った場合には(ステップ113)、メインCPU11は、上記リミッタ解除アイコン63をLCD4から消去する(ステップ114)。
【0075】
図10は、リミッタの作動が解除された場合におけるマルチメディアプレーヤ10の消費電力及び第1の筐体1の温度と時間との関係を上記図8及び図9と同様に示したグラフである。同図に示すように、上記測定電力値にローパスフィルタをかけた値(上記熱制御関数の値)がT1(1.6W)を超えてもメインCPU11への最大電力の供給は維持されるため、動画コンテンツのストリーミング再生はコマ落ち等のエラーも生じることなく続行されることとなる。この場合でも、上記リミッタ解除アイコン63によりユーザに注意を喚起することで、第1の筐体1の温度上昇をユーザに知らせることができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、マルチメディアプレーヤ10の電源がOFFにされた場合や、休止状態に移行した場合でも、その間の電力値が上記熱制御関数の値の算出処理に反映される。すなわち、上記サブCPU18が、電源がOFFにされた時または休止状態に移行した時の時刻と、再び電源がONにされた時や、休止状態から再起動した場合の時刻とを上記RTCでそれぞれ保持しておき、当該各時刻データを基に、メインCPU11が、電源OFFであった時間や休止状態であった時間を算出し、当該時間には0Wの電力が供給されたものとみなして上記熱制御関数の値を算出する。これにより、マルチメディアプレーヤ10の電源がOFFの間や休止状態の間の第1の筐体1の温度変化も反映した、より精密な温度制御が可能となる。例えば、上記電源がOFFされた時刻または休止状態に移行した時刻までの間に第1の筐体1の温度が高温となっていた場合であって、電源がONにされた時刻または休止状態から再起動した時刻までの時間がわずかである場合には、高温状態の影響が大きく残っているが、本実施形態によれば、この影響を考慮して温度制御を再開することができる。
【0077】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
上述の実施形態においては、上記熱制御関数の値が第1の閾値T1を超えた場合に、メインCPU11を含むマルチメディアプレーヤ10の各ブロックへの電力供給を一様に抑制する例を示したが、例えば、各ブロックに優先度を設けて、当該優先度に従って各ブロックへの電力供給を制御するようにしても構わない。
【0079】
例えば、電力供給を制御してもそれをユーザに視覚的または聴覚的に認知されにくい(裏で動作している)ブロックから優先的に電力供給を抑制するようにしてもよい。例えば、上記無線LANモジュール16によるファイルダウンロード処理と、メインCPU11による動画コンテンツ再生処理が同時に実行されている場合、メインCPU11への電力供給を抑制すると、動画コンテンツの再生処理においてコマ落ち等のユーザの目に見える不具合が生じる一方、無線LANモジュール16への電力供給を抑制しても、ダウンロード速度が低下するのみで視覚的な不具合は生じない。したがってこの場合には、無線LANモジュール16への供給電力の抑制を優先して行う。また、そのほかにも比較的最大消費電力の大きいRAM15や音声制御部28も含めて、例えば無線LANモジュール16>メインCPU11>RAM15>音声制御部28の順に優先度を設けて供給電力を抑制するようにしても構わない。またこの場合、最大消費電力が高いブロックから順に優先度を設定しても構わないし、ユーザに視覚的または聴覚的に認知されにくいブロックから順に優先度を設定しても構わない。なお、このように優先度に応じた電力制御を行う場合、リミッタアプリは、例えば優先度の高いブロックへのリミットのみによっては上記熱制御関数の値が所定時間経過後も上記閾値T1を下回らない場合に、次に優先度が高いブロックに対するリミットを実行するようにすればよい。
【0080】
上述の実施形態においては、LCD4が第1の筐体1からスライド動作により離間可能な第2の筐体2に設けられていたため、LCD4をリミッタの制御対象から除外していたが、例えばノート型PCや携帯電話機のように、ヒンジにより開閉可能ないわゆるクラムシェル型または折り畳み型の筐体にLCDが設けられている場合も、LCDをリミッタの制御対象から除外することができる。またLCD4のみならず、種々の電子機器において、ユーザに把持される第1の筐体から離間した位置に存在しその熱が第1の筐体へ伝わりにくい構造となっている処理部であればリミッタの制御対象から除外するようにしても構わない。
【0081】
上述の実施形態においては、閾値にヒステリシスを設けて第2の閾値T2を下回った場合にリミッタを解除するようにしていたが、例えば閾値は1つにして、リミッタの作動開始から所定時間経過後にリミッタを解除するようにしても構わない。
【0082】
上述の実施形態においては、本発明をマルチメディアプレーヤに適用した例を示したが、これ以外にも、例えばモバイルPC、携帯電話機、携帯型ゲーム機等、ユーザが手で筐体を保持して使用する電子機器であればどのようなものにでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチメディアプレーヤの外観を示した正面図である。
【図2】図1のマルチメディアプレーヤの内部構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態においてLCDに表示されるメイン画面の例を示した図である。
【図4】本発明の一実施形態における供給電力の推移と第1の筐体1の温度上昇との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施形態における上記熱制御関数の関数式を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態において表示される確認ダイアログ及びアイコンの例を示した図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるマルチメディアプレーヤの動作の流れを示したフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態においてリミッタが作動しない場合におけるマルチメディアプレーヤの消費電力及び筐体の温度と時間との関係を示したグラフである。
【図9】本発明の一実施形態においてリミッタが作動した場合におけるマルチメディアプレーヤの消費電力及び筐体の温度と時間との関係を示したグラフである。
【図10】本発明の一実施形態においてリミッタの作動が解除された場合におけるマルチメディアプレーヤの消費電力及び筐体の温度と時間との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0084】
1…第1の筐体
2…第2の筐体
3…キーボード
4…LCD
10…マルチメディアプレーヤ
11…メインCPU
12…フラッシュメモリ
15…RAM
16…無線LANモジュール
17…USBインタフェース
18…サブCPU
19…電力供給部
20…バッテリ
21…DCジャック
22…電力計
28…音声制御部
61…確認ダイアログ
62…リミッタ作動アイコン
63…リミッタ解除アイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、所定の処理を実行可能な処理部と、
前記処理部へ電力を供給する電力供給部と、
前記供給される電力の電力値を所定間隔で測定する測定手段と、
前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを記憶する記憶手段と、
前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記電力供給部から前記処理部への前記電力の供給量を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記制御手段は、前記関数データに基づいて、前記測定された各電力値のうち、第1の時間に測定された電力値が、前記第1の時間より後の第2の時間に測定された電力値よりも低く重み付けされるように前記各電力値を重み付けし、当該重み付けされた各電力値を積算し、当該積算値が第1の値を超えた場合に前記電力の供給量を抑制することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記電力供給部から前記処理部への前記電力供給及び前記測定手段による前記電力値の測定を停止し、当該停止された電力供給及び電力値の測定を再開する手段を更に具備し、
前記制御手段は、前記電力供給及び電力値の測定が再開されたときに、当該電力供給の停止時刻及び再開時刻を取得し、当該停止時刻から再開時刻までの間に前記電力値が前記測定手段により測定されたものと見なして当該電力値を重み付け及び積算することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記制御手段は、前記積算された電力値が、前記第1の値よりも小さい第2の値を下回った場合に前記供給量の抑制を解除することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記処理部は、第1の処理部と第2の処理部とを有し、
前記制御手段は、前記積算された電力値が前記第1の値を超えた場合に、前記第1の処理部に対する前記供給量の抑制を前記第2の処理部に対する前記供給量の抑制に対して優先させるよう制御することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記筐体は、
前記処理部と、ユーザの操作を入力可能な操作部とを有する第1の筐体と、
前記電力供給部から前記電力を供給されて所定の情報を表示する表示部を有し、前記第1の筐体から所定距離だけ離間した位置へ移動可能なように当該第1の筐体に接続された第2の筐体とを有し、
前記制御手段は、前記積算された電力値が前記第1の値を超えた場合に、前記処理部への前記電力の供給量を抑制するとともに、前記表示部への前記電力の供給量を抑制しないよう制御することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項2に記載の電子機器であって、
表示部を更に具備し、
前記制御手段は、前記積算値が第1の値を超えたときに、当該電力の供給量を抑制することを示す情報を前記表示部に表示させるよう制御することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器であって、
前記制御手段は、
前記積算値が第1の値を超えたときに、前記電力の供給量を抑制するか、維持するかをユーザに選択させるための情報を前記表示部に表示させる手段と、
前記選択を入力し、当該入力に応じて前記電力の供給量を制御する手段と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
電子機器の筐体内に設けられた処理部へ供給される電力の電力値を所定間隔で測定し、
前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを予め記憶し、
前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記処理部への前記電力の供給量を制御する
ことを特徴とする供給電力制御方法。
【請求項10】
筐体と、前記筐体内に設けられ所定の処理を実行可能な処理部と、前記処理部へ電力を供給する電力供給部とを有する電子機器に、
前記供給される電力の電力値を所定間隔で測定するステップと、
前記測定される電力値から前記筐体の温度を推定するための所定の関数データを記憶するステップと、
前記測定された電力値及び前記関数データに基づいて、前記筐体の温度と所定の基準温度との差が所定値を超えないように、前記電力供給部から前記処理部への前記電力の供給量を制御するステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−225590(P2008−225590A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59324(P2007−59324)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】