説明

電子機器の製造方法

【課題】従来の電子機器の製造方法では、製造効率を向上させることが困難である。
【解決手段】素子層53が形成される側の面である第1面52aと、第1面52aとは反対側の面である第2面52bとを有し、且つ無機材料で構成されたマザー基板51Mの第2面52bに、無機材料で構成された補助基板91の基板面を対向させた状態で、マザー基板51Mと補助基板91とを溶接する溶接工程と、前記溶接工程の後に、マザー基板51Mの第1面52a側に、素子層53を形成する素子形成工程と、前記素子形成工程の後に、マザー基板51Mと補助基板91とを分離する分離工程と、を含む、ことを特徴とする電子機器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の1つである電気光学装置には、画像を表示する表示装置が含まれている。表示装置としては、例えば、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー等が知られている。
例えば、液晶ディスプレーなどの液晶装置では、互いに対向する一対の基板間に液晶が介在した構成を有する液晶パネルが電気光学パネルとして用いられる。また、有機ELディスプレーなどの有機EL装置では、互いに対向する一対の基板間に発光層が介在した構成を有する有機ELパネルが電気光学パネルとして用いられる。
このような電気光学パネルでは、電気光学パネルにおける基板の厚みを薄くすることによって、電気光学パネルの薄型化が図られ得る。電気光学パネルの薄型化では、従来、電気光学パネルを製造してから、この電気光学パネルにおける基板の厚みを薄くする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−58488号公報(13頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された方法では、電気光学パネルを製造してから基板を薄くするので、基板を薄くする工程でこの基板に不良が発生すると、他の部材が良好であっても、電気光学パネル全体が無駄になってしまう。
他方で、基板を薄くしてから電気光学パネルを製造する方法では、薄くした基板の強度に起因して、電気光学パネルの製造過程におけるハンドリングの困難さが増大する。これにより、製造過程において、電気光学パネルの扱いに細心の注意を払う必要性が増大する。この結果、電気光学パネルのハンドリングなどの扱いに、多くの時間がかかりやすくなる。
つまり、従来の電子機器の製造方法では、製造効率を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]電子素子が形成される側の面である素子形成面と、前記素子形成面とは反対側の面である反対面とを有し、且つ無機材料で構成された第1基板の前記反対面に、無機材料で構成された第2基板の基板面を対向させた状態で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する溶接工程と、前記溶接工程の後に、前記第1基板の前記素子形成面側に、前記電子素子を形成する素子形成工程と、前記素子形成工程の後に、前記第1基板と前記第2基板とを分離する分離工程と、を含む、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0007】
この適用例の電子機器の製造方法は、溶接工程と、素子形成工程と、分離工程と、を含む。
溶接工程では、第1基板と第2基板とを溶接する。第1基板は、無機材料で構成されており、素子形成面と、反対面と、を有している。素子形成面は、電子素子が形成される側の面である。反対面は、素子形成面とは反対側の面である。第2基板は、無機材料で構成されており、基板面を有している。溶接工程では、第1基板の反対面に、第2基板の基板面を対向させた状で、第1基板と第2基板とを溶接する。
溶接工程の後に、素子形成工程では、第1基板の素子形成面側に、電子素子を形成する。
素子形成工程の後に、分離工程では、第1基板と第2基板とを分離する。
【0008】
この製造方法では、第1基板と第2基板とを溶接してから、第1基板に電子素子を形成するので、第1基板を第2基板で補強した状態で、第1基板を取り扱うことができる。このため、第1基板と第2基板とを溶接する前に比較して、第1基板の取り扱いにおける困難性を緩和することができる。これにより、第1基板の取り扱いにかかる時間が長くなってしまうことを低く抑えやすくすることができる。この結果、電子機器の製造効率を向上させやすくすることができる。
【0009】
[適用例2]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板には、平面視で、前記電子素子が形成される領域である素子領域が規定され、前記溶接工程では、前記素子領域の外側に溶融部を形成する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0010】
この適用例では、第1基板に素子領域が規定される。素子領域は、平面視で電子素子が形成される領域である。そして、溶接工程において、素子領域の外側に溶融部を形成する。これにより、溶接痕(溶融部)を素子領域の外側に形成することができる。
【0011】
[適用例3]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板及び前記第2基板は、それぞれ、ガラスを含む材料で構成されており、前記溶接工程では、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方をレーザー光で溶融させることによって、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0012】
この適用例では、第1基板及び第2基板が、それぞれ、ガラスを含む材料で構成されている。そして、溶接工程では、第1基板及び第2基板の少なくとも一方をレーザー光で溶融させることによって、第1基板と第2基板とを溶接することができる。
【0013】
[適用例4]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板の前記反対面と前記第2基板の前記基板面とを、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に設けられた中間層を介して対向させ、前記溶接工程では、前記中間層を溶融させることによって、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0014】
この適用例では、第1基板の反対面と第2基板の基板面とを、第1基板及び第2基板の少なくとも一方に設けられた中間層を介して対向させ、溶接工程において、中間層を溶融させることによって、第1基板と第2基板とを溶接する。これにより、第1基板と第2基板とを溶接することができる。
【0015】
[適用例5]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0016】
この適用例では、素子領域の外側において、素子領域の周囲にわたって溶融部を形成するので、平面視で素子領域を溶融部で囲むことができる。
【0017】
[適用例6]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、大気圧よりも低い圧力の環境である減圧環境下で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0018】
この適用例では、減圧環境下で、第1基板と第2基板とを溶接する。減圧環境は、大気圧よりも低い圧力の環境である。これにより、第1基板と第2基板との間において、溶融部によって囲まれた領域内の圧力を大気圧よりも低くすることができる。
【0019】
[適用例7]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲のうちの一部に前記溶融部を形成する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0020】
この適用例では、素子領域の外側において、素子領域の周囲のうちの一部に溶融部を形成する。これにより、第1基板と第2基板との間の気密状態を解放しやすくすることができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0021】
[適用例8]上記の電子機器の製造方法であって、前記第2基板において、平面視で、前記素子領域に重なる領域内に、前記第2基板を前記基板面から前記基板面とは反対側の面まで貫く貫通孔が設けられている、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0022】
この適用例では、第2基板に貫通孔が設けられている。貫通孔は、平面視で素子領域に重なる領域内に設けられている。貫通孔は、第2基板を基板面から、基板面とは反対側の面まで貫いている。これにより、第1基板と第2基板との間の気密状態を解放しやすくすることができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0023】
[適用例9]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板の前記反対面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記素子形成面側に向かって凹となる凹部が設けられている、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0024】
この適用例では、第1基板の反対面側に凹部が設けられている。凹部は、平面視で、少なくとも素子領域に重なる領域内に設けられている。凹部は、反対面側から素子形成面側に向かって凹となる向きに設けられている。これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0025】
[適用例10]上記の電子機器の製造方法であって、前記第2基板の前記基板面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる凹部が設けられている、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0026】
この適用例では、第2基板の基板面側に凹部が設けられている。凹部は、平面視で、少なくとも素子領域に重なる領域内に設けられている。凹部は、基板面側から基板面側とは反対側に向かって凹となる向きに設けられている。これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0027】
[適用例11]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板の前記反対面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記素子形成面側に向かって凹となる凹部が設けられており、前記第2基板の前記基板面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる凹部が設けられている、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0028】
この適用例では、第1基板の反対面側に凹部が設けられており、第2基板の基板面側に凹部が設けられている。第1基板の凹部、及び第2基板の凹部は、平面視で、少なくとも素子領域に重なる領域内に設けられている。第1基板の凹部は、反対面側から素子形成面側に向かって凹となる向きに設けられている。第2基板の凹部は、基板面側から基板面側とは反対側に向かって凹となる向きに設けられている。
これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を一層低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを一層分離しやすくすることができる。
【0029】
[適用例12]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板には、平面視で、複数の前記素子領域が規定される、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0030】
この適用例では、第1基板に複数の素子領域が規定されるので、1つの第1基板に電子機器の複数個分の電子素子を形成することができる。
【0031】
[適用例13]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、平面視で複数の前記素子領域に重なる領域である複合領域の外側において、前記複合領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0032】
この適用例では、溶接工程において、複合領域の外側に複合領域の周囲にわたって溶融部を形成する。複合領域は、平面視で複数の素子領域に重なる領域である。これにより、平面視で複数の素子領域を溶融部で囲むことができる。
【0033】
[適用例14]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、前記複数の素子領域の前記素子領域ごとに、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0034】
この適用例では、素子領域ごとに、素子領域の外側において、素子領域の周囲にわたって溶融部を形成する。このため、平面視で素子領域を、素子領域ごとに溶融部で囲むことができる。
【0035】
[適用例15]上記の電子機器の製造方法であって、前記溶接工程では、大気圧よりも低い圧力の環境である減圧環境下で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0036】
この適用例では、減圧環境下で、第1基板と第2基板とを溶接する。減圧環境は、大気圧よりも低い圧力の環境である。これにより、第1基板と第2基板との間において、溶融部によって囲まれた領域内の圧力を大気圧よりも低くすることができる。
【0037】
[適用例16]上記の電子機器の製造方法であって、前記分離工程は、前記第1基板を、平面視で前記素子領域と前記溶融部との間で分断する工程を含む、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0038】
この適用例では、分離工程は、第1基板を、平面視で素子領域と溶融部との間で分断する工程を含む。これにより、第1基板と第2基板とを分離することができる。
【0039】
[適用例17]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板の前記反対面側において、前記素子形成面側に向かって凹となる溝部が設けられており、前記溝部は、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記溝部に重なる位置で分断する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0040】
この適用例では、第1基板の反対面側に溝部が設けられている。溝部は、反対面側から素子形成面側に向かって凹となる向きに設けられている。溝部は、平面視で、素子領域と溶融部との間に起点を有し、且つ起点から素子領域内に延在している。これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0041】
[適用例18]上記の電子機器の製造方法であって、前記第2基板の前記基板面側において、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる溝部が設けられており、前記溝部は、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記溝部に重なる位置で分断する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0042】
この適用例では、第2基板の基板面側に溝部が設けられている。溝部は、基板面側から基板面側とは反対側に向かって凹となる向きに設けられている。溝部は、平面視で、素子領域と溶融部との間に起点を有し、且つ起点から素子領域内に延在している。これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【0043】
[適用例19]上記の電子機器の製造方法であって、前記第1基板の前記反対面側において、前記素子形成面側に向かって凹となる第1溝部が設けられており、前記第2基板の前記基板面側において、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる第2溝部が設けられており、前記第1溝部及び前記第2溝部は、それぞれ、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくとも一方に重なる位置で分断する、ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【0044】
この適用例では、第1基板の反対面側に第1溝部が設けられており、第2基板の基板面側に第2溝部が設けられている。第1溝部は、反対面側から素子形成面側に向かって凹となる向きに設けられている。第2溝部は、基板面側から基板面側とは反対側に向かって凹となる向きに設けられている。第1溝部及び第2溝部は、それぞれ、平面視で、素子領域と溶融部との間に起点を有し、且つ起点から素子領域内に延在している。これにより、平面視で素子領域に重なる領域内において、第1基板と第2基板との接触面積を低減することができる。このため、分離工程において、第1基板と第2基板とを分離しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態における表示装置を示す斜視図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態における複数の画素の一部を示す平面図。
【図4】本実施形態における表示装置の回路構成を示す図。
【図5】図3中のC−C線における断面図。
【図6】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図7】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図8】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図9】本実施形態でのマザー基板を示す平面図。
【図10】図9(a)中のD−D線における断面図。
【図11】本実施形態でのマザー基板を示す平面図。
【図12】本実施形態でのマザー基板の製造工程を説明する図。
【図13】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図14】本実施形態でのマザーパネルを示す断面図。
【図15】本実施形態でのマザーパネルから表示装置を切り出す工程を説明する図。
【図16】本実施形態での溝部を説明する断面図。
【図17】本実施形態でのマザー基板を示す平面図。
【図18】本実施形態での溝部の他の例を説明する平面図。
【図19】本実施形態でのマザー基板の他の例を示す平面図。
【図20】本実施形態でのマザー基板の他の例を示す平面図。
【図21】本実施形態での貫通孔を説明する断面図。
【図22】本実施形態での凹凸部を説明する断面図。
【図23】本実施形態でのマザー基板の他の例を示す断面図。
【図24】本実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施形態について、電子機器の1つである有機EL装置を利用した表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
本実施形態における表示装置1は、図1に示すように、素子基板3と、封止基板5と、を有している。素子基板3と封止基板5とは、互いに対向している。
表示装置1では、封止基板5の素子基板3側とは反対側の面である表示面7に、画像などを表示することができる。
【0047】
ここで、表示装置1には、複数の画素9が設定されている。複数の画素9は、表示領域11内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリクスMを構成している。X方向及びY方向は、平面視で互いに交差(直交)する方向である。本実施形態では、X方向は、後述する走査線が延在する方向でもある。また、Y方向は、後述する信号線が延在する方向でもある。
表示装置1は、複数の画素9から選択的に表示面7を介して表示装置1の外に光を射出することで、表示面7に画像などを表示する。なお、表示領域11とは、画像が表示され得る領域である。図1では、構成をわかりやすく示すため、画素9が誇張され、且つ画素9の個数が減じられている。
【0048】
表示装置1において、素子基板3は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、封止基板5側とは反対側の面である底面13を有している。
素子基板3には、表示面7側すなわち封止基板5側に、後述する有機EL素子などが設けられている。なお、表示装置1において、表示面7と底面13とは、互いに表裏の関係にある。
【0049】
封止基板5は、素子基板3よりも表示面7側で素子基板3に対向した状態で設けられている。素子基板3と封止基板5とは、接着剤16を介して接合されている。表示装置1では、有機EL素子は、接着剤16によって表示面7側から覆われている。
また、素子基板3と封止基板5との間は、表示装置1の周縁よりも内側で表示領域11を囲むシール材17によって封止されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子と接着剤16とが、素子基板3及び封止基板5並びにシール材17によって封止されている。
【0050】
ここで、表示装置1における複数の画素9は、それぞれ、表示面7から射出する光の色が、図3に示すように、赤系(R)、緑系(G)及び青系(B)のうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMを構成する複数の画素9は、Rの光を射出する画素9Rと、Gの光を射出する画素9Gと、Bの光を射出する画素9Bとを含んでいる。
なお、以下においては、画素9という表記と、画素9R、画素9G及び画素9Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0051】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑等を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、Gの色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0052】
マトリクスMでは、Y方向に沿って一列に並ぶ複数の画素9が、1つの画素列18を構成している。また、X方向に沿って一列に並ぶ複数の画素9が、1つの画素行19を構成している。
1つの画素列18内の各画素9は、光の色がR、G及びBのうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMは、複数の画素9RがY方向に配列した画素列18Rと、複数の画素9GがY方向に配列した画素列18Gと、複数の画素9BがY方向に配列した画素列18Bとを有している。そして、表示装置1では、画素列18R、画素列18G及び画素列18Bが、この順でX方向に沿って反復して並んでいる。
なお、以下においては、画素列18という表記と、画素列18R、画素列18G及び画素列18Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0053】
表示装置1は、回路構成を示す図である図4に示すように、画素9ごとに、選択トランジスター31と、駆動トランジスター33と、容量素子35と、有機EL素子37とを有している。有機EL素子37は、画素電極39と、有機層41と、共通電極43とを有している。選択トランジスター31及び駆動トランジスター33は、それぞれ、TFT(Thin Film Transistor)素子で構成されており、スイッチング素子としての機能を有する。
また、表示装置1は、走査線駆動回路45と、信号線駆動回路47と、複数の走査線GTと、複数の信号線SIと、複数の電源線PWとを有している。
【0054】
複数の走査線GTは、それぞれ走査線駆動回路45につながっており、Y方向に互いに間隔をあけた状態でX方向に延びている。
複数の信号線SIは、それぞれ信号線駆動回路47につながっており、X方向に互いに間隔をあけた状態でY方向に延びている。
複数の電源線PWは、X方向に互いに間隔をあけた状態で、且つ各電源線PWと各信号線SIとがX方向に間隔をあけた状態でY方向に延びている。
【0055】
各画素9は、各走査線GTと各信号線SIとの交差に対応して設定されている。各走査線GTは、図3に示す各画素行19に対応している。各信号線SI及び各電源線PWは、それぞれ、図3に示す各画素列18に対応している。
図4に示す各選択トランジスター31のゲート電極は、対応する各走査線GTに電気的につながっている。各選択トランジスター31のソース電極は、対応する各信号線SIに電気的につながっている。各選択トランジスター31のドレイン電極は、各駆動トランジスター33のゲート電極及び各容量素子35の一方の電極に電気的につながっている。
【0056】
容量素子35の他方の電極と、駆動トランジスター33のソース電極は、それぞれ、対応する各電源線PWに電気的につながっている。
各駆動トランジスター33のドレイン電極は、各画素電極39に電気的につながっている。各画素電極39と共通電極43とは、画素電極39を陽極とし、共通電極43を陰極とする一対の電極を構成している。
ここで、共通電極43は、マトリクスMを構成する複数の画素9間にわたって一連した状態で設けられており、複数の画素9間にわたって共通して機能する。
各画素電極39と共通電極43との間に介在する有機層41は、後述する発光層を含んでいる。有機層41では、画素電極39と共通電極43との間に発生する電流によって、発光層が発光する。
【0057】
選択トランジスター31は、この選択トランジスター31につながる走査線GTに選択信号が供給されるとON状態となる。このとき、この選択トランジスター31につながる信号線SIからデータ信号が供給され、駆動トランジスター33がON状態になる。駆動トランジスター33のゲート電位は、データ信号の電位が容量素子35に一定の期間だけ保持されることによって、一定の期間だけ保持される。これにより、駆動トランジスター33のON状態が一定の期間だけ保持される。なお、各データ信号は、階調表示に応じた電位に生成される。
【0058】
駆動トランジスター33のON状態が保持されているときに、駆動トランジスター33のゲート電位に応じた電流が、電源線PWから画素電極39と有機層41を経て共通電極43に流れる。そして、有機層41に含まれる発光層が、有機層41を流れる電流量に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置1では、階調表示が行われ得る。
表示装置1は、有機層41に含まれる発光層が発光し、発光層からの光が封止基板5を介して表示面7から射出されるトップエミッション型の有機EL装置の1つである。なお、表示装置1では、表示面7側という表現が上側とも表現され、底面13側という表現が下側とも表現される。
【0059】
ここで、素子基板3及び封止基板5のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
素子基板3は、図3中のC−C線における断面図である図5に示すように、基板51と、素子層53と、を有している。素子層53は、駆動素子層55を含んでいる。
なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、図4に示す選択トランジスター31、駆動トランジスター33、容量素子35、走査線GT、信号線SI及び電源線PWが省略されている。選択トランジスター31、駆動トランジスター33、容量素子35、走査線GT、信号線SI及び電源線PWは、駆動素子層55に含まれている。
【0060】
基板51は、表示面7側に向けられた第1面52aと、底面13側に向けられた第2面52bとを有している。基板51の材料としては、例えば、ガラスや石英などの光透過性を有する無機材料が採用され得る。本実施形態では、基板51の材料として、ガラスが採用されている。
駆動素子層55は、基板51の第1面52aに設けられている。
駆動素子層55の表示面7側には、画素電極39が設けられている。画素電極39の材料としては、例えば、銀、白金、アルミニウム、銅などの光反射性を有する金属や、これらを含む合金などが採用され得る。
【0061】
画素電極39を陽極として機能させる場合には、画素電極39の材料として、銀、白金などの仕事関数が比較的高い材料を用いることが好ましい。また、画素電極39の材料としてITO(Indium Tin Oxide)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)などを用い、光反射性を有する部材を画素電極39と駆動素子層55との間に設けた構成も採用され得る。本実施形態では、画素電極39の材料としてITOが採用されている。
【0062】
隣り合う画素電極39同士の間には、各画素9を区画する絶縁膜(第1隔壁)57が領域58にわたって設けられている。絶縁膜57は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの光透過性を有する材料で構成されている。絶縁膜57は、平面視で、表示領域11にわたって格子状に設けられている。このため、表示領域11は、絶縁膜57によって複数の画素9の領域に区画されている。1つの画素9に着目すると、絶縁膜57は、平面視で環状に設けられている。なお、各画素電極39は、絶縁膜57によって囲まれた各画素9の領域に平面視で重なっている。本実施形態では、絶縁膜57の材料として酸化シリコンが採用されている。
【0063】
絶縁膜57の表示面7側には、各画素9の領域を囲む絶縁膜(第2隔壁)59が設けられている。絶縁膜59は、例えば、カーボンブラックやクロムなどの光吸収性が高い材料を含有するアクリル系の樹脂やポリイミド樹脂などの有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜57に沿って格子状に設けられている。1つの画素9に着目すると、絶縁膜59は、平面視で各画素9の領域を囲んでいる。このため、絶縁膜59は、画素9ごとに環状に設けられているとみなされ得る。本実施形態では、絶縁膜59の材料としてアクリル系の樹脂が採用されている。
画素電極39の表示面7側には、絶縁膜59に囲まれた領域内に、有機層41が設けられている。
【0064】
有機層41は、各画素9に対応して設けられており、正孔注入層61と、正孔輸送層63と、発光層65と、を有している。
正孔注入層61は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜59によって囲まれた領域内で、画素電極39の表示面7側に設けられている。
正孔注入層61の有機材料としては、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等との混合物が採用され得る。正孔注入層61の有機材料としては、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやこれらの誘導体なども採用され得る。
【0065】
正孔輸送層63は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜59によって囲まれた領域内で、正孔注入層61の表示面7側に設けられている。
正孔輸送層63の有機材料としては、例えば、下記化合物1として示されるTFBなどのトリフェニルアミン系ポリマーを含んだ構成が採用され得る。
【0066】
【化1】

【0067】
発光層65は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜59によって囲まれた領域内で、正孔輸送層63の表示面7側に設けられている。
画素9Rに対応する発光層65の有機材料としては、例えば、下記化合物2として示されるF8(ポリジオクチルフルオレン)と、ペリレン染料とを混合したものが採用され得る。
【0068】
【化2】

【0069】
画素9Gに対応する発光層65の有機材料としては、例えば、下記化合物3として示されるF8BTと、上記化合物1として示されるTFBと、上記化合物2として示されるF8とを混合したものが採用され得る。
【0070】
【化3】

【0071】
画素9Bに対応する発光層65の有機材料としては、例えば、上記化合物2として示されるF8が採用され得る。
【0072】
有機層41の表示面7側には、図5に示すように、絶縁膜59に囲まれた領域内に、電子注入層67が設けられている。電子注入層67の材料としては、例えば、マグネシウムと銀とを含む合金や、カルシウムなどが採用され得る。本実施形態では、電子注入層67の材料として、マグネシウムと銀とを含む合金が採用されている。
電子注入層67の表示面7側には、共通電極43が設けられている。共通電極43は、例えば、アルミニウム等の金属を薄膜化して光透過性を付与したものなどが採用され得る。また、共通電極43は、例えば、マグネシウムと銀とを含む合金等を薄膜化して光透過性を付与したものなどによっても構成され得る。本実施形態では、共通電極43として、アルミニウムの薄膜が採用されている。共通電極43は、電子注入層67及び絶縁膜59を表示面7側から複数の画素9間にわたって覆っている。
【0073】
なお、表示装置1では、各画素9において発光する領域(以下、発光領域と呼ぶ)は、平面視で画素電極39と有機層41と共通電極43とが重なる領域であると定義され得る。また、画素9ごとに発光領域を構成する要素の一群が1つの有機EL素子37であると定義され得る。表示装置1では、1つの有機EL素子37は、1つの画素電極39と、1つの有機層41と、1つの電子注入層67と、1つの画素9に対応する共通電極43とを含んだ構成を有している。
【0074】
封止基板5は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面7側に向けられた外向面5aと、底面13側に向けられた対向面5bとを有している。
上記の構成を有する素子基板3及び封止基板5は、素子基板3の共通電極43と封止基板5の対向面5bとの間が、接着剤16を介して接合されている。
【0075】
表示装置1では、図2に示すシール材17は、図5に示す基板51の第1面52aと、封止基板5の対向面5bとによって挟持されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子37及び接着剤16が、基板51及び封止基板5並びにシール材17によって封止されている。なお、シール材17は、対向面5b及び共通電極43の間に設けられていてもよい。この場合、有機EL素子37及び接着剤16は、素子基板3及び封止基板5並びにシール材17によって封止されているとみなされ得る。
【0076】
ここで、表示装置1の製造方法について説明する。
表示装置1の製造方法は、素子基板3を製造する工程と、表示装置1を組み立てる工程とに大別される。
素子基板3を製造する工程では、図6(a)に示すように、まず、基板51の第1面52aに駆動素子層55を形成する。
次いで、駆動素子層55の表示面7側に、各画素9に対応した画素電極39を形成する。
画素電極39の形成では、例えばスパッタリング技術や真空蒸着技術などの成膜技術や、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術などのパターニング技術が活用され得る。画素電極39の形成では、まず、例えばスパッタリング技術や真空蒸着技術などを活用して、駆動素子層55の表示面7にITOの膜を形成する。次いで、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術などのパターニング技術を活用して、ITOの膜をパターニングすることによって画素電極39が形成され得る。
【0077】
次いで、図6(b)に示すように、隣り合う画素電極39間に、絶縁膜57を、各画素電極39の周縁に重ねて形成する。
絶縁膜57の形成では、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術や、PVD(Physical Vapor Deposition)技術などの成膜技術や、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術などのパターニング技術が活用され得る。絶縁膜57の形成では、まず、例えばCVD技術やPVD技術などを活用して酸化シリコンの膜を形成する。次いで、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術などのパターニング技術を活用して、酸化シリコンの膜をパターニングすることによって絶縁膜57が形成され得る。
【0078】
次いで、絶縁膜57の表示面7側に絶縁膜59を形成する。
絶縁膜59の形成では、まず、ネガ型の感光物質を含むアクリル系の樹脂で、平面視で画素電極39及び絶縁膜57を覆う樹脂膜を形成する。この樹脂膜の形成では、スピンコート技術や印刷技術などが活用され得る。次いで、例えばフォトリソグラフィー技術を活用することによって、樹脂膜をパターニングする。これにより、絶縁膜59が形成され得る。
なお、駆動素子層55から絶縁膜59までの構成が形成された基板51は、以下において基板51aと呼ばれる。
【0079】
次いで、図6(c)に示すように、基板51aにプラズマ処理を施す。このプラズマ処理では、基板51aに酸素プラズマ処理を施してから、基板51aにCF4プラズマ処理を施す。基板51aに酸素プラズマ処理を施すことにより、画素電極39や絶縁膜57に、後述する液状体61a、液状体63a、液状体65a等に対する親液性が付与される。また、基板51aにCF4プラズマ処理を施すことにより、絶縁膜59に、後述する液状体61a、液状体63a、液状体65a等に対する撥液性が付与される。
本実施形態では、処理室内を所定の真空度に保った状態で処理室内に処理ガスを導入しながら、処理室内にプラズマを発生させる方法が採用されている。本実施形態では、酸素プラズマ処理において、処理ガスとして酸素を含むガスが採用されている。また、CF4プラズマ処理において、処理ガスとして、フッ素化合物を含むガスであるCF4ガスが採用されている。なお、CF4プラズマ処理では、処理ガスは、CF4ガスに限定されず、SF6やCHF3などのハロゲンガスや、フッ素ガスなども採用され得る。
【0080】
基板51aにプラズマ処理を施す工程に次いで、図7(a)に示すように、絶縁膜59によって囲まれた各画素9の領域内に液状体61aを配置する。液状体61aには、正孔注入層61を構成する有機材料が含まれている。液状体61aの配置には、液滴吐出ヘッド71を利用したインクジェット法が活用され得る。
液滴吐出ヘッド71から液状体61aなどを液滴61bとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体61aなどを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
【0081】
各画素9の領域内に配置された液状体61aを減圧乾燥法で乾燥させてから焼成を行うことによって、図7(b)に示す正孔注入層61が形成され得る。なお、液状体61aには、PEDOTとPSSとの混合物を、溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどが採用され得る。
なお、減圧乾燥法は、減圧環境下で行う乾燥方法であり、真空乾燥法とも呼ばれる。減圧環境とは、大気圧よりも低い圧力が保たれる環境である。また、液状体61aの焼成条件は、環境温度が約200℃で、保持時間が約10分間である。
【0082】
次いで、図7(b)に示すように、絶縁膜59によって囲まれた各画素9の領域内に、液状体63aを配置する。液状体63aには、正孔輸送層63を構成する有機材料が含まれている。液状体63aは、液滴吐出ヘッド71から液状体63aを液滴63bとして吐出することによって配置される。このとき、正孔注入層61は、液状体63aによって覆われる。なお、液状体63aには、TFBを溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、シクロヘキシルベンゼンなどが採用され得る。
次いで、液状体63aを減圧乾燥法で乾燥させてから、不活性ガス中で焼成を行うことによって、図8(a)に示す正孔輸送層63が形成され得る。なお、液状体63aの焼成条件は、環境温度が約130℃で、保持時間が約1時間である。
【0083】
次いで、図8(a)に示すように、絶縁膜59によって囲まれた各画素9の領域内に、液状体65aを配置する。液状体65aには、発光層65を構成する有機材料が含まれている。液状体65aは、液滴吐出ヘッド71から液状体65aを液滴65bとして吐出することによって配置される。このとき、正孔輸送層63は、液状体65aによって覆われる。なお、液状体65aには、画素9R、画素9G及び画素9Bのそれぞれに対応する発光層65を構成する有機材料を溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、シクロヘキシルベンゼンなどが採用され得る。
次いで、液状体65aを減圧乾燥法で乾燥させてから、不活性ガス中で焼成を行うことによって、図8(b)に示す発光層65が形成され得る。液状体65aの焼成条件は、環境温度が約130℃で、保持時間が約1時間である。
【0084】
次いで、蒸着技術などを活用してマグネシウムと銀とを含む合金の膜を、絶縁膜59によって囲まれた各画素9の領域内に形成することにより、図8(c)に示す電子注入層67が形成され得る。このとき、電子注入層67は、絶縁膜59をマスクで表示面7側から覆った状態で形成され得る。
次いで、蒸着技術を活用してアルミニウム等の膜を形成することにより、図5に示す共通電極43が形成され得る。これにより、素子基板3が製造され得る。
【0085】
表示装置1を組み立てる工程では、図2に示すように、素子基板3及び封止基板5を、接着剤16及びシール材17を介して接合する。
このとき、素子基板3及び封止基板5は、図5に示すように、基板51の第1面52aと、封止基板5の対向面5bとが向き合った状態で接合される。これにより、表示装置1が製造され得る。
【0086】
ここで、上述した素子基板3の製造工程、及び表示装置1の組立工程は、それぞれ、マザー基板の状態で実施される。
複数の素子基板3が形成されるマザー基板81は、平面図である図9(a)に示すように、複数の基板51の領域を包含する大きさを有している。
また、複数の封止基板5が形成されるマザー基板83は、平面図である図9(b)に示すように、複数の封止基板5の領域を包含する大きさを有している。
【0087】
マザー基板81において、基板51の領域は、図9(a)に示すように、基板領域85と呼ばれる。基板領域85は、シール領域87と、素子領域89と、を包含している。なお、図9(a)では、構成をわかりやすく示すため、シール領域87及び素子領域89にハッチングが施されている。
素子領域89は、基板領域85の周縁よりも内側で島状に設定される。素子領域89には、前述した素子層53が設けられる。シール領域87は、基板領域85の内側且つ素子領域89の外側で、素子領域89を囲む領域に設定される。シール領域87には、シール材17が設けられる。
【0088】
マザー基板81は、図9(a)中のD−D線における断面図である図10に示すように、マザー基板51Mと、補助基板91と、を有している。
マザー基板51Mは、複数の基板51を包含している。
補助基板91は、マザー基板51Mに包含される基板51の第2面52b側に設けられている。
マザー基板51Mと補助基板91とは、互いに対向した状態で溶接されている。
補助基板91は、マザー基板51Mの剛性を補助する機能を有している。
【0089】
補助基板91の材料としては、マザー基板51Mの剛性を補助する機能が発揮されれば、特に限定されない。マザー基板51Mと補助基板91とを溶接する観点から、補助基板91の材料としては、ガラスを含有する無機材料であることが好ましい。これにより、マザー基板51Mと補助基板91との間の溶接を達成しやすくなる。
本実施形態では、補助基板91の材料として、ガラスが採用されている。これにより、マザー基板51Mと補助基板91との間の溶接が達成されやすくなっている。
マザー基板51Mと補助基板91とは、溶融部93を共有している。溶融部93は、マザー基板51Mと補助基板91とが互いに溶融し合っている部位である。マザー基板81では、溶融部93において、マザー基板51Mと補助基板91とが溶接されている。
【0090】
マザー基板51Mの剛性を補助する観点から、補助基板91の大きさは、マザー基板51Mにおける複数の基板領域85を包含する大きさであることが好ましい。補助基板91の大きさは、マザー基板51Mを包含する大きさであることがより好ましい。本実施形態では、補助基板91は、マザー基板51Mを包含する大きさに設定されている。
溶融部93は、図11に示すように、素子領域89の外側に設けられる。本実施形態では、溶融部93は、基板領域85の外側に設けられており、且つ素子領域89の周囲にわたって形成されている。さらに、本実施形態では、溶融部93は、複数の基板領域85を包含する領域である複合領域94を、複合領域94の外側から囲んでいる。つまり、溶融部93は、複合領域94内の複数の基板領域85を外側から囲んでいる。なお、図11では、構成をわかりやすく示すため、溶融部93及び複合領域94のそれぞれにハッチングが施されている。
【0091】
本実施形態では、溶融部93は、図12に示すように、レーザー光95によって形成される。レーザー光95としては、波長が600nm〜1600nmの範囲内にあるものが採用され得る。このようなレーザー光95としては、例えば、GaAsやInGaAsPなどの半導体レーザー、チタンサファイア、YAG、YVO4などの固体レーザー等の様々な種類が採用され得る。
本実施形態では、レーザー光95は、コリーメーターレンズ96を介して集光した状態で照射される。これにより、レーザー光95のエネルギー密度を高めることができ、効率よく溶融部93を形成することができる。本実施形態では、レーザー光95の集光範囲は、直径が略1mmの円の範囲内に納められる。また、レーザー光95の発振器は、約20Wの出力に設定される。
【0092】
マザー基板51Mと補助基板91との溶接では、まず、図12に示すように、ステージ97に、補助基板91及びマザー基板51Mを重ねて載置する。
次いで、マザー基板51Mに押さえ板98を重ねる。これにより、補助基板91及びマザー基板51Mは、ステージ97と押さえ板98とによって挟持される。押さえ板98は、補助基板91とマザー基板51Mとを加圧する機能を有しており、補助基板91とマザー基板51Mとの密着性を高める。押さえ板98の材料としては、例えば、石英やガラスなどのレーザー光95に対する光透過性が高い材料が採用され得る。
次いで、レーザー光95を励起させる。このとき、レーザー光95の集光部を、補助基板91とマザー基板51Mとの境界面に合わせる。
【0093】
次いで、補助基板91及びマザー基板51Mに対するレーザー光95の位置を変化させながら、図11に示す複合領域94の周囲にわたって溶融部93を形成していく。このとき、補助基板91及びマザー基板51Mに対するレーザー光95の位置を、約1mm/秒の速さで変化させる。
上記により、図11に示す溶融部93が形成され、マザー基板51Mと補助基板91との間が溶接される。
なお、図12では、ステージ97に補助基板91を載置してから、補助基板91にマザー基板51Mを重ねた状態が図示されている。しかしながら、補助基板91及びマザー基板51Mの重ね順は、これに限定されず、ステージ97にマザー基板51Mを載置してから、マザー基板51Mに補助基板91を重ねる順序も採用され得る。
【0094】
前述した素子基板3の製造工程は、マザー基板81の状態で実施される。前述した素子層53は、図13に示すように、マザー基板81のマザー基板51Mに形成される。
ところで、本実施形態では、溶融部93は、図11に示すように、複合領域94の周囲にわたって、すなわち環状に一連した状態で形成されている。このため、溶融部93によって閉じられた領域、すなわち溶融部93と補助基板91とマザー基板51Mとによって囲まれた領域は、気密性が高い。
素子層53の形成では、減圧環境下で実施する工程が含まれている。前述したように、減圧環境とは、大気圧よりも低い圧力が保たれる環境である。
マザー基板81は、溶融部93によって閉じられた気密性が高い領域を有しているので、減圧環境下で変形しやすくなる。
そこで、本実施形態では、補助基板91とマザー基板51Mとの間の溶接を、減圧環境下で実施する方法が採用されている。これにより、素子層53の形成における減圧環境下での工程で、マザー基板81の変形が低く抑えられる。
【0095】
図13に示す素子層53の形成に次いで、マザー基板81のシール領域87にシール材17を設ける。シール材17を設ける方法としては、例えば、ディスペンサーなどを用いた塗布法や、フレキソ印刷やスクリーン印刷などの印刷法等が採用され得る。
次いで、図14に示すように、マザー基板83とマザー基板51Mとを、接着剤16及びシール材17を介して接合する。これにより、マザーパネル101が製造され得る。マザーパネル101では、マザー基板81及びマザー基板83によって、複数の表示装置1が相互につながっている。マザーパネル101では、マザー基板83に切断予定線103が想定され、マザー基板51Mに切断予定線105が想定される。
切断予定線103は、図9(b)に示す封止基板5の周縁に重なっている。切断予定線105は、図9(a)に示す基板領域85の周縁に重なっている。
【0096】
マザー基板83において、封止基板5の領域よりも外側の領域が、表示装置1には不要な領域である不要領域107とされる。同様に、マザー基板51Mにおいて、基板51の領域(図13に示す基板領域85)よりも外側の領域が、表示装置1には不要な領域である不要領域109とされる。
マザーパネル101の製造に次いで、マザーパネル101から図15に示す表示装置1を切り出す。
表示装置1を切り出す工程では、まず、図14に示すマザー基板83を切断予定線103で切断する。これにより、図15に示すように、封止基板5と不要領域107とが分断される。
【0097】
次いで、図14に示すマザー基板51Mを切断予定線105で切断する。これにより、図15に示すように、基板51と不要領域109とが分断される。
上記により、マザーパネル101から表示装置1が切り出される。これにより、表示装置1が製造され得る。
マザー基板83やマザー基板51Mの切断では、例えば、ダイシング技術や、スクライブブレイク技術などが活用され得る。
【0098】
なお、マザーパネル101から表示装置1、不要領域107及び不要領域109を分離すると、マザー基板81'が残る。
マザー基板81'では、平面視で溶融部93に重なる不要領域109が、補助基板91に接合したままの状態で残っている。本実施形態では、マザー基板81'に、不要領域109側から溶融部93を包含する深さFまで研磨処理を施すことによって、新たな補助基板91を再生させることができる。
研磨処理としては、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術や、エッチング技術などが活用され得る。
【0099】
本実施形態において、マザー基板51Mが第1基板に対応し、選択トランジスター31や駆動トランジスター33、有機EL素子37がそれぞれ電子素子に対応し、第1面52aが素子形成面に対応し、第2面52bが反対面に対応し、補助基板91が第2基板に対応している。また、表示装置1を切り出す工程が分離工程に対応している。
本実施形態では、マザー基板51Mと補助基板91とを溶接してから、マザー基板51Mに素子層53を形成するので、マザー基板51Mを補助基板91で補強した状態で、マザー基板51Mを取り扱うことができる。このため、マザー基板51Mと補助基板91とを溶接する前に比較して、マザー基板51Mの取り扱いにおける困難性を緩和することができる。これにより、マザー基板51Mの取り扱いにかかる時間が長くなってしまうことを低く抑えやすくすることができる。この結果、表示装置1の製造効率を向上させやすくすることができる。
【0100】
なお、本実施形態において、補助基板91が、図16に示すように、溝部111を有していると、マザーパネル101から表示装置1を分離しやすくできる点で好ましい。
溝部111は、補助基板91のマザー基板51M側の基板面91aに設けられており、基板面91aから反対面91bに向かって凹となる向きに形成されている。反対面91bは、補助基板91の基板面91aとは反対側の面である。
また、溝部111は、平面図である図17に示すように、基板領域85ごとに設けられている。各溝部111は、溶融部93によって囲まれた領域内に設けられており、基板領域85の外側の領域から各基板領域85内に延在している。
この溝部111によって、図16に示す基板51と補助基板91との接触面積が軽減する。このため、マザー基板51Mを切断予定線105で切断してから、表示装置1を補助基板91から分離するときに、表示装置1を補助基板91から分離しやすくすることができる。
【0101】
溝部111がなく、且つ基板51と補助基板91とが互いに密着した状態では、表示装置1を補助基板91から分離しにくい。これに対し、溝部111を有する構成では、基板51と補助基板91との接触面積が軽減するので、表示装置1を補助基板91から分離しやすくすることができる。これにより、表示装置1の製造効率を一層向上させやすくすることができる。
さらに、マザー基板51Mを切断予定線105で切断すると、溝部111内が大気に連通しやすくなる。
前述したように、本実施形態では、マザー基板51Mと補助基板91とが減圧環境下で溶接される。このため、基板51と補助基板91とが密着しやすい状態にある。
これに対し、溝部111を有する構成では、マザー基板51Mを切断予定線105で切断すると、溝部111内が大気に連通しやすくなる。これにより、基板51と補助基板91との間に気体が進入しやすくなるので、基板51と補助基板91との密着性を緩和させやすくすることができる。これにより、表示装置1を補助基板91から一層分離しやすくすることができる。この結果、表示装置1の製造効率を一層向上させやすくすることができる。
【0102】
なお、溝部111の個数は、基板領域85ごとに1つずつに限定されず、任意の個数が採用され得る。
また、基板領域85ごとに溝部111を設ける構成に限定されず、図18に示すように、複数の基板領域85間にまたがって溝部111を設ける構成も採用され得る。この構成では、基板領域85ごとに溝部111を設ける構成に比較して、溝部111の個数を軽減することができる。これにより、表示装置1の製造効率を一層向上させやすくすることができる。
【0103】
溝部111を設ける基板は、補助基板91に限定されず、マザー基板51Mも採用され得る。マザー基板51Mに溝部111を設ける場合、溝部111は、第2面52bに設けられる。マザー基板51Mに設けられる溝部111は、第2面52bから第1面52aに向かって凹となる向きに形成される。
さらに、マザー基板51M及び補助基板91の双方に溝部111を設けた構成も採用され得る。この場合、マザー基板51Mの溝部111と、補助基板91の溝部111とを互いに交差させれば、基板51と補助基板91との接触面積を一層軽減することができる。この結果、表示装置1の製造効率を一層向上させやすくすることができる。
【0104】
また、本実施形態では、図11に示す複合領域94内の複数の基板領域85を外側から囲む溶融部93を形成する例が示されている。しかしながら、溶融部93の形態は、これに限定されず、図18に示すように、溶融部93が基板領域85ごとに基板領域85を個別に囲む構成も採用され得る。以下において、基板領域85ごとに基板領域85を囲む溶融部93が設けられたマザー基板は、マザー基板115と表記される。
溶融部93は、基板領域85の外側に形成されている。マザー基板115では、溶融部93は、基板領域85を基板領域85の外側から囲んでいる。
マザー基板115では、マザー基板51Mと補助基板91との接合強度を高めやすくすることができる。また、マザー基板115では、基板領域85ごとに溶融部93が形成されるので、マザー基板81に比較して、各基板領域85と補助基板91との密着性を高めやすくすることができる。
【0105】
マザー基板115においても、マザー基板51M及び補助基板91の少なくとも一方に溝部111を設けた構成が採用され得る。
マザー基板115では、溝部111は、基板領域85ごとに設けられる。マザー基板115においても、溝部111は、溶融部93によって囲まれた領域内に設けられており、基板領域85の外側の領域から各基板領域85内に延在している。マザー基板115においても、溝部111によって、表示装置1を補助基板91から分離しやすくすることができる。
【0106】
また、溶融部93が基板領域85を個別に囲む構成としては、マザー基板115に限定されず、図19に示すように、マザー基板117の構成も採用され得る。マザー基板117における溶融部93は、マザー基板81における溶融部93(図11)に、複合領域94を基板領域85ごとに区分する溶融部93を付加した構成を有している。マザー基板117では、マザー基板115に比較して、溶融部93の総延長を短くすることができるので、表示装置1の製造効率を向上させやすくすることができる。
マザー基板117においても、マザー基板51M及び補助基板91の少なくとも一方に溝部111を設けた構成が採用され得る。
マザー基板117では、溝部111が基板領域85ごとに設けられても、溝部111が複数の基板領域85間にまたがって設けられてもよい。
【0107】
マザー基板81、マザー基板115及びマザー基板117では、それぞれ、溶融部93が基板領域85の周囲にわたって、すなわち環状に一連した状態で形成されている。しかしながら、溶融部93の形態は、これに限定されず、例えば、図20に示すように、基板領域85の周囲のうちの一部だけに設けたマザー基板119の形態も採用され得る。
マザー基板119の溶融部93は、マザー基板115の溶融部93の一部を欠いた形態を有している。マザー基板119の溶融部93としては、マザー基板81やマザー基板117における溶融部93の一部を欠いた形態も採用され得る。
マザー基板119の製造では、マザー基板51Mと補助基板91との間の溶接を、大気圧環境下で実施する方法が採用される。
マザー基板119では、溶融部93が基板領域85の周囲のうちの一部だけに設けられているので、マザー基板51Mと補助基板91との間の気密性が緩和されやすい。このため、素子層53の形成において、減圧環境下で実施する工程が含まれていても、マザー基板119の変形を低く抑えやすくすることができる。
【0108】
また、マザー基板119では、マザー基板81、マザー基板115及びマザー基板117のそれぞれに比較して、溶融部93の総延長を短くしやすいので、表示装置1の製造効率を向上させやすくすることができる。
マザー基板119においても、マザー基板51M及び補助基板91の少なくとも一方に溝部111を設けた構成が採用され得る。マザー基板119では、溝部111は、平面視で基板領域85の外側から基板領域85内に延在していれば、複合領域94の外側に起点があってもよい。さらに、マザー基板119では、溝部111がマザー基板119の周端面121に露呈していてもよい。
また、マザー基板119では、溝部111が基板領域85ごとに個別に設けられても、溝部111が複数の基板領域85間にまたがって設けられてもよい。
【0109】
また、マザー基板119では、図21に示すように、補助基板91に貫通孔123を設けた構成も採用され得る。貫通孔123は、平面視で基板領域85に重なる領域に設けられており、基板面91aから反対面91bまで貫通している。
貫通孔123によって、図21に示す基板51と補助基板91との接触面積が軽減する。このため、表示装置1を補助基板91から分離するときに、表示装置1を補助基板91から分離しやすくすることができる。貫通孔123の個数としては、任意の個数が採用され得る。
マザー基板119では、溝部111を単独で設けた形態、貫通孔123を単独で設けた形態、及び、溝部111と貫通孔123とを併設した形態のいずれの形態も採用され得る。
【0110】
また、マザー基板81、マザー基板115、マザー基板117及びマザー基板119では、それぞれ、図22に示すように、マザー基板51M及び補助基板91の少なくとも一方に凹凸部125を設けた構成も採用され得る。なお、図22には、補助基板91に凹凸部125を設けた例が示されている。補助基板91に凹凸部125を設ける場合には、基板面91a側に凹凸部125が設けられる。また、マザー基板51Mに凹凸部125を設ける場合には、第2面52b側に凹凸部125が設けられる。
【0111】
凹凸部125は、例えばエッチング技術を活用することによって形成され得る。フッ酸などを用いたエッチング技術を活用してガラスに凹凸部125を形成する方法は、一般的にフロスト処理として知られている。フロスト処理では、エッチング技術を活用して複数の凹部を形成することによって、凹凸部125が形成される。
このため、例えば、補助基板91に凹凸部125を形成する場合には、フロスト処理で基板面91aに複数の凹部を形成することによって凹凸部125が形成され得る。このとき、基板面91aに形成する複数の凹部は、基板面91aから反対面91bに向かって凹となる向きに形成される。
マザー基板51Mに凹凸部125を設ける場合、第2面52bに形成する複数の凹部は、第2面52bから第1面52aに向かって凹となる向きに形成される。
【0112】
なお、マザー基板81、マザー基板115及びマザー基板117では、それぞれ、凹凸部125は、平面視で溶融部93によって囲まれた領域内で、少なくとも平面視で基板領域85に重なる領域に設けられる。
また、マザー基板119では、凹凸部125は、少なくとも、平面視で基板領域85に重なる領域に設けられれば、任意の領域に設けられ得る。例えば、マザー基板119では、凹凸部125が、平面視でマザー基板119の全面にわたって設けられていてもよい。
【0113】
マザー基板81、マザー基板115、マザー基板117及びマザー基板119では、それぞれ、マザー基板51Mと補助基板91とを互いに溶接した構成が採用されている。しかしながら、マザー基板51Mと補助基板91との溶接の形態は、これに限定されず、図23に示すように、マザー基板51Mと補助基板91とが中間層129を介して溶接されたマザー基板131の形態も採用され得る。
マザー基板131において、中間層129は、補助基板91の基板面91aと、マザー基板51Mの第2面52bとの間に介在している。中間層129の材料としては、溶接にかかるエネルギーを軽減できる観点から、マザー基板51Mや補助基板91よりも融点が低い材料が好適である。中間層129の材料としては、例えば、ITOやシリコンなどが採用され得る。シリコンとしては、例えば、アモルファスシリコンやポリシリコンなどが挙げられる。
【0114】
マザー基板131では、中間層129は、補助基板91の基板面91aに形成されている。
マザー基板131の製造では、補助基板91の基板面91aに中間層129を形成してから、中間層129にマザー基板51Mを重ねた状態で溶接を行う。このとき、溶接は、図12に示すレーザー光95で、図23に示す中間層129に溶融部93を形成することによって行われる。
中間層129に形成された溶融部93は、マザー基板51Mに接合する。これにより、マザー基板51Mと補助基板91とが中間層129を介して溶接され得る。
【0115】
マザー基板131では、マザー基板81、マザー基板115、マザー基板117及びマザー基板119のそれぞれに比較して、低い温度で溶融部93を形成することができる。このため、溶融部93の形成にかかるエネルギーを軽減しやすくすることができる。これにより、表示装置1の製造効率を向上させやすくすることができる。
なお、中間層129を設ける基板は、補助基板91に限定されず、マザー基板51Mも採用され得る。マザー基板51Mに中間層129を設ける場合、中間層129は、第2面52bに設けられる。さらに、マザー基板51M及び補助基板91の双方に中間層129を設けた構成も採用され得る。
【0116】
また、マザー基板131においても、溶融部93の形成パターンは、図11に示すマザー基板81のパターン、図18に示すマザー基板115のパターン、図19に示すマザー基板117のパターン、及び図20に示すマザー基板119のパターンのいずれも採用され得る。
また、中間層129は、少なくとも溶融部93を形成する領域に設けられていれば、平面視でマザー基板131の全面に設けられていても、平面視でマザー基板131の一部の領域だけに設けられていてもよい。
さらに、マザー基板131においても、溝部111や貫通孔123や凹凸部125などを設けた構成が採用され得る。この構成では、溝部111や貫通孔123や凹凸部125は、マザー基板51M及び補助基板91の少なくとも一方に設けられ得る。また、溝部111や凹凸部125は、中間層129に設けられていてもよい。
【0117】
なお、本実施形態では、複数の画素9が設定され、画素9ごとに有機EL素子37を有する表示装置1を例に説明したが、実施の形態はこれに限定されない。実施の形態としては、有機EL素子37を表示領域11にわたって一連した状態で設けた照明装置などの形態もある。このような照明装置は、例えば液晶表示装置などの光源に好適である。
【0118】
また、本実施形態では、絶縁膜57が光透過性を有する材料で構成されているが、絶縁膜57の材料はこれに限定されない。絶縁膜57の材料としては、光吸収性が高い材料も採用され得る。絶縁膜57の材料に光吸収性が高い材料を採用すれば、隣り合う画素9同士間における遮光性が高められる。これにより、表示におけるコントラストを向上させやすくすることができ、表示品位を向上させやすくすることができる。
【0119】
また、本実施形態では、有機層41からの光を封止基板5を介して表示面7から射出するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明したが、有機EL装置はこれに限定されない。有機EL装置は、有機層41からの光を素子基板3を介して底面13から射出するボトムエミッション型も採用され得る。
ボトムエミッション型の場合、有機層41からの光が底面13から射出されるので、底面13側に表示面7が設定される。つまり、ボトムエミッション型では、表示装置1の底面13と表示面7とが入れ替わる。そして、ボトムエミッション型では、底面13側が上側に対応し、表示面7側が下側に対応する。
【0120】
また、本実施形態では、有機層41をインクジェット法で形成する場合を例に説明したが、有機層41の形成方法は、これに限定されず、蒸着法も採用され得る。
【0121】
また、本実施形態では、表示装置1として有機EL装置を例に説明したが、表示装置1はこれに限定されない。表示装置1としては、光を変調することができる液晶を有する液晶装置も適用され得る。
また、マザー基板81、マザー基板115、マザー基板117、マザー基板119及びマザー基板131は、それぞれ、有機EL装置や液晶装置への適用に限定されず、半導体用シリコン基板や、半導体装置、太陽電池などの種々の電子機器にも適用され得る。
【0122】
上述した表示装置1は、例えば、図24に示す電子機器500の表示部510に適用され得る。この電子機器500は、携帯電話機である。この電子機器500は、操作ボタン511を有している。表示部510は、操作ボタン511で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。この電子機器500では、表示部510に表示装置1が適用されているので、表示部510における表示品位を向上させやすくすることができる。
【0123】
なお、電子機器500としては、携帯電話機に限られず、モバイルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用の表示機器などの車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【符号の説明】
【0124】
1…表示装置、3…素子基板、5…封止基板、7…表示面、9…画素、11…表示領域、31…選択トランジスター、33…駆動トランジスター、37…有機EL素子、39…画素電極、41…有機層、43…共通電極、51…基板、51M…マザー基板、52a…第1面、52b…第2面、53…素子層、55…駆動素子層、61…正孔注入層、63…正孔輸送層、65…発光層、81…マザー基板、85…基板領域、87…シール領域、89…素子領域、91…補助基板、91a…基板面、91b…反対面、93…溶融部、94…複合領域、95…レーザー光、101…マザーパネル、103,105…切断予定線、111…溝部、115…マザー基板、117…マザー基板、119…マザー基板、123…貫通孔、125…凹凸部、129…中間層、131…マザー基板、500…電子機器、510…表示部、511…操作ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子が形成される側の面である素子形成面と、前記素子形成面とは反対側の面である反対面とを有し、且つ無機材料で構成された第1基板の前記反対面に、無機材料で構成された第2基板の基板面を対向させた状態で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する溶接工程と、
前記溶接工程の後に、前記第1基板の前記素子形成面側に、前記電子素子を形成する素子形成工程と、
前記素子形成工程の後に、前記第1基板と前記第2基板とを分離する分離工程と、を含む、
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項2】
前記第1基板には、平面視で、前記電子素子が形成される領域である素子領域が規定され、
前記溶接工程では、前記素子領域の外側に溶融部を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器の製造方法。
【請求項3】
前記第1基板及び前記第2基板は、それぞれ、ガラスを含む材料で構成されており、
前記溶接工程では、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方をレーザー光で溶融させることによって、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の製造方法。
【請求項4】
前記第1基板の前記反対面と前記第2基板の前記基板面とを、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に設けられた中間層を介して対向させ、
前記溶接工程では、前記中間層を溶融させることによって、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の製造方法。
【請求項5】
前記溶接工程では、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項6】
前記溶接工程では、大気圧よりも低い圧力の環境である減圧環境下で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電子機器の製造方法。
【請求項7】
前記溶接工程では、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲のうちの一部に前記溶融部を形成する、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項8】
前記第2基板において、平面視で、前記素子領域に重なる領域内に、前記第2基板を前記基板面から前記基板面とは反対側の面まで貫く貫通孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の電子機器の製造方法。
【請求項9】
前記第1基板の前記反対面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記素子形成面側に向かって凹となる凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項10】
前記第2基板の前記基板面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項11】
前記第1基板の前記反対面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記素子形成面側に向かって凹となる凹部が設けられており、
前記第2基板の前記基板面側において、平面視で、少なくとも前記素子領域に重なる領域内に、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板には、平面視で、複数の前記素子領域が規定される、ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器の製造方法。
【請求項13】
前記溶接工程では、平面視で複数の前記素子領域に重なる領域である複合領域の外側において、前記複合領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子機器の製造方法。
【請求項14】
前記溶接工程では、前記複数の素子領域の前記素子領域ごとに、前記素子領域の外側において、前記素子領域の周囲にわたって前記溶融部を形成する、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子機器の製造方法。
【請求項15】
前記溶接工程では、大気圧よりも低い圧力の環境である減圧環境下で、前記第1基板と前記第2基板とを溶接する、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の電子機器の製造方法。
【請求項16】
前記分離工程は、前記第1基板を、平面視で前記素子領域と前記溶融部との間で分断する工程を含む、
ことを特徴とする請求項2乃至15のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項17】
前記第1基板の前記反対面側において、前記素子形成面側に向かって凹となる溝部が設けられており、
前記溝部は、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、
前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記溝部に重なる位置で分断する、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子機器の製造方法。
【請求項18】
前記第2基板の前記基板面側において、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる溝部が設けられており、
前記溝部は、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、
前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記溝部に重なる位置で分断する、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子機器の製造方法。
【請求項19】
前記第1基板の前記反対面側において、前記素子形成面側に向かって凹となる第1溝部が設けられており、
前記第2基板の前記基板面側において、前記基板面側とは反対側に向かって凹となる第2溝部が設けられており、
前記第1溝部及び前記第2溝部は、それぞれ、平面視で、前記素子領域と前記溶融部との間に起点を有し、且つ前記起点から前記素子領域内に延在しており、
前記分離工程では、前記第1基板を、平面視で前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくとも一方に重なる位置で分断する、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−17889(P2011−17889A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162458(P2009−162458)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】