説明

電子素子

【課題】本発明は、カーボンナノチューブを利用した電子素子に関する。
【解決手段】本発明の電子素子は、基板と、該基板の表面に設置された透明な導電構造体と、を含む。前記透明な導電構造体は複数のカーボンナノチューブを含む。前記複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記複数のカーボンナノチューブは、前記透明な導電構造体の表面に平行に配列し、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを利用した電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは1991年に発見された新しい一次元ナノ材料となるものである。カーボンナノチューブは高引張強さ及び高熱安定性を有し、また、異なる螺旋構造により、金属にも半導体にもなる。カーボンナノチューブは、理想的な一次元構造を有し、優れた力学機能、電気機能及び熱学機能などを有するので、材料科学、化学、物理などの科学領域、例えば、フィールドエミッタ(field emitter)を応用した平面ディスプレイ、単一電子デバイス、(single−electron device)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)のプローブ、熱センサー、光センサー、フィルターなどに広くに応用されている。
【0003】
一般的に、例えば液晶表示装置、電界放出型表示装置、プラズマ表示装置、電子発光表示装置、真空蛍光ディスプレイ、陰極線管などの表示装置は。基板及び透明な導電構造体を有する電子素子を備えている。現在主流の方式では、前記電子素子はITO(Indium Tin Oxide)と呼ばれる透明導電性薄膜を利用している。
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ITO(Indium Tin Oxide)はスパッタリング法、イオンプレーティング、塗布法などの方法により成膜されるので、製造方法が複雑である。また、ITO薄膜は、機械的及び化学的性能が良好でなく、膜質の均一性が低いという欠点がある。また、ITO薄膜の光透過性が低いので、明るい環境で表示パネルに表示される画面が見にくくなる。従って、現在のタッチパネルは、正確性や応答性が低く、光透過性が低いという課題がある。
【0005】
前記課題を解決するために、正確性や応答性が向上し、光透過性が高い電子素子を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子素子基板と、該基板の表面に設置された透明な導電構造体と、を含む。前記透明な導電構造体は複数のカーボンナノチューブを含む。前記複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。
【0007】
前記複数のカーボンナノチューブは、端と端で接続されている。
【0008】
前記複数のカーボンナノチューブは、前記透明な導電構造体の表面に平行に配列し、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。
【0009】
前記透明な導電構造体において、隣接するカーボンナノチューブは相互に絡み合っている。
【0010】
前記透明な導電構造体は少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を含む。単一のカーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。
【0011】
前記透明な導電構造体が、複数のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、隣接するカーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交叉して設置されている。
【0012】
前記透明な導電構造体と電気的に接続された、少なくとも二つの電極を設置している。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比べると、本発明の電子素子は、次の優れた点がある。本発明の電子素子に利用するカーボンナノチューブは、良好な機械性及び強靱性、均一な導電性を有するので、本発明の電子素子は、優れた導電性及び耐久性がある。さらに、本発明の透明な導電構造体の製造方法は簡単である。従って、本発明の製造方法により、前記電子素子の大量生産が実現でき、前記電子素子のコストが低減することができる。さらに、本発明のカーボンナノチューブ構造体を利用することにより、前記電極及び透明な導電構造体の間の接触抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1及び図2を参照すると、本実施形態の電子素子20は、基板22と、透明な導電構造体24と、を含む。
【0016】
前記基板22は平板型又は曲面の構造体である。本実施形態において、前記基板22は平板型である。前記基板22はガラス、石英、ダイヤモンド、プラスチックのいずれか一種からなる。図2を参照すると、前記基板22は第一表面221及び該第一表面221に対向する第二表面222を有する。前記基板22の第一表面221に、透明な導電構造体24が設置されている。
【0017】
前記透明な導電構造体24の第一表面221に少なくとも二つの電極26を設置する。この代わりに、前記電極26を前記透明な導電構造体24に電気的に接続して、前記電極26を前記基板22及び前記透明な導電構造体24の間に設置することができる。本実施形態において、前記基板22はガラスからなる。前記電極26はストリップ形状に形成され、金属、導電樹脂、カーボンナノチューブ構造体などの導電材料からなる。前記電極26の製造方法は、噴射、電気堆積、無電解析出などのいずれか一種の方法である。さらに、前記電極26は、銀ペーストで前記透明な導電構造体24の表面に接着されることができる。
【0018】
前記透明な導電構造体24は、複数のカーボンナノチューブを含む。該複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記透明な導電構造体24の表面に平行に配列し、端と端で接続されている。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである場合、単一のカーボンナノチューブの直径はそれぞれ0.5nm〜50nm、1nm〜50nm、1.5nm〜50nmの範囲に設定される。
【0019】
前記透明な導電構造体24は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を含むことができる。単一の前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、均一的な厚さを有する。単一の前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列し、端と端で接続されている。
【0020】
前記透明な導電構造体24が二つ以上のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、前記複数のカーボンナノチューブ構造体を積み重ねて構成する。隣接するカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブはそれぞれ角度αで交叉して形成されることができる。ここで、該角度αは、0<α≦90°の条件を満たす。このような構成により、前記透明な導電構造体24の強度及び電気伝導率が高くなることができる。
【0021】
図3及び図4を参照すると、単一のカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で端と端で接続された複数のカーボンナノチューブセグメント143を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143において、カーボンナノチューブが相互に平行し、配向して配列されている。
【0022】
前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記カーボンナノチューブフィルムは隙間なく平行に並列されて、大寸法のカーボンナノチューブフィルムに形成されることができる。又は、前記数枚のカーボンナノチューブフィルムはそれぞれ同じ角度又は異なる角度で積み重ねて成ることができる。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ構造体は一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。前記カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブはそれぞれ前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行して配列されているので、前記カーボンナノチューブフィルムの光透過度が70%〜99%程度に達することができる。
【0023】
本実施形態の電子素子20の製造方法は、基板22を提供する第一ステップと、該基板22の第一表面221に透明な導電構造体24を設置する第二ステップと、前記透明な導電構造体24の同じ表面、又は対向する表面に電極を設置する第三ステップと、を含む。
【0024】
前記第二ステップにおいて、前記透明な導電構造体24の製造方法は、カーボンナノチューブアレイ、特に超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を提供する第一サブステップと、前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを形成する第二サブステップと、を含む。さらに、前記第一ステップ及び第二ステップを繰り返して、複数の前記カーボンナノチューブフィルムを形成した後、前記複数のカーボンナノチューブフィルムを角度αで積み重ねる工程により、多層のカーボンナノチューブ構造体からなる前記透明な導電構造体24を製造することができる。
【0025】
ITOフィルムの製造方法と比べると、本実施形態の製造方法に真空環境及び加熱工程が必要でなく、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブを引き出す工程により、カーボンナノチューブフィルムを製造することができる。従って、本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、コストが低く、製造効率が高く、環境安全性が高いという優れた点がある。
【0026】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1と比べると、次の点が異なる。本実施形態において、前記透明な導電構造体24における複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記透明な導電構造体24の表面に平行に配列し、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されていることができる。
【0027】
前記透明な導電構造体24は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を含むことができる。単一の前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、均一的な厚さを有する。単一の前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列し、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。
【0028】
前記透明な導電構造体24が二つ以上のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、前記複数のカーボンナノチューブ構造体を積み重ねて構成する。隣接するカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブはそれぞれ角度αで交叉して形成されることができる。ここで、該角度αは、0<α≦90°の条件を満たす。
【0029】
本実施形態の電子素子20の製造方法は実施形態1と比べて、透明な導電構造体24に利用したカーボンナノチューブ構造体を構成するカーボンナノチューブフィルムの製造方法が異なる。本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブアレイが成長された基板を提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブアレイをプレスしてカーボンナノチューブフィルムを形成する第二ステップと、を含む。前記第二ステップにおいて、平面を有する押し器具を利用する場合、前記基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブを押すことができる。ローラー形状を有する押し器具を利用する場合、所定の(同じ)又は異なる方向に沿って前記複数のカーボンナノチューブを押すことができる。
【0030】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態1と比べると、次の点が異なる。本実施形態において、前記透明な導電構造体24における複数のカーボンナノチューブは、分子間力で絡み合って、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに形成されている。前記透明な導電構造体24の厚さが1μm〜2mmであり、前記カーボンナノチューブフィルムの長さが100μm以上である。
【0031】
本実施形態の電子素子20の製造方法は実施形態1と比べて、透明な導電構造体24に利用したカーボンナノチューブ構造体を構成するカーボンナノチューブフィルムの製造方法が異なる。本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブ原料を提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブ原料を溶媒に浸漬して綿毛構造を形成させる第二ステップと、該綿毛構造のカーボンナノチューブをろ過して、カーボンナノチューブフィルムを形成させる第三ステップと、を含む。
【0032】
(実施形態4)
前記電子素子20を平板型表示装置、光電装置、タッチパネル、熱放射素子(例えば、ヒーター)、電界発光表示装置、電磁波(Electromagnetic Interference,EMI)シールドに利用するために、フォトエッチング又はレーザーエッチングの方法により前記透明な導電構造体24を所定のパターンに加工して形成することができる。
【0033】
図5を参照すると、前記電子素子をタッチパネル(図示せず)に利用する場合、前記タッチパネルは前記電子素子の以外、透明な保護層28と、遮蔽層25と、を含む。前記遮蔽層25は前記基板の第二表面22に設置されている。前記透明な保護層28及び前記電極26は、前記透明な保護層24の、前記基板22に面する表面とは反対側の表面に設置されている。
【0034】
前記タッチパネルを利用したディスプレイ(図示せず)の作動方式について説明する。前記電極26に例えば5Vの電圧を印加する場合、前記タッチパネルの透明な導電構造体24に微弱な電流が流れて、等電位面を形成する。使用者はディスプレイに表示された情報を読みながら、指で前記ディスプレイの表面に設置された前記タッチパネルを押す。この時、前記指が触れる位置で、前記タッチパネルの隅に設置される電極26から流れる電流が前記指から人体に流れて、電荷量が変化する。それぞれの前記電極26からの電流の比率を計算することにより、前記触れた位置を測定することができる。この測定データを中央処理装置(図示せず)に伝送する。前記中央処理装置は前記測定データを接収して処理した後、表示制御素子(図示せず)へ前記測定データを伝送する。これによって、前記ディスプレイにおける所定の場所に、必要な情報を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の電子素子の模式図である。
【図2】本発明の実施形態の電子素子の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の電子素子に利用したカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】本発明の実施形態のカーボンナノチューブセグメントを示す図である。
【図5】本発明の実施形態の電子素子を利用したタッチパネルを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
143 カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
20 電子素子
22 基板
221 第一表面
222 第二表面
24 透明な導電構造体
26 電極
28 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の表面に設置された透明な導電構造体と、を含み、
前記透明な導電構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、
前記複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続されていることを特徴とする電子素子。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブが、端と端で接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
前記複数のカーボンナノチューブが、前記透明な導電構造体の表面に平行に配列し、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子素子。
【請求項4】
前記透明な導電構造体において、隣接するカーボンナノチューブが相互に絡み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の電子素子。
【請求項5】
前記透明な導電構造体が少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を含み、
単一のカーボンナノチューブ構造体が、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子素子。
【請求項6】
前記透明な導電構造体が、複数のカーボンナノチューブ構造体を含み、
隣接するカーボンナノチューブ構造体のカーボンナノチューブが、それぞれ0°〜90°の角度で交叉して設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子素子。
【請求項7】
前記透明な導電構造体と電気的に接続された、少なくとも二つの電極を設置していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−146898(P2009−146898A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317354(P2008−317354)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】