電子装置およびその製造方法
【課題】電子部品が実装されたセラミック基板と金属板とを接着剤で接着し、金属板の非接着面を露出しつつ、これらをモールド樹脂で封止した電子装置において、接着剤としてエポキシ樹脂系を使用した場合における温度変化時に発生する熱応力を低減する。
【解決手段】1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12に、それぞれ、電子部品40を実装し、金属板21、22を接着する。また、複数の個片となる領域11、12同士をフレキシブル基板50で電気的に接続しておく。その後、成形工程において、型101、102の内部で1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割した後、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12を、互いに電気的に接続されている状態で、モールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体を成形する。
【解決手段】1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12に、それぞれ、電子部品40を実装し、金属板21、22を接着する。また、複数の個片となる領域11、12同士をフレキシブル基板50で電気的に接続しておく。その後、成形工程において、型101、102の内部で1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割した後、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12を、互いに電気的に接続されている状態で、モールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体を成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装したセラミック基板の片面側をモールド樹脂で封止した(ハーフモールド)構造の電子装置においては、セラミック基板のみを用いて樹脂成形すると、型締め時に直接印加される力により、基板割れ・クラックが発生するため、セラミック基板の裏面に金属板を接着する構造が一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。この金属板は、セラミック基板に実装した電子部品からの発熱を外部に放出する放熱板の役割も兼ねている。
【0003】
また、セラミック基板と金属板の接着には、モールド樹脂成形時の温度、成形後の構造体の市場環境(温度サイクル、湿度環境)などに耐えられる材料としてシリコーン系やエポキシ樹脂系などの接着剤が実際に使用されていた。
【0004】
そして、近年の高機能化に伴い、搭載する電子部品点数の増加により、セラミック基板が大型化する傾向にある。基板が大型化すればするほど、金属板との熱膨張係数差から、基板−金属板の反り量が大きくなることから、この反りを抑えるために、接着剤としては、より柔らかいシリコーン系接着剤を選択するのが一般的となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、シリコーン系接着剤を使用する場合、その硬化過程で発生する低分子シロキサン成分などのヒュームがセラミック基板の実装面に付着することによって、基板-モールド樹脂間の初期密着が阻害され、初期(樹脂成形時)および電子装置の市場環境(使用時)での温度サイクル時に界面剥離が生じるという問題があった。
【0006】
従来では、この問題の解決策として、接着剤の表面を硬化前に覆うことで、セラミック基板実装面のヒューム汚染を防止するなどの様々な工夫が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−64870号公報
【特許文献2】特開2001−148392号公報
【特許文献3】特開2008−171925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本発明者は、セラミック基板と金属板とを接着する接着剤として、上述のヒューム汚染が避けられないシリコーン系の使用を止め、エポキシ樹脂系の使用での成立性を検討した。
【0009】
その結果、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤をそれぞれ用いて、セラミック基板と金属板とを接着した接着構造体の温度変化時に発生する反り量を測定したところ、エポキシ樹脂系接着剤を用いた接着構造体は、シリコーン系接着剤を用いた接着構造体の数倍の反り量が発生した。この反り量は、実装される電子部品の点数が多い大型のセラミック基板において、格段に大きなものとなる。
【0010】
このため、電子部品が実装されたセラミック基板と金属板とをエポキシ樹脂系接着剤で接着し、金属板の非接着面を露出しつつ、これらをモールド樹脂で封止した電子装置では、モールド樹脂の成形時や電子装置の市場環境での温度変化時に、熱膨張係数差による大きな熱応力が発生することが推測され、セラミック基板−モールド樹脂界面の剥離やクラックの発生するリスクが考えられる。セラミック基板−モールド樹脂界面の剥離が進展すると、電子部品の電気接続が切断される等の問題が予測される。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、電子部品が実装されたセラミック基板と金属板とを接着剤で接着し、金属板の非接着面を露出しつつ、これらをモールド樹脂で封止した電子装置において、エポキシ樹脂系の接着剤を使用した場合における温度変化時に発生する熱応力を低減できる電子装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の個片に分割するための分割部(13)を有する1つのセラミック基板(10)を用意し、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)に対して、複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに、電子部品(40)を実装する実装工程と、
1つのセラミック基板(10)の他面(10b)に対して、複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに分けて、金属板(21、22)をエポキシ樹脂系の接着剤(60)で接着する接着工程と、
電子部品(40)が実装され、金属板(21、22)が接着された1つのセラミック基板(10)を、成形用の型(101、102)の内部に配置し、型(101、102)の内部にモールド樹脂(30)を流入させることにより、モールド樹脂(30)を成形する成形工程とを有し、
成形工程では、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入前、もしくは、流入中に、型(101、102)の内部で1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割し、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)を、互いに電気的に接続されている状態で、モールド樹脂(30)で封止して1つの樹脂成形体を成形することを特徴としている。
【0013】
ここで、セラミック基板の面積が小さいほど、温度変化時に発生する熱応力は小さくなる。したがって、本発明によれば、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板を複数の個片に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板(本発明における複数の個片に分割される前のセラミック基板に相当)を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、成形用の型の内部で1つのセラミック基板を複数の個片に分割することから、電子部品の実装工程や金属板の接着工程を、複数の個片に分割される前のセラミック基板に対して一括で簡便に行うことができる。
【0015】
このように、本発明は、積極的に、セラミック基板を割るものであるのに対して、上記特許文献1に記載の発明は、セラミック基板の割れを防止するものである点で、両発明は大きく相違している。
【0016】
また、本発明において、複数の個片に分割されたセラミック基板を互いに電気的に接続されている状態とするためには、例えば、成形工程の前に、変形可能な接続部材を用いて、1つのセラミック基板のうち複数の個片となる領域同士を電気的に接続する工程を行えば良い。
【0017】
また、型の内部でセラミック基板を分割する方法としては、例えば、請求項2に記載のように、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入前に、1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板(10)を複数の個片に分割する方法が採用可能である。
【0018】
より具体的には、請求項3、4に記載の発明を採用することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、接着工程で、複数の個片となる領域(11、12)に1つずつ金属板(21、22)を接着するとともに、金属板(21、22)とセラミック基板(10)との間隔が、分割部(13)に近い側が分割部(13)に遠い側よりも大きく、もしくは、小さくなるように、分割部(13)を挟んで配置された2つの金属板(21、22)の両方を1つのセラミック基板(10)に対して傾斜させて接着し、
成形工程で、1つのセラミック基板(10)に対して傾斜して接着された金属板(21、22)の非接着面(21b、22b)を、型(102)の平坦な内面(102a)に接触させるように、1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつけることにより、1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴としている。
【0020】
このように、金属板を傾斜させて接着すれば、1つのセラミック基板を型に押さえつけるだけで、1つのセラミック基板に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板を複数の個片に分割できる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、成形工程で、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)のうち分割部(13)から離れた部分に当接する一面側当接部(111、112)と、1つのセラミック基板(10)の他面(10b)のうち分割部(13)に当接する他面側当接部(113、114)が設けられた型(101、102)を用い、
他面側当接部(113、114)が1つのセラミック基板(10)の分割部(13)を支持しつつ、一面側当接部(111、112)によって1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつけることにより、1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴としている。
【0022】
このような型を用いれば、1つのセラミック基板を押さえつけた際に、1つのセラミック基板に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板を複数の個片に分割できる。
【0023】
また、型の内部でセラミック基板を分割する他の方法として、例えば、請求項5に記載のように、型(101、102)の内部にモールド樹脂(30)を流入させる際に、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)のうち分割部(13)に対して、1つのセラミック基板(10)の他の部位よりも先に、モールド樹脂(30)を到達させることにより、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入中に、モールド樹脂(30)の流れを利用して、1つのセラミック基板(10)を複数の個片に分割する方法も採用可能である。
【0024】
請求項6に記載の発明では、一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、セラミック基板(11、12)の他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、金属板(21、22)の接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、電子部品(40)、セラミック基板(11、12)および金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置において、
接着剤(60)は、エポキシ樹脂系の接着剤であり、
セラミック基板は、複数の個片(11、12)に分割されており、
金属板(21、22)は、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)のそれぞれに分かれて接着されており、
複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、互いに電気的に接続されているとともに、1つの樹脂成形体をなすモールド樹脂(30)で封止されていることを特徴としている。
【0025】
ここで、セラミック基板の面積が小さいほど、温度変化時に発生する熱応力は小さくなる。したがって、本発明によれば、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板を複数の個片に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板(本発明における複数の個片に分割される前のセラミック基板に相当)を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0026】
請求項6に記載の発明においては、請求項7に記載の発明のように、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、変形可能な接続部材(50)によって、互いに電気的に接続されている構成を採用できる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態における電子装置の断面図である。
【図2】図1の電子装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】図2に続く製造工程を示す断面図である。
【図4】図2(a)中の分割部13の例を示す断面図である。
【図5】第2実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】第3実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図7】第4実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図8】第5実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における電子装置1の概略断面図を示す。
【0031】
電子装置1は、セラミック基板11、12と、金属板21、22と、モールド樹脂30とを備えている。
【0032】
セラミック基板11、12は、回路面である一面11a、12aとその反対側の他面11b、12bとを有しており、一面11a、12aに複数の電子部品40が実装されている。電子部品40は、特に限定されるものではなく、例えば、ICチップ、抵抗器、コイル等が挙げられる。
【0033】
セラミック基板11、12は、複数の個片(本実施形態では2つ)に分割されており、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12は、フレキシブル基板50によって、互いに電気的に接続されている。フレキシブル基板50は、熱可塑性樹脂で形成され、柔軟性を有する配線基板である。
【0034】
金属板21、22は、セラミック基板11、12の他面11b、12bに接着剤60を介して接着されている。金属板21、22は、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12のそれぞれに分かれて接着されている。本実施形態では、1つの金属板が分割された1つのセラミック基板に接着されており、1つの金属板は2つ以上のセラミック基板に跨って接着されていない。
【0035】
本実施形態の接着剤60は、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤、すなわち、エポキシ樹脂系の接着剤である。エポキシ樹脂系の接着剤としては、一般的なものが採用可能である。
【0036】
モールド樹脂30は、金属板21、22の接着剤60が接着された面21a、22aと反対側の非接着面21b、22bを露出しつつ、複数の電子部品40、セラミック基板11、12および金属板21、22を封止している。モールド樹脂30は、1つの樹脂成形体であり、この1つの樹脂成形体によって、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12が封止されている。
【0037】
なお、電子装置1は、図示していないが、セラミック基板11、12と電気的に接続されたリードフレームを備えている。
【0038】
次に、図1に示される構造の電子装置1の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)、図3に電子装置の製造工程を示す。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、1つの大型セラミック基板10を用意し、このセラミック基板10の一面10aに電子部品40を実装する実装工程を行う。
【0040】
用意するセラミック基板10は、基板を分割する位置に、複数の個片11、12に分割するための分割部13が予め形成されたものである。ここで、図4(a)〜(c)に分割部13の例を示す。セラミック基板10の製造段階において、分割部13として、例えば、図4(a)に示す分割溝13aや、図4(b)に示すザグリ13bを、セラミック基板10の一面10aと他面10bの両面に、予め形成しておく。分割溝13aやザグリ13bが形成された箇所は、他の部位よりも薄肉となるので、分割溝13aやザグリ13bが形成された箇所で分割され易くなる。
【0041】
このように、分割部13を予め設けておくことで、図4(a)、(b)中の波線で示す所望位置にて、1つのセラミック基板10を分割することができる。なお、図4(a)、(b)では、分割溝13aやザグリ13bを、セラミック基板10の一面10aと他面10bの両面に形成したが、片面に形成しても良い。また、図4(c)に示すように、一定の幅を切り落とすように、複数の分割溝13aを所定間隔で形成しても良い。
【0042】
そして、このようなセラミック基板10における複数の個片となる領域11、12のそれぞれに、電子部品40を実装する。例えば、電子部品40をはんだやAgペースト等の導電性接着剤でセラミック基板10に接着し、AlやAu等の金属ワイヤにて電子部品40とセラミック基板10とをボンディングする。
【0043】
続いて、図2(b)に示すように、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12同士を電気的に接続する工程を行う。具体的には、分割される基板11、12間がフレキシブル基板50でつながるように、1つのセラミック基板10の他面10bにフレキシブル基板50を熱圧着し、分割後の基板11、12間の電気的接続を確保する。このとき、フレキシブル基板50がたわみを有する状態とすることで、基板分割時の影響を受けないようにすることができる。なお、ここでは、フレキシブル基板50をセラミック基板10の他面10bに接続したが、セラミック基板10の一面10aに接続しても良い。
【0044】
続いて、図2(c)に示すように、1つのセラミック基板10の他面10bに、金属板21、22をエポキシ樹脂系の接着剤60で接着する接着工程を行う。
【0045】
このとき、複数(本実施形態では2つ)の金属板21、22を使用し、1つのセラミック基板10の他面10bに対して、複数の個片となる領域11b、12bのそれぞれに分けて、複数の金属板21、22を接着する。具体的には、1つの金属板21、22は、1つのセラミック基板10を分割した後の個片11、12に対応するサイズに作製されたものであり、1つの金属板21、22をセラミック基板10の分割後に1つの個片となる領域11、12に接着する。
【0046】
また、この接着工程では、図2(c)に示すように、接着剤60の厚みに勾配をつける。すなわち、金属板21、22とセラミック基板10との間隔が、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも大きくなるように、分割部13を挟んで配置された2つの金属板21、22の両方を1つのセラミック基板10に対して傾斜させて接着する。
【0047】
また、この接着工程では、後述するセラミック基板10の分割の際に、より分割が容易にできるように、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13の近傍を除く位置に接着剤60、金属板21、22を配置し、分割部13の近傍には接着剤60、金属板21、22を配置しないことが望ましい。
【0048】
続いて、図3(a)〜(c)に示すように、モールド樹脂30を成形する成形工程を行う。
【0049】
具体的には、図3(a)に示すように、図2(c)に示す実装構造体を成形機、すなわち、上下金型101、102の内部にセットする。このとき、セラミック基板10の一面10a側であって、分割部13を挟んだ両端側に基板押さえピン111、112が配置される。基板押さえピン111、112は、1つのセラミック基板10の一面10aのうち分割部13から離れた部分に当接する一面側当接部である。
【0050】
そして、図3(a)、(b)に示すように、基板押さえピン111、112により、1つのセラミック基板10に対して傾斜して接着された金属板21、22の非接着面21b、22bを、下金型102の平坦な内面102aに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつける。この押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を複数の個片、本実施形態では2つの個片11、12に分割する。
【0051】
その後、図3(c)に示すように、金属板21、22の非接着面21b、22bが下金型102の平坦な内面102aに接触した状態で、モールド樹脂30を金型101、102内に流入させることにより、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12をモールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体30を成形する。このようにして、図1に示される構造の電子装置1が製造される。
【0052】
次に、本実施形態の主な特徴を説明する。
【0053】
本実施形態では、セラミック基板10と金属板21、22とを接着する接着剤60として、シリコーン系の使用を止め、エポキシ樹脂系を使用するので、低分子シロキサン成分などのヒュームがセラミック基板の実装面に付着することによる上記した問題を回避できる。
【0054】
しかし、接着剤をシリコーン系からエポキシ樹脂系に変更した場合では、セラミック基板と金属板の接着構造体の温度変化時に発生する反り量が大きくなり、大型のセラミック基板を用いる場合においては、この反り量が格段に大きくなってしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、成形工程において、金型101、102の内部へのモールド樹脂30の流入前に、金型101、102の内部で1つのセラミック基板10を複数の個片に分割した後、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12を、モールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体を成形している。
【0056】
セラミック基板が小型、すなわち、セラミック基板の面積が小さければ、セラミック基板と金属板の接着構造体の温度変化時に発生する反り量が小さくなる。したがって、本実施形態によれば、1つの樹脂成形体30内に1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体30内に1つの大型のセラミック基板を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0057】
さらに、本実施形態では、成形工程前に、フレキシブル基板50によって、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12同士を電気的に接続した状態とし、成形工程において、成形用の金型101、102の内部で、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割している。
【0058】
ここで、本実施形態とは異なり、図1中のセラミック基板11、12に相当する大きさの小型のセラミック基板を複数用意し、小型のセラミック基板のそれぞれに電子部品40を実装するとともに金属板21、22を接着した後、これらの接着構造体同士を電気的に接続した状態で、成形工程を行うことによっても、図1に示すような構造の電子装置を製造できる。
【0059】
ただし、本実施形態のように、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12のそれぞれに、電子部品40を実装するとともに金属板21、22を接着するようにすれば、電子部品40の実装工程や金属板21、22の接着工程を、複数の個片11、12に分割される前のセラミック基板10に対して一括で簡便に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態とは異なり、成形工程の前に、電子部品40が実装されるとともに金属板21、22が接着された1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割した後、金型101、102の内部に配置して、成形工程を行うことによっても、図1に示すような構造の電子装置を製造できる。
【0061】
ただし、本実施形態のように、金型101、102の内部で、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割すれば、複数の個片に分割した状態のセラミック基板を金型の内部に配置する場合と比較して、金型101、102の内部へのセラミック基板の設置が容易となる。
【0062】
(第2実施形態)
図5(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図5(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図5(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0063】
本実施形態では、接着工程において、接着剤60の厚みに勾配をつけず、金属板21、22とセラミック基板10との間隔を均等にする。すなわち、金属板21、22とセラミック基板10とを平行にする。
【0064】
また、図5(a)に示すように、成形工程において、実装構造体を上下金型101、102の内部にセットしたときに、セラミック基板10の一面10aのうち分割部13を挟んだ両端側に当接する位置に基板押さえピン111、112が配置され、セラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する位置に基板押さえピン113が配置されるようにする。他面10b側の基板押さえピン113は、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する他面側当接部である。なお、これらの基板押さえピン111〜113は、上下金型101、102と別体のものである。
【0065】
そして、基板押さえピン111〜113によって、1つのセラミック基板10を押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を複数の個片、本実施形態では2つの個片11、12に分割する。具体的には、セラミック基板10の他面10b側で基板押さえピン113が分割部13を支持しつつ、基板押さえピン111、112が1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつけることにより、1つのセラミック基板10を分割する。
【0066】
このような型を用いれば、1つのセラミック基板10を押さえつけた際に、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0067】
(第3実施形態)
図6(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図6(a)、(b)は、図5(a)、(b)に対応する図である。以下では、第2実施形態に対する変更点を説明する。
【0068】
本実施形態では、図6(a)に示すように、成形工程において、基板押さえピン113の代わりに、突起部114が設けられた下型102を用いる。下型102と一体となっており、下型102の一部である。この突起部114は、図2(c)に示す実装構造体を上下金型101、102の内部にセットしたときに、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する他面側当接部である。
【0069】
本実施形態においても、基板押さえピン111、112によってセラミック基板10を一面10a側から下型102に押さえつけた際に、セラミック基板10の他面10b側で、下型102の突起部114が分割部13を支持した状態となり、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0070】
(第4実施形態)
図7(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図7(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図7(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0071】
本実施形態では、接着工程において、接着剤60の厚みに勾配をつけず、金属板21、22とセラミック基板10との間隔を均等にする。
【0072】
また、図7(a)に示すように、成形工程において、内面に勾配をつけた下金型102を用いている。具体的には、下金型102の内面は、断面が山形状であり、頂部102bと、頂部102bを挟んだ両側に位置する2つの斜面102c、102dとを有している。頂部102bは、上下金型101、102の内部にセラミック基板10を配置したときに、セラミック基板10の分割部13に対向する位置にあり、2つの斜面102c、102dは、分割部13に対向する部位を上方とし、分割部13から離れた部位を下方として、傾斜している。
【0073】
そして、図7(a)、(b)に示すように、セラミック基板10の一面10aに配置された基板押さえピン111、112により、金属板21、22を下金型102の斜面102c、102dに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつける。この押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を2つの個片11、12に分割することもできる。
【0074】
(実5実施形態)
図8(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図8(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図8(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0075】
本実施形態では、図8(a)、(b)に示すように、成形工程における上下金型101、102の内部へのモールド樹脂30の流入中に、このモールド樹脂30の流れを利用して、1つのセラミック基板10を2つの個片11、12に分割する。
【0076】
具体的には、金型101、102の内部にモールド樹脂を流入させるためのゲート103を、上金型101のうちセラミック基板10の分割部13に対向する位置に設ける。これにより、金型101、102の内部にモールド樹脂30を流入させる際に、セラミック基板10の一面10aの分割部13に対して、セラミック基板10の他の部位よりも先に、モールド樹脂30を到達させることができる。
【0077】
このように成形することで、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0078】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、図2(c)に示すように、接着工程で、金属板21、22とセラミック基板10との間隔が、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも大きくなるように(逆ハの字状に)、2つの金属板21、22をセラミック基板10に対して傾斜させて接着したが、これとは反対に、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも小さくなるように(ハの字状に)、2つの金属板21、22をセラミック基板10に対して傾斜させて接着しても良い。
【0079】
この場合においても、成形工程において、金属板21、22の非接着面21b、22bを、下金型102の平坦な内面102aに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつけることにより、1つのセラミック基板10を分割することができる。
【0080】
(2)上述の各実施形態では、図2(a)〜(c)に示すように、実装工程、接続工程、金属板の接着工程を順に行ったが、これらの順番を変更しても良い。例えば、実装工程の後に、金属板の接着工程、接続工程を順に行っても良い。また、セラミック基板10の一面10a側にフレキシブル基板50を接続する場合であれば、接続工程、実装工程、金属板の接着工程の順に行っても良い。
【0081】
(3)上述の各実施形態では、分割後の1片のセラミック基板11に対して、1つの金属板21を接着したが、1つの金属板が2つ以上のセラミック基板に跨って接着されていなければ、分割後の1片のセラミック基板11に対して複数の金属板を接着しても良い。
【0082】
(4)上述の各実施形態では、分割されたセラミック基板11、12同士の電気的接続を、フレキシブル基板50を用いて行ったが、柔軟性を有し変形可能なものであれば、他の接続部材を用いて行っても良い。ただし、接続の容易さ等の観点より、別個の複数本の配線を用いるよりも、複数の配線が一体となったフレキシブル基板50を用いることが好ましい。
【0083】
(5)上述の各実施形態では、1つのセラミック基板10を2つに分割していたが、複数であれば、4つ等の他の数に分割しても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 電子装置
10 セラミック基板
10a セラミック基板の一面
10b セラミック基板の他面
11、12 複数の個片に分割されたセラミック基板
11a、12a セラミック基板の一面
11b、12b セラミック基板の他面
13 分割部
21、22 金属板
30 モールド樹脂
40 電子部品
60 エポキシ樹脂系の接着剤
101、102 金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装したセラミック基板の片面側をモールド樹脂で封止した(ハーフモールド)構造の電子装置においては、セラミック基板のみを用いて樹脂成形すると、型締め時に直接印加される力により、基板割れ・クラックが発生するため、セラミック基板の裏面に金属板を接着する構造が一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。この金属板は、セラミック基板に実装した電子部品からの発熱を外部に放出する放熱板の役割も兼ねている。
【0003】
また、セラミック基板と金属板の接着には、モールド樹脂成形時の温度、成形後の構造体の市場環境(温度サイクル、湿度環境)などに耐えられる材料としてシリコーン系やエポキシ樹脂系などの接着剤が実際に使用されていた。
【0004】
そして、近年の高機能化に伴い、搭載する電子部品点数の増加により、セラミック基板が大型化する傾向にある。基板が大型化すればするほど、金属板との熱膨張係数差から、基板−金属板の反り量が大きくなることから、この反りを抑えるために、接着剤としては、より柔らかいシリコーン系接着剤を選択するのが一般的となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、シリコーン系接着剤を使用する場合、その硬化過程で発生する低分子シロキサン成分などのヒュームがセラミック基板の実装面に付着することによって、基板-モールド樹脂間の初期密着が阻害され、初期(樹脂成形時)および電子装置の市場環境(使用時)での温度サイクル時に界面剥離が生じるという問題があった。
【0006】
従来では、この問題の解決策として、接着剤の表面を硬化前に覆うことで、セラミック基板実装面のヒューム汚染を防止するなどの様々な工夫が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−64870号公報
【特許文献2】特開2001−148392号公報
【特許文献3】特開2008−171925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本発明者は、セラミック基板と金属板とを接着する接着剤として、上述のヒューム汚染が避けられないシリコーン系の使用を止め、エポキシ樹脂系の使用での成立性を検討した。
【0009】
その結果、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤をそれぞれ用いて、セラミック基板と金属板とを接着した接着構造体の温度変化時に発生する反り量を測定したところ、エポキシ樹脂系接着剤を用いた接着構造体は、シリコーン系接着剤を用いた接着構造体の数倍の反り量が発生した。この反り量は、実装される電子部品の点数が多い大型のセラミック基板において、格段に大きなものとなる。
【0010】
このため、電子部品が実装されたセラミック基板と金属板とをエポキシ樹脂系接着剤で接着し、金属板の非接着面を露出しつつ、これらをモールド樹脂で封止した電子装置では、モールド樹脂の成形時や電子装置の市場環境での温度変化時に、熱膨張係数差による大きな熱応力が発生することが推測され、セラミック基板−モールド樹脂界面の剥離やクラックの発生するリスクが考えられる。セラミック基板−モールド樹脂界面の剥離が進展すると、電子部品の電気接続が切断される等の問題が予測される。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、電子部品が実装されたセラミック基板と金属板とを接着剤で接着し、金属板の非接着面を露出しつつ、これらをモールド樹脂で封止した電子装置において、エポキシ樹脂系の接着剤を使用した場合における温度変化時に発生する熱応力を低減できる電子装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の個片に分割するための分割部(13)を有する1つのセラミック基板(10)を用意し、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)に対して、複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに、電子部品(40)を実装する実装工程と、
1つのセラミック基板(10)の他面(10b)に対して、複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに分けて、金属板(21、22)をエポキシ樹脂系の接着剤(60)で接着する接着工程と、
電子部品(40)が実装され、金属板(21、22)が接着された1つのセラミック基板(10)を、成形用の型(101、102)の内部に配置し、型(101、102)の内部にモールド樹脂(30)を流入させることにより、モールド樹脂(30)を成形する成形工程とを有し、
成形工程では、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入前、もしくは、流入中に、型(101、102)の内部で1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割し、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)を、互いに電気的に接続されている状態で、モールド樹脂(30)で封止して1つの樹脂成形体を成形することを特徴としている。
【0013】
ここで、セラミック基板の面積が小さいほど、温度変化時に発生する熱応力は小さくなる。したがって、本発明によれば、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板を複数の個片に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板(本発明における複数の個片に分割される前のセラミック基板に相当)を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、成形用の型の内部で1つのセラミック基板を複数の個片に分割することから、電子部品の実装工程や金属板の接着工程を、複数の個片に分割される前のセラミック基板に対して一括で簡便に行うことができる。
【0015】
このように、本発明は、積極的に、セラミック基板を割るものであるのに対して、上記特許文献1に記載の発明は、セラミック基板の割れを防止するものである点で、両発明は大きく相違している。
【0016】
また、本発明において、複数の個片に分割されたセラミック基板を互いに電気的に接続されている状態とするためには、例えば、成形工程の前に、変形可能な接続部材を用いて、1つのセラミック基板のうち複数の個片となる領域同士を電気的に接続する工程を行えば良い。
【0017】
また、型の内部でセラミック基板を分割する方法としては、例えば、請求項2に記載のように、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入前に、1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板(10)を複数の個片に分割する方法が採用可能である。
【0018】
より具体的には、請求項3、4に記載の発明を採用することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、接着工程で、複数の個片となる領域(11、12)に1つずつ金属板(21、22)を接着するとともに、金属板(21、22)とセラミック基板(10)との間隔が、分割部(13)に近い側が分割部(13)に遠い側よりも大きく、もしくは、小さくなるように、分割部(13)を挟んで配置された2つの金属板(21、22)の両方を1つのセラミック基板(10)に対して傾斜させて接着し、
成形工程で、1つのセラミック基板(10)に対して傾斜して接着された金属板(21、22)の非接着面(21b、22b)を、型(102)の平坦な内面(102a)に接触させるように、1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつけることにより、1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴としている。
【0020】
このように、金属板を傾斜させて接着すれば、1つのセラミック基板を型に押さえつけるだけで、1つのセラミック基板に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板を複数の個片に分割できる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、成形工程で、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)のうち分割部(13)から離れた部分に当接する一面側当接部(111、112)と、1つのセラミック基板(10)の他面(10b)のうち分割部(13)に当接する他面側当接部(113、114)が設けられた型(101、102)を用い、
他面側当接部(113、114)が1つのセラミック基板(10)の分割部(13)を支持しつつ、一面側当接部(111、112)によって1つのセラミック基板(10)を一面(10a)側から型(102)に押さえつけることにより、1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴としている。
【0022】
このような型を用いれば、1つのセラミック基板を押さえつけた際に、1つのセラミック基板に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板を複数の個片に分割できる。
【0023】
また、型の内部でセラミック基板を分割する他の方法として、例えば、請求項5に記載のように、型(101、102)の内部にモールド樹脂(30)を流入させる際に、1つのセラミック基板(10)の一面(10a)のうち分割部(13)に対して、1つのセラミック基板(10)の他の部位よりも先に、モールド樹脂(30)を到達させることにより、型(101、102)の内部へのモールド樹脂(30)の流入中に、モールド樹脂(30)の流れを利用して、1つのセラミック基板(10)を複数の個片に分割する方法も採用可能である。
【0024】
請求項6に記載の発明では、一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、セラミック基板(11、12)の他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、金属板(21、22)の接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、電子部品(40)、セラミック基板(11、12)および金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置において、
接着剤(60)は、エポキシ樹脂系の接着剤であり、
セラミック基板は、複数の個片(11、12)に分割されており、
金属板(21、22)は、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)のそれぞれに分かれて接着されており、
複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、互いに電気的に接続されているとともに、1つの樹脂成形体をなすモールド樹脂(30)で封止されていることを特徴としている。
【0025】
ここで、セラミック基板の面積が小さいほど、温度変化時に発生する熱応力は小さくなる。したがって、本発明によれば、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板を複数の個片に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体内に1つのセラミック基板(本発明における複数の個片に分割される前のセラミック基板に相当)を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0026】
請求項6に記載の発明においては、請求項7に記載の発明のように、複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、変形可能な接続部材(50)によって、互いに電気的に接続されている構成を採用できる。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態における電子装置の断面図である。
【図2】図1の電子装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】図2に続く製造工程を示す断面図である。
【図4】図2(a)中の分割部13の例を示す断面図である。
【図5】第2実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】第3実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図7】第4実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【図8】第5実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における電子装置1の概略断面図を示す。
【0031】
電子装置1は、セラミック基板11、12と、金属板21、22と、モールド樹脂30とを備えている。
【0032】
セラミック基板11、12は、回路面である一面11a、12aとその反対側の他面11b、12bとを有しており、一面11a、12aに複数の電子部品40が実装されている。電子部品40は、特に限定されるものではなく、例えば、ICチップ、抵抗器、コイル等が挙げられる。
【0033】
セラミック基板11、12は、複数の個片(本実施形態では2つ)に分割されており、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12は、フレキシブル基板50によって、互いに電気的に接続されている。フレキシブル基板50は、熱可塑性樹脂で形成され、柔軟性を有する配線基板である。
【0034】
金属板21、22は、セラミック基板11、12の他面11b、12bに接着剤60を介して接着されている。金属板21、22は、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12のそれぞれに分かれて接着されている。本実施形態では、1つの金属板が分割された1つのセラミック基板に接着されており、1つの金属板は2つ以上のセラミック基板に跨って接着されていない。
【0035】
本実施形態の接着剤60は、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤、すなわち、エポキシ樹脂系の接着剤である。エポキシ樹脂系の接着剤としては、一般的なものが採用可能である。
【0036】
モールド樹脂30は、金属板21、22の接着剤60が接着された面21a、22aと反対側の非接着面21b、22bを露出しつつ、複数の電子部品40、セラミック基板11、12および金属板21、22を封止している。モールド樹脂30は、1つの樹脂成形体であり、この1つの樹脂成形体によって、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12が封止されている。
【0037】
なお、電子装置1は、図示していないが、セラミック基板11、12と電気的に接続されたリードフレームを備えている。
【0038】
次に、図1に示される構造の電子装置1の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)、図3に電子装置の製造工程を示す。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、1つの大型セラミック基板10を用意し、このセラミック基板10の一面10aに電子部品40を実装する実装工程を行う。
【0040】
用意するセラミック基板10は、基板を分割する位置に、複数の個片11、12に分割するための分割部13が予め形成されたものである。ここで、図4(a)〜(c)に分割部13の例を示す。セラミック基板10の製造段階において、分割部13として、例えば、図4(a)に示す分割溝13aや、図4(b)に示すザグリ13bを、セラミック基板10の一面10aと他面10bの両面に、予め形成しておく。分割溝13aやザグリ13bが形成された箇所は、他の部位よりも薄肉となるので、分割溝13aやザグリ13bが形成された箇所で分割され易くなる。
【0041】
このように、分割部13を予め設けておくことで、図4(a)、(b)中の波線で示す所望位置にて、1つのセラミック基板10を分割することができる。なお、図4(a)、(b)では、分割溝13aやザグリ13bを、セラミック基板10の一面10aと他面10bの両面に形成したが、片面に形成しても良い。また、図4(c)に示すように、一定の幅を切り落とすように、複数の分割溝13aを所定間隔で形成しても良い。
【0042】
そして、このようなセラミック基板10における複数の個片となる領域11、12のそれぞれに、電子部品40を実装する。例えば、電子部品40をはんだやAgペースト等の導電性接着剤でセラミック基板10に接着し、AlやAu等の金属ワイヤにて電子部品40とセラミック基板10とをボンディングする。
【0043】
続いて、図2(b)に示すように、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12同士を電気的に接続する工程を行う。具体的には、分割される基板11、12間がフレキシブル基板50でつながるように、1つのセラミック基板10の他面10bにフレキシブル基板50を熱圧着し、分割後の基板11、12間の電気的接続を確保する。このとき、フレキシブル基板50がたわみを有する状態とすることで、基板分割時の影響を受けないようにすることができる。なお、ここでは、フレキシブル基板50をセラミック基板10の他面10bに接続したが、セラミック基板10の一面10aに接続しても良い。
【0044】
続いて、図2(c)に示すように、1つのセラミック基板10の他面10bに、金属板21、22をエポキシ樹脂系の接着剤60で接着する接着工程を行う。
【0045】
このとき、複数(本実施形態では2つ)の金属板21、22を使用し、1つのセラミック基板10の他面10bに対して、複数の個片となる領域11b、12bのそれぞれに分けて、複数の金属板21、22を接着する。具体的には、1つの金属板21、22は、1つのセラミック基板10を分割した後の個片11、12に対応するサイズに作製されたものであり、1つの金属板21、22をセラミック基板10の分割後に1つの個片となる領域11、12に接着する。
【0046】
また、この接着工程では、図2(c)に示すように、接着剤60の厚みに勾配をつける。すなわち、金属板21、22とセラミック基板10との間隔が、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも大きくなるように、分割部13を挟んで配置された2つの金属板21、22の両方を1つのセラミック基板10に対して傾斜させて接着する。
【0047】
また、この接着工程では、後述するセラミック基板10の分割の際に、より分割が容易にできるように、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13の近傍を除く位置に接着剤60、金属板21、22を配置し、分割部13の近傍には接着剤60、金属板21、22を配置しないことが望ましい。
【0048】
続いて、図3(a)〜(c)に示すように、モールド樹脂30を成形する成形工程を行う。
【0049】
具体的には、図3(a)に示すように、図2(c)に示す実装構造体を成形機、すなわち、上下金型101、102の内部にセットする。このとき、セラミック基板10の一面10a側であって、分割部13を挟んだ両端側に基板押さえピン111、112が配置される。基板押さえピン111、112は、1つのセラミック基板10の一面10aのうち分割部13から離れた部分に当接する一面側当接部である。
【0050】
そして、図3(a)、(b)に示すように、基板押さえピン111、112により、1つのセラミック基板10に対して傾斜して接着された金属板21、22の非接着面21b、22bを、下金型102の平坦な内面102aに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつける。この押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を複数の個片、本実施形態では2つの個片11、12に分割する。
【0051】
その後、図3(c)に示すように、金属板21、22の非接着面21b、22bが下金型102の平坦な内面102aに接触した状態で、モールド樹脂30を金型101、102内に流入させることにより、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12をモールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体30を成形する。このようにして、図1に示される構造の電子装置1が製造される。
【0052】
次に、本実施形態の主な特徴を説明する。
【0053】
本実施形態では、セラミック基板10と金属板21、22とを接着する接着剤60として、シリコーン系の使用を止め、エポキシ樹脂系を使用するので、低分子シロキサン成分などのヒュームがセラミック基板の実装面に付着することによる上記した問題を回避できる。
【0054】
しかし、接着剤をシリコーン系からエポキシ樹脂系に変更した場合では、セラミック基板と金属板の接着構造体の温度変化時に発生する反り量が大きくなり、大型のセラミック基板を用いる場合においては、この反り量が格段に大きくなってしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、成形工程において、金型101、102の内部へのモールド樹脂30の流入前に、金型101、102の内部で1つのセラミック基板10を複数の個片に分割した後、複数の個片に分割されたセラミック基板11、12を、モールド樹脂30で封止して1つの樹脂成形体を成形している。
【0056】
セラミック基板が小型、すなわち、セラミック基板の面積が小さければ、セラミック基板と金属板の接着構造体の温度変化時に発生する反り量が小さくなる。したがって、本実施形態によれば、1つの樹脂成形体30内に1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割して封止しているので、1つの樹脂成形体30内に1つの大型のセラミック基板を封止する場合と比較して、温度変化時に発生する熱応力を低減できる。
【0057】
さらに、本実施形態では、成形工程前に、フレキシブル基板50によって、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12同士を電気的に接続した状態とし、成形工程において、成形用の金型101、102の内部で、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割している。
【0058】
ここで、本実施形態とは異なり、図1中のセラミック基板11、12に相当する大きさの小型のセラミック基板を複数用意し、小型のセラミック基板のそれぞれに電子部品40を実装するとともに金属板21、22を接着した後、これらの接着構造体同士を電気的に接続した状態で、成形工程を行うことによっても、図1に示すような構造の電子装置を製造できる。
【0059】
ただし、本実施形態のように、1つのセラミック基板10のうち複数の個片となる領域11、12のそれぞれに、電子部品40を実装するとともに金属板21、22を接着するようにすれば、電子部品40の実装工程や金属板21、22の接着工程を、複数の個片11、12に分割される前のセラミック基板10に対して一括で簡便に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態とは異なり、成形工程の前に、電子部品40が実装されるとともに金属板21、22が接着された1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割した後、金型101、102の内部に配置して、成形工程を行うことによっても、図1に示すような構造の電子装置を製造できる。
【0061】
ただし、本実施形態のように、金型101、102の内部で、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割すれば、複数の個片に分割した状態のセラミック基板を金型の内部に配置する場合と比較して、金型101、102の内部へのセラミック基板の設置が容易となる。
【0062】
(第2実施形態)
図5(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図5(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図5(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0063】
本実施形態では、接着工程において、接着剤60の厚みに勾配をつけず、金属板21、22とセラミック基板10との間隔を均等にする。すなわち、金属板21、22とセラミック基板10とを平行にする。
【0064】
また、図5(a)に示すように、成形工程において、実装構造体を上下金型101、102の内部にセットしたときに、セラミック基板10の一面10aのうち分割部13を挟んだ両端側に当接する位置に基板押さえピン111、112が配置され、セラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する位置に基板押さえピン113が配置されるようにする。他面10b側の基板押さえピン113は、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する他面側当接部である。なお、これらの基板押さえピン111〜113は、上下金型101、102と別体のものである。
【0065】
そして、基板押さえピン111〜113によって、1つのセラミック基板10を押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を複数の個片、本実施形態では2つの個片11、12に分割する。具体的には、セラミック基板10の他面10b側で基板押さえピン113が分割部13を支持しつつ、基板押さえピン111、112が1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつけることにより、1つのセラミック基板10を分割する。
【0066】
このような型を用いれば、1つのセラミック基板10を押さえつけた際に、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0067】
(第3実施形態)
図6(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図6(a)、(b)は、図5(a)、(b)に対応する図である。以下では、第2実施形態に対する変更点を説明する。
【0068】
本実施形態では、図6(a)に示すように、成形工程において、基板押さえピン113の代わりに、突起部114が設けられた下型102を用いる。下型102と一体となっており、下型102の一部である。この突起部114は、図2(c)に示す実装構造体を上下金型101、102の内部にセットしたときに、1つのセラミック基板10の他面10bのうち分割部13に当接する他面側当接部である。
【0069】
本実施形態においても、基板押さえピン111、112によってセラミック基板10を一面10a側から下型102に押さえつけた際に、セラミック基板10の他面10b側で、下型102の突起部114が分割部13を支持した状態となり、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0070】
(第4実施形態)
図7(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図7(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図7(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0071】
本実施形態では、接着工程において、接着剤60の厚みに勾配をつけず、金属板21、22とセラミック基板10との間隔を均等にする。
【0072】
また、図7(a)に示すように、成形工程において、内面に勾配をつけた下金型102を用いている。具体的には、下金型102の内面は、断面が山形状であり、頂部102bと、頂部102bを挟んだ両側に位置する2つの斜面102c、102dとを有している。頂部102bは、上下金型101、102の内部にセラミック基板10を配置したときに、セラミック基板10の分割部13に対向する位置にあり、2つの斜面102c、102dは、分割部13に対向する部位を上方とし、分割部13から離れた部位を下方として、傾斜している。
【0073】
そして、図7(a)、(b)に示すように、セラミック基板10の一面10aに配置された基板押さえピン111、112により、金属板21、22を下金型102の斜面102c、102dに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつける。この押さえつける力を利用して、1つのセラミック基板10を2つの個片11、12に分割することもできる。
【0074】
(実5実施形態)
図8(a)、(b)に、本実施形態における電子装置の製造工程の一部を示す。図8(a)、(b)は、図3(a)、(c)に対応する図である。なお、図8(a)、(b)では、便宜上、図3(a)、(c)中の電子部品40、フレキシブル基板50を省略して示している。以下では、第1実施形態との相違点を説明する。
【0075】
本実施形態では、図8(a)、(b)に示すように、成形工程における上下金型101、102の内部へのモールド樹脂30の流入中に、このモールド樹脂30の流れを利用して、1つのセラミック基板10を2つの個片11、12に分割する。
【0076】
具体的には、金型101、102の内部にモールド樹脂を流入させるためのゲート103を、上金型101のうちセラミック基板10の分割部13に対向する位置に設ける。これにより、金型101、102の内部にモールド樹脂30を流入させる際に、セラミック基板10の一面10aの分割部13に対して、セラミック基板10の他の部位よりも先に、モールド樹脂30を到達させることができる。
【0077】
このように成形することで、1つのセラミック基板10に曲げ応力が働くので、容易に、1つのセラミック基板10を複数の個片11、12に分割できる。
【0078】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、図2(c)に示すように、接着工程で、金属板21、22とセラミック基板10との間隔が、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも大きくなるように(逆ハの字状に)、2つの金属板21、22をセラミック基板10に対して傾斜させて接着したが、これとは反対に、分割部13に近い側が分割部13に遠い側よりも小さくなるように(ハの字状に)、2つの金属板21、22をセラミック基板10に対して傾斜させて接着しても良い。
【0079】
この場合においても、成形工程において、金属板21、22の非接着面21b、22bを、下金型102の平坦な内面102aに接触させるように、1つのセラミック基板10を一面10a側から下金型102に押さえつけることにより、1つのセラミック基板10を分割することができる。
【0080】
(2)上述の各実施形態では、図2(a)〜(c)に示すように、実装工程、接続工程、金属板の接着工程を順に行ったが、これらの順番を変更しても良い。例えば、実装工程の後に、金属板の接着工程、接続工程を順に行っても良い。また、セラミック基板10の一面10a側にフレキシブル基板50を接続する場合であれば、接続工程、実装工程、金属板の接着工程の順に行っても良い。
【0081】
(3)上述の各実施形態では、分割後の1片のセラミック基板11に対して、1つの金属板21を接着したが、1つの金属板が2つ以上のセラミック基板に跨って接着されていなければ、分割後の1片のセラミック基板11に対して複数の金属板を接着しても良い。
【0082】
(4)上述の各実施形態では、分割されたセラミック基板11、12同士の電気的接続を、フレキシブル基板50を用いて行ったが、柔軟性を有し変形可能なものであれば、他の接続部材を用いて行っても良い。ただし、接続の容易さ等の観点より、別個の複数本の配線を用いるよりも、複数の配線が一体となったフレキシブル基板50を用いることが好ましい。
【0083】
(5)上述の各実施形態では、1つのセラミック基板10を2つに分割していたが、複数であれば、4つ等の他の数に分割しても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 電子装置
10 セラミック基板
10a セラミック基板の一面
10b セラミック基板の他面
11、12 複数の個片に分割されたセラミック基板
11a、12a セラミック基板の一面
11b、12b セラミック基板の他面
13 分割部
21、22 金属板
30 モールド樹脂
40 電子部品
60 エポキシ樹脂系の接着剤
101、102 金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、前記一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、
前記セラミック基板(11、12)の前記他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、
前記金属板(21、22)の前記接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、前記電子部品(40)、前記セラミック基板(11、12)および前記金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置の製造方法において、
複数の個片に分割するための分割部(13)を有する1つのセラミック基板(10)を用意し、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)に対して、前記複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに、前記電子部品(40)を実装する実装工程と、
前記1つのセラミック基板(10)の前記他面(10b)に対して、前記複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに分けて、前記金属板(21、22)をエポキシ樹脂系の前記接着剤(60)で接着する接着工程と、
前記電子部品(40)が実装され、前記金属板(21、22)が接着された前記1つのセラミック基板(10)を、成形用の型(101、102)の内部に配置し、前記型(101、102)の内部に前記モールド樹脂(30)を流入させることにより、前記モールド樹脂(30)を成形する成形工程とを有し、
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入前、もしくは、流入中に、前記型(101、102)の内部で前記1つのセラミック基板(10)を前記複数の個片(11、12)に分割し、前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)を、互いに電気的に接続されている状態で、前記モールド樹脂(30)で封止して1つの樹脂成形体を成形することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入前に、前記金属板(21、22)の前記非接着面(21b、22b)を前記型(102)の内面(102a、102c、102d)に接触させるように、前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつける力を利用して、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着工程では、前記複数の個片となる領域(11、12)に1つずつ前記金属板(21、22)を接着するとともに、前記金属板(21、22)と前記セラミック基板(10)との間隔が、前記分割部(13)に近い側が前記分割部(13)に遠い側よりも大きく、もしくは、小さくなるように、前記分割部(13)を挟んで配置された2つの前記金属板(21、22)の両方を前記1つのセラミック基板(10)に対して傾斜させて接着し、
前記成形工程では、前記1つのセラミック基板(10)に対して傾斜して接着された前記金属板(21、22)の前記非接着面(21b、22b)を、前記型(102)の平坦な内面(102a)に接触させるように、前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつけることにより、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程では、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)のうち前記分割部(13)から離れた部分に当接する一面側当接部(111、112)と、前記1つのセラミック基板(10)の前記他面(10b)のうち前記分割部(13)に当接する他面側当接部(113、114)が設けられた前記型(101、102)を用い、
前記他面側当接部(113、114)が前記1つのセラミック基板(10)の分割部(13)を支持しつつ、前記一面側当接部(111、112)によって前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつけることにより、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部に前記モールド樹脂(30)を流入させる際に、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)の前記分割部(13)に対して、前記1つのセラミック基板(10)の他の部位よりも先に、前記モールド樹脂(30)を到達させることにより、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入中に、前記モールド樹脂(30)の流れを利用して、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、前記一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、
前記セラミック基板(11、12)の前記他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、
前記金属板(21、22)の前記接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、前記電子部品(40)、前記セラミック基板(11、12)および前記金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置において、
前記接着剤(60)は、エポキシ樹脂系の接着剤であり、
前記セラミック基板は、複数の個片(11、12)に分割されており、
前記金属板(21、22)は、前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)のそれぞれに分かれて接着されており、
前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、互いに電気的に接続されているとともに、1つの樹脂成形体をなす前記モールド樹脂(30)で封止されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、変形可能な接続部材(50)によって、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【請求項1】
一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、前記一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、
前記セラミック基板(11、12)の前記他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、
前記金属板(21、22)の前記接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、前記電子部品(40)、前記セラミック基板(11、12)および前記金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置の製造方法において、
複数の個片に分割するための分割部(13)を有する1つのセラミック基板(10)を用意し、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)に対して、前記複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに、前記電子部品(40)を実装する実装工程と、
前記1つのセラミック基板(10)の前記他面(10b)に対して、前記複数の個片となる領域(11、12)のそれぞれに分けて、前記金属板(21、22)をエポキシ樹脂系の前記接着剤(60)で接着する接着工程と、
前記電子部品(40)が実装され、前記金属板(21、22)が接着された前記1つのセラミック基板(10)を、成形用の型(101、102)の内部に配置し、前記型(101、102)の内部に前記モールド樹脂(30)を流入させることにより、前記モールド樹脂(30)を成形する成形工程とを有し、
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入前、もしくは、流入中に、前記型(101、102)の内部で前記1つのセラミック基板(10)を前記複数の個片(11、12)に分割し、前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)を、互いに電気的に接続されている状態で、前記モールド樹脂(30)で封止して1つの樹脂成形体を成形することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入前に、前記金属板(21、22)の前記非接着面(21b、22b)を前記型(102)の内面(102a、102c、102d)に接触させるように、前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつける力を利用して、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着工程では、前記複数の個片となる領域(11、12)に1つずつ前記金属板(21、22)を接着するとともに、前記金属板(21、22)と前記セラミック基板(10)との間隔が、前記分割部(13)に近い側が前記分割部(13)に遠い側よりも大きく、もしくは、小さくなるように、前記分割部(13)を挟んで配置された2つの前記金属板(21、22)の両方を前記1つのセラミック基板(10)に対して傾斜させて接着し、
前記成形工程では、前記1つのセラミック基板(10)に対して傾斜して接着された前記金属板(21、22)の前記非接着面(21b、22b)を、前記型(102)の平坦な内面(102a)に接触させるように、前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつけることにより、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程では、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)のうち前記分割部(13)から離れた部分に当接する一面側当接部(111、112)と、前記1つのセラミック基板(10)の前記他面(10b)のうち前記分割部(13)に当接する他面側当接部(113、114)が設けられた前記型(101、102)を用い、
前記他面側当接部(113、114)が前記1つのセラミック基板(10)の分割部(13)を支持しつつ、前記一面側当接部(111、112)によって前記1つのセラミック基板(10)を前記一面(10a)側から前記型(102)に押さえつけることにより、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程では、前記型(101、102)の内部に前記モールド樹脂(30)を流入させる際に、前記1つのセラミック基板(10)の前記一面(10a)の前記分割部(13)に対して、前記1つのセラミック基板(10)の他の部位よりも先に、前記モールド樹脂(30)を到達させることにより、前記型(101、102)の内部への前記モールド樹脂(30)の流入中に、前記モールド樹脂(30)の流れを利用して、前記1つのセラミック基板(10)を複数の個片(11、12)に分割することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
一面(11a、12a)とその反対側の他面(11b、12b)を有し、前記一面(11a、12a)に複数の電子部品(40)が実装されたセラミック基板(11、12)と、
前記セラミック基板(11、12)の前記他面(11b、12b)に接着剤(60)を介して接着された金属板(21、22)と、
前記金属板(21、22)の前記接着剤(60)が接着された面(21a、22a)とは反対側の非接着面(21b、22b)を露出しつつ、前記電子部品(40)、前記セラミック基板(11、12)および前記金属板(21、22)を封止したモールド樹脂(30)とを備える電子装置において、
前記接着剤(60)は、エポキシ樹脂系の接着剤であり、
前記セラミック基板は、複数の個片(11、12)に分割されており、
前記金属板(21、22)は、前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)のそれぞれに分かれて接着されており、
前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、互いに電気的に接続されているとともに、1つの樹脂成形体をなす前記モールド樹脂(30)で封止されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記複数の個片に分割されたセラミック基板(11、12)は、変形可能な接続部材(50)によって、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−115127(P2013−115127A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257910(P2011−257910)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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