説明

電子装置

【課題】複数のスイッチング素子が配置された領域の周辺部の切断を行う必要がないと共に、周辺部に保護素子を設ける必要がない静電対策手段を備える電子装置を提供する。
【解決手段】複数の走査線14と、複数の走査線14と交差する複数の信号線12と、複数の走査線14と複数の信号線12の交差点16に対応してそれぞれ設けられた複数のスイッチング素子40と、複数のスイッチング素子40が配置されたスイッチング素子配置領域20の外側で、複数の走査線14と複数の信号線12とに接続された共通接続部材10であって、固有抵抗値が可変な材料から成る共通接続部材10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関し、特に、マトリックス状に複数のスイッチング素子が配置された電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス状に複数のスイッチング素子が配置された電子装置、特に、絶縁基板上に複数のスイッチング素子が配置された電子装置は、静電気の影響を受けて、スイッチング素子の特性が変化したり、スイッチング素子が破壊されたりすることを防止するために、マトリックス状に配置された複数のスイッチング素子の周辺部に出した信号線と走査線とを共通に接続しておき、大きな静電気が発生する可能性が低くなった段階で共通接続部が設けられた周辺部を切断することが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、このような周辺部の切断を行わなくていいように、薄膜トランジスタで作成したリングダイオード等の保護素子を信号線や走査線と共通接続配線との間に設けることも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−130273号
【特許文献2】特表2004−538512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共通接続部が設けられた周辺部を後に切断する方法では、切断時での静電気に対しては無防備である。また、基板がガラス基板の場合には、周辺部の切断は比較的容易に行えるが、フレキシブル基板を採用した場合には、ガラス基板のように周辺部を切断することが難しい上に、静電気がガラス基板の場合よりもさらに発生する可能性がある。
【0006】
一方、薄膜トランジスタで作成したリングダイオード等の保護素子を信号線や走査線と共通接続配線との間に設ける方法(特許文献2参照)では、保護素子が負荷になる場合があり、設計が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明の主な目的は、複数のスイッチング素子が配置された領域の周辺部の切断を行う必要がないと共に、周辺部に保護素子を設ける必要がない静電対策手段を備える電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差する複数の信号線と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線の交差点に対応してそれぞれ設けられた複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子が配置されたスイッチング素子配置領域の外側で、前記複数の走査線と前記複数の信号線とに接続された共通接続部材であって、固有抵抗値が可変な材料から成る前記共通接続部材と、を備える電子装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記共通接続部材は、固有抵抗値が可逆的に可変な材料から成る。
【0010】
また、好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料への光の照射または前記材料が存在している環境の変更によって固有抵抗値が変化する材料である。
【0011】
また、好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光の照射または10−4Pa以下の真空雰囲気に晒すことによって照射前の固有抵抗値よりも低い固有抵抗値に変化し、大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気または水に晒すと、晒す前の固有抵抗値よりも高い固有抵抗値に変化する材料である。
【0012】
好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、酸化物半導体である。
【0013】
好ましくは、前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物である。
【0014】
好ましくは、前記酸化物半導体がInを含む酸化物である。
【0015】
好ましくは、前記共通接続部材は、前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜で覆われている。
【0016】
好ましくは、前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnの三種の元素の酸化物であり、前記共通接続部材は、430nm以下の波長の光を通さない膜で覆われている。
【0017】
好ましくは、前記スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記走査線は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、前記信号線は、前記電界効果トランジスタのソースおよびドレインのいずれか一方に接続されている。
【0018】
好ましくは、前記電子装置は画像表示装置である。
【0019】
好ましくは、前記電子装置は画像検出装置である。
【0020】
また、本発明によれば、
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差する複数の信号線と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線の交差点に対応してそれぞれ設けられた複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子が配置されたスイッチング素子配置領域の外側で、前記複数の走査線と前記複数の信号線とに接続された共通接続部材であって、固有抵抗値が可変な材料から成る前記共通接続部材と、を備える基板を形成する工程と、
前記共通接続部材を低抵抗化する工程と、
を備える電子装置の製造方法が提供される、
【0021】
好ましくは、前記共通接続部材は、固有抵抗値が可逆的に可変な材料から成る。
【0022】
また、好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料への光の照射または前記材料が存在している環境の変更によって固有抵抗値が変化する材料である。
【0023】
好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光の照射または10−4Pa以下の真空雰囲気に晒すことによって照射前の固有抵抗値よりも低い固有抵抗値に変化し、大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気または水に晒すと、晒す前の固有抵抗値よりも高い固有抵抗値に変化する材料である。
【0024】
好ましくは、前記固有抵抗値が可変な材料は、酸化物半導体である。
【0025】
好ましくは、前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物である。
【0026】
好ましくは、前記酸化物半導体がInを含む酸化物である。
【0027】
好ましくは、前記共通接続部材を低抵抗化する工程は、前記共通接続部材に前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を照射する工程を含む。
【0028】
好ましくは、前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記基板を実装する工程をさらに備える。
【0029】
好ましくは、前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記共通接続部材を、前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜で覆う工程をさらに備える。
【0030】
好ましくは、前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnの三種の元素の酸化物であり、前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記共通接続部材を、430nm以下の波長の光を通さない膜で覆う工程をさらに備える。
【0031】
好ましくは、前記スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記走査線は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、前記信号線は、前記電界効果トランジスタのソースおよびドレインのいずれか一方に接続されている。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数のスイッチング素子が配置された領域の周辺部の切断を行う必要がないと共に、周辺部に保護素子を設ける必要がない静電対策手段を備える電子装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好ましい実施の形態の電子装置を説明するための概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の画素部の他の例を説明するための図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の画素部のさらに他の例を説明するための図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の画素部の構造を説明するための概略縦断面図である。
【図5】図1のC部のX5−X5線概略縦断面図である。
【図6】図1のA部のX6−X6線概略縦断面図である。
【図7】図1のB部のX7−X7線概略縦断面図である。
【図8】IGZO膜の光照射による抵抗値変化を説明するための図である。
【図9】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための画素部の概略縦断面図である。
【図10】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための画素部の概略縦断面図である。
【図11】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のC部のX5−X5線概略縦断面図である。
【図12】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のC部のX5−X5線概略縦断面図である。
【図13】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のA部のX6−X6線概略縦断面図である。
【図14】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のA部のX6−X6線概略縦断面図である。
【図15】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のB部のX7−X7線概略縦断面図である。
【図16】本発明の好ましい実施の形態の電子装置の製造方法を説明するための図1のB部のX7−X7線概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1 を参照すれば、本発明の好ましい第1の実施の形態の電子装置1は、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ40が複数配置されたスイッチング素子配置領域20と、スイッチング素子配置領域20の外側に設けられた共通配線10とを備えている。この電子装置1は光学部材70で光を電荷に変えて蓄積容量60に蓄え電位を発生させ、その電位を薄膜トランジスタ40がスイッチング素子として読み出す構成になっている。この光学部材70を液晶、電子ペーパ用インク材料等にした場合は、蓄積容量60と光学部材70が並列配置となり図2のように配置される。光学部材70がエレクトロルミネッセンス部材のような駆動電流が必要な部材の場合も、基本は蓄積容量60と光学部材70の直並列配置となる。すなわち、図3に示すように、電源線Vddと接地電位82との間に、エレクトロルミネッセンス部材等の光学部材70と駆動用トランジスタ90が直列に接続され、駆動用トランジスタ90のゲート電極92とドレイン電極との間に蓄積容量60が設けられ、並列配置した蓄積容量60およびゲート電極92と信号線12との間にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ40が接続されている。
【0036】
再び、図1を参照すれば、複数の走査線14が行方向(紙面横方向)に互いに平行に配置され、複数の信号線12が列方向(紙面縦方向)に互いに平行に配置されている。複数の走査線14および複数の信号線12は、スイッチング素子配置領域20の外側で共通配線10に接続されている。
【0037】
複数の走査線14と複数の信号線12は複数の交差点16で互い交差し、各交差点16に対応して各画素部30が配置されている。各画素部30は、薄膜トランジスタ40と、光学部材70と、蓄積容量60とを備えている。
【0038】
各行に配置された複数の薄膜トランジスタ40のゲート電極42が各行の走査線14に接続されている。各列に配置された複数の薄膜トランジスタ40のドレイン電極54が各列の信号線12に接続されている。薄膜トランジスタ40のソース電極52は、蓄積容量60の蓄積容量上部電極66と、光学部材70の画素電極68に接続されている。蓄積容量60の蓄積容量下部電極62は接地電位82に接続されている。
【0039】
次に、図4を参照して、各画素部30について説明する。
【0040】
基板110の表面上には、蓄積容量60および薄膜トランジスタ40が設けられている。蓄積容量60は、蓄積容量上部電極66と、蓄積容量下部電極62と、これらの電極間にある誘電体層114(この誘電体層114は、絶縁膜としても機能する)によって構成されている。
【0041】
薄膜トランジスタ40は、ゲート電極42と、ゲート電極42を覆って設けられた誘電体層114と、誘電体層114を介して、ゲート電極42上およびゲート電極42の両側に設けられた活性層46と、活性層46のゲート電極42直上を覆って設けられた保護層48と、ゲート電極42の両側にそれぞれ設けられたソース電極52およびドレイン電極54とを備えている。保護層48の幅はゲート電極42の幅より小さく構成されておりソース電極52およびドレイン電極54は保護層48の両側で活性層46とそれぞれ接続されている。ソース電極52の端部53およびドレイン電極54の端部55は活性層46上に延在して設けられている。
【0042】
ソース電極52、ドレイン電極54および蓄積容量上部電極66は同じ配線層120で形成されており、ソース電極52と蓄積容量上部電極66は接続されている。なお、ゲート電極42と蓄積容量下部電極62も同じ配線層112で形成されている。
【0043】
蓄積容量60および薄膜トランジスタ40上に、層間絶縁膜122が設けられている。蓄積容量上部電極66上の層間絶縁膜122にはコンタクトホール94が設けられている。層間絶縁膜122上に、画素電極68が設けられている。電荷収集電極68は、コンタクトホール94を介して、蓄積容量上部電極66と接続されている。
【0044】
スイッチング素子配置領域10(図1参照)に対向して対向電極84が設けられている。各画素電極68、光学部材層126および対向電極84により画素毎の各光学部材70を構成している。共通電極10(図1参照)は平面視で対向電極84の外側に設けられている。
【0045】
画素電極30と対向電極84との間の光学部材層126として、液晶等の光の透過や反射等を制御可能な材料を配置すれば、電子装置1は図2に示すような構成で液晶表示装置等の画像表示装置として機能し、エレクトロルミネセンス材料等を配置すれば、電子装置1は図3に示すような構成でエレクトロルミネセンス表示装置等の画像表示装置として機能し、電子ペーパ用インク、電子粉流体等を配置すれば、電子装置1は電子ペーパ等の画像表示装置として機能する。これらの場合に、例えば、各画素電極68に与える電圧や電流を薄膜トランジスタ40で個々に制御して各画素電極68と対向電極84との間の電界等を画素毎に制御して表示の制御を行う。
【0046】
画素電極68と対向電極との間の光学部材層126として、光を電荷に変換する光電変換層を配置すれば、電子装置1は画像検出装置等として機能する。その場合には、例えば構成を図1のようにし、複数の画素電極68と対向電極との間に所定の電位差を与えておき、発生した電荷を画素毎に薄膜トランジスタ40を介して読み出すことで、検出された画像情報を得る。さらにX線等の放射線を可視光等に変換可能なシンチレータを設ければ、間接変換型放射線撮像装置として使用することもできる。
【0047】
図5を参照すれば、共通配線10は、基板110上の誘電体層114上に形成されている。共通配線10は、保護膜130で覆われている。図5は、図1のC部の拡大部分概略断面図であるが、図1のD部も同じ構造である。
【0048】
図6を参照すれば、信号線12と共通配線10との交点においては、基板110上の誘電体層114上に共通配線10が設けられ、共通配線10上に、信号線12の端部が設けられている。共通配線10は、信号線12を介して保護膜130で覆われている。信号線12は、ソース電極52、ドレイン電極54と同じ配線層120で形成され、ドレイン電極54と繋がっている。
【0049】
図7を参照すれば、走査線14と共通配線10との交点においては、基板110上に走査線14が設けられ、走査線14上に誘電体層114が設けられている。誘電体層114上に共通配線10が設けられている。共通配線10と走査線14とは、接続部55によって接続されている。接続部55の一端は、誘電体層114に設けたコンタクトホール115を介して、走査線14と接続され、接続部55の他端は、共通配線10上に設けられている。共通配線10は、接続部55を介して保護膜130で覆われている。接続部55は、ソース電極52、ドレイン電極54と同じ配線層120で形成されている。走査線14はゲート電極42と同じ配線層112で形成され、ゲート電極42と繋がっている。
【0050】
このように、ゲート電極42は走査線14と繋がっており、走査線14は、接続部55を介して共通配線10と繋がっており、共通配線10は信号線12と繋がっており、信号線12はドレイン電極54と繋がっているので、ゲート電極42は共通配線10を介してドレイン電極54と繋がっている。
【0051】
本実施の形態では、薄膜トランジスタ40の活性層46および共通配線10に、酸化物半導体の一種であるIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)を用いた。IGZOは、図6に示すように、IGZOのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光、好ましくは430nm以下の波長の光、の照射によって、絶縁性(10×1010Ωcmのオーダー)から導電性(10×10Ωcmのオーダー)に固有抵抗値が変化し、また、大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気または水が存在する環境に晒したり、特に長時間放置したりすると、導電性(10×10Ωcmのオーダー)から絶縁性(10×1010Ωcmのオーダー)に固有抵抗値が変化する材料である。この導電性から絶縁性への変化および絶縁性から導電性への変化は可逆的である。IGZOは、このように、IGZOへの光の照射または、IGZOが存在している雰囲気の変更によって固有抵抗値が変化する材料である。なお、図6は、光照射によるIGZOの抵抗変化を表す図であるが、照射する光の波長は360〜460nmであり、入射フォトン数1×1015photons/cmの場合の抵抗変化を示している。
【0052】
また、共通配線10を覆っている保護膜130(図3、4、5参照)は、IGZOのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜であり、好ましくは430nm以下の波長の光を通さない膜である。保護膜130は、有機膜または無機膜で構成され全ての工程が終了後、共通配線の上を覆うことで光が当たらないようにできる。また、全ての工程を終了後、実装時に筐体で光が当たらないようにすることでも対処できる。実際には共通配線10の上に信号線12、もしくは接続部55が共通配線10上に乗っているため配線後は上部からの光はかなり減衰する。そのためコンタクト部は高抵抗化しやすいため、ESD対策としては光を基板110の下方から照射する場合もある。
【0053】
次に、本実施の形態の電子装置1の製造方法を説明する。
【0054】
図9(a)、図11(a)、図13(a)、図15(a)に示すように、まず、基板110として、絶縁基板であるガラス基板を使用し、基板110上にスパッタ法により配線層112を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術により所望の形に加工して、ゲート電極42、蓄積容量下部電極62および走査線14を形成する。配線層112の電極材料としては、例えば、Mo、Al、Ti、Cu、Ta等の金属、もしくはAl−Nd等の合金、InSnO等の酸化物導電膜またはこれらの多層膜が好ましく用いられる。
【0055】
次に、図9(b)、図11(b)、図13(b)、図15(b)に示すように、誘電体層114、活性層46および保護膜48を形成する。誘電体層114はSiOをスパッタ法により成膜して形成し、活性層46はIGZOをスパッタ法により成膜して形成し、保護膜48もスパッタ法により形成した。
【0056】
その後、図9(c)、図11(c)、図13(c)、図15(c)に示すように、保護膜48および活性層46をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術により所望の形に加工して、薄膜トランジスタ40の活性層46および保護膜48とすると共に、活性層46と同じ層で共通配線10を形成した。なお。誘電体層114は加工せず、そのまま残した。
【0057】
次に、誘電体層114にコンタクトホール115(図15(c)参照)をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術により形成する。
【0058】
配線層120をスパッタ法により形成する。その後、図10(a)、図12(a)、図14(a)、図16(a)に示すように、配線層120をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術により所望の形に加工して、薄膜トランジスタ40のソース電極52、ドレイン電極54、蓄積容量上部電極66、ドレイン電極54と蓄積容量上部電極66の接続部、信号線12および接続部55を形成する。
【0059】
信号線12は共通配線10と接続される(図6、図14(a)参照)。接続部55は誘電体層114に設けたコンタクトホール115を介して、走査線14と接続されると共に、共通配線10に接続される(図7、図16(a)参照)。このようにして、走査線14は共通配線10を介して信号線12と接続され、走査線14にはゲート電極42が接続されており、信号線12にはドレイン電極54が接続されているので、ゲート電極42は共通配線10を介してドレイン電極54と接続される。
【0060】
その後、図10(b)、図12(b)、図14(b)、図16(b)に示すように、層間絶縁膜122を形成し、層間絶縁膜122にコンタクトホール94を形成し、画素電極68を形成する。その後、画素電極68と対向電極84との間に光学部材層126を挟みこむ。
【0061】
その後、スイッチング素子配置領域20および対向電極84の外側の部分に光を照射して、共通電極10を低抵抗化する。
【0062】
その後に、TAB端子取り付け等の実装を行う。その後、大気中に放置し、共通電極10を高抵抗化する。その後、図12(c)、図14(c)、図16(c)に示すように、共通配線10を覆う保護膜130を形成する。
【0063】
本実施の形態では、ゲート電極42は共通配線10を介してドレイン電極54と接続されており、共通配線10はIGZOからなり、光を照射して低抵抗化した後に、TAB取り付け等の実装を行っている。静電気が発生しやすいのは素子工程終了後の実装工程が主である。そのため素子形成後、周辺部のみ光照射して共通配線10を低抵抗化することで、その後のTAB取り付け等の実装時に静電気を逃がしやすくなる。この場合光を照射する方向として基板下方から行う場合もある。その結果、薄膜トランジスタ40の特性が変動したり、薄膜トランジスタ40が破壊されたりすることを防止または抑制できる。
【0064】
本実施の形態では、実装工程後に、大気中に放置し、共通電極10を高抵抗化している。従って、共通電極10の切断を行う必要もなくなり、切断時の静電気の影響を受けることを防止できる。切断する必要がないので、ガラス基板だけでなく、フレキシブル基板の場合にも好適に適用できる。また、ダイオード等の保護素子を設ける必要もないので、保護素子が負荷となり設計が複雑になることを防止できる。
【0065】
さらに、共通配線10を覆う保護膜130を設けているので、共通配線10に光が照射されて低抵抗化されるのを防止できる。
【0066】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、薄膜トランジスタ40の活性層46を利用して共通配線10を形成したが、薄膜トランジスタ40の活性層46がSi系である場合は、素子工程終了後に共通配線10としてIGZO等の酸化物半導体をスパッタ法で形成する。その後、TAB端子実装工程前に共通配線10に光を照射し低抵抗化し、その後の大気中の放置で絶縁分離した。
【0067】
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、共通配線10は画素電極68と同時に形成した。画素電極68をIGZOなどの酸化物半導体で形成し、同時に共通配線10もIGZOなどの酸化物半導体で形成する。酸化物半導体の場合、真空装置に入れたりして、10−4Pa以下の真空下にすると、表面からの水分、付着酸素を除去することで低抵抗化することが知られており、画素電極68や共通配線10形成後に液晶工程、有機EL工程で真空を利用した場合、画素電極68や共通配線10は自然と低抵抗化している。画素部分68はその上に対向側の基板がきて遮蔽されるためそのまま低抵抗が維持される。周辺の共通配線10は一旦大気中に出るため高抵抗となるが、実装前に光を照射し低抵抗化してTAB端子の実装工程を行い、その後、大気中で高抵抗化する。
【0068】
上記実施の形態では、共通配線10に使用する固有抵抗値が可変な材料として、IGZOを使用したが、IGZO以外の酸化物半導体も好適に使用できる。好ましくは、酸化物半導体としては、In、GaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を使用する。また、酸化物半導体として、Inを含む酸化物を使用することもできる。
【0069】
また、共通配線10を低抵抗化するには、好ましくは、共通配線10に使用している固有抵抗値が可変な材料(IGZO等の酸化物半導体等)のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を照射する。共通配線10を低抵抗化し、実装等を終えた後に、共通配線10を高抵抗化して絶縁した後は、共通配線10に使用している固有抵抗値が可変な材料(IGZO等の酸化物半導体等)のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜で覆って、共通配線10が低抵抗化するのを防止することが好ましい。
【0070】
また、酸化物半導体の中でも特にIn(I),Ga(G), Zn(Z)を少なくとも1種以上含む酸化物,たとえばIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)、IZO(In-Zn-Oxide)が好ましく用いられる。なお、IGZO(In-Ga-Zn-Oxide)を使用する場合は、In(I),Ga(G), Zn(Z)のおのおのの組成比はかならずしも整数比である必要はなく、組成比は成膜条件で変えることができ、IZO(In-Zn-Oxide)を使用する場合は、In(I), Zn(Z)のおのおのの組成比はかならずしも整数比である必要はなく、組成比は成膜条件で変えることができる。
【0071】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 電子装置
10 共通配線
12 信号線
14 走査線
16 交差点
20 スイッチング素子配置領域
30 画素部
40 薄膜トランジスタ
42 ゲート電極
46 活性層
48 保護層
52 ソース電極
54 ドレイン電極
55 接続部
60 蓄積容量
62 蓄積容量下部電極
66 蓄積容量上部電極
68 画素電極
70 光学部材
82 接地電位
84 対向電極
94、115 コンタクトホール
110 基板
112、120 配線層
114 誘電体層
122 層間絶縁膜
126 光学部材層
130 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差する複数の信号線と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線の交差点に対応してそれぞれ設けられた複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子が配置されたスイッチング素子配置領域の外側で、前記複数の走査線と前記複数の信号線とに接続された共通接続部材であって、固有抵抗値が可変な材料から成る前記共通接続部材と、を備える電子装置。
【請求項2】
前記共通接続部材は、固有抵抗値が可逆的に可変な材料から成る請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料への光の照射または前記材料が存在している環境の変更によって固有抵抗値が変化する材料である請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光の照射または10−4Pa以下の真空雰囲気に晒すことによって照射前の固有抵抗値よりも低い固有抵抗値に変化し、大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気または水に晒すと、晒す前の固有抵抗値よりも高い固有抵抗値に変化する材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記固有抵抗値が可変な材料は、酸化物半導体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物である請求項5記載の電子装置。
【請求項7】
前記酸化物半導体がInを含む酸化物である請求項5記載の電子装置。
【請求項8】
前記共通接続部材は、前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜で覆われている請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnの三種の元素の酸化物であり、前記共通接続部材は、430nm以下の波長の光を通さない膜で覆われている請求項8記載の電子装置。
【請求項10】
前記スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記走査線は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、前記信号線は、前記電界効果トランジスタのソースおよびドレインのいずれか一方に接続されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項11】
前記電子装置は画像表示装置である請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項12】
前記電子装置は画像検出装置である請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項13】
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差する複数の信号線と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線の交差点に対応してそれぞれ設けられた複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子が配置されたスイッチング素子配置領域の外側で、前記複数の走査線と前記複数の信号線とに接続された共通接続部材であって、固有抵抗値が可変な材料から成る前記共通接続部材と、を備える基板を形成する工程と、
前記共通接続部材を低抵抗化する工程と、
を備える電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記共通接続部材は、固有抵抗値が可逆的に可変な材料から成る請求項13記載の電子装置の製造方法。
【請求項15】
前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料への光の照射または前記材料が存在している環境の変更によって固有抵抗値が変化する材料である請求項13または14記載の電子装置の製造方法。
【請求項16】
前記固有抵抗値が可変な材料は、前記材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光の照射または10−4Pa以下の真空雰囲気に晒すことによって照射前の固有抵抗値よりも低い固有抵抗値に変化し、大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気または水に晒すと、晒す前の固有抵抗値よりも高い固有抵抗値に変化する材料である請求項13〜15のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項17】
前記固有抵抗値が可変な材料は、酸化物半導体である請求項13〜16のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項18】
前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物である請求項17記載の電子装置の製造方法。
【請求項19】
前記酸化物半導体がInを含む酸化物である請求項17記載の電子装置の製造方法。
【請求項20】
前記共通接続部材を低抵抗化する工程は、前記共通接続部材に前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を照射する工程を含む請求項13〜19のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項21】
前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記基板を実装する工程をさらに備える請求項13〜20のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項22】
前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記共通接続部材を、前記固有抵抗値が可変な材料のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光の波長以下の波長の光を通さない膜で覆う工程をさらに備える請求項13〜20のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項23】
前記酸化物半導体がIn、GaおよびZnの三種の元素の酸化物であり、前記共通接続部材を低抵抗化する工程の後に、前記共通接続部材を、430nm以下の波長の光を通さない膜で覆う工程をさらに備える請求項17〜21のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項24】
前記スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記走査線は前記電界効果トランジスタのゲートに接続され、前記信号線は、前記電界効果トランジスタのソースおよびドレインのいずれか一方に接続されている請求項13〜23のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−232539(P2011−232539A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102597(P2010−102597)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】