説明

電子部品、導電性ペーストおよび電子部品の製造方法

【課題】耐水性・耐湿性が高く高信頼性の電極配線を具備する電子部品と、導電性ペーストと、その電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子4と、酸化物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストであって、その酸化物は、ガラス相を有し、かつ、価数が4価以下のバナジウムを含む。電子部品1の製造方法では、この導電性ペーストを基板3に塗布し焼成して電極配線2を形成する。その電子部品1では、アルミニウム(Al)及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子4と、粒子4を基板3に固定する酸化物5とを有する電極配線2を具備し、酸化物5は価数が4価以下のバナジウム(V)を含む。粒子4の表面には、バナジウムとアルミニウムを含む化合物層7が形成され、化合物層7に含まれるバナジウムは、価数が4価以下のバナジウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極配線を具備する電子部品と、その電極配線の形成に用いる導電性ペーストと、その電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)や、セラミック多層配線基板等の電子部品には、電極配線が形成されている。その電極配線は導電性ペーストを用いて形成されている。導電性ペーストには、金属粒子として、銀(Ag)やアルミニウム(Al)が用いられている。電極配線は、導電性ペーストを大気中、高温で焼成することによって形成されるが、導電性ペーストは金属粒子の他にもガラス粒子を有しており、導電性ペーストの焼成時には、そのガラス粒子の軟化点以上の温度に加熱されることで、ガラス粒子が軟化流動し、電極配線は緻密になるとともに基板に強固に接着する。
【0003】
アルミニウムを金属粒子とする導電性ペーストでは、アルミニウムの表面に形成されている酸化皮膜に起因して高抵抗化する場合があり、バナジウム(V)や酸化バナジウム(V)を添加することで、金属粒子の焼結性を改善し、電極配線を低抵抗化させる手法が提案されている(特許文献1等参照)。また、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、水素化金属化合物及びリン化金属化合物等を添加することで耐酸化性を向上させ、低抵抗化させる手法が提案されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−73731号公報
【特許文献2】特開平5−298917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウムを金属粒子とする導電性ペーストでは、低抵抗化が進められ、電子部品の電極配線に用いられることで、例えば、太陽電池セルの電極配線に用いられることで、太陽電池セル(電子部品)の高性能化に寄与した。
【0006】
一方で、太陽電池セル等の電子部品では、経時的な性能劣化を抑制し、長寿命化させ、高い信頼性を獲得することが求められている。その性能劣化としては、電極配線の性能劣化(高抵抗化)が挙げられる。この原因として、大気中に含まれる水分がアルミニウムの酸化皮膜と反応し、水酸化アルミニウムが生成するためであることがわかった。大気中に含まれる水分がアルミニウムの酸化皮膜に達しないように、アルミニウムの金属粒子を緻密な部材で覆えば、耐水性(耐湿性)が向上し、電極配線の性能劣化を抑制できると考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、耐水性が高く高信頼性の電極配線を具備する電子部品と、導電性ペーストと、その電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、アルミニウム(Al)及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、前記粒子を基板に固定する酸化物とを有する電極配線を具備する電子部品であって、
前記酸化物は、価数が4価以下のバナジウム(V)を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、酸化物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストであって、
前記酸化物は、ガラス相を有し、かつ、価数が4価以下のバナジウムを含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、ガラス相を有しかつ価数が4価以下のバナジウムを含む酸化物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストを基板に塗布し、
塗布した前記導電性ペーストを焼成して、電極配線を形成する電子部品の製造方法であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐水性が高く高信頼性の電極配線を具備する電子部品と、導電性ペーストと、その電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガラス組成物(酸化物の粉末)のDTA測定で得られるDTAカーブの1例である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電子部品が具備する電極配線の断面図の一部である。
【図3】電極配線の比抵抗と、ガラス量(ガラス組成物(酸化物の粉末)のアルミニウム粒子に対する重量分率)との関係を示すグラフである。
【図4A】本発明の第4の実施形態に係る太陽電池セル(電子部品)の平面図である。
【図4B】本発明の第4の実施形態に係る太陽電池セル(電子部品)の底面図である。
【図4C】図4AのA−A′方向の矢視断面図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(電子部品)の断面図の一部である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係るセラミック多層配線基板(電子部品)の断面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るセラミック多層配線基板(電子部品)を焼成する際の温度スケジュールの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、本発明は、ここで取り上げた複数の実施形態の個々に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
【0014】
(第1の実施形態)
[導電性ペーストのガラス組成物(酸化物の粉末)の組成に関する検討]
第1の実施形態では、導電性ペーストのガラス組成物(酸化物の粉末)の組成に関して検討した。
【0015】
表1に示すように、第1の実施形態では、実施例1〜30と比較例1〜5の計35種類の導電性ペーストのガラス組成物(酸化物の粉末)を作製し、それぞれのガラス組成物を使って導電性ペーストを作製し、さらに、それらそれぞれの導電性ペーストを使って電極配線を作製し、各種特性を評価している。ガラス組成物(酸化物の粉末)の作製に当っては、実施例1〜30と比較例1〜5毎に、ガラス系の組成を変えて製造している。また、評価した特性としては、ガラス組成物(酸化物の粉末)に対して、特性温度測定を行い、電極配線に対して、密着性試験(ピール試験)と、耐水性試験と、比抵抗の計測を行っている。
【表1】

【0016】
(1−1、ガラス組成物(酸化物の粉末)の作製)
表1の実施例1〜30と比較例1〜5に示すガラス系の組成を有するガラス組成物(酸化物の粉末)を作製した。実施例1〜30と比較例1〜3と比較例5のガラス系の組成には、RoHS指令の禁止物質である鉛(Pb)を含ませていない。比較例4にのみ、主成分として鉛を含ませている。
【0017】
実施例1〜30のガラス系の組成の主成分は、バナジウム(V)とリン(P)にしている。さらに、実施例1、実施例19〜26と実施例29では、バナジウムとリンに加え、バリウム(Ba)も主成分としている。
【0018】
実施例1では、バナジウムとリンとバリウムの主成分以外に添加物は加えていない。
実施例2では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモン(Sb)を加えている。
実施例3では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモンとタングステン(W)を加えている。
実施例4では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモンとカリウム(K)を加えている。
実施例5では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモンとバリウムを加えている。
実施例6では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモン、バリウム、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例7では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモン、マンガン(Mn)、ナトリウム(Na)、カリウム、バリウムとテルル(Te)を加えている。
実施例8では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、マンガン、ナトリウム、カリウム、バリウム、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例9では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、マンガン、バリウム、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例10では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄(Fe)とリチウム(Li)を加えている。
実施例11では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄を加えている。
実施例12では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄、バリウム、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例13では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄とバリウムを加えている。
実施例14では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄、タングステンとバリウムを加えている。
実施例15では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄、亜鉛とバリウムを加えている。
実施例16では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、ビスマス(Bi)、バリウム、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例17では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、リチウムを加えている。
実施例18では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、リチウムとバリウムを加えている。
実施例19では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、亜鉛を加えている。
実施例20では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、亜鉛とタングステンを加えている。
実施例21では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、テルルを加えている。
実施例22では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、テルルと銅(Cu)を加えている。
実施例23では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、亜鉛、タングステンとホウ素(B)を加えている。
実施例24では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、タングステン、モリブデン(Mo)とカリウムを加えている。
実施例25では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、タングステンと銅を加えている。
実施例26では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、亜鉛、銅とホウ素を加えている。
実施例27では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄、バリウム、タングステンと銅を加えている。
実施例28では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄、リチウム、バリウムとタングステンを加えている。
実施例29では、バナジウムとリンとバリウムの主成分に対して、添加物として、テルル、カリウムとタングステンを加えている。
実施例30では、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、アンチモン、バリウム、テルル、カリウムとタングステンを加えている。
【0019】
比較例1〜5では、ガラス系の組成に、バナジウムを加えていない。比較例1〜3ではリンを主成分とし、比較例4では鉛を主成分とし、比較例5ではビスマスを主成分としている。
比較例1では、リンの主成分に対して、添加物として、カリウム、バリウム、亜鉛、タングステンとホウ素を加えている。
比較例2では、リンの主成分に対して、添加物として、カリウム、バリウム、亜鉛、モリブデンとホウ素を加えている。
比較例3では、リンの主成分に対して、添加物として、鉄、カリウム、バリウム、亜鉛、タングステンとホウ素を加えている。
比較例4では、鉛の主成分に対して、添加物として、ホウ素、シリコン(Si)、チタン(Ti)、亜鉛とアルミニウム(Al)を加えている。なお、比較例4では、市販の鉛系ガラスを用いた。
比較例5では、ビスマスの主成分に対して、添加物として、ホウ素、シリコン、バリウムと亜鉛を加えている。なお、比較例5では、市販のビスマス系ガラスを用いた。
【0020】
なお、バナジウム成分の原料化合物としては、五酸化バナジウム(V)を用いた。リン成分の原料化合物としては、五酸化リン(P)を用いた。バリウム成分の原料化合物としては、炭酸バリウム(BaCO)を用いた。リチウム成分の原料化合物としては、炭酸リチウム(LiCO)を用いた。ナトリウム成分の原料化合物としては、炭酸ナトリウム(NaCO)を用いた。カリウム成分の原料化合物としては、炭酸カリウム(KCO)を用いた。アンチモン成分の原料化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)を用いたが、四酸化アンチモン(Sb)を用いてもよい。マンガン成分の原料化合物としては、二酸化マンガン(MnO)を用いたが、酸化マンガン(MnO)を用いてもよい。鉄成分の原料化合物としては、三酸化二鉄(Fe)を用いたが、酸化鉄(FeO)や四酸化三鉄(Fe)などを用いてもよい。ビスマス成分の原料化合物としては、三酸化ビスマス(Bi)を用いた。亜鉛成分の原料化合物としては、酸化亜鉛(ZnO)を用いた。タングステン成分の原料化合物としては、三酸化タングステン(WO)を用いた。テルル成分の原料化合物としては、二酸化テルル(TeO)を用いた。銅成分の原料化合物としては、酸化銅(CuO)を用いた。モリブデン成分の原料化合物としては、三酸化モリブデン(MoO)を用いた。ホウ素成分の原料化合物としては、酸化ホウ素(B)を用いた。
【0021】
また、バリウム成分の原料化合物としては、リン酸バリウム(Ba(PO))を用いてもよく、鉄成分の原料化合物としては、リン酸鉄(FePO)を用いてもよい。これらの原料化合物には、リンも含まれているので、ガラス組成物におけるリンの組成比を考慮して、リン成分の原料化合物となる五酸化リン(P)の添加量を調整することが望ましい。
【0022】
そして、ガラス組成物の具体的な作製は、前記の原料化合物を用いて以下の手順で行った。
【0023】
まず、実施例1〜30と比較例1〜3毎に、ガラス系の組成が所定の組成になるように、粉末状の原料化合物を配合し混合した。混合した粉末を白金ルツボに入れ、電気炉を用いて加熱し溶融させた。加熱条件としては、5〜10℃/minの昇温速度で1000〜1100℃まで加熱し、その1000〜1100℃の加熱温度で2時間保持した。この保持中には、均一なガラス組成物とするために、溶融物が均一になるように攪拌した。
【0024】
次に、白金ルツボを高温のまま電気炉から取り出し、予め200〜300℃に加熱しておいたステンレス板上に溶融物を流し込んだ。溶融物は、急冷されガラス化し、バルク状のガラス組成物となって固形化した。そのバルク状のガラス組成物を、スタンプミルを用い粉砕して、粒径1〜3μm程度のガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。
【0025】
また、比較例4では、市販の鉛系ガラスを、バルク状のガラス組成物として、スタンプミルを用い粉砕して、ガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。比較例5では、市販のビスマス系ガラスを、バルク状のガラス組成物として、スタンプミルを用い粉砕して、ガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。
【0026】
(1−2、ガラス組成物の特性温度測定)
実施例1〜30と比較例1〜5のそれぞれで作製したガラス組成物の特性温度の測定を行った。特性温度の測定では、示差熱分析(DTA)装置(真空理工株式会社製、型式:DT−1500)を用いた。標準試料としてα-アルミナ(Al)を用い、標準試料と供試材(実施例1〜30と比較例1〜5毎のガラス組成物の粉末)の質量を、それぞれ1gとした。測定では、大気雰囲気中で標準試料と供試材を昇温し、昇温速度を5℃/minとした。
【0027】
図1に、ガラス組成物の特性温度の測定(DTA測定)で得られたDTAカーブの一例を示す。図1のDTAカーブでは、第1吸熱ピークPAと、第2吸熱ピークPBと、発熱ピークPCが測定された。第1吸熱ピークPAの開始温度(接線法による、第1吸熱ピークPAの開始前のDTAカーブの接線と、第1吸熱ピークPAの前半において降下するDTAカーブの接線とが交わるときの温度)をガラス組成物の転移点と定義した。実施例1〜30と比較例1〜5毎に、特性温度の測定(DTA測定)を行い、測定結果であるDTAカーブからガラス組成物の転移点を求めた。求めた転移点を表1に併記した。温度が転移点以上になると、ガラス組成物の剛性と粘度が低下して軟化し、流動性が増す。耐水性・耐湿性を向上させるために、ガラス組成物で、アルミニウムの金属粒子を緻密に覆うためには、転移点は、できるだけ低いほうがよいと考えられる。
【0028】
比較例1〜3(リン主成分)では、転移点が528℃、502℃、493℃であり、概ね500℃であった。実施例1〜30において、転移点が500℃以下を達成できたのは、実施例1〜24、実施例27〜30であった。
【0029】
比較例4(鉛主成分)では、転移点が375℃であり、比較例5(ビスマス主成分)では、転移点が413℃であった。これらは、流動性の高いガラス組成物として知られているので、高い流動性を確保するためには、転移点として、概ね400℃以下であればよいと考えられる。実施例1〜30において、転移点が400℃以下を達成できたのは、実施例1〜15、実施例17〜20、実施例27〜30であった。さらに、転移点が300℃以下を達成できたのは、実施例2、実施例10、実施例11、実施例17、実施例18、実施例28〜30であった。
【0030】
なお、第1吸熱ピークPAのピーク温度(接線法による、第1吸熱ピークPAの前半において降下するDTAカーブの接線と、第1吸熱ピークPAの後半において上昇するDTAカーブの接線とが、交わるときの温度)を、図1に示すようにガラス組成物の屈伏点と定義できる。また、第2吸熱ピークPBのピーク温度(接線法による、第2吸熱ピークPBの前半において降下するDTAカーブの接線と、第2吸熱ピークPBの後半において上昇するDTAカーブの接線とが、交わるときの温度)を、図1に示すようにガラス組成物の軟化点と定義することができる。また、発熱ピークPCでは、ガラス組成物の結晶化が起こっている。この結晶化では、ガラス組成物のガラス相中に、微結晶の結晶相が分散した状態で生じている。
【0031】
(1−3、導電性ペーストの作製)
導電性ペーストに含有させる金属粒子として、平均粒径(D50)1μmの粒子群Aと、平均粒径(D50)5μmの粒子群Bとの2種類のアルミニウム粒子を用意した。まず、アルミニウムを溶融し、水アトマイズ法にて球状のアルミニウム粒子を形成した。このアルミニウム粒子から、粒径0.5μm未満の粒子を篩いによって除去し、粒径1.5μm以上の粒子を篩いによって除去して残った粒子群を粒子群Aとした。粒子群Aは、平均粒径(D50)が1μmであり、粒径が0.5μm以上1.5μm未満の範囲内に約95%以上の体積分率を有していた。先の篩いによって除去された粒径1.5μm以上の粒子から、粒径8μm以上の粒子を篩いによって除去して残った粒子群を粒子群Bとした。粒子群Bは、平均粒径(D50)が5μmであり、粒径が1.5μm以上8μm未満の範囲内に約95%以上の体積分率を有していた。
【0032】
粒子群Aのアルミニウム粒子が50重量%になり、粒子群Bのアルミニウム粒子が50重量%になるように、すなわち、粒子群Aと粒子群Bの混合比率が1:1になるように、粒子群Aと粒子群Bのアルミニウム粒子を配合して使用した。
【0033】
実施例1〜30と比較例1〜5毎に、配合したアルミニウム粒子の100重量部に対して、10重量部のガラス組成物(酸化物)の粉末を混合し、さらに、この混合物にバインダ樹脂と溶剤とを添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはα-テルピネオールを用いた。
【0034】
(1−4、電極配線の形成)
太陽電池セル等の電子部品に用いられる多結晶シリコン基板上に、実施例1〜30と比較例1〜5毎の導電性ペーストを、スクリーン印刷法にてそれぞれ塗布した。塗布後、大気中において温度150℃で数分間加熱し乾燥させた。その後、電気炉にて、大気中で850℃の焼成温度で2秒間の熱処理を施して、電極配線を焼成し完成させた。焼成された電極配線の膜厚はどれも、約40μmであった。
【0035】
(1−5、電極配線の特性、比抵抗測定)
実施例1〜30と比較例1〜5毎に、完成した電極配線の比抵抗を四探針法で測定した。比抵抗測定では、電極配線の電気抵抗と膜厚を測定し、この電気抵抗と膜厚に基づいて比抵抗を算出した。実施例1〜30の電極配線の比抵抗は、比較例4(鉛系のガラス組成物を使用)と、比較例5(ビスマス系のガラス組成物を使用)の電極配線の比抵抗に比べ、同程度かそれより小さい値であった。
【0036】
(1−6、電極配線の特性、密着性試験(ピール試験))
実施例1〜30と比較例1〜5毎に、完成した電極配線の基板に対する接着(密着性)の強さを、ピール試験にて評価した。ピール試験では、市販のセロハンテープを、電極配線に貼り付けた後に引き剥がした。そして、剥がした後に電極配線を観察し評価した。評価基準としては、アルミニウム粒子のほとんど全てが剥がれ電極配線が断線状態となったものを「×」とし、アルミニウム粒子の一部が薄く剥がれたが断線状態にならなかったものを「○」とし、アルミニウム粒子が全く剥がれなかったものを「◎」とする基準を用いた。表1に示すように、ピール試験の結果は、実施例1〜15と実施例17〜20と実施例27〜30と比較例4で「◎」であり、実施例16と実施例21〜24と比較例5で「○」であり、実施例25と実施例26と比較例1〜3で「×」であった。
表1において、転移点と密着性試験(ピール試験)とを比較すると、転移点が400℃以下の場合に、「◎」となり、転移点が400℃を超え概ね500℃以下の場合に、「○」となり、転移点が概ね500℃を超えた場合に、「×」となった。転移点が下がる程、焼成時(焼成温度)におけるガラス組成物の軟化流動特性が向上し、ガラス組成物はアルミニウム粒子の表面を容易に覆えるようになる。ガラス組成物によってアルミニウム粒子の表面が覆われると、必然的に、隣接するアルミニウム粒子間にガラス組成物が配置されるので、ガラス組成物が接着剤となり、隣接するアルミニウム粒子を強固に接着させることができる。また、ガラス組成物によってアルミニウム粒子の表面が覆われると、基板と基板に隣接するアルミニウム粒子の間にも、必然的に、ガラス組成物が配置されることになるので、ガラス組成物が接着剤となり、基板に隣接するアルミニウム粒子を、基板に強固に接着させることができる。このため、転移点が低い程、密着性試験(ピール試験)で高い密着性が得られたと考えられる。
【0037】
(1−7、電極配線の特性、耐水性試験)
実施例1〜30と比較例1〜5毎の電極配線に対し、耐水性試験として、温度85℃、湿度85%の条件の環境下に、1000時間、放置するという加速試験を行った。評価基準としては、試験後に電極配線が黒色化したものは「×」とし、電極配線の色の変化がわずかにあるものは「○」とし、色がほとんど変わらないものを「◎」とする基準を用いた。表1に示すように、耐水性試験の結果は、実施例1〜5と実施例8〜11と実施例13と実施例17〜20と実施例27〜30で「◎」であった。実施例6と実施例7と実施例12と実施例14〜16と実施例21〜26で「○」であった。比較例1〜5で「×」であった。実施例1〜30の方が、比較例1〜5よりも耐水性に優れていることがわかった。
【0038】
実施例1〜30において、密着性試験の結果と、耐水性試験の結果を比較すると、耐水性試験で「◎」であると、密着性試験でも「◎」となることがわかった。逆に、密着性試験で「◎」であると、耐水性試験では「◎」か「○」となることがわかった。このことから、実施例1〜30においては、耐水性試験の「◎」であることと、密着性試験の「◎」であることとは、密接に関係していると考えられる。
【0039】
実施例1〜30において、転移点と、耐水性試験の結果を比較すると、転移点が380℃以上だと、耐水性試験で「○」になり、転移点が380℃未満だと、耐水性試験で「◎」になることがわかった。このことから、実施例1〜30においては、転移点と耐水性試験の結果とは密接に関係しており、転移点が低い程、耐水性が向上すると考えられる。
【0040】
また、ガラス組成物単体の特性としては比較例4(鉛系のガラス)と比較例5(ビスマス系のガラス)よりも耐水性で劣る実施例1〜30であっても、アルミニウム粒子と混合して導電性ペーストとして焼成し、電極配線を作製すると、実施例1〜30では、比較例4(鉛系のガラス)と比較例5(ビスマス系のガラス)よりも耐水性に優れた電極配線を作製できることが判明した。このことは、高い耐水性を得るにはアルミニウム粒子を緻密な膜で覆うことが肝要であるが、その緻密な膜は、ガラス組成物単体ではなく、ガラス組成物とアルミニウム粒子との存在によって形成されていることが想起された。
【0041】
また、実施例25と実施例26では、密着性試験は「×」となり、耐水性試験は「○」となった。実施例25と実施例26の転移点は502℃と550℃で、500℃を超えており、ガラス組成物は、アルミニウム粒子を接着するのに十分なだけ覆ってはいないと考えられる。それにも関わらず、耐水性試験で「○」となったのは、接着に必要な量より少ない量のガラス組成物がアルミニウム粒子を覆うだけでも、そのアルミニウム粒子とガラス組成物によって薄くても緻密な膜がアルミニウム粒子の表面に形成され、耐水性を向上させたからであると考えられた。
【0042】
図2に、本発明の第1の実施形態に係る電子部品1が具備する電極配線2の断面図の一部を示す。この断面図は、実施例1〜30、例えば、実施例10で作製した電極配線2を、走査型電子顕微鏡−エネルギ分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて観察した結果に基づいている。
【0043】
電子部品1は、シリコン基板3と、シリコン基板3上に接着し固定された電極配線2を有している。電極配線2は、アルミニウム(Al)及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の、いわゆるアルミニウム粒子4と、アルミニウム粒子4をシリコン基板3に固定させるガラス組成物(酸化物)5とを有している。
【0044】
複数のアルミニウム粒子4同士は、焼結によってネッキング結合部6にて結合(ネッキング)している。アルミニウム粒子4には、アルミニウムだけでなく、アルミニウムを含む合金からなるアルミニウム粒子4を用いることができる。アルミニウムを含む合金は、銀(Ag)、銅(Cu)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)のうち少なくとも一種の元素を含んでいる。例えば、銀が添加されることで、合金(Al-Ag)の導電率を高めることができる。また、銅が添加されることで、合金(Al-Cu)の強度を高めることができる。シリコンが添加されることで、合金(Al-Si)の耐磨耗性を高めることができる。マグネシウムやカルシウムが添加されることで、合金(Al-Mg、Al-Ca)の強度や耐食性を高めることができる。
【0045】
アルミニウム粒子4は、粒径が0.5μm以上1.5μm未満の範囲内に約95%の体積分率を有する粒子群A(4A)と、粒径が1.5μm以上8μm未満の範囲内に約95%の体積分率を有する粒子群B(4B)とから構成されている。粒子群A(4A)の複数の粒子4の総重量と、粒子群B(4B)の複数のアルミニウム粒子4の総重量とは、略等しくなっている。これによれば、粒径の大きな粒子群B(4B)のアルミニウム粒子4間の隙間に、粒径の小さな粒子群A(4A)の粒子4が入り、アルミニウム粒子4の密度を高めることができるので、緻密な電極配線2を形成することができる。
【0046】
酸化物(ガラス組成物)5は、アルミニウム粒子4を覆い、アルミニウム粒子4をシリコン基板3に接着している。酸化物(ガラス組成物)5は、表1の実施例1〜30に示すように、バナジウム(V)とリン(P)を含んでいる。酸化物5は、ガラス組成物であるので、ガラス相5aを有し、ガラス相5a内に分散するように結晶相(微結晶)5bが形成している。結晶相(微結晶)5bの粒径は10〜60nm程度であった。
【0047】
アルミニウム粒子4の表面には、バナジウムとアルミニウムを含む化合物層7が形成されている。化合物層7のアルミニウム粒子4の側には、アルミニウムの酸化被膜があってもよい。化合物層7は、アルミニウム粒子4の表面上に、均一の厚さで形成されている。化合物層7の厚さは、10〜100nm程度であった。アルミニウム粒子4は、表面を、化合物層7で覆われ、さらに、酸化物(ガラス組成物)5で覆われている。
【0048】
また、酸化物(ガラス組成物)5と化合物層7のバナジウムの価数状態を、X線光電子分光分析(ESCA)により分析した。分析は、電極配線2の表面の汚染状態を考慮し、アルゴン(Ar)エッチングを30秒間、実施してから行った。その分析結果を表2に示す。
【表2】

表2に示すように、分析は、実施例5、実施例10、実施例19、実施例20、実施例27〜30の電極配線2のアルミニウム粒子4を覆っている酸化物(ガラス組成物)5と化合物層7について行った。これらの実施例は、表1に示したように、転移点は375℃以下であり、密着性試験は「◎」であり、耐水性試験も「◎」である。そして、表2に示すように、これらの実施例では、4価以下のバナジウム(V4+以下、すなわち、V4+、V3+、V2+、V1+、V)の原子を個数割合で60%以上含んでいることがわかった。これに対して、これらの実施例では、5価のバナジウム(V5+)の原子を個数割合で40%以下含んでいることがわかった。そして、耐水性試験は、実施例5、実施例10、実施例19、実施例20、実施例27〜30ではみな「◎」であるが、その中でも、4価以下のバナジウム(V4+以下)原子の個数割合が増加するほど、すなわち、実施例20の60%よりは、実施例10の84%や、実施例27の89%の方が、電極配線2の耐水性が向上することがわかった。
【0049】
また、実施例1〜30の化合物層7についてX線回折(XRD)の分析を行った。この分析から、化合物層7には、AlV、Al0.8Sb1.00.2、Al0.5Sb1.00.5、AlV、AlVO、VO・AlO・PO、Al0.020.98、Al0.071.93が形成されていることが確認できた。AlVのバナジウムは0価(V)を取りうる。Al0.8Sb1.00.2のバナジウムは3価(V+3)を取りうる。Al0.5Sb1.00.5のバナジウムは3価(V+3)と4価(V+4)を取りうる。AlVのバナジウムは1価(V+1)と2価(V+2)と3価(V+3)と4価(V+4)を取りうる。AlVOのバナジウムは3価(V+3)を取りうる。VO・AlO・POのバナジウムは4価(V+4)を取りうる。Al0.020.98のバナジウムは4価(V+4)を取りうる。Al0.071.93のバナジウムは4価(V+4)を取りうる。
【0050】
化合物層7は、アルミニウムとバナジウムを含んでいることがわかった。そして、このバナジウムは、4価以下のバナジウムを含んでいることがわかった。また、実施例1〜30の電極配線2は、どれも優れた耐水性試験の結果「◎と○」となっており、これと対応するように、アルミニウム粒子4の表面には、アルミニウムとバナジウムを含む化合物層7が形成されていた。そして、この化合物層7のバナジウムは、4価以下のバナジウムを含んでいた。4価以下のバナジウムは、酸化物(ガラス組成物)5にも含まれていた。以上から、耐水性向上の要因としては、酸化物(ガラス組成物)5中の4価以下のバナジウムと、アルミニウム粒子4のアルミニウムとが焼成時に反応し、アルミニウムと4価以下のバナジウムの化合物層7が、緻密にアルミニウム粒子4の表面を覆うように形成されたために、電極配線2の耐水性が向上したものと推察された。
【0051】
なお、耐水性が向上したのは、アルミニウム粒子4の表面に、化合物層7を形成したためであるので、この化合物層7が形成できるのであれば、前記の製造方法に限らない。例えば、アルミニウム粒子4ではなく、アルミニウム箔やアルミニウム膜といったバルクのアルミニウム表面に、4価以下のバナジウムを含む化合物層7を均一に形成しても、耐水性向上の効果が期待できる。また、4価以下のバナジウムを含む化合物層7を形成する方法も、前記導電性ペーストを熱処理(焼成)する方法以外にも、前記ガラス組成物をターゲットとしたスパッタ法によりアルミニウム表面に化合物層7を成膜してもよい。また、プラズマCVD法等のアルミニウム表面を化合物層7で被覆できる成膜方法を用いてもよい。
【0052】
一方、表1に示す比較例4と比較例5で作製した電極配線2も、走査型電子顕微鏡−エネルギ分散型X線分析装置(SEM-EDX)で観察した。鉛(Pb)やビスマス(Bi)といった金属が、アルミニウムの粒子4同士の界面に析出しており、ガラス組成物のガラス成分(鉛、ビスマス)の偏析が観察された。これは、Pb系ガラスやBi系ガラスによるアルミニウムの粒子4の酸化によって、Pb系ガラスの鉛やBi系ガラスのビスマスが還元されて析出したものと考えられる。このため、アルミニウム表面に均一な化合物層7はできず、耐水性が向上し難かったと推察された。
また、比較例4と比較例5で作製した電極配線2について、X線回折(XRD)の分析を行った。分析の結果から、変色した電極配線2からは水酸化アルミニウム(Al(OH))の生成が確認できた。これが電極変色の原因と推察される。一方で、実施例1〜30の電極配線2では、水酸化アルミニウムが生成しておらず、替わりに、化合物層7が生成していることがわかった。その化合物層7はいずれも4価以下のバナジウムを含む化合物により形成されていた。
【0053】
(第2の実施形態)
[導電性ペースト中のガラス組成物(酸化物の粉末)とアルミニウム粒子の重量比に関する検討]
第2の実施形態では、導電性ペーストのガラス組成物(酸化物の粉末)5(図2参照)とアルミニウム粒子4(図2参照)の重量比に関して検討した。
【0054】
表3に示すように、第2の実施形態では、実施例A1〜A9において、導電性ペーストのガラス組成物(酸化物の粉末)5とアルミニウム粒子4の重量比を変えて、導電性ペーストを作製し、さらに、それらそれぞれの導電性ペーストを使って電極配線2(図2参照)を作製し、各種特性を評価している。評価した特性としては、電極配線2に対して、密着性試験(ピール試験)と、耐水性試験と、比抵抗の計測を行っている。
【表3】

【0055】
(2−1、ガラス組成物(酸化物の粉末)の作製)
ガラス組成物(酸化物の粉末)5としては、表1の実施例10と同じガラス系の組成を有するガラス組成物(酸化物の粉末)5を作製し使用した。実施例10のガラス組成物(酸化物の粉末)5には、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄とリチウムが加えられている。
【0056】
(2−2、導電性ペーストの作製)
導電性ペーストに含有させる金属粒子としては、第1の実施形態と同様に、平均粒径(D50)1μmの粒子群A(4A、図2参照)と平均粒径(D50)5μmの粒子群B(4B、図2参照)との2種類のアルミニウム粒子4(4A、4B)を用意し、粒子群A(4A)と粒子群B(4B)の混合比率が1:1になるように、粒子群Aと粒子群Bのアルミニウム粒子4(4A、4B)を配合して使用した。
【0057】
実施例A1〜A9毎に、配合したアルミニウム粒子4(4A、4B)と、ガラス組成物(酸化物の粉末)5の重量比を変えて混合し、この混合物にバインダ樹脂と溶剤とを添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム粒子4(4A、4B)とガラス組成物(酸化物)5の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。
【0058】
表3のアルミニウム量には、実施例A1〜A9毎に、混合したアルミニウム粒子4(4A、4B)の重量とガラス組成物(酸化物の粉末)5の重量の和に対する、アルミニウム粒子4(4A、4B)の重量の比を、重量%で記載している。
【0059】
表3のガラス量には、実施例A1〜A9毎に、混合したアルミニウム粒子4(4A、4B)の重量とガラス組成物(酸化物の粉末)5の重量の和に対する、ガラス組成物(酸化物の粉末)5の重量の比を、重量%で記載している。よって、どの実施例A1〜A9でも、アルミニウム量とガラス量の和は、100重量%になる。
【0060】
表3に示すように、実施例A1では、アルミニウム量を99.95重量%とし、ガラス量を0.05重量%とした。
実施例A2では、アルミニウム量を99.9重量%とし、ガラス量を0.1重量%とした。
実施例A3では、アルミニウム量を99.5重量%とし、ガラス量を0.5重量%とした。
実施例A4では、アルミニウム量を99重量%とし、ガラス量を1重量%とした。
実施例A5では、アルミニウム量を97重量%とし、ガラス量を3重量%とした。
実施例A6では、アルミニウム量を95重量%とし、ガラス量を5重量%とした。
実施例A7では、アルミニウム量を90重量%とし、ガラス量を10重量%とした。
実施例A8では、アルミニウム量を85重量%とし、ガラス量を15重量%とした。
実施例A9では、アルミニウム量を80重量%とし、ガラス量を20重量%とした。
【0061】
(2−3、電極配線の形成)
第1の実施形態と同様に、太陽電池セル等の電子部品1(図2参照)に用いられる多結晶シリコン基板3(図2参照)上に、実施例A1〜A9毎の導電性ペーストを、スクリーン印刷法にてそれぞれ塗布した。塗布後、大気中において温度150℃で数分間加熱し乾燥させた。その後、電気炉にて、大気中で850℃の焼成温度で2秒間の熱処理を施して、電極配線2(図2参照)を焼成し完成させた。焼成された電極配線2の膜厚はどれも、約40μmであった。
【0062】
(2−4、比抵抗測定)
実施例A1〜A9毎に、完成した電極配線2の比抵抗を四探針法で測定した。比抵抗測定では、電極配線2の電気抵抗と膜厚を測定し、この電気抵抗と膜厚に基づいて比抵抗を算出した。
【0063】
図3のガラス量に対する比抵抗のグラフに、実施例A1〜A9毎の、電極配線2の比抵抗と、ガラス量(ガラス組成物のアルミニウム粒子に対する重量分率)とに対応する点をプロットしている。図3に示すように、実施例A1〜A6ではどれも、比抵抗は、略2×10−5Ωcmであり、略一定であった。すなわち、ガラス量が、0.05重量%〜5重量%の範囲では、比抵抗は、略2×10−5Ωcmで略一定であった。
【0064】
実施例A6〜A9では、ガラス量が増加するほど、比抵抗も大きくなった。すなわち、ガラス量が、5重量%〜20重量%の範囲では、ガラス量が増加するほど、比抵抗も大きくなった。そして、ガラス量が20重量%を超えてさらに増加すると、比抵抗もさらに大きくなると考えられた。太陽電池セル等の電子部品1の電極配線2の比抵抗としては、1.0×10−4Ωcm以下であることが要求されるところ、実施例A9(ガラス量20重量%)において、比抵抗が1.0×10−4Ωcmになったので、比抵抗を1.0×10−4Ωcm以下の電極配線2を作製するためには、ガラス量を0.05重量%〜20重量%の範囲に設定すればよいことがわかった。
【0065】
(2−5、密着性試験(ピール試験))
実施例A1〜A9毎に、完成した電極配線2の基板3に対する接着(密着性)の強さを、ピール試験にて評価した。ピール試験は、第1の実施形態と同様な方法と同様の評価基準で行った。表3に示すように、ピール試験の結果は、実施例A5〜A9で「◎(剥がれなし)」であり、実施例A2〜A4で「○(薄剥がれあり)」であり、実施例A1で「×(剥がれる)」であった。
【0066】
表3において、ガラス量と密着性試験(ピール試験)とを比較すると、ガラス量が0.05重量%以下の場合に、「×」となり、ガラス量が0.05重量%を超え、より確実には0.1重量%以上、1重量%以下の場合に、「○」となり、ガラス量が1重量%を超え、より確実には3重量%以上の場合に、「◎」となった。ガラス量が増加する程、基板3に電極配線2を接着させる接着剤となるアルミニウム粒子4(4A、4B)に対するガラス組成物5の重量比が増えるので、アルミニウム粒子4(4A、4B)の密着性が向上し、結果として電極配線2の密着性が向上したと考えられる。
【0067】
(2−6、耐水性試験)
実施例A1〜A9毎の電極配線2に対し、耐水性試験として、第1の実施形態と同様に、温度85℃、湿度85%の条件の環境下に、1000時間、放置するという加速試験を行った。評価基準も、第1の実施形態と同様とした。表3に示すように、耐水性試験の結果は、実施例A1〜A9で「○(変色わずか)」であった。
【0068】
表3において、密着性試験と耐水性試験を比較すると、両方の試験が「○」以上の評価になるのは、ガラス量が0.1重量%以上の実施例A2〜A9であり、電極配線2としては、ガラス量が0.1重量%以上であることが好ましいことがわかった。
【0069】
なお、ガラス量が0.05重量%の実施例1では、密着性試験は「×」であったが、耐水性試験は「○」であった。これは、0.05重量%のガラス量では、アルミニウム粒子4(4A、4B)の接着剤の量としては不足しているが、第1の実施形態で説明した薄い化合物層7(図2参照)をアルミニウム粒子4(4A、4B)の表面に形成するだけなら十分であったからと考えられる。また、アルミニウム粒子4(4A、4B)は、平均粒径(D50)1μmの粒子群A(4A)と、平均粒径(D50)5μmの粒子群B(4B)を混合したものであるが、粒径の大きい粒子群B(4B)の粒子群A(4A)に対する重量比を大きくした場合には、アルミニウム粒子4間の空隙が増え、アルミニウム粒子4の密度が低下し、アルミニウム粒子4の表面積も減少するため、耐水性試験の「○」の評価が得られるガラス量は、実施例A1の0.05重量%よりさらに小さくできると考えられる。
【0070】
(第3の実施形態)
[導電性ペースト中のアルミニウム粒子のアルミニウム合金に関する検討]
第3の実施形態では、導電性ペーストのアルミニウム粒子4の材料とするアルミニウム合金に関して検討した。第3の実施形態では、各種アルミニウム合金で、アルミニウム粒子4を作製し、さらに、導電性ペーストを作製し、それらそれぞれの導電性ペーストを使って電極配線2を作製し、耐水性試験を行っている。
【0071】
(3−1、アルミニウム合金製のアルミニウム(合金)粒子の作製)
まず、所望の組成となるように、アルミニウム金属(純アルミニウム)と、添加金属の重量を計量した。計量したアルミニウム金属と添加金属を均一に溶解し、これを水アトマイズ法のようなノズル噴霧によってアルミニウム(合金)粒子4を形成した。このアルミニウム(合金)粒子4を乾燥させ、このアルミニウム(合金)粒子4から、篩いを用いて、平均粒径(D50)が、1.5μm〜5μmの範囲に入るように分級したアルミニウム(合金)粒子4を取得した。
【0072】
アルミニウム合金として、実施例B1で、銅が92重量%含有しているアルミニウム合金(Al−92重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B2で、銅が90重量%含有しているアルミニウム合金(Al−90重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B3で、銅が66重量%含有しているアルミニウム合金(Al−66重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B4で、銅が32.5重量%含有しているアルミニウム合金(Al−32.5重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B5で、銅が10重量%含有しているアルミニウム合金(Al−10重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B6で、銅が3重量%含有しているアルミニウム合金(Al−3重量%Cu)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B7で、マグネシウムが3重量%含有しているアルミニウム合金(Al−3重量%Mg)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B8で、カルシウムが3重量%含有しているアルミニウム合金(Al−3重量%Ca)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B9で、シリコンが7重量%含有しているアルミニウム合金(Al−7重量%Si)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
実施例B10で、銀が10重量%含有しているアルミニウム合金(Al−10重量%Ag)のアルミニウム(合金)粒子4を作製した。
【0073】
(3−2、ガラス組成物(酸化物の粉末)の作製)
ガラス組成物(酸化物の粉末)5としては、表1の実施例10と同じガラス系の組成を有するガラス組成物(酸化物の粉末)5を作製し使用した。実施例10のガラス組成物(酸化物の粉末)5には、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄とリチウムが加えられている。
【0074】
(3−3、導電性ペーストの作製)
実施例B1〜B10毎に、表3の実施例A5と同様に、作製したアルミニウム(合金)粒子4の97重量部に対して、3重量部のガラス組成物(酸化物)5の粉末を混合し、さらに、この混合物にバインダ樹脂と溶剤とを添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム(合金)粒子4とガラス組成物(酸化物)5の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。
【0075】
(3−4、電極配線の形成)
第1の実施形態と同様に、太陽電池セル等の電子部品1に用いられる多結晶シリコン基板3上に、実施例B1〜B10毎の導電性ペーストを、スクリーン印刷法にてそれぞれ塗布した。塗布後、大気中において温度150℃で数分間加熱し乾燥させた。その後、電気炉にて、大気中で850℃の焼成温度で2秒間の熱処理を施して、電極配線2を焼成し完成させた。焼成された電極配線2の膜厚はどれも、約40μmであった。
【0076】
(3−5、耐水性試験)
実施例B1〜B10毎の電極配線2に対し、耐水性試験として、第1の実施形態と同様に、温度85℃、湿度85%の条件の環境下に、1000時間、放置するという加速試験を行った。評価基準も、第1の実施形態と同様とした。耐水性試験の結果は、実施例B1〜B10のすべてで「○(変色わずか)」であった。これより、アルミニウム粒子4に、アルミニウム合金を使用した場合にも、第1の実施形態で説明した化合物層7が形成され、耐水性が向上したと考えられた。耐水性の向上に関しては、アルミニウム粒子4は純アルミニウムに限定されるものではなく、アルミニウムを含む、いわゆるアルミニウム合金粒子4であれば耐水性が向上することがわかった。
【0077】
(第4の実施形態)
[高耐水性の電極配線の太陽電池セルへの適用に関する検討]
図4Aに、本発明の第4の実施形態に係る太陽電池セル(電子部品)30(1)の平面図を示し、図4Bに、その底面図を示し、図4Cに、図4AのA−A′方向の矢視断面図を示している。第4の実施形態では、本願発明を適用可能な電子部品1として、太陽電池セル30を例に挙げ説明する。
【0078】
図4Bと図4Cに示す太陽電池セル30(1)の裏面電極35(2)に、本願発明の電子部品1の電極配線2を適用している。また、p型のシリコン基板からなる半導体基板31(3)の裏面上に裏面電極35(2)が形成されている。半導体基板31(3)が、第1の実施形態の基板3に相当し、裏面電極35(2)が、第1の実施形態の電極配線2に相当する。
【0079】
半導体基板31(3)には、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などが使用される。この半導体基板31(3)は、ホウ素(B)等を含有しp型半導体となっている。図4Aに示される半導体基板31(3)の受光面側には、太陽光の反射を抑制するために、エッチング等により凹凸(図示省略)が形成されている。また、図4Cに示すように、半導体基板31(3)の受光面側には、リン(P)等がドーピングされ、サブミクロンオーダの厚みでn型半導体の拡散層32が形成されている。この拡散層32のn型半導体と、半導体基板31(3)のp型半導体とにより、pn接合部が形成されている。このpn接合部では、太陽光が吸収されて生成した電子・正孔対が、電子と正孔に分離し、電圧が発生することになる。半導体基板31(3)の受光面の裏面側には、アルミニウムが高濃度にドーピングされ、サブミクロンオーダの厚みでp+型半導体の合金層(Back Surface Field :BSF層)37が形成されている。合金層37が形成されることにより、半導体基板31(3)内部で発生したキャリアが裏面で再結合するのを防止し、太陽電池セルの性能を向上させることができる。
【0080】
図4Aに示すように、半導体基板31(3)の受光面上には、受光面電極配線34が設けられている。受光面電極配線34は、半導体基板31(3)の受光面を縦断するように平行に配置された太い配線と、この太い配線に対してグリッド状(櫛歯状及び梯子状)に配置された細い配線とを有し、受光面の全面から集電可能になっている。また、半導体基板31(3)の受光面上には、窒化シリコン(Si)膜等の反射防止層33が、厚さ100nm程度形成されている。受光面電極配線34は、ガラス粉末と銀粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0081】
図4Bと図4Cに示すように、半導体基板31(3)の受光面の裏面上には、裏面電極35(2)と出力電極36が設けられている。裏面電極35(2)は、半導体基板31(3)の受光面の裏面の略全面を覆うように配置され、半導体基板31(3)の受光面の裏面の略全面から集電可能になっている。出力電極36は、半導体基板31(3)の受光面の裏面を縦断するように平行に配置され、裏面電極35(2)から集電可能になっている。出力電力36は、酸化物の粉末と銀粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。裏面電極35(2)は、後記で詳述するが、酸化物の粉末とアルミニウム粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0082】
次に、太陽電池セル30(1)の製造方法について説明する。
【0083】
(導電性ペーストの作製)
第4の実施形態では、裏面電極35(2)用の導電性ペーストとして、表3の実施例A5で使用した導電性ペーストと同じものを作製し使用した。
【0084】
(太陽電池セルの作製)
半導体基板31(3)として、p型のシリコン基板を用意した。次に、半導体基板31(3)、図示は省略したが、光入射効率を向上させるため1%苛性ソーダ(水酸化ナトリウム:NaOH)と10%イソプロピルアルコール(CHCH(OH)CH)の混合液を用い、半導体基板31(3)の受光面側をエッチングしてテクスチャを形成した。
【0085】
半導体基板31(3)の受光面側に、五酸化リン(P)を含む液を塗布し、900℃で30分間処理することで、五酸化リンから半導体基板31(3)へリン(P)を拡散させ、受光面側にn型半導体の拡散層32を形成した。五酸化リンを除去した後、拡散層32上に、窒化シリコン膜の反射防止膜33を一様な厚さに形成した。この窒化シリコン膜は、シラン(SiH)とアンモニア(NH)の混合ガスを原料とするプラズマCVD法等により形成することができる。
【0086】
次に、受光面電極配線34を形成するために、受光面電極配線34の配置されるグリッド状に受光面上の反射防止膜33を除去する。酸化物の粉末と銀粒子とを含む市販の導電性ペースト(銀ペースト)をスクリーン印刷法により、受光面側に、グリッド状に塗布し、150℃に加熱して30分間乾燥させた。
【0087】
半導体基板31(3)の受光面の裏面側には、出力電極36用に、図4Bに示すパターンになるように、酸化物の粉末と銀粒子とを含む市販の導電性ペースト(銀ペースト)をスクリーン印刷法により塗布し、また、裏面電極35(2)用に、図4Bに示すパターンになるように、酸化物の粉末とアルミニウム粒子とを含む、表3の実施例A5で使用したのと同じ導電性ペースト(アルミニウムペースト)をスクリーン印刷法により塗布した。そして、出力電極36と裏面電極35(2)を、150℃で30分間加熱して乾燥させた。なお、導電性ペーストの塗布は、受光面側と裏面側のどちらを先に塗布してもかまわない。
【0088】
次に、トンネル炉を用いて、導電性ペースト(銀ペーストとアルミニウムペースト)を、半導体基板31(3)ごと、大気中で850℃まで加熱し、2秒間保持する焼成を行うことで、受光面電極配線34と出力電極36と裏面電極35(2)を形成し、太陽電池セル30(1)を完成させた。なお、この焼成により、半導体基板31(3)の裏面側では、裏面電極35(2)の下部の半導体基板31(3)に、裏面電極35(2)のアルミニウム粒子4(図2参照)からアルミニウムが高濃度に拡散し、p+型半導体の合金層37が形成されている。また、この焼成により、半導体基板31(3)の受光面側では、受光面電極配線34に含まれる酸化物(ガラス組成物)と反射防止層33とが反応して、受光面電極配線34と拡散層32とがオーミック接続されている。
【0089】
また、比較として、表1の比較例4で用いた導電性ペーストと同じ導電性ペーストを使用して裏面電極35(2)を形成した点だけが異なる太陽電池セル30(1)を作製した。
【0090】
(太陽電池セルの評価)
前記で作製した本発明と比較のための太陽電池セルに対し、裏面電極35(2)について、密着性試験(ピール試験)と耐水性試験を行い、また、太陽電池セルの変換効率を計測した。密着性試験(ピール試験)と耐水性試験では、第1の実施形態と同様な方法と同様の評価基準で行った。密着性試験(ピール試験)は、どちらも良好な結果「◎」を示した。また、耐水性試験では、本発明の太陽電池セルは「○」の評価となり、比較ための太陽電池セルは「×」の評価となった。比較ための太陽電池セルの裏面電極35(2)には、低融点ガラスである鉛系のガラス組成物とを含む導電性ペーストが使用されているため、焼成時に、ガラス組成物中の鉛成分がアルミニウム粒子によって還元され、アルミニウム粒子の粒間などに鉛の金属粒子として析出し、ガラス組成物の転移点が高温化し、結果的に、ガラス組成物によってアルミニウム粒子の表面を被覆し難くなり、裏面電極35(2)の耐水性が低下していた。本願の太陽電池セルの裏面電極35(2)では、化合物層7によってアルミニウム粒子の表面を被覆するので、裏面電極35(2)の耐水性を向上できる。
【0091】
また、本発明の太陽電池セル30(1)は、比較のための太陽電池セルよりも変換効率が高効率となることが判明した。これは、裏面電極35(2)の電気抵抗値を低下できたためと、裏面電極35(2)のアルミニウム粒子4(図2参照)からアルミニウムが拡散して形成されるp+型半導体の合金層37が、適切な不純物(アルミニウム)濃度で形成されたためと考えられる。これより、化合物層7は、アルミニウム粒子の耐水性を高めるだけでなく、アルミニウム粒子間の電気伝導を阻害せず、アルミニウム粒子から合金層37へのアルミニウムの供給も阻害しないことがわかった。以上のことから、本発明の電子部品1の電極配線2(図2参照)は、太陽電池せる30(1)のp型電極37(2)として適用できることが確認された。なお、前記で説明した太陽電池セル30(1)の裏面電極35(2)に適用できることが確認された。裏面電極35(2)は、p型半導体にオーミック接続する電極配線2であり、太陽電池セル30(1)以外の、電子部品1のp型半導体にオーミック接続する電極配線2にも適用できると考えられる。もちろん、裏面電極35(2)は、比抵抗が低く、耐水性が高いことから、単に、電極間を接続する電極配線2として用いることもできる。
【0092】
(第5の実施形態)
[高耐水性の電極配線のプラズマディスプレイパネルへの適用に関する検討]
図5に、本発明の第5の実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(PDP:電子部品)11(1)の断面図の一部を示す。第5の実施形態では、本願発明を適用可能な電子部品1として、プラズマディスプレイパネル11を例に挙げ説明する。プラズマディスプレイパネル11(1)の表示電極20とアドレス電極21に、本願発明の電子部品1の電極配線2を適用いている。プラズマディスプレイパネル11(1)は、前面板12(3)と背面板13(3)とが100〜150μmの間隙をもって対向させて配置され、前面板12(3)と背面板13(3)の間隙は隔壁14で維持されている。前面板12(3)と背面板13(3)との周縁部は封着材料15で気密に封止され、前面板12(3)と背面板13(3)の間隙のパネル内部には希ガスが充填されている。
【0093】
前面板12(3)上には表示電極20(2)が形成されている。前面板12(3)が、第1の実施形態の基板3に相当し、表示電極20(2)が、第1の実施形態の電極配線2に相当する。表示電極20(2)上に誘電体層23が形成され、誘電体層23上に放電から表示電極20(2)等を保護するための保護層25(例えば、酸化マグネシウム(MgO)の蒸着膜)が形成されている。
【0094】
背面板13(3)上にはアドレス電極21(2)が形成されている。背面板13(3)が、第1の実施形態の基板3に相当し、アドレス電極21(2)が、第1の実施形態の電極配線2に相当する。平面視において、アドレス電極21(2)は、表示電極20(2)に対して直交するように形成されている。アドレス電極21(2)上に誘電体層24が形成され、誘電体層24上にセル16を構成するための隔壁14が設けられている。隔壁14は、ストライプ状あるいは格子(ボックス)状の構造体になっている。
【0095】
前面板12(3)と背面板13(3)の間の間隙において、隔壁14により区切られた微小空間はセル16となる。セル16には蛍光体17、18、19が充填されている。赤色蛍光体17が充填されたセル16と緑色蛍光体18が充填されたセル16と青色蛍光体19が充填されたセル16の3原色に対応する3個のセル16で1画素が構成されている。各画素は、表示電極20(2)とアドレス電極21(2)に印加される信号に応じて種々の色を発光することができる。
【0096】
次に、プラズマディスプレイパネル11(1)の製造方法について説明する。
【0097】
(導電性ペーストの作製)
まず、アルミニウムを溶融し、水アトマイズ法にて球状のアルミニウム粒子を形成した。このアルミニウム粒子を、有機溶媒中でボールミルで処理し、フレーク状(板状)のアルミニウム粒子を形成した。さらに、このフレーク状のアルミニウム粒子の熱的安定性を向上させるために、還元雰囲気中で温度700℃のアニール処理を行った。この板状の粒子から、粒径8μm以上の粒子を篩いによって除去し、かつ、粒径1.5μm未満の粒子も篩いによって除去した。残った粒子は、つまり、篩いによって大きな粒子と小さな粒子を除去した後のアルミニウム粒子は、粒径が1.5μm以上8μm未満の範囲内に約95%以上の体積分率を有し、平均粒径(D50)が5μmであった。
【0098】
また、ガラス組成物(酸化物の粉末)5としては、表1の実施例10と同じガラス系の組成を有するガラス組成物(酸化物の粉末)5を作製し使用した。実施例10のガラス組成物(酸化物の粉末)5には、バナジウムとリンの主成分に対して、添加物として、鉄とリチウムが加えられている。
【0099】
作製したフレーク状のアルミニウム粒子4の100重量部に対して、0.1重量部のガラス組成物(酸化物)5の粉末を混合し、さらに、この混合物にバインダ樹脂と溶剤とを添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム粒子4とガラス組成物(酸化物)5の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはα−テルピネオールを用いた。
【0100】
(プラズマディスプレイパネルの作製)
次に、プラズマディスプレイパネルを作製した。まず、導電性ペーストを、スクリーン印刷法によって、前面板12(3)と背面板13(3)の全面に塗布し、大気中150℃で乾燥させた。フォトリソグラフィ法とエッチング法によって導電性ペーストの塗布膜の余分な箇所を除去して、表示電極20(2)とアドレス電極21(2)のパターニングを行った。その後、大気中、焼成温度600℃、焼成時間30分間で焼成して、表示電極20(2)とアドレス電極21(2)を完成させた。この焼成では、焼成雰囲気は酸性雰囲気になるのであるが、この焼成によって、表示電極20(2)とアドレス電極21(2)とは、特にアルミニウムの金属粒子が化学反応して変色等することはなかった。
【0101】
次に、誘電体層23、24となる誘電性ペーストを前面板12(3)と背面板13(3)のそれぞれに塗布し、大気中、焼成温度610℃、焼成時間30分間で焼成した。なお、この焼成では、焼成雰囲気は酸性雰囲気になり、誘電体層23は表示電極20(2)に直接接し、誘電体層24はアドレス電極21(2)に直接接するが、この焼成によって、誘電体層23が、表示電極20(2)とで化学反応することはなく、誘電体層24が、アドレス電極21(2)とで化学反応することはなかった。前面板12(3)の誘電体層23の側から保護層25を蒸着した。
【0102】
隔壁14は、少なくとも粉末状のガラス組成物とフィラーとを含む材料を、ストライプ状あるいは格子状に成形し、この成形した構造体を500〜600℃で焼結して作製した。この隔壁14を、誘電体層24の上に配置し、セル16を構成させた。そして、それぞれのセル16に、三原色に対応する蛍光体用のペーストを充填し450〜500℃で焼成することによって、赤色蛍光体17と緑色蛍光体18と青色蛍光体19を、セル16内に形成した。
【0103】
次に、封着材料15を、ディスペンサー法や印刷法等により、前面板12(3)または背面板13(3)のどちらか一方の周縁部に塗布した。そして、前面板12(3)と背面板13(3)を封着した。前面板12(3)と背面板13(3)の封着では、前面板12(3)と背面板13(3)とを正確に位置合わせしながら対向させて配置し、420〜500℃に加熱した。この加熱時には、セル16内のガスを排気して替わりに希ガスを封入した。なお、封着材料15は、蛍光体17〜19の形成時の蛍光体用のペーストの焼成と同時に仮焼成してもよい。封着材料15を仮焼成することによって、封着材料15内に含まれる気泡を低減できる。なお、図2では、封着材料15とアドレス電極21(2)とが直接接しているが、表示電極20(2)も外部に電極を引き出すために封着材料15と直接接している。封着材料15は、仮焼成時とガラス封着時に加熱され、この加熱では焼成雰囲気は酸性雰囲気になるのであるが、この加熱によって、封着材料15が、表示電極20(2)およびアドレス電極21(2)とで化学反応することはなかった。以上で、プラズマディスプレイパネル11(1)が完成した。
【0104】
(プラズマディスプレイパネルの評価)
(外観検査)
表示電極20(2)とアドレス電極21(2)の周りの外観検査を行った。表示電極20(2)と前面板12(3)との界面部や、表示電極20(2)と誘電体層23との界面部には、空隙の発生や変色は認められなかった。また、アドレス電極21(2)と背面板13(3)の界面部や、アドレス電極21(2)と誘電体層24の界面部には、空隙の発生や変色は認められなかった。外観上良好な状態でプラズマディスプレイパネル11(1)を作製することができた。
【0105】
(点灯実験)
続いて、作製したプラズマディスプレイパネル11(1)の点灯実験を行った。プラズマディスプレイパネル11(1)のセル16を点灯(発光)させるために、点灯させたいセル16の表示電極20(2)とアドレス電極21(2)との間に電圧を印加してセル16内にアドレス放電を行い、希ガスをプラズマ状態に励起してセル16内に壁電荷を蓄積させた。次に、表示電極20(2)の対に一定の電圧を印加することで、壁電荷が蓄積されたセル16のみに表示放電が起こり紫外線22を発生させた。そして、この紫外線22を利用して蛍光体17〜19を発光させ、画像(情報)を表示させた。
【0106】
この画像情報の表示の前後で、表示電極20(2)及びアドレス電極21(2)の比抵抗が増加することはなかった。また、隣接する表示電極20(2)同士、及び、隣接するアドレス電極21(2)同士等で、電気的耐圧性が低下することはなく、電圧を昇圧でき、セル16を点灯することができた。また、銀厚膜の電極配線のようなマイグレーション現象も生じず、その他特に支障があるような点は認められなかった。第5の実施形態のプラズマディスプレイパネル11(1)の表示電極20(2)とアドレス電極21(2)には、高価な銀を使っていないので、コスト低減にも大きく貢献できる。
【0107】
(第6の実施形態)
図6に、本発明の第6の実施形態に係るセラミック多層配線基板(電子部品)41(1)の断面図を示す。第6の実施形態では、本発明に係る電子部品1(図2参照)を多層配線基板へ適用した例について説明する。図6では、多層配線基板の1例として、低温焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)の5層からなる多層配線基板41(1)を示している。多層配線基板41(1)のスルーホール電極43(2)と配線44(2)に、本願発明の電子部品1の電極配線2を用いている。セラミック基板42(3)それぞれの上面と下面に配線44(2)が形成されている。図6では、配線44(2)は、6層形成されている。各層の配線44(2)は、スルーホール電極43(2)で接続されている。スルーホール電極43(2)は、セラミック基板42(3)を貫通している。多層配線基板41(1)では、配線44(2)とスルーホール電極43(2)が三次元的に形成されている。セラミック基板42(3)が、第1の実施形態の基板3に相当し、スルーホール電極43(2)と配線44(2)が、第1の実施形態の電極配線2に相当する。
【0108】
次に、多層配線基板41(1)の製造方法について説明する。
【0109】
(導電性ペーストの作製)
第6の実施形態では、スルーホール電極43(2)と配線44(2)用の導電性ペーストとして、表3の実施例A5で使用した導電性ペーストと同じものを作製し使用した。
【0110】
(多層配線基板の作製)
まず、ガラス粉末とセラミックス粉末とバインダとが混練された複数枚のグリーンシートを用意した。グリーンシートは、後記する焼成によって各層のセラミック基板42(3)となる。次に、グリーンシートの所望の位置に貫通孔を開ける。貫通孔の開いたグリーンシートに対し、実施例A5で使用したものと同じ導電性ペーストを、所望の配線パターンに印刷法で塗布する。このとき、貫通孔にも導電性ペーストが充填される。配線パターンに塗布された導電性ペーストが、後記する焼成によってスルーホール電極43(2)と配線44(2)になる。必要に応じて、例えば、図6に示す最下層のグリーンシートの裏面にも導電性ペーストを印刷法にて塗布し配線パターンを形成する。グリーンシートの裏面に塗布する場合には、表面に塗布した導電性ペーストを乾燥させてから行うことになる。
【0111】
所定の配線パターンを形成した複数のグリーンシートを積層し、一体で焼成する。図7に、焼成する際の温度スケジュールの一例を示す。図7に示すように、室温から700℃までの昇温過程は大気中とし、700℃〜900℃の温度範囲(60分間の900℃での保持時間を含む)の過程は窒素雰囲気中とし、700℃から室温までの降温過程は再び大気中とした。なお、昇温レートと降温レートとは、5℃/分とした。なお、焼成の温度スケジュールは、図7に限定されるものではない。なお、700℃〜900℃の温度範囲で窒素雰囲気中としているのは、導電性ペースト中の粒子4の酸化を抑制するためである。
【0112】
(多層配線基板の評価)
配線44(2)の周りの外観検査を行った。配線44(2)とセラミック基板42(3)との界面部には、空隙の発生や変色は認められなかった。外観上良好な状態で多層配線基板41(1)を作製することができた。配線44(2)とスルーホール電極43(2)の比抵抗を測定したところ、表1の実施例2と同様の設計通りの値が得られた。次に、作製した多層配線基板41(1)の断面観察を行った。その結果、作製した多層配線基板41(1)は十分緻密に焼成されていた。そのため、比抵抗も良好な設計通りの値となったと思われる。これは、グリーンシートで、700℃までの昇温過程において、略完全に脱バインダが完了していたためと考えられた。また、グリーンシートのガラス粉末が、スルーホール電極43(2)と配線44(2)と化学反応することはなく、互いの界面近傍で空隙も発生していないことが確認された。以上のことから、本発明の電極配線2(図2参照)は、多層配線基板41(1)の配線44(2)とスルーホール電極43(2)として適用できることが確認された。配線44(2)とスルーホール電極43(2)として、高価な銀厚膜の電極配線を使用する必要が無いので、コスト低減にも大きく貢献できる
【0113】
実施形態では、電子部品1が、太陽電池セル30、プラズマディスプレイパネル11とセラミック実装基板41の場合について説明したが、電子部品1はこれらに限らず、アルミニウムの電極配線2が適用可能な電子部品1に適用範囲を広げることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 電子部品
2 電極配線
3 基板
4 粒子
4A 粒子群A(第1粒子群)
4B 粒子群B(第2粒子群)
5 酸化物
5a ガラス相
5b 結晶相(微結晶)
6 ネッキング結合部
7 化合物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム(Al)及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、前記粒子を基板に固定する酸化物とを有する電極配線を具備する電子部品であって、
前記酸化物は、価数が4価以下のバナジウム(V)を含むことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記粒子の表面には、バナジウムとアルミニウムを含む化合物層が形成され、
前記化合物層に含まれるバナジウムは、価数が4価以下のバナジウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記化合物層は、アルミニウムと価数が0価のバナジウムとを含む合金相を有していることを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記化合物層は、AlV、Al0.8Sb1.00.2、Al0.5Sb1.00.5、AlV、AlVO、VO・AlO・PO、Al0.020.98、Al0.071.93の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記酸化物は、リン(P)を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記酸化物は、ガラス相を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記粒子は、銀(Ag)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記電極配線の比抵抗が、1×10−4Ωcm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記酸化物は、バリウム(Ba)、タングステン(W)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項10】
アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、酸化物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストであって、
前記酸化物は、ガラス相を有し、かつ、価数が4価以下のバナジウムを含むことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項11】
前記酸化物は、リンを含むことを特徴とする請求項10に記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記酸化物は、バリウム(Ba)、タングステン(W)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の導電性ペースト。
【請求項13】
前記ガラス相の転移点は、500℃以下であることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項14】
前記ガラス相の転移点は、400℃以下であることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項15】
前記粉末は、前記粒子の100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項16】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の電子部品において、電子部品が、ディスプレイパネル、太陽電池セル、セラミック実装基板のいずれかであることを特徴とする電子部品。
【請求項17】
アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、ガラス相を有し、かつ、価数が4価以下のバナジウムを含む酸化物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストを基板に塗布し、
塗布した前記導電性ペーストを焼成して、電極配線を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58308(P2013−58308A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65579(P2010−65579)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】