説明

電子部品実装装置および電子部品実装方法

【課題】アンダーフィル材の上面におけるシワの発生を抑制すること。
【解決手段】ボンディングツール10は、防着テープ30を介してチップ41を吸着する。ボンディングツール10は、チップ41を吸着する電子部品吸着穴11と、電子部品吸着穴11の周囲に設けられ、防着テープ30を吸収する溝13を有する。チップ41をアンダーフィル材70に押し付けて加熱し、アンダーフィル材70をチップ41からはみ出させて上段チップの実装面を形成する際に、防着テープ30が加熱を受けて膨張した分が溝13に入り込むので、アンダーフィル材の上面にシワが発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置および電子部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を基板に実装する場合に、吸着穴を有するボンディングツールが防着テープを介して電子部品を吸着して保持し、基板上に配置した接着剤に電子部品を押し付けて加熱する実装技術が知られている。具体的には、離型性のあるフッ素系テープを防着テープとしてボンディングツールに吸着させ、ボンディングツールのチップ吸着穴の位置で、フッ素系テープを針でつき、穴を明ける。チップを吸着させた後、チップ実装を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−7771号公報
【特許文献2】特開2006−66767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、LSI(Large Scale Integration)パッケージの薄化に伴い、内蔵する電子部品(チップ)の薄化やフリップチップの採用が増加傾向にある。パッケージ内で電子部品を積層するマルチチップ実装では、積層時に上段チップ(第2の電子部品)が下段チップ(第1の電子部品)の外周からはみ出す形で実装されるオーバーハングケースがある。
【0005】
このオーバーハングケースでは、チップが薄くなることによって、上段チップのワイヤボンディング時にボンディング品質の低下やチップ破損などの懸念がある。そこで、オーバーハングケースのボンディング品質向上やチップ破損防止のため、下段チップを実装する際に先入れした接着剤(アンダーフィル材)を下段チップの周辺まではみ出させ、オーバーハング部分を補強するなどの手段が検討されている。すなわち、かかる方法では、下段チップの上面とはみ出したアンダーフィル材の上面が上段チップの実装面となる。
【0006】
しかしながら、オーバーハングケースの下段チップの実装に上述した従来の実装技術を適用すると、加熱時に防着テープが伸びてシワとなり、下段チップの周辺にはみ出したアンダーフィル材にシワが転写されるという問題がある。
【0007】
すなわち、フッ素系テープが固定されておらず、チップ実装時にボンディングツールから掛かる熱(一例として約200℃以上)によって、PTFEフィルム(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系テープが膨張し、膨張部と非膨張部の間でシワが発生する。そのシワが、アンダーフィル材がフィレットとして形成される箇所まで延伸し、フィレットにもシワが発生してしまう。
【0008】
上段チップの実装面となるアンダーフィル材の上面にシワが転写されると、上段チップのワイヤボンディング品質への影響、ワイヤボンディングによるクラック発生、およびチップ積層接着面の密着度の低下などが発生する可能性がある。また、接着剤供給量のコントロールが困難となり、供給過多となったケースでは、接着剤はみ出しによる隣接部品の汚染等の懸念も生じる。尚、本課題は、アンダーフィル材のタイプ(シート/ペースト)および上段チップの接着剤タイプ(シート/ペースト)によらず共通課題である。また、上段チップ厚が約200μm以下のケースで、ワイヤボンディング時の破損の可能性が高くなる。
【0009】
チップを積層しない、すなわちチップを1つだけ実装する場合においても、シワの発生により接着剤が供給過多となったケースでは、接着剤はみ出しによる配線パターンの汚染等の懸念が生じる。
【0010】
開示の技術は、アンダーフィル材の表面におけるシワの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の電子部品実装装置は、電子部品を基板に実装する電子部品実装装置である。開示の装置は、防着テープを介して前記電子部品を吸着するボンディングツールを有し、前記ボンディングツールには、前記第1の電子部品を吸着する吸着穴と、前記吸着穴の周囲に前記防着テープを吸収する溝が設けられている。そして、前記溝は、前記第1の電子部品と前記基板との間に配置される接着剤の外形よりも外側に設けられる。
【0012】
また電子部品実装方法は、電子部品を基板に実装する電子部品実装方法であって、基板上に樹脂製の接着剤を供給する工程と、防着テープを介してボンディングツールに電子部品を吸着する工程と、前記電子部品を前記接着剤に向かって移動させる工程と、前記防着テープを介して前記ボンディングツールの端面を前記接着剤に押し当てる工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、アンダーフィル材の表面におけるシワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施例にかかる電子部品実装装置のボンディングツールの説明図である。
【図2】図2は、基板80にチップ41を実装した状態の説明図である。
【図3】図3は、本実施例に係る電子部品実装装置の構成図である。
【図4】図4は、マルチチップを実装した基板の説明図である。
【図5】図5は、アンダーフィル材70におけるシワの発生についての説明図である。
【図6】図6は、使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である(その1)。
【図7】図7は、使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である(その2)。
【図8】図8は、開示の技術によって使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である。
【図9】図9は、チップの寸法の一例についての説明図である。
【図10】図10は、溝によるテープの吸収についての説明図である。
【図11】図11は、実装時のシワの抑制についての説明図である。
【図12】図12は、溝13に対するテープ吸着穴の配置の説明図である。
【図13】図13は、溝の変形例についての説明図である。
【図14】図14は、本実施例に係る電子部品実装方法の処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電子部品実装装置および電子部品実装方法の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本実施例にかかる電子部品実装装置のボンディングツールの説明図である。図1の1aは、ボンディングツール10の平面図であり、1bはボンディングツールのA−A’線断面図である。
【0017】
ボンディングツール10は、第1の電子部品に第2の電子部品を重ねるマルチチップ実装のうち、第1の電子部品であるチップ41を基板80に実装する電子部品実装装置のボンディングツールである。
【0018】
ボンディングツール10は、防着テープ30を介してチップ41を吸着する。ボンディングツール10は、チップ41を吸着する電子部品吸着穴11と、電子部品吸着穴11の周囲に設けられ、防着テープ30を吸収する溝13を有する。ここで、溝13による防着テープ30の吸収とは、防着テープ30が加熱を受けて膨張した場合の寸法変化分が溝13に入り込むことをいう。
【0019】
溝13は、チップ41と基板80との間に配置される接着剤であるアンダーフィル材70の外形よりも外側に設けられる。溝13は、ボンディングツール10の端面形状に合わせて延在し、電子部品吸着穴11を囲む形状である。また、溝13は、後述する第2の電子部品であるチップ42の実装位置よりも外側である。さらに、溝13の内部には、防着テープ30を吸着するテープ吸着穴12を設ける。
【0020】
防着テープ30は、送りリール110aおよび巻き取りリール110bによって繰り出される。そして、防着テープ30は、電子部品吸着穴に対向する位置に穴を有する。この穴は、予め防着テープ30に穿孔しておき、電子部品吸着穴11に対応する位置に防着テープ30の繰り出し量を制御しても良いし、防着テープ30を繰り出した後に電子部品吸着穴11の位置で穿孔してもよい。
【0021】
ボンディングツール10は、テープ吸着穴12からの排気によって防着テープ30を吸着して固定する。また、ボンディングツール10は、電子部品吸着穴11からの排気によって、防着テープ30を介してチップ41を吸着し、保持する。
【0022】
ボンディングツール10は、基板80に配置されたアンダーフィル材70にバンプ40を形成したチップ41を押し当てて加熱し、チップ41の基板80に対する実装を行う。
【0023】
図2は、基板80にチップ41を実装した状態の説明図である。アンダーフィル材70は、チップ41の周辺にはみ出し、第2の電子部品を支持する。すなわち、チップ41の上面とはみ出したアンダーフィル材70の上面が第2の電子部品の実装面となる。なお、基板に対してチップを実装する側を上側とする。
【0024】
基板80は、マザーボードなどのメイン基板であっても良いし、モールディングで封止されるインタポーザであってもよい。
【0025】
図3は、本実施例に係る電子部品実装装置の構成図である。図に示すように電子部品実装装置は、ボンディングツール10、ボンディングヘッド20、連結部50、昇降部60、ボンディングステージ90、針部91、テーブル100、送りリール110a、巻き取りリール110b、ガイドローラ120a,120b、受け皿130を有している。また、主制御部150、温度制御部151、駆動制御部152、吸着制御部153、巻き取り制御部154、認識制御部155、照明制御部156、駆動制御部157、カメラ駆動部158、カメラ159、吸着制御部160、温度制御部161および駆動制御部162を有している。
【0026】
ボンディングツール10は、防着テープ30を間に挟んで、チップ41を真空吸着する。ボンディングツール10は、防着テープ30を真空吸着して固定するとともに、防着テープ30に針部91で穿孔し、その開口部を通して、チップ41を真空吸着する。
【0027】
ボンディングヘッド20には、ボンディングツール10が取り付けられる。ボンディングヘッド20は、チップ41の種類に応じて、ボンディングツール10を取り付け交換できるようになっている。
【0028】
防着テープ30は、ボンディングツール10の吸着面とチップ41の間に挟まれ、チップ41が基板80に実装されるとき、アンダーフィル材70がボンディングツール10の吸着面に付着するのを防止する。
【0029】
防着テープ30は、非粘着性、耐熱性、耐薬晶性に優れるものが望ましい。例えば、フッ素樹脂フィルムであり、PTFEの他、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などでもよい。防着テープ30が非粘着性を有することによって、チップ41の実装時、接着剤70がはみ出して付着しても、ボンディングツール10が上昇するとき、防着テープ30とチップ41を容易に剥離することができる。
【0030】
連結部50は、ボンディングヘッド20と昇降部60を連結している。連結部50は、昇降部60によって上下に動かされ、ボンディングヘッド20を上下に動かす。基板80には、アンダーフィル材70が塗布または貼付けされ、チップ41が実装される。
【0031】
ボンディングステージ90の上部に基板80が搭載される。ボンディングステージ90は、熱を発し、基板80上の接着剤70の粘度を低下させる。テーブル100の上部にボンディングステージ90が取り付けられる。テーブル100は、取り付けられているボンディングステージ90を水平面上のX−Y方向に移動させる。また、基板80の種類に応じて、ボンディングステージ90は交換できるようになっている。
【0032】
送りリール110aは、ボンディングに使用されていない新しい防着テープ30が巻かれている。巻き取りリール110bは、チップ41の実装が1つ終了するごとに回転して、送りリール110aに巻かれている防着テープ30を巻き取っていく。従って、ボンディングツール10にチップ41が吸着されるとき、防着テープ30の未使用部が、ボンディングツール10の吸着面に配置される。あるいは、チップ41の実装を所定の回数行うごとに防着テープ30を巻き取るようにしてもよい。
【0033】
巻き取りリール110bは、防着テープ30のチップ41と接触する側の面を内側にして巻き取るようにしてもよい。これによって、防着テープ30が巻き取りリール110bに巻き取られるとき、防着テープ30に付着したアンダーフィル材70が下方に落下するのを低減する。
【0034】
ガイドローラ120aは、ボンディングツール10と送りリール110aの間に設けられている。ガイドローラ120bは、ボンディングツール10と巻き取りリール110bの間に設けられている。ガイドローラ120a,120bは、ボンディングツール10より上方に設けられ、送りリール110a、巻き取りリール110bより下方に設けられている。
【0035】
ガイドローラ120a,120bは、防着テープ30を安定してボンディングツール10に送ることができるように防着テープ30の動きを案内する。ガイドローラ120a,120bは、ボンディングツール10より上方に設けられることによって、防着テープ30をボンディングツール10の吸着面より上方から送り込んで上方で巻き取り、防着テープ30を吸着面に接触するよう上方に付勢する。また、ガイドローラ120a、120bは、防着テープ30のチップ41が吸着されない側の面で接触し、防着テープ30の動きを案内する。これによって、防着テープ30に付着したアンダーフィル材が、ガイドローラ120a,120bと防着テープ30の間に挟まったり、付着したりするのを防止し、防着テープ30の案内ずれを防止する。なお、送りリール110a、巻き取りリール110b、およびガイドローラ120a,120bは、ボンディングツール10とともに上下に移動する。または、送りリール110a、巻き取りリール110b、およびガイドローラ120a,120bを固定して、ボンディングツール10を独立して上下に移動するようにしてもよい。
【0036】
受け皿130は、ボンディングツール10と巻き取りリール110bの間で、かつカメラ159の上方で、防着テープ30の下方に設けられている。受け皿130は、アンダーフィル材70が付着したボンディング使用後の防着テープ30から落下するアンダーフィル材70を受け取る。これによって、基板80およびカメラ159にアンダーフィル材が落下するのを防止する。
【0037】
主制御部150は、各制御部の動作を統括する。温度制御部151はボンディングヘッド20の温度を制御する。温度制御部151は、ボンディングヘッド20を介してボンディングツール10の温度を制御し、チップ41を加熱する。駆動制御部152は、昇降部60の上下動を制御する。吸着制御部153は、ボンディングツール10の防着テープ30およびチップ41の真空吸着を制御する。吸着制御部153は、防着テープ30を吸着した後、チップ41を吸着する。そして、ボンディングツール10が降下してチップ41を基板80に実装した後、チップ41の吸着を解除する。そして、ボンディングツール10が上昇した後、防着テープ30の吸着を解除する。
【0038】
巻き取り制御部154は、巻き取りリール110bの回転を制御して、防着テープ30の繰り出し量(送り量)を制御している。巻き取り制御部154は、チップ41の実装後、防着テープ30の移動を制御する。
【0039】
認識制御部155は、カメラ159が観察する像を画像処理することで、チップ41および基板80の位置情報を認識する。照明制御部156は、カメラ159が有している照明の照度を制御する。駆動制御部157は、カメラ159が電子部品40および基板80を観察することができるように、カメラ159が取り付けられているカメラ駆動部158の水平面上のX−Y方向の移動を制御する。
【0040】
吸着制御部160は、ボンディングステージ90に搭載される基板80の真空吸着の制御をする。基板80は、吸着制御部160の真空吸着の制御によって、ボンディングステージ90に固定される。温度制御部161は、ボンディングステージ90の発する熱を制御し、基板80の接着剤70の粘度を低下させる。駆動制御部162は、テーブル100上に搭載されているボンディングステージ90を水平面上のX−Y方向で移動制御することで、針部91もしくはチップ41をボンディングツール10の直下に移動させることができる。
【0041】
図4は、マルチチップを実装した基板の説明図である。4aに示したように、基板80に下段のチップ41をアンダーフィル材70を介してフリップチップ実装し、チップ41の上に接着剤43で上段のチップ42を接着する。そして、チップ42をワイヤボンディングによって配線する。このようにして2つのチップ41,42を積層したマルチチップにおいて、上段のチップ42の実装面が下段のチップ41の実装面よりも大きいと、チップ42がチップ41からはみ出すオーバーハング44が発生する。オーバーハングの量は、チップ42とチップ41の実装面のサイズ差によって定まる。
【0042】
オーバーハングの状態では、チップ42のワイヤボンディング時にボンディング品質の低下やチップ破損などの懸念がある(45)ので、4bに示したようにチップ41のアンダーフィル材70を使用し、オーバーハング下部を支持して補強する(46)。
【0043】
図5は、アンダーフィル材70におけるシワの発生についての説明図である。図5の5aに示したように、ボンディングツール10がチップ吸着用の穴11を持ち、テープ吸着用の穴やテープ吸収用の溝を持たない場合、チップ41のフリップチップ実装でアンダーフィル材70にシワ70aが発生する。チップ41のフリップチップ実装手順は、
(5b)防着テープを送り出す。
(5c)剣山様の針で防着テープに穴あけする。
(5d)チップ41を吸着する。
(5e)チップ41を加熱および加圧し、チップ41を実装する。
(5f)実装完了
以上5つの手順を含む。
【0044】
ここで、(5e)の加熱および加圧において、アンダーフィル材70も同時に硬化するが、加熱によって防着テープが膨張し、シワ30aが発生する。このシワ30aがアンダーフィル材70に転写されることで、アンダーフィル材70の表面にもシワ70aが残る。
【0045】
図6は、使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である(その1)。図6は、6aに示したように、ボンディングツール10がチップ吸着用の穴11を持ち、テープ吸着用の穴やテープ吸収用の溝を持たない場合について示している。図6の6bに示したように使用後のテープ30にはチップ41の跡が残るとともに、テープの膨張によるシワ30aが発生している。そして、図6の6cに示したように、アンダーフィル材70にはシワaが転写されている。
【0046】
図7は、使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である(その2)。図7は、7aに示したように、ボンディングツール10がチップ吸着用の穴11とテープ吸着用の穴12を持ち、テープ吸収用の溝を持たない場合について示している。図7の7bに示したように使用後のテープ30にはチップ41の跡が残るとともに、テープの膨張によるシワ30aが発生している。そして、図7の7cに示したように、アンダーフィル材70にはシワ70aが転写されている。
【0047】
図8は、開示の技術によって使用したテープに残る跡と製品のシワの説明図である。図8の8aに示した例では、ボンディングツール10がチップ吸着用の穴11とテープ吸着用の穴に加え、テープ吸収用の溝13を持つ。このため、図8の8bに示したように使用後のテープ30にはチップ41の跡と、テープの膨張によるシワが吸収された吸収溝の跡が残る。テープ吸収溝の跡は、アンダーフィル材70の外側に残るため、図8の8cに示したように、アンダーフィル材70にはシワが発生しない。
【0048】
図9は、チップの寸法の一例についての説明図である。図9に示したように、チップ41の実装サイズは、一例として一辺5mmの正方形であり、最大で10mm未満であることが望ましい。チップ吸着穴11は、一例として直径0.6mmの穴を2.5mm四方の四隅と中央に計5カ所設ける。
【0049】
溝13は、チップ41の吸着箇所の周囲に一例として一辺10mmの正方形とする。この溝13の寸法は、チップ41のサイズにアンダーフィル材70のはみ出し量を加算した値よりも大きくなるようにとる。また溝13の幅は一例として0.5mm、溝13の深さは一例として0.2mmとする。そして、溝13の四隅には、直径0.5mmのテープ吸着穴を設ける。なお、テープの厚さは一例として35〜50μm程度、テープの幅は一例として16mm程度である。溝13は、テープの厚さの2倍以上の幅と、テープの厚さ以上の深さを持つことが望ましい。
【0050】
図10は、溝によるテープの吸収についての説明図である。図10に示したように、防着テープ30が加熱によって膨張すると、膨張による寸法変化分が溝13に吸収される。このため、溝13の内側には、シワを抑制するエリアが得られる。
【0051】
この実装時のシワの抑制について図11を用いて更に説明する。図11のツール平面図11aに示したように、ボンディングツール10がチップ吸着用の穴11とテープ吸収用の溝13を持つ場合のチップ41のフリップチップ実装手順は、
(11b)防着テープを送り出す。
(11c)剣山様の針で防着テープに穴あけする。
(11d)チップ41を吸着する。
(11e)チップ41を加熱および加圧し、チップ41を実装する。
(11f)実装完了
以上5つの手順を含む。
【0052】
ここで、(11e)の加熱および加圧において、アンダーフィル材70も同時に硬化する。また、加熱によって防着テープが膨張し、シワが発生するが、発生したシワの延伸は、溝13で止められる。このため、溝13の内側の領域についてはテープのシワが無く、アンダーフィル材70の表面にシワが転写されることもない。
【0053】
図12は、溝13に対するテープ吸着穴の配置の説明図である。ボンディングツール10aは、正方形の溝13の各々の角に合計4つのテープ吸着穴12aを設けている。ボンディングツール10bは、正方形の溝13の各々の辺に合計4つのテープ吸着穴12bを設けている。ボンディングツール10cは、正方形の溝13の各々の角と辺に合計8つのテープ吸着穴12cを設けている。
【0054】
図13は、溝の変形例についての説明図である。図13の13aは、チップ吸着穴11の周囲を囲む形状で溝13を設けた例である。また、13bは、防着テープ30の長手方向に対して垂直且つテープの面内方向に平行な2本の溝13a,13bを設けた例である。
【0055】
13cは、チップ吸着穴11とテープ吸着穴12から排気する共通の排気経路14をボンディングヘッドに備えた構成例である。共通の排気経路14を設けた構成では、単一の排気機構によってチップ41の吸着とテープ30の吸着を行うことができる。13dは、溝13にテープ吸着穴を設けない構成例である。このようにテープの吸着を行わなくとも、溝13を設けておくことで防着テープ30の熱膨張分を吸収し、シワの延伸を抑えることが出来る。
【0056】
図14は、本実施例に係る電子部品実装方法の処理動作を説明するフローチャートである。本実施例に係る電子部品実装装置は、まず、防着テープ30を送り出して供給し(S101)、テープ吸着穴12で防着テープ30を吸着する(S102)。その後、電子部品実装装置は、防着テープ30に穴を開け(S103)、第1の電子部品であるチップ41を電子部品吸着穴11で吸着する(S104)。
【0057】
電子部品実装装置は、第1の電子部品であるチップ41をアンダーフィル材70に押してつけて(S105)、加熱(S106)した後、テープを剥離する(S107)。
【0058】
さらに、電子部品実装装置は、第2の電子部品であるチップ42を接着剤によってチップ41およびアンダーフィル材の上に実装し(S108)、ワイヤボンディングによってチップ42の配線を行う(S109)。
【0059】
電子部品実装装置は、チップ42とチップ41、また場合によっては基板80をモールディングによって封止し(S110)、処理を終了する。
【0060】
なお、ここでは、単一の電子部品実装装置が、第1の電子部品のフリップチップ実装、第2の電子部品のワイヤボンディング実装、第1,第2の電子部品のモールドまでを行う場合を例示したが、各工程は複数の装置によって分担して実行されるものであってもよい。例えば、第1の電子部品を吸着して固定する工程(S104)、第1電子部品を接着剤に押し当てた状態で加熱する工程(S106)、防着テープを剥離して第2の電子部品を実装する面を露出する工程(S107)を含む一部の工程を実施する電子部品実装装置であってもよい。
【0061】
以上説明してきたように、本実施例にかかる電子部品実装装置は、テープを介して第1の電子部品を吸着するボンディングツールを有し、ボンディングツールには、第1の電子部品を吸着する吸着穴と、吸着穴の周囲に防着テープを吸収する溝が設けられている。この溝は、電子部品と基板との間に配置される接着剤の外形よりも外側に設けられる。
【0062】
このため、開示の装置によれば、防着テープが加熱を受けて膨張した場合の寸法変化分を溝によって吸収することで、上段チップの実装面となるアンダーフィル材の上面におけるシワの発生を抑制することができる。
【0063】
また、溝は、ボンディングツールの端面形状に合わせて延在し、電子部品吸着穴を囲む形状や平行に形成される。また、第2の電子部品の実装面は第1の電子部品の実装面よりも大きく、溝は、第2の電子部品の実装位置よりも外側である。このような構成により、オーバーハングケースで第2の電子部品を接着剤で支持するとともに、接着剤の支持面を平坦にすることができる。
【0064】
また、溝の内部に防着テープを吸着するテープ吸着穴をさらに設けることで、防着テープを固定でき、電子部品吸着穴とテープ吸着穴から排気する共通の排気経路をさらに備えることで、排気経路を単純化できる。
【0065】
なお、防着テープは、電子部品吸着穴に対向する位置に穴を有することで、ボンディングツールが防着テープ越しに第1の電子部品を吸着可能である。
【0066】
また、本実施例に係る電子部品実装方法は、第1の電子部品に第2の電子部品を重ねるマルチチップのうち、少なくとも第1の電子部品を基板に実装する電子部品実装方法である。開示の方法では、電子部品吸着穴の周辺であって第1の電子部品と基板との間に配置される接着剤の外形よりも外側に設けられた溝を有するボンディングツールを用い、電子部品吸着穴に対向する位置に穴を有する防着テープを介して第1の電子部品を吸着して固定する。そして、第1電子部品が接着剤に押し当てられた状態で加熱し、防着テープを剥離して第2の電子部品を実装する面を露出する。
【0067】
かかる方法によって、防着テープが加熱を受けて膨張した場合の寸法変化分を溝によって吸収しつつ第1の電子部品を実装でき、上段チップの実装面となるアンダーフィル材の上面におけるシワの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 ボンディングツール
11 チップ吸着穴
12 テープ吸着穴
13 溝
14 排気経路
16,17 判定部
30 防着テープ
40 バンプ
41,42 チップ
43 接着剤
50 連結部
60 昇降部
70 アンダーフィル材
80 基板
90 ボンディングステージ
91 針部
100 テーブル
110a 送りリール
110b 巻き取りリール
120a,120b ガイドローラ
130 受け皿
150 主制御部
151 温度制御部
152 駆動制御部
153 吸着制御部
154 巻き取り制御部
155 認識制御部
156 照明制御部
157 駆動制御部
158 カメラ駆動部
159 カメラ
160 吸着制御部
161 温度制御部
162 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板に実装する電子部品実装装置であって、
防着テープを介して前記電子部品を吸着するボンディングツールを有し、
前記ボンディングツールには、前記電子部品を吸着する吸着穴と、前記吸着穴の周囲に前記防着テープを吸収する溝が設けられており、
前記溝は、前記電子部品と前記基板との間に配置される接着剤の外形よりも外側に設けられることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記溝は、前記ボンディングツールの端面形状に合わせて延在することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記溝は、前記第1の吸着穴を囲む形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記溝は、互いに平行する直線形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記電子部品上に前記電子部品の実装面よりも大きい実装面を有する第2の電子部品が搭載され、前記溝は、前記第2の電子部品の実装位置よりも外側であることを特徴する請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記ボンディングツールには、前記溝の奥側から前記防着テープを吸着する第2の吸着穴をさらに設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電子部品実装装置。
【請求項7】
前記ボンディングツールが取り付けられるボンディングヘッドをさらに備え、
前記ボンディングヘッドには、前記吸着穴と前記第2の吸着穴から排気する共通の排気経路が設けられることを特徴とする請求項6に記載の電子部品実装装置。
【請求項8】
前記溝は前記防着テープが加熱を受けて膨張した場合の寸法変化分を吸収することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の電子部品実装装置。
【請求項9】
前記防着テープには、前記電子部品を吸着する吸着穴に対向する位置に穴が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の電子部品実装装置。
【請求項10】
電子部品を基板に実装する電子部品実装方法であって、
基板上に樹脂製の接着剤を供給する工程と、
防着テープを介してボンディングツールに電子部品を吸着する工程と、
前記電子部品を前記接着剤に向かって移動させる工程と、
前記防着テープを介して前記ボンディングツールの端面を前記接着剤に押し当てる工程と
を備えることを特徴とする電子部品実装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−44071(P2012−44071A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185610(P2010−185610)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】