電子銃、電子ビーム描画装置、及び電子ビーム描画方法
【課題】
電子ビーム描画装置のスループット向上のために、複数の陰極を備えた電子銃を実現し、各電子ビームの調整方法を提供する。
【解決手段】
加速空間内に全ての電子ビームに作用する偏向器(408)と回転コイル(409)を設置する。加速空間外に各電子ビームに作用する偏向器(410)を設置する。加速空間外に放熱機構を有する電子ビーム遮断板(411)を設置する。各陰極を温度制限領域にて使用する。
電子ビーム描画装置のスループット向上のために、複数の陰極を備えた電子銃を実現し、各電子ビームの調整方法を提供する。
【解決手段】
加速空間内に全ての電子ビームに作用する偏向器(408)と回転コイル(409)を設置する。加速空間外に各電子ビームに作用する偏向器(410)を設置する。加速空間外に放熱機構を有する電子ビーム遮断板(411)を設置する。各陰極を温度制限領域にて使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセス等において用いられる電子銃を含む電子線描技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセス等において試料上に所望のパターンを描画する電子線描画装置にはさらに高い描画精度およびスループットが求められているが、電子銃についても一層の性能向上が要求されている。
【0003】
まず、描画方式の観点から電子銃を眺めてみると、従来、電子銃に備えられた電子を放出し得る素子(以下、陰極と呼ぶ)の数は1つであり、放出される電子ビームも1本であるが、スループット向上のためには複数の陰極を用いることが望ましい。これに関しては、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃と、複数の電子ビームに対応する複数のカラムを備えた電子ビーム描画装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、陰極の種類およびその使用方法の観点から電子銃を眺めると、従来、電子ビーム描画装置においては、サーマルフィールドエミッション電子銃または熱電子銃が用いられることが多い。特に、半導体デバイスのマスク製造、または半導体デバイスの製造プロセスに用いられる高スループット型の電子ビーム描画装置においては、大きな電流が得やすく電子放出が安定な、三極管型の熱電子銃が用いられることが多い。
【0005】
図1に、一般的な三極管型の熱電子銃の模式図を示す。ヒーター102に通電し加熱することにより、仕事関数の低い物質よりなる陰極101を加熱し、陰極表面の障壁を乗り越えるのに充分なエネルギーを電子に与え、陰極に対して高い電位を持つ陽極104に向かって加速させる。105は電子の軌道を示す。
【0006】
陰極表面における電流密度(以下、陰極放出電流密度)は、(1)陰極材料の仕事関数、(2)陰極温度、(3)陰極表面での電場強度、(4)真空の質などで決まる。このうち、(1)陰極材料の仕事関数と(4)真空の質は自由に操作することが難しいので、(2)陰極温度および(3)陰極表面での電場強度によって、電子ビームの特性をコントロールする。陰極温度については、陰極を加熱するためのヒーターに流す電流の調節により操作を行い、陰極表面での電場強度については、陰極と陽極の間に設置したウェネルト電極103に印加する電圧の調節により操作を行う。なお、図中106は、電子ビームのクロスオーバーである。クロスオーバーとは、同一陰極内の異なる位置から同一方向に放出された電子ビームが交わる時、形成する像のことである。クロスオーバーの大きさ(直径)はクロスオーバー径、(ビーム軸上における)クロスオーバーの形成される位置はクロスオーバー位置と呼ばれる。クロスオーバー径およびクロスオーバー位置は、電子銃の構造および各電極に印加する電圧などによって変化する。
【0007】
一方、図2は、陰極温度(T)および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係について、その典型例を模式的に表したものである。図に示されているように、電場強度に対して陰極放出電流密度が急激に変化する空間電荷制限領域201と、電場強度に対して陰極放出電流密度の変化が緩やかで、温度(T)に対して大きく変化する温度制限領域202に分けられる(図中、T1>T2>T3)。従来の電子ビーム描画装置においては、熱電子銃は空間電荷制限領域で使用されている。
【0008】
【非特許文献1】「第62回応用物理学会学術講演会予稿集(講演No.11a-C-5)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子ビーム描画装置のスループットを向上させるために、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃と、複数の電子ビームに対応する複数のカラムを備えた電子ビーム描画装置を実現するためには、複数の陰極から、特性の揃った電子ビームを放出させることのできる電子銃が必要である。
【0010】
そのためには、ビームの強度および安定性の高い電子銃の形態を選択する必要がある。その点においては、従来用いられてきた三極管構造による熱電子銃は望ましい形態であるといえる。一方、複数の陰極を用いて同一試料上を同時に描画するためには、陰極間の間隔は数10mmから長くとも100mm程度とし、複数の陰極を同一真空装置内に搭載することが望ましい。
【0011】
以下、複数の陰極を搭載した熱電子銃を用いて、陰極の数と同数の電子ビームを発生させた場合に、新たに生じる課題について、単一の陰極を用いた熱電子銃を用いて単一の電子ビームを発生させた場合と対比して、以下に列挙する。
(1)電子ビームの数が複数になることによって、各電子ビームの配列(位置、距離、方向)を制御する必要が生じる。
(2)電子ビームは、描画装置内の熱源でもあるため、電子ビームの本数の増加により、電子光学鏡筒内の発熱問題が深刻になる。
(3)先に挙げた従来例「第62回応用物理学会学術講演会」に提案された描画方式のように、電子銃から放出された複数の電子ビームの各々に1つずつ電子光学系を割り当てる場合においては、電子銃より後段(下流)に設置された複数の電子光学系の条件をできるだけ揃えて、描画装置全体のシステムをできるだけ簡略にすることが重要である。このため、電子銃から放出される電子ビームの特性(プローブ電流, クロスオーバー径, クロスオーバー位置)を揃える必要が生じる。
【0012】
本発明は、前述の従来の課題に鑑みてなされたものであり、電子ビーム描画装置のスループット向上のために、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃を実現し、それを用いた電子ビーム描画技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するための第一の側面は、各電子ビームの配列(位置、距離、方向)の調整に関する。そのために、本発明は、加速空間内に8極以上の電磁偏向器または静電偏向器を設置して全ての電子ビームに作用させ、ビームの配列のシフトおよびゲインおよび歪み等の補正を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、加速空間内に回転コイルを設置し、全ての電子ビームに作用させ、ビームの配列の回転補正を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、陽極の下流に複数の偏向器を設置し、各ビームに個別に作用させ、ビームの配列の高次の位置ずれ補正を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の目的を達成するための第二の側面は、総電流が増えることによって生じる発熱問題に関し、そのために、本発明は、陽極の下流に放熱機構を設けた絞りを設置することを特徴とする。
【0017】
本発明の目的を達成するための第三の側面は、熱電子銃の調整方法に関する。そのために、本発明は、陰極を温度制限領域にて使用することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、クロスオーバー径またはクロスオーバー位置の調整を行った後、陰極温度の制御により試料上に到達する電流を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、クロスオーバー径またはクロスオーバー位置の調整を行った後、陰極温度の制御により陰極より放出される電流を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、複数の陰極を搭載した熱電子銃を用いて、陰極の数と同数の電子ビームを発生させた場合に、
(1)電子ビームの配列を制御し、
(2)電子ビームの本数の増加に伴う電子光学鏡筒内の発熱問題を解決し、
(3)各電子ビームの特性のバラツキを抑えること、が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施例1)
図3は、本発明による電子ビーム描画装置の一実施例を示す構成図である。本実施例においては、一例として、それぞれ4×4個の陰極およびウェネルト電極を備えた電子銃を使用し、4×4本の電子ビームを放出させている。
【0023】
陰極301a、301b、301c、301dから放出された電子は、ウェネルト電極302a、302b、303c、303dの作り出す電場の作用を受け、クロスオーバー303a、303b、303c、303dを作りながら、陽極304に向かって加速される。全ての陰極および全てのウェネルト電極および陽極は、同一の真空装置に搭載され、これを電子銃と呼ぶ。また、陰極から陽極までの加速電場が印加される領域を、加速空間と呼ぶ。
【0024】
電子銃より放出された4×4本の電子ビームは、陽極を貫通する4×4個の孔314を通過後、電磁レンズ群305、306、307、308の作り出す磁場の作用を受け、 最終的にはクロスオーバーの縮小像が移動可能なステージ309上に搭載された試料310上に投影される。311はブランカー群であり、各電子ビームが試料上に照射されるか否かを決定するものである。312はビーム較正用マークである。313は半導体検出器である。なお、図3においては、電子ビームの一部または全部を遮断する絞り、および電子ビームの進行方向を変化させる偏向器等については省略した。
【0025】
図4に、電子銃部の断面図を示す。図中、点線で示した401は陰極およびウェネルト電極部である。402は各陰極より放出された電子ビームである。403は陽極である。404は陽極孔であり、加速された電子ビームはこの孔を通過する。陰極およびウェネルト電極および陽極孔は同数であり、本実施例においてはそれぞれ4×4個である。
【0026】
陰極とウェネルト電極に印加する電圧は、電源(図示せず)より高圧ケーブル405を介して供給される。陰極を加熱するヒーターに流す電流も同じ電源およびケーブルで供給される。全ての陰極は同電位(本実施例においては50KV)であり、4×4個の陽極もまた同電位(本実施例においてはアース電位)である。
【0027】
一方、各ウェネルト電極に印加する電圧は互いに独立に制御され、各ヒーターに流す電流もまた互いに独立に制御される。高圧ケーブル405の末端部を含む高電圧空間406には、放電を防ぐためにSF6(六フッ化硫黄)ガスが封入されている。チップ保持部407には熱膨張率の低いセラミックスを用いた。これは、陰極を加熱することにより摂氏数十度から摂氏数百度になるチップ保持部が膨張して陰極間の距離が変化してしまうことを防ぐためである。また、加速空間内には電磁偏向器408および回転コイル409が設置されている。また、陽極の下流には、電子遮断板411および静電偏向器410が設置されている。
【0028】
次に、陰極およびウェネルト電極について詳細に説明するために、陰極およびウェネルト電極部401を,図5に拡大して表示する。
【0029】
陰極501とウェネルト電極503の中心軸を揃えるため、陰極501およびウェネルト電極503は、陰極を加熱するヒーター502、および、ウェネルト電極503と陰極501とヒーター502に電圧または電流を供給する端子504も含めて、一体型となっている。ウェネルト電極503と端子504との間は、例えば、アルミナ製の絶縁碍子505により絶縁されている。
【0030】
以上に説明した電子銃から、4×4本の電子ビームが放出された時、各電子ビームの位置が、理想的な位置からずれることがあった。その主な原因は、陰極、ウェネルト電極、陽極の製作誤差および設置誤差などである。そこで、電子ビームをビーム較正用マーク(図3中の312)に照射し、半導体検出器(図3中の313)により反射電子を検出することにより、電子ビームの位置を測定した。
【0031】
図6に、その測定結果の例を示す。図中、点線で描かれた格子601は各電子ビームの理想的な位置を、602は各電子ビームの位置の測定結果を示す。
【0032】
図6の(a)では、4×4本の電子ビームがいずれも理想的な位置に対してシフトしている。
【0033】
図6の(b)では、4×4本の電子ビーム間の相対的な距離が、理想的な相対距離に対して大きくなっている。
【0034】
図6の(c)では、投影された電子ビームが理想格子に対して歪んでいる。
【0035】
図6の(d)では、電子ビームの相対的な距離が、縦方向に対しては大きく、横方向に対しては倍率が小さくなっている。
【0036】
これらを補正するために、加速空間内に電磁偏向器(図4中の408)を設置した。電磁偏向器のうち2極を取り出して図7の(a)に示す。全ての電子ビームが通過する領域を囲んでコイル701を鞍型に巻くことによって、電子ビームの進行方向702に対して垂直な磁場が全ての電子ビームに作用し、偏向させる。本実施例においては、図7の(b)に示したように、これを1組として45°(度)間隔で4組、合計8極のコイルを加速空間内に設置した。なお、加速空間中で補正を行うことにより、電子ビームが完全に加速される前に補正を行うことができるので、補正量を小さく抑えることができる。また、本実施例においては、鞍型の電磁偏向器を用いたが、静電偏向器を用いてもよい。一方、偏向器の極数については、各電子ビームの相対的な位置の補正を行うためには、8極以上である必要がある。
【0037】
一方、図6の(e)では、投影された電子ビームが理想的な位置に対して回転している。これを補正するために、加速空間内に回転コイル(図4中の409)を設置した。
【0038】
本実施例で使用した回転コイルを、図7の(c)に示す。全てのビームが通過する領域を囲んでビームの進行方向704に対して垂直な面内でコイル703を巻くことにより、ビーム軸に対して平行な方向の磁場が全ての電子ビームに作用し、電子ビームの形成する像を回転させる。
【0039】
以上に述べたように、電磁偏向器および回転コイルを用いて電子ビームの位置を補正することにより、電子ビームの位置を理想的な位置に近づけることが出来た。
【0040】
本実施例においては、電磁偏向器、回転コイル共に真空内に設置したが、電子が通過する領域に電磁場を作り出せるならば、真空外に設置しても得られる効果は同様である。
【0041】
また、電子ビームの位置の検出を行う際に、ステージ上に設置したビーム校正用マークと半導体検出器を用いたが、ビーム進行方向に対してさらに上流、例えば、図3の電磁レンズ群306と電磁レンズ群307の間などに検出手段を設置しても、同様の効果が得られる。また、検出手段についてもマークと半導体検出器の組み合わせに限らない。
【0042】
また、電子ビームの位置ずれが、図6の(a)から(e)に示したビームの位置ずれを複合した場合であっても、本実施例と同様に補正することができる。
【0043】
(実施例2)
本実施例では、実施例1で実施した補正の残りを取り扱う。実施例1では、全ての電子ビームに作用する電磁偏向器および回転コイルを用いたため、シフト・倍率・歪み・非点・回転およびそれらの複合については補正することが出来たが、さらに高次の収差や個々のビームのばらつきなどは補正することが出来なかった。
【0044】
図8に、実施例1で取りきれなかったずれの測定例を示す。図中、点線で描かれた格子801は、各電子ビームの理想的な位置を、802は各電子ビームの位置の測定結果を示す。
【0045】
本実施例においては、個々の電子ビームに作用する偏向器(図4中の410)を用いる。陽極の下流に設置した、8極2段の静電偏向器410を用いて、4×4本の電子ビームの位置および進行方向を個別に補正することにより、電子ビームの位置を理想的な位置に移動させることが出来た。
【0046】
本実施例においては、静電偏向器を用いたが、電磁偏向器を用いてもよい。また、偏向器の極数については、8極には限定されない。偏向器の段数も2段に限定されない。
【0047】
(実施例3)
本実施例においては、複数の陰極を用いて複数の電子ビームを発生させることにより、深刻になる発熱問題の解決を図る。
【0048】
図4に示した陰極およびウェネルト電極部401と陽極403と電子遮蔽板411に関する部分412(図中、点線部)を拡大した図9を用いて、本実施例の構成を説明する。なお、図4と同一の符号を用いているものは同一のものを示している。
【0049】
電子ビーム描画装置においては、陰極から加速された電子ビームのうち、試料上に投影に必要なのは、高く均一な輝度が得られる部分のみであり、残りの不要な部分は電子光学鏡筒内に設置された絞り等によって試料に到達する前に遮断される。さらに、電子ビームが陰極から放出されてから試料上に到達するまでの間に、電子間に働く斥力によって空間的およびエネルギー的な分散が大きくなる場合もあるので、不要な電子ビームはできるだけ上流で遮断されることが望ましい。
【0050】
しかし、電子を遮断すると、衝突によって熱が発生する上、反射電子が散乱するため、付近の電子光学素子に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、電子ビームの遮断は、発熱および反射電子が電子光学素子に悪影響を与えない限りにおいてに、できるだけ上流で行う必要がある。
【0051】
そこで、本発明においては、陽極孔404の大きさは陽極孔通過時の電子ビームよりも大きくする。陽極孔404の径が電子ビームよりも小さい場合、陽極403に散乱した電子が電子銃内の絶縁部分にチャージアップし、加速空間内の電場を乱したり、放電を引き起こしたりする可能性があるからである。一方で、電子銃部を高真空に保つためには、陽極孔は小さい方が有利なので、本実施例においては、陽極孔通過時の電子ビームの大きさ(半値幅)1.2mmに対して、陽極孔の大きさを直径2mmとした。なお、陽極孔の最適な大きさは、電子銃の光学的な構造および真空装置としての構造によって変化する。
【0052】
一方、静電偏向器410に大量の電子ビームが照射すると、静電偏向器の発熱が問題になるため、陽極403と静電偏向器410の間に、電子遮断板411を設置した。電子遮断板には、例えばモリブデン製の絞り902が取り付けられており、これら2つによって電子ビーム901は輝度が高く均一な中心部分を除いた部分が遮断される。電子遮断板の内部には水冷管903を通し、これに例えば水を流すことにより、遮断板の発熱を抑えた。
【0053】
(実施例4)
本実施例による電子ビーム描画装置では、図3に示したような、複数の陰極と、陰極と同数のウェネルト電極(図3ではそれぞれ4×4個ずつ)を備えた電子銃を用いて、複数(図3では4×4本)の電子ビームを放出させ、電子銃より下流においては、各電子ビームにレンズ、偏向器等の電子光学系を割り当てることを特徴とする。このような電子ビーム描画装置においては、描画装置全体のシステムを簡略化するために、電子銃よりも後段(下流)の電子光学系の条件を同一にすることが望ましい。そのためには、電子銃から放出される複数の電子ビームの特性は揃っている必要がある。
【0054】
ここで、揃えるべき電子ビームの特性とは、プローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置である。また、プローブ電流とは、陰極より放出された電子ビームのうち、試料上に到達する電子ビームの電流である。本実施例においては、ステージ(図3中の309)上に搭載したファラデーカップ(図示せず)を用いて測定を行う。
【0055】
また、クロスオーバーとは、図1において106で示したように、同一陰極内の異なる位置から同一方向に放出された電子ビームが交わる時、形成する像のことである。クロスオーバーの大きさ(直径)をクロスオーバー径、(ビーム進行方向に対して)クロスオーバーの形成される位置をクロスオーバー位置と呼ぶ。本実施例においては、ステージ(図3中の309)上に設置したナイフエッジ(図示せず)を用いて、ステージ上に投影されたクロスオーバーの縮小像の大きさを測定する。また、クロスオーバー位置は、クロスオーバーの縮小像が試料上に結ばれた時のレンズの焦点距離から求めることが出来る。
【0056】
プローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置の揃った電子ビームを得るためには、陰極およびウェネルト電極および陽極孔の形状と相対的な位置を揃えることが必要であるが、機械加工の精度の限界や設置誤差、陰極を加熱するヒーターの抵抗誤差や陰極の表面状態の不均一性などから、特性の揃った電子ビームを得るのは必ずしも簡単ではない。
【0057】
本実施例においては、全ての陰極から放出される電子ビームのプローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置が予め設定した上限値と下限値の間に入るように、ウェネルト電極に印加する電圧により陰極表面の電場の強さを調整したり、フィラメントに流す電流により陰極温度を調整したりする。
【0058】
ここで、4×4本の電子ビームのうち1本を例にして、ビームの特性のウェネルト電圧とフィラメント電流IFに対する振る舞いを図示する。
【0059】
まず、プローブ電流の振る舞いを、図10の(a)に示す。プローブ電流は、陰極放出電流密度と密接な関係がある。したがって、陰極放出電流密度がウェネルト電圧に対して急激に変化する空間電荷制限領域においては、プローブ電流も敏感に変化する。また、この領域においては、陰極放出電流密度が陰極温度には依存しないため、プローブ電流もまたフィラメント電流IFに依存しない。一方、陰極放出電流密度が陰極表面の電場の強さに対して緩やかに変化し、陰極温度に対しては大きく変化する温度制限領域においては、プローブ電流はフィラメント電流IFに対して大きく変化する(図中、I1>I2>I3)。
【0060】
プローブ電流の上限値と下限値の一例を挙げると、図10の(a)において示したように、上限値1001は1.6μA、下限値1002は1.4μAである。下限値は描画装置が達成するべきスループットから求めた。上限値を設定したのは、陰極温度を高く設定しすぎると、陰極の劣化を速める恐れがあるためである。
【0061】
次に、クロスオーバー径の振る舞いを、図10の(b)に示す。クロスオーバー径は、陰極放出電流密度よりはむしろ、陰極から放出された後の電子の軌道と密接な関係がある。したがって、陰極温度に対する依存性はなく、ウェネルト電圧の変化に伴う陰極付近の電場分布の変化により、クロスオーバー径は変動する。
【0062】
クロスオーバー径については、求められる描画精度から上限値および下限値を決定した。一例としては、図10の(b)において示したように、クロスオーバー径の上限値1003を11μm、下限値1004を9μmとした。本実施例においては、光学系の縮小率が1/500倍であるから、ステージ上におけるクロスオーバーの縮小像は22nmから18nmの間に入っている必要がある。
【0063】
クロスオーバー位置の振る舞いを、図10の(c)に示す。クロスオーバー位置も、クロスオーバー径と同様に、陰極温度に対する依存性は極めて小さく、ウェネルト電圧を変化させると変動する。
【0064】
クロスオーバー位置については、下流に設置したレンズの焦点距離から、上限値および下限値を決定した。一例としては、図10の(c)に示したように、陰極先端よりビームの進行方向を正の向きとして上限値1006を10mm、下限値1007を0mmと設定した。
【0065】
従来の電子ビーム描画装置においては、陰極を空間電荷制限領域で使用し、ウェネルト電圧の調整のみによりプローブ電流を制御するのが一般的であった。空間電荷制限領域においては、プローブ電流は陰極温度に依らず、クロスオーバー径やクロスオーバー位置もまた、陰極温度に対する依存性が極めて小さい。したがって、電子ビームの特性を調整するためのパラメータがウェネルト電圧ただ一つとなってしまう。複数の電子ビームを取り扱い、その特性を揃える為には、陰極温度というパラメータも調整に使うことが望ましい。そこで、本実施例においては、陰極を温度制限領域で使用する。
【0066】
この温度制限領域においては、ウェネルト電圧に対してプローブ電流の変化が緩やかで、陰極温度に対する感度が高く、一方では、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置が陰極温度によらず各電極に印加する電圧によって決定される。この点に注目すると、効率よく調整を行うためには、まず、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置が所望の値となるようにウェネルト電圧を設定し、その後、プローブ電流が所望の値となるようにヒーター電流を設定すればよい。
【0067】
これを、全ての電子ビームについて独立に行うことにより、全ての電子ビームの陰極放出電流密度とクロスオーバー径およびクロスオーバー位置を所望の値に揃えることが可能になる。
【0068】
一方、スループットの観点からは、より高い陰極放出電流密度を得ることが望ましい。図2に示した陰極温度および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係から明らかなように、高い陰極放出電流密度を得るためには、陰極温度を高めるか、陰極に印加される電場を強めればよい。しかし、陰極温度を高めると、電子銃内の真空度の低下および陰極の劣化の恐れがある。即ち、できるだけ低い陰極温度で、高い陰極放出電流密度を得ることが得策であり、そのためには、従来よりも陰極表面の電場強度を高めて、温度制限領域または温度制限領域に近い領域で使用することが望ましい。即ち、温度制限領域にて電子銃を使用することは、スループットの観点からも望ましいことであるといえる。
【0069】
なお、上記においては、クロスオーバー径、クロスオーバー位置が共にそれぞれ設定された上限値と下限値の間に入るようにウェネルト電圧を調整すると説明したが、本実施例においては、図10の(b)と(c)に示したように、クロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲1005は、クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲1008を完全に含むことが分かった。したがって、ウェネルト電圧の調整はクロスオーバー径のみを基準にが設定された上限値と下限値の間に入るように調整すれば、充分であった。
【0070】
電子銃の構造、下流の電子光学系の設計によっては、本実施例とは逆に、クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲がクロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲を完全に含む場合もある。その場合は、クロスオーバー位置を基準にウェネルト電圧の調整を行ってもよい。また、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置の双方を基準にウェネルト電圧の調整を行っても同様の効果が得られる。
【0071】
次に、図11に示したフローチャートを用いて、本実施例の構成を詳細に説明する。
【0072】
ステップ1では、複数の陰極を加熱する全てのヒーターについて基準電流値を設定し、全てのウェネルト電極に対して基準電圧値を設定する。
【0073】
ステップ2では、複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバー径を個別に測定する。
【0074】
ステップ3では、ステップ2における測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っているか否かを判定する。
【0075】
ステップ3における判定で、全ての電子ビームのうち一つでもクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていないものがあると判定された場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、ステップ2に戻った。そして、ステップ3における判定で、全ての電子ビームのクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていると判定されるまでステップ2からステップ3を繰り返した。ステップ3における判定で、全ての電子ビームのクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていると判定された場合は、ステップ4に進む。
【0076】
ステップ4では、個々の電子ビームのプローブ電流を測定する。
【0077】
ステップ5では、 ステップ4で測定されたプローブ電流が上限値と下限値の間に入っているか、否かを判定する。
【0078】
ステップ5における判定で、全ての電子ビームのうち一つでもプローブ電流が上限値と下限値の間に入っていないものがあると判定された場合、該当する電子ビームに対応するヒーターに流す電流を再設定し、ステップ4に戻った。ステップ5における判定で、全ての電子ビームのプローブ電流が下限値を満たしていると判定されるまでステップ4から5を繰り返す。
【0079】
ステップ5における判定で、全ての電子ビームのプローブ電流が下限値を満たしていると判定された場合は、ステップ6に進む。
【0080】
ステップ6では、実施例1と同様の方法で、電磁偏向器および回転コイルの調整を行う。
【0081】
ステップ7では、実施例2と同様の方法で各静電偏向器の調整を行う。
【0082】
以上の手順によるビーム較正を、陰極の交換時に加え、一週間に1回の頻度で、定期的な較正で実施した結果、スループットを低下させることなく、良好な描画結果を保つことが出来た。
【0083】
なお、本実施例においては、陰極・陽極・ウェネルト電極からなる三極管構造を持った熱電子銃を用いたが、例えば、一本のビームに対して陰極と陽極間に2つ以上の電極を2つ用いたような場合であっても、三極管構造と同様の陰極放出電流密度の特性が得られる場合は、本実施例と同様の効果をあげることが出来る。
また、本実施例においては、陰極を加熱するためにヒーターを用い、これに通電する電流を調整することにより陰極温度の制御を行ったが、異なる形態のヒーターを用いて陰極を加熱する場合は、例えば、ヒーターに印加する電圧を調整するなどしてもよい。
【0084】
また、本実施例においては、クロスオーバー径を測定するために、ステージ上に設置したナイフエッジに反射した電子を半導体検出器により検出したが、測定手段はこの組み合わせに限らない。例えば、ナイフエッジの代りにクロスワイヤーやビーム較正用マークを用いてもよいし、半導体検出器の代りに光電子増倍管を用いても良い。また、微小な絞りと絞りを通過した電流を測定するための半導体検出器の組み合わせでもよい。
【0085】
また、本実施例においては、複数の電子ビームのプローブ電流の測定を行い、これらを所望の値にするべく陰極温度の調整を行ったが、プローブ電流と陰極から放出された電流の関係がよく分かっている場合は、各陰極から放出された電流の測定を行い、これらを所望の値にするべく陰極温度の調整を行ってもよい。
【0086】
本発明は、以下の構成例を包含する。
【0087】
(1)複数の陰極と、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる手段を有する電子銃において、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームの全てに作用する、8個以上のコイルまたは8個以上の電極よりなる偏向器を有することを特徴とする電子銃。
【0088】
(2)複数の陰極と、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる手段を有する電子銃において、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームに作用する回転コイルを有することを特徴とする電子銃。
【0089】
(3)前記事項(1)乃至(2)の何れかの電子銃を備えることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0090】
(4)複数の陰極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有する電子銃を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子ビームの進行方向に対して、前記陽極よりも下流に、複数の電子ビームに対して個別に作用する複数の偏向器を有することを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0091】
(5)複数の陰極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有する電子銃を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子ビームの進行方向に対して前記陽極よりも下流に、放熱機構を有する電子を遮断する手段を備えることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0092】
(6)複数の陰極と、前記複数の陰極の温度を個々に調整する、前記陰極と同数のヒーターと、前記複数の陰極の表面付近の電場の強さを個々に調整する、前記陰極と同数のウェネルト電極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有することを特徴とする電子銃と、描画すべき対象物を搭載することのできる移動可能なステージを用いて、各陰極の少なくとも一部の領域を温度制限領域で動作させることを特徴とする電子ビーム描画方法。
【0093】
(7)前記事項(6)において、
(a)前記複数のウェネルト電極に印加する電圧と、前記複数のヒーターの温度を決定するパラメータを、基準値に設定する工程と、
(b)前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバーの大きさを個別に測定する工程と、
(c)前記(b)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバーの大きさが所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(d)前記(c)の工程において、クロスオーバーの大きさが所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、前記(b)の工程に戻る工程と、
(e)前記(c)の工程において、全ての電子ビームのクロスオーバーの大きさが所望の値になっていると判定された場合は、前記複数の陰極の全てについて、放出された電子ビームの電流を個別に測定する工程と、
(f)前記(e)の測定に基づいて、全ての陰極について個別に、放出された電子ビームの電流が所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(g)前記(f)の工程において、放出された電子ビームの電流が所望の値になっていないと判定された陰極が一つ以上ある場合は、該当する陰極を加熱するヒーターの温度を決定するパラメータを再設定し、前記(e)の工程に戻る工程、
とを有することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【0094】
(8)前記事項(6)において、
(a)前記複数のウェネルト電極に印加する電圧と、前記複数のヒーターの温度を決定するパラメータを、基準値に設定する工程と、
(b)前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバーの大きさを個別に測定する工程と、
(c)前記(b)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバーの大きさが所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(d)前記(c)の工程において、クロスオーバーの大きさが所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、前記(b)の工程に戻る工程と、
(e)前記(c)の工程において、全ての電子ビームのクロスオーバーの大きさが所望の値になっていると判定された場合は、前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、ステージ上に到達した電流を個別に測定する工程と、
(f)前記(e)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、ステージ上に到達した電流が所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(g)前記(f)の工程において、ステージ上に到達した電流が所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応する陰極を加熱するヒーターの温度を決定するパラメータを再設定し、前記(e)の工程に戻る工程とを、
有することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】一般的な三極間型の熱電子銃の模式図。
【図2】陰極温度および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係を説明する図。
【図3】本発明による電子ビーム描画装置の一実施例の構成を説明する図。
【図4】図3における電子銃部の断面図。
【図5】図3における陰極およびウェネルト電極部の拡大図。
【図6】電子ビームの位置の測定結果の一例を示す図。
【図7】図3における、電磁偏向器(a)、(b)、および回転コイル(c)の具体例を示す図。
【図8】電子ビームの位置の測定結果の他の例を示す図。
【図9】図3における、陰極とウェネルト電極、および陽極と電子遮断板にかかる部分の拡大図。
【図10】陰極温度および陰極表面での電場強度に対するプローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置の関係を説明する図。
【図11】本発明における電子銃の調整方法を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0096】
101…陰極、102…ヒーター、103…ウェネルト電極、104…陽極、105…クロスオーバー、201…空間電荷制限領域、202…温度制限領域、
301a、301b、301c、301d…陰極、302a、302b、302c、302d…ウェネルト電極、303a、303b、303c、303d…クロスオーバー、304…陽極、305…電磁レンズ群、306…電磁レンズ群、307…電磁レンズ群、308…電磁レンズ群、309…ステージ、310―試料、311…ブランカー群、312…ビーム較正用マーク、313…半導体検出器、401…陰極およびウェネルト電極部、402…電子ビーム、403…陽極、404…陽極孔、405…高圧ケーブル、406…高電圧空間、407…チップ保持部、408…電磁偏向器、409…回転コイル、410…静電偏向器、411…電子遮断板、412…陰極およびウェネルト電極および陽極および電子遮断板部、501…陰極、502…ヒーター、503…ウェネルト電極、504…端子、505…絶縁碍子、601…各電子ビームの理想的な位置、602…各電子ビームの位置の測定結果、701…コイル、702…電子ビームの進行方向、703…コイル、704…電子ビームの進行方向、801…各電子ビームの理想的な位置、802…各電子ビームの位置の測定結果、901…電子ビーム、902…絞り、903…水冷管、1001…プローブ電流の上限値、1002…プローブ電流の下限値、1003…クロスオーバー径の上限値、1004…クロスオーバー径の下限値、1005…クロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲、1006…クロスオーバー位置の上限値、1007…クロスオーバー位置の下限値、1008…クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセス等において用いられる電子銃を含む電子線描技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセス等において試料上に所望のパターンを描画する電子線描画装置にはさらに高い描画精度およびスループットが求められているが、電子銃についても一層の性能向上が要求されている。
【0003】
まず、描画方式の観点から電子銃を眺めてみると、従来、電子銃に備えられた電子を放出し得る素子(以下、陰極と呼ぶ)の数は1つであり、放出される電子ビームも1本であるが、スループット向上のためには複数の陰極を用いることが望ましい。これに関しては、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃と、複数の電子ビームに対応する複数のカラムを備えた電子ビーム描画装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、陰極の種類およびその使用方法の観点から電子銃を眺めると、従来、電子ビーム描画装置においては、サーマルフィールドエミッション電子銃または熱電子銃が用いられることが多い。特に、半導体デバイスのマスク製造、または半導体デバイスの製造プロセスに用いられる高スループット型の電子ビーム描画装置においては、大きな電流が得やすく電子放出が安定な、三極管型の熱電子銃が用いられることが多い。
【0005】
図1に、一般的な三極管型の熱電子銃の模式図を示す。ヒーター102に通電し加熱することにより、仕事関数の低い物質よりなる陰極101を加熱し、陰極表面の障壁を乗り越えるのに充分なエネルギーを電子に与え、陰極に対して高い電位を持つ陽極104に向かって加速させる。105は電子の軌道を示す。
【0006】
陰極表面における電流密度(以下、陰極放出電流密度)は、(1)陰極材料の仕事関数、(2)陰極温度、(3)陰極表面での電場強度、(4)真空の質などで決まる。このうち、(1)陰極材料の仕事関数と(4)真空の質は自由に操作することが難しいので、(2)陰極温度および(3)陰極表面での電場強度によって、電子ビームの特性をコントロールする。陰極温度については、陰極を加熱するためのヒーターに流す電流の調節により操作を行い、陰極表面での電場強度については、陰極と陽極の間に設置したウェネルト電極103に印加する電圧の調節により操作を行う。なお、図中106は、電子ビームのクロスオーバーである。クロスオーバーとは、同一陰極内の異なる位置から同一方向に放出された電子ビームが交わる時、形成する像のことである。クロスオーバーの大きさ(直径)はクロスオーバー径、(ビーム軸上における)クロスオーバーの形成される位置はクロスオーバー位置と呼ばれる。クロスオーバー径およびクロスオーバー位置は、電子銃の構造および各電極に印加する電圧などによって変化する。
【0007】
一方、図2は、陰極温度(T)および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係について、その典型例を模式的に表したものである。図に示されているように、電場強度に対して陰極放出電流密度が急激に変化する空間電荷制限領域201と、電場強度に対して陰極放出電流密度の変化が緩やかで、温度(T)に対して大きく変化する温度制限領域202に分けられる(図中、T1>T2>T3)。従来の電子ビーム描画装置においては、熱電子銃は空間電荷制限領域で使用されている。
【0008】
【非特許文献1】「第62回応用物理学会学術講演会予稿集(講演No.11a-C-5)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子ビーム描画装置のスループットを向上させるために、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃と、複数の電子ビームに対応する複数のカラムを備えた電子ビーム描画装置を実現するためには、複数の陰極から、特性の揃った電子ビームを放出させることのできる電子銃が必要である。
【0010】
そのためには、ビームの強度および安定性の高い電子銃の形態を選択する必要がある。その点においては、従来用いられてきた三極管構造による熱電子銃は望ましい形態であるといえる。一方、複数の陰極を用いて同一試料上を同時に描画するためには、陰極間の間隔は数10mmから長くとも100mm程度とし、複数の陰極を同一真空装置内に搭載することが望ましい。
【0011】
以下、複数の陰極を搭載した熱電子銃を用いて、陰極の数と同数の電子ビームを発生させた場合に、新たに生じる課題について、単一の陰極を用いた熱電子銃を用いて単一の電子ビームを発生させた場合と対比して、以下に列挙する。
(1)電子ビームの数が複数になることによって、各電子ビームの配列(位置、距離、方向)を制御する必要が生じる。
(2)電子ビームは、描画装置内の熱源でもあるため、電子ビームの本数の増加により、電子光学鏡筒内の発熱問題が深刻になる。
(3)先に挙げた従来例「第62回応用物理学会学術講演会」に提案された描画方式のように、電子銃から放出された複数の電子ビームの各々に1つずつ電子光学系を割り当てる場合においては、電子銃より後段(下流)に設置された複数の電子光学系の条件をできるだけ揃えて、描画装置全体のシステムをできるだけ簡略にすることが重要である。このため、電子銃から放出される電子ビームの特性(プローブ電流, クロスオーバー径, クロスオーバー位置)を揃える必要が生じる。
【0012】
本発明は、前述の従来の課題に鑑みてなされたものであり、電子ビーム描画装置のスループット向上のために、複数の陰極から複数の電子ビームを放出させることのできる電子銃を実現し、それを用いた電子ビーム描画技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するための第一の側面は、各電子ビームの配列(位置、距離、方向)の調整に関する。そのために、本発明は、加速空間内に8極以上の電磁偏向器または静電偏向器を設置して全ての電子ビームに作用させ、ビームの配列のシフトおよびゲインおよび歪み等の補正を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、加速空間内に回転コイルを設置し、全ての電子ビームに作用させ、ビームの配列の回転補正を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、陽極の下流に複数の偏向器を設置し、各ビームに個別に作用させ、ビームの配列の高次の位置ずれ補正を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の目的を達成するための第二の側面は、総電流が増えることによって生じる発熱問題に関し、そのために、本発明は、陽極の下流に放熱機構を設けた絞りを設置することを特徴とする。
【0017】
本発明の目的を達成するための第三の側面は、熱電子銃の調整方法に関する。そのために、本発明は、陰極を温度制限領域にて使用することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、クロスオーバー径またはクロスオーバー位置の調整を行った後、陰極温度の制御により試料上に到達する電流を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、クロスオーバー径またはクロスオーバー位置の調整を行った後、陰極温度の制御により陰極より放出される電流を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、複数の陰極を搭載した熱電子銃を用いて、陰極の数と同数の電子ビームを発生させた場合に、
(1)電子ビームの配列を制御し、
(2)電子ビームの本数の増加に伴う電子光学鏡筒内の発熱問題を解決し、
(3)各電子ビームの特性のバラツキを抑えること、が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施例1)
図3は、本発明による電子ビーム描画装置の一実施例を示す構成図である。本実施例においては、一例として、それぞれ4×4個の陰極およびウェネルト電極を備えた電子銃を使用し、4×4本の電子ビームを放出させている。
【0023】
陰極301a、301b、301c、301dから放出された電子は、ウェネルト電極302a、302b、303c、303dの作り出す電場の作用を受け、クロスオーバー303a、303b、303c、303dを作りながら、陽極304に向かって加速される。全ての陰極および全てのウェネルト電極および陽極は、同一の真空装置に搭載され、これを電子銃と呼ぶ。また、陰極から陽極までの加速電場が印加される領域を、加速空間と呼ぶ。
【0024】
電子銃より放出された4×4本の電子ビームは、陽極を貫通する4×4個の孔314を通過後、電磁レンズ群305、306、307、308の作り出す磁場の作用を受け、 最終的にはクロスオーバーの縮小像が移動可能なステージ309上に搭載された試料310上に投影される。311はブランカー群であり、各電子ビームが試料上に照射されるか否かを決定するものである。312はビーム較正用マークである。313は半導体検出器である。なお、図3においては、電子ビームの一部または全部を遮断する絞り、および電子ビームの進行方向を変化させる偏向器等については省略した。
【0025】
図4に、電子銃部の断面図を示す。図中、点線で示した401は陰極およびウェネルト電極部である。402は各陰極より放出された電子ビームである。403は陽極である。404は陽極孔であり、加速された電子ビームはこの孔を通過する。陰極およびウェネルト電極および陽極孔は同数であり、本実施例においてはそれぞれ4×4個である。
【0026】
陰極とウェネルト電極に印加する電圧は、電源(図示せず)より高圧ケーブル405を介して供給される。陰極を加熱するヒーターに流す電流も同じ電源およびケーブルで供給される。全ての陰極は同電位(本実施例においては50KV)であり、4×4個の陽極もまた同電位(本実施例においてはアース電位)である。
【0027】
一方、各ウェネルト電極に印加する電圧は互いに独立に制御され、各ヒーターに流す電流もまた互いに独立に制御される。高圧ケーブル405の末端部を含む高電圧空間406には、放電を防ぐためにSF6(六フッ化硫黄)ガスが封入されている。チップ保持部407には熱膨張率の低いセラミックスを用いた。これは、陰極を加熱することにより摂氏数十度から摂氏数百度になるチップ保持部が膨張して陰極間の距離が変化してしまうことを防ぐためである。また、加速空間内には電磁偏向器408および回転コイル409が設置されている。また、陽極の下流には、電子遮断板411および静電偏向器410が設置されている。
【0028】
次に、陰極およびウェネルト電極について詳細に説明するために、陰極およびウェネルト電極部401を,図5に拡大して表示する。
【0029】
陰極501とウェネルト電極503の中心軸を揃えるため、陰極501およびウェネルト電極503は、陰極を加熱するヒーター502、および、ウェネルト電極503と陰極501とヒーター502に電圧または電流を供給する端子504も含めて、一体型となっている。ウェネルト電極503と端子504との間は、例えば、アルミナ製の絶縁碍子505により絶縁されている。
【0030】
以上に説明した電子銃から、4×4本の電子ビームが放出された時、各電子ビームの位置が、理想的な位置からずれることがあった。その主な原因は、陰極、ウェネルト電極、陽極の製作誤差および設置誤差などである。そこで、電子ビームをビーム較正用マーク(図3中の312)に照射し、半導体検出器(図3中の313)により反射電子を検出することにより、電子ビームの位置を測定した。
【0031】
図6に、その測定結果の例を示す。図中、点線で描かれた格子601は各電子ビームの理想的な位置を、602は各電子ビームの位置の測定結果を示す。
【0032】
図6の(a)では、4×4本の電子ビームがいずれも理想的な位置に対してシフトしている。
【0033】
図6の(b)では、4×4本の電子ビーム間の相対的な距離が、理想的な相対距離に対して大きくなっている。
【0034】
図6の(c)では、投影された電子ビームが理想格子に対して歪んでいる。
【0035】
図6の(d)では、電子ビームの相対的な距離が、縦方向に対しては大きく、横方向に対しては倍率が小さくなっている。
【0036】
これらを補正するために、加速空間内に電磁偏向器(図4中の408)を設置した。電磁偏向器のうち2極を取り出して図7の(a)に示す。全ての電子ビームが通過する領域を囲んでコイル701を鞍型に巻くことによって、電子ビームの進行方向702に対して垂直な磁場が全ての電子ビームに作用し、偏向させる。本実施例においては、図7の(b)に示したように、これを1組として45°(度)間隔で4組、合計8極のコイルを加速空間内に設置した。なお、加速空間中で補正を行うことにより、電子ビームが完全に加速される前に補正を行うことができるので、補正量を小さく抑えることができる。また、本実施例においては、鞍型の電磁偏向器を用いたが、静電偏向器を用いてもよい。一方、偏向器の極数については、各電子ビームの相対的な位置の補正を行うためには、8極以上である必要がある。
【0037】
一方、図6の(e)では、投影された電子ビームが理想的な位置に対して回転している。これを補正するために、加速空間内に回転コイル(図4中の409)を設置した。
【0038】
本実施例で使用した回転コイルを、図7の(c)に示す。全てのビームが通過する領域を囲んでビームの進行方向704に対して垂直な面内でコイル703を巻くことにより、ビーム軸に対して平行な方向の磁場が全ての電子ビームに作用し、電子ビームの形成する像を回転させる。
【0039】
以上に述べたように、電磁偏向器および回転コイルを用いて電子ビームの位置を補正することにより、電子ビームの位置を理想的な位置に近づけることが出来た。
【0040】
本実施例においては、電磁偏向器、回転コイル共に真空内に設置したが、電子が通過する領域に電磁場を作り出せるならば、真空外に設置しても得られる効果は同様である。
【0041】
また、電子ビームの位置の検出を行う際に、ステージ上に設置したビーム校正用マークと半導体検出器を用いたが、ビーム進行方向に対してさらに上流、例えば、図3の電磁レンズ群306と電磁レンズ群307の間などに検出手段を設置しても、同様の効果が得られる。また、検出手段についてもマークと半導体検出器の組み合わせに限らない。
【0042】
また、電子ビームの位置ずれが、図6の(a)から(e)に示したビームの位置ずれを複合した場合であっても、本実施例と同様に補正することができる。
【0043】
(実施例2)
本実施例では、実施例1で実施した補正の残りを取り扱う。実施例1では、全ての電子ビームに作用する電磁偏向器および回転コイルを用いたため、シフト・倍率・歪み・非点・回転およびそれらの複合については補正することが出来たが、さらに高次の収差や個々のビームのばらつきなどは補正することが出来なかった。
【0044】
図8に、実施例1で取りきれなかったずれの測定例を示す。図中、点線で描かれた格子801は、各電子ビームの理想的な位置を、802は各電子ビームの位置の測定結果を示す。
【0045】
本実施例においては、個々の電子ビームに作用する偏向器(図4中の410)を用いる。陽極の下流に設置した、8極2段の静電偏向器410を用いて、4×4本の電子ビームの位置および進行方向を個別に補正することにより、電子ビームの位置を理想的な位置に移動させることが出来た。
【0046】
本実施例においては、静電偏向器を用いたが、電磁偏向器を用いてもよい。また、偏向器の極数については、8極には限定されない。偏向器の段数も2段に限定されない。
【0047】
(実施例3)
本実施例においては、複数の陰極を用いて複数の電子ビームを発生させることにより、深刻になる発熱問題の解決を図る。
【0048】
図4に示した陰極およびウェネルト電極部401と陽極403と電子遮蔽板411に関する部分412(図中、点線部)を拡大した図9を用いて、本実施例の構成を説明する。なお、図4と同一の符号を用いているものは同一のものを示している。
【0049】
電子ビーム描画装置においては、陰極から加速された電子ビームのうち、試料上に投影に必要なのは、高く均一な輝度が得られる部分のみであり、残りの不要な部分は電子光学鏡筒内に設置された絞り等によって試料に到達する前に遮断される。さらに、電子ビームが陰極から放出されてから試料上に到達するまでの間に、電子間に働く斥力によって空間的およびエネルギー的な分散が大きくなる場合もあるので、不要な電子ビームはできるだけ上流で遮断されることが望ましい。
【0050】
しかし、電子を遮断すると、衝突によって熱が発生する上、反射電子が散乱するため、付近の電子光学素子に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、電子ビームの遮断は、発熱および反射電子が電子光学素子に悪影響を与えない限りにおいてに、できるだけ上流で行う必要がある。
【0051】
そこで、本発明においては、陽極孔404の大きさは陽極孔通過時の電子ビームよりも大きくする。陽極孔404の径が電子ビームよりも小さい場合、陽極403に散乱した電子が電子銃内の絶縁部分にチャージアップし、加速空間内の電場を乱したり、放電を引き起こしたりする可能性があるからである。一方で、電子銃部を高真空に保つためには、陽極孔は小さい方が有利なので、本実施例においては、陽極孔通過時の電子ビームの大きさ(半値幅)1.2mmに対して、陽極孔の大きさを直径2mmとした。なお、陽極孔の最適な大きさは、電子銃の光学的な構造および真空装置としての構造によって変化する。
【0052】
一方、静電偏向器410に大量の電子ビームが照射すると、静電偏向器の発熱が問題になるため、陽極403と静電偏向器410の間に、電子遮断板411を設置した。電子遮断板には、例えばモリブデン製の絞り902が取り付けられており、これら2つによって電子ビーム901は輝度が高く均一な中心部分を除いた部分が遮断される。電子遮断板の内部には水冷管903を通し、これに例えば水を流すことにより、遮断板の発熱を抑えた。
【0053】
(実施例4)
本実施例による電子ビーム描画装置では、図3に示したような、複数の陰極と、陰極と同数のウェネルト電極(図3ではそれぞれ4×4個ずつ)を備えた電子銃を用いて、複数(図3では4×4本)の電子ビームを放出させ、電子銃より下流においては、各電子ビームにレンズ、偏向器等の電子光学系を割り当てることを特徴とする。このような電子ビーム描画装置においては、描画装置全体のシステムを簡略化するために、電子銃よりも後段(下流)の電子光学系の条件を同一にすることが望ましい。そのためには、電子銃から放出される複数の電子ビームの特性は揃っている必要がある。
【0054】
ここで、揃えるべき電子ビームの特性とは、プローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置である。また、プローブ電流とは、陰極より放出された電子ビームのうち、試料上に到達する電子ビームの電流である。本実施例においては、ステージ(図3中の309)上に搭載したファラデーカップ(図示せず)を用いて測定を行う。
【0055】
また、クロスオーバーとは、図1において106で示したように、同一陰極内の異なる位置から同一方向に放出された電子ビームが交わる時、形成する像のことである。クロスオーバーの大きさ(直径)をクロスオーバー径、(ビーム進行方向に対して)クロスオーバーの形成される位置をクロスオーバー位置と呼ぶ。本実施例においては、ステージ(図3中の309)上に設置したナイフエッジ(図示せず)を用いて、ステージ上に投影されたクロスオーバーの縮小像の大きさを測定する。また、クロスオーバー位置は、クロスオーバーの縮小像が試料上に結ばれた時のレンズの焦点距離から求めることが出来る。
【0056】
プローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置の揃った電子ビームを得るためには、陰極およびウェネルト電極および陽極孔の形状と相対的な位置を揃えることが必要であるが、機械加工の精度の限界や設置誤差、陰極を加熱するヒーターの抵抗誤差や陰極の表面状態の不均一性などから、特性の揃った電子ビームを得るのは必ずしも簡単ではない。
【0057】
本実施例においては、全ての陰極から放出される電子ビームのプローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置が予め設定した上限値と下限値の間に入るように、ウェネルト電極に印加する電圧により陰極表面の電場の強さを調整したり、フィラメントに流す電流により陰極温度を調整したりする。
【0058】
ここで、4×4本の電子ビームのうち1本を例にして、ビームの特性のウェネルト電圧とフィラメント電流IFに対する振る舞いを図示する。
【0059】
まず、プローブ電流の振る舞いを、図10の(a)に示す。プローブ電流は、陰極放出電流密度と密接な関係がある。したがって、陰極放出電流密度がウェネルト電圧に対して急激に変化する空間電荷制限領域においては、プローブ電流も敏感に変化する。また、この領域においては、陰極放出電流密度が陰極温度には依存しないため、プローブ電流もまたフィラメント電流IFに依存しない。一方、陰極放出電流密度が陰極表面の電場の強さに対して緩やかに変化し、陰極温度に対しては大きく変化する温度制限領域においては、プローブ電流はフィラメント電流IFに対して大きく変化する(図中、I1>I2>I3)。
【0060】
プローブ電流の上限値と下限値の一例を挙げると、図10の(a)において示したように、上限値1001は1.6μA、下限値1002は1.4μAである。下限値は描画装置が達成するべきスループットから求めた。上限値を設定したのは、陰極温度を高く設定しすぎると、陰極の劣化を速める恐れがあるためである。
【0061】
次に、クロスオーバー径の振る舞いを、図10の(b)に示す。クロスオーバー径は、陰極放出電流密度よりはむしろ、陰極から放出された後の電子の軌道と密接な関係がある。したがって、陰極温度に対する依存性はなく、ウェネルト電圧の変化に伴う陰極付近の電場分布の変化により、クロスオーバー径は変動する。
【0062】
クロスオーバー径については、求められる描画精度から上限値および下限値を決定した。一例としては、図10の(b)において示したように、クロスオーバー径の上限値1003を11μm、下限値1004を9μmとした。本実施例においては、光学系の縮小率が1/500倍であるから、ステージ上におけるクロスオーバーの縮小像は22nmから18nmの間に入っている必要がある。
【0063】
クロスオーバー位置の振る舞いを、図10の(c)に示す。クロスオーバー位置も、クロスオーバー径と同様に、陰極温度に対する依存性は極めて小さく、ウェネルト電圧を変化させると変動する。
【0064】
クロスオーバー位置については、下流に設置したレンズの焦点距離から、上限値および下限値を決定した。一例としては、図10の(c)に示したように、陰極先端よりビームの進行方向を正の向きとして上限値1006を10mm、下限値1007を0mmと設定した。
【0065】
従来の電子ビーム描画装置においては、陰極を空間電荷制限領域で使用し、ウェネルト電圧の調整のみによりプローブ電流を制御するのが一般的であった。空間電荷制限領域においては、プローブ電流は陰極温度に依らず、クロスオーバー径やクロスオーバー位置もまた、陰極温度に対する依存性が極めて小さい。したがって、電子ビームの特性を調整するためのパラメータがウェネルト電圧ただ一つとなってしまう。複数の電子ビームを取り扱い、その特性を揃える為には、陰極温度というパラメータも調整に使うことが望ましい。そこで、本実施例においては、陰極を温度制限領域で使用する。
【0066】
この温度制限領域においては、ウェネルト電圧に対してプローブ電流の変化が緩やかで、陰極温度に対する感度が高く、一方では、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置が陰極温度によらず各電極に印加する電圧によって決定される。この点に注目すると、効率よく調整を行うためには、まず、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置が所望の値となるようにウェネルト電圧を設定し、その後、プローブ電流が所望の値となるようにヒーター電流を設定すればよい。
【0067】
これを、全ての電子ビームについて独立に行うことにより、全ての電子ビームの陰極放出電流密度とクロスオーバー径およびクロスオーバー位置を所望の値に揃えることが可能になる。
【0068】
一方、スループットの観点からは、より高い陰極放出電流密度を得ることが望ましい。図2に示した陰極温度および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係から明らかなように、高い陰極放出電流密度を得るためには、陰極温度を高めるか、陰極に印加される電場を強めればよい。しかし、陰極温度を高めると、電子銃内の真空度の低下および陰極の劣化の恐れがある。即ち、できるだけ低い陰極温度で、高い陰極放出電流密度を得ることが得策であり、そのためには、従来よりも陰極表面の電場強度を高めて、温度制限領域または温度制限領域に近い領域で使用することが望ましい。即ち、温度制限領域にて電子銃を使用することは、スループットの観点からも望ましいことであるといえる。
【0069】
なお、上記においては、クロスオーバー径、クロスオーバー位置が共にそれぞれ設定された上限値と下限値の間に入るようにウェネルト電圧を調整すると説明したが、本実施例においては、図10の(b)と(c)に示したように、クロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲1005は、クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲1008を完全に含むことが分かった。したがって、ウェネルト電圧の調整はクロスオーバー径のみを基準にが設定された上限値と下限値の間に入るように調整すれば、充分であった。
【0070】
電子銃の構造、下流の電子光学系の設計によっては、本実施例とは逆に、クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲がクロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲を完全に含む場合もある。その場合は、クロスオーバー位置を基準にウェネルト電圧の調整を行ってもよい。また、クロスオーバー径およびクロスオーバー位置の双方を基準にウェネルト電圧の調整を行っても同様の効果が得られる。
【0071】
次に、図11に示したフローチャートを用いて、本実施例の構成を詳細に説明する。
【0072】
ステップ1では、複数の陰極を加熱する全てのヒーターについて基準電流値を設定し、全てのウェネルト電極に対して基準電圧値を設定する。
【0073】
ステップ2では、複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバー径を個別に測定する。
【0074】
ステップ3では、ステップ2における測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っているか否かを判定する。
【0075】
ステップ3における判定で、全ての電子ビームのうち一つでもクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていないものがあると判定された場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、ステップ2に戻った。そして、ステップ3における判定で、全ての電子ビームのクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていると判定されるまでステップ2からステップ3を繰り返した。ステップ3における判定で、全ての電子ビームのクロスオーバー径が上限値と下限値の間に入っていると判定された場合は、ステップ4に進む。
【0076】
ステップ4では、個々の電子ビームのプローブ電流を測定する。
【0077】
ステップ5では、 ステップ4で測定されたプローブ電流が上限値と下限値の間に入っているか、否かを判定する。
【0078】
ステップ5における判定で、全ての電子ビームのうち一つでもプローブ電流が上限値と下限値の間に入っていないものがあると判定された場合、該当する電子ビームに対応するヒーターに流す電流を再設定し、ステップ4に戻った。ステップ5における判定で、全ての電子ビームのプローブ電流が下限値を満たしていると判定されるまでステップ4から5を繰り返す。
【0079】
ステップ5における判定で、全ての電子ビームのプローブ電流が下限値を満たしていると判定された場合は、ステップ6に進む。
【0080】
ステップ6では、実施例1と同様の方法で、電磁偏向器および回転コイルの調整を行う。
【0081】
ステップ7では、実施例2と同様の方法で各静電偏向器の調整を行う。
【0082】
以上の手順によるビーム較正を、陰極の交換時に加え、一週間に1回の頻度で、定期的な較正で実施した結果、スループットを低下させることなく、良好な描画結果を保つことが出来た。
【0083】
なお、本実施例においては、陰極・陽極・ウェネルト電極からなる三極管構造を持った熱電子銃を用いたが、例えば、一本のビームに対して陰極と陽極間に2つ以上の電極を2つ用いたような場合であっても、三極管構造と同様の陰極放出電流密度の特性が得られる場合は、本実施例と同様の効果をあげることが出来る。
また、本実施例においては、陰極を加熱するためにヒーターを用い、これに通電する電流を調整することにより陰極温度の制御を行ったが、異なる形態のヒーターを用いて陰極を加熱する場合は、例えば、ヒーターに印加する電圧を調整するなどしてもよい。
【0084】
また、本実施例においては、クロスオーバー径を測定するために、ステージ上に設置したナイフエッジに反射した電子を半導体検出器により検出したが、測定手段はこの組み合わせに限らない。例えば、ナイフエッジの代りにクロスワイヤーやビーム較正用マークを用いてもよいし、半導体検出器の代りに光電子増倍管を用いても良い。また、微小な絞りと絞りを通過した電流を測定するための半導体検出器の組み合わせでもよい。
【0085】
また、本実施例においては、複数の電子ビームのプローブ電流の測定を行い、これらを所望の値にするべく陰極温度の調整を行ったが、プローブ電流と陰極から放出された電流の関係がよく分かっている場合は、各陰極から放出された電流の測定を行い、これらを所望の値にするべく陰極温度の調整を行ってもよい。
【0086】
本発明は、以下の構成例を包含する。
【0087】
(1)複数の陰極と、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる手段を有する電子銃において、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームの全てに作用する、8個以上のコイルまたは8個以上の電極よりなる偏向器を有することを特徴とする電子銃。
【0088】
(2)複数の陰極と、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる手段を有する電子銃において、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームに作用する回転コイルを有することを特徴とする電子銃。
【0089】
(3)前記事項(1)乃至(2)の何れかの電子銃を備えることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0090】
(4)複数の陰極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有する電子銃を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子ビームの進行方向に対して、前記陽極よりも下流に、複数の電子ビームに対して個別に作用する複数の偏向器を有することを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0091】
(5)複数の陰極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有する電子銃を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子ビームの進行方向に対して前記陽極よりも下流に、放熱機構を有する電子を遮断する手段を備えることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【0092】
(6)複数の陰極と、前記複数の陰極の温度を個々に調整する、前記陰極と同数のヒーターと、前記複数の陰極の表面付近の電場の強さを個々に調整する、前記陰極と同数のウェネルト電極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極を有することを特徴とする電子銃と、描画すべき対象物を搭載することのできる移動可能なステージを用いて、各陰極の少なくとも一部の領域を温度制限領域で動作させることを特徴とする電子ビーム描画方法。
【0093】
(7)前記事項(6)において、
(a)前記複数のウェネルト電極に印加する電圧と、前記複数のヒーターの温度を決定するパラメータを、基準値に設定する工程と、
(b)前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバーの大きさを個別に測定する工程と、
(c)前記(b)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバーの大きさが所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(d)前記(c)の工程において、クロスオーバーの大きさが所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、前記(b)の工程に戻る工程と、
(e)前記(c)の工程において、全ての電子ビームのクロスオーバーの大きさが所望の値になっていると判定された場合は、前記複数の陰極の全てについて、放出された電子ビームの電流を個別に測定する工程と、
(f)前記(e)の測定に基づいて、全ての陰極について個別に、放出された電子ビームの電流が所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(g)前記(f)の工程において、放出された電子ビームの電流が所望の値になっていないと判定された陰極が一つ以上ある場合は、該当する陰極を加熱するヒーターの温度を決定するパラメータを再設定し、前記(e)の工程に戻る工程、
とを有することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【0094】
(8)前記事項(6)において、
(a)前記複数のウェネルト電極に印加する電圧と、前記複数のヒーターの温度を決定するパラメータを、基準値に設定する工程と、
(b)前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、クロスオーバーの大きさを個別に測定する工程と、
(c)前記(b)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、クロスオーバーの大きさが所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(d)前記(c)の工程において、クロスオーバーの大きさが所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応するウェネルト電圧を再設定し、前記(b)の工程に戻る工程と、
(e)前記(c)の工程において、全ての電子ビームのクロスオーバーの大きさが所望の値になっていると判定された場合は、前記複数の陰極から放出された全ての電子ビームについて、ステージ上に到達した電流を個別に測定する工程と、
(f)前記(e)の測定に基づいて、全ての電子ビームについて個別に、ステージ上に到達した電流が所望の値になっているか否かを判定する工程と、
(g)前記(f)の工程において、ステージ上に到達した電流が所望の値になっていないと判定された電子ビームが一つ以上ある場合は、該当する電子ビームに対応する陰極を加熱するヒーターの温度を決定するパラメータを再設定し、前記(e)の工程に戻る工程とを、
有することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】一般的な三極間型の熱電子銃の模式図。
【図2】陰極温度および陰極表面での電場強度に対する陰極放出電流密度の関係を説明する図。
【図3】本発明による電子ビーム描画装置の一実施例の構成を説明する図。
【図4】図3における電子銃部の断面図。
【図5】図3における陰極およびウェネルト電極部の拡大図。
【図6】電子ビームの位置の測定結果の一例を示す図。
【図7】図3における、電磁偏向器(a)、(b)、および回転コイル(c)の具体例を示す図。
【図8】電子ビームの位置の測定結果の他の例を示す図。
【図9】図3における、陰極とウェネルト電極、および陽極と電子遮断板にかかる部分の拡大図。
【図10】陰極温度および陰極表面での電場強度に対するプローブ電流およびクロスオーバー径およびクロスオーバー位置の関係を説明する図。
【図11】本発明における電子銃の調整方法を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0096】
101…陰極、102…ヒーター、103…ウェネルト電極、104…陽極、105…クロスオーバー、201…空間電荷制限領域、202…温度制限領域、
301a、301b、301c、301d…陰極、302a、302b、302c、302d…ウェネルト電極、303a、303b、303c、303d…クロスオーバー、304…陽極、305…電磁レンズ群、306…電磁レンズ群、307…電磁レンズ群、308…電磁レンズ群、309…ステージ、310―試料、311…ブランカー群、312…ビーム較正用マーク、313…半導体検出器、401…陰極およびウェネルト電極部、402…電子ビーム、403…陽極、404…陽極孔、405…高圧ケーブル、406…高電圧空間、407…チップ保持部、408…電磁偏向器、409…回転コイル、410…静電偏向器、411…電子遮断板、412…陰極およびウェネルト電極および陽極および電子遮断板部、501…陰極、502…ヒーター、503…ウェネルト電極、504…端子、505…絶縁碍子、601…各電子ビームの理想的な位置、602…各電子ビームの位置の測定結果、701…コイル、702…電子ビームの進行方向、703…コイル、704…電子ビームの進行方向、801…各電子ビームの理想的な位置、802…各電子ビームの位置の測定結果、901…電子ビーム、902…絞り、903…水冷管、1001…プローブ電流の上限値、1002…プローブ電流の下限値、1003…クロスオーバー径の上限値、1004…クロスオーバー径の下限値、1005…クロスオーバー位置に対する電場の強さの適正範囲、1006…クロスオーバー位置の上限値、1007…クロスオーバー位置の下限値、1008…クロスオーバー径に対する電場の強さの適正範囲。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の陰極と、前記複数の陰極の表面付近の電場の強さを個々に調整する複数のウェネルト電極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極とを備えた電子銃を用いて、試料上に所望のパターンを描画する工程を有し、前記ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、前記複数の陰極から放出された前記複数の電子ビームのすべてについて、クロスオーバー径もしくはクロスオーバー位置を個別に調整した後、前記複数の陰極の温度を制御することにより、前記複数の陰極より放出される電流もしくは前記試料上に到達する電流を調整するようにしたことを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記電子銃は、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームが通過する領域を囲むように配置され、前記複数の電子ビームのすべてに作用する偏向器および回転コイルを有し、前記偏向器および前記回転コイルを用いて、前記複数の電子ビームの配列を補正するようにしたことを特徴とする請求項7記載の電子ビーム描画方法。
【請求項1】
複数の陰極と、前記複数の陰極の表面付近の電場の強さを個々に調整する複数のウェネルト電極と、前記複数の陰極に対して正の電位を持ち、前記複数の陰極から発生した複数の電子ビームを加速する電場を発生させる陽極とを備えた電子銃を用いて、試料上に所望のパターンを描画する工程を有し、前記ウェネルト電極に印加する電圧の制御により、前記複数の陰極から放出された前記複数の電子ビームのすべてについて、クロスオーバー径もしくはクロスオーバー位置を個別に調整した後、前記複数の陰極の温度を制御することにより、前記複数の陰極より放出される電流もしくは前記試料上に到達する電流を調整するようにしたことを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記電子銃は、前記複数の電子ビームを加速する電場内に、前記複数の電子ビームが通過する領域を囲むように配置され、前記複数の電子ビームのすべてに作用する偏向器および回転コイルを有し、前記偏向器および前記回転コイルを用いて、前記複数の電子ビームの配列を補正するようにしたことを特徴とする請求項7記載の電子ビーム描画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−219037(P2008−219037A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110009(P2008−110009)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【分割の表示】特願2002−296074(P2002−296074)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【分割の表示】特願2002−296074(P2002−296074)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】
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