電極接合方法及びその装置
【課題】基板電極と部品電極との接合部に生じ得る隙間をなくして接合不良を安定して防止する。
【解決手段】圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面には、シリコンゴム151が配置される。圧電アクチュエータは、シリコンゴム上に載置された状態で、当該凹部内にセットされる。その後、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットし、押さえ部材がこの凹部底面に当接するまでボルト150を締める。これにより、押さえ部材が押し下げられると、シリコンゴムが弾性変形し、その復元力により、圧電アクチュエータ上の駆動電極9とフレキシブル基板の電極パッド3とが密着する。
【解決手段】圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面には、シリコンゴム151が配置される。圧電アクチュエータは、シリコンゴム上に載置された状態で、当該凹部内にセットされる。その後、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットし、押さえ部材がこの凹部底面に当接するまでボルト150を締める。これにより、押さえ部材が押し下げられると、シリコンゴムが弾性変形し、その復元力により、圧電アクチュエータ上の駆動電極9とフレキシブル基板の電極パッド3とが密着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成された基板電極と、圧電素子、ICチップ、チップコンデンサ等の電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光透過性の材料からなる基板に対してその裏面側からレーザ光を照射することにより、基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。例えば特許文献1に記載されている方法では、レーザ光透過性の基板を透過したレーザ光を、基板のおもて面に形成された基板電極に当てるように照射することにより、基板電極を加熱する。この基板電極の熱は、基板電極に直接接触している部品電極に伝わり、基板電極と部品電極とが互いに対向している部分で、両電極の温度をともに上昇させる。この温度上昇により、両電極を溶融させて接合することができる。また、特許文献2に記載の方法において、上記レーザ光の照射によって生じた基板電極の熱は、基板の基板電極と電子部品の部品電極との間に介在する導電性接合材としてのはんだに伝わるとともに、そのはんだを介して部品電極にも伝わる。この熱により、両電極の温度とともに、それらの間に介在するはんだの温度を上昇させる。この温度上昇により、基板電極と部品電極とが互いに対向している部分で、両電極及びはんだを溶融を溶融させ、両電極を接合することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−172034号公報
【特許文献2】特開平9−260820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電極接合方法では、次に説明する理由により、基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。すなわち、基板電極と部品電極とを直接接触させて接合する方法では、基板及び電子部品のセットの仕方によっては、レーザ光を照射する際に基板電極と部品電極との間の接触不良で両電極間に隙間が発生している場合がある。この場合は、上記レーザ光の照射によって基板電極が発熱したとしても、その熱が部品電極に伝わりにくく、部品電極が十分に溶融しないことにより基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。
また、基板電極と部品電極との間にはんだを介在させて接合する方法では、基板及び電子部品のセットの仕方によっては、レーザ光を照射する際に電極とはんだとの間の接触不良で隙間が発生している場合がある。この場合は、上記レーザ光の照射によって基板電極が発熱したとしても、電極間のはんだや部品電極が十分に溶融せず、基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。
【0005】
そこで、本出願人は、特願2005−216411号(先願)において、基板電極と部品電極との接合部に生じた隙間による接合不良を防止し得る電極接合方法を提案した。この方法は、基板表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とを互いに接近させる向きに基板及び電子部品の少なくとも一方を付勢し、付勢を行った状態でレーザ光を照射して両電極を接合するというものである。この方法によれば、付勢を行うことで基板電極と部品電極とを互いに密着させて、基板電極と部品電極との隙間の発生を抑制することができる。その結果、基板電極と部品電極との隙間が少ない状態で基板電極と部品電極との接合することができる。
【0006】
ところが、本発明者らのその後の研究により、単に付勢するだけでは基板電極と部品電極との隙間をなくすことができない場合があるという問題点が判明した。以下、図16を用いて具体的に説明する。
【0007】
図16は、上記先願で提案した電極接合方法を利用して電子部品を基板上に実装する冶具の一例を示す断面図である。
この冶具は、電子部品を保持する電子部品ホルダー240を備えている。この電子部品ホルダー240には、電子部品207の厚さよりも僅かに浅い深さを有する電子部品装着用の凹部242を備えている。電子部品207はその部品電極が図中上側を向くようにして凹部242にセットされる。その後、基板201を電子部品207の上面に載せ、その上に更に押さえ部材246を載せる。この押さえ部材246は、基板201を電子部品207側に押さえる板状の部材であり、合成石英等のレーザ光透過性の材料で形成されている。そして、ボルト250を用いて押さえ部材246を図示のように電子部品ホルダー240に固定する。このボルト250を締めることで、押さえ部材246が基板201を電子部品207側に押し、基板201の図中下面に設けられた基板電極と電子部品207の図中上面に設けられた部品電極とを密着させる。
【0008】
一般に、図16に示した各部材の寸法は、その製造誤差等によって所望寸法からのズレが生じる。具体的には、電子部品207の厚さ(図中上下方向における電子部品の寸法)、電子部品207上の部品電極や基板201上の基板電極の高さ(図中上下方向における電極の寸法)、電子部品ホルダー240の凹部242の深さなどの寸法誤差が生じる。また、電子部品207や押さえ部材246の厚みムラ、電子部品ホルダー240上の押さえ部材246との当接面の高さ位置のズレなどの寸法誤差も存在する。このような寸法誤差が存在する結果、ボルト250を締めて押さえ部材246により基板201を電子部品207側に押しても、基板201上の基板電極と電子部品207上の部品電極との隙間を埋めることができない場合がある。具体例を挙げれば、凹部242の深さが所望の深さよりも深い寸法誤差をもつ場合や、電子部品207の厚さが所望の厚さよりも薄い寸法誤差をもつ場合などである。これらの場合、電子部品ホルダー240と押さえ部材246とが当接する状態までボルト250を締めても、基板電極と部品電極との間に隙間が残ってしまう。
【0009】
なお、電子部品ホルダー240の凹部242の深さを電子部品207の厚みよりも十分に浅くなるように設定し、寸法誤差があっても電子部品207の上面が常に凹部242よりも上側に位置するようにすれば、寸法誤差があっても基板電極と部品電極との間の隙間をなくすことができるようにも思われる。しかし、電子部品207、基板201、押さえ部材246及び電子部品ホルダー240のいずれも、図中上下方向において非弾性であるため、ボルト250を締め過ぎると電子部品207に過剰な圧力がかかり部品を破損するおそれがある。加えて、過剰な圧力がかからないようにボルト250の締め具合を調整することは極めて煩雑な作業である。また、電子部品207と基板201との間に偏った圧力が加わると、圧力が弱い側で基板電極と部品電極との間に隙間が発生してしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、上記先願の改良に係り、詳しくは基板電極と部品電極との接合部に生じ得る隙間をなくして接合不良を安定して防止し得る電極接合方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持し、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射することにより、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合方法であって、上記基板及び上記電子部品を保持した状態で、上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢し、該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の電極接合方法において、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するとともに、上記レーザ光の照射の際にレーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材により上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえることにより上記付勢を行うことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の電極接合方法において、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材と該押さえ部材とが互いに当接するまで該押さえ部材と該押さえ規制部材とを相対移動させることにより上記付勢を行い、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を上記支持部材により支持することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の電極接合方法において、上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持する保持手段と、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備え、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合装置であって、上記基板及び上記電子部品を保持した状態で上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する付勢手段を備え、該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の電極接合装置において、上記付勢手段は、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を支持する非弾性の支持部材と、上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえる、レーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材とを備えており、上記弾性部材を、該支持部材における該電子部品を支持する支持部分に配置したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の電極接合装置法において、上記付勢手段は、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材を有し、上記支持部材は、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を支持することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項5、6又は7の電極接合装置において、上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、基板及び電子部品を保持した状態で互いに接近させる向きに基板及び電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する。これにより、基板及び電子部品を保持する部材や電子部品などに寸法誤差があっても、その寸法誤差を弾性部材の弾性変形で吸収することができるので、基板電極と部品電極とを互いに密着させることができる。その結果、基板の電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ基板電極に当てるようにレーザ光を照射する際に、基板電極と部品電極との間に隙間が発生するのを安定して抑制できる。その結果、レーザ光照射によって基板電極に発生した熱を部品電極に確実に伝えて基板電極と部品電極とを接合することができる。
なお、弾性部材の弾性度合いは、電子部品の圧力耐性等に応じて適宜設定される。
【0013】
特に、請求項2及び6の発明では、電子部品における基板との対向面とは反対側の面を、上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するため、弾性部材をどのように配置しても、その弾性部材によって基板電極に照射されるレーザ光が遮られることはない。よって、弾性部材の配置や材料選択(レーザ光透過性を有する材料)の自由度が増す。
【0014】
また、請求項3及び7の発明では、押さえ部材による押さえ前の状態において、押さえ規制部材における押さえ部材と当接する当接部分よりも電子部品の部品電極の方が押さえ部材に近い位置に位置決めされる。この状態から押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまでこれらを相対移動させると、弾性部材が弾性変形して、基板電極と部品電極とが互いに密着する。よって、部品電極の位置が当接部分の位置との差分を、想定される寸法誤差よりも十分に大きく設定しておけば、押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまで相対移動させるだけで、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができる。
【0015】
また、請求項4及び8の発明では、弾性部材がレーザ光に対して耐性を有する材料からなるので、レーザ光が弾性部材に当たって劣化するのを抑制することができる。これにより、長期にわたって適切な弾性を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板電極と部品電極との接合部に生じ得る隙間をなくして接合不良を安定して防止し得るという優れた効果が奏される。
特に、請求項2及び6の発明によれば、弾性部材の配置や材料選択の自由度が増すという優れた効果が奏される。
また、請求項3及び7の発明によれば、押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまで相対移動させるという簡単な動作で、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができるという優れた効果が奏される。
また、請求項4及び8の発明によれば、長期にわたって、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施形態として、基板としての柔軟性を持ったフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)の基板電極と、そのフレキシブル基板上に実装される圧電素子からなる電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法、及びその方法を含む部品実装方法について説明する。
【0018】
図2は、本部品実装方法で電子部品が実装されるフレキシブル基板を示す拡大断面図である。
フレキシブル基板1は、レーザ光透過性を有する材料からなるベースフィルム2のおもて面に、導電性材料たる銅からなる回路パターンが形成されている。この回路パターンは、配線部と、これに設けられた複数の基板電極としての電極パッド3とから構成されている。これら電極パッド3は、導電性接合材としてのはんだを介して電子部品の部品電極と接合される。波長1064[nm]のYAGレーザ光を照射する場合のベースフィルム2の材料としては、その波長1064[nm]のYAGレーザ光を透過させ得るPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂を用いることができる。
【0019】
本部品実装方法において、フレキシブル基板1の電極パッド3と電子部品の部品電極とを直接接触させて接合してもよいし、電極パッド3と部品電極との間に導電性接合材からなる中間接合層を介在させて接合してもよい。ここで、中間接合層が介在しない場合は、レーザ光の照射によって加熱した電極パッド3の熱によって電極パッド3と部品電極とが互いに接触している部分を溶融させて部品電極と電極パッド3とを接合する。一方、中間接合層が介在する場合は、レーザ光の照射によって加熱した電極パッド3の熱によって中間接合層を溶融させて、部品電極と電極パッド3とを接合する。
【0020】
上記中間接合層を部品電極と電極パッド3との間に介在させる方法としては、フレキシブル基板1として、電極パッド3の表面や部品電極の表面に金やスズ等の金属材料からなる中間接合層を被覆したものを用いる方法を例示することができる。また、電子部品として、その表面に設けられた複数の部品電極のそれぞれに金属材料からなる中間接合層を被覆したものを用いる方法でもよい。また、印刷マスクにより、フレキシブル基板1の各電極パッド3のそれぞれの表面に、導電性接合材としてのはんだを含むはんだペーストを印刷する方法でもよい。
【0021】
上記はんだペーストの印刷は、例えば次のように行うことができる。はんだペーストの印刷工程は、孔版たる印刷マスクをフレキシブル基板1のおもて面に密着させる密着工程と、そのフレキシブル基板1に密着させた印刷マスクの各孔にはんだペーストを充填する充填工程と、印刷マスクをフレキシブル基板から剥がす剥離工程とを含む。具体的には、まず、図3や図4に示すように、回路パターンが形成されているフレキシブル基板1のおもて面に印刷マスク4を密着させる。印刷マスク4には、フレキシブル基板1の各電極パッド3に対応する複数の貫通孔4aからなる印刷パターンが形成されている。密着工程では、各電極パッド3の真上に、印刷マスク4の各貫通孔4aを位置させるように、位置合わせを行いながら印刷マスク4をフレキシブル基板1に密着させる。このような密着工程が終了したら、次に、図5に示すように、フレキシブル基板1に密着している印刷マスク4の印刷側面上に、スキージ5を用いてはんだペースト6を刷り付けて、印刷マスク4の各貫通孔4a内にはんだペースト6を充填する。そして、図6に示すように、印刷マスク4をフレキシブル基板1から剥がして、各貫通孔4a内のはんだペースト6を、それぞれフレキシブル基板1の電極パッド3上に転移させる。
【0022】
上記フレキシブル基板1の電極パッド3と電子部品の部品電極との接合は、例えば次のようなレーザ光を用いた電極接合方法で行う。この電極接合方法は、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを有する。上記部品保持工程では、レーザ接合用の保持手段としてのワークホルダー上に、フレキシブル基板1と電子部品とが互いに位置決めされてセットされる。上記レーザ照射接合工程では、レーザ光の照射によって電極パッド3と電子部品の部品電極とが接合される。ここで、1回の部品保持工程で全ての電子部品をフレキシブル基板1上に載置してからそれぞれの電子部品に対してレーザ照射接合工程を実施してもよいが、電子部品を少しずつ載置していきながらレーザ照射接合工程を実施してもよい。この場合には、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを交互に繰り返していくことになる。以下、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを交互に繰り返していく方法を例にして、本電極接合方法を説明する。
【0023】
図7及び図8は、それぞれ、フレキシブル基板1に実装される電子部品としての圧電アクチュエータ7の平面図及び部分拡大図である。
この圧電アクチュエータ7は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電材料で形成され、ベース部710と櫛歯部720とを有する。櫛歯部720は、厚さ方向にそれぞれ延在する板状の圧電素子部720A、720B及び溝部720Cが長手方向(図中の上下方向)に所定のピッチで交互に形成され、全体として櫛歯形状になっている。これらの板状の圧電素子部720A、720Bの表面には、圧電アクチュエータ7の長手方向(図中の上下方向)の一つおきに、部品電極としての駆動電極(ホット電極)9が形成されている。駆動電極9が形成されている圧電素子部が駆動圧電素子部720Aであり、駆動電極9が形成されていない圧電素子部が固定圧電素子部720Bである。上記駆動圧電素子部720Aの駆動電極9が形成されている面とは反対側の面(図中の奥側の面)にはグランド電極が形成されている。また、上記圧電アクチュエータ7のベース部710の端面は、金属材料(例えばSUS)などで形成された補強部材8に取り付けられている。
【0024】
図9並びに図10(a)及び図10(b)は、それぞれ、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7の断面図及び部分拡大図である。
圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9の端部と、フレキシブル基板1のベースフィルム2の端部に露出するように形成された電極パッド3とが接合される。この接合は、前述のように電極パッド3と駆動電極9とを直接接触させて行ってもいいし(図10(a)参照)と、電極パッド3と駆動電極9との間にはんだペースト6等の導電性接合材からなる中間接合層を介在させて行ってもよい(図10(b)参照)。
【0025】
図11は、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7がセットされるワークホルダー130の平面図である。
このワークホルダー130は、ベース部材131上に、基板ホルダー132と圧電アクチュエータホルダー140とを備えている。
【0026】
上記基板ホルダー132は、フレキシブル基板1を保持するものであり、基板案内用テーパー付きのフィードピン133,134と、例えばマイクロメータ等からなる図示しない位置合わせ微調整用のXY駆動機構とを備えている。この基板ホルダー132のフィードピン133,134に、フレキシブル基板1の所定位置に形成された貫通孔を貫通させてフレキシブル基板1をセットする。これにより、基板ホルダー132上の所定位置に、フレキシブル基板1のだいたいの位置が合わせされて保持される。そして、上記位置合わせ微調整用のXY駆動機構を用いて、図11中のX−Y方向におけるフレキシブル基板1の位置を微調整する。この微調整により、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9と、フレキシブル基板1の電極パッド3とが対向するように、フレキシブル基板1を位置決めすることができる。
【0027】
上記圧電アクチュエータホルダー140は、圧電アクチュエータ7を保持するものである。この圧電アクチュエータホルダー140のホルダー本体141の表面部に、圧電アクチュエータ7の厚さよりも浅い深さを有する圧電アクチュエータ装着用の凹部142を備えている。圧電アクチュエータ7のX方向の位置決めは、凹部142の図中左側の内側面に位置する2つの被突き当て面142a,142bに圧電アクチュエータ7の端面を突き当てることにより行われる。また、圧電アクチュエータ7のY方向の位置決めは、凹部142の図中下側の内側面に位置する被突き当て面142cに圧電アクチュエータ7の端面を突き当てることにより行われる。上記圧電アクチュエータ7の突き当ては、図示しない微調整用駆動機構で行われる。この微調整用駆動機構は、例えばネジ部材等で構成され、ホルダー本体141の上記被突き当て面142a及び142bに対向する内側面側と、上記被突き当て面142cに対向する内側面側のそれぞれに設けられている。
【0028】
また、上記圧電アクチュエータ装着用の凹部142の周囲には、押さえ部材146の厚さと同程度の深さを有する押さえ規制部材として機能する押さえ部材装着用の凹部147が形成されている。押さえ部材146は、上記フレキシブル基板1のレーザ光照射側の表面を圧電アクチュエータ7側に押さえる板状の部材であり、合成石英等のレーザ光透過性の材料で形成されている。
【0029】
図1(a)及び(b)は、図11中の符号A−Aで示す位置の断面図である。図1(a)は、押さえ部材146による押さえ前の状態を示し、図1(b)は、押さえ部材146による押さえ後の状態を示している。
上記圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面には、弾性部材としてのシリコンゴム151が配置される。圧電アクチュエータ7は、シリコンゴム151上に載置された状態で、圧電アクチュエータ装着用の凹部142内にセットされる。このとき、図1(a)に示すように、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットする前(押さえ部材146による押さえ前)の状態では、押さえ部材装着用の凹部147の底面の高さ位置よりも、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9の高さ位置の方が高い状態となる。この状態から、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットし、押さえ部材146が押さえ部材装着用の凹部147の底面に当接するまでボルト150を締める。ボルト150を締めることで、押さえ部材146が押し下げられ、フレキシブル基板1が圧電アクチュエータ7側に付勢される。
【0030】
押さえ部材146と圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面との間に介在する部材のうち、フレキシブル基板1、そのフレキシブル基板1上の電極パッド3、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9、圧電アクチュエータ7、圧電アクチュエータ7上のグランド電極10は、少なくとも図中上下方向においては非弾性のものであるが、シリコンゴム151は弾性を有する。よって、押さえ部材146が押し下げられると、シリコンゴム151が弾性変形する。その結果、シリコンゴム151の復元力により圧電アクチュエータ7には図中上向きの付勢力が働き、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とが密着する。このとき、圧電アクチュエータ7の厚さ(図中上下方向における圧電アクチュエータ7の寸法)、駆動電極9や電極パッド3の高さ(図中上下方向における電極3,9の寸法)、圧電アクチュエータ装着用の凹部142の深さ、押さえ部材装着用の凹部147の底面の高さ位置等に多少の寸法誤差があっても、その寸法誤差はシリコンゴム151の弾性によって吸収され、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とが互いに密着することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、弾性部材としてシリコンゴム151を用いている。シリコンゴム151は、YAGレーザ光に対して耐性を有する材料からなるため、後述するYAGレーザ光が、圧電アクチュエータ7の櫛歯部720における溝部720Cを通過してシリコンゴム151に照射されても、シリコンゴム151の劣化は少ない。したがって、長期にわたってシリコンゴム151を交換せずに作業を行うことができる。このようにYAGレーザ光に対して耐性を有する他の弾性部材としては、テフロン(登録商標)コーティングされた弾性部材などが挙げられる。
【0032】
図12は、本電極接合方法に用いられるレーザ照射型の電極接合装置の概略構成図である。
この電極接合装置は、レーザ発振器100等を有するレーザ照射部と、X−Yテーブル110等を有するワーク保持駆動部と、これらを制御する制御部160とを備えている。
【0033】
上記レーザ照射部は、光源としてのレーザ発振器100と、光路形成部材としての光ファイバー102と、結像手段としての結像光学系103とを用いて構成されている。
上記レーザ発振器100は、Qスイッチを備えたYAGレーザであり、波長1064[nm]のパルス状のレーザ光を所定の繰り返し周波数で出力することができる。レーザ光の繰り返し周波数(Qスイッチの周波数)は100Hz〜数kHzで変化させることができる。この繰り返し周波数を高くするほど、レーザ光のパルス幅[nsec]は狭くなり、ピーク出力パワー[kW]は小さくなる。レーザ光の単位時間当りの出力エネルギーである平均出力パワー(=1パルスレーザ光あたりのエネルギー×繰り返し周波数)を大きくする場合は、YAGロッドを励起するランプや半導体レーザ等で構成された励起部に電流を供給する電源の電流値を大きくする。
【0034】
上記レーザ発振器100から発せられたYAGレーザ光Lは、図13に示すような山形のエネルギー強度分布のガウシアンビームとなる。このYAGレーザ光が光ファイバー102の一端面から光ファイバー102内に進入する。この光ファイバーには、ステップインデックス(SI)型、グレーデッドインデックス(GI)型、シングルモード(SM)型など、様々なタイプのものがあるが、図示の光ファイバー102はSI型のものである。SI型の光ファイバー102内では、図14に示すように、レーザ光の一部がファイバーのコア壁面で多重反射しながらレーザ入射側から出射側に進んでいく。このように多重反射すると、レーザ光は、図15に示すような台形状のエネルギー強度分布のトップハットビームとなる。すなわち、SI型の光ファイバー102は、レーザ光の横断面方向の強度分布を均一化させる強度分布均一化光学系として機能する。
【0035】
上記結像光学系103はレンズなどで構成され、上記図15に示すように光ファイバー102内でエネルギー強度分布が均一化されたYAGレーザ光Lを、照射対象物であるフレキシブル基板1の電極パッド3が形成されている面上に結像して照射する。
【0036】
上記ワーク保持駆動部は、XYテーブル110と移動検知手段としてのリニアスケール120と前述のワークホルダー130とを用いて構成されている。上記XYテーブル110は、水平方向(図中のX方向及びY方向)に移動可能な載置台、その載置台を移動させる駆動機構、駆動源としての駆動モータ等で構成されている。上記リニアスケール120は、上記XYテーブル110の水平方向(図中のX方向及びY方向)における移動量を検知する。
【0037】
上記制御部160は、CPUやメモリ(ROM、RAM)等からなるコンピュータ装置と、駆動制御回路とを用いて構成されている。駆動制御回路は、レーザ駆動制御回路とテーブル駆動制御回路とを有し、上記コンピュータ装置で制御される。上記レーザ駆動制御回路は、上記コンピュータ装置の制御コマンドに基づいて、上記YAGレーザ100のQスイッチをオン/オフしたり電源の出力電流値の設定を変更したりする駆動制御信号を生成して出力する。上記テーブル駆動制御回路は、上記コンピュータ装置の制御コマンドに基づいて、上記XYテーブル110のモータのオン/オフしたりモータの回転速度(テーブルの移動速度)を変化させたりする駆動制御信号を生成して出力する。
【0038】
上記構成の電極接合装置において、まず、図示しないマウント装置又は手作業により、X−Yテーブル110上のワークホルダー130の所定位置に、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7がセットするとともに、レーザ光透過性の押さえ部材146をボルト150により装着する。ボルト150で押さえ部材146を装着することで、前述のように、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7を保持した状態でフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを互いに接近させる向きにフレキシブル基板1を付勢することができる。このフレキシブル基板1の付勢により、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9と、フレキシブル基板1の電極パッド3とを密着させることができる。
【0039】
次に、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とを密着させた状態で、上記YAGレーザ光を押さえ部材146を介してフレキシブル基板1の電極パッド3上に照射する。これにより、電極パッド3が加熱され、駆動電極9と電極パッド3とが接合される。
【0040】
なお、本実施形態においては、ボルト150を締めることにより押さえ部材146を押し下げて、電極パッド3と駆動電極9とを互いに接近させる向きにフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢する構成を例に挙げたが、他の構成によりフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢するようにしてもよい。例えば、上記先願に記載したように、吸引ポンプが発生させる吸引力を利用してフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る部品実装方法(電極接合方法)で用いるワークホルダーを後述の図11中の符号A−Aで示す位置で切断したときの断面図であり、(a)は押さえ部材による押さえ前の状態を示し、(b)は同押さえ部材による押さえ後の状態を示す。
【図2】同部品実装方法に用いられるフレキシブル基板を示す拡大断面図。
【図3】同部品実装方法で採用することができる印刷方法で用いる印刷マスクを同フレキシブル基板とともに示す拡大断面図。
【図4】同印刷方法の密着工程を示す拡大断面図。
【図5】同印刷方法の充填工程を示す拡大断面図。
【図6】同印刷方法の剥離工程を示す拡大断面図。
【図7】フレキシブル基板に実装される圧電アクチュエータの平面図。
【図8】同圧電アクチュエータの部分拡大図。
【図9】フレキシブル基板及び圧電アクチュエータの断面図。
【図10】(a)及び(b)はフレキシブル基板と圧電アクチュエータとの接合部の部分拡大図。
【図11】ワークホルダーの平面図。
【図12】本発明の実施形態に係る電極接合装置の概略構成図。
【図13】ガウシアンビームのエネルギー強度分布を示すグラフ。
【図14】SI型の光ファイバー内におけるレーザ光の挙動を示す模式図。
【図15】トップハットビームのエネルギー強度分布を示すグラフ。
【図16】先願で提案した電極接合方法を利用して電子部品を基板上に実装する冶具の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 フレキシブル基板(基板)
2 ベースフィルム
3 電極パッド(基板電極)
6 はんだペースト(導電性接合材を含有)
7 圧電アクチュエータ
9 駆動電極(部品電極)
10 グランド電極
130 ワークホルダー
131 ベース部材
132 基板ホルダー
140 圧電アクチュエータホルダー
141 ホルダー本体
142 圧電アクチュエータ装着用の凹部
146 押さえ部材
147 押さえ部材装着用の凹部(押さえ規制部材)
150 ボルト
151 シリコンゴム(弾性部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成された基板電極と、圧電素子、ICチップ、チップコンデンサ等の電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光透過性の材料からなる基板に対してその裏面側からレーザ光を照射することにより、基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。例えば特許文献1に記載されている方法では、レーザ光透過性の基板を透過したレーザ光を、基板のおもて面に形成された基板電極に当てるように照射することにより、基板電極を加熱する。この基板電極の熱は、基板電極に直接接触している部品電極に伝わり、基板電極と部品電極とが互いに対向している部分で、両電極の温度をともに上昇させる。この温度上昇により、両電極を溶融させて接合することができる。また、特許文献2に記載の方法において、上記レーザ光の照射によって生じた基板電極の熱は、基板の基板電極と電子部品の部品電極との間に介在する導電性接合材としてのはんだに伝わるとともに、そのはんだを介して部品電極にも伝わる。この熱により、両電極の温度とともに、それらの間に介在するはんだの温度を上昇させる。この温度上昇により、基板電極と部品電極とが互いに対向している部分で、両電極及びはんだを溶融を溶融させ、両電極を接合することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−172034号公報
【特許文献2】特開平9−260820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電極接合方法では、次に説明する理由により、基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。すなわち、基板電極と部品電極とを直接接触させて接合する方法では、基板及び電子部品のセットの仕方によっては、レーザ光を照射する際に基板電極と部品電極との間の接触不良で両電極間に隙間が発生している場合がある。この場合は、上記レーザ光の照射によって基板電極が発熱したとしても、その熱が部品電極に伝わりにくく、部品電極が十分に溶融しないことにより基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。
また、基板電極と部品電極との間にはんだを介在させて接合する方法では、基板及び電子部品のセットの仕方によっては、レーザ光を照射する際に電極とはんだとの間の接触不良で隙間が発生している場合がある。この場合は、上記レーザ光の照射によって基板電極が発熱したとしても、電極間のはんだや部品電極が十分に溶融せず、基板電極と部品電極との接合不良を引き起こすおそれがある。
【0005】
そこで、本出願人は、特願2005−216411号(先願)において、基板電極と部品電極との接合部に生じた隙間による接合不良を防止し得る電極接合方法を提案した。この方法は、基板表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とを互いに接近させる向きに基板及び電子部品の少なくとも一方を付勢し、付勢を行った状態でレーザ光を照射して両電極を接合するというものである。この方法によれば、付勢を行うことで基板電極と部品電極とを互いに密着させて、基板電極と部品電極との隙間の発生を抑制することができる。その結果、基板電極と部品電極との隙間が少ない状態で基板電極と部品電極との接合することができる。
【0006】
ところが、本発明者らのその後の研究により、単に付勢するだけでは基板電極と部品電極との隙間をなくすことができない場合があるという問題点が判明した。以下、図16を用いて具体的に説明する。
【0007】
図16は、上記先願で提案した電極接合方法を利用して電子部品を基板上に実装する冶具の一例を示す断面図である。
この冶具は、電子部品を保持する電子部品ホルダー240を備えている。この電子部品ホルダー240には、電子部品207の厚さよりも僅かに浅い深さを有する電子部品装着用の凹部242を備えている。電子部品207はその部品電極が図中上側を向くようにして凹部242にセットされる。その後、基板201を電子部品207の上面に載せ、その上に更に押さえ部材246を載せる。この押さえ部材246は、基板201を電子部品207側に押さえる板状の部材であり、合成石英等のレーザ光透過性の材料で形成されている。そして、ボルト250を用いて押さえ部材246を図示のように電子部品ホルダー240に固定する。このボルト250を締めることで、押さえ部材246が基板201を電子部品207側に押し、基板201の図中下面に設けられた基板電極と電子部品207の図中上面に設けられた部品電極とを密着させる。
【0008】
一般に、図16に示した各部材の寸法は、その製造誤差等によって所望寸法からのズレが生じる。具体的には、電子部品207の厚さ(図中上下方向における電子部品の寸法)、電子部品207上の部品電極や基板201上の基板電極の高さ(図中上下方向における電極の寸法)、電子部品ホルダー240の凹部242の深さなどの寸法誤差が生じる。また、電子部品207や押さえ部材246の厚みムラ、電子部品ホルダー240上の押さえ部材246との当接面の高さ位置のズレなどの寸法誤差も存在する。このような寸法誤差が存在する結果、ボルト250を締めて押さえ部材246により基板201を電子部品207側に押しても、基板201上の基板電極と電子部品207上の部品電極との隙間を埋めることができない場合がある。具体例を挙げれば、凹部242の深さが所望の深さよりも深い寸法誤差をもつ場合や、電子部品207の厚さが所望の厚さよりも薄い寸法誤差をもつ場合などである。これらの場合、電子部品ホルダー240と押さえ部材246とが当接する状態までボルト250を締めても、基板電極と部品電極との間に隙間が残ってしまう。
【0009】
なお、電子部品ホルダー240の凹部242の深さを電子部品207の厚みよりも十分に浅くなるように設定し、寸法誤差があっても電子部品207の上面が常に凹部242よりも上側に位置するようにすれば、寸法誤差があっても基板電極と部品電極との間の隙間をなくすことができるようにも思われる。しかし、電子部品207、基板201、押さえ部材246及び電子部品ホルダー240のいずれも、図中上下方向において非弾性であるため、ボルト250を締め過ぎると電子部品207に過剰な圧力がかかり部品を破損するおそれがある。加えて、過剰な圧力がかからないようにボルト250の締め具合を調整することは極めて煩雑な作業である。また、電子部品207と基板201との間に偏った圧力が加わると、圧力が弱い側で基板電極と部品電極との間に隙間が発生してしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、上記先願の改良に係り、詳しくは基板電極と部品電極との接合部に生じ得る隙間をなくして接合不良を安定して防止し得る電極接合方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持し、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射することにより、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合方法であって、上記基板及び上記電子部品を保持した状態で、上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢し、該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の電極接合方法において、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するとともに、上記レーザ光の照射の際にレーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材により上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえることにより上記付勢を行うことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の電極接合方法において、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材と該押さえ部材とが互いに当接するまで該押さえ部材と該押さえ規制部材とを相対移動させることにより上記付勢を行い、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を上記支持部材により支持することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の電極接合方法において、上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持する保持手段と、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備え、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合装置であって、上記基板及び上記電子部品を保持した状態で上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する付勢手段を備え、該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の電極接合装置において、上記付勢手段は、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を支持する非弾性の支持部材と、上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえる、レーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材とを備えており、上記弾性部材を、該支持部材における該電子部品を支持する支持部分に配置したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の電極接合装置法において、上記付勢手段は、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材を有し、上記支持部材は、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を支持することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項5、6又は7の電極接合装置において、上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、基板及び電子部品を保持した状態で互いに接近させる向きに基板及び電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する。これにより、基板及び電子部品を保持する部材や電子部品などに寸法誤差があっても、その寸法誤差を弾性部材の弾性変形で吸収することができるので、基板電極と部品電極とを互いに密着させることができる。その結果、基板の電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ基板電極に当てるようにレーザ光を照射する際に、基板電極と部品電極との間に隙間が発生するのを安定して抑制できる。その結果、レーザ光照射によって基板電極に発生した熱を部品電極に確実に伝えて基板電極と部品電極とを接合することができる。
なお、弾性部材の弾性度合いは、電子部品の圧力耐性等に応じて適宜設定される。
【0013】
特に、請求項2及び6の発明では、電子部品における基板との対向面とは反対側の面を、上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するため、弾性部材をどのように配置しても、その弾性部材によって基板電極に照射されるレーザ光が遮られることはない。よって、弾性部材の配置や材料選択(レーザ光透過性を有する材料)の自由度が増す。
【0014】
また、請求項3及び7の発明では、押さえ部材による押さえ前の状態において、押さえ規制部材における押さえ部材と当接する当接部分よりも電子部品の部品電極の方が押さえ部材に近い位置に位置決めされる。この状態から押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまでこれらを相対移動させると、弾性部材が弾性変形して、基板電極と部品電極とが互いに密着する。よって、部品電極の位置が当接部分の位置との差分を、想定される寸法誤差よりも十分に大きく設定しておけば、押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまで相対移動させるだけで、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができる。
【0015】
また、請求項4及び8の発明では、弾性部材がレーザ光に対して耐性を有する材料からなるので、レーザ光が弾性部材に当たって劣化するのを抑制することができる。これにより、長期にわたって適切な弾性を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板電極と部品電極との接合部に生じ得る隙間をなくして接合不良を安定して防止し得るという優れた効果が奏される。
特に、請求項2及び6の発明によれば、弾性部材の配置や材料選択の自由度が増すという優れた効果が奏される。
また、請求項3及び7の発明によれば、押さえ部材と押さえ規制部材とが互いに当接するまで相対移動させるという簡単な動作で、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができるという優れた効果が奏される。
また、請求項4及び8の発明によれば、長期にわたって、基板電極と部品電極とを互いに安定して密着させることができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施形態として、基板としての柔軟性を持ったフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)の基板電極と、そのフレキシブル基板上に実装される圧電素子からなる電子部品の部品電極とを接合する電極接合方法、及びその方法を含む部品実装方法について説明する。
【0018】
図2は、本部品実装方法で電子部品が実装されるフレキシブル基板を示す拡大断面図である。
フレキシブル基板1は、レーザ光透過性を有する材料からなるベースフィルム2のおもて面に、導電性材料たる銅からなる回路パターンが形成されている。この回路パターンは、配線部と、これに設けられた複数の基板電極としての電極パッド3とから構成されている。これら電極パッド3は、導電性接合材としてのはんだを介して電子部品の部品電極と接合される。波長1064[nm]のYAGレーザ光を照射する場合のベースフィルム2の材料としては、その波長1064[nm]のYAGレーザ光を透過させ得るPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂を用いることができる。
【0019】
本部品実装方法において、フレキシブル基板1の電極パッド3と電子部品の部品電極とを直接接触させて接合してもよいし、電極パッド3と部品電極との間に導電性接合材からなる中間接合層を介在させて接合してもよい。ここで、中間接合層が介在しない場合は、レーザ光の照射によって加熱した電極パッド3の熱によって電極パッド3と部品電極とが互いに接触している部分を溶融させて部品電極と電極パッド3とを接合する。一方、中間接合層が介在する場合は、レーザ光の照射によって加熱した電極パッド3の熱によって中間接合層を溶融させて、部品電極と電極パッド3とを接合する。
【0020】
上記中間接合層を部品電極と電極パッド3との間に介在させる方法としては、フレキシブル基板1として、電極パッド3の表面や部品電極の表面に金やスズ等の金属材料からなる中間接合層を被覆したものを用いる方法を例示することができる。また、電子部品として、その表面に設けられた複数の部品電極のそれぞれに金属材料からなる中間接合層を被覆したものを用いる方法でもよい。また、印刷マスクにより、フレキシブル基板1の各電極パッド3のそれぞれの表面に、導電性接合材としてのはんだを含むはんだペーストを印刷する方法でもよい。
【0021】
上記はんだペーストの印刷は、例えば次のように行うことができる。はんだペーストの印刷工程は、孔版たる印刷マスクをフレキシブル基板1のおもて面に密着させる密着工程と、そのフレキシブル基板1に密着させた印刷マスクの各孔にはんだペーストを充填する充填工程と、印刷マスクをフレキシブル基板から剥がす剥離工程とを含む。具体的には、まず、図3や図4に示すように、回路パターンが形成されているフレキシブル基板1のおもて面に印刷マスク4を密着させる。印刷マスク4には、フレキシブル基板1の各電極パッド3に対応する複数の貫通孔4aからなる印刷パターンが形成されている。密着工程では、各電極パッド3の真上に、印刷マスク4の各貫通孔4aを位置させるように、位置合わせを行いながら印刷マスク4をフレキシブル基板1に密着させる。このような密着工程が終了したら、次に、図5に示すように、フレキシブル基板1に密着している印刷マスク4の印刷側面上に、スキージ5を用いてはんだペースト6を刷り付けて、印刷マスク4の各貫通孔4a内にはんだペースト6を充填する。そして、図6に示すように、印刷マスク4をフレキシブル基板1から剥がして、各貫通孔4a内のはんだペースト6を、それぞれフレキシブル基板1の電極パッド3上に転移させる。
【0022】
上記フレキシブル基板1の電極パッド3と電子部品の部品電極との接合は、例えば次のようなレーザ光を用いた電極接合方法で行う。この電極接合方法は、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを有する。上記部品保持工程では、レーザ接合用の保持手段としてのワークホルダー上に、フレキシブル基板1と電子部品とが互いに位置決めされてセットされる。上記レーザ照射接合工程では、レーザ光の照射によって電極パッド3と電子部品の部品電極とが接合される。ここで、1回の部品保持工程で全ての電子部品をフレキシブル基板1上に載置してからそれぞれの電子部品に対してレーザ照射接合工程を実施してもよいが、電子部品を少しずつ載置していきながらレーザ照射接合工程を実施してもよい。この場合には、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを交互に繰り返していくことになる。以下、部品保持工程とレーザ照射接合工程とを交互に繰り返していく方法を例にして、本電極接合方法を説明する。
【0023】
図7及び図8は、それぞれ、フレキシブル基板1に実装される電子部品としての圧電アクチュエータ7の平面図及び部分拡大図である。
この圧電アクチュエータ7は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電材料で形成され、ベース部710と櫛歯部720とを有する。櫛歯部720は、厚さ方向にそれぞれ延在する板状の圧電素子部720A、720B及び溝部720Cが長手方向(図中の上下方向)に所定のピッチで交互に形成され、全体として櫛歯形状になっている。これらの板状の圧電素子部720A、720Bの表面には、圧電アクチュエータ7の長手方向(図中の上下方向)の一つおきに、部品電極としての駆動電極(ホット電極)9が形成されている。駆動電極9が形成されている圧電素子部が駆動圧電素子部720Aであり、駆動電極9が形成されていない圧電素子部が固定圧電素子部720Bである。上記駆動圧電素子部720Aの駆動電極9が形成されている面とは反対側の面(図中の奥側の面)にはグランド電極が形成されている。また、上記圧電アクチュエータ7のベース部710の端面は、金属材料(例えばSUS)などで形成された補強部材8に取り付けられている。
【0024】
図9並びに図10(a)及び図10(b)は、それぞれ、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7の断面図及び部分拡大図である。
圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9の端部と、フレキシブル基板1のベースフィルム2の端部に露出するように形成された電極パッド3とが接合される。この接合は、前述のように電極パッド3と駆動電極9とを直接接触させて行ってもいいし(図10(a)参照)と、電極パッド3と駆動電極9との間にはんだペースト6等の導電性接合材からなる中間接合層を介在させて行ってもよい(図10(b)参照)。
【0025】
図11は、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7がセットされるワークホルダー130の平面図である。
このワークホルダー130は、ベース部材131上に、基板ホルダー132と圧電アクチュエータホルダー140とを備えている。
【0026】
上記基板ホルダー132は、フレキシブル基板1を保持するものであり、基板案内用テーパー付きのフィードピン133,134と、例えばマイクロメータ等からなる図示しない位置合わせ微調整用のXY駆動機構とを備えている。この基板ホルダー132のフィードピン133,134に、フレキシブル基板1の所定位置に形成された貫通孔を貫通させてフレキシブル基板1をセットする。これにより、基板ホルダー132上の所定位置に、フレキシブル基板1のだいたいの位置が合わせされて保持される。そして、上記位置合わせ微調整用のXY駆動機構を用いて、図11中のX−Y方向におけるフレキシブル基板1の位置を微調整する。この微調整により、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9と、フレキシブル基板1の電極パッド3とが対向するように、フレキシブル基板1を位置決めすることができる。
【0027】
上記圧電アクチュエータホルダー140は、圧電アクチュエータ7を保持するものである。この圧電アクチュエータホルダー140のホルダー本体141の表面部に、圧電アクチュエータ7の厚さよりも浅い深さを有する圧電アクチュエータ装着用の凹部142を備えている。圧電アクチュエータ7のX方向の位置決めは、凹部142の図中左側の内側面に位置する2つの被突き当て面142a,142bに圧電アクチュエータ7の端面を突き当てることにより行われる。また、圧電アクチュエータ7のY方向の位置決めは、凹部142の図中下側の内側面に位置する被突き当て面142cに圧電アクチュエータ7の端面を突き当てることにより行われる。上記圧電アクチュエータ7の突き当ては、図示しない微調整用駆動機構で行われる。この微調整用駆動機構は、例えばネジ部材等で構成され、ホルダー本体141の上記被突き当て面142a及び142bに対向する内側面側と、上記被突き当て面142cに対向する内側面側のそれぞれに設けられている。
【0028】
また、上記圧電アクチュエータ装着用の凹部142の周囲には、押さえ部材146の厚さと同程度の深さを有する押さえ規制部材として機能する押さえ部材装着用の凹部147が形成されている。押さえ部材146は、上記フレキシブル基板1のレーザ光照射側の表面を圧電アクチュエータ7側に押さえる板状の部材であり、合成石英等のレーザ光透過性の材料で形成されている。
【0029】
図1(a)及び(b)は、図11中の符号A−Aで示す位置の断面図である。図1(a)は、押さえ部材146による押さえ前の状態を示し、図1(b)は、押さえ部材146による押さえ後の状態を示している。
上記圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面には、弾性部材としてのシリコンゴム151が配置される。圧電アクチュエータ7は、シリコンゴム151上に載置された状態で、圧電アクチュエータ装着用の凹部142内にセットされる。このとき、図1(a)に示すように、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットする前(押さえ部材146による押さえ前)の状態では、押さえ部材装着用の凹部147の底面の高さ位置よりも、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9の高さ位置の方が高い状態となる。この状態から、押さえ部材146を押さえ部材装着用の凹部147にセットし、押さえ部材146が押さえ部材装着用の凹部147の底面に当接するまでボルト150を締める。ボルト150を締めることで、押さえ部材146が押し下げられ、フレキシブル基板1が圧電アクチュエータ7側に付勢される。
【0030】
押さえ部材146と圧電アクチュエータ装着用の凹部142の底面との間に介在する部材のうち、フレキシブル基板1、そのフレキシブル基板1上の電極パッド3、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9、圧電アクチュエータ7、圧電アクチュエータ7上のグランド電極10は、少なくとも図中上下方向においては非弾性のものであるが、シリコンゴム151は弾性を有する。よって、押さえ部材146が押し下げられると、シリコンゴム151が弾性変形する。その結果、シリコンゴム151の復元力により圧電アクチュエータ7には図中上向きの付勢力が働き、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とが密着する。このとき、圧電アクチュエータ7の厚さ(図中上下方向における圧電アクチュエータ7の寸法)、駆動電極9や電極パッド3の高さ(図中上下方向における電極3,9の寸法)、圧電アクチュエータ装着用の凹部142の深さ、押さえ部材装着用の凹部147の底面の高さ位置等に多少の寸法誤差があっても、その寸法誤差はシリコンゴム151の弾性によって吸収され、圧電アクチュエータ7上の駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とが互いに密着することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、弾性部材としてシリコンゴム151を用いている。シリコンゴム151は、YAGレーザ光に対して耐性を有する材料からなるため、後述するYAGレーザ光が、圧電アクチュエータ7の櫛歯部720における溝部720Cを通過してシリコンゴム151に照射されても、シリコンゴム151の劣化は少ない。したがって、長期にわたってシリコンゴム151を交換せずに作業を行うことができる。このようにYAGレーザ光に対して耐性を有する他の弾性部材としては、テフロン(登録商標)コーティングされた弾性部材などが挙げられる。
【0032】
図12は、本電極接合方法に用いられるレーザ照射型の電極接合装置の概略構成図である。
この電極接合装置は、レーザ発振器100等を有するレーザ照射部と、X−Yテーブル110等を有するワーク保持駆動部と、これらを制御する制御部160とを備えている。
【0033】
上記レーザ照射部は、光源としてのレーザ発振器100と、光路形成部材としての光ファイバー102と、結像手段としての結像光学系103とを用いて構成されている。
上記レーザ発振器100は、Qスイッチを備えたYAGレーザであり、波長1064[nm]のパルス状のレーザ光を所定の繰り返し周波数で出力することができる。レーザ光の繰り返し周波数(Qスイッチの周波数)は100Hz〜数kHzで変化させることができる。この繰り返し周波数を高くするほど、レーザ光のパルス幅[nsec]は狭くなり、ピーク出力パワー[kW]は小さくなる。レーザ光の単位時間当りの出力エネルギーである平均出力パワー(=1パルスレーザ光あたりのエネルギー×繰り返し周波数)を大きくする場合は、YAGロッドを励起するランプや半導体レーザ等で構成された励起部に電流を供給する電源の電流値を大きくする。
【0034】
上記レーザ発振器100から発せられたYAGレーザ光Lは、図13に示すような山形のエネルギー強度分布のガウシアンビームとなる。このYAGレーザ光が光ファイバー102の一端面から光ファイバー102内に進入する。この光ファイバーには、ステップインデックス(SI)型、グレーデッドインデックス(GI)型、シングルモード(SM)型など、様々なタイプのものがあるが、図示の光ファイバー102はSI型のものである。SI型の光ファイバー102内では、図14に示すように、レーザ光の一部がファイバーのコア壁面で多重反射しながらレーザ入射側から出射側に進んでいく。このように多重反射すると、レーザ光は、図15に示すような台形状のエネルギー強度分布のトップハットビームとなる。すなわち、SI型の光ファイバー102は、レーザ光の横断面方向の強度分布を均一化させる強度分布均一化光学系として機能する。
【0035】
上記結像光学系103はレンズなどで構成され、上記図15に示すように光ファイバー102内でエネルギー強度分布が均一化されたYAGレーザ光Lを、照射対象物であるフレキシブル基板1の電極パッド3が形成されている面上に結像して照射する。
【0036】
上記ワーク保持駆動部は、XYテーブル110と移動検知手段としてのリニアスケール120と前述のワークホルダー130とを用いて構成されている。上記XYテーブル110は、水平方向(図中のX方向及びY方向)に移動可能な載置台、その載置台を移動させる駆動機構、駆動源としての駆動モータ等で構成されている。上記リニアスケール120は、上記XYテーブル110の水平方向(図中のX方向及びY方向)における移動量を検知する。
【0037】
上記制御部160は、CPUやメモリ(ROM、RAM)等からなるコンピュータ装置と、駆動制御回路とを用いて構成されている。駆動制御回路は、レーザ駆動制御回路とテーブル駆動制御回路とを有し、上記コンピュータ装置で制御される。上記レーザ駆動制御回路は、上記コンピュータ装置の制御コマンドに基づいて、上記YAGレーザ100のQスイッチをオン/オフしたり電源の出力電流値の設定を変更したりする駆動制御信号を生成して出力する。上記テーブル駆動制御回路は、上記コンピュータ装置の制御コマンドに基づいて、上記XYテーブル110のモータのオン/オフしたりモータの回転速度(テーブルの移動速度)を変化させたりする駆動制御信号を生成して出力する。
【0038】
上記構成の電極接合装置において、まず、図示しないマウント装置又は手作業により、X−Yテーブル110上のワークホルダー130の所定位置に、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7がセットするとともに、レーザ光透過性の押さえ部材146をボルト150により装着する。ボルト150で押さえ部材146を装着することで、前述のように、フレキシブル基板1及び圧電アクチュエータ7を保持した状態でフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを互いに接近させる向きにフレキシブル基板1を付勢することができる。このフレキシブル基板1の付勢により、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9と、フレキシブル基板1の電極パッド3とを密着させることができる。
【0039】
次に、圧電アクチュエータ7の駆動圧電素子部720Aに形成されている駆動電極9とフレキシブル基板1の電極パッド3とを密着させた状態で、上記YAGレーザ光を押さえ部材146を介してフレキシブル基板1の電極パッド3上に照射する。これにより、電極パッド3が加熱され、駆動電極9と電極パッド3とが接合される。
【0040】
なお、本実施形態においては、ボルト150を締めることにより押さえ部材146を押し下げて、電極パッド3と駆動電極9とを互いに接近させる向きにフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢する構成を例に挙げたが、他の構成によりフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢するようにしてもよい。例えば、上記先願に記載したように、吸引ポンプが発生させる吸引力を利用してフレキシブル基板1と圧電アクチュエータ7とを付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る部品実装方法(電極接合方法)で用いるワークホルダーを後述の図11中の符号A−Aで示す位置で切断したときの断面図であり、(a)は押さえ部材による押さえ前の状態を示し、(b)は同押さえ部材による押さえ後の状態を示す。
【図2】同部品実装方法に用いられるフレキシブル基板を示す拡大断面図。
【図3】同部品実装方法で採用することができる印刷方法で用いる印刷マスクを同フレキシブル基板とともに示す拡大断面図。
【図4】同印刷方法の密着工程を示す拡大断面図。
【図5】同印刷方法の充填工程を示す拡大断面図。
【図6】同印刷方法の剥離工程を示す拡大断面図。
【図7】フレキシブル基板に実装される圧電アクチュエータの平面図。
【図8】同圧電アクチュエータの部分拡大図。
【図9】フレキシブル基板及び圧電アクチュエータの断面図。
【図10】(a)及び(b)はフレキシブル基板と圧電アクチュエータとの接合部の部分拡大図。
【図11】ワークホルダーの平面図。
【図12】本発明の実施形態に係る電極接合装置の概略構成図。
【図13】ガウシアンビームのエネルギー強度分布を示すグラフ。
【図14】SI型の光ファイバー内におけるレーザ光の挙動を示す模式図。
【図15】トップハットビームのエネルギー強度分布を示すグラフ。
【図16】先願で提案した電極接合方法を利用して電子部品を基板上に実装する冶具の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 フレキシブル基板(基板)
2 ベースフィルム
3 電極パッド(基板電極)
6 はんだペースト(導電性接合材を含有)
7 圧電アクチュエータ
9 駆動電極(部品電極)
10 グランド電極
130 ワークホルダー
131 ベース部材
132 基板ホルダー
140 圧電アクチュエータホルダー
141 ホルダー本体
142 圧電アクチュエータ装着用の凹部
146 押さえ部材
147 押さえ部材装着用の凹部(押さえ規制部材)
150 ボルト
151 シリコンゴム(弾性部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持し、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射することにより、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合方法であって、
上記基板及び上記電子部品を保持した状態で、上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢し、
該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とする電極接合方法。
【請求項2】
請求項1の電極接合方法において、
上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するとともに、上記レーザ光の照射の際にレーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材により上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえることにより上記付勢を行うことを特徴とする電極接合方法。
【請求項3】
請求項2の電極接合方法において、
上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材と該押さえ部材とが互いに当接するまで該押さえ部材と該押さえ規制部材とを相対移動させることにより上記付勢を行い、
該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を上記支持部材により支持することを特徴とする電極接合方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3の電極接合方法において、
上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とする電極接合方法。
【請求項5】
レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持する保持手段と、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備え、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合装置であって、
上記基板及び上記電子部品を保持した状態で上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する付勢手段を備え、
該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とする電極接合装置。
【請求項6】
請求項5の電極接合装置において、
上記付勢手段は、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を支持する非弾性の支持部材と、上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえる、レーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材とを備えており、
上記弾性部材を、該支持部材における該電子部品を支持する支持部分に配置したことを特徴とする電極接合装置。
【請求項7】
請求項6の電極接合装置法において、
上記付勢手段は、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材を有し、
上記支持部材は、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を支持することを特徴とする電極接合装置。
【請求項8】
請求項5、6又は7の電極接合装置において、
上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とする電極接合装置。
【請求項1】
レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持し、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射することにより、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合方法であって、
上記基板及び上記電子部品を保持した状態で、上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢し、
該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とする電極接合方法。
【請求項2】
請求項1の電極接合方法において、
上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を上記弾性部材で非弾性の支持部材により支持するとともに、上記レーザ光の照射の際にレーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材により上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえることにより上記付勢を行うことを特徴とする電極接合方法。
【請求項3】
請求項2の電極接合方法において、
上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材と該押さえ部材とが互いに当接するまで該押さえ部材と該押さえ規制部材とを相対移動させることにより上記付勢を行い、
該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を上記支持部材により支持することを特徴とする電極接合方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3の電極接合方法において、
上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とする電極接合方法。
【請求項5】
レーザ光透過性の材料からなる基板の表面に形成された基板電極と電子部品の部品電極とが対向するように該基板及び該電子部品を保持する保持手段と、該基板の該電子部品側とは反対側の面からレーザ光を透過させ該基板電極に当てるようにレーザ光を照射するレーザ光照射手段とを備え、該基板電極と該部品電極とを接合する電極接合装置であって、
上記基板及び上記電子部品を保持した状態で上記基板電極と上記部品電極とを互いに接近させる向きに該基板及び該電子部品の少なくとも一方を弾性部材で付勢する付勢手段を備え、
該付勢を行った状態で上記レーザ光を照射することを特徴とする電極接合装置。
【請求項6】
請求項5の電極接合装置において、
上記付勢手段は、上記電子部品における上記基板との対向面とは反対側の面を支持する非弾性の支持部材と、上記基板のレーザ光入射側の表面を上記電子部品側に押さえる、レーザ光透過性の材料からなる非弾性の押さえ部材とを備えており、
上記弾性部材を、該支持部材における該電子部品を支持する支持部分に配置したことを特徴とする電極接合装置。
【請求項7】
請求項6の電極接合装置法において、
上記付勢手段は、上記押さえ部材と当接することで該押さえ部材による押さえ量を規制する押さえ規制部材を有し、
上記支持部材は、該押さえ部材による押さえ前の状態で、該押さえ規制部材における該押さえ部材と当接する当接部分よりも該電子部品の部品電極が該押さえ部材に近い位置となるように、該電子部品を支持することを特徴とする電極接合装置。
【請求項8】
請求項5、6又は7の電極接合装置において、
上記弾性部材として、上記レーザ光に対して耐性を有する材料からなるものを用いることを特徴とする電極接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−243005(P2007−243005A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65596(P2006−65596)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]