説明

電極材およびその製造方法ならびにオゾン発生装置およびオゾン発生方法

【課題】 雰囲気中の水分との接触を抑制し、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができ、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を発生し得る電極材を提供する。
【解決手段】 導電性線状材により構成される網目状部材からなり、前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有することを特徴とする電極材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材、電極材の製造方法、オゾン発生装置およびオゾン発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン(O)が強力な酸化作用を有することは従来より知られており、その酸化力を利用して、殺菌、抗菌、脱臭、脱色、有機物の除去といった各種用途への利用が検討されている。
【0003】
オゾンは、一般に、1対の電極に高電圧を印加して空気中に放電することによって製造されている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、図1に示すように、一定の間隔をおいた2枚の平板状金属電極間にセラミック板(絶縁体)を配置し、2枚1対の平板状金属電極に通電して放電することにより、空気中の酸素分子(O)を解離させてマイナスイオン(アニオン)(O)を生成し、次いで他の酸素分子と再結合させることによりオゾン(O)が製造されている。
【0004】
上記オゾンの製造過程においては、オゾンと共にマイナスイオン(アニオン)も生成されるが、このマイナスイオン(アニオン)も血液浄化や血糖値降下、疲労回復といった各種用途への利用が検討されている。
【0005】
特に近年、鳥インフルエンザや院内感染等への関心が高まるに連れ、感染症の予防手段として、携帯用や室内用のオゾン発生器に対する要望が高まりつつある。
【非特許文献1】「新しいオゾン発生法・測定法による病院応用」、日本医科器械学、No.57、3、昭和62年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、図1に示す装置でオゾンを製造する場合、金属電極の外側主表面に耐水皮膜を設けても、空気中の水分が金属電極の側面と接触するため、上記水分の帯電、発熱によってオゾンの生産効率が低下するとともに、装置自体の耐久性も低下してしまう(例えば、温度60℃、湿度90%の雰囲気下で耐久時間が500時間以下である)ことが判明した。
【0007】
また、オゾンは安定性が低い物質であり、例えば風(ファンによる強制的な空気流等)により容易に分解されてしまうことから、一定濃度のオゾンを得るためには、高出力(高電圧)の装置を用いる必要があり、このため、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンを得ることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情の下で、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができ、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンをマイナスイオン(アニオン)とともに発生し得る電極材およびその製造方法を提供することを第一の目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、上記電極材を用いたオゾン発生装置を提供することを第二の目的とし、上記電極材を用いたオゾン発生方法を提供することを第三の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)導電性線状材により構成される網目状部材からなり、
前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有することを特徴とする電極材、
(2)前記網目状部材の主表面が台形状である上記(1)に記載の電極材、
(3)前記網目状部材を構成する導電性線状材が2mm〜10mm置きに並行して配置されてなる上記(1)または(2)に記載の電極材、
(4)前記網目状部材の外縁部の少なくとも一部が、前記導電性線状材の突出部により構成されてなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電極材、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電極材を製造する方法であって、
チタン製線状材により構成される網目状チタン部材を、
表面の少なくとも一部に酸化チタンが付着したブラスト材でブラスト処理する
ことを特徴とする電極材の製造方法。
(6)少なくとも放電部および該放電部に電気的に接続する制御部を含み、
前記放電部が1対の電極を有し、該1対の電極のうち少なくとも一方の電極が上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電極材からなることを特徴とするオゾン発生装置、
(7)前記一対の電極が、2mm〜6mmの間隔で並行して配置されてなる上記(6)に記載のオゾン発生装置、
(8)前記1対の電極のうち少なくとも一方の電極が、他方の電極側に0°以上90°未満の角度で傾斜してなる上記(6)または(7)に記載のオゾン発生装置、
(9)前記放電部および制御部が絶縁性材料からなる隔壁により隔てられてなる上記(6)〜(8)のいずれかに記載のオゾン発生装置、
(10)前記オゾン発生装置が携帯用または室内用オゾン発生器である上記(6)〜(9)のいずれかに記載のオゾン発生装置、および
(11)1対の電極に通電することによりオゾンを発生する方法であって、
前記1対の電極のうち少なくとも一方の電極が導電性線状材により構成される網目状部材からなり、
前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有し、
前記1対の電極に通電することにより、マイナスイオンに包まれたオゾンを発生する
ことを特徴とするオゾン発生方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができ、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を発生し得る電極材およびその製造方法を提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、上記電極材を用いたオゾン発生装置およびオゾン発生方法を提供するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明の電極材について説明する。
本発明の電極材は、導電性線状材により構成される網目状部材からなり、前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電極材は、網目状部材からなるものであり、該網目状部材を主表面側からみたときの模式図を図2に示す。図2において、実線は網目状部材を構成する導電性線状材を示すものであり、破線は網目状部材の外形を理解するために設けたものである。
【0015】
本発明の電極材に用いられる網目状部材は、図2に示すように、その主表面形状が、正方形状(図2(a))、長方形状(図2(b))、台形状(図2(c))等の四角形状や、四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状等いずれの形状であってもよいが、主表面形状が四角形状である場合、正方形状や長方形状よりも台形状の方が後述する導電性線状材の突出部の数を多くすることができるため好ましい。
【0016】
本発明の電極材の大きさは、例えば、電極として組み込まれるオゾン発生装置の使用目的や、オゾンを拡散させようとする空間の広さ、求められるオゾン発生量等によって適宜選定することができる。本発明の電極材に用いられる網目状部材の主表面形状が台形状であり、電極材を携帯用オゾン発生器の電極として用いる場合には、上底3mm〜13mm、下底4mm〜16mm、高さ4mm〜12mmであることが好ましく、上底5mm〜10mm、下底6mm〜12mm、高さ6mm〜10mmであることがより好ましく、上底6mm〜8mm、下底8mm〜10mm、高さ8mm〜10mmであることがさらに好ましい。また、網目状部材の厚さは0.3mm〜1mmが好ましく、0.3mm〜0.8mmがより好ましく、0.3mm〜0.5mmがさらに好ましい。
【0017】
本発明の電極材に用いられる網目状部材は、図2に実線で示される導電性材料により構成されるものであり、この導電性線状材が2mm〜10mm置きに並行して配置されてなるものが好ましく、2mm〜8mm置きに並行して配置されてなるものがより好ましく、2mm〜5mm置きに並行して配置されてなるものがさらに好ましい。
【0018】
導電性線状部材の配置間隔が2mm未満では、導電性線状材を構成するチタンの成形性が悪いことから所望形状を有する網目状部材を得ることが困難になる。また、導電性線状材の配置間隔が10mmを超えると、電極として使用したときに所望濃度のオゾンを得ることが困難になる。
【0019】
図3に、本発明の電極材に用いられる網目状部材を主表面側からみたときの部分拡大図を示す。図示しているように、導電性線状材1により形成される網目状部材2の網目3は、通常、正方形状(図3(a))や菱形状(図3(b))といった四角形状を有するが、四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状を有してもよい。網目形状が円形状や楕円形状である場合は、断面積が長さ方向に連続的に変化する導電性線状材1により網目状部材2を構成すればよい。
【0020】
本発明の電極材に用いられる網目状部材は、その外縁部において導電性線状材の端部が突出することにより、外縁部の少なくとも一部が、導電性線状材の突出部により構成されてなるものであることが好ましい。
【0021】
図4に、本発明の電極材を主表面側からみたときの模式図を示す。図4は、網目状部材2の外縁部において、導電性線状材1の端部が突出することにより、外縁部の少なくとも一部が導電性線状材の突出部4により構成されていることを示すものである。このように、網目状部材の外縁部において、導電性線状材1の長さ方向の端部を突出させ、針先を出すような形状とすることにより、電極として用いたときに、突出部のみから放電を行って、オゾンの生成濃度を高めることが可能になる。導電性線状材の突出部4の数が多いほど上記効果を高めることができることから、網目状部材は、その外縁部の全てが、導電性線状材の突出部により構成されてなるものであることが好ましい。
【0022】
網目状部材を構成する導電性線状材は、チタンからなる線状中心部と線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有している。
【0023】
導電性線状材において、線状中心部の構成材料をチタンにすることにより、本発明の電極材を電極として使用したときに、その発熱を抑制することが可能になる。また、導電性線状材において、外周部の構成材料を酸化チタンにすることにより、本発明の電極材を電極として使用したときに、オゾンを安定して発生することが可能になる。酸化チタンとしては、二酸化チタン(TiO)を用いることが好ましい。
【0024】
図5に、本発明の電極材における、導電性線状材の断面構造の一例を示す。
図5(a)、(b)に示すように、チタンからなる線状中心部5の断面としては、四角形状あるいは円形状を挙げることができ、図示したもの以外にも、多角形状や楕円形状等任意の断面形状を採ることができる。また、酸化チタンからなる外周部6は、通常、線状中心部5の断面形状に対応する断面形状を有し、図5(a)、(b)に示すように、線状中心部5の断面形状が四角形状のときは四角形状、線状中心部5の断面形状が円形状のときは円形状の断面形状を有するが、両者は必ずしも対応する断面形状を有さなくてもよい。また、導電性線状材の断面形状および断面積は、長さ方向に一定であることが好ましいが、これらも必ずしも一定である必要はない。
【0025】
チタンからなる線状中心部の厚さは、0.3mm〜1mmであることが好ましく、0.3mm〜0.8mmであることがより好ましく、 0.3mm〜0.5mmであることがさらに好ましい。また、酸化チタンからなる外周部の厚さは、20μm〜300μmであることが好ましく、20μm〜200μmであることがより好ましく、40μm〜200μmであることがさらに好ましい。
【0026】
酸化チタンからなる外周部は、線状中心部の長さ方向に沿う外周の少なくとも一部を被覆するものであればよいが、線状中心部の長さ方向に沿う外周の全体を被覆するものであることが好ましい。また、本発明の電極材において、線状中心部の長さ方向両端部には、導電性および放電性を確保するため、酸化チタンは被覆されない。
【0027】
次に、本発明の電極材の製造方法について説明する。
本発明の電極材の製造方法は、上述した本発明の電極材を製造する方法であって、チタン製線状材により構成される網目状チタン部材を、表面の少なくとも一部に酸化チタンが付着したブラスト材でブラスト処理することを特徴とするものである。
【0028】
網目状チタン部材としては、チタン製ラス(チタンラス)等を用いることができる。
網目状チタン部材をブラスト処理する際に用いられるブラスト材は、表面の少なくとも一部に酸化チタンが付着したものであり、このようなブラスト材としては、チタン粒子からなる核の周囲に二酸化チタン等の酸化チタンを被覆した酸化チタン被覆チタン粒子を挙げることができる。
【0029】
上記ブラスト材は、ビッカース硬さ(HV)が3000HV以下であるものが好ましく、2000HV以下であるものがより好ましく、1000HV以下であることがさらに好ましい。
【0030】
ブラスト材が粒子形状を有する場合、その平均粒子径は、20〜200μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましく、40〜50μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは体積平均粒子径を意味し、体積平均粒子径は、例えば粒度分布測定器等で測定することができる。
【0031】
ブラスト処理は、既存のブラスト装置を用いて行うことができ、例えば、インペラーと呼ばれる耐摩耗合金製の羽根車の遠心力により投射材を投射するショットブラスト装置や、圧縮空気により投射材を投射するエアーブラスト装置等を用いて行うことができる。
【0032】
ブラスト材の投射速度は、毎秒50〜200mが好ましく、毎秒50〜180mがより好ましく、毎秒80〜150mがさらに好ましい。投射距離は被処理物(網目状チタン部材)のサイズにより適宜設定すればよい。また、投射角度は、約30°〜120°から選択することが好ましく、約40°〜90°から選択することがより好ましく、約45°〜65°から選択することがさらに好ましい。
【0033】
本発明の電極材の製造方法においては、表面の少なくとも一部に酸化チタンが付着したブラスト材を網目状チタン部材に投射し、衝突させることによって、ブラスト材表層の酸化チタンが網目状チタン部材の表面層に結合して、安定した皮膜が形成されると考えられる。また、網目状チタン部材であるチタンラス等が成形バリを有する場合であっても、上記ブラスト処理により成形バリを除去することも可能になる。
【0034】
上記ブラスト処理して得た電極材を主表面側から見たときの拡大図を図6(a)に示す。図6(a)に示される網目状部材2の外縁部の少なくとも一部に突出部を形成する場合は、例えば、図6(a)にA−A’で示される破線に沿って網目状部材2を切断することにより、図6(b)に示されるような突出部4を形成することが可能になる。また、突出部4が多数形成されるように上記網目状部材2を適宜切断することもでき、網目状チタン部材として主表面形状が正方形状または長方形状のチタンラスを用いた場合は、上記切断処理により網目状部材の主表面を台形状に加工することが好ましい。
【0035】
次に、本発明のオゾン発生装置について説明する。
本発明のオゾン発生装置は、少なくとも放電部および該放電部に電気的に接続する制御部を含み、前記放電部が1対の電極を有し、該1対の電極のうち少なくとも一方の電極が本発明の電極材からなることを特徴とするものである。
【0036】
上述したように、従来のオゾン発生装置においては、空気中の水分が金属電極と接触してしまうため、上記水分の帯電によってオゾンの生産効率が低下するとともに、装置自体の耐久性も低下するという課題を有していた。しかしながら、本発明のオゾン発生装置は本発明の電極材を用いるものであり、この電極材は、図7に示すように、特定の網目状部材2からなり、該網目状部材2を構成する導電性線状材の長さ方向の端部からのみ放電(コロナ放電)を行うものであるため、空気中の水分の帯電率を低下させて、オゾン生成量を増大させるとともに装置の耐久性を向上させることができる。
【0037】
本発明のオゾン発生装置において、放電部を構成する一対の電極は、2mm〜6mmの間隔で並行して配置されることが好ましく、2.5mm〜4.5mmの間隔で並行して並置されることがより好ましく、3mm〜4mmの間隔で並行して配置されることがさらに好ましい。電極の間隔が2mm未満であったり、6mmを超えたりすると、所望濃度のオゾンを得ることが困難になる。
【0038】
本発明のオゾン発生装置においては、放電部を構成する一対の電極のうち、少なくとも一方の電極が、他方の電極側に0°以上90°未満の角度で傾斜していることが好ましく、1°〜70°の角度で傾斜していることがより好ましく、3°〜60°の角度で傾斜していることがさらに好ましい。すなわち、放電部を構成する一対の電極は、互いに平行になるように取付部に設置してもよいが、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を他方の電極側に傾けることにより、導電性線状材の長さ方向端部からの放電効率を高めることが好ましい。なお、一方の電極が他方の電極側に0°以上90°未満の角度で傾斜しているとは、図8に示すように、2枚の電極8、8’を平行に配置し、これらの電極を真横からみた状態を基準にして、2枚の電極に直交する仮想直線Lと、各電極8、8’との為す角度α、α’が0°以上90°未満の範囲内にあることを意味する。
【0039】
本発明のオゾン発生装置は、上記放電部と制御部が絶縁性材料からなる隔壁により隔てられてなるものであることが好ましい。
【0040】
図9に本発明のオゾン発生装置7の断面図を示すが、図9に示すように、放電部9と制御部10とを隔壁11で隔てることにより、オゾン発生装置の運転中に発熱、発火が生じる可能性を低減することができる。隔壁を構成する絶縁性材料としては、例えば、テフロン(商品名)等のフッ素樹脂を挙げることができる。
【0041】
なお、本発明のオゾン発生装置は、低出力(低電圧)で安定して駆動し得るものであるため、必ずしも上記隔壁を設けなくてもよい。
【0042】
本発明のオゾン発生装置は、上記放電部9および制御部10とともに、制御部10を介して放電部9に通電する電源部を有してもよい。
上記電源部としては、市販の電池または外部電源等を挙げることができ、上記電源部は、制御部10に電気的に接続し得る状態で、容器12内部または容器12の外部に設けることができる。
【0043】
本発明のオゾン発生装置は、例えば、出力740mW(電圧3.5V)の駆動条件で、オゾン0.02ppm以上、マイナスイオン(アニオン)500万個/cm以上を生成することができ、低出力(低電圧)で、高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を生成し得るものである。また、本発明のオゾン発生装置は、例えば、温度80℃、湿度95%という運転条件における耐久時間が10000時間以上であり、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができるものである。
【0044】
このため、本発明のオゾン発生装置は、従来のオゾン発生装置に比べ、装置を小型化することが可能になり、携帯用又は室内用オゾン発生器として好適に用いることが可能になる。
【0045】
次に、本発明のオゾン発生方法について説明する。
本発明のオゾン発生方法は、1対の電極に通電することによりオゾンを発生する方法であって、前記1対の電極のうち少なくとも一方の電極が本発明の電極材からなり、前記1対の電極に通電することにより、マイナスイオンに包まれたオゾンを発生することを特徴とするものである。
【0046】
上述したように、少なくとも一方の電極が本発明の電極材からなる1対の電極に通電することにより、高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を生成することが可能になる。
【0047】
これは、本発明の電極材を電極として用いることにより、多量のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)が生成すると同時に、不安定な物質であるオゾンがマイナスイオン(アニオン)に包まれて保護されることにより、その分解が抑制されるためであると考えられる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1(電極材の製造例)
チタン製線状材により構成される網目状チタン部材として、菱形形状の網目を有するチタンラス(株式会社不二機販製PIPチタンラス、線状材間隔3mm、厚さ0.6mm)を用い、この網目状チタン部材に、インペラー式ショットブラスト装置を用いて、ブラスト材(平均粒径100μmのチタン粒子全表面に二酸化チタンが200μm付着したもの、ビッカーズ硬さ1000HV)を、鉛直上方向から毎秒80mの投射速度で280g投射して、厚さ20μmの二酸化チタン膜を形成することにより、網目状部材として、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の全面を被覆する二酸化チタンからなる外周部とを有する導電性線状材により構成されるものを得た。次いで、得られた網目状部材の外縁部を構成する線状材を図6に示すように適宜切断することにより、網目状部材の外縁部全体が導電性線状材突出部により構成されてなる電極材を2枚作製した。
得られた電極材は、主表面側からみたときに、略台形状(上底8.5mm、下底12mm、高さ10mm)の形状を有していた。
【0049】
実施例2(オゾン発生装置の製造例)
実施例1で得た2枚の電極材を1対の電極として用いて、図9に示すようなオゾン発生装置を作製した。
【0050】
先ず、上記2枚1対の電極を2mmの間隔で容器12内の取付部に配置して、放電部9を形成した。上記電極は、平面状の取付部に対して、一方の電極が90°、他方の電極が85°の角度を形成するように(図8におけるα、α’がそれぞれ90°、85°となるように)取り付けた。
【0051】
次いで、上記放電部9がフッ素樹脂であるテフロン(商品名)製の隔壁11によって隔てられるようにして電源部10を配置するとともに、上記隔壁11上を通して放電部9と制御部10とを電気的に接続する配線を設けた。上記制御部10に隣接して、3.7Vの電池を電気的に接続した状態で容器12内に配置することにより、携帯用オゾン発生器として使用し得る幅66mm、高さ98mm、厚さ27mmのオゾン発生装置7を得た。
【0052】
得られたオゾン発生装置7を、出力740mW(電圧3.7V)の条件で駆動したところ、オゾン0.02ppm、マイナスイオン(アニオン)500万個/cmを生成することができた。また、温度80℃、湿度95%という運転条件で連続運転したところ、耐久時間が10000時間以上であった。
【0053】
このことから、本発明のオゾン発生装置は、本発明の電極材を用いることにより、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができ、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を発生し得るものであることが分かる。これは、本発明のオゾン発生装置においては、オゾンおよびマイナスイオン(アニオン)の生成量が多いだけでなく、生成したオゾンがマイナスイオン(アニオン)に包まれて保護されるため、オゾンが安定に存在するためであると考えられる。
【0054】
<オゾン発生装置の使用例>
(使用例1)
(1)表1に示す6名を被験者として、実施例2で得たオゾン発生装置7を1日約8時間携帯したときの血流の変化を、オゾン発生装置7を携帯して1ヶ月および2ヶ月経過後における被験者の感覚(体調)に基づいて、判断した。
【0055】
【表1】

◎:非常に効果を感じる
○:効果を感じる
△:やや効果を感じる
×:何も感じない
なお、株式会社ピーテック製、Selfy(セルフィ) ハンディ型血流観察システムを用い、上記6名の被験者がオゾン発生装置7を携帯する前と2ヶ月携帯した後の血流をそれぞれ測定したところ、いずれの被験者においても、血流の改善効果を確認することができた。
【0056】
(使用例2)
表2に示す6名の花粉症患者を被験者として、実施例2で得たオゾン発生装置7を1日約8時間携帯したときの症状の変化を、オゾン発生装置7を携帯する前の症状と、1ヶ月携帯後の症状とを比較することにより、観察した。
【0057】
【表2】

(判定基準)
◎:非常に効果あり
○:効果を認める
×:効果なし
上記使用例1および使用例2より、本発明のオゾン発生装置が、血液浄化および花粉症の症状改善に効果を有するものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の電極材は、高湿度雰囲気下でも安定して放電することができ、低出力(低電圧)でかつ安価に高濃度のオゾンおよびマイナスイオン(アニオン)を発生し得るため、携帯用や室内用オゾン発生器等の各種オゾン発生装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来のオゾン発生装置を示す図である。
【図2】本発明の電極材を構成する網目状部材を主表面側からみたときの模式図である。
【図3】本発明の電極材を構成する網目状部材を主表面側からみたときの部分拡大図である。
【図4】本発明の電極材を主表面側からみたときの模式図である。
【図5】本発明の電極材において、網目状部材を構成する導電性線状材の断面構造の一例を示す図である。
【図6】本発明の電極材を主表面側から見たときの拡大図である。
【図7】本発明の電極材の作用を示す図である。
【図8】本発明のオゾン発生装置を構成する電極の傾斜状態を説明する図である。
【図9】本発明のオゾン発生装置の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 導電性線状材
2 網目状部材
3 網目
4 突出部
6 外周部
7 オゾン発生装置
8,8’ 電極
9 放電部
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性線状材により構成される網目状部材からなり、
前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有することを特徴とする電極材。
【請求項2】
前記網目状部材の主表面が台形状である請求項1に記載の電極材。
【請求項3】
前記網目状部材を構成する導電性線状材が2mm〜10mm置きに並行して配置されてなる請求項1または請求項2に記載の電極材。
【請求項4】
前記網目状部材の外縁部の少なくとも一部が、前記導電性線状材の突出部により構成されてなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電極材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電極材を製造する方法であって、
チタン製線状材により構成される網目状チタン部材を、
表面の少なくとも一部に酸化チタンが付着したブラスト材でブラスト処理する
ことを特徴とする電極材の製造方法。
【請求項6】
少なくとも放電部および該放電部に電気的に接続する制御部を含み、
前記放電部が1対の電極を有し、該1対の電極のうち少なくとも一方の電極が請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電極材からなることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項7】
前記一対の電極が、2mm〜6mmの間隔で並行して配置されてなる請求項6に記載のオゾン発生装置。
【請求項8】
前記1対の電極のうち少なくとも一方の電極が、他方の電極側に0°以上90°未満の角度で傾斜してなる請求項6または請求項7に記載のオゾン発生装置。
【請求項9】
前記放電部および制御部が絶縁性材料からなる隔壁により隔てられてなる請求項6〜請求項8のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項10】
前記オゾン発生装置が携帯用または室内用オゾン発生器である請求項6〜請求項9のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項11】
1対の電極に通電することによりオゾンを発生する方法であって、
前記1対の電極のうち少なくとも一方の電極が導電性線状材により構成される網目状部材からなり、
前記導電性線状材が、チタンからなる線状中心部と、線状中心部外周の少なくとも一部を被覆する酸化チタンからなる外周部とを有し、
前記1対の電極に通電することにより、マイナスイオンに包まれたオゾンを発生する
ことを特徴とするオゾン発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−226678(P2008−226678A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64392(P2007−64392)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(507083216)株式会社ティオミス (1)
【Fターム(参考)】