説明

電極気密封止を用いた高信頼性半導体装置

【課題】 半導体チップが配線基板に電気的接続された半導体装置であって、分解が容易でリペアやリサイクルに有利で、高い信頼性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体チップ上に形成された電極および配線基板上に形成された電極を真空または電極と反応しないガスを封止した枠構造を用いて封止することによって、封止樹脂を用いることなく、これらの電極が酸素や水分からの攻撃により劣化することを防止し、さらに、半導体チップ上に形成された電極と配線基板上に形成された電極とを接触により電気的接続を達成することによって、分離可能性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材料を用いることなく、枠構造により基板上に形成された電極を封止することによって電極の劣化が防止され、高い信頼性を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを配線基板上へ実装して半導体装置を作製するには、半導体チップ上のボンディングパッドと配線基板上のリード間を金属細線で結線して電気的に接続するワイヤーボンディング技術が用いられてきたが、近年、電子機器に対する小型化および軽量化の要望や半導体素子の接続端子数の増大に対処するために、半導体チップの表面の電極に突起電極(以下、「バンプ」という。)を形成し、フェースダウン方式で配線基板上に直付けするフリップチップ実装技術が用いられている。
【0003】
このフリップチップ実装技術では、半導体チップ上に形成された複数の電極にハンダやAuなどの金属材料を用いてバンプを形成し、これら複数のバンプと配線基板上に形成された対応する複数の電極とを位置合わせをした後、加熱圧接する。半導体装置の信頼性を高めるために、半導体チップと配線基板との間には、周囲環境からの悪影響、例えば、酸素や水分による酸化から電極を保護するための封止樹脂として機能し、また、加熱圧接後の冷却時に半導体チップと配線基板との熱膨張率差により生じた熱応力でバンプが破壊することを防止する熱応力緩衝材として機能するアンダーフィル材が供給される。
【0004】
アンダーフィル材の供給方法としては、バンプを形成した半導体チップを配線基板に加熱圧接した後に液状の樹脂を半導体チップと配線基板との間に充填する方法と、液状の樹脂や樹脂フィルムを先に基板に供給した後、半導体チップを配線基板に接合する方法がある。
【0005】
しかしながら、いずれの方法でも、アンダーフィル材を供給する工程が必要であり、アンダーフィル材の保管や使用期限の制約もあることから、作業効率の低下やコストの上昇等の問題があった。
また、環境負荷をいかに低減するかという観点から、エレクトロニクスにおける実装基板などの多くの部品を接合した製品から部品を分解回収して、リサイクルすることが課題となっているが、アンダーフィル材を使用した場合、分解時にアンダーフィル材の除去が困難であった。
【0006】
さらに、半導体装置の薄型化にともない、半導体チップと配線基板との間隔が狭くなり、基板上に形成される配線間の狭ピッチ化が進むにつれ、樹脂を配線間に十分に充填することが困難になってくる。
そこで、アンダーフィル材のごとき樹脂を使用せずに、半導体チップおよび配線基板上の電極の劣化を防止し、半導体チップと配線基板との間の熱応力を緩衝して、半導体装置の信頼性を確保する手段を検討する必要がある。
【0007】
アンダーフィル材を使用せずに、バンプを有する半導体チップと配線基板との間の熱応力を緩衝する手段として、例えば、特許第31126926号明細書(特許文献1)には、半導体チップに形成されたバンプの周囲下部に低弾性層を設けて熱応力を緩衝する構造が開示されている。
また、バンプ自体に弾力性を付与して熱応力を緩衝することも行われている。例えば、特開平11−214447号公報(特許文献2)や特開2001−156091号公報(特許文献3)には、ハンダバンプ内部にボイドを形成することによって熱応力を緩衝する構造が開示されている。特開平11−233669号公報(特許文献4)には、ポリイミドやアクリル等の感光樹脂よりなるコアにNiメッキ等を施したバンプを形成し、樹脂の弾力性を利用して熱応力を緩衝する構造が開示されている。特開2000−320148号公報(特許文献5)には、ハンダ接合部にU字型の弾性部材を用いて、集積回路と実装基板との間に発生する熱応力を緩衝する構造が開示されている。
【0008】
さらに、10μmピッチを下回る微細な接合では、バンプ接続が困難になり、また、接合部に異種材料が存在すると接合時の拡散反応によって接合部の材質が変化して信頼性を確保できなくなるので、接合部から異種材料を排除して半導体チップ上に形成された電極と配線基板上に形成された電極とを直接接触させるバンプレス構造を採用する必要がでてくる。
同じ材質の基板同士を接合する場合(例えば、Siチップ同士を接合する場合やSiチップをSiインターポーザ基板へ実装する場合)には、熱応力の発生を考慮する必要はないが、異なる材質の基板を接合する場合(例えば、Siチップをプリント配線基板の樹脂基板へ実装する場合)、バンプレス構造において接合部にかかる応力は2つの基板の両者の変形により緩衝することとなるため、基板自体が弾力性を有するように基板をできる限り薄型化する。
現在、厚さ50μmの薄型Siウェハーが大量生産され、さらに30μm以下の厚さのウェハーが開発されている。
【0009】
しかしながら、上記の従来の技術においては、アンダーフィル材を用いることなく、アンダーフィル材の有する応力緩衝機能を達成することはできるが、電極の劣化を防止する封止機能についての検討はされていない。
さらに、エレクトロニクスの分野において、リペア、リワークという歩留りの向上に関わる短期的視点からの課題およびリサイクル、リユースといった循環経済社会における製造業の根幹に関わる長期的な視点からの課題として、分離可能な実装技術の開発が重要視されつつあるが、従来の実装技術では、半導体チップの電極と配線基板の電極とを接合することによって半導体装置を作製しているので、半導体チップを配線基板から分離したときに電極が破損して、半導体チップや配線基板を再利用することが困難であった。
【0010】
【特許文献1】特許第31126926号明細書
【特許文献2】特開平11−214447号公報
【特許文献3】特開2001−156091号公報
【特許文献4】特開平11−233669号公報
【特許文献5】特開2000−320148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、半導体チップが配線基板に実装された半導体装置であって、封止樹脂を用いることなく、高い信頼性を有する半導体装置を提供することにあり、さらに、高い信頼性を保持しつつ、半導体チップと配線基板とを容易に分離することが可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1または複数の電極が形成された第1の基板と、1または複数の電極が形成された第2の基板と、枠構造とを含み、
第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々が第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々に電気的接続し、
枠構造が第1および第2の基板上に形成された電極を取り囲み、これによってこれらの電極が気密封止され、
第1の基板と第2の基板とが枠構造を介して接合されている半導体装置を提供する。
【0013】
本発明において、第1の基板および第2の基板の組合せには、Si基板−Si基板(半導体チップ同士、半導体チップとインターポーザ)、Si基板−プリント配線基板(フレキシブル基板も含む。)、Si基板−化合物半導体基板(GaAs、InP等の基板)、化合物半導体基板とプリント配線基板の組合せ等が含まれる。上記組み合わせにおいて、いずれの基板を第1の基板としてもよい。
【0014】
本発明の半導体装置において、この枠構造内部は真空であるか、または、その内部に窒素または不活性ガスまたはそれらの混合物のいずれかが封止されている。これにより、半導体チップおよび配線基板上に形成された電極が酸素や水分により劣化しないように保護して、電気的接続の破壊を防止する。
本発明において「真空」とは、大気圧よりも低い圧力状態を意味する。また、「不活性ガス」として、アルゴン等の希ガスが挙げられる。
【0015】
本発明による半導体装置は、第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが接合されることなく、電極同士の接触によって電気的接続が達成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の半導体装置は、枠構造が第1の基板および第2の基板の少なくとも一方の基板に分離可能に接合されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の半導体装置において、半導体チップ上に形成された電極と配線基板上に形成された電極とが接合されずに電極同士の接触で電気的接続が達成されているので、半導体チップと配線基板とを枠構造を介して分離可能に接合すれば、電極を破損せずに容易に分解することができ、半導体装置のリペアやリサイクルなどを行うのに有利である。
また、上記したごとく、本発明の半導体装置において、電極が枠構造により気密封止されているので、半導体チップの電極と配線基板の電極とが単に接触によって電気的接続されている場合であっても、酸素や水分によって電極の接触部が劣化して電気的接続が破壊されることがない。
【0017】
枠構造を接合する方法は、枠構造や枠構造を接合する基板の材質に依存するが、枠構造を分離可能に接合できれば、いずれの接合方法を用いてもよい。例えばハンダ材により枠構造を接合することができる。
【0018】
かくして、配線基板から半導体チップを分離する際に電極を破損することがなく、前記配線基板やチップを再利用することが可能となる。
【0019】
本発明の半導体装置において、第1の基板および第2の基板上に形成された電極の表面を清浄化処理することができる。
本発明において、電気的接続を接触により達成しているので、接触抵抗を下げるために、接触表面上の酸化物や吸着した有機物等を除去して、接触表面を清浄化することが有効である。
清浄化すべき接触表面に、真空中でプラズマ、加速したイオンビームや高速原子ビーム(FAB)またはラジカルビームやレーザなどのエネルギー波を照射することによって、酸化物や有機物等を除去する。この清浄化処理は、真空中で上記エネルギー波を所定の領域に照射することができる装置であればいずれの装置を用いても行うことができる。
【0020】
本発明による第1の実施形態の半導体装置は、第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが、弾力性を有するバンプを介して電気的接続されていることを特徴とする。
【0021】
通常、基板上の電極にバンプを形成するとバンプ高さにバラツキが生じる。気密封止用の枠構造を有しない従来の半導体装置の場合には、バンプと対応する電極とをハンダ接合することによって電気的接続を達成するために、バンプ高さのバラツキはハンダ層の厚みにより吸収される。
一方、本発明による半導体装置は、枠構造を基板に接合するため、バンプ高さにバラツキがあると、充分な気密封止を確保しつつ、バンプと対応する電極との電気的接続を達成することができない。しかしながら、枠構造とバンプとではパターンが異なるため、平坦化処理でそれらの高さを揃えることが困難である。さらに、1の基板上で枠構造とバンプの高さを揃えることができたとしても、他方の基板上の電極表面と枠構造に対応するパターン面の高さに差異があれば、枠構造とバンプの高さを理想的な高さに揃えて、充分な気密封止および確実な電気的接続を達成することは困難である。
【0022】
そこで、本発明の第1の実施形態の半導体装置においては、弾力性を有するバンプを用い、この弾力性によりバンプ高さのバラツキを吸収する。
また、本発明によれば、枠構造を基板に接合すると、弾力性を有するバンプは圧縮されて対応する電極に接触するので、バンプを対応する電極に接合しなくても、電気的接続を達成することが可能である。なお、枠構造を基板に接合することによって半導体装置を構成するので、従来の半導体装置のようにバンプを対応する電極に接合しなくても、半導体装置を構成することができる。
【0023】
この第1の実施形態において、上記の弾力性を有するバンプのばね定数は、例えば、1000N/m以下のごとく小さいことを特徴とする。バンプのばね定数が小さいので、半導体チップを配線基板に実装する際にバンプが圧縮されたとき、バンプの反作用により半導体チップおよび配線基板上に形成された電極に加わる応力が低減し、電極下部に形成された配線層にダメージを与えることがなく、電極半導体装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【0024】
本発明による第2の実施形態の半導体装置は、第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが、バンプレス構造により電気的接続されていることを特徴とする。
【0025】
電極が高密度化/微細化すると、第1の実施形態で用いたようなバンプを形成することは非常に困難である。また、接合時の拡散反応による材質変化を防止して信頼性を確保するためには、電極間から異種材料を排除することが好ましい。
【0026】
そこで、本発明の第2の実施形態の半導体装置においては、バンプを用いずに直接電極同士を接触させることによって、電気的接続を達成する。
この実施形態においては、枠構造と電極の高さを化学的機械研磨等の技術を用いて平坦化処理で揃えることができるので、充分な気密封止を確保しつつ、確実な電気的接続を達成することが可能である。
【0027】
この第2の実施形態において、第1の基板および第2の基板の少なくとも一方の基板の厚さ、または第1の基板および第2の基板の両方の基板の厚さを50μm以下とする。
【0028】
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、2つの基板上に形成された電極の間の接触部がバンプレス構造で構成されているため、2つの基板間の熱膨張率差に起因する熱応力は基板の変形で緩衝することになる。したがって、半導体装置の信頼性を確保するために、基板をできる限り薄型化する必要がある。また、電極同士を直接接触させるため、電極高さに分布がある場合でも、基板を薄型化すれば基板自体が弾力性を有することとなり、電極同士の直接接触を保証することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、半導体チップおよび配線基板上に形成された電極を取り囲む枠構造を形成し、この枠構造により電極を気密封止するので、封止樹脂を用いることなく電極の劣化を防止することができ、高い信頼性を有する半導体装置を得ることが可能である。
さらに、電極同士を接合せずに電極間の接触だけで電気的接続を達成し、さらに、上記の枠構造を分離可能に基板に接合するので、基板の分離が容易になり、再利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
第1の実施形態:
本発明による第1の実施形態の半導体装置は、第1の基板を第2の基板に実装することによって作製され、第1の基板上に形成された電極と第2の基板上に形成された電極とが、バンプを介して電気的接続していることを特徴とする。
【0031】
具体例として、Si基板を用いた半導体チップとSi基板を用いたインターポーザとをバンプ接続した半導体パッケージが挙げられる。
図1(a)に示すように、半導体チップ1のSi基板10上には、通常の材料および方法を用いて、1または複数の電極11およびその他の回路(図示せず)が形成されている。
図1(b)に示すように、インターポーザ2のSi基板20上には、1または複数の電極21およびその他の回路(図示せず)が形成されている。さらに、1または複数の電極21を取り囲む枠構造23が形成されている。
図2に示すように、1または複数の電極21の各々には弾力性を有するバンプ22が接合されている。Si基板10上に形成された複数の電極11の配置はSi基板20上に形成された複数の電極の配置と対応しているので、枠構造23をSi基板10に接合して半導体チップ1をインターポーザ2に実装すると、Si基板10上に形成された1または複数の電極11の各々がSi基板20上に形成された対応するバンプ22の表面に接触して、電気的接続が達成される。
ここで、「対応する」とは、第1の基板を第2の基板に実装したとき、第1の基板上に形成された電極と第2の基板上に形成された電極とが電気的接続し得る位置関係にあることをいう。
【0032】
図3は、インターポーザ2に形成された1組の電極およびバンプの断面図である。インターポーザ2は、Si基板20上に、通常の材料および方法を用いて、電極21およびその他の回路を形成し、電極21の上に電気的接続するための領域以外の領域に保護膜24を形成することによって作製する。
【0033】
電極21上に直接バンプ22を形成することもできるが、電極21とバンプ22との間での組成物の拡散防止や接着強度を向上させる目的で中間層25を電極21上に形成し、その上にバンプ22を形成することが好ましい。
【0034】
弾力性を有するバンプは、従来の方法、例えば、リソグラフィー技術を用いて基板に形成された電極上に積層することによって、または、バンプを別個に作製し、従来の接合技術または上記した常温接合技術を用いて基板に形成された電極上に接合することによって、バンプを電極上に形成することができる。
【0035】
また、本発明において、弾力性を有すればいずれの形状のバンプも用いることができる。例えば、図3(a)に示すばねバンプ221、図3(b)および(c)に示す樹脂コアバンプ222および223、図3(d)に示す中空バンプ224等を用いることができる。
図3(a)は、1つの具体例としてクランク形状のばね構造体を有するばねバンプ221を示しているが、U字型やらせん状のばね構造体を用いることができる。図3(b)は、樹脂コアバンプの1つの具体例を示す。樹脂コアバンプ222は、樹脂コア222aを電極21上に配置し、その上に導電性被膜222bを形成して電気的接続を可能とする。また、図3(c)は、樹脂コアバンプのもう一つの具体例を示す。この樹脂コアバンプ223は、複数の樹脂ビーズ223aが導電体223b中に分散した構造を有している。図3(d)は、中空バンプの1つの具体例を示す。この中空バンプ224は、導電体のバンプの内部にボイドが形成された構造を有している。
【0036】
具体的には、中間層25上に、ポリイミド感光性樹脂を用いて樹脂コア222aを形成し、電極21と電気的接続を可能にするために、樹脂コア222aの周囲にNiメッキにより導電性被膜222bを形成して樹脂コアバンプ222を形成する。
【0037】
また、枠構造23は、Sn、Pb、Auまたはそれらの合金、Cu、またはNi等、メッキで厚膜形成できる材料で形成することができる。また、枠構造形成後、その表面を接合しやすい材料で被覆することもできる。
枠構造23の接合は、加熱接合、常温接合等の技術を用いて適宜行うことができる。例えば、枠構造23をNiメッキにより形成した場合、ハンダ付けによりSi基板10に接合することができる。
【0038】
図2に図示するように、Si基板20上に形成された枠構造23をSi基板10に接合したときに、バンプ22の表面がSi基板10上に形成された電極11に接触して電気的接続を達成するように、枠構造23の高さを調整する。そのためには、例えば、電極11、バンプ22および電極21の高さの総和が枠構造23の高さよりもわずかに高くなるように設定する。かくして、半導体チップ1をインターポーザ2に実装したとき、バンプ22が圧縮され、バンプ22の表面が基板上の電極に接触して、電気的接続が達成される。
【0039】
従来技術により基板上に複数のバンプを接合したとき、バラツキによる基板内のバンプ高さの最大差は約1μmであるので、半導体チップを複数のバンプが接合された配線基板に実装して、複数のバンプのすべてを電極に接触させるためには、最も高いバンプを少なくとも1μm圧縮することになる。このとき、従来のバンプを用いた場合、圧縮されたバンプの反作用により半導体チップおよび配線基板上に形成された電極パッド当りに加わる応力は約50gfであるが、半導体装置の小型化、薄型化の進行に伴い半導体チップや配線基板が薄型化された場合、前記応力が電極パッドに加われば半導体装置の故障につながるため、電極パッドに加わる応力を小さくする必要がある。
【0040】
そこで、本発明において、複数のバンプおよび枠構造の高さの最大差を1μm以内とする。すなわち、半導体チップ1をインターポーザ2に実装したとき、最も高いバンプの最大圧縮量が1μmになる。ここで、電極パッド当り加わる最大許容圧力を例えば1gfに設定した場合、許容されるバンプのばね定数kは、1gf/1μm=1000N/mとなる。
すなわち、本発明において、バンプのばね定数が1000N/m以下であることが好ましい。
バンプのばね定数が小さいことにより、半導体チップを配線基板に実装してバンプを圧縮したとき、バンプの反作用により半導体チップおよび配線基板上に形成された電極に加わる応力を低減できるので、電極下部に形成された配線層にダメージを与えることがなく、半導体装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【0041】
枠構造23をSi基板10に接合すると、Si基板10およびSi基板20上に形成された電極は枠構造23により気密封止され、枠構造内部に空間30が形成される。空間30は真空、すなわち、大気圧よりも低い圧力状態に維持される。あるいは、空間30には、電極と反応しないガス、例えば、窒素または、アルゴン等の不活性ガスまたはそれらの混合物が封止される。
電極の周囲は真空であるかまたは電極と反応しないガス雰囲気であるので、電極が劣化して、電気的接続が破壊されることがない。
【0042】
これらのバンプ22の表面がSi基板10上に形成された対応する複数の電極11の各々に接触するように位置合わせをした後、Si基板20上に形成された枠構造23を半導体チップ10に接合することによって半導体チップ1をインターポーザ2に実装して、図2に示す第1の実施形態の半導体装置を作製する。
【0043】
この実施形態において、真空中でアルゴン高速原子ビームを照射することができる洗浄装置(図示せず)中で、Si基板10上の電極11の表面およびSi基板20上に形成した樹脂コアバンプ222の表面にアルゴン高速原子ビームを照射することによって表面上の酸化物や有機物等の付着物を除去して、これらの表面を清浄化することができる。
これにより、電極間の接触抵抗が低減される。
【0044】
この実施形態において、Si基板10上に枠構造12を形成し、この枠構造12をSi基板20に接合することもできるし、枠構造をSi基板10およびSi基板20の両方の基板上に形成し、2つの枠構造同士を接合してもよい。また、弾力性を有するバンプ12をSi基板10上に形成された電極11に形成し、バンプ12とSi基板20上に形成された電極21とを接触させることによって電気的接続を達成することもできる。
【0045】
第2の実施形態:
本発明による第2の実施形態の半導体装置は、第1の基板を第2の基板に実装することによって作製され、第1の基板上に形成された電極と第2の基板上に形成された電極とが、バンプレス構造により電気的接続していることを特徴とする。
【0046】
具体例として、Si基板を用いた半導体チップとSi基板を用いたインターポーザとをバンプレス接続した半導体パッケージが挙げられる。
図4に示すように、半導体チップ1のSi基板10上には、通常の材料および方法を用いて、1または複数の電極11およびその他の回路が形成されている。より具体的には、Si基板10上には、半導体素子の配線層16が形成され、その上に絶縁層17が形成されている。さらに、この上に導電金属等よりなる接地配線層18が形成されている。
絶縁層17および接地配線層18には、配線層16に達するスルーホールが形成され、このスルーホール内に形成された接続配線により電極11は配線層16と電気的接続している。
【0047】
また、接地配線層18には、絶縁層17に達するスルーホールが形成され、このスルーホール内に形成された枠構造13により1または複数の電極11が取り囲まれている。
これらの枠構造13は、Sn、Pb、Auまたはそれらの合金、Cu、またはNi等、メッキで厚膜形成できる材料で形成することができる。
また、枠構造13の表面を接合しやすい材料で被覆することもできる。
【0048】
インターポーザ2のSi基板20上にも、半導体チップ1と同様に、半導体素子の配線層26、絶縁層27および接地配線層28が形成され、さらに、1または複数の電極21を取り囲む枠構造23が形成されている。
【0049】
Si基板10上に形成された複数の電極11の配置はSi基板20上に形成された複数の電極21の配置と対応しているので、枠構造21と枠構造23とを接合して半導体チップ1をインターポーザ2に実装すると、Si基板10上に形成された1または複数の電極11の各々がSi基板20上に形成された対応する1または複数の電極21の各々に接触して、電気的接続が達成される。
【0050】
枠構造同士の接合は、加熱接合、常温接合等の技術を用いて適宜行うことができる。例えば、枠構造13および23をNiメッキで形成した場合、ハンダ付けにより枠構造同士を接合することができる。
【0051】
また、第2の実施形態において、第1の基板および第2の基板の少なくともいずれか一方の基板、望ましくは両方の基板の厚さをできる限り薄型化し、基板自体に弾力性を付与する。これにより、複数の電極11の各々と複数の電極21の各々との接触を保証することができ、また、2つの基板の材質が異なる場合であっても、熱応力を緩衝することができるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。例えば、基板の厚さを50μm以下、好ましくは、30μm以下とする。
【0052】
枠構造13と枠構造23とを接合すると、電極11および21は枠構造により気密封止され、枠構造内部に空間30が形成される。空間30は真空、すなわち、大気圧よりも低い圧力状態に維持される。あるいは、空間30には、電極と反応しないガス、例えば、窒素または、アルゴン等の不活性ガスまたはそれらの混合物が封止される。
電極の周囲は真空であるかまたは電極と反応しないガス雰囲気であるので、電極が劣化して、電気的接触が破壊されることがない。
【0053】
この実施形態において、真空中でアルゴン高速原子ビームを照射することができる洗浄装置(図示せず)中で、Si基板10上の電極11の表面およびSi基板20上に形成した電極21表面にアルゴン高速原子ビームを照射することによって表面上の酸化物や有機物等の付着物を除去して、これらの表面を清浄化することができる。これにより、電極間の接触抵抗が低減される。
【0054】
この実施形態において、Si基板10上にのみ枠構造13を形成し、この枠構造13をSi基板20に接合することもできるし、Si基板20上にのみ枠構造23を形成し、この枠構造23をSi基板20に接合することもできる。
【0055】
本発明の半導体装置およびその製造方法について代表例を用いて説明してきたが、上記説明は単に本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の半導体装置に用いる半導体チップ(a)およびインターポーザ(b)の上面図。
【図2】本発明の第1の実施形態の半導体装置の実装工程を説明する概略図。
【図3】本発明の半導体装置に用いる弾力性を有するバンプの断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態の半導体装置を構成する2つの基板の断面図。
【符号の説明】
【0057】
1・・・半導体チップ、
10・・・Si基板、
11・・・電極、
13・・・枠構造、
16・・・配線層、
17・・・絶縁層、
18・・・接地配線層、
2・・・インターポーザ、
20・・・Si基板、
21・・・電極、
22・・・バンプ、
221・・・ばねバンプ、
222、223・・・樹脂コアバンプ、
224・・・中空バンプ、
23・・・枠構造、
24・・・中間層、
25・・・保護膜、
26・・・配線層、
27・・・絶縁層、
28・・・接地配線層、
30・・・空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電極が形成された第1の基板と、1または複数の電極が形成された第2の基板と、枠構造とを含み、
第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々が第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々に電気的接続し、
枠構造が第1および第2の基板上に形成された電極を取り囲み、これによってこれらの電極が気密封止され、
第1の基板と第2の基板とが枠構造を介して接合されている半導体装置。
【請求項2】
枠構造内部が真空である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
枠構造内部に窒素または不活性ガスまたはそれらの混合物のいずれかが封止されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが接合されることなく、電極同士の接触によって電気的接続が達成されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
枠構造が第1の基板および第2の基板の少なくとも一方の基板に分離可能に接合されている請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
枠構造がハンダ材により基板に接合されている請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
第1の基板および第2の基板上に形成された電極の表面が清浄化処理されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが、弾力性を有するバンプを介して電気的接続されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
弾力性を有するバンプのばね定数が1000N/m以下である請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の基板上に形成された1または複数の電極の各々と第2の基板上に形成された対応する1または複数の電極の各々とが、バンプレス構造により電気的接続されている請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−66808(P2006−66808A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250443(P2004−250443)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(592212836)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】