説明

電気コネクタ

【課題】 相手接続体との係止状態が容易に解除され得ず、しかも任意のコネクタを容易に取り外すことができる電気コネクタを提供する。
【課題手段】 電気コネクタ1は、複数のコネクタ10A,10B,10Cを、ハウジング20の左右幅方向に並列に相手接続体50に対して接続する。各コネクタ10A,10B,10Cのハウジング20において、下段ハウジング部21が、上段ハウジング部23の左右幅方向一端部から突出する第1突出部22を、上段ハウジング部23が、下段ハウジング部21の左右幅方向における第1突出部22がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部24を備える。下段ハウジング部21の一端に、相手接続体50に係合して回転軸となる凸部28を有し、他端に相手接続体50に係止されるロック部26を有する。隣接するハウジング20の第1突出部22と第2突出部24との間にはハウジング20の回転を許容する隙間60が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などの相手接続体に接続される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される燃料電池の一例を図9に示す(特許文献1参照)。燃料電池200は、セル(単セル)210と呼ばれる発電ユニットを多数積層して構成される。各単セル210は、イオン交換膜からなる電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込み、さらに、その外側を一対のセパレータ215で挟み込んで構成される。セパレータ215には、アノード及びカソードに水素ガス等の燃料ガス及び酸素ガス等の酸化剤ガスをそれぞれ供給するための通路(図示せず)が形成される。この通路を介して燃料ガス及び酸化剤ガスを供給することによって、セル内部で化学反応が生じて発電がなされる。
【0003】
ここで、燃料ガスや酸化剤ガスの供給量の制御及び不良セルの発見等のために、このような燃料電池200では単セル210毎の発電状態を管理する必要がある。そこで、複数の電気コネクタ100(図10、特許文献1参照)を用いて単セル210毎のセパレータ215間の電位差(電圧)を計測するようにしている。
【0004】
電気コネクタ100を接続するために、燃料電池200の上面の前後両端部(図9は前端部のみを示す)には、電気コネクタ100を支持するためのコネクタ支持部213が設けられている。コネクタ支持部213は、単セル210を構成する樹脂211の上面から立ち上がる起立部213aと、起立部213aの上端から燃料電池200の中心に向けて後方向に延びる支持部213bとを備え、単セル210の積層方向に積層して設けられている。燃料電池200の上面と支持部213bの下面との間隔は、電気コネクタ100の上面と下面との間の高さよりもわずかに大きく設定されている。そして、支持部213bの下面には、凹状の係止部214が設けられている。また、各単セル210のセパレータ215には、単セル210を構成する樹脂211の上面から上方に突出する板状の電極部216が設けられている。隣り合う電極部216のピッチは、隣り合う単セル210のピッチと同一に設定される。
【0005】
また、電気コネクタ100は、図10に示すように、ハウジング110と、ハウジング110に取り付けられた複数(5個)のコンタクト(図示せず)とを備えている。
ハウジング110は、下段ハウジング部111と上段ハウジング113とを備え、絶縁性の樹脂を成形することによって一体的に形成されている。下段ハウジング部111は、上段ハウジング部113の左右幅方向(図10(B)における左右方向)の一端部から突出する第1突出部112を備えている。上段ハウジング部113は、下段ハウジング部111の左右幅方向における第1突出部112がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部114を備えている。下段ハウジング111には、コンタクトを収容する複数(4個)のコンタクト収容部117が電極部216のピッチと同一ピッチで左右幅方向に形成されている。上段ハウジング部112の第2突出部114には、コンタクトを収容する単一のコンタクト収容部118が形成されている。また、上段ハウジング部113の上面には、片持ち梁状のロックアーム115が設けられている。このロックアーム115の上面には、燃料電池200の支持部213bに設けられた係止部214に係止される係止突起116が突出形成されている。下段ハウジング部111及び上段ハウジング部113の前端部(図10(A)における左端部)には、単セル210の板状の電極部216が入り込む複数のスリット119が電極部216のピッチと同一ピッチで幅方向に形成されている。
【0006】
そして、電気コネクタ100が複数個用意され、これら複数の電気コネクタ100が図11(特許文献1参照)に示すようにハウジング110の幅方向に並列に燃料電池200に接続される。この接続の際に、各電気コネクタ100は、燃料電池200の上面と支持部213bの下面との間に挿入され、電極部216が各電気コネクタ100のスリット119内に入り込み、係止突起116が燃料電池200の支持部213bに設けられた係止部214に係止される。そして、電気コネクタ100に設けられたコンタクトが燃料電池200の各単セル210の電極部216に電気的に接続される。電気コネクタ100の各コンタクトは各電線Wに接続されており、電線Wを電圧センサ等に接続することによって、各単セル210のセパレータ215間の電位差(電圧)を計測することができる。
【特許文献1】特開2007−200632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年においては、燃料電池を構成する単セルの発電効率の向上等に伴って、各単セルの厚さをより薄くしようとする要望が高まり、より薄い単セルによる発電が可能になってきている。
ここで、図9に示す燃料電池200の場合では、燃料電池200を構成する単セル210の厚さ(幅)が薄くなり、それにともなって隣接する単セル210のピッチ、セパレータ215のピッチが小さくなり、コネクタ支持部213を構成する起立部213a及び支持部213bの厚さ(幅)が小さくなってきているということである。
【0008】
このようにコネクタ支持部213を構成する起立部213a及び支持部213bの厚さ(幅)が小さくなっているにもかかわらず、電気コネクタ100を係止するための係止部214が、各単セル210を構成する樹脂211の上面から起立部213aを介して回り込むように位置した支持部213bの略中央部分にある。このため、起立部213aの固定端から係止部214までの距離が長くて曲げ剛性が小さいため、電気コネクタ100の上面に設けられたロックアーム115の係止突起116を係止部214に係止したときに、支持部213bが容易に変形してその係止状態が容易に解除されてしまうおそれがある。
【0009】
また、電気コネクタ100においては、単セル210の板状の電極部216が入り込む複数のスリット119をハウジング110を構成する下段ハウジング部111及び上段ハウジング部113の前端部に設けている。ここで、各スリット119を区画するための壁120は片持ち梁状に形成されているため、壁120の強度が低いという問題点がある。
従って、本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、下段ハウジング部が、上段ハウジング部の幅方向一端部から突出する第1突出部を備え、上段ハウジング部が、下段ハウジング部の幅方向における第1突出部がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部を備えているハウジングを有する複数のコネクタを、ハウジングの左右幅方向に並列に相手接続体に対して接続する場合に、相手接続体との係止状態が容易に解除され得ず、しかも任意のコネクタを容易に取り外すことができる電気コネクタを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、板状の接触部材を受容するスリットを区画する壁の強度が高い電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係る電気コネクタは、下段ハウジング部及び該下段ハウジング部の上側に位置する上段ハウジング部を有し、前記下段ハウジング部が、前記上段ハウジング部の左右幅方向一端部から突出する第1突出部を備え、前記上段ハウジング部が、前記下段ハウジング部の左右幅方向における前記第1突出部がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部を備えているハウジングを有する複数のコネクタを、前記ハウジングの左右幅方向に並列に相手接続体に対して接続する電気コネクタであって、前記下段ハウジング部の前後方向の一端に、前記相手接続体に係合して回転軸となる凸部を有し、前記下段ハウジング部の前後方向の他端に前記相手接続体に係止されるロック部を有し、隣接する前記コネクタのハウジングの前記第1突出部と前記第2突出部との間には前記ハウジングの回転を許容する隙間が設けられることを特徴としている。
【0012】
本発明のうち請求項2に係る電気コネクタは、請求項1記載の電気コネクタにおいて、前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部のそれぞれに、コンタクトを収容するコンタクト収容室を配列して上下2列状のコンタクト収容室とし、該上下2列状のコンタクト収容室が左右幅方向に沿って千鳥配置されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のうち請求項3に係る電気コネクタは、請求項1又は2記載の電気コネクタにおいて、前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部に、前記相手接続体に設けられた板状の接触部材を受容するスリットを前記下段ハウジング部の下面から上方に向けて形成し、該スリットを区画する壁の両端部が、前記凸部が設けられた前記下段ハウジングの第1基部及び前記ロック部が設けられた前記下段ハウジング部の第2基部に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のうち請求項1に係る電気コネクタによれば、下段ハウジング部が、上段ハウジング部の左右幅方向一端部から突出する第1突出部を備え、上段ハウジング部が、下段ハウジング部の左右幅方向における第1突出部がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部を備えているハウジングを有する複数のコネクタを、ハウジングの左右幅方向に並列に相手接続体に対して接続する電気コネクタにおいて、下段ハウジング部の前後方向の一端に、相手接続体に係合して回転軸となる凸部を有し、下段ハウジング部の前後方向の他端に相手接続体に係止されるロック部を有するので、ロック部が係止される相手接続体の係止部の高さ位置を低く抑えることができ、その係止状態が容易に解除されてしまうおそれのない電気コネクタを提供することができる。また、隣接するハウジングの第1突出部と第2突出部との間にはハウジングの回転を許容する隙間が設けられるので、複数のコネクタを相手接続体に接続した後、任意のコネクタを取り外すに際して取り外すべきコネクタを回転させるときに、隣接するコネクタに干渉しない。このため、取り外すべきコネクタを容易に取り外すことができる。さらに、この隙間があることによってコネクタを相手接続体に接続するときにも同様に接続すべきコネクタを回転させるときに、隣接するコネクタに干渉しない。このため、接続すべきコネクタを容易に接続することができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項2に係る電気コネクタによれば、請求項1記載の電気コネクタにおいて、前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部のそれぞれに、コンタクトを収容するコンタクト収容室を配列して上下2列状のコンタクト収容室とし、該上下2列状のコンタクト収容室が左右幅方向に沿って千鳥配置されているので、コンタクト収容室内に収容されるコンタクトの左右幅方向の配列ピッチを狭ピッチにすることができる。そして、下段ハウジング部に、上段ハウジング部の左右幅方向一端部から突出する第1突出部が設けられ、上段ハウジング部に、下段ハウジング部の左右幅方向における第1突出部がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部が設けられていることから、左右幅方向に千鳥配列した2列状のコンタクト収容室をハウジングに無駄なスペースを設けることなく設けることができる。
【0016】
更に、本発明のうち請求項3に係る電気コネクタによれば、請求項1又は2記載の電気コネクタにおいて、前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部に、前記相手接続体に設けられた板状の接触部材を受容するスリットを前記下段ハウジング部の下面から上方に向けて形成し、該スリットを区画する壁の両端部が、前記凸部が設けられた前記下段ハウジングの第1基部及び前記ロック部が設けられた前記下段ハウジング部の第2基部に連結されているので、スリットを区画するための壁は両端を固定端とする両持ち梁状に形成されているため、当該壁を片持ち梁状に形成した場合よりも、当該壁の強度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る電気コネクタを燃料電池に接続した状態を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。図2は本発明に係る電気コネクタを燃料電池に接続した状態を示し、(A)は右側面図、(B)は背面図である。
図1及び図2において、電気コネクタ1は、複数個(図1及び図2には3個示されているが実際にはそれ以上)のコネクタ10A,10B,10Cを、燃料電池50である相手接続体に各コネクタ10A,10B,10Cの左右幅方向(図1(A)における左右方向)に並列に接続して構成される。
【0018】
ここで、相手接続体となる燃料電池50は、図9に示した燃料電池200と同様に、セル(単セル)と呼ばれる発電ユニットを多数積層して構成される。各単セルは、イオン交換膜からなる電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込み、さらに、その外側を一対のセパレータ51で挟み込んで構成される。各セパレータ51は、金属板で構成される。各セパレータ51には、アノード及びカソードに水素ガス等の燃料ガス及び酸素ガス等の酸化剤ガスをそれぞれ供給するための通路(図示せず)が形成される。この通路を介して燃料ガス及び酸化剤ガスを供給することによって、セル内部で化学反応が生じて発電がなされる。
【0019】
そして、複数のコネクタ10A,10B,10Cの各々を燃料電池50に接続するために、図2(A)に示すように、燃料電池50の上面の前後両端部に位置する各セパレータ51の部分(図2(A)には前端部のみを示す)には、各コネクタ10A,10B,10Cを支持するためのコネクタ支持部51aが設けられている。コネクタ支持部51aは、燃料電池50の上面から突出する各セパレータ51の前端部から立ち上がる板状の第1起立部52の後縁に形成されたロック部係止用凹部53を備えている。また、コネクタ支持部51aは、第1起立部52に対して燃料電池50の中心方向に所定距離離れた前記各セパレータ51の一部分から立ち上がる板状の第2起立部54の前縁に形成された凸部係合用凹部55を備えている。第1起立部52と第2起立部54との間の間隔は、各コネクタ10A,10B,10Cの前後方向(図2(A)における左右方向)の長さよりも若干大きく設定されている。また、各セパレータ51の第1起立部52と第2起立部54との間には、上方に延びる板状の電極部(板状の接触部材)56が設けられている。なお、隣り合う電極部56のピッチは、隣り合う単セルのピッチと同一に設定される。
【0020】
図3は、電気コネクタを燃料電池に接続している途中の状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は断面図である。図4は電気コネクタを燃料電池に接続完了した状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は図2(B)における4B−4B線に沿う断面図である。図5は電気コネクタを燃料電池に接続完了した状態を示し、(A)は背面斜め上方側から見た斜視図、(B)は図2(B)における5B−5B線に沿う断面図である。図6は、リテーナが仮係止状態のコネクタを示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は背面斜め上方側から見た斜視図、(C)は背面図、(D)は左側面図である。図7は、リテーナが本係止状態のコネクタを示し、(A)は背面図、(B)は左側面図である。図8は、コネクタからリテーナを分離した状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は正面斜め下方側から見た斜視図である。
【0021】
電気コネクタ1を構成する複数個のコネクタ10A,10B,10Cは同一の形状であるため、コネクタ10Aの構成のみを説明する。
コネクタ10Aは、図3乃至図8に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に取り付けられた複数のコンタクト30と、コンタクト30をハウジング20に対して二次係止するためのリテーナ40とを備えている。
【0022】
ハウジング20は、図6に示すように、略直方体状の下段ハウジング部21と、この下段ハウジング部21の上側に位置する略直方体状の上段ハウジング部23とを備えている。下段ハウジング部21及び上段ハウジング部23は、絶縁性の樹脂を成形することによって一体的に形成される。
【0023】
また、下段ハウジング部21の後方部(図3(B),図4(B)における右方部)には、図6(C)によく示すように、上段ハウジング部20の左右幅方向一端部から突出する第1突出部22が設けられている。第1突出部22は、図6(A)に示すように、下段ハウジング部21の後端面から前方に向けて前後方向略中央部まで延びている。また、上段ハウジング部23には、下段ハウジング部21の左右幅方向における第1突出部22がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部24が設けられている。第2突出部24は、図6(B)及び図6(D)に示すように、上段ハウジング部23の後端面から前方に向けて上段ハウジング部23の前端面に至るまで延びている。第2突出部24は、下段ハウジング部21の側面の前方の突出板部21aに連続している。このため、下段ハウジング部21の側面には、第2突出部24及び突出板部21aにより、第2突出部24及び突出板部21aに対して相対的に窪んでいる凹部21bが画定される。この凹部21bは、隣接するハウジング20の第1突出部22を隙間をもって受容できる寸法に設定されている。
【0024】
ここで、複数のコネクタ10A,10B,10Cが燃料電池50に接続されたときの隣接するコネクタ10A,10B間(10B,10C間も同様)の第1突出部22と第2突出部24との位置関係について説明する。図2(B)に示すように、複数のコネクタ10A,10B,10Cが燃料電池50に接続されたときには、コネクタ10Aのハウジング20の第2突出部24とコネクタ10Bのハウジング20の第1突出部22との間には、各ハウジング20の回転を許容する隙間60が形成される。同様に、コネクタ10Bのハウジング20の第2突出部24とコネクタ10Cのハウジング20の第1突出部22との間には、各ハウジング20の回転を許容する隙間60が形成される。隙間60の大きさは、隣接する各ハウジング20の回転を許容し、回転時に隣接するハウジング20の第1突出部22と第2突出部24との干渉を回避できる大きさであればよい。
【0025】
そして、下段ハウジング部21及び上段ハウジング部23のそれぞれには、図6(B)及び図6(C)によく示すように、コンタクト30を収容するコンタクト収容室25が配列されて上下2列状のコンタクト収容室25とされている。上下2列状のコンタクト収容室25は、左右幅方向に沿って千鳥配置されている。コンタクト収容室25の左右幅方向の配列ピッチ(上下で隣り合うコンタクト収容室25の配列ピッチ)は、隣り合う電極部56のピッチと同一に設定される。
【0026】
このように、上下2列状のコンタクト収容室25を左右幅方向に沿って千鳥配置することにより、コンタクト収容室25内に収容されるコンタクト30の左右幅方向の配列ピッチを狭ピッチにすることができる。これにより、各単セルの厚さをより薄くすることに伴う隣接する単セルの配列ピッチ、セパレータの配列ピッチが小さくなることに対応することができる。そして、下段ハウジング部21に、上段ハウジング部20の左右幅方向一端部から突出する第1突出部22が設けられ、上段ハウジング部23に、下段ハウジング21部の左右幅方向における第1突出部22がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部24が設けられている。これにより、左右幅方向に千鳥配列した2列状のコンタクト収容室25をハウジング20に無駄なスペースを設けることなく設けることができる。
【0027】
また、下段ハウジング部21の後端面の下端部には、図2乃至図5及び図6に示すように、燃料電池50のコネクタ支持部51aの凸部係合用凹部55に係合して回転軸となる凸部28が後方に向けて突出形成されている。凸部28は、図6(C)に示すように、下段ハウジング部21の左右幅方向の全域にわたって延びている。その一方、下段ハウジング部21の前端面の下端部には、図2乃至図5及び図6に示すように、該下端部から前方に延び、そして湾曲部を介して上方に延びるロック部26が設けられている。ロック部26には、燃料電池50のコネクタ支持部51aのロック部係止用凹部53に係止されるロック突起27が設けられている。ロック部26の左右方向幅は、図6(A)に示すように、下段ハウジング部21の左右方向幅よりも小さく設定されている。ロック突起27の左右方向幅は、ロック部26の左右方向幅とほぼ同一である。ロック部26の上端位置は、ハウジング20の高さのほぼ半分の高さ位置と同一の位置であり、燃料電池50の第1起立部52の上端位置とほぼ同一の位置である。ロック突起27の上下方向位置は、ロック部26の上下方向中心位置よりもやや上方の位置にあり、第1起立部52の上下方向中心位置よりもやや上方に位置する。下段ハウジング部21の前端面の両側部には、ロック部26の両側を覆うように延びる1対の保護壁26a,26bが設けられている。これら保護壁26a,26bは、ロック部26を外部から保護する。
【0028】
更に、ハウジング20を構成する下段ハウジング部21及び上段ハウジング部23には、図3(B)、図4(B)、図5(B)及び図8(B)に示すように、燃料電池50の板状の電極部56を受容する複数のスリット29が下段ハウジング部21の下面から上方に向けて形成されている。隣接するスリット29のうち一方のスリット29は、図5(B)に示すように、下段ハウジング部21の下面から上方に向けて下段ハウジング部21のコンタクト収容室25を貫通するように形成されている。また、隣接するスリット29のうち他方のスリット29は、図4(B)に示すように、下段ハウジング部21の下面から上方に向けて上段ハウジング部23のコンタクト収容室25を貫通するように形成されている。そして、各スリット29を区画する壁の両端部は、図8(B)によく示すように、凸部28が設けられた下段ハウジング部21の第1基部29a及びロック部26が設けられた下段ハウジング部21の第2基部29bに連結されている。これにより、各スリット29を区画するための壁は両端を固定端とする両持ち梁状に形成されているため、片持ち梁状に形成された従来の図9に示すコネクタ100よりも、当該壁の強度を高くすることができる。
【0029】
また、下段ハウジング部21及び上段ハウジング部23の一側壁(左側壁)には、図8(A)及び図8(B)によく示すように、リテーナ40を受容するリテーナ受容凹部41が当該一側壁から奥側に延びるように形成されている。
次に、各コンタクト30は、図3(B)、図4(B)及び図5(B)に示すように、電線Wを圧着接続するための電線接続部31と、電線接続部31の前側に設けられた、電極部56が接触する接触部32とを備えている。各コンタクト30は、金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成される。電線接続部31の前側の両側壁には、コンタクト30がコンタクト収容室25内に収容されたときに、当該コンタクト30をコンタクト収容室25の両側壁に対して一次係止するための1対の突起33が設けられている。また、接触部32は、下側から電極部56を受容可能な1対の弾性接触板で構成されている。
【0030】
更に、リテーナ40は、ハウジング20に形成されたリテーナ受容凹部41に収容され、図6に示す仮係止位置と図7に示す本係止位置との双方でハウジング20に係止される。リテーナ40が図6に示す仮係止位置でハウジング20に対して係止されているときに、電線Wを接続した各コンタクト30がハウジング20の後方から各コンタクト収容室25内に収容される。このとき、各コンタクト30の両突起33がコンタクト収容室25の両側壁に圧入されて各コンタクト30が一次係止される。そして、リテーナ40が図6に示す仮係止位置から押し込まれて図7に示す本係止位置になったときに、リテーナ40は各コンタクト30を二次係止する。
【0031】
次に、電気コネクタ1を構成するコネクタ10A,10B,10Cを相手接続体である燃料電池50に接続する方法を図3乃至図5を参照して説明する。
先ず、コネクタ10A,10B,10Cのうちの端にあるコネクタ10Aを後端側を下にした斜めにしてスリット29に燃料電池50の電極部56を挿入しつつ、ハウジング20の後端部に設けた凸部28を燃料電池50の凸部係合用凹部55に係合させる。
【0032】
次いで、図4に示すように、コネクタ10Aを回転軸となる凸部28をほぼ中心に前端側を下方に向けて回転させて、ロック部26に設けたロック突起27を燃料電池50の第1起立部52の上方からロック部係止用凹部53内に入れ込んで係止させる。これにより、コネクタ10Aは燃料電池50に対して接続される。ロック部26は弾性変形するよう形成されており、コネクタ10Aの接続の際には、ロック突起27が第1起立部52の上端部に当接したときに一旦内側に撓む。さらに、コネクタ10Aが回転すると、ロック突起27がロック部係止用凹部53内に入り込んでロック部26が元の状態に復元し、ロック突起27がロック部係止用凹部53の上縁に係止されるのである。
【0033】
ここで、コネクタ10Aが燃料電池50に対して接続されたときには、図5(B)に示すように、隣接する電極部56のうち一方の電極部56は上段ハウジング部23のコンタクト収容室25内に収容されたコンタクト30の接触部32に接触する。また、隣接する電極部56のうち他方の電極部56は下段ハウジング部21のコンタクト収容室25内に収容されたコンタクト30の接触部32に接触する。
そして、コネクタ10B,10Cについてもコネクタ10Aと同様の作業により、順次、燃料電池50に接続される。
【0034】
このように、電気コネクタ1を構成するコネクタ10A,10B,10Cの各コンタクト30が燃料電池50の電極部56に接触すると、各コンタクト30に接続された電線Wを介して各単セルのセパレータ51間の電位差(電圧)が計測される。
【0035】
本実施形態においては、下段ハウジング部21の前後方向の一端に、凸部係合用凹部55に係合して回転軸となる凸部28を有し、下段ハウジング部21の前後方向の他端にロック部係止用凹部53に係止されるロック突起27のあるロック部26を有する。そして、ロック係止用凹部53は、各セパレータ51の前端部から立ち上がった板状の第1起立部52の後縁に形成されており、各セパレータ51からの高さ位置が低い。このため、ロック部26が係止される燃料電池50のロック係止用凹部53の高さ位置、延いては第1起立部52の高さを低く抑えることができ、ロック部26及びロック係止用凹部53の係止状態が容易に解除されてしまうおそれのない電気コネクタ1を提供することができる。
【0036】
なお、複数のコネクタ10A,10B,10Cを燃料電池50に接続した後、任意のコネクタを取り外すときには、取り外すべきコネクタ10A,10B,10Cについてロック部26を一端内側に撓ませてロック突起27のロック部係止用凹部53に対する係止状態を解除する。その後、当該コネクタについて前述の回転動作と逆の回転動作をさせて凸部28を凸部係合用凹部55から取り外せばよい。この際に、隣接するコネクタ10A,10B,10Cのハウジング20の第1突出部22と第2突出部24との間にはハウジング20の回転を許容する隙間60が設けられているから、取り外すべきコネクタ10A,10B,10Cを回転させるときに、隣接するコネクタに干渉しない。このため、取り外すべきコネクタ10A,10B,10Cを容易に取り外すことができる。この隙間60があることによってコネクタ10A,10B,10Cを燃料電池50に接続するときにも同様に接続すべきコネクタ10A,10B,10Cを回転させるときに、隣接するコネクタに干渉しない。このため、接続すべきコネクタ10A,10B,10Cを容易に接続することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、相手接続体として燃料電池50を取り上げて説明したが、電気コネクタ1を構成する複数のコネクタを並列して接続するものであれば、これに限られない。
また、コネクタ支持部51aを構成する凸部係合用凹部55及びロック部係止用凹部53が金属製のセパレータ51に一体に設けられている構成にしてあるが、凸部係合用凹部55及びロック部係止用凹部53は樹脂で構成してもよい。
【0038】
更に、板状の接触部材として燃料電池50の板状の電極部56を取り上げて説明したが、板状の接触部材であればよく、例えば一般の電気コネクタに用いられるタブ端子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電気コネクタを燃料電池に接続した状態を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図2】本発明に係る電気コネクタを燃料電池に接続した状態を示し、(A)は右側面図、(B)は背面図である。
【図3】電気コネクタを燃料電池に接続している途中の状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は断面図である。
【図4】電気コネクタを燃料電池に接続完了した状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は図2(B)における4B−4B線に沿う断面図である。
【図5】電気コネクタを燃料電池に接続完了した状態を示し、(A)は背面斜め上方側から見た斜視図、(B)は図2(B)における5B−5B線に沿う断面図である。
【図6】リテーナが仮係止状態のコネクタを示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は背面斜め上方側から見た斜視図、(C)は背面図、(D)は左側面図である。
【図7】リテーナが本係止状態のコネクタを示し、(A)は背面図、(B)は左側面図である。
【図8】コネクタからリテーナを分離した状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は正面斜め下方側から見た斜視図である。
【図9】燃料電池の一例を示す部分斜視図である。
【図10】従来の電気コネクタを示し、(A)は斜視図、(B)は背面図である。
【図11】図9に示す燃料電池に図10に示すコネクタを接続した状態の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 電気コネクタ
10A,10B,10C コネクタ
20 ハウジング
21 下段ハウジング部
22 第1突出部
23 上段ハウジング部
24 第2突出部
25 コンタクト収容室
26 ロック部
28 凸部
29 スリット
29a 第1基部
29b 第2基部
30 コンタクト
50 燃料電池(相手接続体)
56 電極部(接触部材)
60 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下段ハウジング部及び該下段ハウジング部の上側に位置する上段ハウジング部を有し、前記下段ハウジング部が、前記上段ハウジング部の左右幅方向一端部から突出する第1突出部を備え、前記上段ハウジング部が、前記下段ハウジング部の左右幅方向における前記第1突出部がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部を備えているハウジングを有する複数のコネクタを、前記ハウジングの左右幅方向に並列に相手接続体に対して接続する電気コネクタであって、
前記下段ハウジング部の前後方向の一端に、前記相手接続体に係合して回転軸となる凸部を有し、前記下段ハウジング部の前後方向の他端に前記相手接続体に係止されるロック部を有し、隣接する前記コネクタのハウジングの前記第1突出部と前記第2突出部との間には前記ハウジングの回転を許容する隙間が設けられることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部のそれぞれに、コンタクトを収容するコンタクト収容室を配列して上下2列状のコンタクト収容室とし、該上下2列状のコンタクト収容室が左右幅方向に沿って千鳥配置されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングを構成する前記下段ハウジング部及び前記上段ハウジング部に、前記相手接続体に設けられた板状の接触部材を受容するスリットを前記下段ハウジング部の下面から上方に向けて形成し、該スリットを区画する壁の両端部が、前記凸部が設けられた前記下段ハウジングの第1基部及び前記ロック部が設けられた前記下段ハウジング部の第2基部に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電気コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−123487(P2010−123487A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297902(P2008−297902)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】