説明

電気コネクタ

【課題】簡易な構成で、アクチュエータ15の回動操作性を向上させて接続対象物(FPC,FFC)14の固定作業を効率的かつ正確に行うことを可能とする。
【解決手段】本体ハウジング11から立ち上げられた状態の待機位置にあるアクチュエータ(接続操作手段)15を接続対象物(FPC,FFC)14の挿入方向の上流下流双方向に向かって傾倒可能とした構成を採用し、例えば主配線基板Pに対する電気コネクタの実装状況に応じてアクチュエータ15の回動操作方向を好適な方向に選択することを可能として接続対象物14の固定作業を容易かつ正確に行わせるとともに、アクチュエータ15の回動操作の方向を誤ることをなくすように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続操作手段(アクチュエータ)を回動操作することより接続対象物の固定を行うように構成された電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)用配線板や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)などの平板状の可撓性ケーブル等からなる各種接続対象物を電気的に接続するために電気コネクタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1〜3に記載された電気コネクタでは、図12に示されているように、FPCやFFC等からなる接続対象物1が、絶縁部材からなる本体ハウジング(インシュレータ)2の前端側開口部から内部に挿入され、その後に、接続操作手段としてのアクチュエータ3が、本体ハウジングから立ち上げられた状態の待機位置から本体ハウジングに略沿った状態の作用位置まで傾倒されるように回動操作される。そして、その作用位置まで回動操作されたアクチュエータ(接続操作手段)3に設けられたカム部材の押圧力により、上記接続対象物(FPC,FFC)1に導電コンタクト4が圧接するように変位され、それによって接続対象物1の固定が行われるようになっている。
【0003】
このとき、上述した各特許文献1〜3を含む一般の電気コネクタでは、接続対象物(FPC,FFC)1を本体ハウジング内に挿入した後に行われる接続操作手段(アクチュエータ)の回動操作の方向が一方向に限定されており、そのために次のような問題がある。例えば、電気コネクタを実装する一枚の主配線基板に対して、接続操作手段の回動操作方向が異なる電気コネクタが混在して実装配置されることがあるが、そのような場合においては接続操作手段の回動操作方向を作業者が混同し易く、回動の操作を逆方向に行って電気コネクタを破損させてしまうおそれがある。また、主配線基板に実装された一つの電気コネクタに他の電気コネクタ等の部品が近接して配置されている場合があり、そのような場合に、接続操作手段の回動操作方向が一方向に決められていると、近接する他の部品が邪魔になって回動操作の作業に手間を要することがあり、それによって生産性の低下を招来するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−142130号公報
【特許文献2】特開平10−208810号公報
【特許文献3】特開2002−270290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成で、接続操作手段の回動操作性を向上させて接続対象物の固定作業を効率的かつ正確に行うことが出来るようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明では、本体ハウジングから立ち上げられた状態の待機位置にある接続操作手段を、前記本体ハウジングの表面に略沿った状態の作用位置まで傾倒するように回動操作して、前記本体ハウジングの内部に挿入された接続対象物の挟持を行うように構成された電気コネクタにおいて、前記接続操作手段は、前記待機位置にある状態から、前記接続対象物の挿入方向における上流側及び下流側の双方に傾倒可能となる構成が採用されている。
【0007】
このような構成を有する本発明によれば、接続操作手段を、例えば主配線基板に対する電気コネクタの実装状況に応じて適宜の方向に選択することが可能となり、固定接続操作手段の回動操作、すなわち接続対象物の固定作業を容易かつ正確に行うことが可能となるとともに、固定接続操作手段の回動操作の方向を誤ることもなくなる。
【0008】
また、本発明における接続操作手段は、前記本体ハウジングの内部に多極状をなすように装着された導電コンタクトを回動時に変位させるカム部材を有し、前記カム部材が、前記接続操作手段の回動中心に関して略対称な形状をなすように形成されていることが望ましい。また、本発明における接続操作手段の作用位置が、前記接続対象物の挿入方向における下流側に接続操作手段を傾倒させた第1の作用位置と、上流側に傾倒させた第2の作用位置とを有していることが望ましい。さらに、本発明におけるカム受入れ凹部は、導電コンタクトを構成する可動ビーム及び固定ビームに設けられていることが可能である。
【0009】
このような構成を有する本発明によれば、接続操作手段の双方向の傾倒動作が確実に行われることとなる。
【0010】
さらにまた、本発明における前記接続操作手段の回動中心と、前記カム部材の外表面に設けられたカム面の図形中心とが略一致するように設定されていることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、接続操作手段を回動操作させた際に、押圧カム部のカム面が接触するカム受入れ凹部から接続操作手段の回動中心までの距離が略一定のままに維持されることから、滑らかな回動操作が可能となる。
【0012】
また、本発明においては、接続操作手段を待機位置にある状態から作用位置へ傾倒した際に前記カム部材を保持する形状のカム受入れ凹部を備えていることが望ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、接続操作手段を作用位置へ回動操作したときにカム受入れ凹部によってカム部材が保持され、接続操作手段が作用位置に確実かつ安定的な状態で維持される。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、本体ハウジングから立ち上げられた状態の待機位置にある接続操作手段を接続対象物の挿入方向の上流下流双方向に向かって傾倒可能とした構成を採用し、例えば主配線基板に対する電気コネクタの実装状況に応じて接続操作手段の回動操作方向を好適な方向に選択することを可能として接続対象物の固定作業を容易かつ正確に行うことができるとともに、固定接続操作手段の回動操作の方向を誤ることをなくすように構成したものであるから、簡易な構成で、接続操作手段の回動操作性を向上させて、接続対象物の固定作業を効率的かつ正確に行うことができるため、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)が「待機位置」にある場合の全体構成を後方側から表した外観斜視説明図である。
【図2】図1に示された電気コネクタの導電コンタクト配置位置における内部構造を表した縦断面説明図である。
【図3】図1に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ後方側に傾倒させて「第1の作用位置」に回動させた状態を表した外観斜視説明図である。
【図4】図3に示された電気コネクタの導電コンタクト配置位置における内部構造を表した図2相当の縦断面説明図である。
【図5】図1に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ前方側に傾倒させて「第2の作用位置」に回動させた状態を表した図2相当の縦断面説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)が「待機位置」にある場合の導電コンタクト配置位置における内部構造を表した縦断面説明図である。
【図7】図6に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ後方側に傾倒させて「第1の作用位置」に回動させた状態を表した縦断面説明図である。
【図8】図6に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ前方側に傾倒させて「第2の作用位置」に回動させた状態を表した縦断面説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態にかかる電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)が「待機位置」にある場合の導電コンタクト配置位置における内部構造を表した縦断面説明図である。
【図10】図9に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ後方側に傾倒させて「第1の作用位置」に回動させた状態を表した縦断面説明図である。
【図11】図9に示された電気コネクタのアクチュエータ(接続操作手段)をコネクタ前方側に傾倒させて「第2の作用位置」に回動させた状態を表した縦断面説明図である。
【図12】一般に使用されている電気コネクタにおいてアクチュエータ(接続操作手段)が「待機位置」にある場合の全体構成を表した外観斜視説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
まず、図1〜図5に示された第1の実施形態は、コネクタ後端側(図2の右端側)に配置された接続操作手段(アクチュエータ15)が、接続対象物14を挿入するコネクタ後端側(図2右端側)に向かって倒されるように回動される型式の電気コネクタ10に本発明を適用したものであって、細長状に延在する中空枠体形状で絶縁部材からなる本体ハウジング11を備えているとともに、その本体ハウジング11の内部には、適宜の形状をなす金属製部材により形成された複数の導電コンタクト12が、前記本体ハウジング11の横幅方向(長手方向)に沿って適宜の間隔をなして多極状に配置されている。これらの導電コンタクト12は、互いに略同一の形状を有する構成になされていて、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして用いられ、主配線基板P上に実装された状態で使用される。
【0018】
上述した本体ハウジング11のコネクタ前端側(図2の左端側)には、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)用配線板やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる接続対象物14が挿入される対象物挿入口11aが設けられているとともに、その反対側のコネクタ後端側(図2の右端側)には、後述する接続操作手段としてのアクチュエータ15の部品取付口11bが設けられている。
【0019】
また、上述した導電コンタクト12の各々は、コネクタ後端側の部品取付口11bから前方側(図示左方側)に向かって挿入されることにより装着されており、前記接続対象物(FPC又はFFC)14の表裏両面のいずれかに形成された信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)のいずれか一方及び他方に対応した位置に対して導電コンタクト12がそれぞれ配置されている。これらの導電コンタクト12は、上述した接続対象物14の挿入方向(図2の右方向)に沿って延在する一対の細長状ビーム部材からなる可動ビーム12a及び固定ビーム12bをそれぞれ有している。
【0020】
これらの可動ビーム12a及び固定ビーム12bは、上述した本体ハウジング11の内部空間において図示上下に適宜の間隔をなして互いに対向するように配置されている。そのうちの固定ビーム12bは、本体ハウジング11の内部で略不動状態となるように固定されている。また、それら両ビーム12a及び12bどうしは、延在方向の略中央部分において図示の略鉛直方向に延在する細幅板状の連結支柱部12cにより一体的に連結されており、それによって可動ビーム12aが固定ビーム12bに対して弾性的な可撓性を有する構成になされている。
【0021】
すなわち、それらの各可動ビーム12aは、前記連結支柱部12cを回動中心として揺動可能となるように構成されており、図2の紙面内において上下方向に変位する構成になされている。そして、当該可動ビーム12aのコネクタ前端側部分(図示左端側部分)には、前記接続対象物(FPC又はFFC)14の図示上面側に形成された信号伝送用又はシールド用の導電路(図示省略)のいずれかに接続される端子接触凸部12a1が図示下向きの突形状をなすように設けられている。
【0022】
一方、前記固定ビーム12bは、本体ハウジング11の底部内壁面に沿って延在するように配置されているが、それらの各固定ビーム12bにおけるコネクタ前方側(図示左方側)の先端部分は、接続対象物(FPC又はFFC)14の挿入を容易化する等の目的で上反り形状になされており、本体ハウジング11の底部内壁面から上方に向かって浮き上がるように離間した配置になされていることによって当該固定ビーム12bの先端部分が上下方向に弾性的に変位可能になされている。また、この固定ビーム12bの前方側(図示左方側)の先端部分には、上述した接続対象物(FPC又はFFC)14の図示下面側に形成された信号伝送用又はシールド用の導電路(図示省略)のいずれかに接続される端子接触凸部12b1が図示上向きの突形状をなすように設けられている。この端子接触凸部12b1は、上述した可動ビーム12a側の端子接触凸部12a1の図示直下位置に対面するように配置されており、それらの端子接触凸部12a1と12b1どうしの間に、上述した接続対象物(FPC又はFFC)14が挟持されるように構成されている。
【0023】
なお、これらの可動ビーム12aの端子接触凸部12a1、及び固定ビーム12bの端子接触凸部12b1は、互いの位置をコネクタ前方側(図示左方側)或いはコネクタ後方側(図示右方側)にずらして配置することも可能である。
【0024】
さらに、各固定ビーム12bにおけるコネクタ後端側部分(図2の右端側部分)には、図示を省略した主配線基板P上に形成された導電路に半田接続される接続端子部12b2がそれぞれ形成されている。
【0025】
一方、前記可動ビーム12a及び固定ビーム12bのコネクタ後端側部分(図2の右端側部分)には、凹形状をなすカム受入れ凹部12a2,12b3がそれぞれ設けられている。それらのカム受入れ凹部12a2,12b3には、前記本体ハウジング11の後端部分に装着された接続操作手段としてのアクチュエータ15の押圧カム部15aが、滑動可能、つまり回動可能に接触配置されており、そのような可動ビーム12a及び固定ビーム12bのカム受入れ凹部12a2,12b3に対する押圧カム部15aの回動可能な接触配置関係によってアクチュエータ(接続操作手段)15の全体が回動自在に支持されている。
【0026】
このとき、上述したアクチュエータ(接続操作手段)15の押圧カム部15aは、前記本体ハウジング11の内部に多極状をなすように装着された導電コンタクト12を、当該押圧カム15aの回動時に変位させるカム部材を構成するものであって、縦断面において略楕円形状、つまり後述するようにアクチュエータ15の回動中心RCに関して略対称な形状をなすように形成されている。
【0027】
そして、そのような押圧カム部15aの楕円状の外表面に対して、上述した可動ビーム12a及び固定ビーム12bのカム受入れ凹部12a2,12b3は、前記押圧カム部15aの楕円外表面の略半分に相当する凹形状になされている。より具体的には、図2のように押圧カム部15aが寝かされた状態、つまりその押圧カム部15aの楕円の長径が接続対象物14の挿入方向(図2の左右方向)に延在した状態において、上述した可動ビーム12a及び固定ビーム12bのカム受入れ凹部12a2,12b3は、前記押圧カム部15aの楕円外表面における上下略半分の形状にほぼ沿うように形成されている。そして、このようなカム受入れ凹部12a2,12b3に対して押圧カム部15aが任意方向に回動可能となるように保持された構成によって、アクチュエータ(接続操作手段)15の全体が、回動中心RCを中心として例えば図2において左回り及び右回りの双方に回動可能になされている。
【0028】
さらに、前記アクチュエータ(接続操作手段)15の押圧カム部15aを除く部分は、上述した本体ハウジング11の後端部分において横幅方向(長手方向)に細長状に延在する略板状部材から構成されている。そして、そのアクチュエータ15の回動側の自由端部分(図2の上端部分)を構成している開閉操作部15bに、作業者が適宜の回動操作力が付与されることによって、図1及び図2のように本体ハウジング11からほぼ直立状に立ち上げられた状態の「待機位置」と、図3,図4及び図5のように本体ハウジングの表面に略沿うようにほぼ水平に傾倒された状態の「作用位置」との間で回動操作される構成になされている。
【0029】
また、そのアクチュエータ15は、回動操作時に導電コンタクト12の可動ビーム12aおよび固定ビーム12bとの接触を防ぐために、それらの各ビームに相当する位置に複数の逃げ溝が本体ハウジング11の長手方向に沿って設けられている。それにより、アクチュエータ15は、「待機位置」から「作用位置」に支障なく回動操作され、本体ハウジングの表面に略沿って延在する位置までほぼ水平に傾倒された状態をとるので、電気コネクタの高さを低く抑えることができる。
【0030】
すなわち、前述したようにアクチュエータ(接続操作手段)15が、押圧カム部15aを介して図示の左回り及び右回りの双方に回動可能になされているため、当該アクチュエータ15の開閉操作部15bは、ほぼ直立した状態の「待機位置」(図1及び図2参照)から、接続対象物14の挿入方向における上流側及び下流側の双方向に向かって傾倒させることが可能なように構成されている。そして、このようにアクチュエータ15の全体が接続対象物14の挿入方向における上流下流双方向に傾倒可能になされていることによって、当該アクチュエータ15が接続対象物14の挿入方向の下流側に傾倒された「第1の作用位置」(図4参照)と、アクチュエータ15が接続対象物14の挿入方向の上流側に傾倒された「第2の作用位置」(図5参照)との二つの「作用位置」が任意に選択可能な構成になされている。
【0031】
より具体的には、前述したように「待機位置」(図1参照)にあるアクチュエータ(接続操作手段)15の開閉操作部15bを作業者が手で把持しながら、前記「第1の作用位置」(図4参照)及び「第2の作用位置」(図5参照)のいずれかに向かって押し倒すようにして回動操作が行われると、上述した押圧カム部15aの回転半径が、固定ビーム12bと可動ビーム12aとの間において増大する方向に変化する構成になされている。そして、その押圧カム部15aの径が増大する変化に従って、可動ビーム12aの後端側に設けられたカム受入れ凹部12a2が図示上方側に持ち上げられるように変位し、それに伴って上記カム受入れ凹部12a2と反対側(コネクタ前端側)に設けられた端子接触凸部12a1が下方に押し下げられていくようになっている。
【0032】
そして、アクチュエータ(接続操作手段)15が最終の回動位置である第1及び第2の二つの「作用位置」のいずれかまで回動しきったときには(図4及び図5参照)、上述した可動ビーム12aにおける端子接触凸部12a1と、固定ビーム12bにおける端子接触凸部12b1との間が最狭状態となり、その間に挿入された接続対象物(FPC又はFFC)14が挟持される。そのとき、前記接続対象物14に形成された信号伝送用及びシールド用の導電路(図示省略)に対して、上記端子接触凸部12a1及び端子接触凸部12b1のいずれかが圧接されることとなり、それによって電気的な接続が行われる構成になされている。
【0033】
このような構成を有する本実施形態によれば、例えば主配線基板Pに対する電気コネクタの実装状況に応じてアクチュエータ(接続操作手段)15を、接続対象物(FPC又はFFC)14の挿入方向における上流側又は下流側のいずれか好適な方向に回動させることが可能となるため、アクチュエータ15の回動操作、すなわち接続対象物14の固定作業を容易かつ正確に行うことが可能となるとともに、アクチュエータ15の回動操作の方向を誤ることもなくなる。
【0034】
[第2の実施形態]
また、上述した第1の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した図6〜図8にかかる第2の実施形態は、アクチュエータ(接続操作手段)25に設けられた押圧カム部(カム部材)25aの断面形状が第1の実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態における押圧カム部25aは、縦断面において略ハート形状を有しており、回動中心RCを中心として対称的な形状になされている。
【0035】
そして、図6に表されたようにアクチュエータ25が「待機位置」にある場合において、前記押圧カム部25aの下半縁部外表面に形成された下部カム面が下方に張り出す略円弧状に形成されているとともに、上半縁部外表面には二つの山形状部からなる上部カム面を有している。そして、その押圧カム部25aの下半縁部の下部カム面が固定ビーム12bのカム受入れ凹部12b3に滑動可能に接触配置されているとともに、当該押圧カム部25aの上半縁部の上部カム面が可動ビーム12aのカム受入れ凹部12a2に滑動可能に接触配置されている。
【0036】
そして、その「待機位置」(図6参照)にあるアクチュエータ(接続操作手段)25が「第1の作用位置」(図7参照)及び「第2の作用位置」(図8参照)のいずれかに向かって押し倒すようにして回動操作が行われると、上述した押圧カム部25aの回転半径が、固定ビーム12bと可動ビーム12aとの間において増大する方向に変化する構成になされていて、このような第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態とほぼ同様な作用・効果が得られる。
【0037】
また、この第2の実施形態の場合は、アクチュエータ25の回動中心と、押圧カム部25aの下半縁部外表面に設けられた下部カム面の円弧状の図形中心位置とが略一致するように設定されている。すなわち、アクチュエータ25を「待機位置」から「作用位置」まで回動操作させても、押圧カム部25aの下部カム面が接触する固定ビーム12bのカム受入れ凹部12b3からアクチュエータ25の回動中心までの距離が略一定のままに維持されつつ押圧カム部25aの回動が行われる構成が採用されているものであるから、滑らかな回動操作を行うことができる。
【0038】
[第3の実施形態]
さらに、上述した第1及び第2の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付した図9〜図11にかかる第3の実施形態においては、アクチュエータ(接続操作手段)25に設けられた押圧カム部(カム部材)25aの断面形状は第2の実施形態と同様であるが、可動ビーム12a及び固定ビーム12bに設けられたカム受入れ凹部12a3,12b4の凹形状が異なっている。すなわち、本実施形態におけるカム受入れ凹部12a3,12b4は、前後方向(図9の左右方向)に二つの凹部が並設された配置になされており、押圧カム部25aの下半縁部が固定ビーム12bに設けられた二つのカム受入れ凹部12b4,12b4どうしの間部分の山形状部に接触配置されている。
【0039】
一方、押圧カム部25aの上半縁部に設けられた二つの山形状部は、可動ビーム12aに設けられた二つのカム受入れ凹部12a3,12a3に対して接触・離間するように配置されている。すなわち、アクチュエータ(接続操作手段)25が「待機位置」にある場合には(図9参照)、押圧カム部25aの上半縁部に設けられた二つの山形状部のいずれも可動ビーム12aのカム受入れ凹部12a3,12a3から下方に離間した状態に配置される。これに対して、アクチュエータ25が第1及び第2の「作用位置」のいずれかにある場合には(図10及び図11参照)、前記押圧カム部25aが立ち上げられることから、当該押圧カム部25aの上端部が可動ビーム12aのカム受入れ凹部12a3,12a3の一方側に滑動自在に接触配置されるようになっている。このような第3の実施形態においても、上述した第1及び第2の実施形態とほぼ同様な作用・効果が得られる。
【0040】
また、この第3の実施形態の場合は、上述した可動ビーム12a及び固定ビーム12bに形成されたカム受入れ凹部12a3及び12b4の凹形状が、押圧カム部25aのコネクタ前後方向における両端部分の凸形状と略一致するように形成されている。従って、アクチュエータ25を「待機位置」から「作用位置」まで回動操作を行うときに、押圧カム部25aの両端部分のそれぞれが、当該押圧カム部25aの端部形状と略一致する形の可動ビーム12aのカム受入れ凹部12a3及び固定ビーム12bのカム受入れ凹部12b4に円滑に入り込んでいき、それら両カム受入れ凹部12a3,12b4によって押圧カム部25aを挟み込む形となるので、アクチュエータ25を「作用位置」で確実かつ安定的に保持することとなる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0042】
例えば上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される接続対象物として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)用配線板、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0043】
また、上述した各実施形態における接続操作手段は、コネクタ後端側に配置されているが、接続操作手段(アクチュエータ)が、前端側部分に配置された電気コネクタや、前端側部分と後端側部分との間部分に接続操作手段(アクチュエータ)が配置された電気コネクタに対しても本発明は同様に適用することが可能である。
【0044】
また、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、形状が同一な導電コンタクトを用いたものであるが、異なる形状の導電コンタクトを用いたものであっても同様に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、各種電気機器に使用する多種多様な電気コネクタに対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 電気コネクタ
11 本体ハウジング
11a 対象物挿入口
11b 部品取付口
12 導電コンタクト
12a 可動ビーム
12a1 端子接触凸部
12a2 カム受入れ凹部
12a3 カム受入れ凹部
12b 固定ビーム
12b1 端子接触凸部
12b2 接続端子部
12b3 カム受入れ凹部
12c 連結支柱部
14 接続対象物(FPC又はFFC)
15 アクチュエータ(接続操作手段)
15a 押圧カム部(カム部材)
15b 開閉操作部
25 アクチュエータ(接続操作手段)
25a 押圧カム部(カム部材)
P 主配線基板
RC 回動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ハウジングから立ち上げられた状態の待機位置にある接続操作手段を、前記本体ハウジングの表面に略沿った状態の作用位置まで傾倒するように回動操作して、前記本体ハウジングの内部に挿入された接続対象物の挟持を行うように構成された電気コネクタにおいて、
前記接続操作手段は、前記待機位置にある状態から、前記接続対象物の挿入方向における上流側及び下流側の双方に傾倒可能となるように構成されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記接続操作手段は、前記本体ハウジングの内部に多極状をなすように装着された導電コンタクトを回動時に変位させるカム部材を有し、
前記カム部材が、前記接続操作手段の回動中心に関して略対称な形状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記接続操作手段の作用位置が、前記接続対象物の挿入方向における下流側に接続操作手段を傾倒させた第1の作用位置と、上流側に傾倒させた第2の作用位置と、を有していることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記接続操作手段の回動中心と、前記カム部材の外表面に設けられたカム面の図形中心とが略一致するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記接続操作手段を待機位置にある状態から作用位置へ傾倒した際に前記カム部材を保持する形状のカム受入れ凹部を備えていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記カム受入れ凹部は、前記導電コンタクトを構成する可動ビーム及び固定ビームに設けられていることを特徴とする請求項5記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−40296(P2011−40296A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187242(P2009−187242)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(394009278)株式会社アイペックス (148)
【Fターム(参考)】