説明

電気回路

【課題】物理長の異なる複数の伝送線路において、電気長を等しくする。
【解決手段】半導体基板1上の薄膜絶縁体上に形成された物理長の異なる複数の伝送線路A、Bのうち、物理長の長いほうの伝送線路において、伝送線路を構成する信号線メタルと半導体基板1との間に低誘電率絶縁膜3を挟むことによって信号伝搬速度を速くした領域を設け、この低誘電率絶縁膜3を挟んだ領域の長さを伝送線路Aの物理長に応じて調整することによって、すべての伝送線路の電気長を等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気回路に関し、複数の高速な電気信号を伝搬させる伝送線路を有する電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光伝送システムの高速化に伴い、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)やPM−QSPK(Polarization Multiplexing − Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature amplitude modulation)などの多値変調方式の研究開発が盛んになっている。これらの光信号を電気信号に変換する際には、光遅延干渉器や90度光ハイブリッドなどにより復調した複数の光信号を電気信号に変換する受光素子アレイが必要となる。
【0003】
受光素子アレイは、2つ以上の受光素子(すなわち複数の受光素子)からなり、主として入力光信号を光学的に結合する際に最も適した位置及び間隔となるように受光素子が配置される。一方、電気信号を取り出す信号線電極は、主として出力電気信号を電気的に配線する際に最も適した位置及び間隔となるよう配置される。そのため、受光素子の配置間隔と信号線電極の配置間隔とは異なる場合が多い。
【0004】
また、複数の入力光信号が受光素子に入射するタイミングは揃っているのが普通であるが、複数の電気信号が信号線電極からそれぞれ出力されるタイミングも揃っていることが求められる。特に、2本の伝送線路をペアにした差動伝送線路として用いる場合、タイミングの差は差動電気信号の波形劣化につながるため、出力電気信号のタイミングを極力揃えることが求められる。
【0005】
差動伝送線路の物理長を等しくする方法として、特許文献1に記載された方法が良く用いられる。この特許文献1に記載された方法は、2本の伝送線路を互いに並行して形成する方法である。この場合、互いの伝送線路の電気長も等しくなるため、いわゆる等長化配線を実現することができる。
【0006】
図5に、等長化配線を行った4アレイ受光素子の例を示す。4アレイ受光素子は、半導体基板1と、その半導体基板1に設けられた4つの受光素子2−1〜2−4と、これら受光素子2−1〜2−4に対応して設けられた4つの信号線電極4−1〜4−4と、受光素子2−1〜2−4と信号線電極4−1〜4−4とについて、対応するもの同士を電気的に接続する4本の伝送線路C1、C2とを備えている。なお、伝送線路C1、C2と半導体基板1との間には、低誘電率絶縁膜が設けられている(図示せず)。
【0007】
同図を参照すると、この例では、伝送線路C1、C2の長さを短くすることができる。しかし、その代わりに本例では、特に伝送線路C2の曲げ角度が鋭くなる場合がある。
【0008】
また、図6に、等長化配線を行った4アレイ受光素子の別の例を示す。この例では、図5の場合よりも伝送線路C1、C2の曲げ角度は緩やかである。しかし、その代わりに本例では、伝送線路C1、C2の長さが図5の場合よりも長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3470020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の技術を用いて複数本の伝送線路を等長化する場合、伝送線路を短くしようとすると、上述した図5の場合のように、伝送線路の曲げ角度を鋭くしなければならない。伝送線路の曲げ角度を鋭くすると、その曲げ部分で電気信号の伝搬特性が劣化してしまう、という課題があった。
【0011】
また、伝送線路の曲げ角度を緩やかにしようとすると、上述した図5の場合のように、伝送線路を長くしなければならない。伝送線路を長くすると、伝搬損失が増加して電気信号の伝搬特性が劣化するという課題があった。加えて、伝送線路を長くすることにより、伝送線路を形成するための領域を広く確保しなければならない、という課題があった。
【0012】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は電気信号の伝搬特性を劣化させずに、複数本の伝送線路の等長化を実現することのできる電気回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明による電気回路は、複数の信号線入力電極と、複数の信号線出力電極と、前記複数の信号線入力電極と前記複数の信号線出力電極とについて対応するもの同士を接続する複数の伝送線路とが基板に形成されてなる電気回路であって、前記伝送線路の長さに応じた長さを有する所定誘電率の誘電体層を該伝送線路に設けたことを特徴とする。この構成によれば、低誘電率の絶縁層を、伝送線路の長さに応じて設けることにより、物理的な配線長にかかわらず、複数の伝送線路の電気的な配線長を同一にすることができる。
【0014】
前記複数の信号線入力電極の代わりに複数の受光素子を備え、複数の伝送線路は前記複数の受光素子と前記複数の信号線出力電極とについて対応するもの同士を接続し、対応する受光素子からの信号を対応する信号線出力電極に導出するようにしてもよい。この構成によれば、電気回路が複数の受光素子を含む場合であっても、複数本の伝送線路の等長化を実現することができる。
【0015】
また、前記誘電体層は、前記複数の伝送線路それぞれに対して設け、前記複数の伝送線路それぞれの長さに応じた長さを有していてもよい。この構成によれば、低誘電率の絶縁層を、各伝送線路の長さに応じて設けることにより、物理的な配線長にかかわらず、複数の伝送線路の電気的な配線長を同一にすることができる。
【0016】
ここで、前記誘電体層の誘電率を、前記基板の誘電率よりも低くすることで、物理的に異なる配線長の伝送線路の信号伝搬速度を調整することができ、複数の伝送線路の電気的な配線長を同一にすることができる。
【0017】
また、前記所定誘電率の誘電体層が前記伝送線路に沿って設けられることにより、その伝送線路と共に前記信号の伝送線路が形成され、前記誘電体層の長さは他の伝送線路に対して設けられている誘電体層の長さと異なるようにしてもよい。この構成によれば、複数の伝送線路について、所望の特性および電気長を実現することができる。
【0018】
さらに、前記所定誘電率の誘電体層を、基板と前記伝送線路との間に設けてもよい。この構成によれば、伝送線路についてマイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を実現することができ、その部分の信号伝搬速度を高め、電気的な配線長を他の伝送線路と同一にでき、所望の特性を得ることができる。
【0019】
要するに本発明は、複数本の伝送線路を等長化する際に用いて好適な技術であり、異なる誘電率を持つ2つ以上の誘電体を用いた伝送線路を形成することによって、物理長の異なる複数本の伝送線路において等しい電気長を実現することができる。例えば、半導体集積回路の場合、半導体基板上の薄膜絶縁体上、または誘電体基板上に形成された物理長の異なる複数の伝送線路のうち、物理長の長いほうの伝送線路において、信号線導体と薄膜絶縁体または誘電体基板との間に低誘電率絶縁膜を挟むことによって信号伝搬速度を速くした領域を設けている。そして、この低誘電率絶縁膜を挟んだ領域の長さを伝送線路の物理長に応じて調整することによって、すべての伝送線路の電気長を等しくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電気信号の伝搬特性が向上し、かつ伝送線路の占有面積が減少する、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態である半導体集積回路の構成例を示す平面図である。
【図2】本発明の第1および第2の実施の形態である半導体集積回路の断面構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である半導体集積回路の構成例を示す平面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態である電気回路の構成例を示す平面図である。
【図5】従来の伝送線路の構成例を示す平面図である。
【図6】従来の伝送線路の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(電気回路の構成例)
図1は、本発明の第1の実施の形態である半導体集積回路の構成例を示す平面図である。本実施形態の半導体集積回路は、4アレイ受光素子に適用したものである。同図を参照すると、本実施形態による半導体集積回路は、半導体基板1と、4つの受光素子2−1〜2−4と、これら受光素子それぞれに対応して設けられ対応する受光素子からの信号を導出するための4つの信号線電極4−1〜4−4と、これら受光素子および信号線電極について、対応するもの同士を接続する伝送線路Aおよび伝送線路Bと、伝送線路Aに沿って設けられその伝送線路Aと共に信号の伝送線路を形成するための誘電体層である低誘電率絶縁膜3とを備えている。ここでは、受光素子2−1と信号線電極4−1、受光素子2−4と信号線電極4−4、がそれぞれ対応しており、伝送線路Aによって接続されている。また、受光素子2−2と信号線電極4−2、受光素子2−3と信号線電極4−3、がそれぞれ対応しており、伝送線路Bによって接続されている。これにより、信号線電極4−1〜4−4は、対応する受光素子2−1〜2−4からの信号を出力するための電極として用いられる。
【0023】
半導体基板1は、InPやGaAs、GaP、GaSb、InAs、Ge、Siなど受光素子の作製に適した材料からなる。そして、その比誘電率は、例えばInPでは12.4であり、比較的高い誘電率を持つ。
【0024】
また、受光素子2−1〜2−4は、半導体基板1上に形成されている。これら受光素子2−1〜2−4は、半導体基板1上に形成可能な材料の中から使用波長に適したものを用いて形成する。例えば、1.55μm帯用の受光素子であれば、InPやInGaAs、InAlAs、InGaAsP、InGaAlAsなどの材料を用いる。
【0025】
また、低誘電率絶縁膜3は、例えば、BCBやSiOC、SiOF、SiO、SiNなどの半導体用層間絶縁膜材料として用いられる誘電体からなる。低誘電率絶縁膜3の比誘電率は、例えばBCBでは2.7である。すなわち、低誘電率絶縁膜3は、半導体基板1よりも低い誘電率を持つ。
【0026】
また、伝送線路Aは、低誘電率絶縁膜3上に形成された伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を採用して形成されている。また伝送線路Bは、低誘電率絶縁膜3上ではなく、半導体基板1上に形成された伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構成を採用して形成されている。また、信号線電極は、半導体基板上に形成し、外部の信号線(図示せず)との接続部分として用いられる。
【0027】
ここで、伝送線路Aを低誘電率絶縁膜3上に形成することにより、伝送線路Aの実効誘電率を伝送線路Bよりも低くすることができる。すると、伝送線路Aの信号伝搬速度は伝送線路Bよりも速くなる。従って、伝送線路Aの物理長を伝送線路Bよりも長くしつつ、伝送線路Aの電気長が伝送線路Bの電気長と等しくなるよう設計することが可能になる。つまり、伝送線路Aの電気長が伝送線路Bの電気長と等しくなるように、低誘電率絶縁膜3の長さが決定される。要するに、伝送線路Aに対して誘電体層である低誘電率絶縁膜3が設けられており、所定誘電率の低誘電率絶縁膜3は伝送線路Aの長さに応じた長さを有していることになる。
【0028】
従って、各伝送線路の曲げ角度を緩やかに保ったまま伝送線路の長さが短くなるよう設計することが可能になり、急激な曲げによる伝搬特性の劣化を無くし、かつ伝搬損失を低減し、かつ伝送線路を形成するための領域を小さくすることが可能になる。
(電気回路の断面構成例)
図2は、本発明の第1の実施の形態における伝送線路Aの部分、および、伝送線路Bの部分、を示す断面図である。ここでは例として、伝送線路Aはグラウンデッドコプレーナ導波路の構造の場合、伝送線路Bはコプレーナ導波路の構造の場合を示している。また、半導体基板1上に用いる薄膜絶縁体材料による薄膜絶縁膜5には、SiOやSiNなどを用いることができる。
【0029】
同図において、伝送線路Aは低誘電率材料による低誘電率絶縁膜3上に形成されている。すなわち、半導体基板1上に、薄膜絶縁膜5、グラウンドメタルGM2、低誘電率絶縁膜3が順に積層された構造になっており、伝送線路Aを構成する導体である信号線メタルMAは低誘電率絶縁膜3上に設けられている。なお、低誘電率絶縁膜3上の、信号線メタルMAが設けられていない部分には、グラウンドメタルGM1が形成されている。
【0030】
また、伝送線路Bを構成する導体である信号線メタルMBは半導体基板1の上方に形成されている。半導体基板1上方の、信号線メタルMBが設けられていない部分には、グラウンドメタルGM2が形成されている。
【0031】
ここで、信号線メタルMBと半導体基板1との間には薄膜絶縁体材料による薄膜絶縁膜5が設けられている。この薄膜絶縁膜5の厚さは十分薄いため、伝送線路Bの実効誘電率は、高い誘電率を持つ半導体基板によって主に決定される。従って、伝送線路Aの実効誘電率を、伝送線路Bの実効誘電率よりも低くすることができる。すると、伝送線路Aの信号伝搬速度は、伝送線路Bの信号伝搬速度よりも速くなる。従って、伝送線路Aの物理長を伝送線路Bよりも長くしつつ、伝送線路Aの電気長が伝送線路Bと等しくなるように設計することが可能になる。
(電気回路の他の構成例)
図3は、本発明の第2の実施の形態である半導体集積回路の構成例を示す平面図である。本実施形態の半導体集積回路は、8アレイ受光素子に適用したものである。同図を参照すると、本実施形態による半導体集積回路は、半導体基板1と、8つの受光素子2−1〜2−8と、8つの信号線電極4−1〜4−8と、これら受光素子および信号線電極について、対応するもの同士を接続する伝送線路A1〜A3および伝送線路Bと、低誘電率絶縁膜3とを備えている。
【0032】
ここでは、受光素子2−1と信号線電極4−1、受光素子2−8と信号線電極4−8、がそれぞれ対応しており、伝送線路A1によって接続されている。また、受光素子2−2と信号線電極4−2、受光素子2−7と信号線電極4−7、がそれぞれ対応しており、伝送線路A2によって接続されている。さらに、受光素子2−3と信号線電極4−3、受光素子2−6と信号線電極4−6、がそれぞれ対応しており、伝送線路A3によって接続されている。なお、受光素子2−4と信号線電極4−4、受光素子2−5と信号線電極4−5、がそれぞれ対応しており、伝送線路Bによって接続されている。
【0033】
ここで、伝送線路A1、A2、A3は、一部が低誘電率絶縁膜3上に形成され、その他の部分が半導体基板1上に形成された伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を採用して形成されている。また、伝送線路Bは、半導体基板1上に形成した伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を採用して形成されている。半導体基板1と、受光素子2−1〜2−8と、低誘電率絶縁膜3、信号線電極4−〜4−8については、第1の実施の形態の場合と同じであるためその説明を省略する。
【0034】
ここで、伝送線路A1、A2、A3は、低誘電率材料による低誘電率絶縁膜3上に形成した部分と半導体基板1上に形成した部分との長さが異なる。伝送線路A1は、伝送線路A2、A3よりも低誘電率材料上に形成された部分が長くなるようにする。またA2はA3よりも低誘電率材料上に形成された部分が長くなるようにする。これにより、物理長は伝送線路A1、A2、A3、Bの順で長く、電気長は伝送線路A1、A2、A3、Bのいずれもが等しくなるよう設計することが可能になる。
【0035】
つまり、複数の伝送線路A1、A2、A3それぞれの長さに応じた長さを有する所定誘電率の低誘電率絶縁膜3が複数の伝送線路A1、A2、A3それぞれに対して設けられていることになる。
【0036】
なお、本実施の形態における伝送線路A1、A2、A3の断面構成は図2の伝送線路Aと、伝送線路Bの断面構成は図2の伝送線路Bと、それぞれ同一であるためその説明を省略する。
(電気回路の他の構成例)
図4は、本発明の第3の実施の形態である電気回路の構成例を示す平面図である。本実施形態の電気回路は、8アレイ受光素子の出力信号を伝搬させる場合に適用したものである。同図を参照すると、本実施形態による電気回路は、セラミックス基板10と、8つの信号線入力電極6−1〜6−8と、8つの信号線出力電極7−1〜7−8と、これら信号線入力電極6−1〜6−8および信号線出力電極7−1〜7−8について、対応するもの同士を接続する伝送線路A1〜A3および伝送線路Bと、低誘電率絶縁膜3を備えている。
【0037】
また、8アレイ受光素子が形成されている半導体基板1は、8つの受光素子2−1〜2−8と、8つの信号線電極9−1〜9−8と、これら受光素子および信号線電極について、対応するもの同士を接続する8本の伝送線路Dとを備えている。本例では、8本の伝送線路Dの長さは等しいものとする。
【0038】
また、信号線電極9―1〜9−8と信号線入力電極6−1〜6−8との対応する電極同士が、8本の配線8によって電気的に接続されている。本例では、8本の配線8の長さは等しいものとする。
【0039】
ここで、伝送線路A1、A2、A3は、一部が低誘電率絶縁膜3上に形成され、その他の部分がセラミックス基板10上に形成された伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を採用して形成されている。また、伝送線路Bは、前記セラミックス基板10上に形成した伝送線路であり、マイクロストリップ線路やコプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロット線路などの構造を採用して形成されている。
【0040】
ここで、伝送線路A1、A2、A3は、低誘電率材料による低誘電率絶縁膜3上に形成した部分とセラミックス基板10上に形成した部分との長さが異なる。伝送線路A1は、伝送線路A2、A3よりも低誘電率材料上に形成された部分が長くなるようにする。またA2はA3よりも低誘電率材料上に形成された部分が長くなるようにする。これにより、物理長は伝送線路A1、A2、A3、Bの順で長く、電気長は伝送線路A1、A2、A3、Bのいずれもが等しくなるよう設計することが可能になる。
【0041】
つまり、複数の伝送線路A1、A2、A3それぞれの長さに応じた長さを有する所定誘電率の低誘電率絶縁膜3が複数の伝送線路A1、A2、A3それぞれに対して設けられていることになる。
【0042】
なお、本実施の形態における伝送線路A1、A2、A3の断面構成は図2の伝送線路Aの半導体基板1をセラミック基板5に置き換えたものと、伝送線路Bの断面構成は図2の伝送線路Bの半導体基板1をセラミック基板5に置き換えたものと、伝送線路Dの断面構成は図2の伝送線路Bと、それぞれ同一であるためその説明を省略する。
(変形例)
本発明に関しては、上述した第1および第2および第3の実施の形態に限らず、種々の変形例が考えられる。
(1)上述した第1および第2および第3の実施の形態において、半導体基板やセラミックス基板の上に薄膜絶縁体材料を形成する構造を用いて説明したが、絶縁体が不要であれば、薄膜絶縁体材料を使用しなくても良い。
(2)上記では、伝送線路A(A1〜A3)と伝送線路Bとの実効誘電率を支配する主たる誘電体材料として低誘電率絶縁膜と半導体やセラミックスを用いたアレイ受光素子を実現する方法について説明したが、これに限定されず異なる実効誘電率を実現することが可能な材料を用いれば良い。例えば、ガラスエポキシやPTFE(Polytetrafluoroethylene)、アルミナ、石英、サファイア、ポリイミド、液晶ポリマーなどを誘電体材料に用いたプリント基板上の伝送線路について、本発明を適用しても良い。
(3)低誘電率絶縁膜が2つ以上の層から構成されていても良い。
(4)上記は、全ての伝送線路の電気長を等しくする場合について説明したが、異なる電気長を実現するための方法として用いても良い。つまり、信号伝搬速度を調整したい伝送線路について本発明を適用し、低誘電率絶縁膜を設ければ、物理長にかかわらず、電気長を調整することができる。
(5)第2および第3の実施の形態において、8本の伝送線路を例にして説明したが、伝送線路の本数は8本より多くても良く、あるいは少なくても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体基板
2−1〜2−8 受光素子
3 低誘電率絶縁膜
4−1〜4−8 信号線電極
5 薄膜絶縁膜
6−1〜6−8 信号線入力電極
7−1〜7−8 信号線出力電極
8 配線
9−1〜9−8 信号線電極
10 セラミックス基板
A、A1〜A3、B、C1、C2、D 伝送線路
GM1、GM2 グラウンドメタル
MA、MB 信号線メタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号線入力電極と、複数の信号線出力電極と、前記複数の信号線入力電極と前記複数の信号線出力電極とについて対応するもの同士を接続する複数の伝送線路とが基板に形成されてなる電気回路であって、前記伝送線路の長さに応じた長さを有する所定誘電率の誘電体層を該伝送線路に設けたことを特徴とする電気回路。
【請求項2】
前記複数の信号線入力電極の代わりに複数の受光素子を備え、複数の伝送線路は前記複数の受光素子と前記複数の信号線出力電極とについて対応するもの同士を接続し、対応する受光素子からの信号を対応する信号線出力電極に導出するようにしたことを特徴とする電気回路。
【請求項3】
前記誘電体層は、前記複数の伝送線路それぞれに対して設けられ、前記複数の伝送線路それぞれの長さに応じた長さを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気回路。
【請求項4】
前記誘電体層の誘電率は、前記基板の誘電率よりも低いことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項5】
前記所定誘電率の誘電体層が前記伝送線路に沿って設けられることにより、その伝送線路と共に前記信号の伝送線路が形成され、前記誘電体層の長さは他の伝送線路に対して設けられている誘電体層の長さと異なることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電気回路。
【請求項6】
前記所定誘電率の誘電体層を、前記基板と前記伝送線路との間に設けたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電気回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−66268(P2011−66268A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216583(P2009−216583)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】