説明

電気絶縁材料組成物及び金属導体箔とからなる積層材料

【課題】半導体などを搭載し各種電子機器、産業用機器、通信機器、自動車用電子機器等に利用され、特に放熱性、耐湿性、耐熱性、保存性に優れたプリント配線板用の絶縁材料を提供することを目的とする。
【解決手段】ビニル化合物(A−a)と共役ジエン化合物(A−b)とからなるブロック共重合体のエポキシ変性物(A)とラジカル反応性不飽和基を有しかつ極性を持った結合基を有してなる分子量5,000から50,000の化合物(B)とを有機過酸化物で硬化させてなる電気絶縁材料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体などを搭載し各種電子機器、産業用機器、通信機器、自動車用電子機器等に利用され特に耐湿性、耐熱性、放熱性、保存性に優れたプリント配線板用の絶縁材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電製品や産業機器、OA機器、車載用電子機器の小型化、省スペース化、高付加価値化が求められ、従来よりも過酷な温度・湿度・電気的環境下において使用に耐えうる絶縁材料が要求されており、特に電気絶縁性、耐電圧性、放熱性及び部品のはんだ付け部分での接続信頼性が高い絶縁材料が望まれている。これらに対応するため高耐熱性、高放熱性、低膨張性、低吸水性等の特性を付与した新規なプリント配線板材料として、低吸水性樹脂と無機フィラーを配合した組成物をガラスクロスに含浸させ銅箔と共に積層をした絶縁材料が提案されている。例えば、特許文献1では高分子熱可塑性ポリブタジエン系エラストマーと液状ポリブタジエン及び無機粒状充填剤をガラスクロス等のウェブに含浸させたプリプレグを使い積層板を提案している。このものはプリプレグに通常必要なBステージ硬化をしなくてもプリプレグが非粘着となるように無機フィラーを配合しており、ベタ付かず積層工程での取り扱いを有利にしている。また無機フィラーを入れることにより加熱硬化時の流動性を抑え積層時の厚み制御をしやすくしている。
しかしながら、この方法では含まれる共役ジエンにもとづく不飽和結合を殆どすべて反応させており、ガラス転移点は非常に高く耐熱性は高いが架橋密度が高いため、脆い絶縁層となり配線板の加工性が悪い。
また積層における硬化反応が過酸化物硬化であり低分子の液状ブタジエンを配合しているため絶縁材料の硬化収縮による内部歪の発生で基板の反りや変形が発生する。このため後工程で加工作業がしにくいなど問題がある。更には基本的に非極性の原料系であるため銅箔など他の金属との密着性が10N/cm以下と非常に低く、接着強度の長期信頼性が欠けている。引用した本特許では上記目的のため粒状充填材料として二酸化チタン、アルミナなどを全体の配合組成の内5−60容量%充填しているが熱伝導性を発現させる目的として添加しておらず、明細書にも何ら言及していない。
【0003】
一方、特許文献2では共役ジエン系共重合体のエポキシ変性物とアリル基含有化合物およびビスマレイミドなどの硬化性樹脂をシート化し有機過酸化物などで硬化して非極性の化合物を使う事で、低誘電性のプリント配線板用絶縁材料を提供している。
これらは高周波対応材料として低誘電率にしてその目的を達成しているが、銅箔との接着強度が10N/cm程度と弱く金属導体箔などの接着信頼性にかけるものである。
また無機フィラーを充填しているが流動性を抑える目的でありフィラー粒径も小さく充填混合し難く高充填が出来ない。またフィルム形成能を出すため配合組成の粘度を高めているため、無機フィラーを配合する事で更に増粘して、フィラーの高充填はとても困難である。また記載内容には放熱性の特徴については何ら記載していない。
【特許文献1】
特開平8−208856号公報
【特許文献2】
特開2001−81429号公報
【0004】
一方、プリント配線板用の絶縁材料には、性能、使用実績、設備、コストからエポキシ樹脂が主に利用されてきた。エポキシ樹脂は半硬化状態(Bステージ)であるプリプレグ化されているのが一般的である。このBステージ状態では、製造によるロットぶれや保存温度及び保存期間でも品質がばらつくため、基板積層時の製造条件管理はきわめて煩雑であり、製品品質が一定になりにくい。更に、完成した配線板についても、エポキシ材料が持っている本質的な吸湿性のために保管中に吸湿して、部品実装の際に基板の膨れが発生して不良の原因になっており、その為防止策として事前に加熱乾燥をするベーキング処理を行っている。
【0005】
またエポキシ樹脂系絶縁材料の吸湿性が高いので部品実装された回路基板が絶縁性能の低下を起こし電子機器の誤動作などトラブルの発生やイオンマイグレーションの発生でショートするなど重大な欠陥の発生が懸念されている。
更に近年、電子機器が小型化になることで集中する熱の対策として絶縁材料のエポキシ樹脂に熱伝導率の高い無機フィラーを高充填し高熱伝導性の金属ベースプリント配線板材料が使用されている。
しかしながらエポキシ樹脂そのものの吸湿性に加え、無機フィラーを高充填するとフィラーと樹脂の界面が増加し密着性の弱い界面が多くなり接着性と吸湿性が悪化してしまう。また界面における欠陥の発生も増加する。
その結果、高電圧、高電気容量の元で厳しい温度・湿度の使用環境下で高信頼性が要求される金属ベースプリント配線板では絶縁性能の低下が起こり、重大な電気的トラブルの発生が懸念され信頼性の点で大きな問題を抱えており使用個所の制限がされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記の欠点を解決すべく種々検討した結果、共役ジエン系樹脂とウレタン結合及び/又はエステル結合を含むオリゴマーとを使用することによって、かかる絶縁性能や加工性に関わる吸湿性の問題を低減し銅箔との接着力を確保しながら、プリプレグを長期保存においても安定であることを見出し、本発明を完成したもので、本発明の目的は、従来のエポキシ樹脂系のプリント配線板材料に比べ吸水率が低く、優れた電気絶縁性、耐イオンマイグレーション性、接着性及び保存安定性を有する電気絶縁材料組成物であり、該電気絶縁材料の配合組成物をそのまま又は無機フィラーを配合してシート状に成形し、必要によりガラスクロスに含浸してプリプレグとして金属導体箔や金属ベース基材等と積層してプリント配線板として利用することができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ビニル化合物(A−a)と共役ジエン化合物(A−b)からなるブロック共重合体のエポキシ変性物(A)とラジカル反応性不飽和基を有しかつ極性を持った結合基を有してなる分子量5,000から50,000の化合物(B)とを有機過酸化物で硬化させてなる電気絶縁材料組成物である。
好ましい化合物(B)としては、水酸基含有共役ジエン重合体(B−c)とジイソシアナート化合物(B−d)からなり分子量5,000から50,000のウレタン結合を有する化合物(B1)、末端水酸基を有し不飽和基含有のエステル化合物(B−e)とジイソシアネート化合物(B−d)からなり分子量5,000から50,000のウレタン結合及びエステル結合を有する化合物(B2)、水酸基含有重合体(B−c)と末端水酸基を有し不飽和基含有エステル化合物(B−e)の混合物とジイソシアネート化合物(B−d)からなり分子量5,000から50,000のウレタン結合及びエステル結合を有する化合物(B3)及び末端エポキシ基含有共役ジエン重合体(B−f)と末端カルボキシル基含有化合物(B−g)とからなるポリエステル化合物(B4)、又は末端カルボキシル基含有共役ジエン重合体(B−h)と末端エポキシ基含有化合物(b−I)からなるポリエステル(B5)で分子量5,000から50,000の請求項1に記載の電気絶縁材料組成物。
【0008】
また、本発明は、化合物(A)を95―65重量部に対し化合物(B)を5―35重量部配合して有機過酸化物で硬化してなる電気絶縁材料組成物に係り、化合物(A)と化合物(B)を前記配合下で硬化させる際に二重結合を1つ以上有する化合物(C)を化合物(A)+化合物(B)100部に対して20部以下配合して有機過酸化物で硬化してなる電気絶縁材料組成物では硬化性、接着性が良好で好ましい。
更に、本発明は化合物(A)と化合物(B)、及び必要なら化合物(C)を前記範囲で配合してなる組成物をガラスクロスに含浸して金属導体箔を少なくとも片面に配置して加熱加圧して硬化した積層絶縁材料係り、化合物(A)と化合物(B)及び必要なら化合物(C)を上記範囲で配合してなる配合組成60〜10容量部に対して無機の熱導伝性フィラーを40―90容量%含有した組成物の片面に金属ベース材料を、他方に金属箔を配置して加熱加圧して硬化した積層絶縁材料に係る。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についての化合物の配合例を具体的に示して説明をするが、本発明はこれによって何ら制限するものではない。
本発明の特徴はビニル化合物(A−a)と共役ジエン化合物(A−b)とからなるブロック共重合体のエポキシ変性物(A)を好ましくは95から65重量部に対し、ラジカル反応性不飽和基と有極性結合を有する化合物(B)として末端水酸基を有し不飽和結合を有する重合体及び共重合体(B−c)とジイソシアナート化合物(B−d)からなるウレタン結合を有する化合物(B1)、末端水酸基を有し不飽和基含有のエステル化合物(B−e)とジイソシアナート化合物(B−d)からなるウレタン結合及びエステル結合を有する化合物(B2)、上記(B−c)と不飽和ポリエステルポリオールで代表される(B−e)とジイソシアナート化合物(B−d)から成るウレタン結合とエステル結合を有する化合物(B3)、更に末端エポキシ基含有共役ジエン重合体(B−f)と末端カルボキシル基含有化合物(B−g)とからなるポリエステル化合物(B4)、又は末端カルボキシル基含有共役ジエン重合体(B−h)と末端エポキシ基含有化合物(B−i)からなるポリエステル(B5)
などのB1からB5の化合物を1種類以上、好ましくは5−35重量部配合して、化合物中に含まれるラジカル反応性不飽和基を有機過酸化物で架橋硬化させる方法で耐吸湿性、保存安定性、接着性の向上を達成させることが出来、信頼性の高い電気絶縁材料を提供するものである。
上記化合物(A)と化合物(B)からなる配合100部に対して末端に1つ以上の二重結合を有する化合物(C)を架橋助剤として20部以下加えて絶縁層の反応性、接着性、硬さを制御したり、耐熱性を向上させることが出来る。
【0010】
上記化合物(A)+化合物(B)又は化合物(A)+化合物(B)+化合物(C)に有機過酸化物を配合し必要により有機溶剤などを使用して調合し(有機溶媒を使用した場合は乾燥して)例えば10−200μmの厚みにした後銅箔などと積層硬化してプリント配線板材料とする。
その他上記配合材料をガラスクロスに含浸してプリプレグとし銅箔などの金属導体箔と組み合わせて積層硬化してプリント配線板材料とすることも可能である。
また上記化合物(A)+化合物(B)又は化合物(A)+化合物(B)+化合物(C)の所定量配合10−60容量%に対して熱伝導性の高いアルミナなどの無機フィラーを90−40容量%配合充填して、必要により有機溶媒などを使用して調整した後塗工(乾燥)して例えば30−200μmの絶縁材料厚みとしアルミニウムなどの金属ベース基材と組み合わせて金属ベース基材板として利用できる。量産時にはこれらの塗工方法としては無溶剤系の場合はニーダなどで加熱溶融混練後ダイスまたは加熱ロールで銅箔などにシート状に塗布する方法があり、また溶媒を使用した場合はロールコータなどで塗布することができる。
これはパワー部品が発生する熱を効率的に放散させることが出来、電子機器の温度上昇を抑え信頼性を高めることができる。
更にシランカップリング剤やチタンカップリング剤を配合することでフィラー配合時の充填性や接着性を向上することが可能である。また、酸化劣化防止剤や、イオン吸着剤を添加して耐劣化性の向上、イオンマイグレーション性能を向上させたり、難燃剤の添加で難燃性を向上することができる。
【0011】
本発明の基本的な組成と配合に対して更に具体的な構成物質と配合の詳細について述べる。
化合物(A)はビニル化合物(A−a)と共役ジエン化合物(A−b)とからなるブロック共重合体のエポキシ変性物であり、ビニル化合物(A−a)としてはスチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどがあり、スチレンが溶解性、接着性、汎用性から好ましい。
また共役ジエン化合物(A−b)としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンがあげられる。使用される化合物(A)としてはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体が例示できる。これらブロック共重合体の二重結合を一部水添したものも耐熱性を向上でき使用しえる。
ここでエポキシ基の導入は過酢酸により共役ジエン共重合体の不飽和二重結合をエポキシ化する方法、グリシジル(メタ)アクリレートを共役ジエン共重合体の不飽和二重結合に反応させる方法などで合成されたものが利用できる。
そのときの分子量は5万から30万程度が望ましいが用途により使い分け特に限定するものではない。
【0012】
次にラジカル反応性不飽和基を有し有極性結合としてウレタン結合、エステル結合等をもつオリゴマーの例として以下に挙げられるがこれらに限定されるものではない。
水酸基含有共役ジエン重合体(B−c)とジイソシアナート化合物(B−d)からなるウレタン結合を有する化合物(B1)があり、これを構成するものとして末端水酸基を有する共役ジエン重合体(B−c)としては分子量200〜3,000のブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、それらのスチレンやアクリロニトリル共重合体、分子中にエポキシ基を有するエポキシ化ポリブタジエンポリオールをあげることが出来る。
これらの共役ジエン重合体は1,4−トランス体、1,4−シス体、1,2−ビニル体のどのような形態でも使用しえるが、1,2−ビニル体を用いると硬化反応が早い特徴があり、1,4−体を用いると、接着性が高まる特徴がある。
これと反応させるジイソシアナート化合物(B−d)として例をあげると芳香族系としてはトルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどがあり脂肪族系としてはヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート、その他トルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートの水添物も利用できる。
【0013】
耐熱性と無黄変を考慮すると脂肪族ジイソシアナートや水添加イソシアナートを使用することが好ましいがこれらに限定されるものではない。
これら(B−c)と(B−d)を反応させて出来るオリゴマーの分子量は好ましくは5,000から100,000で更に好ましくは5,000から50,000のものが良い。この分子量により、絶縁材料のべたつき、接着性の制御と無機フィラーを充填する時のフィラー界面の濡れ性や熱伝導率の改良に効果がある。末端水酸基を有し不飽和基含有のエステル化合物(B−e)としては、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオールなどのグリコールとの反応生成物で、所謂不飽和ポリエステルが例示される。ジカルボン酸としてフタル酸やナフタレン骨格を有するジカルボン酸を併用すると耐熱性を向上できるし、ダイマー酸を併用したエステル化合物は、エポキシ変性物(A)との相溶性を改善することが出来るので好ましい。
また末端水酸基含有共役ジエン重合体(B−c)とエステル化合物(B−e)を任意の比率で混合させ、ジイソシアネート化合物(B−d)と反応させることにより得られるウレタン結合と、エステル結合を有する化合物(B3)は接着性、耐熱性などが向上しえる。
【0014】
更に分子中及び末端にエポキシ基を有し、そのエポキシ官能基数が2以下である共役ジエン重合体(B−f)と末端にカルボキシル基を有しその官能基数が2以下である化合物(B−g)とからなるポリエステル化合物(B4)または分子中及び末端にカルボキシル基を有し、そのカルボキシル官能基数が2以下である共役ジエン重合体(B−h)と末端にエポキシ基を有しその官能基数が2以下である化号物(B−i)とからなるポリエステル化合物(B5)を用いると、その強い極性により接着性が向上する。
エポキシ基を有する共役ジエン重合体(B−f)としてエポキシ化ポリブタジエン、末端エポキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、及びこれらのイソプレン重合体などが例示できる。
またカルボキシル基を有する化合物(B−g)としてはマレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸などが挙げられる。
カルボキシル基を有する共役ジエン重合物(B−h)として末端カルボン酸変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、末端カルボン酸変性ポリブタジエン、末端カルボン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体、及びこれらのイソプレン重合体が例示できる。
エポキシ基を含有する化合物(B−i)としてビスフェノールAおよびF型のエポキシ化合物、またはその水添物が挙げられる。
ここに記述したエポキシ化合物およびカルボキシル化合物の構造としては、これらに限定されるものではない。それぞれ不飽和結合を有するものと含有しないもので組み合わせて反応させ、目的の不飽和結合を分子中に有したオリゴマー領域のエステル化合物(B1)から(B5)を得る。これらの分子量は5,000から100,000で望ましくは5,000から50,000が好ましい。化合物(B)は化合物(A)との安定的なブレンドを確保するため分子量は上記範囲に納める事が好ましい。
【0015】
末端に二重結合を1つ以上有する化合物(C)としては、一分子中に1つ以上のビニル基、アリル基を有する化合物であり、架橋助剤として知られているものが使用できる。例えば、ラウリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、の様な一官能以上の化合物を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
その他として、一般に、ジエポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる、エポキシアクリレート等が使用できる。例えば、ビスフェノールAタイプのジグリシジルエーテルとメタクリル酸を反応させてなる化合物などが挙げられる。また、1官能のビニル化合物を用いると靭性の改良がはかられる特徴もある。
【0016】
化合物(A)、化合物(B)と必要により化合物(C)及び無機フィラーを上記の範囲で配合した組成物を硬化させるためには以下に例を示す重合開始剤を使う事が出来る。
ここで言う重合開始剤としては有機過酸化物であるジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等に分類される化合物を例示できる。その使用量は配合樹脂100部に対して好ましくは0.01〜10部で硬化物の硬さ、長期安定性などから更に好ましくは1〜6部使用する。
【0017】
これらの樹脂を用いて積層材料を作りプリント配線板材料とする方法の例としては以下の組み合わせが一般的に考えられるがこれらに限定されるものではない。
▲1▼該電気絶縁材料組成物をシート状にして金属導体箔とから成る片面及び両面積層材料、
▲2▼電気絶縁材料組成をシート状にして片面は金属導体箔とし他方は鉄、アルミなどの金属材料から成る金属ベース積層材料、
▲3▼ガラスクロスに該電気絶縁材料組成物を含浸して金属導体箔とから成る片面及び両面積層材料、
▲4▼ガラスクロスに該電気絶縁材料組成物を含浸して金属導体箔と鉄、アルミなどの金属材料から成る金属ベース積層材料、
▲5▼該電気絶縁材料組成物と無機フィラーを充填して成る混合物をシート状にして金属導体箔とから成る片面及び両面積層材料、
▲6▼該電気絶縁材料組成と無機フィラーを充填して成る混合物をシート状にして金属導体箔と鉄、アルミなどの金属材料から成る金属ベース積層材料、
▲7▼該電気絶縁材料組成物に無機フィラーを充填して成る混合物をガラスクロスに含浸したプリプレグと金属導体箔とから成る片面及び両面積層材料、
▲8▼該電気絶縁材料組成物に無機フィラーを充填して成る混合物をガラスクロスに含浸したプリプレグを金属導体箔と鉄、アルミなどの金属材料から成る金属ベース積層材料、
▲9▼上記▲1▼〜▲8▼の応用として金属コアの両面板及び多層板、ビルドアップ基板などを提供することができる。
金属導体箔との積層による積層材料の作成については化合物(A)と(B)及び必要により(C)と、更に必要により無機フィラーを配合しトルエン、MEK、DMF、MIBK、ブチルセロソルブ、メタノールなどの溶媒も必要により使用して調整した後、電気絶縁用ガラスクロスに含浸し(溶剤使用時には乾燥させ)必要な枚数を銅箔などの金属導体と共に積層し、加熱加圧して銅張り積層板を成形する。また無機フィラーを充填して放熱性を特徴とした金属ベース基板の製造においては化合物(A)化合物(B)及び必要により化合物(C)と無機フィラーを必要量配合しトルエン、MEK、DMF、MIBK、ブチルセロソルブ、メタノールなどの溶媒も必要により使用して調整した後、例えば金属導体箔などに塗工し(溶媒を使用した場合は乾燥させて)アルミニウムなどの金属ベース材料と重ね合わせた後、加熱加圧して銅張り積層板を成形するが配合した絶縁材料を金属ベース板側に塗布しても良く、また金属導体箔と金属ベース板の双方に塗布したものを積層してもかまわない。
【0018】
配合する無機フィラーはシリカ、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素などがあり配合に最適な粒子径、粒度分布、形状、充填量を決定し必要に応じてカップリング剤等を添加し配合して硬化させる。
配合については樹脂化合物(A)(B)と必要により(C)などの樹脂総量10−60容積%に対して90から40容積%配合することが出来、特性のバランスから無機フィラーは55から75容積%が好ましい。
その他ガラスクロス、無機フィラー、銅箔などとの接着力を向上させるためにシランカップリング剤等を添加すると良い。またイオンマイグレーションを抑制するためにイオン吸着剤を添加したり、酸化劣化防止のために老化防止剤を添加することも長期信頼性を上げるために使う事ができる。また難燃剤を添加して難燃性を上げることもできる。
【0019】
【実施例及び比較例】
以下の具体的実施例に基づいて本発明製造方法とその作用についてさらに詳細に説明するがこれらに限定されるものではない。
個々の配合を示す前に共通の化合物と操作方法についてその内容を示す。
化合物(A)としてダイセル化学工業(株)のエポキシ変性SBSがあり、下記を使用した。
エポフレンドA1010:エポキシ当量1040、スチレン/ブタジエン=40/60wt%
エポフレンドA1020:エポキシ当量 526、スチレン/ブタジエン=40/60wt%
化合物(B1)のオリゴマー(B1−RN)として不飽和結合を持ち末端水酸基を有するブタジエンポリオール:R45HT(出光石油化学(株))を94.5gトルエン溶媒に溶かし80〜90℃に加温し攪拌しながら、脂環式ジイソシアナートとしてノルボルネンジイソシアナート(三井化学(株))を5.5g滴下しながら反応させた。
なお触媒として錫触媒を溶液に対して、100ppm加え赤外吸収スペクトル(IR)で反応の完結を確認した。
できあがったウレタンオリゴマー(B1−RN)の分子量はおよそ20000であった。
また、同様にトルエンジイソシアナート(TDI)と末端OH基含有ブタジエンポリオール:G−3000(分子量3000)(日本曹達(株))を反応させて、分子量が約20000のウレタンオリゴマー(B1−GT)を得た。
化合物(C)として日本化成(株)のトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、無機フィラーとして昭和電工(株)のアルミナ:AS−50(平均粒径9μm)、(株)瀧森の結晶性シリカCMC12S(平均粒径5μm)、重合開始剤の有機過酸化物としてパーヘキシン25B日本油脂(株)銅箔は福田金属箔粉工業(株)の電解銅箔:CF−T9(70μm)、金属ベース板は日本軽金属(株)のアルミニウム:A5052(2mm)を使用した。
【0020】
次に実施例サンプルの作り方と評価方法について説明する。
配合方法:先にトルエン中で合成したウレタンオリゴマー(B)に所定量のエポキシ変性SBS(A)を入れ溶解させ、次にシランカップリング剤と無機フィラーを入れ、遠心脱泡攪拌機で5分間攪拌し、銅箔の裏面にバーコータで塗布した後、加熱オーブンで乾燥して溶媒を飛散させ100μmの絶縁層とした。その後アルミ板と銅箔に塗った絶縁層と重ね合わせて、熱プレスで180℃×30分、5MPaの圧力で硬化積層した。
出来上がった積層板を評価するため各測定に適したパターンとなるようにエッチング液にて形成した。
【0021】
評価方法は以下の通りであり実施例を1〜11に比較例を1〜3に示すがこれらは一例で発明を限定するものではない。
接着強度:1cm幅の銅箔を50mm/分の速度で90°を保ち引き剥がして測定した。
熱抵抗値:基板サイズ30×40mm、ランドサイズ14×10mm、にはんだでトランジスタC2233を取り付け、基板裏面に熱伝導性のシリコングリースを使い水冷却装置にセットして30Wの電力を供給したとき発熱するトランジスタ表面と冷却装置の温度を測定した。
熱抵抗値={(トランジスタ表面温度)−(冷却装置表面温度)}/負荷電力から算出した。はんだ耐熱試験は300℃のはんだ浴の上に基板サイズ50×50mm、ランドサイズ25×50mm(右半分の銅箔を残す)を乗せて膨れや剥がれがないことを目視で観察。
吸水量:基板サイズ60×60mmで全面銅箔除去したサンプルを一旦50℃×24hr乾燥し初期重量とし次に25℃の水中に24hr浸漬し取り出して余分な水分を除去した後すばやく浸漬後の重量を秤り、吸水量をサンプルの表面積で割って算出した。
【0022】
【表1】



【0023】
【表2】



【0024】
特許文献1の実施例を実験し比較例3として挙げる。使用した原料は日本曹達(株)のB3000:ポリブタジエン、とShell Chemical Corp.のD1300:スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーである。また特許文献2の実施例を実験し比較例1,2として挙げるが接着力やはんだ耐熱性が劣り本発明に比べ特性のバランスを欠いている。
比較例は接着力やはんだ耐熱性が劣り本願に比べ特性のバランスを欠いている。
【0025】
【表3】



【表4】



【0026】
また保存安定性は銅箔に塗工した絶縁層をビニール袋に入れ常温で3ヶ月保管し1ヵ月後と3ヶ月後にプレス積層して物性を測定した。常温で3ヶ月保管したものは長期保管にもかかわらず、プレス時の樹脂の流れ性が全く変わらずに初期成形条件で成形が出来、更に特性が殆んど初期値と変化がなく本発明の樹脂組成は常温での保管が可能であり、保管管理と品質管理が簡素化できることが分かった。
通常のエポキシ系プリプレグは室温で保管した場合1−2週間で反応が進み積層時に樹脂フローがなくなり成形が困難となり使用できなくなってしまうのに比べ非常に管理しやすいものである。
【0027】
【表5】



【0028】
【発明の効果】
以上の実施例より明らかな通り、本発明の製品は吸水量が非常に小さく、従来のエポキシ樹脂系の吸水量として表5に市販品の特性を載せるが、表の如く接着強度は高いが吸水性は0.3以上で本発明品とは最低でも約4倍の差がありまたはんだ耐熱性も2分以下など特性が劣っている。部品実装前の吸湿により部品はんだ実装時の膨れ、実際の動作中に絶縁性低下による電子機器のトラブルが防止できる。またはんだ耐熱試験においても300℃で4分以上の耐久性があり鉛フリー化による実装温度の上昇に対しても対応が出来る。更に放熱性に関してもバランスの取れた特性を有しながら熱抵抗値を下げる事が出来、金属ベース基板に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル化合物(A−a)と共役ジエン化合物(A−b)からなるブロック共重合体のエポキシ変性物(A)とラジカル反応性不飽和基を有しかつ極性を持った結合基を有してなる分子量5,000から50,000の化合物(B)とを有機過酸化物で硬化させてなる電気絶縁材料組成物。
【請求項2】
前記化合物(B)は、水酸基含有共役ジエン重合体(B−c)とジイソシアナート化合物(B−d)からなるウレタン結合を有する化合物(B1)で分子量5,000から50,000の請求項1に記載の電気絶縁材料組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)は、末端水酸基を有し不飽和基含有のエステル化合物(B−e)とジイソシアネート化合物(B−d)からなるウレタン結合及びエステル結合を有する化合物(B2)で分子量5,000から50,000の請求項1に記載の電気絶縁材料組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)は、水酸基含有共役ジエン重合体(B−c)と末端水酸基を有し不飽和基含有エステル化合物(B−e)の混合物とジイソシアナート化合物(B−d)からなるウレタン結合及びエステル結合を有する化合物(B3)で分子量5,000から50,000の請求項1に記載の電気絶縁材料組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)は、末端エポキシ基含有共役ジエン重合体(B−f)と末端カルボキシル基含有化合物(B−g)とからなるポリエステル化合物(B4)、又は末端カルボキシル基含有共役ジエン重合体(B−h)と末端エポキシ基含有化合物(B−i)からなるポリエステル(B5)で分子量5,000から50,000の請求項1に記載の電気絶縁材料組成物。
【請求項6】
化合物(A)を95―65重量部に対し化合物(B)を5―35重量部配合して有機過酸化物で硬化してなる請求項1の電気絶縁材料組成物。
【請求項7】
末端に二重結合を1つ以上有する化合物(C)を化合物(A)+化合物(B)100部に対して20部以下配合してなる請求項6記載の電気絶縁材料組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の電気絶縁材料組成物をガラスクロスに含浸したプリプレグの少なくとも片面に金属導体箔を配置して加熱加圧して硬化したことを特徴とする積層絶縁材料。
【請求項9】
請求項1から請求項7記載の電気絶縁材料組成物60〜10容量部に対して無機の熱導伝性フィラーを40―90容量%含有した組成物の片面に金属ベース材料を、他方に金属導体箔を配置して加熱加圧して硬化したことを特徴とする積層絶縁材料。

【公開番号】特開2004−196876(P2004−196876A)
【公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−364252(P2002−364252)
【出願日】平成14年12月16日(2002.12.16)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】