説明

電気自動車

【課題】ボディアースの手段を簡略化することができる電気自動車を提供する。
【解決手段】絶縁表面処理が施された加湿器32および電圧制御器41と、絶縁表面処理が施されたサブフレーム2とを、加湿器32および電圧制御器41とサブフレーム2とのボルトB2の位置(固定部)において、それぞれの絶縁表面処理を除去して露出した金属部同士を接触させて電気的に導通させるとともに、サブフレーム2とフロアパネル3とを、サブフレーム2とフロアパネル3とのアースボルトB3の位置(固定部付近)において、アースボルトB3を介して電気的に導通させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディアース構造を備えた電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を動力源としてモータを駆動させる駆動機構を備えた電気自動車では、法規として、露出している金属部品をボディアースすることが義務付けられている。ボディアースの手法としては、エンジン自動車のように、各金属部品から車体へアース線を用いることが一般に行われている。
【0003】
また、燃料電池を搭載した電気自動車では、燃料電池を収容した燃料電池ボックスと、燃料電池に設けられた配管とを接続して、燃料電池ボックスを車体にアースする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−280039号公報(段落0025、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料電池システムは各種の金属部品により構成されているため、各種の金属部品を従来のようにアース線を用いてボディアースすると、金属部品の数だけアース線や締結部品が必要になるため、部品点数が多くなり、コスト高や重量増となり、また組み立て時のアース線の締結作業が必要になるため、組み立て作業やメンテナンス作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
また、各種の金属部品から延びる複数本のアース線を束ねた場合、電流容量の大きい(太い)電線にする必要があるため、レイアウト性が悪くなり、また配線の屈曲性が低下するため組立性が損なわれるという問題があった。一方、アース線を束ねない場合または複数本のアース線をそれよりも少ない複数本のアース線にした場合、受け渡すアース線を許容できるだけの多極のコネクタが必要になり、コネクタの選択肢や配線のレイアウトが大きく制限される問題もある。
【0006】
その結果、金属部品のボディアースを確保するためには、配線のコストや重量が増加し、また配線が太くなることによりレイアウト性が大きく制限されるとともに配線の屈曲性が低下するため組立性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、ボディアースの手段を簡略化することができる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、電源システムに設けられる金属部品がサブフレームに固定され、前記サブフレームが車体に取り付けられる電気自動車であって、前記金属部品と前記サブフレームとの固定部において、金属部同士を接触させて前記金属部品と前記サブフレームとを電気的に導通するように構成したことを特徴とする。
【0009】
これによれば、例えば金属部品とサブフレームの絶縁表面処理を除去して金属部を露出させて互いの金属部同士を接触させることにより、金属部品とサブフレームとの電気的導通を確保できる。よって、金属部品とサブフレームとを電気的に導通させるアース線を不要にできる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記サブフレームと前記車体とを、前記サブフレームと前記車体との固定部付近において、アース用ボルトを介して電気的に導通させたことを特徴とする。これによれば、サブフレームと車体(メインフレーム)とをアース線を用いることなく導通させることが可能になる。しかも、アース用ボルトを用いることにより、車体の表面処理を予め除去することなく、サブフレームと車体との電気的な導通を容易に確保することが可能になる。したがって、サブフレームと車体とを電気的に導通させるアース線を不要にできる。なお、アース用ボルトとは、車体のねじ孔に塗布された塗装(表面処理層)を剥離しながら螺入することができる導電性のボルトである。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記電源システムは、前輪と後輪との間に配置され、前記アース用ボルトは、後輪側に配置されていることを特徴とする。これによれば、前輪側から電源システムに浸入してくる水が後輪側から浸入してくる水よりも多いので、アース用ボルトを後輪側(後輪寄り)に配置することにより、アース用ボルトが被水するのを抑制することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記サブフレームは、その下面に凹み部を有し、前記凹み部において前記アース用ボルトを介して前記車体と固定されていることを特徴とする。これによれば、仮に水がアンダーカバー上を流れてアースボルトの位置まで到達したとしても、アースボルトが被水するのを防止することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記車体と前記サブフレームとの接触面には、前記アースボルトの周囲に防水部材が設けられていることを特徴とする。これによれば、車体とサブフレームとの接触面からの水の浸入により、アースボルト、車体、サブフレームそれぞれの電気導通部分が腐食してしまうのを防止できる。また、車体、サブフレーム、アースボルトを異種金属で構成する場合においては、異種金属間での電食(電気化学的腐食)が水により進行してしまうのを防止できる。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記アースボルトは、ねじ切り部分に軸方向に切り欠き部が形成されていることを特徴とする。これによれば、車体とサブフレームとの接触面から浸入する水を、切り欠き部を介して良好に排出できる。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記アースボルトのヘッド部分には、切り欠き部が形成されていることを特徴とする。これによれば、車体とサブフレームとの接触面から浸入する水をアースボルトとサブフレームとの接触部に溜めることなく排出できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アース線の本数を削減することができるので、ボディアースの構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本実施形態の燃料電池自動車の導通ポイントを車両側面から見たときの模式図、図2は燃料電池自動車における燃料電池システムの全体構成図、図3は本実施形態の燃料電池自動車の導通ポイントを車両上面からみたときの模式図、図4(a)は金属部品とサブフレームとの導通構造を示す断面図、(b)はサブフレームと車体との導通構造を示す断面図、図5は本実施形態の燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムの配置を示す断面図、図6は本実施形態の燃料電池自動車における効果を説明するための模式図である。なお、各図面においてドットで示した部分が導通ポイントを示している。また、本実施形態では、燃料電池で発電した電力を利用して走行させる燃料電池自動車(FCEV)を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、モータとエンジンを搭載したハイブリット自動車(HEV)、充電した電池の電力を利用して走行させる電気自動車(EV)などに適用してもよい。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池自動車(電気自動車)Vは、後記する燃料電池システム1の一部がサブフレーム2上に搭載されて、サブフレーム2がフロアパネル(車体)3に下方から取り付けられて構成されている。
【0019】
図2に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池10、アノード系20、カソード系30、高電圧系40、ECU(Electronic Control Unit)50などで構成されている。
【0020】
燃料電池10は、固体高分子形の燃料電池であり、イオン伝導性を有する高分子膜(イオン交換膜)を、触媒を含むアノードと、触媒を含むカソードとで挟み、さらに一対の導電性のセパレータで挟んで構成した単セルを厚み方向に複数積層するとともに、電気的に直列に接続した構造を有している。
【0021】
アノード系20は、燃料電池10に水素を給排する系であり、水素供給部21、遮断弁22、減圧弁23、エゼクタ24、パージ弁25などで構成されている。また、水素供給部21と遮断弁22とは配管a1を介して接続され、遮断弁22と減圧弁23とは配管a2を介して接続され、減圧弁23とエゼクタ24とは配管a3を介して接続されて、エゼクタ24と燃料電池10のアノードの入口とは配管a4を介して接続されている。また、燃料電池10のアノードの出口とパージ弁25とは配管a5を介して接続され、配管a5から分岐した配管a6は、エゼクタ24の戻り口と接続されている。
【0022】
水素供給部21は、遮断弁(1次遮断弁)を備えた水素タンク、減圧弁(1次レギュレータ)などで構成されている。水素タンクは、高純度の水素を非常に高い圧力で充填したものである。遮断弁は、電磁作動式のもので、後記するECU50により開閉される。減圧弁は、水素タンクからの高圧の水素を所定の圧力に減圧する機能を有する。
【0023】
遮断弁22は、2次側に設けられた電磁作動式のものであり、ECU50によって開閉される。また、遮断弁22は、金属製の筐体を有し、筐体の内部に弁体を駆動させる駆動部などを備えている。
【0024】
減圧弁23は、2次側に設けられる2次レギュレータであり、1次レギュレータで減圧された水素をさらに所定の圧力に減圧する機能を有する。
【0025】
エゼクタ24は、燃料電池10から排出された未反応の水素を吸引して再び燃料電池10の入口に戻す真空ポンプの一種である。また、エゼクタ24は、図示していないが、金属製の筐体を有し、筐体内に、水素を噴射するノズル、このノズルに挿通されてノズルの開口径を変更するニードル、このニードルを駆動させるソレノイドを有する駆動部などが収容されて構成されている。
【0026】
パージ弁25は、例えば電磁作動式のものであり、ECU50により開閉され、アノード循環系に蓄積した不純物を排出する機能を有する。なお、不純物とは、電解質膜を介して透過した生成水、空気中の窒素などである。また、パージ弁25は、前記遮断弁22と同様に、金属製の筐体を有し、筐体の内部に弁体を駆動させる駆動部などを備えている。
【0027】
カソード系30は、燃料電池10に空気(酸素)を給排する系であり、エアコンプレッサ31、加湿器32、背圧弁33などで構成されている。エアコンプレッサ31は、外気と連通するとともに配管c1を介して加湿器32と接続され、加湿器32は、配管c2を介して燃料電池10のカソードの入口と接続され、カソードの出口は、配管c3を介して背圧弁33と接続されている。
【0028】
エアコンプレッサ31は、モータにより駆動される機械式の過給器であり、取り込んだ外気を圧縮する機能を有する。加湿器32は、取り込まれた空気を加湿して電解質膜に対してプロトン伝導性を発揮させる機能を有する。背圧弁33は、例えばバタフライ弁などで構成され、ECU50によってその開度が調節され、燃料電池10のカソード圧力を適宜調節する機能を有する。
【0029】
なお、前記した減圧弁23は、カソード圧力を信号圧として入力される信号圧導入配管c4と接続され、入力された信号圧に基づいて減圧の度合いが調節されるようになっている。また、信号圧導入配管c4には、信号圧を開放するための空気排出弁34が設けられている。この空気排出弁34は、ECU50によって適宜開放されることによって、減圧弁23に入力される信号圧を調節する。
【0030】
高電圧系40は、燃料電池10から取り出した高電圧の電力を供給する系であり、電圧制御器(VCU;Voltage Control Unit)41、走行モータ42、インバータ43などで構成されている。
【0031】
電圧制御器41は、DC/DCコンバータなどを備え、燃料電池10の出力電圧を所定電圧に変換して出力する機能を有する。また、電圧制御器41は、例えば、ECU50によって設定されたトルク指令に基づいて、燃料電池10から必要な電力(発電電流)を取り出す。
【0032】
走行モータ42は、永久磁石式の3相交流同期モータ(電動機)などで構成され、インバータ43を介して駆動輪(例えば、前輪)W1を回転駆動させるものである。なお、インバータ43は、燃料電池10から出力される直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を走行モータ42に供給する。
【0033】
ECU50は、金属製のケース内に、CPU(CentralProcessing Unit)、メモリ、各種回路などが実装された回路基板が収容されて構成されている。また、ECU50は、センターコンソール3a(図5参照)内の燃料電池10の上方に配置されている。
【0034】
図3に示すように、サブフレーム2は、絶縁表面処理が施され、車両の前後方向に平行に延びる1対の板状の支持体2a,2bと、車両の車幅方向(左右方向)に延びて支持体2a,2b同士を接続する支持体2c,2d,2eと、支持体2a,2bから車幅方向外側に平行に延びる一対の支持体2f,2gおよび支持体2h,2iと、を有している。なお、絶縁表面処理とは、耐食性を上げるために行われる処理であり、例えばカチオン電着塗装などを挙げることができる。
【0035】
このように構成されたサブフレーム2には、燃料電池10が、左右の支持体2aと支持体2bとに跨るようにして、サブフレーム2の前側に搭載される。なお、図示していないが、例えば、燃料電池10は、単セルの積層体がボックス内に収容され、ボックスに固定されたブラケットを介してサブフレーム2にねじ止め固定されている。
【0036】
また、サブフレーム2には、加湿器32が、支持体2dと支持体2eとに跨るようにして、燃料電池10の後方に設けられている。なお、加湿器32は、サブフレーム2と同様に絶縁表面処理が施された金属製の筐体32aを有し、その内部に複数の中空糸膜が束ねられた中空糸膜束が収容され、各中空糸膜の一側にエアコンプレッサ31(図2参照)からの空気が流通し、他側に燃料電池10のカソードから排出されたカソードオフガスなど(湿潤な空気、生成水)が流通することにより、空気を加湿するようになっている。
【0037】
図4(a)に示すように、加湿器32は、筐体32aにブラケット32bの一端が電気的に導通するように固定され、他端がボルトB1およびナットN1を介してサブフレーム2に固定されている。なお、このボルトB1の位置が金属部品としての加湿器32の固定部に相当する。このとき、ブラケット32bに形成された絶縁表面処理を除去して金属部Q1を露出させ、サブフレーム2に施された絶縁表面処理を除去して金属部Q2を露出させる。そして、金属部Q1と金属部Q2とが接触した状態において、上側からボルトB1がブラケット32bの挿通孔32b1およびサブフレーム2の挿通孔2a1に挿通してナットN1に螺合させることで、加湿器32がサブフレーム2上に固定される。なお、ブラケット32bは、加湿器32の四隅に固定されて、各ブラケット32bが前記と同様に互いの絶縁表面処理を除去した状態でサブフレーム2に固定されている(図3参照)。したがって、加湿器32は、サブフレーム2と電気的に導通している。
【0038】
図1および図3に示すように、サブフレーム2上に固定された加湿器32には、遮断弁22がアース線22aを介して、空気排出弁34がアース線34aを介してそれぞれ接続され、コネクタ(図示せず)によってアース線22a,34aが束ねられている。また、エゼクタ24がアース線24aを介して、後記するECU50がアース線50aを介してそれぞれ接続され、コネクタ(図示せず)によってアース線24a,50aが束ねられている。束ねられたアース線は、加湿器32の筐体32aのP1点,P2点においてねじ止めされる。なお、加湿器32にアース線を介して接続される実施形態は一例であり、本実施形態に限定されるものではない。
【0039】
さらに、サブフレーム2には、図3に示すように、電圧制御器41が、支持体2fと支持体2gとに跨るようにして、燃料電池10の側方に搭載されている。なお、電圧制御器41は、絶縁表面処理が施されたケース41aを有し、このケース41a内にIC、コイル、ダイオード、トランジスタ、コンデンサなどを備えた回路基板が収容されて構成されている。また、電圧制御器41は、ケース41aの四隅に絶縁表面処理が施されたブラケット41bを有し、ブラケット41bの一端が電気的に導通するように構成され、他端がサブフレーム2にボルトおよびナットを介して固定されている。なお、このボルトの位置が金属部品としての電圧制御器41の固定部に相当する。この場合も、加湿器32の場合と同様に、ブラケット41bの絶縁表面処理を除去して金属部を露出させ、サブフレーム2の絶縁表面処理を除去して金属部を露出させて、金属部同士を接触させることにより、電圧制御器41とサブフレーム2とが電気的に導通する。
【0040】
そして、燃料電池10、燃料電池10の補器(加湿器32、電圧制御器41など)が搭載されたサブフレーム2が、フロアパネル3の下方から、複数(本実施形態では10個)のボルトB2を介して取り付けられる。各ボルトB2は、サブフレーム2の下側から所定の孔(図示せず)に挿通されて、フロアパネル3の上面に固定されたナットN2に螺合して、サブフレーム2がフロアパネル3に固定される。なお、フロアパネル3についても、鋼板をプレス成形により形成した後、絶縁表面処理が施されたものである。
【0041】
サブフレーム2がフロアパネル3に取り付けられると、燃料電池10および加湿器32など(図1および図3参照)がフロアパネル3に形成されたセンターコンソール3a(図5参照)内に配置され、電圧制御器41がフロアパネル3に形成された凸部3b内に配置される。これにより、サブフレーム2は、図1および図3に示すように、燃料電池自動車Vの前輪(駆動輪)W1と後輪W2との間に配置されることになる。
【0042】
また、サブフレーム2とフロアパネル3とは、固定部(ボルトB2の位置)付近にアースボルトB3(アース用ボルト)が設けられている。このアースボルトB3は、図4(b)に示すように、サブフレーム2に形成された貫通孔2a2に螺入されることにより、サブフレーム2の貫通孔2a2に形成された絶縁表面処理が除去されながらねじ込まれ、さらにフロアパネル3に形成された貫通孔3cに螺入されることにより、フロアパネル3の貫通孔3cに形成された絶縁表面処理が除去されながらねじ込まれて、フロアパネル3の上面に固定されたナットN3に螺合して固定される。これにより、サブフレーム2とフロアパネル3とがアースボルトB3を介して電気的に導通する。
【0043】
また、サブフレーム2の上面には、アースボルトB3の周囲に環状の溝2a3が形成されるとともに、フロアパネル3の下面には、アースボルトB3の周囲の溝2a3と対向する位置に溝3d形成され、溝2a3と溝3dとで形成される隙間にオーリング(Oリング)5が設けられている。なお、フロアパネル3に取り付けられたサブフレーム2の下面には、アンダーカバー4が取り付けられて、燃料電池10、加湿器32、電圧制御器41などが保護されている(図1参照)。
【0044】
以上説明したように、加湿器32は、ブラケット32bの露出した金属部(金属面)Q1と、サブフレーム2の露出した金属部(金属面)Q2とが接触した状態でボルトN1およびナットN1を介して固定されることにより、加湿器32とサブフレーム2とが電気的に導通する(図4(a)参照)。なお、図4(a)では、説明の便宜上、金属部Q1と金属部Q2とを離間して図示しているが、実際には互いに接触しているものとする。さらに、サブフレーム2とフロアパネル3とがアースボルトB3を介して接続されることで、サブフレーム2とフロアパネル3とが電気的に導通する(図4(b)参照)。また同様に、電圧制御器41は、サブフレーム2と露出した金属部同士が接続されることで電気的に導通し、サブフレーム2がフロアパネル3とアースボルトB3を介して電気的に導通される(図1および図3参照)。これにより、金属部品としての加湿器32や電圧制御器41がボディアースされることになる。なお、加湿器32上の遮断弁22、エゼクタ24、空気排出弁34、ECU50についてもアース線22a,24a,34a,50aを介して加湿器32と接続されることでボディアースされる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、金属部同士を接触させることで金属部品としての加湿器32や電圧制御器41にアース線を接続することなく、金属部品(32,41など)とサブフレーム2とを電気的に導通させることが可能になる。さらに、アースボルトB3を用いることで、サブフレーム2とフロアパネル3(車体)とをアース線を用いることなく電気的に導通させることが可能になる。したがって、アース線や締結部品などの部品点数を削減でき、コストダウンや軽量化を図ることができ、また組み立て時のアース線の締結作業を軽減できるので、組み立て作業やメンテナンス作業を容易にできる。しかも、多数のアース線を束ねる必要性がほとんどなくなるため、レイアウト性が向上し(狭い所にも配置することができ)、また配線の屈曲性が低下することがないため組立性も向上する。また、極数の少ないコネクタや小型のコネクタを適用することができるので、コネクタ選択の幅を広げることが可能になる。
【0046】
ところで、雨天走行時には前輪W1や後輪W2の回転力によって水が巻き上げられるが、この場合、前輪W1で巻き上げられた水は車両の後方に向けて飛散する確立が高く、後輪W2で巻き上げられた水は後輪W2の前方へ飛散する確立は低くなる。よって、本実施形態のように、サブフレーム2とフロアパネル3との導通ポイントであるアースボルトB3が後輪W2側(後輪W2寄り)に位置しているので、アースボルトB3が被水して腐食するのを防止することが可能になる。
【0047】
また、図6に示すように、サブフレーム2の下面に凹面が下を向くように凹み部2Sが形成され、その凹み部2S内にアースボルトB3が位置するように構成されている。よって、仮に水が車両前方からアンダーカバー4上を流れてきたとしても、アースボルトB3がアンダーカバー4の上面よりも高い位置にあるため、アースボルトB3は被水することなく、前方からの水を後方へと流すことができる。なお、車両前方からの水が凹み部2S内において支持体2dに当たったとしても、支持体2dをよけて水が後方へ流れるので、アースボルトB3は被水することはない。さらに、サブフレーム2とフロアパネル3との接触面(境界面)から水が浸入したとしても、オーリング5によって水がアースボルトB3まで達するのを阻止できる。したがって、サブフレーム2、フロアパネル3、アースボルト5のそれぞれの電気導通部分が腐食してしまうことを防止できる。
【0048】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、図7および図8に示す構成にしてもよい。図7はサブフレームと車体との導通構造の変形例を示す断面図、図8はアースボルトの変形例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は取付状態を示す断面図である。
【0049】
図7に示す実施形態では、凹み部S2内の天井面にさらに凹部2a4を形成して、アースボルトB4をサブフレーム2およびフロアパネル3にねじ込んだときにアースボルトB4のヘッド部(ねじ頭)が凹部2a4内に収まるように構成したものである。これにより、アンダーカバー4上を流れる水によってアースボルトB4が被水するのをさらに効果的に防止することができる。また、例えば、サブフレーム2およびアースボルトB4がアルミニウムまたはアルミニウム合金で、フロアパネル3が鉄のように異種金属で構成する場合において、異種金属間での電食が水により進行してしまうのを防止できる。
【0050】
図8に示す実施形態では、(a)および(b)に示すように、アースボルトB5のねじ切り部分101に軸方向に沿って切り欠き部101aが形成されるとともに、ヘッド部分102に周方向に沿って波型や鋸歯型に形成された切り欠き部102aが形成されている。よって、切り欠き部102aは、放射状に複数本形成されている。これにより、サブフレーム2とフロアパネル3との接触面(境界面)を通ってアースボルトB5に水が達したとしても、その水が切り欠き部101aおよび102aを介してアースボルトB5から良好に排出される。
【0051】
なお、本実施形態では、切り欠き部101aを軸方向に沿って直線状に形成したが、螺旋状など曲線状に形成するようにしてもよい。また、切り欠き部101aは、1本の流路に限定されるものではなく、複数本の切り欠き部101aが形成されていてもよい。また、切り欠き部101aは、ねじ切り部分101の先端から形成するものに限定されず、サブフレーム2とフロアパネル3との接触面の途中の位置から下方に向けて形成されるものであってもよい。また、切り欠き部102aは、周方向全体に形成するものに限定されず、切り欠き部101aと連通する位置にのみ形成するものであってもよい。
【0052】
また、アースボルトB5に切り欠き部101aを形成せずに、サブフレーム2側に切り欠き部を形成するようにしてもよい。また、アースボルトB5に切り欠き部102aを形成せずに、サブフレーム2とアースボルトのヘッド部との間にC字型のワッシャーを介装して、ワッシャーに形成された切欠きを介して水を排出するようにしてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、加湿器32や電圧制御器41とサブフレーム2とを電気的に導通させる場合に、互いの絶縁表面処理を除去して金属部同士を接触させるようにしたが、固定部付近においてアースボルトを介して電気的に導通させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態の燃料電池自動車の導通ポイントを車両側面から見たときの模式図である。
【図2】燃料電池自動車における燃料電池システムの全体構成図である。
【図3】本実施形態の燃料電池自動車の導通ポイントを車両上面からみたときの模式図である。
【図4】(a)は金属部品とサブフレームとの導通構造を示す断面図、(b)はサブフレームと車体との導通構造を示す断面図である。
【図5】本実施形態の燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムの配置を示す断面図である。
【図6】本実施形態の燃料電池自動車における効果を説明するための模式図である。
【図7】サブフレームと車体との導通構造の変形例を示す断面図である。
【図8】アースボルトの変形例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 燃料電池システム(電源システム)
2 サブフレーム
3 フロアパネル(車体)
5 オーリング(防水部材)
2S 凹み部
10 燃料電池
32 加湿器(金属部品)
41 電圧制御器(金属部品)
101a,102a 切り欠き部
B3〜B5 アースボルト(アース用ボルト)
V 燃料電池自動車(電気自動車)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムに設けられる金属部品がサブフレームに固定され、前記サブフレームが車体に取り付けられる電気自動車であって、
前記金属部品と前記サブフレームとの固定部において、金属部同士を接触させて前記金属部品と前記サブフレームとを電気的に導通するように構成したことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記サブフレームと前記車体とを、前記サブフレームと前記車体との固定部付近において、アース用ボルトを介して電気的に導通させたことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記電源システムは、前輪と後輪との間に配置され、
前記アース用ボルトは、後輪側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記サブフレームは、その下面に凹み部を有し、前記凹み部において前記アース用ボルトを介して前記車体と固定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記車体と前記サブフレームとの接触面には、前記アースボルトの周囲に防水部材が設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記アースボルトは、ねじ切り部分に軸方向に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項7】
前記アースボルトのヘッド部分には、切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−298207(P2009−298207A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152563(P2008−152563)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】