説明

電気自動車

【課題】要求駆動力で走行しながら昇降圧コンバータの共振を抑制する。
【解決手段】昇圧異常が生じたときには、車速が値0以上車速A未満の範囲ではLoギヤに設定し、車速が車速A以上車速B未満の範囲ではHiギヤに設定し、車速が車速B以上車速C未満の範囲ではLoギヤに設定し、車速が車速以上ではHiギヤに設定する昇圧異常時変速関係と車速とに基づいて目標変速段を設定し、モータを駆動するインバータを選択した制御モードで制御すると共に変速段が目標変速段になるよう変速機を制御する。これにより、走行に要求トルクで走行しながらモータの回転数が共振帯域に入るのを抑制することができ、昇降圧コンバータの共振を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、動力を出力する電動機と、電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との間で変速比の変更を伴って動力を伝達可能な変速機と、電動機を駆動するためのインバータと、充放電可能なバッテリと、リアクトル素子を有しバッテリからの電力を昇圧してインバータに供給可能であると共にインバータからの電力を降圧してバッテリに供給可能な昇降圧コンバータと、車速を検出する車速センサと、車速と変速比との関係として予め定められた所定変速関係と検出された車速とに基づいて変速機の変速比を設定する変速比設定手段と、矩形波電圧を用いてインバータを制御する矩形波制御モードを含む複数の制御モードから1つの制御モードを選択してインバータを選択したモードで制御しながら変速機の変速比を設定された変速比にした状態で走行に要求される要求駆動力により走行するよう変速機とインバータと昇降圧コンバータとを制御する制御手段と、を備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの制御装置としては、計算したモータの速度が既知のモータ共振速度帯に相当する場合には、モータ制御速度をモータ共振速度帯より低く補正して、モータの速度が補正後のモータ制御速度となるようモータを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、こうした制御により、モータの速度がモータ共振速度帯に入るのを抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−184397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インダクタ素子を有する昇降圧コンバータでバッテリからの電力を昇圧し、昇圧した電力を電動機を駆動するインバータに供給すると共に電動機からの動力を変速機で変速して車軸に出力して走行する電気自動車において、走行に要求される要求駆動力により走行するよう、電動機から比較的大きなトルクを出力可能な矩形波電圧を用いてインバータを制御する矩形波制御モードでの制御が実行されている。こうした矩形波制御モードでは、電動機の回転数が昇降圧コンバータにLC共振が生じる共振回転数範囲内になると、LC共振が生じやすくなるのが知られている。こうした共振を抑制するために、矩形波制御モードを使わずにPWM信号を用いてインバータ制御するPWM制御モードでインバータを制御することも考えられるが、PWM制御モードを用いると電動機から大きなトルクを出力できず、要求駆動力で走行できなくなってしまう。
【0005】
本発明の電気自動車は、走行に要求される要求駆動力により走行しながら昇降圧コンバータの共振が生じるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
動力を出力する電動機と、前記電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との間で変速比の変更を伴って動力を伝達可能な変速機と、前記電動機を駆動するためのインバータと、充放電可能なバッテリと、リアクトル素子を有し前記バッテリからの電力を昇圧して前記インバータに供給可能であると共に前記インバータからの電力を降圧して前記バッテリに供給可能な昇降圧コンバータと、車速を検出する車速センサと、車速と変速比との関係として予め定められた所定変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定する変速比設定手段と、矩形波電圧を用いて前記インバータを制御する矩形波制御モードを含む複数の制御モードから1つの制御モードを選択して前記インバータを前記選択したモードで制御しながら前記変速機の変速比を前記設定された変速比にした状態で走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記変速機と前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する制御手段と、を備える電気自動車において、
前記所定変速関係は、前記電動機の回転数が前記昇降圧コンバータに共振が生じる回転数の範囲として予め定められた共振回転数範囲外になる車速と変速比との関係として予め定められた関係である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、車速と変速比との関係として予め定められた所定変速関係と前記検出された車速とに基づいて変速機の変速比を設定する変速比設定手段と、矩形波電圧を用いてインバータを制御する矩形波制御モードを含む複数の制御モードから1つの制御モードを選択してインバータを選択したモードで制御しながら変速機の変速比を設定された変速比にした状態で走行に要求される要求駆動力により走行するよう変速機とインバータと昇降圧コンバータとを制御する。そして、所定変速関係は、電動機の回転数が昇降圧コンバータに共振が生じる回転数の範囲として予め定められた共振回転数範囲外になる車速と変速比との関係として予め定められた関係であるものとすることにより、要求駆動力により走行しながら昇降圧コンバータに共振が生じるのを抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の電気自動車において、前記変速比設定手段は、前記昇降圧コンバータに前記バッテリからの電力を昇圧できない異常である昇圧異常が生じていないときには前記所定変速関係と異なる車速と変速比との関係として予め定められた通常時変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定し、前記昇圧異常が生じたときには前記所定変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定する手段であるものとすることもできる。昇圧異常が生じたときには、より適正に要求駆動力により走行しながら昇降圧コンバータに共振が生じるのを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電気自動車において、前記変速機は、前記駆動軸と前記電動機の回転軸との動力の伝達を前記電動機の回転軸の回転数を減速して前記駆動軸に伝達するときの減速比として第1の減速比と前記第1の減速比より小さな第2の減速比との2段変速により行ない、前記所定変速関係は、車速が値0以上であり且つ値0より高く前記変速機を前記第1の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の下限の回転数となる車速である第1車速未満であるときには前記変速比を前記第1の減速比とし、車速が前記第1車速以上であり且つ前記第1車速より高く前記変速機を前記第1の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の上限の回転数となる車速である第2車速未満であるときには前記変速比を前記第2の減速比とし、車速が前記第2車速以上であり且つ前記第2車速より高く前記変速機を前記第2の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の上限の回転数となる車速である第3車速未満であるときには前記変速比を前記第1の減速比とし、車速が前記第3車速以上であるときには前記変速比を前記第2の減速比とする関係である、ものとすることもできる。こうすれば、駆動軸と電動機の回転軸との動力の伝達を第1の減速比と第2の減速比との2段変速により行なう変速機を備える電気自動車において、より適正に要求駆動力により走行しながら昇降圧コンバータに共振が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】昇降圧コンバータ40の構成の概略を示す構成図である。
【図3】昇圧異常時変速関係の一例を示す説明図である。
【図4】車速Vと変速段とモータMGの回転数との関係を示す説明図である。
【図5】モータMGの回転数とモータMGから出力可能な最大トルクとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、例えば同期発電電動機として構成されたモータMGと、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して接続された駆動軸26とモータMGの回転軸との間で変速比の変更を伴って動力を伝達可能な変速機28と、モータMGを駆動するためのインバータ30と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ32と、バッテリ32からの電圧を平滑する平滑コンデンサ33と、バッテリ32からの直流電力を昇圧してインバータ30に供給可能であると共にインバータ30に作用している直流電力を降圧してバッテリ32に供給可能な昇降圧コンバータ40と、昇降圧コンバータ40からインバータ30に供給する電圧を平滑する平滑コンデンサ35と、変速機28を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機用ECUという)50と、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号やシフトレバーのレンジを検出するシフトレンジセンサ62からのシフトレンジSR,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキポジションBP,車速センサ68からの車速V,モータMGの回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMGに印加される相電流などを入力すると共にインバータ30や昇降圧コンバータ40などを制御する電子制御ユニット55と、を備える。
【0014】
昇降圧コンバータ40は、図2に示すように、スイッチング素子T1,T2と、スイッチング素子T1,T2に逆方向に並列接続されたダイオードD1,D2と、スイッチング素子T1,T2の中間点に接続されたリアクトルLとを有し、スイッチング素子T1,T2をオンオフ制御することによりバッテリ32からの直流電力をその電圧を昇圧してインバータ30に供給したりインバータ30に作用している直流電圧を降圧するよう構成されている。
【0015】
変速機28は、モータMGの回転軸と駆動軸26との接続および接続の解除を行なうと共に両軸の接続をモータMGの回転軸の回転数を2段に減速して駆動軸26に伝達するよう構成されており、モータMGの回転軸の回転を比較的大きな第1減速比で減速して駆動軸26に伝達し(以下、この状態を変速段がLoギヤの状態という)、モータMGの回転軸の回転を第1減速比より小さい第2減速比で減速して駆動軸26に伝達する(以下、この状態を変速段がHiギヤの状態という)。
【0016】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、基本的には、電子制御ユニット55によって実行される以下に説明する通常の駆動制御によって走行する。電子制御ユニット55では、まず、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accと車速センサ68からの車速Vとに応じて駆動軸26に出力すべき要求トルクTr*を設定し、予め記憶している車速Vと要求トルクTr*と変速段との関係である変速マップを用いて車速Vと要求トルクTr*とに対応する変速段を目標変速段CS*として設定して、設定した目標変速段CS*を変速機用ECU50に送信する。目標変速段CS*を受信した変速機用ECU50は、変速段が目標変速段CS*になるよう変速機28を制御する。こうした制御により、変速機28の変速段を目標変速段CS*にすることができる。
【0017】
また、設定した要求トルクTr*を目標変速段CS*の減速比で除したものをモータMGから出力すべきトルク指令Tm*として設定して、設定したトルク指令Tm*でモータMGが駆動されるようインバータ30のスイッチング素子と昇降圧コンバータ40のスイッチング素子T1,T2とをスイッチング制御する。
【0018】
昇降圧コンバータ40のスイッチング制御では、トルク指令Tm*とモータMGの回転数とに基づいて要求トルクTr*やモータMGの回転数が大きいほど大きくなる傾向にインバータ30に印加すべき目標電圧を設定し、昇降圧コンバータ40からインバータ30に供給する電圧が目標電圧になるよう昇降圧コンバータ40のスイッチング素子T1,T2をオンオフ制御する。こうした制御により、変速機28の変速段を目標変速段CS*にした状態で要求トルクTr*により走行することができる。
【0019】
また、インバータ30のスイッチング制御では、モータMGのトルク指令Tm*とモータMGの回転数とに基づいて複数の制御モードから1つの制御モードを選択してインバータ30をスイッチング制御する。インバータ30の制御モードは、それぞれ、図示しないマップにより、モータの回転数およびトルクが低い領域から順に、三角波比較によるパルス幅変調(PWM)制御における三角波の振幅以下の振幅で正弦波状の出力電圧指令値を生成して変換した擬似的三相交流電圧としてのPWM信号でインバータをスイッチングする正弦波制御モード,三角波の振幅を超えた振幅で正弦波状の出力電圧指令値を生成して変換した過変調電圧としてのPWM信号でインバータをスイッチングする過変調制御モード,トルク指令に応じた電圧位相の矩形波電圧でインバータをスイッチングする矩形波制御モードが選択されるように予め定められている。モータMGやインバータ30の特性として、矩形波制御モード,過変調制御モード,正弦波制御モードの順で、モータMGの出力応答性や制御性が良くなり、出力可能なトルクが小さくなり、インバータ30のスイッチング損失などの損失が大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、正弦波制御モードでインバータ30を制御することにより、モータMGの出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルク領域では、矩形波制御モードを用いてインバータ30を制御することにより、より大きなトルクを出力可能とすると共にインバータ30のスイッチング損失などの損失を低減することができる。
【0020】
次に、こうして構成された電気自動車20において、昇降圧コンバータ40にバッテリ32からの電圧を昇圧できない異常である昇圧異常が生じたときの動作について説明する。昇圧異常が生じたとき、電子制御ユニット55は、昇降圧コンバータ40については、バッテリ32からの電力を昇圧せずにインバータ30に供給するよう昇降圧コンバータ40のスイッチング素子T1,T2を制御し、インバータ30については、矩形波制御モード,過変調制御モード,正弦波制御モードのうちいずれかの制御モードを選択して制御する。
【0021】
また、変速機28については、昇圧異常が生じているときの車速Vと変速段との関係である昇圧異常時変速関係を予め記憶しておき、車速Vが与えられると昇圧異常時変速関係から対応する変速段を導出して目標変速段CS*を設定して変速機用ECU50に送信する。目標変速段CS*を受信した変速機用ECU50は、変速機28の変速段が目標変速段CS*になるよう変速機28を制御する。図3は、昇圧異常時変速関係の一例を示す説明図であり、図4は、車速Vと変速段とモータMGの回転数との関係を示す説明図である。図4中、実線は、昇圧異常時変速関係を用いたときの車速VとモータMGの回転数との関係を示しており、一点鎖線は、車速の全範囲に渡って変速段をLoギヤにした場合および変速段をHiギヤにした場合のそれぞれにおける車速VとモータMGの回転数との関係を示している。昇圧異常時変速関係では、車速Vが値0以上値0より高い車速A未満の範囲では変速段がLoギヤに設定され、車速Vが車速A以上車速Aより高い車速B未満の範囲では変速段がHiギヤに設定され、車速Vが車速B以上車速Bより高い車速C未満の範囲では変速段がLoギヤに設定され、車速Vが車速C以上では変速段がHiギヤに設定される。ここで、車速Aは、図4に示すように、変速機28をLoギヤにするとモータMGの回転数が昇降圧コンバータ40にLC共振が生じるモータMGの回転数範囲である共振帯域の下限の回転数Rminとなる車速であるものとした。また、車速Bは、変速機28をLoギヤにすると共振帯域の上限の回転数Rmaxとなる車速であるものとした。さらに、車速Cは、変速機28をHiギヤにすると共振帯域の上限の回転数Rmaxとなる車速であるものとした。このように昇圧異常時変速関係を定めることにより、モータMGの回転数が共振帯域内の回転数になるのが抑制される。
【0022】
図5は、モータMGの回転数とモータMGから出力可能な最大トルクとの関係を示す説明図である。昇圧異常が生じているときには比較的要求トルクTr*が大きいときには、インバータ30については、矩形波制御モードを選択して制御することにより、要求トルクTr*での走行を可能としている。インバータ30を矩形波制御モードで制御している最中にモータMGの回転数が共振帯域内の回転数になると、モータMGから出力されるトルクが比較的大きい領域で昇降圧コンバータ40にLC共振が生じやすくなり、昇降圧コンバータ40の保護が図れない場合がある。実施例では、昇圧異常時変速関係と車速Vとに基づいて変速段を設定することにより、モータMGの回転数が共振帯域内の回転数になるのを抑制することができ、昇降圧コンバータ40のLC共振を抑制して昇降圧コンバータ40の保護を図ることができる。こうした制御により、要求トルクTr*で走行できると共に昇降圧コンバータ40の共振を抑制することができる。
【0023】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、昇圧異常が生じたときには、車速Vが値0以上値0より高い車速A未満の範囲では変速段がLoギヤに設定され、車速Vが車速A以上車速Aより高い車速B未満の範囲では変速段がHiギヤに設定され、車速Vが車速B以上車速Bより高い車速C未満の範囲では変速段がLoギヤに設定され、車速Vが車速C以上では変速段がHiギヤに設定される昇圧異常時変速関係と車速Vとに基づいて目標変速段CS*を設定し、矩形波制御モードを含む複数の制御モードのうち1つを選択して選択した制御モードでインバータ30を制御すると共に変速機28の変速段が目標変速段CS*になるよう変速機28を制御することにより、要求トルクTr*で走行できると共に昇降圧コンバータ40の共振を抑制することができる。
【0024】
実施例の電気自動車20では、図3に例示するように昇圧異常時変速関係を定めるものとしたが、LoギヤからHiギヤにアップシフトするときには、図3に例示した昇圧異常時変速関係を用いて目標変速段CS*と設定し、変速機28をHiギヤからLoギヤにダウンシフトするときには、図3の昇圧異常時変速関係において車速A〜Cに代えて車速A〜Cをそれぞれ低くした車速D〜Fを用いて目標変速段CS*を設定するものとしてもよい。こうすれば、アップシフトとダウンシフトとのハンチングを抑制することができる。
【0025】
実施例の電気自動車20では、昇圧異常が生じたときに昇圧異常時変速関係を用いて目標変速段CS*を設定するものとしたが、昇圧異常時変速関係を昇圧異常が生じていないときにも用いるものとしてもよい。
【0026】
実施例の電気自動車20では、変速機28を2段変速可能なものとしたが、3段以上の変速が可能なものとしたり、変速比を滑らかに無段で変速可能な無段変速機であるものとしてもよい。
【0027】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMGが「電動機」に相当し、インバータ30が「インバータ」に相当し、変速機28が「変速機」に相当し、バッテリ32が「バッテリ」に相当し、昇降圧コンバータ40が「昇降圧コンバータ」に相当し、変速マップを用いて変速比を設定したり図3の昇圧異常時変速関係を用いて変速段を設定する電子制御ユニット55が「変速比設定手段」に相当し、選択した制御モードでインバータ30を制御すると共に変速機28の変速段が目標変速段CS*になるよう変速機28を制御する電子制御ユニット55と変速機用ECU50とが「制御手段」に相当する。
【0028】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0029】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電気自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
20 電気自動車、22a,22b 駆動輪、24 デファレンシャルギヤ、26 駆動軸、28 変速機、30 インバータ、32 バッテリ、33,35 平滑コンデンサ、40 昇降圧コンバータ、50 変速機用ECU、55 電子制御ユニット、60 イグニッションスイッチ、62 シフトレンジセンサ、64 アクセルペダルポジションセンサ、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、D1,D2 ダイオード、L リアクトル、MG モータ、T1,T2 スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を出力する電動機と、前記電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との間で変速比の変更を伴って動力を伝達可能な変速機と、前記電動機を駆動するためのインバータと、充放電可能なバッテリと、リアクトル素子を有し前記バッテリからの電力を昇圧して前記インバータに供給可能であると共に前記インバータからの電力を降圧して前記バッテリに供給可能な昇降圧コンバータと、車速を検出する車速センサと、車速と変速比との関係として予め定められた所定変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定する変速比設定手段と、矩形波電圧を用いて前記インバータを制御する矩形波制御モードを含む複数の制御モードから1つの制御モードを選択して前記インバータを前記選択したモードで制御しながら前記変速機の変速比を前記設定された変速比にした状態で走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記変速機と前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する制御手段と、を備える電気自動車において、
前記所定変速関係は、前記電動機の回転数が前記昇降圧コンバータに共振が生じる回転数の範囲として予め定められた共振回転数範囲外になる車速と変速比との関係として予め定められた関係である
電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車であって、
前記変速比設定手段は、前記昇降圧コンバータに前記バッテリからの電力を昇圧できない異常である昇圧異常が生じていないときには前記所定変速関係と異なる車速と変速比との関係として予め定められた通常時変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定し、前記昇圧異常が生じたときには前記所定変速関係と前記検出された車速とに基づいて前記変速機の変速比を設定する手段である、
電気自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気自動車であって、
前記変速機は、前記駆動軸と前記電動機の回転軸との動力の伝達を前記電動機の回転軸の回転数を減速して前記駆動軸に伝達するときの減速比として第1の減速比と前記第1の減速比より小さな第2の減速比との2段変速により行ない、
前記所定変速関係は、車速が値0以上であり且つ値0より高く前記変速機を前記第1の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の下限の回転数となる車速である第1車速未満であるときには前記変速比を前記第1の減速比とし、車速が前記第1車速以上であり且つ前記第1車速より高く前記変速機を前記第1の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の上限の回転数となる車速である第2車速未満であるときには前記変速比を前記第2の減速比とし、車速が前記第2車速以上であり且つ前記第2車速より高く前記変速機を前記第2の減速比にすると前記電動機の回転数が前記共振回転数範囲の上限の回転数となる車速である第3車速未満であるときには前記変速比を前記第1の減速比とし、車速が前記第3車速以上であるときには前記変速比を前記第2の減速比とする関係である、
電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175769(P2012−175769A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33774(P2011−33774)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】