説明

電気負荷駆動装置

【課題】電気負荷に電流を流す複数の各トランジスタが設けられている並列な通電用配線の断線を、各トランジスタに大きな電流負担をかけることなく、また電気負荷への通電を中断してしまうことなく検出する。
【解決手段】2つのトランジスタTr1,Tr2によりリレーのコイル13aに通電するECU11では、コイル13aへの通電期間中に、電圧変動制御部31が、トランジスタTr1,Tr2へのゲート電圧VG1,VG2の各々を定期的に且つ互いに時間をずらして所定時間だけ低下させることにより、一方のトランジスタの通電能力が落ちてドレイン・ソース間電圧が所定値以上になる期間を発生させる。そして、故障判定部32は、各トランジスタのソース電圧VS1,VS2の差が所定の閾値以上になったことを検知すると、トランジスタTr1,Tr2が設けられている通電用配線L1,L2の負荷側部分LS1,LS2の何れかが断線していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトランジスタを介して電気負荷に電流を流す電気負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気負荷駆動装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載の電気負荷駆動装置は、電源の高電位側と低電位側とのうちの一方に一端が接続された電気負荷の他端に、一端が接続され、他端が電源の高電位側と低電位側とのうちの他方に接続された複数の並列な通電用配線と、その各通電用配線上に2つの出力端子が直列に設けられ、オンすることで該通電用配線を連通して電気負荷に電流を流す複数の通電用トランジスタとを備えている。このため、複数の通電用トランジスタは、電気負荷に対して直列に且つ互いに並列に設けられていることになる。
【0003】
そして、特許文献1に記載の電気負荷駆動装置では、電気負荷に連続して通電すべき通電期間において、複数の通電用トランジスタをオンさせることにより、該複数の通電用トランジスタを介して電気負荷に電流を流す。
【0004】
この構成によれば、何れかの通電用配線に断線が生じたとしても、他の正常な通電用配線及び該正常な通電用配線に設けられている通電用トランジスタを介して、電気負荷への通電を行うことができ、電気負荷の駆動に対する信頼性を向上させることができる。
【0005】
また、特許文献1に記載の電気負荷駆動装置では、電気負荷への通電期間中に、複数の通電用トランジスタのうちの各々1つだけがオンされる単独オン期間を発生させ、その各単独オン期間において、互いに接続された複数の通電用トランジスタの電気負荷側の出力端子の電圧をモニタすることにより、電気負荷への通電が行われているか否かを判定し、通電が行われていないと判定したならば、その単独オン期間においてオンされるはずの通電用トランジスタがオープン故障(即ち、オンしないオフのままの故障)していると判断するようになっている。
【0006】
そして、このような電気負荷駆動装置によれば、各通電用トランジスタのオープン故障を検出でき、また、電圧のモニタ箇所を上記複数の通電用配線同士の電気負荷側の接続点とすれば、上記通電用配線の何れかが、通電用トランジスタよりも電気負荷側の部分あるいは通電用トランジスタよりも電気負荷側とは反対側の部分で断線した場合でも、その通電用配線の断線を、通電用トランジスタのオープン故障として検出可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−158447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、電気負荷への通電期間中に、上記単独オン期間(複数の通電用トランジスタのうちの1つだけをオンし、他はオフする期間)を発生させるため、信頼性の面で不利である。
【0009】
具体的に説明すると、駆動対象の電気負荷が、何かのイベント発生時に短期間だけ駆動されるものではなく、継続的に駆動されるべきもの(例えば、車両においては、車載ユニットにイグニッション系の電源を供給するリレー等)であるとすると、電気負荷への通電期間中に、定期的に単独オン期間を発生させて故障検出を実施することとなる。そして、その単独オン期間においては、1つの通電用トランジスタだけで電気負荷に電流を流す状況になり、その状況が定期的に繰り返されることとなるため、通電用トランジスタの劣化を促進する可能性がある。
【0010】
また、単独オン期間中にオンされるべき通電用トランジスタがオープン故障していた場合は元より、その通電用トランジスタが設けられている通電用配線が断線していた場合にも、その単独オン期間において、電気負荷への通電が中断されてしまうこととなる。
【0011】
そこで、本発明は、複数の通電用トランジスタを介して電気負荷に電流を流す電気負荷駆動装置において、各通電用トランジスタが設けられている並列な通電用配線の断線を、各通電用トランジスタに大きな電流負担をかけることなく、また電気負荷への通電を中断してしまうことなく検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の電気負荷駆動装置は、電源の高電位側と低電位側とのうちの一方に一端が接続された電気負荷の他端に、一端が接続され、他端が電源の高電位側と低電位側とのうちの他方に接続された複数の並列な通電用配線と、その各通電用配線上に2つの出力端子が直列に設けられ、オンすることで該通電用配線を連通して電気負荷に電流を流す複数の通電用トランジスタとを備えており、電気負荷に連続して通電すべき通電期間において、前記複数の通電用トランジスタをオンさせることにより、該複数の通電用トランジスタを介して電気負荷に電流を流す。
【0013】
尚、通電用トランジスタが電気負荷よりも上流側に設けられるハイサイド駆動の形態ならば、電気負荷の一端は電源の低電位側に接続され、各通電用配線の上記他端(電気負荷側とは反対側)は電源の高電位側に接続されることとなる。逆に、通電用トランジスタが電気負荷よりも下流側に設けられるローサイド駆動の形態ならば、電気負荷の一端は電源の高電位側に接続され、各通電用配線の上記他端は電源の低電位側に接続されることとなる。
【0014】
そして更に、請求項1の電気負荷駆動装置は、検査用期間発生手段と断線判定手段とを備えている。
検査用期間発生手段は、前記通電期間中に、複数の通電用トランジスタのうちの1つである特定トランジスタを除く他の通電用トランジスタが、該通電用トランジスタの2つの出力端子間の電圧差が所定値以上となるように通電能力が下げられた低通電能力状態でオンされる検査用期間を、複数の各通電用トランジスタが切り替わって前記特定トランジスタとなるように発生させる。このため、通電期間中の各検査用期間では、通電用トランジスタのうちの何れか1つだけが、通電能力が下げられない通常状態でオンされ(即ち、出力端子間の電圧差ができるだけ小さくなるように飽和状態でオンされ)、他の通電用トランジスタは上記低通電能力状態でオンされる。
【0015】
そして、断線判定手段は、各通電用トランジスタの電気負荷側の出力端子に接続されており、その各通電用トランジスタの電気負荷側の出力端子のうちで、何れかの出力端子の電圧と他の出力端子の電圧との差が所定の閾値以上になったことを検知したならば、各通電用配線の何れかにおいて、通電用トランジスタよりも電気負荷側の部分が断線していると判定する。
【0016】
ここで、検査用期間発生手段及び断線判定手段による断線検出原理について説明する。
まず、断線が生じていない正常時であれば、各通電用トランジスタの電気負荷側の出力端子(以下、負荷側出力端子ともいう)は、並列な通電用配線によって互いに接続されているため、各通電用トランジスタの負荷側出力端子の電圧は常に同じになる。
【0017】
一方、通電用トランジスタの各々が設けられる各通電用配線のうち、ある通電用配線Lxの通電用トランジスタTrxよりも電気負荷側の部分(以下、負荷側部分ともいう)が断線したとすると、その通電用トランジスタTrxの負荷側出力端子だけが、他の通電用トランジスタの負荷側出力端子及び電気負荷から切り離されることとなる。
【0018】
このため、その通電用トランジスタTrxが上記特定トランジスタとなる検査用期間においては、通電用トランジスタTrxを除く他の通電用トランジスタの両出力端子間の電圧差が所定値以上となるのに対し、通電用トランジスタTrxの両出力端子間の電圧差は所定値以上とならず、該所定値よりも小さくなる。
【0019】
そして、各通電用配線の電気負荷側とは反対側が接続される電位(即ち、電源の高電位側と低電位側とのうちの上記他方)をVrefとすると、通電用トランジスタTrxの負荷側出力端子の電圧は、Vrefとの電位差が上記所定値よりも小さい電圧になるが、他の通電用トランジスタの負荷側出力端子の電圧は、Vrefとの電位差が上記所定値以上の電圧になり、結局、通電用トランジスタTrxの負荷側出力端子の電圧と、他の通電用トランジスタの負荷側出力端子の電圧とには、ある閾値以上の差が確実に生じることとなる。
【0020】
よって、ある通電用配線Lxの負荷側部分が断線したとすると、断線判定手段が、何れかの負荷側出力端子の電圧と他の負荷側出力端子の電圧との差が閾値以上になったと検知して、何れかの通電用配線の負荷側部分が断線していると判定することとなる。
【0021】
以上のように、請求項1の電気負荷駆動装置によれば、各通電用トランジスタが設けられている通電用配線の断線(詳しくは、通電用配線の負荷側部分の断線)を検出でき、しかも、電気負荷への通電期間において、1つの通電用トランジスタだけで電気負荷へ通電する期間は設けておらず、全ての通電用トランジスタを介して電気負荷へ通電するようになっているため、各通電用トランジスタに大きな電流負荷をかけることはない。また、何れかの通電用配線が断線していても、電気負荷への通電を中断してしまうこともない。よって、電気負荷の駆動に対する信頼性を従来装置よりも向上させることができる。
【0022】
ところで、請求項2に記載のように、検査用期間発生手段は、前記検査用期間を間欠的に発生させることが好ましい。
つまり、各通電用トランジスタを上記特定トランジスタとする各検査用期間を、次々に連続して発生させるようにしても良いが、そのようにするよりは、検査用期間を間欠的に発生させる(ある間隔を空けて発生させる)方が、各通電用トランジスタが低通電能力状態でオンされる頻度が小さくなり、各通電用トランジスタでの電力損失を低減することができるからである。
【0023】
また、請求項3に記載のように、断線判定手段は、検査用期間中に動作して、前記各出力端子(負荷側出力端子)のうちで、何れかの出力端子の電圧と他の出力端子の電圧との差が前記閾値以上になったことを検知したならば、その検知時の検査用期間において前記特定トランジスタとなっている通電用トランジスタが設けられた通電用配線において、通電用トランジスタよりも電気負荷側の部分(負荷側部分)が断線していると判定するように構成することができる。そして、この構成によれば、どの通電用配線の負荷側部分が断線しているのかを判別することができる。
【0024】
次に、請求項4の電気負荷駆動装置は、請求項1〜3の電気負荷駆動装置において、異常処置手段を備えている。そして、異常処置手段は、電気負荷への通電期間中に、複数の通電用トランジスタのうちの少なくとも1つについて、該通電用トランジスタの2つの出力端子間の電圧差を監視し、その電圧差が異常判定用の規定値以上であれば、そのとき以後に検査用期間発生手段が作動するのを禁止する。
【0025】
この構成によれば、もし検査用期間発生手段が、異常になって、通電用トランジスタの通電能力を必要以上に低下させてしまい、その結果、通電用トランジスタの両出力端子間の電圧差が異常に大きくなったとしたら、そのことが異常処置手段によって検知され、その検知時以後は、検査用期間発生手段の作動が禁止されることとなる。よって、検査用期間発生手段に異常が生じても、通電用トランジスタでの電力損失が極端に大きくなってしまうことや、電気負荷への通電電流が減少してしまうことを、回避することができる。
【0026】
尚、異常判定用の規定値は、前記所定値よりも大きい値に設定すれば良い。また、異常処置手段は、全ての通電用トランジスタについて両出力端子間の電圧差を監視するように構成すれば、最も信頼性を上げることができる。また、異常処置手段は、通電期間のうち、特に検査用期間中にだけ、上記電圧差を監視するように構成しても良い。
【0027】
次に、請求項5の電気負荷駆動装置は、請求項1〜4の電気負荷駆動装置において、検査終了手段を備えている。そして、検査終了手段は、断線判定手段により通電用配線が断線している(何れかの通電用配線の負荷側部分が断線している)と判定されたなら、そのとき以後に検査用期間発生手段が作動するのを禁止する。
【0028】
この構成によれば、何れかの通電用配線の断線が検出されると、他の正常な通電用配線に設けられている通電用トランジスタは低通電能力状態にされなくなるため、電気負荷への通電電流が減少してしまうのを回避することができる。
【0029】
次に、請求項6の電気負荷駆動装置では、請求項1〜5の電気負荷駆動装置において、通電用トランジスタは、FET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の電圧駆動型のトランジスタである。このため、当該装置は、駆動手段を備えており、その駆動手段は、前記通電期間において、各通電用トランジスタの制御端子に所定の駆動電圧を供給して該各通電用トランジスタをオンさせる。
【0030】
そして、検査用期間発生手段は、前記低通電能力状態でオンさせるべき通電用トランジスタである通電能力低下対象トランジスタの制御端子に前記駆動手段から供給される駆動電圧を制御する(具体的には、駆動手段から出力される駆動電圧を変える)ことにより、その通電能力低下対象トランジスタの通電能力を低下させて、該通電能力低下対象トランジスタを低通電能力状態でオンさせるようになっている。例えば、通電用トランジスタがNチャネル型のFETならば、駆動電圧(即ち、ゲート電圧)を低下させることで、その通電用トランジスタの通電能力を低下させる。
【0031】
そして更に、当該装置は、予備駆動電圧供給手段を備えている。その予備駆動電圧供給手段は、前記通電期間において、各通電用トランジスタの制御端子に対し、駆動手段とは並行して駆動電圧を供給する手段であり、その駆動電圧として、通電用トランジスタを前記低通電能力状態よりも通電能力が低い状態でオンさせるための予備駆動電圧を供給する。
【0032】
この構成によれば、もし検査用期間発生手段や駆動手段が異常になって、駆動手段から駆動電圧が、通電用トランジスタを全くオンさせることができないほどの値になってしまっても、各通電用トランジスタを、上記予備駆動電圧により、電気負荷に必要最低限の電流を流すことが可能な状態でオンさせることができるようになる。このため、電気負荷の駆動に対する信頼性を向上させることができる。
【0033】
次に、請求項7の電気負荷駆動装置は、請求項1〜6の電気負荷駆動装置において、検査中断手段を備えている。そして、その検査中断手段は、特定の状況か否かを判定し、該特定の状況であると判定している場合には、検査用期間発生手段が作動するのを禁止する。
【0034】
この構成によれば、特定の状況である場合に、検査用期間発生手段が作動して電気負荷への通電電流が減少してしまうことを、回避することができる。
例えば、電気負荷が、通電電流の大きさによって出力が変わるモータのようなアクチュエータであるとすると、検査中断手段が判定する特定の状況としては、電気負荷への通電電流を低下させたくない状況(即ち、通電電流を可能な限り大きくすべき状況)が考えられる。
【0035】
また例えば、検査中断手段が判定する特定の状況としては、請求項8に記載のように、電源の電圧が所定の値よりも低い状況、とすることができる。そして、このように構成すれば、電源の電圧が低い場合に検査用期間発生手段が作動して電気負荷への通電電流が一層減少してしまうことを、回避することができる。
【0036】
尚、検査中断手段は、電源の電圧を実際に監視することで、該電源の電圧が所定の値よりも低い状況か否かを判定するように構成することができる。また例えば、検査中断手段は、駆動対象の電気負荷以外の他の電気負荷のうち、特定の電気負荷への通電の実施を検知したならば、電源の電圧が所定の値よりも低い状況であると判定するように構成しても良い。
【0037】
また、検査中断手段の機能に関連する機能として、電源の電圧や、他の電気負荷の制御状態に応じて、電源の電圧が低くなる場合ほど、通電用トランジスタの通電能力を低下させる度合いを小さくしたり、検査用期間を短くしたり、検査用期間の発生間隔を長くしたりして、駆動対象の電気負荷への通電電流が減少しないようにしても良い。
【0038】
次に、請求項9の電気負荷駆動装置では、請求項1〜8の電気負荷駆動装置において、検査用期間発生手段は、電気負荷への通電期間中に、前記検査用期間とは別に、複数の通電用トランジスタの全てが同時に前記低通電能力状態でオンされる別種の検査用期間を発生させる。
【0039】
そして更に、請求項9の電気負荷駆動装置は、各通電用トランジスタの2つ出力端子に接続された反負荷側断線判定手段を備えており、その反負荷側断線判定手段は、前記別種の検査用期間中に、各通電用トランジスタの2つ出力端子間の電圧差が前記所定値以下の判定値未満であるか否かを判定して、2つの出力端子間の電圧差が判定値未満である通電用トランジスタがあれば、その通電用トランジスタが設けられた通電用配線において、該通電用トランジスタよりも電気負荷側とは反対側の部分が断線していると判定する。
【0040】
ここで、検査用期間発生手段が発生させる別種の検査用期間と反負荷側断線判定手段とによる断線検出原理について説明する。
まず、断線が生じていない正常時であれば、別種の検査用期間中において、各通電用トランジスタの2つ出力端子間の電圧差は、前記所定値以上となる。各通電用トランジスタは前述の低通電能力状態でオンされるからである。
【0041】
一方、通電用トランジスタの各々が設けられる各通電用配線のうち、ある通電用配線Lxの通電用トランジスタTrxよりも電気負荷側とは反対側の部分(即ち、電源の高電位側と低電位側とのうちの上記他方に接続された方の部分であり、以下、反負荷側部分ともいう)が断線したとすると、その通電用トランジスタTrxには電流が流れなくなり、他の通電用トランジスタだけを介して電気負荷に電流が流れる状態となる。
【0042】
このため、別種の検査用期間において、正常な通電用配線に設けられている通電用トランジスタの両出力端子間の電圧差は前記所定値以上となるが、反負荷側部分が断線した通電用配線Lxに設けられている通電用トランジスタTrxの両出力端子間の電圧差は、該通電用トランジスタTrxに電流が流れないことから、前記所定値よりも確実に小さくなる。
【0043】
そこで、反負荷側断線判定手段は、別種の検査用期間中に、2つの出力端子間の電圧差が前記所定値以下の判定値よりも小さくなっている通電用トランジスタがあれば、その通電用トランジスタが設けられた通電用配線の反負荷側部分が断線していると判定するようになっている。
【0044】
このような請求項9の電気負荷駆動装置によれば、各通電用トランジスタが設けられている通電用配線の反負荷側部分の断線も検出できる。しかも、請求項1の電気負荷駆動装置について述べた効果が依然として得られる。即ち、電気負荷への通電期間において、1つの通電用トランジスタだけで電気負荷へ通電する期間は設けておらず、全ての通電用トランジスタを介して電気負荷へ通電するようになっているため、各通電用トランジスタに大きな電流負荷をかけることがなく、また、何れかの通電用配線が断線していても、電気負荷への通電を中断してしまうこともない。よって、電気負荷の駆動に対する信頼性を更に向上させることができる。
【0045】
ところで、検査用期間発生手段は、通電期間中において、前記別種の検査用期間を1回のみ発生させるように構成しても良いが、請求項10に記載のように、前記別種の検査用期間を間欠的に発生させることが好ましい。反負荷側断線判定手段による断線検出を間欠的に繰り返し行うことができるからである。また、各通電用トランジスタが低通電能力状態でオンされる頻度が小さくなるため、各通電用トランジスタでの電力損失を低減することもできる。
【0046】
また、前述の検査終了手段は、反負荷側断線判定手段によって通電用配線が断線していると判定された場合にも、その判定時以後に検査用期間発生手段が作動するのを禁止するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態のECUを表す構成図である。
【図2】駆動回路の構成を表す構成図である。
【図3】第1実施形態のECUの作用を説明するタイムチャートである。
【図4】第1実施形態の故障判定部が行う負荷側断線検出処理を表すフローチャートである。
【図5】マイコンが行う電圧変動制御禁止処理を表すフローチャートである。
【図6】第2実施形態のECUの作用を説明するタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における電圧変動指示信号SC1,SC2の出力パターンの具体例を表すタイムチャートである。
【図8】第2実施形態の故障判定部が行う反負荷側断線検出処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明が適用された実施形態の電気負荷駆動装置としての電子制御装置(以下、ECUという)について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のECU11を表す構成図である。
【0049】
このECU11は、車両に搭載され、同車両に搭載されたリレー13のコイル(以下、リレーコイルともいう)13aに通電して、該リレー13をオンさせるものである。そして、リレー13は、オンすること(接点が短絡すること)で、バッテリ15の電圧であるバッテリ電圧VBを、イグニッション系の電源電圧として、他の車載ユニットや機器に供給するものである。このため、ECU11は、車両の運転者がイグニッションオンの操作を行うと、リレー13をオンして、該リレー13から他の車載ユニットや機器にバッテリ電圧VBを供給し、その後、運転者がイグニッションオフの操作を行うと、他の給電停止条件が成立したことを確認した上で、リレー13をオフする。
【0050】
また、本実施形態において、ECU11のリレーコイル13aに対する駆動形態は、ハイサイド駆動である。このため、リレーコイル13aの一端は、ECU11の外部において、バッテリ15のマイナス端子(電源の低電位側に相当)に、車両内のグランドラインを介して接続されている。
【0051】
そして、ECU11は、リレーコイル13aの他端(グランドライン側とは反対側の端部)が接続された端子(電流出力端子)17と、バッテリ15のプラス端子(電源の高電位側に相当)に接続された端子(電源端子)19と、オンすることでリレーコイル13aに電流を流す2つの通電用トランジスタTr1,Tr2とを備えている。尚、本実施形態において、2つの通電用トランジスタTr1,Tr2は、Nチャネル型のMOSFETである。
【0052】
ここで、2つの通電用トランジスタTr1,Tr2は、リレーコイル13aに電流を流すための電流経路において、リレーコイル13aに対し直列に、且つ、互いに並列に設けられている。
【0053】
具体的に説明すると、ECU11には、端子17に一端が接続され、他端が端子19に接続された2つの並列な通電用配線L1,L2が備えられており、その各通電用配線L1,L2上に、各通電用トランジスタTr1,Tr2の2つの出力端子(ドレイン端子とソース端子)が、ドレイン端子の方を上流側(端子19側)にして直列に設けられている。
【0054】
このため、各通電用配線L1,L2は、通電用トランジスタTr1,Tr2よりも電気負荷としてのリレーコイル13a側の部分であって、通電用トランジスタTr1,Tr2のソース端子と当該ECU11の端子17とを接続する負荷側部分LS1,LS2と、通電用トランジスタTr1,Tr2よりもリレーコイル13a側とは反対側の部分であって、通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン端子と当該ECU11の端子19とを接続する反負荷側部分LD1,LD2とからなっている、と言える。また、本実施形態では、通電用トランジスタTr1,Tr2のソース端子が、電気負荷側の出力端子(負荷側出力端子)に相当する。
【0055】
また、ECU11は、リレーコイル13aへの通電を制御するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)20と、マイコン20から出力されるオン/オフ指示信号(駆動信号)SD1に応じて、通電用トランジスタTr1をオン/オフさせる駆動回路21と、マイコン20から出力されるオン/オフ指示信号SD2に応じて、通電用トランジスタTr2をオン/オフさせる駆動回路22とを備えている。更に、ECU11は、通電用配線L1,L2の断線を検出するために、電圧変動制御部31と故障判定部32とを備えている。
【0056】
駆動回路21は、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1が、アクティブレベル(本実施形態ではハイ)のときに、通電用トランジスタTr1のゲート端子(制御端子に相当)に、所定の駆動電圧を供給して該通電用トランジスタTr1をオンさせ、同様に、駆動回路22も、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD2がハイのときに、通電用トランジスタTr2のゲート端子に、所定の駆動電圧を供給して該通電用トランジスタTr2をオンさせる。
【0057】
そして、マイコン20は、車両の運転者がイグニッションオンの操作を行ったことを検知すると、図3の2,3段目に示すように、駆動回路21,22へのオン/オフ指示信号SD1,SD2を同時にハイにし、その後、運転者がイグニッションオフの操作を行ったことを検知すると、他の給電停止条件が成立したか否かを判断して、給電停止条件が成立したなら、図3の2,3段目に示すように、オン/オフ指示信号SD1,SD2を同時にローにする。
【0058】
つまり、マイコン20は、リレーコイル13aに連続して通電すべき通電期間において、オン/オフ指示信号SD1,SD2を両方共にハイにすることにより、駆動回路21,22に2つの通電用トランジスタTr1,Tr2を同時にオンさせ、そのオンした2つの通電用トランジスタTr1,Tr2を介してリレーコイル13aに電流を流す。
【0059】
尚、図1において図示を省略しているが、マイコン20には、運転者がイグニッションオンとイグニッションオフの各操作を行ったことを示す信号が入力されており、マイコン20は、その信号に基づいて、各操作の有無を検知する。また、給電停止条件としては、例えば、リレー13によって給電される車載ユニットからの給電停止許可信号を通信線(図示省略)を介して受信した、といった条件が考えられる。
【0060】
次に、駆動回路21,22について詳しく説明する。尚、駆動回路21と駆動回路22は、同じ構成を有するものであるため、ここでは、駆動回路21の方を例に挙げて説明する。
【0061】
図2に示すように、駆動回路21は、端子19からECU11の内部に供給されるバッテリ電圧VB(本実施形態では通常12〜14V)を昇圧して出力する昇圧回路25と、端子19からのバッテリ電圧VBがアノードに入力されるダイオード26と、昇圧回路25の電圧出力端子と通電用トランジスタTr1のゲート端子との間に設けられたアナログスイッチとしてのスイッチ素子27と、ダイオード26のカソードと通電用トランジスタTr1のゲート端子との間に設けられたアナログスイッチとしてのスイッチ素子28とを備えている。
【0062】
そして、スイッチ素子27,28は、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1がハイのときにオンして、昇圧回路25の電圧出力端子とダイオード26のカソードとを、通電用トランジスタTr1のゲート端子に接続させ、逆に、オン/オフ指示信号SD1がローのときにはオフして、昇圧回路25の電圧出力端子とダイオード26のカソードとを、通電用トランジスタTr1のゲート端子から切り離す。
【0063】
また、昇圧回路25は、バッテリ電圧VBを昇圧して該バッテリ電圧VDよりも高い電圧を当該昇圧回路25の電圧出力端子から出力する電圧生成部25aと、その電圧生成部25aの出力電圧(即ち、当該昇圧回路25の出力電圧)を調節する電圧制御部25bとを備えている。
【0064】
そして、電圧制御部25bは、電圧変動制御部31から出力される後述の電圧変動指示信号SC1が非アクティブレベルのローであるときには、電圧生成部25aの出力電圧を、通電用トランジスタTr1のゲート端子に供給されることで該通電用トランジスタTr1を完全にオン(即ち飽和状態でオン)させることが可能な電圧(例えば20Vであり、以下、完全オン用電圧という)にする。
【0065】
これに対し、電圧変動指示信号SC1がアクティブレベルのハイであるときには、電圧制御部25bは、電圧生成部25aの出力電圧を、バッテリ電圧VBよりも高いが上記完全オン用電圧よりは低い特定の電圧にする。その特定の電圧とは、通電用トランジスタTr1のゲート端子に供給されることで該通電用トランジスタTr1を完全オン時(飽和状態でのオン時)よりも通電能力が低い状態でオンさせる電圧であって、該通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース間電圧(ドレイン・ソース間の電圧差)を完全オン時よりも大きい所定値にさせることとなる電圧(例えば15Vであり、以下、通電能力低下用電圧という)である。
【0066】
このため、図3に示すように、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1がハイのときに、電圧変動指示信号SC1がローならば、通電用トランジスタTr1のゲート電圧(ゲート端子の電圧)VG1が、昇圧回路25からの完全オン用電圧(20V)となり、通電用トランジスタTr1は完全にオンして、該通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース間電圧は例えば0.5Vとなる。このことから、図3において、オン/オフ指示信号SD1がハイで、電圧変動指示信号SC1がローの場合、通電用トランジスタTr1の出力電圧であるソース電圧(ソース端子の電圧)VS1は、ドレイン電圧(ドレイン端子の電圧)VD1であるバッテリ電圧VB(14V)よりも0.5V低い13.5Vになっている。
【0067】
また、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1がハイのときに、電圧変動指示信号SC1がハイならば、通電用トランジスタTr1のゲート電圧VG1は、昇圧回路25からの通電能力低下用電圧(15V)となり、通電用トランジスタTr1は、ドレイン・ソース間電圧が完全オン時よりも大きい所定値(本実施形態では1V)となる低通電能力状態でオンすることとなる。このことから、図3において、オン/オフ指示信号SD1がハイで、電圧変動指示信号SC1もハイの場合、通電用トランジスタTr1のソース電圧VS1は、バッテリ電圧VB(14V)よりも1V低い13Vになっている。
【0068】
そして、駆動回路21の上記構成及び動作は、駆動回路22についても同様であり、上記説明において、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1が、オン/オフ指示信号SD2に代わり、電圧変動制御部31からの電圧変動指示信号SC1が、電圧変動指示信号SC2に代わり、通電用トランジスタTr1が、通電用トランジスタTr2に代わるだけである。
【0069】
一方、図示を省略しているが、各通電用トランジスタTr1,Tr2のゲート端子とソース端子との間には、誤動作防止用の抵抗が設けられているため、オン/オフ指示信号SD1,SD2がローになって駆動回路21,22のスイッチ素子27,28がオフすれば、通電用トランジスタTr1,Tr2のゲート・ソース間電圧は0Vになり、通電用トランジスタTr1,Tr2は完全にオフする。
【0070】
また、駆動回路21,22において、オン/オフ指示信号SD1,SD2がハイの場合に、万一、昇圧回路25の出力電圧が通電能力低下用電圧より低い電圧(例えば0V)なったとしても、通電用トランジスタTr1,Tr2のゲート端子には、ダイオード26及びスイッチ素子28を介して、バッテリ電圧VBからダイオード26の順方向電圧Vf(約0.6V)だけ降下した電圧(=VB−Vf:予備駆動電圧に相当)が供給されるため、通電用トランジスタTr1,Tr2を、上記低通電能力状態よりも通電能力は低いものの、リレーコイル13aに必要最低限の電流を流すことが可能な状態でオンさせることができる。つまり、駆動回路21,22におけるダイオード26とスイッチ素子28は、こうしたフェイルセーフのために設けられている。
【0071】
次に、電圧変動制御部31について説明する。
電圧変動制御部31は、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1,SD2が両方共にハイになるリレーコイル13aへの通電期間において、通電用トランジスタTr1,Tr2へのゲート電圧VG1,VG2を変動させることで、その通電用トランジスタTr1,Tr2のソース電圧(出力電圧)VS1,VS2を変動させるものであり、具体的には、通電期間において、図3の4,5段目に示すように、所定の時間Ta毎に、駆動回路21への電圧変動指示信号SC1と、駆動回路22への電圧変動指示信号SC2とを、交互に切り替えて、所定の時間Tb(<Ta)だけハイにする。換言すれば、電圧変動指示信号SC1,SC2の各々を、一定の時間「2×Ta」毎に、且つ、互いに一定時間Taの位相差を付けて、所定の時間Tbだけハイにする。
【0072】
このため、リレーコイル13aへの通電期間においては、通電用トランジスタTr1,Tr2のうちの何れか1つだけが完全にオンされ他が低通電能力状態でオンされる、という時間Tbの期間が、一定時間Ta毎に発生し、しかも、その時間Tbの期間中に完全にオンされる唯一の通電用トランジスタは、一定時間Ta毎に順次切り替わる(本実施形態では通電用トランジスタが2つであるため、交互に切り替わる)こととなる。尚、本実施形態では、その時間Tbの各期間が、通電用配線L1,L2の負荷側部分LS1,LS2の断線を検出するために発生される検査用期間である。
【0073】
そして、本実施形態では、図3に示すように、バッテリ電圧VBが14Vであるとすると、電圧変動指示信号SC1がハイになって通電用トランジスタTr1のゲート電圧VG1が完全オン用電圧(20V)から通電能力低下用電圧(15V)に低下したときには、通電用トランジスタTr1が低通電能力状態でオンすることにより、該通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース間電圧が0.5Vから1Vに増加して、該通電用トランジスタTr1のソース電圧VS1が13.5Vから13Vに低下する。
【0074】
同様に、電圧変動指示信号SC2がハイになって通電用トランジスタTr2のゲート電圧VG2が完全オン用電圧(20V)から通電能力低下用電圧(15V)に低下したときには、通電用トランジスタTr2が低通電能力状態でオンすることにより、該通電用トランジスタTr2のドレイン・ソース間電圧が0.5Vから1Vに増加して、該通電用トランジスタTr2のソース電圧VS2が13.5Vから13Vに低下する。
【0075】
そして、通電用トランジスタTr1,Tr2のソース端子はECU11の端子17に接続されているため、通電用トランジスタTr1,Tr2の何れかが低通電能力状態でオンされる所定時間Tbの検査用期間においては、図3の10段目(下から2段目)に示すように、端子17の電圧である負荷電圧(リレーコイル13aへの印加電圧)も、13.5Vから13Vに低下する。
【0076】
また、電圧変動制御部31は、マイコン20によって作動(即ち、電圧変動指示信号SC1,CS2をハイにすること)の許可と禁止がされるようになっている。
次に、故障判定部32について説明する。
【0077】
故障判定部32は、通電用トランジスタTr1,Tr2の各出力端子(ドレイン端子及びソース端子)に接続されており、通電用配線L1,L2の負荷側部分LS1,LS2の断線を検出するための処理として、図4の負荷側断線検出処理を行う。
【0078】
図4に示すように、負荷側断線検出処理では、各通電用トランジスタTr1,Tr2のソース電圧VS1,VS2をモニタして、そのソース電圧VS1,VS2の差が、所定の閾値以上になったか否かを判定する(S110)。そして、ソース電圧VS1,VS2の差が閾値以上になったことを検知したならば(S110:YES)、負荷側部分LS1,LS2の何れかが断線していると判断して、その断線の発生を示す負荷側断線検出信号をマイコン20に出力する(S120)。
【0079】
尚、本実施形態では、通電用トランジスタ及び通電用配線が2つであるが、3つ以上であっても同様であり、負荷側断線検出処理では、結局は、各通電用トランジスタのソース電圧のうちで、何れかのソース電圧と他のソース電圧との差が閾値以上になったことを検知したならば(S110:YES)、何れかの通電用配線の負荷側部分が断線していると判定して、負荷側断線検出信号を出力している(S120)。また、故障判定部32は、図4の負荷側断線検出処理を、常時行っても良いし、リレーコイル13aへの通電期間にだけ行っても良いし、その通電期間における各検査用期間にだけ行っても良い。一方、マイコン20は、故障判定部32からの負荷側断線検出信号を受けると、その負荷側断線検出信号が意味する故障が発生したことを示す故障コードを不揮発性メモリに記憶したり、故障の発生を運転者に報知するための処理(警告灯の点灯処理や、故障発生を示すメッセージをディスプレイに表示する処理等)を行ったりする。
【0080】
ここで、このような負荷側部分LS1,LS2の断線検出原理について説明する。
まず、断線が生じていない正常時であれば、各通電用トランジスタTr1,Tr2の負荷側出力端子であるソース端子は、通電用配線L1,L2の負荷側部分LS1,LS2によって互いに接続されているため、それらソース端子の電圧VS1,VS2は常に同じになる。
【0081】
これに対し、負荷側部分LS1,LS2の何れかが断線すると、その断線した負荷側部分LSx(xは1,2の何れか)に対応する方の通電用トランジスタTrxのソース端子は、他の通電用トランジスタのソース端子及びリレーコイル13aから切り離されることとなる。
【0082】
このため、その通電用トランジスタTrx以外の通電用トランジスタが前述の低通電能力状態でオンされる時間Tbの検査用期間においては、通電用トランジスタTrxのドレイン・ソース間電圧が完全オン時の0.5Vとなるのに対し、通電用トランジスタTrx以外の通電用トランジスタのドレイン・ソース間電圧は0.5Vよりも大きい1Vとなる。よって、通電用トランジスタTrxのソース電圧VSxは、バッテリ電圧VBとの電位差が0.5Vである電圧(=VB−0.5V)になるが、他の通電用トランジスタのソース電圧は、バッテリ電圧VBとの電位差が1Vである電圧(=VB−1V)になり、結局、通電用トランジスタTrxのソース電圧VSxと、他の通電用トランジスタのソース電圧とには、ある閾値以上の差が確実に生じることとなる。
【0083】
そこで、本実施形態では、図4のS110で用いる閾値を、1Vと0.5Vとの差分と同じか該差分よりも若干小さい値(例えば0.4V)に設定しており、ソース電圧VS1,VS2の差が、その閾値以上になったことを検知したならば(S110:YES)、負荷側部分LS1,LS2の何れかが断線していると判断している(S120)。
【0084】
よって、例えば、図3に示すように、バッテリ電圧VBが14Vであり、時刻t1で通電用配線L2の負荷側部分LS2が断線したとすると、その時刻t1の後に、電圧変動指示信号SC1がハイになり且つ電圧変動指示信号SC2がローとなる期間であって、通電用トランジスタTr1,Tr2のうち、通電用トランジスタTr2だけが完全にオンされ、通電用トランジスタTr1は低通電能力状態でオンされる時間Tbの検査用期間が到来すると、その検査用期間において、通電用トランジスタTr1のソース電圧VS1が13Vとなるのに対し、通電用トランジスタTr2のソース電圧VS2は13.5Vとなり、その結果、両ソース電圧VS1,VS2の差が上記閾値以上になって、故障判定部32の図4の処理により、負荷側部分LS1,LS2の何れかが断線していると判断されることとなる。ただし、これらの電圧値は一例である。
【0085】
尚、例えば、通電用配線L2の負荷側部分LS2が断線した場合、電圧変動指示信号SC1がローとなり且つ電圧変動指示信号SC2がハイとなる検査用期間では、通電用トランジスタTr1は、ゲート電圧VG1が低下されなくても、つながっているリレーコイル13aに電流を流すため、ソース電圧VS1が正常時よりも若干低下し、通電用トランジスタTr2は、リレーコイル13aがつながっていないものの、ゲート電圧VG2が15Vに下げられるため、やはりソース電圧VS2が正常時よりも若干低下する。よって、ソース電圧VS1,VS2の差が閾値以上にならず、断線は検知されない。
【0086】
また、故障判定部32は、下記の動作を行うオン状態監視部32aを有している。
即ち、オン状態監視部32aは、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1,SD2が両方共にハイなっている通電期間中において動作し、各通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧を監視して、何れかの通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が異常判定用の規定値Vdso以上であれば、回路の異常を示す回路異常信号をマイコン20に出力する。
【0087】
尚、上記規定値Vdsoは、通電用トランジスタTr1,Tr2が低通電能力状態でオンされた場合のドレイン・ソース間電圧(1V)よりも、大きい値(例えば4V)に設定されている。また、電圧変動制御部31は、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1,SD2が両方共にハイなっている通電期間中において、例えばハイの通電期間中信号を故障判定部32へ出力するようになっており、故障判定部32のオン状態監視部32aは、その通電期間中信号がハイになっている間、動作する。また、通電期間を示す上記通電期間中信号の代わりに、マイコン20からのオン/オフ指示信号SD1,SD2が、故障判定部32にも入力されるようにしても良い。
【0088】
次に、マイコン20が通電用配線L1,L2の断線検出に関連して行う電圧変動制御禁止処理について、図5を用い説明する。尚、マイコン20は、オン/オフ指示信号SD1,SD2を両方共にハイしている通電期間において、図5の電圧変動制御禁止処理を、例えば一定時間毎に繰り返し実行する。また、マイコン20は、電源の投入により起動した直後にて、電圧変動制御部31の作動を許可している。
【0089】
図5に示すように、マイコン20は、電圧変動制御禁止処理を開始すると、まずS210にて、何れかの通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が前述の規定値Vdso以上になったか否かを、故障判定部32から回路異常信号が出力されたか否かによって判定する。
【0090】
そして、通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が規定値Vdso以上になっていないと判定した場合には、S220に進む。
S220では、故障判定部32によって通電用配線L1,L2の断線(負荷側部分LS1,LS2の断線)が検出されたか否かを判定する。具体的には、故障判定部32から負荷側断線検出信号が出力されたか否かを判定する。そして、通電用配線L1,L2の断線が検出されていなければ、S240に進む。
【0091】
一方、上記S210にて、何れかの通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が規定値Vdso以上になったと判定した場合、あるいは、上記S220にて、故障判定部32により通電用配線L1,L2の断線が検出されたと判定した場合には、S230に進む。そして、S230にて、そのとき以後に電圧変動制御部31が作動するのを禁止(電圧変動指示信号SC1,CS2をハイにすることを禁止)し、その後、当該電圧変動制御禁止処理を終了する。
【0092】
尚、S230による電圧変動制御部31の作動禁止は、リレーコイル13aへの今回の通電期間が終わって、次回の通電期間になっても継続される。そして、マイコン20は、例えば、その後に再起動したとき、あるいは、ECU11の外部から与えられる所定の禁止解除信号を受けたときに、S230による電圧変動制御部31の作動禁止を解除(即ち、作動を許可)する。
【0093】
また、S240では、端子19からのバッテリ電圧VBをA/D変換して検出し、バッテリ電圧VBが所定の低下判定値Vblよりも低下したか否かを判定する。そして、バッテリ電圧VBが低下判定値Vblよりも低下していないと判定した場合には、S250に進む。尚、低下判定値Vblは、バッテリ電圧VBの通常値よりも低い値(例えば10V)に設定されている。
【0094】
S250では、通電することでバッテリ電圧VBが低下判定値Vblよりも低下する可能性のある特定の電気負荷(例えばスタータやデフォッガ等)への通電が、実施されているか否かを判定する。例えば、このS250では、特定の電気負荷を制御する他の車載ユニットから、該特定の電気負荷の制御状態を示す情報を取得して、その情報に基づき判定する。そして、特定の電気負荷への通電が実施されていないと判定した場合には、S260に進み、後述のS270による電圧変動制御部31の作動禁止を解除し、その後、当該電圧変動制御禁止処理を終了する。
【0095】
一方、上記S240にて、バッテリ電圧VBが低下判定値Vblよりも低下していると判定した場合、あるいは、上記S250にて、特定の電気負荷への通電が実施されていると判定した場合には、バッテリ電圧VBが低下判定値Vblよりも低い状況であると判定してS270に移行する。
【0096】
そして、S270では、電圧変動制御部31が作動するのを禁止し、その後、当該電圧変動制御禁止処理を終了する。但し、このS270による電圧変動制御部31の作動禁止は、上記S260で解除されるものであり、上記S240と上記S250との何れかで“YES”と判定されている場合に、電圧変動制御部31の作動を中断させるものである。
【0097】
以上のようなECU11によれば、各通電用トランジスタTr1,Tr2が設けられている通電用配線L1,L2の負荷側部分LS1,LS2の断線を検出でき、しかも、リレーコイル13aへの通電期間において、1つの通電用トランジスタ(Tr1,Tr2の何れか)だけでリレーコイル13aへ通電する期間は設けておらず、全ての通電用トランジスタTr1,Tr2を介してリレーコイル13aへ通電するようになっている。
【0098】
このため、各通電用トランジスタTr1,Tr2に大きな電流負荷をかけることがない。また、通電用配線L1,L2の何れかが断線していても、リレーコイル13aへの通電を中断してしまうこともない。よって、リレーコイル13aへの通電によるリレー13の駆動に対する信頼性を高めることができる。
【0099】
ところで、図3に示した時間Tbの検査用期間(電圧変動指示信号SC1,SC2の何れかがハイになる期間)は、次々に連続して発生させるようにしても良いが、本実施形態の如く一定時間Ta毎に(間欠的に)発生させる方が、各通電用トランジスタTr1,Tr2での電力損失を低減することができるため有利である。
【0100】
また、本実施形態では、リレーコイル13aへの通電期間において、何れかの通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が前述の規定値Vdso以上になったならば、故障判定部32のオン状態監視部32aと、マイコン20による図5のS210及びS230の処理とにより、そのことが検知されて、そのとき以後に電圧変動制御部31が作動するのが禁止される。
【0101】
このため、例えば、駆動回路21,22のうちの一方又は両方(ここでは駆動回路21の方のみとする)における昇圧回路25の電圧制御部25bの異常として、電圧変動制御部31からの電圧変動指示信号SC1がハイになった場合の昇圧回路25の出力電圧を通電能力低下用電圧よりも低くしてしまうという回路異常が生じ、通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース間電圧が規定値Vdso以上になったとしたら、そのことが検知されて、その検知時以後は、電圧変動制御部31が電圧変動指示信号SC1,CS2をハイにすることが禁止されることとなる。よって、回路異常によって通電用トランジスタTr1での電力損失が極端に大きくなってしまうことや、リレーコイル13aへの通電電流が減少してしまうことを、回避することができる。そして、こうした効果は、駆動回路22及び通電用トランジスタTr2の方についても同様である。
【0102】
尚、故障判定部32のオン状態監視部32aは、通電用トランジスタTr1,Tr2のうちの何れか一方だけのドレイン・ソース間電圧を監視するように構成しても良いが、各通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧を監視することで、信頼性を一層上げることができる。また、そのオン状態監視部32aは、リレーコイル13aへの通電期間のうち、特に、電圧変動指示信号SC1,CS2の何れかがハイになる検査用期間中にだけ動作して、各通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧を監視するように構成しても良い。
【0103】
更に、本実施形態では、通電用配線L1,L2の何れかの断線が故障判定部32によって検出されたなら、そのとき以後は、電圧変動制御部31が作動するのが禁止される(S220:YES→S230)ため、他の正常な通電用配線に設けられている通電用トランジスタは低通電能力状態にされなくなり、リレーコイル13aへの通電電流が減少してしまうのを回避することができる。
【0104】
また、本実施形態では、駆動回路21,22における昇圧回路25やスイッチ素子27が異常になって、スイッチ素子27から通電用トランジスタTr1,Tr2のゲート端子への駆動電圧が、通電用トランジスタTr1,Tr2を全くオンさせることができないほどの値になってしまっても、ダイオード26とスイッチ素子28があるため、通電用トランジスタTr1,Tr2を、リレーコイル13aに必要最低限の電流(リレー13のオンに必要な電流)を流すことが可能な状態でオンさせることができる。このため、リレー13の駆動に対する信頼性を一層向上させることができる。
【0105】
また、本実施形態では、マイコン20が、図5のS240又はS250の処理により、バッテリ電圧VBが低下判定値Vblよりも低い状況であると判定している場合には、電圧変動制御部31の作動を禁止する(S270)ため、バッテリ電圧VBが低い場合に、電圧変動指示信号SC1,CSがハイになることでリレーコイル13aへの通電電流が一層減少してしまうことを、回避することができる。尚、図5におけるS240とS250との判定は、何れか一方だけが行われるようにしても良い。
【0106】
一方、本実施形態では、リレーコイル13aが通電対象の電気負荷に相当しているが、駆動対象としては、リレー13が電気負荷に相当しているとも言える。また、電圧変動制御部31と昇圧回路25の電圧制御部25bとが、検査用期間発生手段に相当し、故障判定部32(特に図4の負荷側断線検出処理を行う部分)が、断線判定手段に相当している。また、故障判定部32のオン状態監視部32aと、マイコン20による図5のS210及びS230の処理とが、異常処置手段に相当し、マイコン20による図5のS220及びS230の処理が、検査終了手段に相当している。また、駆動回路21,22における昇圧回路25の電圧生成部25aとスイッチ素子27が、駆動手段に相当し、駆動回路21,22におけるダイオード26とスイッチ素子28が、予備駆動電圧供給手段に相当している。また、マイコン20による図5のS240〜S270の処理が、検査中断手段に相当している。
【0107】
次に、変形例について述べる。
まず、電圧変動制御部31からの電圧変動指示信号SC1,SC2が、故障判定部32にも入力されるようにして、故障判定部32が、検査用期間中であることと、その検査用期間においては何れの通電用トランジスタが完全オン状態であるかとを、認識できるようにする。つまり、電圧変動指示信号SC1,SC2の何れかがハイならば、検査用期間でると認識でき、その電圧変動指示信号SC1,SC2のうちのローである方に対応する通電用トランジスタが完全にオンされる方である(逆に言えば、ハイである方に対応する通電用トランジスタは低通電能力状態である)と認識できる。
【0108】
そして、故障判定部32は、図4の負荷側断線検出処理を、検査用期間中にだけ行うようにする。更に、故障判定部32は、その負荷側断線検出処理で、ソース電圧VS1,VS2の差が閾値以上になったことを検知したならば(S110:YES)、現在の検査用期間において完全オン状態にされている通電用トランジスタが設けられた方の通電用配線の負荷側部分が断線していると判定し、負荷側断線検出信号として、断線していると判定した方の通電用配線が識別可能な情報を付加した負荷側断線検出信号を、マイコン20に出力する。
【0109】
そして、このように構成すれば、マイコン20にて、通電用配線L1,L2のうちの何れの負荷側部分が断線しているのかを判別することができる。例えば、図3の例では、時刻t1で通電用配線L2の負荷側部分LS2が断線したとすると、その時刻t1の後に、電圧変動指示信号SC1がハイとなり且つ電圧変動指示信号SC2がローとなる検査用期間において、通電用配線L2の負荷側部分LS2が断線していると判定され、そのことを示す負荷側断線検出信号が、故障判定部32からマイコン20へ出力されることとなる。
【0110】
一方、他の変形例として、ECU11では、バッテリ電圧VBや、他の電気負荷の制御状態に応じて、バッテリ電圧VBが低くなる場合ほど、検査用期間において通電用トランジスタTr1,Tr2の通電能力を低下させる度合いを小さく(具体的には、ゲート電圧VG1,VG2を低下させる電圧値を小さく)したり、検査用期間の長さ(時間Tbの長さ)を短くしたり、検査用期間の発生間隔(時間Taの長さ)を長くしたりして、リレーコイル13aへの通電電流が減少しないようにしても良い。
【0111】
また、故障判定部32からの回路異常信号と負荷側断線検出信号とが、電圧変動制御部31に入力されるようにし、電圧変動制御部31は、その回路異常信号と負荷側断線検出信号との何れかを受けると、作動が禁止されるように構成してもよい。そして、この場合には、図5におけるS210〜S230の処理を省略することができる。
【0112】
また、図5におけるS240〜S270の処理を、マイコン20とは別の回路が行うように構成してもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のECUについて説明する。尚、符号は、第1実施形態と同じものを用いる。
【0113】
第2実施形態のECU11は、第1実施形態と比較すると、下記(1),(2)の点が異なっている。
(1)電圧変動制御部31は、リレーコイル13aへの通電期間において、電圧変動指示信号SC1,SC2を、図3の4,5段目に示したパターンでハイ/ローさせるだけでなく、図6の4,5段目に示すパターンでもハイ/ローさせる。
【0114】
例えば、図3の4,5段目に示したように、一定時間Taが経過する毎に電圧変動指示信号SC1,SC2のうちの一方を切り替えて所定時間Tbだけハイにする第1の検査用期間発生動作を、「2×N」回(Nは1以上の整数)行ったら(即ち、電圧変動指示信号SC1,SC2の各々をN回ずつハイにしたら)、図6の4,5段目に示すように、一定時間Taが経過する毎に電圧変動指示信号SC1,SC2の両方を同時に所定時間Tbだけハイにする第2の検査用期間発生動作を、M回(Mは1以上の整数)行う。そして、上記第1の検査用期間発生動作を「2×N」回行うことと、第2の検査用期間発生動作をM回行うこととを、通電期間において繰り返す。
【0115】
ここで、図6は、第2の検査用期間発生動作だけが行われている場合を表しているが、電圧変動指示信号SC1,SC2は、具体的には、例えば図7に示すパターンでハイ/ローに切り替えられるようにすることができる。その図7は、上記NとMが1である場合を例示している。このため、図7の例では、「3×Ta」の時間を1サイクルとしており、その1サイクルにおいて、時間Ta毎に、電圧変動指示信号SC1だけがハイになる検査用期間と、電圧変動指示信号SC2だけがハイになる検査用期間と、電圧変動指示信号SC1,SC2の両方がハイになる検査用期間とが発生することとなる。
【0116】
そして、本第2実施形態において、電圧変動指示信号SC1,SC2の両方がハイになる検査用期間は、電圧変動指示信号SC1,SC2の一方がハイになる検査用期間とは別種の検査用期間であって、通電用配線L1,L2の反負荷側部分LD1,LD2の断線を検出するために発生される検査用期間であり、以下、別種の検査用期間という。
【0117】
(2)電圧変動制御部31からの電圧変動指示信号SC1,SC2が、故障判定部32にも入力される。
そして、故障判定部32は、電圧変動指示信号SC1,SC2の両方がハイになっている別種の検査用期間において、通電用配線L1,L2の反負荷側部分LD1,LD2の断線を検出するための処理として、図8の反負荷側断線検出処理を行う。
【0118】
図8に示すように、反負荷側断線検出処理では、各通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が所定の判定値未満であるか否かを判定する(S310)。
そして、ドレイン・ソース間電圧が判定値未満である通電用トランジスタがあれば(S310:YES)、通電用配線L1,L2のうち、ドレイン・ソース間電圧が判定値未満となった通電用トランジスタが設けられている方の反負荷側部分(LD1,LD2の何れか)が断線していると判定して、その反負荷側部分が断線したことを示す反負荷側断線検出信号をマイコン20に出力する(S320)。
【0119】
尚、本実施形態では、断線が生じていない正常時において、電圧変動指示信号SC1,SC2がハイになったときの通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧が1Vであることから、上記判定値は、その1V以下の値に設定されている。また、マイコン20は、故障判定部32からの反負荷側断線検出信号を受けると、その反負荷側断線検出信号が意味する故障が発生したことを示す故障コードを不揮発性メモリに記憶したり、故障の発生を運転者に報知するための処理(警告灯の点灯処理や、故障発生を示すメッセージをディスプレイに表示する処理等)を行ったりする。
【0120】
ここで、このような反負荷側部分LD1,LD2の断線検出原理について説明する。
まず、断線が生じていない正常時であれば、図6における時刻t2よりも左側に示すように、電圧変動指示信号SC1,SC2の両方がハイになる別種の検査用期間中において、各通電用トランジスタTr1,Tr2のドレイン・ソース間電圧は、前述した通り1Vとなる。尚、図6において、8段目の「VS1−VD1」は、通電用トランジスタTr1のソース電圧VS1からドレイン電圧VD1を引いた電圧値であって、通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース間電圧の符号を逆にした電圧値を表している。同様に、9段目の「VS2−VD2」は、通電用トランジスタTr2のドレイン・ソース間電圧の符号を逆にした電圧値を表している。
【0121】
一方、反負荷側部分LD1,LD2の何れかが断線すると、その断線した反負荷側部分LDx(xは1,2の何れか)に対応する方の通電用トランジスタTrxには電流が流れなくなり、他の通電用トランジスタだけを介してリレーコイル13aに電流が流れる状態となる。このため、別種の検査用期間において、反負荷側部分が断線していない方の通電用トランジスタのドレイン・ソース間電圧は1Vあるいは1V以上になるが、断線した反負荷側部分LDxに対応する方の通電用トランジスタTrxのドレイン・ソース間電圧は、該通電用トランジスタTrxに電流が流れないことから、1Vよりも確実に小さくなる。
【0122】
そこで、本実施形態では、図8のS310で用いる判定値を、1V以下の値(例えば0.7V)に設定しており、別種の検査用期間中に、ドレイン・ソース間電圧が、その判定値よりも小さくなっている通電用トランジスタがあれば、その通電用トランジスタが設けられた通電用配線の反負荷側部分が断線していると判定するようになっている。
【0123】
よって、例えば、図6に示すように、時刻t2で通電用配線L2の反負荷側部分LD2が断線したとすると、その時刻2の後に、電圧変動指示信号SC1,SC2の両方がハイになる別種の検査用期間であって、通電用トランジスタTr1,Tr2の両方が低通電能力状態でオンされる時間Tbの期間が到来すると、その期間において、通電用トランジスタTr1のドレイン・ソース電圧が1Vとなるのに対し、通電用トランジスタTr2のドレイン・ソース電圧は上記判定値よりも小さい約0.5Vとなり、その通電用トランジスタTr2に対応する方の反負荷側部分LD2が断線していると判断されることとなる。
【0124】
そして、このような第2実施形態によれば、通電用配線L1,L2の反負荷側部分LD1,LD2の断線も検出できるようになる。
また、本実施形態においては、別種の検査用期間を間欠的に発生させているため、反負荷側部分LD1,LD2の断線検出を間欠的に繰り返し行うことができる。
【0125】
また、本実施形態において、マイコン20は、図5の電圧変動制御禁止処理では、S220にて、故障判定部32から反負荷側断線検出信号が出力されたか否かも判定し、反負荷側断線検出信号が出力されたと判定した場合も、S230に進んで、そのとき以後に電圧変動制御部31が作動するのを禁止する。このため、通電用配線L1、L2における反負荷側部分LD1,LD2の何れかが断線した場合でも、他の正常な通電用配線に設けられている通電用トランジスタは低通電能力状態にされなくなり、リレーコイル13aへの通電電流が減少してしまうのを回避することができる。
【0126】
尚、本実施形態では、故障判定部32(特に図8の反負荷側断線検出処理を行う部分)が、反負荷側断線判定手段に相当している。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0127】
例えば、マイコン20は、オン/オフ指示信号SD1,SD2を2つの出力端子から出力するのではなく、1つの出力端子から出力しても良い。つまり、その場合、マイコン20からの1つのオン/オフ指示信号が、2つの駆動回路21,22と電圧変動制御部31とに入力される。
【0128】
また、通電用配線及び通電用トランジスタは3つ以上であっても良い。
また、通電用トランジスタは、Pチャネル型のMOSFETでも良い。
また、通電用トランジスタは、FETに限らず、例えばIGBTやバイポーラトランジスタでも良い。そして、通電用トランジスタとして、電流駆動型であるバイポーラトランジスタを用いる場合には、制御端子としてのベース端子に供給するベース電流を減少させることで、低通電能力状態にさせれば良い。
【0129】
また、リレーコイル13aの駆動形態は、ローサイド駆動であっても良い。尚、ローサイド駆動の場合、通電経路の結線としては、リレーコイル13aの一端がバッテリ15のプラス端子に接続され、そのリレーコイル13aの他端が、ECU11の端子19に接続され、ECU11の端子17は、グランドラインに接続されることとなり、更に、通電用配線L1,L2のうち、図1におけるLD1,LD2の部分が、負荷側部分に該当し、図1におけるLS1,LS2の部分が、反負荷側部分に該当することとなる。そして、ローサイド駆動の場合でも、前述した実施形態と同様の考え方で本発明を適用することができる。
【0130】
また、通電対象の電気負荷はリレーコイル13a(リレー13)に限らず、他の種類の電気負荷であっても良い。例えば、通電対象の電気負荷が、通電電流の大きさによって出力が変わるモータ等のアクチュエータである場合には、図5の処理において、S240,S250の判定に加えて、または、S240,S250の判定に代えて、そのアクチュエータへの通電電流を可能な限り大きくすべき状況であるか否かを判定し、その状況であると判定した場合にはS270へ進むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0131】
11…ECU(電気負荷駆動装置)、13…リレー、13a…コイル(リレーコイル)、15…バッテリ(電源)、17,19…端子、20…マイコン、21…22…駆動回路、25…昇圧回路、25a…電圧生成部、25b…電圧制御部、26…ダイオード、27,28…スイッチ素子、31…電圧変動制御部、32…故障判定部、32a…オン状態監視部、L1,L2…通電用配線、LD1,LD2…反負荷側部分、LS1,LS2…負荷側部分、Tr1,Tr2…通電用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の高電位側と低電位側とのうちの一方に一端が接続された電気負荷の他端に、一端が接続され、他端が前記電源の高電位側と低電位側とのうちの他方に接続された複数の並列な通電用配線と、
前記各通電用配線上に2つの出力端子が直列に設けられ、オンすることで該通電用配線を連通して前記電気負荷に電流を流す複数の通電用トランジスタと、
を備え、
前記電気負荷に連続して通電すべき通電期間において、前記複数の通電用トランジスタをオンさせることにより、該複数の通電用トランジスタを介して前記電気負荷に電流を流す電気負荷駆動装置であって、
前記通電期間中に、前記複数の通電用トランジスタのうちの1つである特定トランジスタを除く他の通電用トランジスタが、該通電用トランジスタの2つの出力端子間の電圧差が所定値以上となるように通電能力が下げられた低通電能力状態でオンされる検査用期間を、前記複数の各通電用トランジスタが切り替わって前記特定トランジスタとなるように発生させる検査用期間発生手段と、
前記各通電用トランジスタの前記電気負荷側の出力端子に接続され、前記各通電用トランジスタの前記電気負荷側の出力端子のうちで、何れかの出力端子の電圧と他の出力端子の電圧との差が所定の閾値以上になったことを検知したならば、前記各通電用配線の何れかにおいて、前記通電用トランジスタよりも前記電気負荷側の部分が断線していると判定する断線判定手段と、
を備えていることを特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気負荷駆動装置において、
前記検査用期間発生手段は、前記検査用期間を間欠的に発生させること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気負荷駆動装置において、
前記断線判定手段は、前記検査用期間中に動作し、前記各出力端子のうちで、何れかの出力端子の電圧と他の出力端子の電圧との差が前記閾値以上になったことを検知したならば、その検知時の検査用期間において前記特定トランジスタとなっている通電用トランジスタが設けられた通電用配線において、前記通電用トランジスタよりも前記電気負荷側の部分が断線していると判定すること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の電気負荷駆動装置において、
前記通電期間中に、前記複数の通電用トランジスタのうちの少なくとも1つについて、該通電用トランジスタの2つの出力端子間の電圧差を監視し、その電圧差が異常判定用の規定値以上であれば、そのとき以後に前記検査用期間発生手段が作動するのを禁止する異常処置手段を備えていること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電気負荷駆動装置において、
前記断線判定手段により前記通電用配線が断線していると判定されたなら、そのとき以後に前記検査用期間発生手段が作動するのを禁止する検査終了手段を備えていること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の電気負荷駆動装置において、
前記通電用トランジスタは電圧駆動型のトランジスタであり、
当該装置は、前記通電期間において、前記各通電用トランジスタの制御端子に所定の駆動電圧を供給して該各通電用トランジスタをオンさせる駆動手段を備え、
前記検査用期間発生手段は、
前記低通電能力状態でオンさせるべき通電用トランジスタである通電能力低下対象トランジスタの制御端子に前記駆動手段から供給される駆動電圧を制御することにより、前記通電能力低下対象トランジスタの通電能力を低下させて、該通電能力低下対象トランジスタを前記低通電能力状態でオンさせるようになっており、
更に、当該装置は、
前記通電期間において、前記各通電用トランジスタの制御端子に対し、前記駆動手段とは並行して駆動電圧を供給する手段であって、前記駆動電圧として、前記通電用トランジスタを前記低通電能力状態よりも通電能力が低い状態でオンさせるための予備駆動電圧を供給する予備駆動電圧供給手段を備えていること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の電気負荷駆動装置において、
特定の状況か否かを判定し、該特定の状況であると判定している場合には、前記検査用期間発生手段が作動するのを禁止する検査中断手段を備えていること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気負荷駆動装置において、
前記特定の状況は、前記電源の電圧が所定の値よりも低い状況であること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の電気負荷駆動装置において、
前記検査用期間発生手段は、
前記通電期間中に、前記検査用期間とは別に、前記複数の通電用トランジスタの全てが同時に前記低通電能力状態でオンされる別種の検査用期間を発生させ、
更に、当該装置は、
前記各通電用トランジスタの2つ出力端子に接続され、前記別種の検査用期間中に、前記各通電用トランジスタの2つ出力端子間の電圧差が前記所定値以下の判定値未満であるか否かを判定して、2つの出力端子間の電圧差が前記判定値未満である通電用トランジスタがあれば、その通電用トランジスタが設けられた前記通電用配線において、前記通電用トランジスタよりも前記電気負荷側とは反対側の部分が断線していると判定する反負荷側断線判定手段を備えていること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気負荷駆動装置において、
前記検査用期間発生手段は、前記通電期間中に前記別種の検査用期間を間欠的に発生させること、
を特徴とする電気負荷駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−138831(P2012−138831A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290903(P2010−290903)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】