説明

電気車

【課題】 システムの性能及び信頼性、効率を保ちながら、装置の小型軽量化と低コスト化を実現することが可能な電気車を提供する。
【解決手段】 燃料電池1と、LCフィルタ5と、DC/DCコンバータ9と、VVVFインバータ12と、モータ30と、DC/DCコンバータ9とVVVFインバータ12との間に接続されたエネルギー蓄積要素17及び充放電を制御するためのDC/DCコンバータ916とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備えた電気車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池によりモータを駆動し走行する車両は、自動車・バスをはじめ各種開発がなされており、今後、電車など更なる大容量の分野への応用が期待される。燃料電池によりモータを駆動する車両の開発において、今後は性能及び信頼性に加えて高効率化と低コスト化が重視されると予想される。また、燃料電池をエネルギー源とする車両の駆動システムへの適用を想定すると、ブレーキ時の回生エネルギーを蓄積するための、エネルギー蓄積要素、並びに、充放電を制御するエネルギー制御装置が必要となる。エネルギー蓄積要素としては、電気二重層キャパシタ(EDLC)やリチウムイオウ電池など2次電池の利用が考えられる。
この燃料電池を搭載した車両システムを、鉄道車両向けに応用する場合、架線等の外部からの電力供給との併用や、SIV(補助電源システム)の存在等のため、システム全体の構成は自動車やバスに比べ複雑なものとなる(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−134604号公報。
【特許文献2】特開2000−232703号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した技術であると、システムの信頼性、効率を保ちながらシステム(機器)の小型化と低コスト化が重要となってくる。システム全体の効率化と低コスト化のためには、この主回路システムの構成をより合理的なものとし、またより効率的に動作可能よう制御する課題がある。
【0004】
以上の点を鑑み本発明の目的は、システムの性能及び信頼性、効率を保ちながら、装置の小型軽量化と低コスト化を実現することが可能な電気車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的達成するために、本願発明の一態様によれば、燃料電池と、前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、前記LCフィルタから出力される直流電流を変換する第1のコンバータと、前記第1のコンバータから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続されたエネルギー蓄積要素及び充放電を制御するための第2のコンバータと、を具備することを特徴とする電気車が提供される。このため、システムの性能及び信頼性、効率を保ちながら、装置の小型軽量化と低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、システムの性能及び信頼性、効率を保ちながら、装置の小型軽量化と低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気車を示した外観図である。
【0009】
図1に示すように、電気車10は、架線21からパンタグラフ24を介して電気を取り込む。また、燃料電池、蓄電手段等を含む電気車制御装置20からの電力も利用する。
【0010】
図2は、電気車10の主回路の構成を示したブロック図である。
【0011】
電気車10の主回路は、燃料電池1の出力端に、LCフィルタ5が接続される。このLCフィルタ5には、第1のコンバータとしてDC/DCコンバータ9が接続される。そして、DC/DCコンバータ9のモータ側、すなわち、DC/DCコンバータ9とモータ30との間にSIV(補助電源システム)20が接続される。また、またDC/DCコンバータ9の燃料電池側、すなわち、燃料電池1とDC/DCコンバータ9との間に充放電を制御する第2のコンバータであるDC/DCコンバータ16が接続され、このDC/DCコンバータ16にはエネルギー蓄積要素17が接続されている。
【0012】
また、燃料電池1とDC/DCコンバータ9との間にSIV20が接続されているが、電力の開閉手段19を介して接続されている。
【0013】
また、DC/DCコンバータ9とモータ30との間にDC/DCコンバータ16が接続されているが、電力の開閉手段29を介して接続されている。さらに、DC/DCコンバータ9とモータ30との間にも電力の開閉手段11を備えている。
【0014】
また、DC/DCコンバータ16とエネルギー蓄積要素17との間にも電力の開閉手段18を備えている。
【0015】
そして、SIV20は、変圧器21を介して負荷22と接続されている。
【0016】
LCフィルタ5は、燃料電池1と開閉手段2を介して接続されている(第1の経路)フィルタリアクトル3と、燃料電池1と開閉手段2を介さずに接続されている(第2の経路)フィルタキャパシタ4とを備えている。
【0017】
LCフィルタ5の第1の経路の出力(フィルタリアクトル3からの出力)は、開閉手段19を介してSIV20が備える半導体スイッチに接続されている。一方、LCフィルタ5の第2の経路の出力(フィルタキャパシタ4からの出力)は、SIV20が備える半導体スイッチに接続されている。
【0018】
また、LCフィルタ5の第1の経路の出力(フィルタリアクトル3からの出力)は、DC/DCコンバータ9が備えるリアクトル6を介して半導体スイッチ7、8に接続されている。一方、LCフィルタ5の第2の経路の出力(フィルタキャパシタ4からの出力)は、DC/DCコンバータ9が備える半導体スイッチ8に接続されている。
【0019】
DC/DCコンバータ9の第1の経路の出力(半導体スイッチ7からの出力)と、第2の経路の出力(半導体スイッチ8からの出力)とは、キャパシタ10で並列に接続されている。また、第1の経路の出力(半導体スイッチ7からの出力)は、開閉手段11を介してVVVFインバータ12が備える半導体スイッチ12に接続され、第2の経路の出力(半導体スイッチ8からの出力)は、VVVFインバータ12が備える半導体スイッチ12に接続されている。
【0020】
DC/DCコンバータ9の第1の経路の出力(半導体スイッチ7からの出力)は、開閉手段29を介してDC/DCコンバータ16が備える半導体スイッチ13、リアクトル14に接続されており、さらに、開閉手段18を介してエネルギー蓄積要素17の正極側に接続されている。また、DC/DCコンバータ9の第2の経路の出力(半導体スイッチ8からの出力)は、DC/DCコンバータ16が備える半導体スイッチ15、リアクトル14に接続されている。さらに、開閉手段18を介してエネルギー蓄積要素17の負極側に接続されている。
【0021】
以上のような構成とすることにより、LCフィルタ5が燃料電池1出力端における電圧及び電流のりプルを低減するため、DC/DCコンバータ9のスイッチング周波数を低く設定することが可能となる。また、電気車等で用いられる大容量の燃料電池を用いたシステムでは、スイッチング素子のスイッチング損失が大きく、スイッチング周波数を高くできないが、LCフィルタを備えることで、DC/DCコンバータのスイッチング素子の周波数を下げて用いることが可能で、機器の小型化、あるいは、大容量化システムへの適用が可能となる。
【0022】
さらに、SIV(補助電源システム)20が、DC/DCコンバータ9より燃料電池側に接続されることにより、燃料電池1からSIV20への電力供給において、DC/DCコンバータ9を介さず、損失が低減し、効率が向上する。また、DC/DCコンバータ9の動作異常や故障によって、動作停止した場合においても、燃料電池1からSIV20への電力供給が可能であり、システムの信頼性が向上する。
【0023】
また、燃料電池1を開放する開閉手段を有することによって、エネルギー蓄積要素17の電力、あるいは、モータ30からの回生電力のいずれか一方、または両方から、SIV20への電力供給が可能となる。燃料電池1の故障時においても、燃料電池1を開放してSIV(補助電源システム)20を動作させることが可能となり、システム全体の信頼性が向上する。
【0024】
(第2実施形態)
以下図面を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
【0025】
図3は、本発明の第2実施形態に係る電気車を示した外観図である。なお、第1実施形態と同様の構成は同符号を付し、詳細な説明を上述に譲る。
【0026】
第2実施形態の第1実施形態との相違点は、DC/DCコンバータ9の変わりにダイオード23を用いている点である。
【0027】
本実施形態における基本的な電力フローは、燃料電池1での発電電力をVVVFインバータへ供給するものである。VVVFインバータで出力される電力と、前記燃料電池1からの供給電力との差分は、エネルギー蓄積要素から供給される。以上のように、電力フローの観点では、DC/DCコンバータ9をダイオード23に置き換えることが可能である。
【0028】
このような構成とすることにより、第1実施形態で示したようにDC/DCコンバータ9を用いた場合、スイッチング動作を行うことから、リカバリーの早い高速ダイオードが用いられる。本実施形態では、スイッチング動作を行わないことから、高速スイッチング性の不要な電力用ダイオードを適用できる。一般に、電力用ダイオードは、高速ダイオードに比べ、定常的な通電損失が小さい。よって、高効率なシステムが構築可能で、システムの小型・軽量化を図ることができる。
【0029】
なお、VVVFインバータの入力電圧は、高域で高い電圧を印加する方が高い出力が得られる。従来のシステムでは、DC/DCコンバータ9がこの高い直流電圧を作り出す役割を担っていた。本実施形態においても、このような必要性がある場合、エネルギー蓄積要素に付随するDC/DCコンバータ16が直流電圧を制御すればよい。
【0030】
(第3実施形態)
以下図面を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
【0031】
図4は、本発明の第3実施形態に係る電気車を示した外観図である。なお、第1実施形態と同様の構成は同符号を付し、詳細な説明を上述に譲る。
【0032】
第3実施形態の第1実施形態との相違点は、主回路システムが燃料電池1とLCフィルタ5の間に外部の電力源(パンタグラフ24から取り込む電力)を有することである。
【0033】
第3実施形態では、燃料電池1によって電力供給し、駆動用モータ30を駆動する電気車において、外部から電力給電も可能である。なお、外部電源とは、架線システム、あるいは、エネルギー蓄積要素へのエネルギー補充を想定する充電設備等が考えられる。さらに、他の構成としては、電気車が一つの車両内に構成され、複数の車両によって、一つの編成を構成するような場合、編成内で、電力融通が可能であるように、構成することも想定される(つまり、自車両から見て、他車両が外部電源)。このような、外部電源との接続点を燃料電池1とLCフィルタ5の間にして、燃料電池からの電力供給を行う場合、外部電源を開閉装置によって切り離し、逆に、外部からの電力供給を行う場合、燃料電池を切り離すように構成する。
【0034】
このような構成とすることにより、外部電源との接続において、LCフィルタ5を共有することが可能となる。外部電源との接続において、電圧の安定化、あるいは、逆に、自身から外部へと不要な高調波を流出することを抑制するため、フィルタ回路が必要となる。これを燃料電池への接続用と共有することで、主回路システムの構成の簡単化が可能で、システムの効率化と低コスト化が実現される。
【0035】
さらに、SIV20がDC/DCコンバータ9の燃料電池側に接続されている場合、DC/DCコンバータ9を双方向の電力融通が可能な変換器とすることで、燃料電池1の故障時においても、エネルギー蓄積要素17の電力とモータ30からの回生電力のいずれか一方、または両方をSIV(補助電源システム)20に供給することが可能となり、システム全体の信頼性が向上する。
【0036】
(第4実施形態)
以下図面を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
【0037】
図5は、本発明の第4実施形態に係る電気車を示した外観図である。なお、第3実施形態と同様の構成は同符号を付し、詳細な説明を上述に譲る。
【0038】
第4実施形態の第3実施形態との相違点は、主回路システムがインバータ12の直流端において外部の電力源と接続する点である。
【0039】
第3実施形態では、外部電源との接続をLCフィルタ5の入力端としている。この場合、燃料電池1と外部電源との併用はできなくなる。本実施形態では、外部電源を直接、インバータ12の直流端にて行うことで、燃料電池1との併用したエネルギー供給が可能となる。このため、燃料電池1が故障した場合にも、インバータ12の動作を停止することなく、運転継続が可能となり、システムの信頼が向上する。
【0040】
また、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気車制御装置を備えたで電気車を示した外観図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電気車の主回路の構成を示したブロック図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電気車の主回路の構成を示したブロック図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る電気車の主回路の構成を示したブロック図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る電気車の主回路の構成を示したブロック図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・燃料電池、3・・・フィルタリアクトル、4・・・フィルタリキャパシタ、5・・・LCフィルタ、6、28・・・リアクトル、7、8、13、15・・・半導体スイッチ、9、16・・・DC/DCコンバータ、12・・・VVVFインバータ、17・・・エネルギー蓄積要素、2、11、18、19、29・・・開閉手段、20・・・SIV、21・・・変圧器、22・・・負荷、23・・・ダイオード、24・・・パンタグラフ、25・・・車輪、30・・・モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換する第1のコンバータと、
前記第1のコンバータから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続された及び充放電を制御するための第2のコンバータと、
前記第2のコンバータに接続されたエネルギー蓄積要素と、
を具備することを特徴とする電気車。
【請求項2】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換する第1のコンバータと、
前記第1のコンバータから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記LCフィルタと前記第1のコンバータとの間に接続された補助電源システムと、
前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続された及び充放電を制御するための第2のコンバータと、
前記第2のコンバータに接続されたエネルギー蓄積要素と、
を具備することを特徴とする電気車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気車において、
前記燃料電池の電力を開放する開閉手段をさらに具備し、
前記開閉手段による前記燃料電池の電力の開放時には、前記エネルギー蓄積要素からの電力及び/又は前記モータからの回生電力を使用して、前記補助電源システムに電力を供給することを特徴とする電気車。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気車において、
前記第1のコンバータは、前記燃料電池と前記エネルギー蓄積要素または前記モータとの電力の変換を行うことを特徴とする電気車。
【請求項5】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換するダイオードと、
前記ダイオードから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記ダイオードと前記インバータとの間に接続されたエネルギー蓄積要素及び充放電を制御するためのコンバータと、
を具備することを特徴とする電気車。
【請求項6】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換するダイオードと、
前記ダイオードから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記LCフィルタと前記ダイオードとの間に接続された補助電源システムと、
前記ダイオードと前記インバータとの間に接続された充放電を制御するためのコンバータと、
前記コンバータに接続されたエネルギー蓄積要素と、
を具備することを特徴とする電気車。
【請求項7】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換する第1のコンバータと、
前記第1のコンバータから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記LCフィルタと前記第1のコンバータとの間に接続された補助電源システムと、
前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続された充放電を制御するための第2のコンバータと、
前記第2のコンバータに接続されたエネルギー蓄積要素と、
前記燃料電池と前記LCフィルタとの間に接続された開閉手段と、
を具備することを特徴とする電気車。
【請求項8】
請求項7に記載の電気車において、
前記開閉手段は、外部電力源に接続していることを特徴とする電気車。
【請求項9】
請求項1、2、5〜7に記載の電気車において、
前記LCフィルタは、直列リアクトル及び並列キャパシタを備えることを特徴とする電気車。
【請求項10】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電流が入力されるLCフィルタと、
前記LCフィルタから出力される直流電流を変換する第1のコンバータと、
前記第1のコンバータから出力される直流電流を交流電流に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電流により駆動されるモータと、
前記LCフィルタと前記第1のコンバータとの間に接続された補助電源システムと、
前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続された充放電を制御するための第2のコンバータと、
前記第2のコンバータに接続されたエネルギー蓄積要素と、
前記第1のコンバータと前記インバータとの間に接続され、かつ外部電力源に接続された開閉手段と、
を具備することを特徴とする電気車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−340464(P2006−340464A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160682(P2005−160682)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】