説明

電池パック

【課題】並列接続された電池セルを安価に保護する構成を実現する。
【解決手段】複数の電池セル1と、前記複数の電池セル1を収納する電池ホルダ2と、前記電池ホルダに装着されて、前記複数の電池セル1を並列に接続するための複数のリード板5と、を備える電池パックであって、前記電池ホルダは、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bに分割されてなり、前記第一電池ホルダ2Aに装着されたリード板5と、前記第二電池ホルダ2Bに装着されたリード板5との内、同電位のリード板5同士を、保護抵抗56を介して接続する。これにより、リード板5を介して並列接続された電池セル1に内部短絡が生じるなどして電流が集中する事態が生じても、保護抵抗56を介して電流値を抑えることができるため、電池セル1の保護を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の充電可能な二次電池を収納した電池パックに関し、例えば電動スクータやアシスト自転車用の電源等に利用可能な電源パックに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の二次電池を直列及び/又は並列に接続した電池パックが、電動スクータやアシスト自転車の動力源、あるいは電気自動車の電源装置などに利用されている。電池パックは、二次電池を樹脂製の電池ホルダに収納し、さらに電池ホルダを絶縁性の外ケースに収納している。
【0003】
このような電池パックは、直列接続される電池セル数を多くすることで出力電圧を高くし、また並列接続される電池セル数を多くすることで、電池容量を高めることができる。特に近年の高出力化の要求に鑑み、電池パックは電池セルの使用数が増える傾向にある。
【0004】
一方で、電池パックを構成する電池セルの異常を監視するため、電池セルの電圧を測定することが行われている。このような構成において、一般には電池セル同士を接続するリード板の電位を測定することで、中間電位からセル電圧を検出している。
【0005】
ここで、リード板に多数の電池セルを直列及び並列に接続する構成においては、電池パックの組立時における電気配線作業も複雑になる。多数の電池セルを直接電気接続することから、組立時に誤って短絡させることも考えられる。特に並列接続された電池セルのいずれか一が短絡すると、抵抗の低い電池セルに電流が集中し、他の電池セルからの電流が流れ込むこととなる。また電池セル同士が並列接続されていると、並列数が多いほど内部抵抗の合成抵抗も低くなる。このため、一の電池セルに大電流が流れ込んで発熱する可能性があった。これに対してバスバー等を用いて安全に配線することも考えられるが、配線作業が増える上、コストも上昇するという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−71632号公報
【特許文献2】特開2004−31014号公報
【特許文献3】特開2010−211926号公報
【特許文献4】特開2010−267405号公報
【特許文献5】特開平4−126378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、並列接続された電池セルを安価に保護する構成を実現した電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の側面に係る電池パックは、複数の電池セル1と、前記複数の電池セル1を収納する電池ホルダ2と、前記電池ホルダに装着されて、前記複数の電池セル1を並列に接続するための複数のリード板5と、を備える電池パックであって、前記電池ホルダは、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bに分割されてなり、前記第一電池ホルダ2Aに装着されたリード板5と、前記第二電池ホルダ2Bに装着されたリード板5との内、同電位のリード板5同士を、保護抵抗56を介して接続することができる。これにより、リード板を介して並列接続された電池セルに内部短絡が生じるなどして電流が集中する事態が生じても、保護抵抗を介して電流値を抑えることができるため、電池セルの保護を図ることができる。また保護抵抗は、電池パックの出力線でなく、電圧検出線に設けることで、通常の高電圧出力に際して損失を発生させることもない。
【0009】
また第2の側面に係る電池パックは、さらに前記第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bとを電気的に接続する連結基板55を備えており、前記保護抵抗56が、前記連結基板55上に実装することができる。これにより、電池ホルダを分割して連結基板で連結する構成において、連結基板に保護抵抗を設けることで、並列接続された電池セルの保護を図ることが可能となる。
【0010】
さらに第3の側面に係る電池パックは、前記保護抵抗56が、並列接続された電池セル1の内、隣接する並列電池ブロックに対して一本おきに設けることができる。これにより、各電池セル毎に保護抵抗を設けることなく、保護抵抗の数を低減しつつパック電池の保護を図ることができる。
【0011】
さらにまた第4の側面に係る電池パックは、さらに前記第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bに収納される前記電池セル1の電圧を監視するための保護回路を実装した回路基板6を備えることができる。これにより、一の回路基板で2つの電池ホルダの電池セルの電圧を纏めて監視でき、回路の部品点数や基板数を削減して、装置の小型化やコスト削減に寄与できる。
【0012】
さらにまた第5の側面に係る電池パックは、さらに前記保護抵抗56を、前記電池セル1の内部抵抗とほぼ等しくすることができる。これにより、電池セルが並列接続されることによって内部抵抗の合成抵抗が低下する分を、並列接続された電池セル群と直列接続された保護抵抗によって補償できるため、ほぼ通常の電池セルに通電されるのと同様の発熱に抑えることができ、通常の放熱設計によって対応できる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る電池パックの分解斜視図である。
【図2】図1の電池集合体を示す斜視図である。
【図3】図2の電池集合体の分解斜視図である。
【図4】図3の電池集合体を背面斜め下方から見た分解斜視図である。
【図5】電池ホルダ同士を連結基板で連結した状態を示す斜視図である。
【図6】同電位の並列電池ブロック同士の間に保護抵抗を設けた電池パックの回路図である。
【図7】連結基板に第一電池ホルダ及び第二電池ホルダにそれぞれ連結する状態を示す模式断面図である。
【図8】図7の連結基板に第一電池ホルダ及び第二電池ホルダを連結した状態を示す模式断面図である。
【図9】変形例に係る電池パックを示す回路図である。
【図10】図5において分割ケースと連結基板との接合部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0015】
図1に、本発明の実施例1に係る電池パック100の分解斜視図を示す。この図に示す電池パック100は、電動バイクに装着されて、駆動用の電源を供給する。このため電動バイクに電力を供給するための出力コネクタが設けられている。出力コネクタは、電池パック100に内蔵される二次電池を直列及び/又は並列に接続した高電圧ラインである出力端子を含んでいる。また、電池パック100と電動バイクと間で制御信号をやりとりするための信号端子も出力端子と別に設けられている。さらに出力コネクタに、内蔵される電池セル1を外部から充電するための充電端子を備えることもできる。充電端子は、出力端子と兼用してもよい。出力コネクタは、これら出力端子及び/又は充電端子、信号端子を纏めている。ただ、一の出力コネクタにこれらの端子を纏める必要なく、別個のコネクタに各端子を設けることもできる。
【0016】
この電池パック100は、電動用バイクの定位置にセットされて、出力コネクタを電動バイクに設けられたレセプタクルと接続する。なお、ここでは電池パックを電動用バイクの電源装置として利用する例を説明するが、本発明は電池パックを電動バイク用電源装置に限定せず、他の電源装置としても利用できることはいうまでもない。
【0017】
図1に示す電池パック100は、複数の充電可能な電池セル1と、複数の電池セル1を各々収納可能な電池収納空間34を個別に区画した電池ホルダ2とを備えている。図の電池パック100は、複数の電池セル1を電池ホルダ2の定位置に配置して直列と並列とに接続している電池集合体を外ケース4に収納している。
【0018】
電池パック100は、外形を構成する外ケース4の全体形状をほぼ箱形としている。電池ホルダは、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bに分割されている。各電池ホルダは、外ケースを上ケースと下ケースに二分割した内部空間に収納される。また上ケースと下ケースとの接合面には、パッキン等の弾性変形するシール材を介在させて、この接合界面での防水を図ることができる。
(電池集合体)
【0019】
これら第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bとは、第一電池ホルダ2Aに設けたコネクタ部分等を除いて、外形をほぼ等しい矩形状としている。ここで第二電池ホルダ2Bで構成された電池集合体の斜視図を図2に、その分解斜視図を図3及び図4の分解斜視図に、それぞれ示す。これらの図に示すように電池集合体は、複数の充電できる電池セル1と、これらの電池セル1を多段多列に配列して保持するプラスチック製の第二電池ホルダ2Bと、第二電池ホルダ2Bで定位置に保持される各々の電池セル1の端面電極1Aに溶接されて、隣接する電池セル1を接続している複数のリード板5と、第二電池ホルダ2Bの一面に設けられた回路基板6とを備えている。
【0020】
第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bはそれぞれ、図3及び図4の分解斜視図に示すように、縦方向に7段に電池セル1を並べて、これを横方向に14列配置している。すなわち、98個の電池セル1を、7段14列にマトリクス状に並べて配置している。ただ、本発明の電池パックは、電池セルの個数や配列をこの状態に特定しない。さらに、多段多列に配列される複数の電池セルは、直列と並列に接続して電池集合体を構成する。図3及び図4に示す電池集合体は、同列に配置される7個の電池セルを並列に接続すると共に、互いに隣接する列に配列される7個ずつの電池セル同士を直列に接続して、14列の電池セル同士を直列に接続している。すなわち、図の電池集合体は、98個の電池セルを7並14直に接続している。この構造は、複数の電池セルを並列に接続することで電池パックの出力電流を大きくでき、また、互いに並列に接続された電池セルを直列に接続することで電池パックの出力電圧を高くできる。ただ、本発明の電池パックは、互いに並列に接続する電池セルの個数と、互いに直列に接続する電池セルの個数を以上に特定しない。
(電池セル1)
【0021】
電池セル1は、充電可能な二次電池である。図の電池パックは、電池セル1を円筒形の電池セルとしている。本実施例においては、電池セル1として円筒形のリチウムイオン二次電池を使用する。リチウムイオン二次電池は、大容量、大出力のバッテリシステムに適している。それは、リチウムイオン二次電池が容積や重量に対する容量を大きくできるからである。ただ本発明の電池パックは、電池をリチウムイオン二次電池には特定せず、リチウムポリマー電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の充電可能な他の二次電池も利用できる。さらに、外形も円筒形に限らず角形電池とすることもできる。
(電池ホルダ2)
【0022】
電池ホルダ2は、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bに二分割されている。これら第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bは、複数の円筒形の電池セル1を互いに平行な姿勢で多段多列に並べて保持している。各電池ホルダ2は、図3及び図4の斜視図に示すように、電池セル1を収納可能な円筒状の電池収納空間34を多段多列に設けており、各々の電池収納空間34に電池セル1を挿入して定位置に配置している。電池ホルダ2は、電池セル1を収納する電池収納空間34を電池セル1の軸方向に開口して設けている。図の電池ホルダ2は、円柱状の電池収納空間34を有する形状に成形している。この電池収納空間34は、円筒形である電池セル1を挿入できる内形に成形している。図の第二電池ホルダ2Bは、98個の電池セル1を所定の配列で収納できるように、98個の電池収納空間34を7段14列のマトリックス状に設けている。さらに、第二電池ホルダ2Bは、その両面において、電池収納空間34の両端を開口している。
【0023】
第二電池ホルダ2Bは、円筒形の電池セル1の長手方向(図3、図4において上下方向)の中間において、第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bとに2分割している。第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、電池収納空間34の両端を開口して、円筒形の電池セル1を挿入できる形状に成形している。第二電池ホルダ2Bは、プラスチックなどの絶縁部材で成形される。電池収納空間34を設けた形状にプラスチックを成形している第二電池ホルダ2Bは、電池セル1を区画して配列することで、複数の電池セル1を正確に位置決めしながら配列できる。
【0024】
第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、互いの電池収納空間34に電池セル1の両端部を挿入する状態で互いに連結されて、各々の電池収納空間34に電池セル1を収納する。第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、止ネジを介して互いに連結される。図の第一サブホルダ2aは、止ネジを挿入するネジ孔(図示せず)を開口しており、第二サブホルダ2bは、この止ネジをねじ込む連結ボスを対向面に設けている。
(突出阻止部32)
【0025】
さらに、第二電池ホルダ2Bは、電池収納空間34に挿入される電池セル1の端面電極1Aが、外側端面から外側に突出するのを阻止する突出阻止部32を外側端面に一体的に成形して設けている。この突出阻止部32は、電池収納空間34に挿入される電池セル1の端面電極1Aを外側端面から表出させるが、端面電極1Aが開口端から突出しないように、電池収納空間34の開口端縁から内側に突出して、電池収納空間34の開口部に部分的に覆うようにせり出した状態で設けている。
【0026】
図2の第二電池ホルダ2Bは、電池収納空間34をマトリックス状に配置すると共に、複数の電池収納空間34同士の連結部分に、電池収納空間34の開口部に部分的に重なるように突出阻止部32を直線状に設けている。この第二電池ホルダ2Bは、電池収納空間34に挿通される電池セル1の端面電極1Aに突出阻止部32が当接して電池セル1の端面電極1Aが外側端面から突出するのを阻止する。また突出阻止部32は、リード板5を定位置に案内するためのガイドとしても機能する。
【0027】
第二電池ホルダ2Bは、第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bを連結する状態で、電池セル1の端面電極1Aを電池収納空間34の外側開口部から外部に露出させる。外部に露出する端面電極1Aにリード板5がスポット溶接やレーザ溶接などの方法で溶接される。図3、図4の第二電池ホルダ2Bは、電池収納空間34の両端を開口している両面に、複数のリード板5を互いに離して定位置に配置するガイドとしても、突出阻止部32を利用している。リード板5は、突出阻止部32に案内されて、電池セル1の端面電極1Aに接続される。したがって突出阻止部32は、端面電極1Aに接続されるリード板5を配置する位置に設けている。
(リード板5)
【0028】
リード板5は、図3、図4に示すように、第二電池ホルダ2Bの突出阻止部32に案内されて、電池セル1の端面電極1Aにスポット溶接やレーザ溶接して接続されて、隣接する電池セル1を直列と並列に接続する。リード板5は、同じ列の電池セル1を並列に接続して、隣接する列の電池セル1を直列に接続する。リード板5は、多列に接続される電池セル1の両端に位置して配置されて、1列7本の電池セル1を並列に接続する1列幅の第1リード板5Aと、各列7本の電池セル1を並列に接続し、かつ隣接する列の7本の電池セル1を直列に接続するために、14本の電池セル1の端面電極1Aを接続する2列幅の第2リード板5Bとを備えている。
【0029】
図3、図4の電池集合体は、第二サブホルダ2bの外側面(図3において下面側)に、2列の電池セル1を接続する7枚の第2リード板5Bを互いに平行に配列している。7枚の第2リード板5Bは、各々が7段の電池セル1を並列に接続して、隣接する2列の電池セル1を直列に接続している。また、第一サブホルダ2aの外側面(図3において上面側)には、2列の電池セル1を接続する6枚の第2リード板5Bを中間に配置して、出力側となる両端には、1列の電池セル1を接続する2枚の第1リード板5Aを配置している。中間に配置している6枚の第2リード板5Bは、各々が7段の電池セル1を並列に接続して、隣接する2列の電池セル1を直列に接続している。両端に配置している2枚の第1リード板5Aは、7段の電池セル1を並列に接続している。以上の電池集合体は、7段の電池セル1を並列に接続しながら、14列の電池セル1をジグザグ状に直列接続して、両端部に接続される第1リード板5Aを出力として出力端子(図示せず)に接続している。
【0030】
リード板5は、電気抵抗が小さく熱伝導に優れた金属板、例えばニッケル板、鉄や鉄合金あるいは銅や銅合金等の表面をニッケル等のメッキをしている金属板が使用される。リード板5は、溶接に最適な厚さの金属板、例えば0.1mm〜0.3mmの金属板が使用される。スポット溶接やレーザ溶接されるリード板は、厚すぎても薄すぎて理想的な状態で電池セルの端面電極に溶接できない。このため、リード板は、流れる電流や用途を考慮して最適な厚さに設定される。
【0031】
さらに、リード板5は、その一端に、回路基板6に接続するための接続片5aを設けている。このリード板5は、図3、図4に示すように、接続片5aの先端部をさらに折曲しており、この先端部を回路基板6に直接に電気接続している。回路基板6は、接続片5aの先端部を挿入するためのスリット6aを開口しており、このスリット6aに接続片5aの先端部を挿入すると共に、接続片5aをハンダ付けして回路基板6に接続している。回路基板6は、リード板5からの電圧、電流を、接続片5aを介して入力して、電池集合体の中間電位を検出している。
(回路基板6)
【0032】
回路基板6は、電池セル1の温度や電圧等を検出することで、電池セル1を保護する保護回路を実装している。この回路基板6は、第二電池ホルダ2Bの端面に固定されて、複数の電池セル1に接続されるリード板5の接続片5aが接続される。リード板5の接続片5aは、回路基板6に実装された電圧検出回路に接続される。これにより、電池集合体の中間電位を回路基板6側で検出することができる。回路基板6は、各列の電池セル1の充放電電流を制御する充放電回路や保護回路等、電池パックの駆動に必要な回路及びその構成部品、素子等を実装する基板であり、ガラスエポキシ基板等が利用できる。
【0033】
さらに、電池セルを加熱する発熱体を、電池セルの表面に接触させて設けることもできる。この場合、回路基板には、発熱体の通電をON/OFFする制御回路を備える。制御回路は、温度を検出して発熱体の通電をON/OFFする。制御回路は、電池温度または外気温度を検出する温度センサを備えている。この温度センサは、例えばサーミスタである。サーミスタは、周囲の温度を抵抗値の変化として検出して、制御回路に入力する。この電池パックは、電池セルの温度を検出する温度センサを電池セルに接近して設けている。
【0034】
なお、回路基板は各電池ホルダに設ける構成の他、いずれか一方の電池ホルダにのみ設けて、他方の電池ホルダにおいては回路基板を省略し、一の回路基板で2つの電池ホルダの監視を共用することもできる。
【0035】
第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bとは、出力線を出力ケーブルで接続している。そして電池パック全体を出力を、第一電池ホルダ2Aに設けた出力コネクタの出力端子に接続している。このように、多数の電池セルを直列及び並列に接続した電池ホルダ2を並列接続して容量を倍増させている。
(連結基板55)
【0036】
その一方で、電池セル1の状態を監視するための状態検出線を、第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bの間で接続している。これによって、上述の通り一方の電池ホルダ2に設けられた回路基板6に実装された保護回路で、2つの電池ホルダ2の電池セル1の状態を監視できる。このため電池パックは、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bとを連結するための連結基板55を備えている。第一電池ホルダ2Aと、第二電池ホルダ2Bとを連結基板55で連結した状態を、図5の斜視図に示す。この連結基板55は、電気的に並列接続される電池ホルダ同士を電気的に接続している。具体的には、図6の回路図に示すように、第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2B間で、互いの同電位の並列電池ブロック同士を、連結基板55を介して電気接続している。ここでは、第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bの各リード板5から、延長タブ5bを設け、対応するリード板5の延長タブ5b同士を、連結基板55を介して電気的に接続している。このようにリード板を直接、連結基板に接続することで、別途リード線などを用いて配線する手間を省き、また断線等の虞を排除して、安価に信頼性に優れた配線を実現できる。また一枚の連結基板でもって2つの電池ホルダの電池セルを監視することで、各電池ホルダごとに回路基板を設ける手間を省き、回路基板を共通化してコスト及びスペースを削減できる利点も得られる。
【0037】
このような連結基板55による電池ホルダ2の接続の状態を、図6〜図8に示す。これらの図において、図7は連結基板55に第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bにそれぞれ連結する状態を示す模式断面図を、図8は図7の連結基板55に第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bを連結した状態を示す模式断面図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bは、連結基板55を介して電気的に接続されている。また回路基板6に実装された保護回路は、リード板5毎のセル電圧を監視している。これによって、第一電池ホルダ2Aに収納される電池セル1を含めた、セル電圧の監視が一の保護回路によって行える。この結果、第一電池ホルダ2Aにおいては保護回路を省略できる。その一方で、第一電池ホルダ2Aには上述の通り出力コネクタを設けているため、第一電池ホルダ2Aには保護回路に代えて、出力コネクタを配置するための必要な部材を実装できる。このように、2つの分割ホルダにおいて、必要な回路等をそれぞれに分散して効率よく配置でき、スペース及びコストの削減を図ることができる。
(保護抵抗56)
【0038】
上記の例では、図6に示すように電池ホルダ2同士を連結基板55で連結している。さらに電池ホルダ2同士は、保護抵抗56を介在させている。保護抵抗56は、電池ホルダ2間で、互いの同電位の並列電池ブロック同士の間に直列に接続される。これによって、短絡などにより電池セルに過大な電流が流入する事態を回避できる。具体的には、多数の電池セルを並列接続した構成においては、いずれか一の電池セルが短絡すると、抵抗の低いこの電池セルに電流が集中し、他の電池セルからの電流が流れ込むこととなる。また電池セル同士が並列接続されていると、並列数が多いほど内部抵抗の合成抵抗も低くなる。このため、一の電池セルに大電流が流れ込んで発熱する可能性があった。そこで、並列接続される並列電池ブロック同士の間に、保護抵抗56を設ける。
【0039】
保護抵抗56は、連結基板55に実装される。この例では、各並列電池ブロック毎に、すなわち直列接続された電池モジュール毎に保護抵抗56を設けている。これによって、短絡時などに一部の電池セルに大電流が集中した際に電流値を抑制して発熱を低減できる。ただ保護抵抗56は、すべての並列電池ブロックに設ける必要は無く、所定の間隔でも受けることもできる。この例では図6の回路図に示すように、隣接する並列電池ブロックに一つ置きに、すなわち電池モジュールが2本直列接続される毎に設けている。
【0040】
保護抵抗56の抵抗値は、好ましくは、電池セルの内部抵抗と同程度の値、例えば20mmΩ〜30mmΩに設定できる。このように設定すれば、通常の電池セルと同程度の抵抗値として発熱量も、一般の充放電時に想定される発熱量と同様の対策で対応できる。すなわち、複数の電池セルを並列接続することで、内部抵抗同士の合成抵抗が低下するため、より大きな電流が流れやすくなることで発熱量が大きくなる。このため、並列接続された電池セル群に対して、直列に、すなわち、並列接続された電池セル群を構成する分割された電池ホルダ同士の間に、保護抵抗56を設けることで、合成抵抗値を最低でも電池セル1個の内部抵抗以上確保できる。この結果、電池セルに高い充放電電流が流れることで発熱した際の熱対策と同様に捉えて熱対策を行うことができ、特別な放熱構造の追加を検討する事態を回避できる。
【0041】
以上説明した図7、図8の例では、電池ホルダを分割した第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bとを重ねて配置する構成を説明したが、この例に限られず、例えば図9に示すように、第一電池ホルダ2Aと第二電池ホルダ2Bとを離間させて配置してもよいことはいうまでもない。このような配置によって、電池ホルダ同士の間に空間を設け、各電池ホルダの発熱をこの空間に排熱して放熱性を高めると共に、一方の電池ホルダの発熱が、容易に他の電池ホルダに伝熱する事態を回避して安全性を向上できる。
【0042】
連結基板55と第一電池ホルダ2A及び第二電池ホルダ2Bとの連結は、ねじ止めにて行われる。この際、図4及び図10に示すように、電池ホルダ2Aを第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bに分割した接合面に嵌合溝62を設けると共に、この嵌合溝62にフランジナット60を挟み込んで固定している。フランジナット60はフランジによって嵌合溝62からの抜け落ちを回避できる。このようにすることで、高価なインサートナット構造等を採用することなく、第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bとの接合面を利用したナットの固定構造を安価に実現できる。またねじ締結の際に、電池ホルダ2のリード板5から延長された延長タブ5bと連結基板55とを併せて圧接している。これによって、連結基板55を電池ホルダ2に機械的に接続すると共に電気接続も実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る電池パックは、電動バイク、電動車椅子、電動三輪車、アシスト自転車、電動カート等の駆動用バッテリパック等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
100…電池パック
1…電池セル;1A…端面電極
2…電池ホルダ;2A…第一電池ホルダ;2B…第二電池ホルダ;2a…第一サブホルダ;2b…第二サブホルダ
4…外ケース
5…リード板
5A…第1リード板
5B…第2リード板
5a…接続片
5b…延長タブ
6…回路基板;6a…スリット
32…突出阻止部(凸条)
34…電池収納空間
55…連結基板
56…保護抵抗
60…フランジナット
62…嵌合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セル(1)と、
前記複数の電池セル(1)を収納する電池ホルダ(2)と、
前記電池ホルダに装着されて、前記複数の電池セル(1)を並列に接続するための複数のリード板(5)と、
を備える電池パックであって、
前記電池ホルダは、第一電池ホルダ(2A)と第二電池ホルダ(2B)に分割されてなり、
前記第一電池ホルダ(2A)に装着されたリード板(5)と、前記第二電池ホルダ(2B)に装着されたリード板(5)との内、同電位のリード板(5)同士が、保護抵抗(56)を介して接続されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、さらに、
前記第一電池ホルダ(2A)と第二電池ホルダ(2B)とを電気的に接続する連結基板(55)を備えており、
前記保護抵抗(56)が、前記連結基板(55)上に実装されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記保護抵抗(56)が、並列接続された電池セル(1)の内、隣接する並列電池ブロックに対して一本おきに設けられてなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電池パックであって、さらに、
前記第一電池ホルダ(2A)と第二電池ホルダ(2B)に収納される前記電池セル(1)の電圧を監視するための保護回路を実装した回路基板(6)を備えてなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電池パックであって、さらに、
前記保護抵抗(56)が、前記電池セル(1)の内部抵抗とほぼ等しいことを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−109934(P2013−109934A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253379(P2011−253379)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】