説明

電池交換システム

【課題】電池の交換、充電及び保管の一連の行程を容易にすることのできる電池交換装置を提供する。
【解決手段】本発明は、輸送機関1の少なくとも一部の動力源として用いられ輸送機関1に対し着脱可能に構成された電池ユニット2を交換するための電池交換装置3を提供する。この装置は、電池ユニット2を輸送機関1から取り外し、新たな電池ユニット2Xを輸送機関1に装着するためのユニット着脱部(31,32)と、ユニット着脱部(31,32)により取り外された電池ユニット2を順次格納するユニット格納部33と、ユニット格納部33に格納された電池ユニット2を充電する充電部と、充電部により充電された電池ユニット2を輸送機関1に装着すべき新たな電池ユニット2Xとしてユニット着脱部(31,32)に搬送する搬送部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く電池交換システムに関し、詳細には、自動車や自動二輪車等の輸送機関の少なくとも一部の動力源として使用される電池の交換に適した電池交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策やエネルギー問題への注目に伴って、化石燃料に代わって若しくはこれと併用して電気を利用して走行する自動車や自動二輪車等の輸送機関が多く提案されている。このような輸送機関のうち、外部電力によってその内部の電池を充電した後に、該電池によりモーター等を駆動しながら走行する輸送機関がある。かかる輸送機関の普及にあたっては電池を充電するための設備を必要な箇所に備えるインフラストラクチャの整備も必要とされる。
【0003】
ところで、一定の連続輸送距離及び一定の連続輸送時間を確保する目的から、このような輸送機関には大なる容量の電池が搭載されている。容量の大きい電池のフル充電には非常に長い充電時間を要すため、電池を充電するための設備における輸送機関の滞在時間が長引いて輸送効率を妨げてしまう。一方、該設備において、急速に電池の充電を行うことができれば輸送機関の滞在時間を短縮することができる。しかしながら、急速充電器や場合によっては急速充電に対応した新たな電池の開発が必要となってしまうのである。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1では、ドライバが充電済の電池を内蔵したカートリッジ式ケースを交換できるようにして、短時間で容易に自動車の動力源を得られる電気自動車用電池交換システムを開示している。
【0005】
更に、特許文献2では、電池の交換を行う複数のステーションの間で充電済みの電池の流通を管理する電池流通管理システムを開示している。各ステーション間において充電済みの電池を効率的に流通させることができて、ドライバの充電作業にかかる手間を開放させ得ると述べている。
【特許文献1】特開2004−214160号公報
【特許文献2】特開2007−182310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで自動車等に対する知識の異なる全てのドライバが自分の所有する自動車に対して電池の交換作業をすることには無理がある。また、電池の交換をサービスとして提供する業者にも、単に自動車に対する電池の交換作業だけが便利になったとしても、その交換後の電池の充電や保管、品質管理など、その実際の設備や運用についても様々な課題が残されたままとなっている。
【0007】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、その主たる目的とするところは、電池の交換、充電及び保管の一連の行程を容易にすることのできる電池交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電池交換システムは、輸送機関の少なくとも一部の動力源として用いられ該輸送機関に対し着脱可能に構成された電池ユニットを交換するための電池交換システムである。電池ユニットを前記輸送機関から取り外し、新たな電池ユニットを前記輸送機関に装着するためのユニット着脱部と、前記ユニット着脱部により取り外された電池ユニットを順次格納するユニット格納部と、前記ユニット格納部に格納された電池ユニットを充電する充電部と、前記充電部により充電された電池ユニットを前記輸送機関に装着すべき新たな電池ユニットとして前記ユニット着脱部に搬送する搬送部と、を有することを特徴とする。
【0009】
すなわち、ユニット着脱部において取り外された電池ユニットは、ユニット格納部に順次格納されて充電されるとともに、充電後の電池ユニットがユニット着脱部に搬送されて新たな電池ユニットとして輸送機関への装着に引き継がれるのである。故に、電池交換作業が非常に簡単になり、短時間で済むとともに、電池ユニットの充電や保管の利便性も極めて高いものとなるのである。つまり、電池交換作業にかかわる一連の行程を容易にすることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1つの実施例による電池交換システムは、輸送機関の少なくとも一部の動力源として用いられ該輸送機関に対し着脱可能に構成された電池ユニットを交換するための電池交換システムである。該電池交換システムは、電池ユニットを前記輸送機関から取り外し、新たな電池ユニットを前記輸送機関に装着するためのユニット着脱部と、前記ユニット着脱部により取り外された電池ユニットを順次格納するユニット格納部と、前記ユニット格納部に格納された電池ユニットを充電する充電部と、前記充電部により充電された電池ユニットを前記輸送機関に装着すべき新たな電池ユニットとして前記ユニット着脱部に搬送する搬送部と、を有する。かかる構成により、電池交換作業が非常に簡単になり、短時間で済むとともに、電池ユニットの充電や保管の利便性も極めて高いものとなるから、電池交換作業にかかわる一連の行程を容易にすることができるのである。
【0011】
上記態様において、前記ユニット格納部は、電池ユニット毎に電池ユニットを収容又は保持し電池ユニットの電極に電気的に接続される充電端子を有する複数のユニット保持部を有し、前記充電部は、前記充電端子に結合される充電ラインとこの充電ラインを通じて前記充電端子に充電電流を供給するための充電回路とを有し電池ユニットの格納された順又は所定の順に電池ユニットの充電を開始するようにしている。かかる構成により、電池ユニット毎に適切かつ安全性の高い保持、保管及び充電が可能となる。ここにおいて「所定の順」は、例えば電池ユニットの充電レベルの低い順などが考えられる。
【0012】
さらに詳細には、前記ユニット着脱部には、前記輸送機関から電池ユニットを取り外すために使用されるユニット解除場と前記輸送機関に電池ユニットを装着するために使用されるユニット装着場とが分離して又は共通の場として定められ、前記複数のユニット保持部は、前記解除場又はその近傍から電池ユニットが引き渡され、前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍にわたり配列され、前記ユニット格納部に電池ユニットが格納されるたびに前記搬送部により前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍へ向かう方向にそれぞれ移動可能な構成を有し、前記装着場又はその近傍へ充電された電池ユニットを引き渡すようにしてもよい。かかる構成により、電池交換作業者は、ユニット解除場とユニット装着場という一定の作業場において交換作業を行うことができ、誤作業なく、例えば充電の完了していない電池ユニットを自動車に装着したり、充電対象の電池ユニットを誤って不適切な箇所に格納したりすることがなく、安全で安定した作業環境を提供することができる。
【0013】
ここで、前記ユニット格納部に少なくとも1つの電池ユニットが格納されるたびに前記ユニット保持部を少なくとも1ステップ移動させるよう前記搬送部を制御する制御部をさらに有するようにしてもよい。かかる構成により、交換作業の発生のたびに確実に電池ユニットを移動させ充電処理に移すことができる。
【0014】
さらに、前記制御部は、前記ユニット保持部を電池ユニットの所定充電時間をかけて前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍に移動するよう前記搬送部を制御するようにしてもよく、また、その所定充電時間は、当該電池ユニットの定格最大充電時間以上の時間であるものとすることができる。かかる構成により、電池ユニットの搬送過程で確実な充電完了状態を保証することができる。なお、当該所定充電時間を、電池ユニットの充電状態に基づき、格納される電池ユニットに応じて可変なものとしてもよい。
【0015】
ところで、上記形態において、前記ユニット着脱部は、前記輸送機関から取り外された電池ユニットを前記解除場又はその近傍における前記ユニット保持部への収容又は保持動作を行うための回収機構と、前記装着場又はその近傍における前記ユニット保持部から電池ユニットを取り出して前記輸送機関へのユニット装着動作を行うための実装機構とを個別に又は一体的に有するものとしてもよい。かかる回収機構及び実装機構により、電池ユニットの自動車への着脱並びに電池ユニットの当該ユニット保持部への移送及び当該ユニット保持部からの取り出しが容易になる。
【0016】
更に、格納される電池ユニットの個々の充電状態及び/又は電池寿命状態を測定する測定部をさらに有することが好ましい。かかる構成により、個々の電池ユニットに適合した適切な充電その他の好ましいメンテナンス/サービスの可能性を提供することができる。また、ここで前記充電部は、前記測定部により所定充電状態が測定された電池ユニットに対して充電を停止するよう制御されるものとすることができる。つまり、電池ユニットの過充電を防止することができる。さらに、測定された充電状態及び/又は電池寿命状態に応じた料金を当該状態の明細とともに表示及び/又は提示するシステムをさらに有するようにしてもよい。かかる構成により、簡単な形態により、電池の交換、充電及び保管の一連の作業を容易にするだけでなく、電池の品質管理や交換サービス対価の提示等をも含めた循環処理業務全体を円滑に進めかつ合理的に運営することに貢献することができる。
【0017】
上記形態において、前記充電部は、商用電力、太陽光発電システム、風力及び波力などの自然エネルギー、燃料電池システム及び/又は夜間電力供給システムにより電池ユニットの充電動作を行うことができる。かかる構成により、現場状況に応じた最適な電力供給手段により充電を行うことができるとともに、電力の有効利用を図ることができる。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の1つの実施例について、図1乃至図8を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の1つの実施例による電池交換装置3を用いたシステムは、電池の交換を必要とする輸送機関1、例えば、再充電可能でかつ当該機関1に対して着脱可能に構成された内蔵の電池ユニット2を少なくとも一部の動力源として利用して走行可能な電気自動車1に対し、電池交換サービスを提供するものである。本システムは、現状では既存のガソリンスタンドなどに併設されることが好ましく、また、将来的には、コンビニエンスストア、小規模店舗などの比較的に駐車スペースの狭い店舗などにも設置されることも考えられる。以下では、かかるシステムの稼動場所を電池交換スタンドと呼ぶことにする。
【0020】
電池交換スタンドには、その主たる交換設備として本発明による電池交換装置3が設置される。自動車1は、その電池ユニット2の交換のために電池交換スタンドに立ち寄ると、先ず電池交換装置3の近くに移動して、さらにその交換作業場に自動車1の電池ユニット2の搭載部位を近づける。つまり、自動車の給油口のボディ部をガソリン給油スタンドに近づける現在のガソリン給油の態様と同様である。電池ユニット2の搭載部位としては、自動車1の前部若しくは後部又はその他の部位とすることができる。
【0021】
電池交換装置3は、当該交換作業場の用に供する互いに対向した袖状ユニット着脱部(31,32)を有する。このユニット着脱部(31,32)は、ユニット解除場又はその近傍空間内で電池ユニット2を自動車1から取り外すための手段を担う回収機構部31と、ユニット装着場又はその近傍空間内で新たな電池ユニットを自動車1に装着するための手段を担う実装機構部32とからなり、いずれも電池ユニット2を少なくとも一時的に保持し得る室部を有している。電池交換装置3はまた、後述するように、回収機構部31の室部から実装機構部32の室部まで繋がっていて、これら機構部の室部を連通し電池ユニット2を搬送可能な空間を提供する空洞通路を内部に有する図示の如き逆U字状のハウジングを含むユニット格納部33を有する。このユニット格納部33は、回収機構部31から回収された電池ユニット2を実装機構部32へ向けて順次搬送しながら格納する。そのため、ユニット格納部33は、当該通路内を移動可能に構成され整列された複数のユニット保持部(後述する内容を参照。)を有し、この保持部がそれぞれ電池ユニット2を格納し搬送するようにしている。
【0022】
ユニット格納部33に格納された電池ユニット2は、個々に図示せぬ充電部により充電される。また、ユニット格納部33内の電池ユニット2は、別の電池ユニット2を回収機構部31を経てユニット格納部33に格納し、充電を開始するたびに、図示せぬ搬送部によりそれぞれ列をなして実装機構部32に近づくように移送される。回収された電池ユニット2が実装機構部32の室部に移動するまでには、当該電池ユニット2の充電が完了することになり、実装機構部32において、自動車1に新たに装着すべき電池ユニット2Xとして取り出され、自動車1に装着される。ユニット格納部33に電池ユニット2が格納されている時間は、所定充電時間、例えば電池ユニットの定格最大充電時間以上とするのがよい。これにより、電池ユニットの搬送過程で確実な充電完了状態を保証することができる。なお、当該所定充電時間を、後述する測定部を用いて電池ユニットの充電状態に基づき、格納される電池ユニットに応じて可変なものとしてもよい。
【0023】
上記した如きでは、電池ユニット2を自動車1から取り外し(1)、回収し(2)、回収機構部31から格納部33及び搬送部へ引き渡し(3)、格納(保管)、搬送及び充電し(4)、充電後の電池ユニット2Xを格納部33から実装機構部32へ引き渡し(5)、実装機構部32から取り出し(6)、自動車1に装着する(7)、という一連の行程を実現することができる。この際、作業者は、電池交換作業にあたり常に一定の単純化した行為を容易になすことができる。なお、かかる一連の行程に必要な各部の制御は、電池交換装置3内に設けられるマイクロコントローラその他の制御部によって行われる。
【0024】
図2により詳細に示すように、回収機構部31に形成されるユニットの一時保持空間としての回収室部31Aは、概して平均的身長の作業者が電池交換作業に腰をかがめて作業することがないような適切な高さに設定される。作業者は、電池ユニット2の回収時に同じ室部31Aに電池ユニット2を収容することになるので、作業が単純化され、容易になるとともに作業ミスを防ぐことができる。
【0025】
格納部33内には、複数のユニット保持部35が整列して構成されている。本例では、回収室部31Aから引き渡される電池ユニット2をそのままの保持形態でこれに隣接したユニット保持部35が受け取るようになっている。電池ユニット2が当該隣接のユニット保持部35に移されるたびに、その充電を開始し、ユニット保持部35は、既に格納済みの電池ユニットを含めそれぞれの電池ユニットを実装機構部32に向かう方向に、少なくとも1ステップ(例えば、隣接する2つのユニット保持部35の間隔分)搬送するよう移動させられる。図示したように、本例では、格納部33が逆U字状になっており、回収される電池ユニット2が下側より格納されるので、格納された電池ユニット2は、保持部35内に保持されつつ一旦上方へ移動しその最上位置に達した後は、下方に移動し、実装機構部32に向かうこととなる。
【0026】
実装機構部32に形成されるユニットの一時保持空間としての実装室部32Aも、概して上述したような適切な高さに設定される。作業者は、電池ユニット2の実装時に同じ室部32Aから電池ユニット2を取り出すことになるので、作業が単純化され、容易になるとともに作業ミスを防ぐことができる。
【0027】
なお、電池ユニット2の充電開始をその格納順に行う以外にも、所定の順、例えば後述の測定部を用いて電池ユニットの充電レベルの低い順に行ってもよい。
【0028】
図3に示すように、他の実施例によると、ユニット解除場とユニット装着場が共通の場として定められており、上記回収機構部31と実装機構部32とが一体化されて、回収実装機構部36を形成している。ここでは、上記実装機構部32が省略された格好を呈している。
【0029】
回収実装機構部36は、一時的保持空間の共用室部36Aを備えており、この室部36Aを介して格納部33の保持部35に電池ユニット2を引き渡すようにしている。保持部35は、これにより受け取った電池ユニット2を格納部33において一周させるように搬送部により移動させられる。ここでもその移動中は電池ユニット2の充電が行われる。一周した保持部35は、共用室部36Aに並置させられ、電池ユニットの自動車1への装着時に、保持していた電池ユニットを共用室部36Aに引き渡す。作業者は、室部36Aから充電後の電池ユニットを取り出し、自動車1に装着する。作業者は、電池ユニットの自動車からの取り外し作業も自動車への装着作業も、同じ回収実装機構部36の同じ共用室部36Aを使って行うことができる。
【0030】
図4に示すように、さらに他の実施例によると、上記格納部33の代わりに、横U字状の格納部37が用いられる。この格納部37も、基本的には図1の格納部33と同様の機能を有するものであり、また、基本的には図1に示したような上記回収機構部31及び実装機構部32と同様の回収機構部31’及び実装機構部32’が構成される。なお、この図4の構成も、図3の構成と同様に一体化した回収実装機構部を構成するよう改変することができる。この場合、電池ユニット2は格納部37の内部で循環するように保持部35を構成する必要がある。なお、図3の構成のように一体的回収実装機構部が可能であることから、ユニット格納部は、必ずしも対向する袖状のユニット着脱部の形態を採る必要もない。また、図4の構成のように保持部35を水平に移動させてもよいことから垂直方向に高く延在する必要もない。例えば、ユニット格納部を一端に一体的回収実装機構部を擁し水平に直線状に延びた構造とし、その内部に配されるユニット保持部を他端においてUターンさせ、当該一端側へ戻るような構成とすることも可能である。
【0031】
図5に示すように、ユニット着脱部において、自動車1に搭載されている電池ユニット2は、ボンネットその他のカバー部材(図示せず)を開いた状態で交換される。自動車1の電池ユニット2の底部とその支持台との間に形成される空間には、平板基部40に上向きの複数のキャスタ41が平行して2列に並べられた案内部材4の一端が入り込み、この案内部材4を用いて自動車1からの電池ユニット2の取り外しを行うようにしている。
【0032】
図6により詳細に示すように、電池ユニット2のハウジングは、その底面に案内部材4の基部40及びキャスタ41の車輪42が通ることの可能な断面の溝が形成され、電池ユニット2の底部下に案内部材4が入り込んだ状態で車輪42により支持される。この状態で作業者が自動車1から電池ユニット2を引き出す方向(図5の矢印F)に移動させることにより、キャスタ41の車輪42の転がりとともに容易に電池ユニット2を取り外すことができる。
【0033】
このようにして取り外された電池ユニット2は、案内部材4の他端に向けてさらに作業者にその長手方向に移動させられ、一旦案内部材4の中央に静止させられた後に、案内部材4の他端が回収室部31Aにその開口部から差し入れられ、この状態でさらに当該他端側の回収室部31Aへと移される。案内部材4には、その一端から他端にかけて同様のキャスタ41が取り付けられており、回収室部31Aに電池ユニット2が達するまで滑らかな移動がなされる。回収室部31Aには、充電端子5が設けられており、これが、案内部材4による電池ユニット2の回収室部31Aへの移送完了状態で丁度、電池ユニット2の電極21に接続可能な状態とされる。
【0034】
図7に示すように、充電端子5は、先端部に電池ユニット2の上に突出した電極21が中央において水平方向に通るような構造を有した先割れ形の端子構造を有する。このような構造により、電池ユニット2の水平移動で簡単に電極21と充電端子5との接続位置を確実に規定することができ、しかも当該接続位置への電池ユニット2の最終的な案内までをもなすことができる。かかる位置に到達後、例えば電極21を担うそのネジを締めることにより、確実な電気的接続がなされるようにすることができる。また、このような充電端子5と電極21との締結により、電池ユニット2の回収室部31Aにおける固定をもなすことができて好都合である。以上のように、自動車1側における電池ユニット2の電極21との接続部11(図5)も、同様の端子構造及び同様の締結態様を採ることが好ましい。
【0035】
図8に示すように、案内部材4を用いたユニット案内機構部において、2列のキャスタ41が固定された平板基部40は、その下側においてさらに可動支持部材6が結合されている。この支持部材6は、案内基部40を所定の軸6xを中心に水平方向において回動させることの可能な構造を有している。また、支持部材6は、回収機構部31及び実装機構部32に対して伸縮自在な構成とし、必要に応じて当該機構部から引き出したり引っ込めたりしながら電池ユニットの交換作業ができるようにするのが好ましい。また、支持部材6は、上下すなわち垂直方向に移動可能な構造を有するのがよく、これにより、電池ユニット2の底部下に案内部材4が入り込み易くなるとともにその入り込んだ状態でキャスタ41の車輪42の当該電池ユニットに対する支持を確実にするために若干上方に移動することができ、回収室部31Aへの移動後は下方に戻るように移動することでその支持を解放させることを容易にすることができる。さらに支持部材6は、回収機構部31若しくは実装機構部32又はその近辺に設けられる所定の軸6yを中心に或る程度水平方向に回動可能な構造を有するようにしてもよいし、上記伸縮の方向に直角に水平方向に移動することができるようにしてもよい。このようにすることにより、電池ユニット2の自動車1における種々の形態の搭載方向に、交換作業を適応させることができる。
【0036】
案内部材4及び支持部材6による電池ユニット2の移送は、回収室部31Aに対してだけでなく、実装室部32Aや共用室部36Aにも好適なものとなっている。すなわち、上述した自動車1から回収室部31Aへ向けた電池ユニット2の移送とは逆の態様で案内部材4及び支持部材6を用い、実装室部32A又は共用室部36Aからの電池ユニット2の取り出しと自動車1への移送を行うことができる。
【0037】
回収室部31Aは、そのままのユニット保持状態、すなわち電池ユニット2をその底板部材300で支持し電極21と端子5とが締結され接続されたまま、保持部35に移されることになる(図5、矢印L)。充電端子5は、充電ライン7と結合されており、この充電ラインを介して図示せぬ充電回路から充電電流が供給される。この状態で上述した格納部33における保持部35の搬送が行われる。
【0038】
また、実装室部31A及び共用室部36Aには、電池ユニット2をその底板部材300で支持し電極21と端子5とが締結され接続された状態で電池ユニット2が保持部35から移されることになる(図5、矢印M)。このとき充電端子5は、充電ライン7と結合されているものの、既に充電が完了しているので、図示せぬ充電制御部により充電電流の供給は停止された状態となっている。
【0039】
電池交換装置3には、格納部33に格納される電池ユニット2の個々の充電状態及び/又は電池寿命状態を測定する測定部(図示せず)をさらに有することが好ましい。これにより、個々の電池ユニットに適合した適切な充電ができる。また、電池ユニットの劣化が著しいものは、測定部(図示せず)において警報を発するようにしてユーザー及び/又は電池交換スタンド業者が把握できるようにすることが好ましい。かかる警報に従って、該電池ユニットを修理、廃棄又はリサイクル処分に移し新品をあてがうなどのメンテナンスを行うのである。また、新品又は同程度の電池ユニットが当該電池交換スタンドにどの程度用意されているかを把握し、かかる新品又は同程度の電池ユニットの利用可能性などをユーザに提示するなどのサービスが考えられる。
【0040】
なお、後述するように、電池ユニット2を電池交換スタンド業者若しくは電池ユニットリース業者等が保有し、ユーザにリースするような場合にあっては、電池ユニット2の劣化による修理等は該業者によってなされる。かかるサービスによれば、ユーザーは、現在、自動車に搭載されている電池ユニットの劣化状態を気にすることなく、常に劣化の少ない電池ユニットが供給されているとの安心感を抱くことができるのである。
【0041】
ここで、充電部は、当該測定部により所定充電状態に達したものと確認された電池ユニット2に対して充電を停止するよう制御されるのが好ましい。これにより、電池ユニットの過充電を防止することができる。
【0042】
さらに電池交換装置3は、当該測定部により測定された充電状態及び/又は電池寿命状態に応じた料金を当該状態の明細とともに表示又は提示するシステムをさらに有するようにしてもよい。例えば、図1に示されるユニット格納部33の自動車1に相対する面に表示部8を設け、自動車1から取り外した電池ユニット2の消耗状態に応じて、すなわちその電池ユニットの充電にかかる電力量に応じて、サービスの対価を計算し、それに見合った料金を表示部8でユーザに提示することができる。その際、その消耗状態がどのようなものかが当該明細によりユーザが内容確認しその内容に応じた対価を支払うことができるので、サービス利用の公平性が保たれることになる。
【0043】
1つの例として、後述するように、電池ユニットを電池交換スタンド業者若しくは電池ユニットリース業者等が保有し、ユーザにリースするような場合にあっては、電池ユニット交換料金は、上記した充電にかかる電力量に応じた料金に電池ユニット及び電池交換設備の償却費を乗じた額となるのである。もちろん、業者の経費、利益、税金などの諸費用をさらに乗せることもあり得る。かかる諸費用を現在のガソリン等の単価と比較考量して決定することで、本システムの普及を推進することもでき得るのである。
【0044】
以上の如く、簡単な形態により、電池の交換、充電及び保管の一連の作業を容易にするだけでなく、電池の品質管理や交換サービス対価の提示等をも含めた循環処理業務全体を円滑に進めかつ合理的に運営することができる。
【0045】
表示部8の代わりに、或いはこれに加えて、当該明細及び料金を紙面に印刷してこれを出力するようにしてもよい。
【0046】
なお、充電部は、商用電力、太陽光発電システム、風力及び波力などの自然エネルギー、燃料電池システム及び/又は夜間電力供給システムにより電池ユニットの充電動作を行うことができる。これにより、現場状況に応じた最適な電力供給手段により充電を行うことができる。
【0047】
また、上記実施例では、自動車1から電池ユニット2を取り外し、回収機構部31に移すのに作業者の手作業により行う旨述べたが、将来的には、こうした作業をロボット化することができることは勿論である。特に図3に示したように、ユニット解除場とユニット装着場を共通の場として定め、回収機構部31と実装機構部32とを一体化して回収実装機構部36を形成すると、電池ユニット2の回収及び装着も単純なロボット機構で実現し得るのである。
【0048】
さらに、自動車1に搭載される電池ユニット2は1つに限らず複数個であっても構わないし、複数種類のものとすることもできる。この場合、上記回収室部、実装室部及び共用室部並びに保持部等を適宜改変すればよい。
【0049】
また、新車購入時の電池ユニットはユーザの負担となるが、例えば、電池ユニットを電池交換スタンド業者若しくは電池ユニットリース業者等が保有し、ユーザにリースするサービス形態であってもよい。ユーザは電池ユニットを保有するための初期費用を軽減できるメリットを得られて本システムの普及をはかることができるのである。さらに、上記したように、業者側で電池ユニットを常に一定の品質以上に保持するよう管理することで、ユーザは良好な状態にある電池ユニットを保有していられるとの安心感を上記電池交換サービスを通じて得るのである。かかる点においても、本システムの普及を後押しできるのである。一方で、業者は、上記した電池交換サービスに、電池ユニットのリース料金を乗せて電池ユニットの原価を回収できるとともに、本システムの普及度に応じて価格設定の幅を広く持ち得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の1つの実施例による電池交換スタンドのコンセプトを示す図である。
【図2】図1の電池交換スタンドにおける電池交換装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例による電池交換装置の構成を示す図である。
【図4】本発明のさらに他の実施例による電池交換装置の構成を示す図である。
【図5】本発明による電池交換装置に用いられるユニット着脱部の構成を示す側面図である。
【図6】本発明による電池交換装置に用いられる電池ユニット及びその案内部材の構成を示す断面図である。
【図7】本発明による電池交換装置に用いられる電池ユニットの電極及び充電端子の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明による電池交換装置に用いられる電池ユニット案内機構部の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 輸送機関(自動車)
2 電池ユニット
3 電池交換装置
4 案内部材
5 充電端子
6 可動支持部材
6x 回動軸
7 充電ライン
8 表示部
21 電極
31 回収機構部
31A 回収室部
32 実装機構部
32A 実装室部
33 ユニット格納部
35 ユニット保持部
36 回収実装機構部
36A 回収実装室部
40 基部
41 キャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機関の少なくとも一部の動力源として用いられ該輸送機関に対し着脱可能に構成された電池ユニットを交換するための電池交換システムであって、
電池ユニットを前記輸送機関から取り外し、新たな電池ユニットを前記輸送機関に装着するためのユニット着脱部と、
前記ユニット着脱部により取り外された電池ユニットを順次格納するユニット格納部と、
前記ユニット格納部に格納された電池ユニットを充電する充電部と、
前記充電部により充電された電池ユニットを前記輸送機関に装着すべき新たな電池ユニットとして前記ユニット着脱部に搬送する搬送部と、を有することを特徴とする電池交換システム。
【請求項2】
前記ユニット格納部は、電池ユニット毎に電池ユニットを収容又は保持し電池ユニットの電極に電気的に接続される充電端子を有する複数のユニット保持部を有し、前記充電部は、前記充電端子に結合される充電ラインとこの充電ラインを通じて前記充電端子に充電電流を供給するための充電回路とを有し電池ユニットの格納された順又は所定の順に電池ユニットの充電を開始することを特徴とする請求項1記載の電池交換システム。
【請求項3】
前記ユニット着脱部には、前記輸送機関から電池ユニットを取り外すために使用されるユニット解除場と前記輸送機関に電池ユニットを装着するために使用されるユニット装着場とが分離して又は共通の場として定められ、前記複数のユニット保持部は、前記解除場又はその近傍から電池ユニットが引き渡され、前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍にわたり配列され、前記ユニット格納部に電池ユニットが格納されるたびに前記搬送部により前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍へ向かう方向にそれぞれ移動可能な構成を有し、前記装着場又はその近傍へ充電された電池ユニットを引き渡す、ことを特徴とする請求項2記載の電池交換システム。
【請求項4】
前記ユニット格納部に少なくとも1つの電池ユニットが格納されるたびに前記ユニット保持部を少なくとも1ステップ移動させるよう前記搬送部を制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項3記載の電池交換システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ユニット保持部を電池ユニットの所定充電時間をかけて前記解除場又はその近傍から前記装着場又はその近傍に移動するよう前記搬送部を制御する、ことを特徴とする請求項4記載の電池交換システム。
【請求項6】
前記所定充電時間は、当該電池ユニットの定格最大充電時間以上の時間である、ことを特徴とする請求項5記載の電池交換システム。
【請求項7】
前記ユニット着脱部は、前記輸送機関から取り外された電池ユニットを前記解除場又はその近傍における前記ユニット保持部への収容又は保持動作を行うための回収機構と、前記装着場又はその近傍における前記ユニット保持部から電池ユニットを取り出して前記輸送機関へのユニット装着動作を行うための実装機構とを個別に又は一体的に有する、ことを特徴とする請求項6記載の電池交換システム。
【請求項8】
格納される電池ユニットの個々の充電状態及び/又は電池寿命状態を測定する測定部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至7のうちの1つに記載の電池交換システム。
【請求項9】
前記充電部は、前記測定部により所定充電状態が測定された電池ユニットに対して充電を停止するよう制御される、ことを特徴とする請求項8記載の電池交換システム。
【請求項10】
測定された充電状態及び/又は電池寿命状態に応じた料金を当該状態の明細とともに表示及び/又は提示するシステムをさらに有することを特徴とする請求項8記載の電池交換システム。
【請求項11】
前記充電部は、商用電力、太陽光発電システム、風力及び波力などの自然エネルギー、燃料電池システム及び/又は夜間電力供給システムにより電池ユニットの充電動作を行う、ことを特徴とする請求項1乃至10のうちの1つに記載の電池交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−137366(P2009−137366A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314071(P2007−314071)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】