説明

電池

【課題】渦巻状の発電要素における複数の極箔と集電体とを導通接合させた状態で耐振性を有する構造を開発し、走行車両にも好適使用できるよう改善された電池を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池において、正負極箔とセパレータとを巻回して成る渦巻状で角丸長方形の発電要素1と、渦巻軸心方向にて発電要素1の両側に配備される正負の集電体2,3と、これら三者1,2,3を収容する角型電池ケースとを備え、極箔におけるセパレータから渦巻軸心方向に延出される箔端部7A,8Aどうしの複数と集電体2,3とが導通接合され、集電体2,3が互いに相手側に移動できないように集電体2,3間に亘って配備される支え部材13が、発電要素1の円筒面1Eと電池ケース4との間の空隙を通して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池に好適な電池に係り、詳しくは、発電要素の両側に集電体を有する電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電池としては、特許文献1において示される非水電解質二次電池が知られている。これは、帯状の正極(5)と帯状の負極(6)とを一対のセパレータ(7),(7)を介しての絶縁状態で渦巻状に巻回するとともに押し潰すように屈曲形成して、上下向きの渦巻軸心方向視で角丸直方形を呈する発電要素が開示されている(特許文献1の図8等参照)。この場合の集電体(10)は、各極の未塗布部(4)が複数(5箇所)に分配された各積層束(電極の端縁部)に対応させて受け入れる複数の溝を持つ金属部材で構成されている。そして、各積層束と集電体(10)とはレーザー溶接を用いて溶接させる(特許文献1の図9等参照)と記載されている。
【0003】
そして、引用文献2に示されるように、渦巻中心が左右向き(横向き)姿勢となる発電要素と、その左右両端に配備される正負の集電体とを有する構造の非水電解質二次電池も開発されて来ている。この電池では、発電要素の左右端に先端が分岐した二股状の一対の集電体が配備されていることは理解できる。しかしながら、発電要素に関しては仮想線にてその配置が示される程度の開示しかなく、横向きに突設される多数の正負の極箔と集電体とをどのように導通接合するか、即ち、極箔と集電体との接合構造に関しては何ら開示していない。
【0004】
上述のような電池の使われ方としては、近年、自動車などの走行車両に搭載される場合も多くなってきている。この場合、特許文献1のように、発電要素と集電体とを単にレーザー溶接して接合するだけでは、集電体やそこに接合される極箔が容易に振動されるようになり、その振動が続けられることによって亀裂が入るなど、早期に損傷し易いことが予測される。そのため、良好な耐振性を備えた電池の開発が急務となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−106536号公報
【特許文献2】特開2010−272324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、渦巻状の発電要素における複数の極箔と集電体とを導通接合させた状態で耐振性を有する構造を開発し、走行車両にも好適に使用できるように改善された電池を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、電池において、
正及び負の各極箔7,8とそれら両者7,8間に設けられる絶縁用のセパレータ9とを巻回して成る渦巻状の発電要素1と、前記発電要素1の渦巻軸心P方向において前記発電要素1の両側に振り分けて配備される正負一対の集電体2,3と、前記発電要素1及び前記集電体2,3を収容する角形状の電池ケース4を備え、
前記発電要素1の径内外に配置される前記極箔7,8の端部7A,8Aどうしの複数と前記集電体2,3とが導通接合されるとともに、一対の前記集電体2,3間に亘る状態の支え部材13が、前記発電要素1と前記電池ケース4との間の空隙Sを通して設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電池において、
前記集電体2,3は、前記渦巻軸心Pに沿う方向に拡がる面を備える対極板状部2A,3Aと、前記渦巻軸心Pと交差する方向に拡がる面を備えて前記対極板状部2A,3Aの集電体基端側と集電体先端側との少なくとも何れか一方の側に形成される対向板状部2B,3Bとを有しており、前記発電要素1が前記渦巻軸心P方向視で角丸長方形を呈するものに形成され、
前記発電要素1の径内外に配置される前記極箔の端部7A,8Aどうしの複数と前記対極板状部2A,3Aとが導通接合され、前記支え部材13が前記対向板状部2B,3Bどうしに亘って配備されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電池において、
前記支え部材13が、前記渦巻軸心Pに交差する方向に沿う長尺状で一対の縦支え部25,25と、これら縦支え部25,25の長手方向の両端部どうしを繋ぐ一対の横支え部26,26と、を有する口形状のものに形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の電池において、
前記縦支え部25は、前記集電体基端側及び前記集電体先端側の双方に形成される前記対向板状部2B,3Bに沿う状態で、前記極箔の端部7A,8Aと前記電池ケース4との間の縦空隙部Tsに配備され、かつ、前記横支え部26は、前記発電要素1における円筒面1Eと前記電池ケース4との間の横空隙部Ysに配備されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の電池において、
前記支え部材13が、前記対向板状部2B,3Bにおける幅方向の端部に当接可能な状態で、前記発電要素1の厚み方向の両側それぞれに設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の電池において、
前記支え部材13が合成樹脂材製のものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の電池において、
前記発電要素1及び前記一対の集電体2,3と導通材製の前記電池ケース4との間に、これら発電要素1及び各集電体2,3を収容する絶縁材製の絶縁袋27が設けられるとともに、前記支え部材13が前記絶縁袋27に一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、一対の集電体間に配備される支え部材の存在により、各集電体が互いの存在方向に移動することが抑制又は防止されるようになる。集電体の移動や振動が抑制又は防止されるので、集電体に接合される極箔の端部が、渦巻軸心方向に繰り返し移動(振動)することが軽減又は解消され、極箔の早期の亀裂や破断が防止可能となり、耐久性や信頼性に優れるように改善される。
【0015】
しかもそのための手段である支え部材は、渦巻状の発電要素と電池ケースとの間の空隙を通して設けられるので、発電要素の体積を削ることや発電要素と電池ケースとの間に専用の配置スペースを設けることがない。つまり、電池容量を維持したまま支え部材を配置することができる、という合理性に優れる構造が実現されている。その結果、渦巻状の発電要素における複数の極箔と集電体とを導通接合させた状態で耐振性を有する構造を開発し、走行車両にも好適に使用できるように改善された電池を提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、集電体における複数の極箔に接合される対極板状部は渦巻軸心に沿う方向に拡がる壁面となって支え作用し難いが、その両側に位置する対向板状部に支え作用する支え部材を用いることにより、実情に即した有効な振動防止機能を発揮できる有用な非水電解質二次電池を提供することができる。つまり、支え部材は、これに面で向かいあう対向板状部に当接する構造とされているから、多少の寸法誤差や製品誤差があっても、請求項1の発明による前記効果をより確実に発揮させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、支え部材を、一対の縦支え部と一対の横支え部とで成る口形状のものとする手段であり、発電要素と電池ケースとの隙間を用いながらも強度や剛性に優れる合理的な支え部材を有する電池を提供することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、極箔の端部と電池ケースとの間の縦空隙部に配備される縦支え部と、発電要素における円筒面と電池ケースとの間の横空隙部に配備される横支え部とで支え部材を構成すれば、箔端部の横に形成される縦空隙を用いての広い面で集電体に確実に支え作用できる大型の口形状支え部材を、空隙を効率良く使いながら位置ズレすることのない安定支持状態で設けることができる利点がある。
【0019】
請求項5の発明によれば、口形状を呈する支え部材を発電要素の両側に設けるバランスの良い手段であり、請求項4の発明による前記効果をより確実に得ることができる利点がある。
【0020】
請求項6の発明によれば、支え部材を合成樹脂製とすることで軽量で廉価に構成することができ、商品として望ましい状態で提供することが可能となる利点がある。
【0021】
請求項7の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、集電体及び発電要素と電池ケースとの間を絶縁するために設けられる絶縁袋に支え部材を一体的に形成する合理的な手段であるから、絶縁袋を装備すれば支え部材も装備されたことになるという組付け性に優れるものとしながら、請求項1〜5の発明によるいずれかの前記効果を得ることができる。加えて、部品点数の削減によるコストダウンも可能なるという、さらに改善される電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一方の支え部材と絶縁袋とを示す斜視図(実施例1)
【図2】非水電解質二次電池を示す一部切欠きの正面図
【図3】非水電解質二次電池の構造を示す一部切欠きの側面図
【図4】集電体及び支え部材周辺の構造を示す一部切欠きの拡大正面図
【図5】図2の非水電解質二次電池の要部を示す斜視図
【図6】発電要素の構造を示す斜視図
【図7】図1の支え部材の装着状態を示す要部の横断面図
【図8】図1の支え部材の装着状態を示す要部の縦断面図
【図9】一対の支え部材が一体形成された一体型絶縁袋の展開図(実施例2)
【図10】図9の展開状態にある一体型絶縁袋の組立要領を示す斜視図
【図11】一体型絶縁袋の装着構造を示す電池底部端部の一部切欠き正面図
【図12】一体型絶縁袋の装着構造を示す電池要部の横断面図
【図13】一体型絶縁袋の装着構造を示す電池要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明による電池の実施の形態を、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)に適用した場合について、図面を参照しながら説明する。図1〜図8は実施例1を、図9〜図13は実施例2をそれぞれ示している。
【0024】
非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)Aは、図2〜図5に示すように、発電要素1と、一対の集電体2,3と、電解液(図示省略)とを、アルミ合金やステンレス合金などの硬質板製電池ケース4に収容して成る扁平な縦向き角型のものに構成されている。電池ケース4の天板4Aには、各集電体2,3に導通接続される正負の電極部5,6が設けられている。図1,2,3などに示すように、発電要素1及び一対の集電体2,3と電池ケース4との間には、これら発電要素1及び各集電体2,3を収容する絶縁材製の絶縁袋27が装備されている。
【0025】
絶縁袋27は、図1,図4,図7,図8などに示すように、前後の大側壁27a,27aと、左右の小側壁27b,27bと、底壁27cとを備える無蓋箱状のものであり、例えば薄膜状の合成樹脂で形成されている。この絶縁袋27は、展開状態のもの(同構造のものとして図9を参照)を、折り曲げて組立てる構造のものであって、図1は無蓋箱状で角形状に組立てられた状態を示している。この構造の絶縁袋27では、その左右端は、図4に示すように、左右の小側壁27b,27bの2枚重ね構造になっている。そして、前記左右端の下端部においては、底壁27cの左右端から突設される小面積の突出片(図9に示す突出片29aに相当する部分であり、符記は省略する)が加わっての3枚重ね構造となっている。なお、絶縁袋27は、型成形によるものなど、その他の構造で成るものでも良い。
【0026】
発電要素1は、図2、図5,図6に示すように、正及び負の各極箔7,8とそれら両者7,8間に設けられる絶縁材で二枚のセパレータ9,9とを渦巻状に巻回して渦巻軸心P方向視で角丸長方形を呈するものに形成されている。正極箔7は、正極活物質が塗布された帯状でアルミ箔製のものであり、負極箔8は、負極活物質が塗布された帯状で銅箔製のものである。4枚積層体構造の発電要素1においては、正極箔7と負極箔8とが軸心P方向で互いに異なる方向にずらされた状態で交互に積層されている。なお、以下においては、一対の集電体2,3や極箔7,8に関しては、説明の重複を避けるため、基本的には一方(負極側)を説明するのみとし、他方(正極側)には対応する符号を付して、その説明が為されたものとする。
【0027】
正負の極箔7,8の渦巻軸心P方向で互いに反対となる各端には、活物質の未塗布部としてアルミ箔や銅箔を露出させた端部7A,8Aが形成されている。各端部7A,8Aにおける渦巻軸心Pの径方向で内外に配列される直線部分7a,8a(図3〜図5では縦向きに現れる)は、それらの多数を束ねて積層された状態で集電体2,3の対極板状部2A,3Aに導通接合されている。なお、図面理解上、図6においては、正負の各極箔7,8とセパレータ9との間隔を拡大して描いてある。
【0028】
電池ケースAは、図2,図3などに示すように、無蓋箱状の本体ケース部4Bと、天板4Aとをレーザー溶接などによって溶接一体化されて成る角形状(角型)のものに構成されている。天板Aは、正負の電極部5,6を支持する極端子支持壁4aとして機能する。本体ケース部4Bは、左右の集電対向壁4b,4bと、前後の主ケース壁4c,4cと、底壁4dとの五壁を備える矩形容器状のものに形成されている。前述の絶縁袋27は、本体ケース部4Bの内面に隙間無く(又は殆ど無く)丁度沿って収容される角形状(角型)を呈している。
【0029】
実施例1の非水電解質二次電池Aにおける発電要素1は、図3などに示すように、その渦巻軸心P方向に直交する一方向である前後方向(矢印イ方向)に薄く、かつ、渦巻軸心P方向及び前後方向の双方に直交する他方向である上下方向(矢印ロ方向)に長い扁平な角丸直方形を呈するものに形成されている。そして、複数の端部7A,8Aとして上下方向(矢印ロ方向)に沿う直線部分7a,8aが選択されている、という構成の発電要素1である。
【0030】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出する公知の材料が可能であり、例えば、LiCoO2 や前記Coの一部がNi,Mnその他の遷移金属或いはホウ素で置換されたα−NaFeO2 構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4に代表されるスピネル型結晶構造を有する化合物、LiFePO4、LiFeSO4、或は前記Feの一部がCo、Mn等で置換されたポリアニオン型化合物等を用いることが可能である。
【0031】
集電体2,3について説明する。アルミ又はアルミ合金製の正極集電体2と、銅又は銅合金製の負極集電体3とは互いに同じ構造を有しており、その構造を片方の集電体3を例に挙げて説明する。図2〜図5に示すように、集電体3は、天板4Aに係止される水平上部11と、その端から折り曲げられて垂下される縦集電部12とから成る正面視で略L字形状を為す部品である。水平上部11は、その内側端部に形成される孔11aを用いて電極端子6に導通接続されており、縦集電部12は、その上下中間部に並列形成される一対の対極板状部3A,3Aを介して負の極箔8に導通接続されている。対極板状部3A,3Aの集電体基端側である上側と集電体先端側である下側と双方(集電体基端側と集電体先端側との少なくとも何れか一方の一例)に、対極板状部3A,3Aに直交する面を有する対向板状部3Bが形成されている。
【0032】
対極板状部3A,3Aは、発電要素1の厚み方向(矢印イ方向)に適宜の間隔をあけて、かつ、縦集電部12から垂直で内向き(渦巻軸心P方向)に突設する状態で一対形成されている。渦巻軸心Pに沿う板状の各対極板状部3Aは、その両側(上下側)には適宜の角度が付いて折れ曲るような補強板部3aが形成されている。また、縦集電部12は、各対極板状部3Aの両側に、補強板部3aを一体的に有する三角板状部23が、孔部24を介して前後方向(矢印イ方向)で並ぶ形状に形成されている。
【0033】
正負の電極端子5,6は互いに同じで一般的な構造のものであり、一方の電極端子6について説明する。図2〜図5に示すように、電極端子6は、筒状下部6aと、上下中間の四角本体部6bと、上部の雄ねじ部6cとを有してなるリベット・ボルト構造のものである。集電体3の水平上部11は断面下向きコ字状を呈する合成樹脂製の第1絶縁部材14を介して天板4Aの下面4uに面当接されている。四角本体部6bは、極端子支持壁4aである天板4Aの上側にて合成樹脂製の第2絶縁部材15に嵌入配備されている。
【0034】
筒状下部6aは、天板4Aの丸孔(符記省略)及び第1絶縁部材14の丸孔(符記省略)に嵌入されている第2絶縁部材15の小筒部15a、及び水平上部11の丸孔11aに落とし込み挿通され、その下端部を潰しての加締め(カシメ)により、水平上部11に導通接続される。つまり、電極端子6は、筒状下部6aと水平上部11とが、第1絶縁部材14と第2絶縁部材15とを用いての絶縁状態で加締める構造により、天板4Aに絶縁状態で装備(係止)される。四角本体部6bの上側には、図外のリード線などを導通接続するための雄ねじ部6cが起立形成されている。なお、正極の電極端子5はアルミ製とし、かつ、負極の電極端子6は銅製とするのが好ましい。
【0035】
主に片方の集電体3を用いて接合部10(集電構造)について簡単に説明する。図2〜図4,図7に示すように、極箔8の端部8Aの多数(複数の一例)と、集電体3の対極板状部3Aとが、板状の金属材製のクリップ20と対極板状部3Aとの間に多数の端部8A、即ち極箔8A群が積層されて介装される状態で超音波溶接されている。つまり、接合部10は、極箔7,8と集電体2,3とが超音波溶接によって接合されている箇所を指す。なお、正極のクリップ19はアルミ製であり、負極のクリップ20は銅製である。
【0036】
次に、支え部材13について説明する。図5に示すように、実施例1による非水電解質二次電池Aにおいては、一対の集電体2,3が左右方向(渦巻軸心P方向)に振れ動かないように支えられた状態とするために、発電要素1の外側に配置される支え部材13が装備されている。支え部材13の例として、図1〜図5,図7,図8に示すように、一対の集電体2,3の間においてこれら集電体2,3に亘る状態の支え部材13が、発電要素1と電池ケース4との間の空隙Sを通して設けられている。
【0037】
具体的には、図1及び図2〜図5に示すように、支え部材13は、渦巻軸心Pに交差する方向に沿う長尺状で一対の縦支え部25,25と、これら縦支え部25,25の長手方向の両端部どうしを繋ぐ一対の横支え部26,26と、を有して前後方向視で口形状を呈する枠体に形成されている。縦支え部25は、対極板状部2A,3Aの集電体基端側及び集電体先端側の双方に形成される対向板状部2B,3Bに沿う状態で、極箔7,8の端部7A,8Aと電池ケース4との間の縦空隙部Ts(空隙Sの一例)に配備されている(図7参照)。横支え部26は、発電要素1における上下の各円筒面1Eと電池ケース4(詳しくは前後の主ケース壁4c,4c)との間の横空隙部Ys(空隙Sの一例)に配備されている(図8参照)。
【0038】
縦支え部25は、図7に示すように、渦巻軸心Pに沿って長い長方形における左右及び前後方向で内側となる角部が斜めにカットされたような5角形の断面形状を有するものに形成され、上下方向(渦巻軸心Pに交差する方向の一例)に延びる状態で配備されている。つまり、左右に広く前後に狭い断面形状を持つ縦空隙部Tsを有効利用できながら無理なく配置できるように設定されている。横支え部26は、図8に示すように、上下方向に長い長方形における前後及び上下方向で内側となる角部が斜めにカットされたような5角形の断面形状を有するものに形成され、左右方向(渦巻軸心Pに沿う方向)に延びる状態で配備されている。つまり、渦巻軸心P方向視で略三角形を呈する断面形状を持つ空隙Sを有効利用できながら無理なく配置できるように設定されている。
【0039】
各縦支え部25,25は、左右の集電体2,3が互いの存在方向に移動できない(又は移動し難い)ように規制する箇所、即ち、各対向板状部2B,3Bに支え作用する箇所として機能する。そして、各縦支え部25,25の左右方向の端面25a,25aは、各集電体2,3の上下両側の対向板状部2B,3Bの内側面2b,3bに面接触又は当接するような寸法設定になっている。この寸法設定により、集電体2,3の互いの存在方向への移動がまずできない状態となっていて、前記の支え作用が強化される構成とされている。
【0040】
ところで、発電要素1及び左右の集電体2,3と電池ケース4との間は、無蓋袋状を為す絶縁袋27で覆われて絶縁される構造となっている。正確に言うと、横支え部26を収容する横空隙部Ysは、円筒面1Eと絶縁袋27との間の隙間部分であり、縦支え部25を収容する縦空隙部Tsは、端部7A,8Aと絶縁袋27との間の隙間部分である。支え部材13は、PP,PEなどの合成樹脂製であるのが望ましいが、絶縁性、耐電解液性を有し、かつ、支え作用可能な強度を持つもの材料であれば、それら以外のものでも良い。
【0041】
次に、支え部材13を設けるに至った理由、並びにそれによる作用や効果について詳しく説明する。非水電解質二次電池Aは、図4に示すように、電極端子5,6が上部に配備される二次電池であり、それら電極端子5,6は、集電体2,3の水平上部11を天板4Aに片持ち支持状態で固定している。そして、集電体2,3は、その縦集電部12を用いて、電池ケース4の内部にて発電要素(エレメント)1を保持(吊下げ支持)している。集電体2,3は、前述の特許文献2にて開示されるように、上部のみ支持させる構造のものがある。
【0042】
そして、図3,5などにて示す実施例1のように、その上部を天板4Aに固定させての吊下げ姿勢で支持させるものもある。或いは、図10,図11に示す実施例2(後述)のように、集電体下端を電池ケース4の底面に接地させるようにして両持ち構造のようにされたのものもある。いずれの構造でも、基本的には上部のみ固定されて片持ち支持される一対の集電体2,3で発電要素1を支持する、という構造が採られている。
【0043】
そのため、縦集電部12は、横方向(特に、集電体2,3の面に直交する方向である渦巻軸心P方向)の振動に対して、内方向(各集電体2,3の互いの存在方向)には互いに支えて耐える構造が無く、縦集電部12は(集電体2,3は)発電要素1に引きずられて互いの存在方向に移動(変位)し易い傾向がある。なお、外方向には、すぐ横傍に存在する集電対向壁4b(又は絶縁袋27の小側壁27b)により、縦集電部12の移動はまずできない。
【0044】
縦集電部12の内方向への移動及び復元移動とが続くと、発電要素1における極箔7,8の端部7A,8Aを座屈方向と引張り方向とに繰り返し変形させ、極箔7,8(特に、端部7A,8A)の亀裂や破断を引き起こす原因となりうる。これは、自動車などの振動の多い箇所へ電池を設置する場合には不都合であって、要改善課題となる。支え部材13は、その不都合を解消又は改善させることが可能な手段として採用されている。
【0045】
さて、発電要素1は渦巻軸心P方向視で角丸長方形を呈する形状(図3参照)であって上下に円筒面1Eを持つため、矩形の電池ケース4に収容した場合には、前後の主ケース壁4c,4c及び天板4Aと上側の円筒面1Eとの間、並びに、前後の主ケース壁4c,4c及び底壁4dと下側の円筒面1Eとの間の計4箇所には、左右に延びる横空隙部Ysが存在する。そして、束ねられて集電体2,3に導通接続される正負の極箔7,8の端部7A,8Aと前後の主ケース壁4c,4cとの間には、端部7A,8Aが束ねられて対極板状部2A,3Aに接合される構造上、縦空隙部Tsも存在している。本発明においては、これら横空隙部Ys及び縦空隙部Tsを有効利用して、支え部材13を、専用の配置空間を設けることなく装備させることができている。
【0046】
渦巻構造の発電要素1を矩形の電池ケース4に収容する構造を採る非水電解質二次電池Aでは、縦空隙部Ts及び横空隙部Ysなどの空き空間となっている空隙Sの存在に着目し、その空隙Sに無理なく収まるように口形状を為す支え部材13が設けられている。従って、構造変更や部品追加などの一切の変更を行うことなく、集電体2,3がその縦集電部12の面方向(渦巻軸心P方向)に移動(振動移動も含む)することを抑制又は解消する支え作用の発揮が可能に構成されている。
【0047】
つまり、非水電解質二次電池Aには、集電体2,3を横方向(特に、渦巻軸心P方向)の振動に対して支えて耐える構造が構築されたことになり、発電要素1に引きずられて集電体2,3が渦巻軸心P方向に移動することが防止又は抑制されるようになる。その結果、自動車などの振動の多い設置環境下であっても、集電体2,3の縦集電部12が振れ動くことがまずなくなり、発電要素1における極箔7,8の端部7A,8Aを繰り返し変形させて極箔7,8(特に、端部7A,8A)の亀裂や破断を引き起こす不都合が解消され、耐久性のある改善された非水電解質二次電池Aが実現できている。
【0048】
〔実施例2〕
実施例2による電池Aは、これも非水電解質二次電池であって、支え部材13を一体に有する絶縁袋27を設ける構成とされている(図9参照)。前述したように、電池ケース4がアルミ合金などの導通材で形成されていて、その内蔵物である発電要素1や集電体2,3とは絶縁する必要があるため、発電要素1や集電体2,3を収容して電池ケース4に入れる絶縁材製の絶縁袋27が設けられている。その絶縁袋27に支え部材13が一体形成されているもの(図9参照)を装備する非水電解質二次電池Aが、実施例2による電池Aである(図13参照)。各集電体2,3は、図10,11に示すように、絶縁キャップ41が被せられた下端部が、電池ケース4の底壁(符記省略)に届くように下方延長されたタイプのものとして描いてある。
【0049】
支え部材13を一体に備える絶縁袋(以下、一体型絶縁袋と略称する)27は、図9,図10に示すように、略板状で展開状態の絶縁袋27を要所要所で折り曲げて組み立てることにより、図1に示すような角型で無蓋状の絶縁袋27となる組立式のものに構成されている。即ち、図9に示すように、薄肉で合成樹脂製の一体型絶縁袋27は、支え部材13を有する一対の大側壁28,28、それらの間に位置する底壁29、各大側壁28から外方に張り出る一対の(計4箇所の)重ね壁28a,28a、底壁29の両端から外方に張り出る一対の突出片29a,29aを備えている。
【0050】
各大側壁28は、一対の凹入縦枠部30,30、各凹入縦枠部30,30の両端どうしを繋ぐ状態となる一対の凹入横枠部31,31、これら4部に亘る平面壁32とを有する屈曲板状の構成要素である。一対の凹入縦枠部30,30と一対の凹入横枠部31,31とで成るロ枠状の部分が支え部材13を構成している。一対の大側壁28,28と底壁29とは一連一体のものであり、隣り合う重ね壁28aと突出片29aとの間には、これらを独立形成するための切込みkが形成されている。なお、図9,10における細線のxは折り曲げ予定線である。
【0051】
凹入縦枠部30は、図12に示すように、外面壁33と、正面縦壁34と、傾斜縦壁35と、幅の極短い短辺縦壁36とを有して、内向きに凹入するような状態に形成されている。凹入横枠部31は、図13に示すように、水平壁37と、正面横壁38と、傾斜横壁39と、幅の極短い短辺横壁40とを有して、内向きに凹入するような状態に形成されている。各壁33〜40の厚みを、平面壁32などの基本厚みより厚くして強度や剛性を向上させ、支え作用するに十分なものとすれば好都合である。
【0052】
さて、展開状態(図9参照)にある一体型絶縁袋27を折り曲げて無蓋箱状に組み立てるには次のような手順で行う。まず、図10に示すように、底壁29を基準として左右の大側壁28,28を矢印のように折り曲げて起こし、次いで各突出片29a,29aを矢印のように折り曲げて起こす。それから、屈曲起立されている大側壁28に対して4所の重ね壁28aを矢印のように折り曲げることにより、無蓋箱状の一体型絶縁袋27に組み立てることができる(図12,13を参照)。図11に示すように、突出片29aの外側に一対の重ね壁28a,28aが重ねられることで、一体型絶縁袋27としての短側壁41に形成されるのであり、これら三者29a,28a,28aは接着剤などを用いて貼着されても良いし、単に折り曲げられて重ねられる状態でも良い。
【0053】
短側壁41が接着剤を用いるなどして分離不能(又は困難)とされる構造の一体型絶縁袋27を採用する場合には、図10に仮想線で示すように、集電体2,3などを伴う発電要素1を予め底壁29に置いた状態としてから、上述の各折り曲げ工程を行う必要がある。その理由は次のようである。図12,13に示すように、電池としての組立状態においては支え部材13が、詳しくは上側の凹入横枠部31の一対が発電要素1の厚み幅内に入り込んでいる。従って、一体型絶縁袋27を無蓋箱状に組立てた後は、集電体23などを伴う発電要素1を一対の凹入横枠部31が張り出ている上部開口を通して一体型絶縁袋27の内部に入れ込むこと(無理入れ)が不可或いは困難となるからである。
【0054】
但し、一体型絶縁袋27がプラスチック(合成樹脂)等の可撓性を有する絶縁材料製である場合には、各部の寸法如何によっては前述の無理入れが可能となることもありうる。故に、一体型絶縁袋27の組立てに際して、集電体2,3などを伴う発電要素1を予め底壁29に置くか否かは、一体型絶縁袋27の構造(接着するか否かなど)やその材料の如何により、適宜に判断することとなる。
【0055】
一体型絶縁袋27が無蓋袋状に組立てられ、かつ、その中に集電体2,3などを伴う発電要素1が収容された状態では、図11〜図13に示すように、凹入縦枠部30は縦空隙部Tsに配備され、かつ、凹入横枠部31は横空隙部Ysに配備されている。そして、その状態では、支え部材13における凹入縦枠部30の外面壁33は、対応する対向板状部2B,3Bの内側面2b,3bに面当接(又は当接)するように設定されている。この場合、外面壁33と内側面2b,3bとの間に極僅かな隙間があっても、前述した支え部材13を設けたことによる効果をほぼ得ることができる。
【0056】
実施例2の非水電解質二次電池Aでは、実施例1の電池の場合と同様の効果が得られるとともに、絶縁袋27を装備すれば支え部材13,13も装備された状態になる、という組付け上(生産上)での優れた利点が追加されている。つまり、一体型絶縁袋27による支え部材13では、図1などに示す実施例1による支え部材13に比べて、部品点数の削減(一対の支え部材13,13+絶縁袋27の3部品→一体型絶縁袋27の一部品)によるコストダウンや組付け工数手間の削減が図れる利点がある。
【0057】
このように、実施例2の非水電解質二次電池Aでは、その製造方法において、支え部材13が一体形成されている一体型絶縁袋27を展開状態で用意し、支え部材13が一対の集電体2,3間における横空隙部Ys及び/又は縦空隙部Tsに位置する状態で展開状態の一体型絶縁袋27を組立てて、発電要素1及び一対の集電体2,3が収容される所定の袋形状とすることを特徴としている。
【0058】
このような構成を持つ電池Aでは、展開状態の絶縁袋を折り曲げつつ集電体2,3付の発電要素1を取り込みながら袋形状にしてゆく、という作り方工夫によって次のような独特の効果が得られる。即ち、接着などによって再展開不能な構造の一体型絶縁袋27であっても、発電要素の袋内部への収容が不能となる不都合がないようにしながら、支え部材を所定箇所に配備できて不都合なく絶縁袋を組立てることが可能になる、という効果を持つ電池の製造方法を提供することができる。
【0059】
〔別実施例〕
集電体2,3は、図10,11に示すように、その下端が電池ケース4の底面に届くまで延長された下側の対向板状部2B,3Bを持つ構造のものや、図示は省略するが、一対の対極板状部の下方に対向板状部を持たない構造、又は殆ど持たない構造のものでも良い。発電要素1が、渦巻軸心P方向視で楕円形状を呈するような場合には、図示は省略するが、上下の横支え部25,25が縦支え部26,26の上下端から少し上下方向で内側に寄って配置される形状の支え部材13も可能である。また、支え部材13としては、下側の対向板状部2B,3Bにのみ作用する形状のものや、上側の対向板状部2B,3Bにのみ作用する形状のものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 発電要素
1E 円筒面
2 集電体(正)
2A 対極板状部
2B 対向板状部
3 集電体(負)
3A 対極板状部
3B 対向板状部
4 電池ケース
7 正極箔
7A 箔端部
8 負極箔
8A 箔端部
9 セパレータ
13 支え部材
25 縦支え部
26 横支え部
27 絶縁袋
P 渦巻軸心
S 空隙
Ts 縦空隙部
Ys 横空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正及び負の各極箔とそれら両者間に設けられる絶縁用のセパレータとを巻回して成る渦巻状の発電要素と、前記発電要素の渦巻軸心方向において前記発電要素の両側に振り分けて配備される正負一対の集電体と、前記発電要素及び前記集電体を収容する角形状の電池ケースを備え、
前記発電要素の径内外に配置される前記極箔の端部どうしの複数と前記集電体とが導通接合されるとともに、一対の前記集電体間に亘る状態の支え部材が、前記発電要素と前記電池ケースとの間の空隙を通して設けられている電池。
【請求項2】
前記集電体は、前記渦巻軸心に沿う方向に拡がる面を備える対極板状部と、前記渦巻軸心と交差する方向に拡がる面を備えて前記対極板状部の集電体基端側と集電体先端側との少なくとも何れか一方の側に形成される対向板状部とを有しており、前記発電要素が前記渦巻軸心方向視で角丸長方形を呈するものに形成され、
前記発電要素の径内外に配置される前記極箔の端部どうしの複数と前記対極板状部とが導通接合され、前記支え部材が前記対向板状部どうしに亘って配備されている請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記支え部材が、前記渦巻軸心に交差する方向に沿う長尺状で一対の縦支え部と、これら縦支え部の長手方向の両端部どうしを繋ぐ一対の横支え部と、を有する口形状のものに形成されている請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記縦支え部は、前記集電体基端側及び前記集電体先端側の双方に形成される前記対向板状部に沿う状態で、前記極箔の端部と前記電池ケースとの間の縦空隙部に配備され、かつ、前記横支え部は、前記発電要素における円筒面と前記電池ケースとの間の横空隙部に配備されている請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記支え部材が、前記対向板状部における幅方向の端部に当接可能な状態で、前記発電要素の厚み方向の両側それぞれに設けられている請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記支え部材が合成樹脂材製のものである請求項1〜5の何れか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記発電要素及び前記一対の集電体と導通材製の前記電池ケースとの間に、これら発電要素及び各集電体を収容する絶縁材製の絶縁袋が設けられるとともに、前記支え部材が前記絶縁袋に一体的に形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−248427(P2012−248427A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119602(P2011−119602)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】