説明

電源制御装置

【課題】エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の観点から適切な電源制御が可能な技術を提供する。
【解決手段】電源制御装置は、操作と走行状態とに基づいて、リチウムイオン二次電池及び電気二重層キャパシタの全体に要求されている要求出力Pnを決定する要求出力決定手段24と、複数の出力制限関数ft等を有し、一の出力制限関数ft等を決定する制御関数決定手段25とを備える。そして、要求出力Pnと、電気二重層キャパシタの充電状態Csと、出力制限関数ftとに基づいて、電気二重層キャパシタの出力制限Cmax,Cminを決定する出力制限決定手段26と、要求出力Pnと、電気二重層キャパシタの出力制限Cmax,Cminとに基づいて、要求出力Pnをリチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタとに配分する要求出力配分手段27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において、主電源及びアシスト電源からの出力を制御する電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気モータを駆動源として走行する電気自動車について様々な技術が提案されており、電気モータを駆動するための電源として、リチウムイオン二次電池や燃料電池などが提案されている。しかしながら、これら電源の負荷応答性は低く、また、出力変化が急峻になると寿命が短くなるという欠点がある。そこで、主電源としてリチウムイオン二次電池などを使用しつつ、主電源をアシストする電源として、小容量ではあるが瞬発性に優れた電気二重層キャパシタなどを使用することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両装置においては、大容量蓄電装置と、大出力蓄電装置と、充放電量を調整するための制御装置とを備えている。この車両装置においては、走行時に必要な平均電力を大容量蓄電装置が電動機に放電するように放電量調整手段が制御される。そして、加速時を含む高負荷時の不足電力を大出力蓄電装置が電動機に放電し、軽負荷時の余剰電力を大容量蓄電装置から大出力蓄電装置へ充電するように充放電量調整手段が制御される。また、減速時の回生電力を電動機から大出力蓄電装置へ充電するように充放電量調整手段が制御される。この技術によると、消費電力の変動の有無に関わらず電源の劣化を抑えることができ、電源の長寿命化が可能となる。
【0004】
特許文献2に記載された電動車両駆動制御装置においては、リチウムイオン二次電池とキャパシタとを備え、リチウムイオン二次電池とキャパシタとの電力残量を検出する。そして、キャパシタの残量に余裕があればキャパシタで、当該残量に余裕がなければリチウムイオン二次電池で力行及び回生を行う。さらにリチウムイオン二次電池にも余裕がなければエンジンで駆動する。このように、キャパシタを優先的に使用することによりリチウムイオン二次電池の使用頻度を低くすることで、リチウムイオン二次電池の寿命を長くすること、及び、耐久力を向上させることを可能している。
【0005】
特許文献3に記載された車両用制御装置においては、車両を駆動するモータと、このモータに対して並列に接続された燃料電池と、キャパシタとが設けられている。そして、入力及び出力が、燃料電池及びキャパシタとそれぞれ接続されたDC−DCコンバータと、少なくとも燃料電池、キャパシタ及びDC−DCコンバータに連絡した制御手段とが設けられている。制御手段には、車速を検出する車速検出手段が接続されており、制御手段は、車速検出手段により検出される車速に応じてDC−DCコンバータの出力電圧を変化させる電圧制御部を備えている。この発明によると、車速に応じてDC−DCコンバータの出力電圧を調整することにより、キャパシタに蓄えられたエネルギーを積極的に有効利用することを可能にしている。その一方で、エネルギーを放出したキャパシタには直ちに充電している。以上のような動作により、燃料電池の負荷応答性が低い欠点を補完している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−41847号公報
【特許文献2】特開2008−61405号公報
【特許文献3】特開2007−181328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、従来技術においては、アシスト電源を優先的に使用することにより、二次電池の寿命を長くしているが、走行性能及び消費電力を考慮するものではなかった。また、加速要求に応じてアシスト電源を充電することにより走行性能を向上させているが、電源寿命及び消費電力を考慮するものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の総合的な観点から適切な電源制御が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電源制御装置は、車両に備えられ、主電源及びアシスト電源からの出力を制御する電源制御装置であって、前記車両に対する操作を検出する操作検出手段と、前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記主電源に関する温度と、前記アシスト電源の充電状態とを検出する電源状態検出手段と、前記操作と前記走行状態とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の全体に要求されている要求出力を決定する要求出力決定手段とを備える。そして、複数の出力制限関数、複数の目標充電状態関数、及び、複数の充放電電力関数を有し、これら関数のそれぞれから、一の前記出力制限関数、一の前記目標充電状態関数、及び、一の前記充放電電力関数をそれぞれ決定する制御関数決定手段と、前記要求出力と、前記アシスト電源の充電状態と、前記出力制限関数とに基づいて、前記アシスト電源の出力制限を決定する出力制限決定手段と、前記要求出力と、前記アシスト電源の出力制限とに基づいて、前記要求出力を前記主電源と前記アシスト電源とに配分する要求出力配分手段と、前記走行状態と、前記一の目標充電状態関数とに基づいて、前記アシスト電源の目標充電状態を決定する目標充電状態決定手段とを備える。そして、前記充電状態と、前記目標充電状態と、前記一の充放電電力関数とに基づいて、前記主電源と前記アシスト電源との間の充放電電力を決定する充放電電力決定手段と、前記充放電電力と、前記主電源に配分された前記要求出力と、前記アシスト電源に配分された前記要求出力とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を決定する電源出力決定手段と、前記電源出力決定手段で決定された前記主電源及び前記アシスト電源の出力に基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を制御する電源出力制御手段とを備える。前記制御関数決定手段は、消費電力、不足電力及び電源劣化値を求め、前記消費電力、前記不足電力及び前記電源劣化値のそれぞれに重み係数をかけて、これらを総和して得られる評価値を算出し、当該評価値が所定の範囲に収まるように、前記一の出力制限関数、前記一の目標充電状態関数、及び、前記一の充放電電力関数をそれぞれ決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、要求出力と、アシスト電源の充電状態と、出力制限関数とに基づいて、アシスト電源の出力制限を決定する。これにより、主電源の寿命が短くなるのを抑制することができるとともに、エネルギー効率の低下を抑制することができる。また、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれに予め定められた重み係数をかけて、それらを総和して得られる評価値に基づいて、出力制限関数、目標充電状態関数及び充放電電力関数を決定する。したがって、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の総合的な観点から適切な電源制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電源制御装置を備える車両を示す模式図である。
【図2】実施の形態1に係る電源制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る電源制御装置の動作を示すフローチャート図である。
【図4】キャパシタ出力制限関数の例を示す図である。
【図5】二次電池配分出力及びキャパシタ配分出力を決定する動作を説明するための図である。
【図6】目標充電状態関数を示す図である。
【図7】出力制限関数を決定する動作を説明するための図である。
【図8】目標充電状態関数を決定する動作を説明するための図である。
【図9】充放電電力関数を決定する動作を説明するための図である。
【図10】実施の形態2に係る電源制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態2に係る電源制御装置で用いられる表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る電源制御装置を備える車両の駆動系の構成を示す模式図である。この車両の駆動系の構成は、駆動輪1と、ドライブシャフト2と、減速機3と、電気モータ4と、インバータ5と、電源制御装置6と、リチウムイオン二次電池7と、DC−DCコンバータ8と、電気二重層キャパシタ9と、電気負荷部10とを備える。そして、この車両には、例えば、CPU(Central Processing Unit)や記憶装置等で構成される、車両の各構成要素を統括的に制御する制御部(図示しない)が設けられている。
【0013】
リチウムイオン二次電池7は、一般的にエネルギー密度が高いという利点を有する。しかし、リチウムイオン二次電池7には、低温環境下では出力が低下してしまう性質があり、また、エネルギーの損失は、電流値の2乗に比例することから、出力電流が増大するほどエネルギー効率が低下するという性質がある。さらに、出力変化が急峻になると、容量が低下する、あるいは内部抵抗が増大する結果、寿命が短くなるという性質がある。そこで、この車両では、リチウムイオン二次電池7が主電源として使用される一方で、それよりも低温環境、及び、急峻な出力変化に強い電気二重層キャパシタ9が、主電源をアシストするアシスト電源として使用されている。
【0014】
この車両においては、電気モータ4が、リチウムイオン二次電池7、及び、電気二重層キャパシタ9からの出力を用いて駆動力を生成し、その駆動力により走行可能となっている。この際に、本実施の形態に係る電源制御装置6は、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の出力を、エネルギー効率、走行性能、及び、電源寿命の観点から適切に制御する。このことについては、後で詳しく説明する。
【0015】
次に、このような車両の各構成要素について説明する。ドライブシャフト2は駆動輪1と固定されている。減速機3は、電気モータ4の駆動力により回転される回転軸(図示せず)と接続されており、当該回転軸の回転よりも遅い回転速度でドライブシャフト2を回転させる。これにより、電気モータ4の回転は、回転軸,減速機3を介してドライブシャフト2に伝達可能となっている。また、この伝達方向とは反対に、ドライブシャフト2の回転は、減速機3,回転軸を介して電気モータ4に伝達可能となっている。
【0016】
ここで、車両が加速する際の駆動力を生成する動作(以下、この動作を「力行」と呼ぶこともある)について説明する。この動作において、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9のそれぞれが放電し、それにより生じた直流電流が電源制御装置6を介してインバータ5に出力される。インバータ5は、リチウムイオン二次電池7からの当該直流電流を交流電流に変換し、その交流電流を電気モータ4に供給する。また、インバータ5は、電気二重層キャパシタ9からの当該直流電流を交流電流に変換し、その交流電流を電気モータ4に供給する。インバータ5から電気モータ4に交流電流が供給されると、電気モータ4の駆動力により上述の回転軸が回転し、車両が加速する。
【0017】
次に、車両が自身の運動エネルギーを電力に変換し、当該電力を充電する動作(以下、この動作を「回生」と呼ぶこともある)について説明する。この動作において、電気モータ4が上述の回転軸の回転エネルギーを受けて発電し、交流電流を生成する。インバータ5は、当該交流電流を直流電流に変換する。インバータ5から電源制御装置6を介してリチウムイオン二次電池7に直流電流が供給されると、リチウムイオン二次電池7において充電が行われる。インバータ5から電源制御装置6及びDC−DCコンバータ8を介して電気二重層キャパシタ9に直流電流が供給されると、電気二重層キャパシタ9において充電が行われる。
【0018】
DC−DCコンバータ8は、電気二重層キャパシタ9の放電の際には、電気二重層キャパシタ9からの電圧を昇圧し、昇圧後の電圧を電源制御装置6に出力する。一方、DC−DCコンバータ8は、電気二重層キャパシタ9の充電の際には、電源制御装置6からの電圧を降圧し、降圧後の電圧を電気二重層キャパシタ9に出力する。
【0019】
電気負荷部10は、車両で使用される電気負荷全般に含まれる装置や部品であり、例えば、ヘッドライトなどの灯火類、空調、オーディオ機器、映像機器、室内照明、ワイパーである。電気負荷部10は、リチウムイオン二次電池7の電力を用いて動作する。
【0020】
図2は、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の出力を制御する電源制御装置6の構成を示すブロック図である。図に示すように電源制御装置6は、操作検出手段21と、走行状態検出手段22と、電源状態検出手段23と、要求出力決定手段24と、制御関数決定手段25と、出力制限決定手段26と、要求出力配分手段27と、目標充電状態決定手段28と、充放電電力決定手段29と、電源出力決定手段30と、電源出力制御手段31とを備える。要求出力決定手段24、出力制限決定手段26、要求出力配分手段27、目標充電状態決定手段28、充放電電力決定手段29及び電源出力決定手段30は、上述の制御部が動作プログラムを実行することにより機能ブロックとして形成されている。以下、電源制御装置6の各構成要素について説明する。
【0021】
操作検出手段21は、例えば、センサーから構成されており、アクセルペダルの踏込み量、及び、ブレーキペダルの踏込み量に基づいて、アクセル操作量Ac及びブレーキ操作量Bcをそれぞれ検出する。車両に対して行われる走行に関する操作である、アクセル操作量Ac及びブレーキ操作量Bcを、以下総称して、「走行操作(Ac,Bc)」と呼ぶこともある。操作検出手段21は、検出した走行操作(Ac,Bc)を要求出力決定手段24に出力する。
【0022】
走行状態検出手段22は、例えば、車速センサー及び勾配センサーなどから構成されており、車両の車速v、及び、車両が走行している道路の勾配θを検出する。以下、車両の車速v及び勾配θを総称して「走行状態(v,θ)」と呼ぶこともある。走行状態検出手段22は、検出した走行状態(v,θ)を、要求出力決定手段24及び目標充電状態決定手段28に出力する。
【0023】
電源状態検出手段23は、例えば、温度センサー及び充電状態検知センサーなどから構成され、リチウムイオン二次電池7に関する温度(以下、「二次電池温度Tb」と呼ぶ)、及び、電気二重層キャパシタ9の充電状態(以下、「キャパシタ充電状態Cs」と呼ぶ)を検出する。ここで、二次電池温度Tbは、リチウムイオン二次電池7自身の温度、または、リチウムイオン二次電池7周辺の温度を意味し、キャパシタ充電状態Csは、電気二重層キャパシタ9において充電されている電力と実質的に同じである。以下、二次電池温度Tb及びキャパシタ充電状態Csを総称して「電源状態(Tb,Cs)」と呼ぶこともある。電源状態検出手段23は、検出した電源状態(Tb,Cs)を、出力制限決定手段26、目標充電状態決定手段28及び充放電電力決定手段29に出力する。
【0024】
要求出力決定手段24は、走行操作(Ac,Bc)、走行状態(v,θ)、及び、車両の重量Mなどの車両の既知の特徴を示す車両特徴情報に基づいて、運転者が望む走行が行われるのに必要な出力を決定する。換言すれば、要求出力決定手段24は、走行操作(Ac,Bc)、走行状態(v,θ)、及び、車両特徴情報に基づいて、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の全体に要求されている、車両走行に関する出力(以下、「要求出力Pn」と呼ぶ)を決定する。
【0025】
出力制限決定手段26は、要求出力Pn、及び、キャパシタ充電状態Cs等に基づいて、電気二重層キャパシタ9での出力の制限(出力制限)を示すキャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)を決定する。ここで、Cmaxは力行出力の制限を示し、Cminは回生出力の制限を示す。
【0026】
本実施の形態では、要求出力Pnが力行出力である場合において、キャパシタ充電状態Csが高い場合には、力行出力の制限が弱いキャパシタ出力制限Cmaxが決定され、逆に、キャパシタ充電状態Csが低い場合には、力行出力の制限が強いキャパシタ出力制限Cmaxが決定される。一方、要求出力Pnが回生出力である場合において、キャパシタ充電状態Csが高い場合には、回生出力の制限が強いキャパシタ出力制限Cminが決定され、逆に、キャパシタ充電状態Csが低い場合には、回生出力の制限が弱いキャパシタ出力制限Cminが決定される。これについては、後で詳しく説明する。なお、このキャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)の決定には、DC−DCコンバータ8の変換効率が考慮されるものとする。
【0027】
要求出力配分手段27には、リチウムイオン二次電池7での出力の制限を示す二次電池出力制限(Lmin,Lmax)を含む既知の出力制約情報が入力される。ここで、Lmaxは力行出力時のリチウムイオン二次電池7の出力制限を示し、Lminは回生出力時のリチウムイオン二次電池7の出力制限を示す。本実施の形態では、二次電池出力制限(Lmin,Lmax)は、電気負荷部10で必要とされる電気負荷を考慮しつつ、二次電池出力のうち要求出力Pnに可及的に割り当てることができる値を表している。
【0028】
この要求出力配分手段27は、二次電池出力制限(Lmin,Lmax)、及び、出力制限決定手段26で決定されたキャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)に基づいて、要求出力Pnを、リチウムイオン二次電池7と電気二重層キャパシタ9とに配分する。以下、リチウムイオン二次電池7に配分される要求出力Pnを、「二次電池配分出力Ln」と呼び、電気二重層キャパシタ9に配分される要求出力Pnを、「キャパシタ配分出力Cn」と呼ぶ。
【0029】
本実施の形態に係る要求出力配分手段27は、まず、キャパシタ出力制限(Cmin,Cmax)に基づいてキャパシタ配分出力Cnを決定し、その後、二次電池出力制限(Lmin,Lmax)に基づいて二次電池配分出力Lnを決定する。詳細は後述するが、このような出力配分によれば、要求出力Pnに出力変化があっても、電気二重層キャパシタ9の出力が変化するが、リチウムイオン二次電池7における出力変化が抑制される。なお、キャパシタ配分出力Cnは、電気二重層キャパシタ9そのものに要求される出力ではなく、DC−DCコンバータ8と電気二重層キャパシタ9とから構成される部分に要求される出力である。
【0030】
目標充電状態決定手段28は、走行状態(v,θ)、及び、二次電池温度Tb等に基づいて、電気二重層キャパシタ9に充電されるべき適切な目標充電状態(以下、「キャパシタ目標充電状態Cp」と呼ぶ)を決定する。後述するように、キャパシタ充電状態Csがキャパシタ目標充電状態Cpに一致する場合には、電力不足が抑制されて走行性能が向上するとともに、エネルギー効率が向上する。そこで、キャパシタ充電状態Csがキャパシタ目標充電状態Cpとなるべく一致するように、リチウムイオン二次電池7と電気二重層キャパシタ9との間で充放電が行われる。充放電電力決定手段29は、この際に充放電されるべき電力(以下、「充放電電力Pe」と呼ぶ)を、キャパシタ目標充電状態Cp、及び、キャパシタ充電状態Cs等に基づいて決定する。
【0031】
電源出力決定手段30は、充放電電力Peと、二次電池配分出力Lnとに基づいて、実際にリチウムイオン二次電池7が出力すべき二次電池出力Lmを決定する。また、電源出力決定手段30は、充放電電力Peと、キャパシタ配分出力Cnとに基づいて、実際に電気二重層キャパシタ9が出力すべきキャパシタ出力Cmを決定する。
【0032】
電源出力制御手段31は、例えば、複数のスイッチを有するリレーから構成されており、二次電池出力Lmに基づいてリチウムイオン二次電池7の出力を制御するとともに、キャパシタ出力Cmに基づいて電気二重層キャパシタ9の出力を制御する。
【0033】
制御関数決定手段25は、各種センサーと、上述の制御部が動作プログラムを実行することによって形成される機能ブロックとから構成されている。制御関数決定手段25には、複数の出力制限関数ft、複数の目標充電状態関数fp及び複数の充放電電力関数feが予め用意されている。
【0034】
制御関数決定手段25は、複数の出力制限関数ft、複数の目標充電状態関数fp及び複数の充放電電力関数feから、一の出力制限関数ft、一の目標充電状態関数fp及び一の充放電電力関数feをそれぞれ決定する。制御関数決定手段での当該決定については、後で詳しく説明する。制御関数決定手段25は、当該決定した一の出力制限関数ft、一の目標充電状態関数fp及び一の充放電電力関数feを、出力制限決定手段26、目標充電状態決定手段28及び充放電電力決定手段29にそれぞれ付与する。
【0035】
上述の出力制限決定手段26は、要求出力Pn及びキャパシタ充電状態Csと、制御関数決定手段25から直近に付与された一の出力制限関数ftとに基づいて、キャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)を決定する。目標充電状態決定手段28は、走行状態(v,θ)及び二次電池温度Tbと、制御関数決定手段25から直近に付与された一の目標充電状態関数fpとに基づいて、キャパシタ目標充電状態Cpを決定する。充放電電力決定手段29は、キャパシタ目標充電状態Cp及びキャパシタ充電状態Csと、制御関数決定手段25から直近に付与された一の充放電電力関数feとに基づいて、充放電電力Peを決定する。
【0036】
以下、複数の出力制限関数ft、複数の目標充電状態関数fp及び複数の充放電電力関数feをまとめて「三種類の関数群」と呼ぶこともある。また、出力制限決定手段26に付与される一の出力制限関数ft、目標充電状態決定手段28に付与される一の目標充電状態関数fp、及び、充放電電力決定手段29に付与される一の充放電電力関数feをまとめて「三種類の関数」と呼ぶこともある。
【0037】
図3は、図2に示される電源制御装置6の動作を示すフローチャートである。以下、図3を参照して、電源制御装置6の動作について説明する。なお、以下の説明に表れる式においては、正の値は放電を、負の値は充電を意味するものとする。
【0038】
まず、ステップs1では、操作検出手段21が、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作から、走行操作(Ac,Bc)を検出する。次に、ステップs2では、走行状態検出手段22が、走行状態(v,θ)を検出する。それから、ステップs3では、電源状態検出手段23が、電源状態(Tb,Cs)を検出する。
【0039】
ステップs4では、要求出力決定手段24が、走行操作(Ac,Bc)、走行状態(v,θ)、及び、情報特徴情報に基づいて、要求出力Pnを決定する。このステップs4において、まず、要求出力決定手段24は、走行操作(Ac,Bc)、走行状態(v,θ)に基づいて、運転者が望む走行が行なわれるのに必要な加速度aを次式(1)により算出する。
a(t)=fa(Ac(t),Bc(t),v(t),θ(t)) ・・・(1)
ここで、a(t)、Ac(t)、Bc(t)、v(t)及びθ(t)は、それぞれ時間tにおける、加速度a、アクセル操作量Ac、ブレーキ操作量Bc、車速v,勾配θを示す。
【0040】
faは、アクセル操作量Ac、ブレーキ操作量Bc、車速v、勾配θから加速度aを算出するための関数であり、アクセル操作量Acが大きくなった場合にはfaは大きくなるが、ブレーキ操作量Bcが大きくなった場合にはfaは小さくなる。また、車速vが0に近い値をとる場合にはfaは大きくなるが、0から大きく離れた値をとる場合にはfaは小さくなる。また、勾配θが正の値(車両が登坂を走行している)場合には、faは負の値をとる傾向があるが、勾配θが負の値(車両が降坂を走行している)場合には、faは正の値をとる傾向がある。
【0041】
加速度aが算出された後、要求出力決定手段24は、車両特徴情報に基づいて、車両が走行する際の全抵抗Rを次式(2)〜(6)により算出する。なお、本実施の形態に係る要求出力決定手段24は、既知の車両特徴情報として、車両の重量M、CD(Constant Drag)値λ、車両前面投影面積S、転がり抵抗係数μ、及び、回転部分の慣性相当重量ΔMが与えられている。
R(t)=Ra(t)+Rr(t)+Re(t)+Rc(t) ・・・(2)
Ra(t)=λ×S×v2(t) ・・・(3)
Rr(t)=μ×M ・・・(4)
Re(t)=M×sinθ(t) ・・・(5)
Rc(t)=a(t)×(M+ΔM)/g ・・・(6)
ここで、R(t)、Ra(t)、Rr(t)、Re(t)及びRc(t)は、それぞれ時間tにおける、全抵抗、空気抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗及び加速抵抗を示し、gは重量加速度を示す。
【0042】
そして、要求出力決定手段24は、車両が全抵抗R(t)の状況下において加速度a(t)で加速するのに必要な推進力Fnを次式(7)により算出し、その推進力Fnを実現するために必要な要求出力Pnを次式(8)により算出する。
Fn(t)=M×a(t)+R(t) ・・・(7)
Pn(t)=Fn(t)×v(t) ・・・(8)
ここで、Fn(t)及びPn(t)は、それぞれ時間tにおける、推進力Fn及び要求出力Pnを示す。以上により、要求出力決定手段24において要求出力Pnが求まる。
【0043】
なお、車両を加速させたい場合(a(t)>0)、つまり力行を行おうとする場合には要求出力Pnは正の値をとり、車両を減速させたい場合(a(t)<0)、つまり回生を行おうとする場合には要求出力Pnは負の値をとる。
【0044】
ステップs5において、制御関数決定手段25は、三種類の関数群から三種類の関数を決定する。この動作の詳細な説明については後述する。
【0045】
ステップs6では、出力制限決定手段26が、要求出力Pnの符号(正または負)及びキャパシタ充電状態Cs、及び、一の出力制限関数ftに基づいて、キャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)を次式(9)及び(10)により決定する。ただし、このキャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)の決定には、DC−DCコンバータ8の変換効率が考慮されているものとする。
力行(Pn(t)>0)の場合:Cmax(t)=ft(Cs(t)) ・・・(9)
回生(Pn(t)<0)の場合:Cmin(t)=ft(Cs(t))−ft(1) ・・・(10)
なお、この式(9)及び(10)においては、0≦Cs(t)≦1となるように、Cs(t)は規格化されており、ft(1)はCs(t)が最大のときのftの値を意味する。また、本説明では、力行時及び回生時の式は同一の出力制限関数ftで表されるが、力行時及び回生時で互いに異なる出力制限関数を使用してもよい。
【0046】
図4は、出力制限関数ftの例を示す図である。要求出力Pn(t)が力行である場合(図4の上側の図)において、キャパシタ充電状態Cs(t)が高い(つまり電気二重層キャパシタ9が十分に充電されている)場合には、電気二重層キャパシタ9における電力がなるべく用いられるようにするために、力行出力の制限が弱い(絶対値が大きい)キャパシタ出力制限Cmaxが決定される。また、要求出力Pn(t)が同様に力行である場合において、キャパシタ充電状態Cs(t)が低い(つまり電気二重層キャパシタ9がほとんど充電されていない)場合には、電気二重層キャパシタ9における電力がこれ以上用いられないようにするために、力行出力の制限が強い(絶対値が小さい)キャパシタ出力制限Cmaxが決定される。
【0047】
一方、要求出力Pn(t)が回生である場合(図4の下側の図)において、キャパシタ充電状態Cs(t)が高い(つまり電気二重層キャパシタ9が十分に充電されている)場合には、電気二重層キャパシタ9がこれ以上充電されないようにするために、回生出力の制限が強い(絶対値が小さい)キャパシタ出力制限Cminが決定される。また、要求出力Pn(t)が同様に回生である場合において、キャパシタ充電状態Cs(t)が低い(つまり電気二重層キャパシタ9がほとんど充電されていない)場合には、電気二重層キャパシタ9がなるべく充電されるようにするために、回生出力の制限が弱い(絶対値が大きい)キャパシタ出力制限Cminが決定される。
【0048】
このような本実施の形態に係る電源制御装置6によれば、電気二重層キャパシタ9に余裕がある場合には、電気二重層キャパシタ9において可能な限り力行及び回生を行おうとする。その結果、リチウムイオン二次電池7における出力の急峻な変化を抑制することができるため、リチウムイオン二次電池7の寿命が短くなるのを抑制することができる。また、リチウムイオン二次電池7の出力が大きくなるのを抑制することも期待できるため、エネルギー効率の低下を抑制することも期待できる。
【0049】
一方、後述するが、電気二重層キャパシタ9に余裕がない場合には、リチウムイオン二次電池7の出力も用いられる。したがって、車両の電力が不足する可能性を低減することができ、また、車両の運動エネルギーを変換して得られる電力をできるだけ充電することができることからエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0050】
ステップs7では、要求出力配分手段27が、要求出力Pn、二次電池出力制限(Lmin,Lmax)及びステップs6で決定されたキャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)に基づいて、二次電池配分出力Ln及びキャパシタ配分出力Cnを決定する。
【0051】
図5は、要求出力配分手段27におけるこのステップでの動作を説明するための図である。図5の上側には、キャパシタ配分出力Cn、二次電池配分出力Ln、要求出力Pnが、実線、破線、二点鎖線でそれぞれ示されている。図5の下側には、キャパシタ充電状態Cs(t)が示されている。以下、このステップでの動作について図5を参照しながら詳細に説明する。
【0052】
図5に示される時間帯T1においては、要求出力Pn(t)が力行出力(Pn>0)であり、かつ力行出力を制限するキャパシタ出力制限Cmax(t)が要求出力Pn(t)以上である場合が示されている。この場合、電気二重層キャパシタ9が十分に充電されており(キャパシタ充電状態Csが十分に大きく)、その力行出力だけで要求出力Pnを満たすことができる。そこで、要求出力配分手段27は、キャパシタ配分出力Cn(t)をPn(t)と決定し、二次電池配分出力Ln(t)を0と決定する。
【0053】
時間帯T2及び時間帯T3においては、要求出力Pn(t)が力行出力(Pn>0)であり、かつキャパシタ出力制限Cmax(t)が要求出力Pn(t)よりも小さい場合が示されている。この場合、電気二重層キャパシタ9の力行出力だけでは要求出力Pnを満たすことができないから、リチウムイオン二次電池7の力行出力を加える。ただし、なるべく電気二重層キャパシタ9において力行が行われるようにするために、要求出力配分手段27は、キャパシタ配分出力Cn(t)を、電気二重層キャパシタ9に許容されている最大の力行出力であるキャパシタ出力制限Cmax(t)と決定する。
【0054】
なお、この時間帯T2及び時間帯T3のうち、時間帯T2においては、力行出力を制限する二次電池出力制限Lmax(t)がPn(t)−Cmax(t)以上である場合が示されている。この場合には、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の力行出力で要求出力Pnを満たすことができるから、要求出力配分手段27は、二次電池配分出力Ln(t)をPn(t)−Cmax(t)と決定する。
【0055】
一方、時間帯T3においては、二次電池出力制限Lmax(t)がPn(t)−Cmax(t)よりも小さい場合が示されている。この場合には、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の力行出力の和が、なるべく要求出力Pn(t)に近くなるようにするために、要求出力配分手段27は、二次電池配分出力Ln(t)をLmax(t)と決定する。なお、この場合には、要求出力Pn(t)は満たされないから、運転者が望む車両の加速を実現することができなくなる。そうならないように、運転者に電力残量が少ない旨を事前に通知することが望ましい。
【0056】
時間帯T4においては、要求出力Pnが回生出力(Pn<0)であり、かつ回生出力を制限するキャパシタ出力制限Cmin(t)の絶対値が要求出力Pn(t)の絶対値以上である場合が示されている。この場合、電気二重層キャパシタ9がほとんど充電されておらず(キャパシタ充電状態Csが十分に小さく)、その回生出力だけで要求出力Pnを満たすことができる。そこで、要求出力配分手段27は、キャパシタ配分出力Cn(t)をPn(t)と決定し、二次電池配分出力Ln(t)を0と決定する。
【0057】
時間帯T5及び時間帯T6においては、要求出力が回生出力(Pn<0)であり、かつキャパシタ出力制限Cmin(t)の絶対値が要求出力Pn(t)の絶対値よりも小さい場合が示されている。この場合、電気二重層キャパシタ9の回生出力だけでは要求出力Pnを満たすことができないから、リチウムイオン二次電池7の回生出力を加える。ただし、なるべく電気二重層キャパシタ9において回生が行われるようにするために、要求出力配分手段27は、キャパシタ配分出力Cn(t)を、電気二重層キャパシタ9に許容されている最大の回生出力であるキャパシタ出力制限Cmin(t)と決定する。
【0058】
なお、この時間帯T5及び時間帯T6のうち、時間帯T5においては、回生出力を制限する二次電池出力制限Lmin(t)の絶対値が(Pn(t)−Cmin(t))の絶対値以上である場合が示されている。この場合には、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の回生出力で要求出力Pnを満たすことができるから、要求出力配分手段27は、二次電池配分出力Ln(t)をPn(t)−Cmin(t)と決定する。
【0059】
一方、時間帯T6においては、二次電池出力制限Lmin(t)の絶対値が(Pn(t)−Cmin(t))の絶対値よりも小さい場合が示されている。この場合には、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の回生出力の和の絶対値が、なるべく要求出力Pn(t)に近くなるようにするために、要求出力配分手段27は、二次電池配分出力Ln(t)をLmin(t)と決定する。なお、この場合には、要求出力Pn(t)は満たされないから、運転手が望む車両の減速を実現することができなくなる。そならないように、機械式ブレーキを補助的に設けておくことが望ましい。
【0060】
さて、以上のような要求出力の配分においては、要求出力Pnが電気二重層キャパシタ9に積極的に配分されるようになっている。つまり、要求出力Pnがリチウムイオン二次電池7に配分されるのが抑制されている。ここで、上述したように、リチウムイオン二次電池7においては、電流値の2乗に比例してエネルギーの損失が生じるが、このような配分によればリチウムイオン二次電池7に要求される出力Pnが抑制されることから、エネルギーの損失を軽減することができ、エネルギー効率の向上が期待できる。また、この配分によればリチウムイオン二次電池7の劣化の要因となるリチウムイオン二次電池7での急峻な出力変化が抑制されることから、リチウムイオン二次電池7の劣化を抑制することが期待できる。
【0061】
さて、図3に戻って、ステップs8においては、目標充電状態決定手段28が、走行状態(v,θ)、二次電池温度Tb、及び、一の目標充電状態関数fpに基づいて、キャパシタ目標充電状態Cpを次式(11)により求める。
Cp(t)=fp(v(t),θ(t),Tb(t)) ・・・(11)
ここで、Cp(t)は、時間tにおけるキャパシタ目標充電状態Cpを示す。式(11)から明らかなように、目標充電状態関数fpは、キャパシタ目標充電状態Cpを示す、走行状態(v,θ)と、二次電池温度Tbとの関数である。
【0062】
図6は、本実施の形態に係る目標充電状態関数fpを示す図である。この目標充電状態関数fpにおいては、低速つまり車速vが小さい場合には、キャパシタ目標充電状態Cpが高くなるようにし、高速つまり車速vが大きい場合には、キャパシタ目標充電状態Cpが低くなるようにしている。
【0063】
上述したように、リチウムイオン二次電池7と電気二重層キャパシタ9との間で充放電が行われることにより、キャパシタ充電状態Csは、キャパシタ目標充電状態Cpになるべく近づけられるように制御される。したがって、加速の要求が行われる可能性が高い低速で、車両が走行する際には、キャパシタ目標充電状態Cpとともにキャパシタ充電状態Csも十分に高くなっているので、仮に車速vを大きくするように加速が要求されたとしても、電気二重層キャパシタ9において電力不足が生じるのを抑制することができる。よって、走行性能を高めることができる。一方、減速の要求が行われる可能性が高い高速で、車両が走行する際には、キャパシタ目標充電状態Cpとともにキャパシタ充電状態Csも十分に低くなっているので、回生時のエネルギーを効率よく回収することができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、目標充電状態関数fpが示すキャパシタ目標充電状態Cpは、車速vだけでなく、勾配θ及び二次電池温度Tbによっても変化するようにする。
【0065】
具体的には、本実施の形態に係る目標充電状態関数fpにおいては、勾配θが登坂を示す場合には、キャパシタ目標充電状態Cpが高くなるようにし、勾配θが降坂を示す場合には、キャパシタ目標充電状態Cpが低くなるようにする。これにより、加速の要求が行われる可能性が高い登坂を車両が走行する際には、キャパシタ充電状態Csが十分に高くなっているので、車速vを大きくするように加速が要求されたとしても、電気二重層キャパシタ9において電力不足が生じるのを抑制することができる。一方、減速の要求が行われる可能性が高い降坂を車両が走行する際には、キャパシタ充電状態Csが十分に低くなっているので、回生時のエネルギーを効率よく回収することができる。
【0066】
また、リチウムイオン二次電池7は、低温時に動作性能が低下する傾向にあるため、低温時には多少、出力不足となることが考えられる。そこで、二次電池温度Tbが低い場合に、電気二重層キャパシタ9が、リチウムイオン二次電池7の動作性能の低下を補うように積極的に出力すれば、電気二重層キャパシタ9での出力不足の回避が期待できる。具体的には、目標充電状態関数fpにおいて、図6に示されるように、二次電池温度Tbが低い場合には、キャパシタ目標充電状態Cpが高くなるようにする。これにより、低温時の出力不足を確実に抑制することができる。
【0067】
図3に戻って、ステップs9においては、充放電電力決定手段29が、キャパシタ充電状態Cs、キャパシタ目標充電状態Cp、二次電池出力制限(Lmin,Lmax)、ステップs6で決定したキャパシタ出力制限(Cmin,Cmax)、及び、一の充放電電力関数feに基づいて、リチウムイオン二次電池7と電気二重層キャパシタ9との間で充放電すべき充放電電力Peを次式(12)により求める。
Pe(t)=fe(Cp(t),Cs(t)) ・・・(12)
ここで、Pe(t)は、時間tにおける充放電電力Peを示す。式(12)から明らかなように、充放電電力関数feは、充放電電力Peを示す、キャパシタ充電状態Csと、キャパシタ目標充電状態Cpとの関数である。
【0068】
充放電電力Peが正であれば、リチウムイオン二次電池7が放電することを意味し、この場合には、リチウムイオン二次電池7の電力が電気二重層キャパシタ9に充電される。一方、充放電電力Peが負であれば、リチウムイオン二次電池7が充電することを意味し、この場合には、電気二重層キャパシタ9の電力がリチウムイオン二次電池7に充電される。
【0069】
ただし、Pe(t)が正であるとき、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の出力制限(つまりLmax(t),Cmax(t))を考慮し、Lmax(t)−Ln(t)及び−(Cmin(t)−Cn(t))のうち小さい方を充放電電力上限値Pemax(t)とする。すなわち、Pe(t)がPemax(t)より大きい場合は、Pe(t)の値をPemax(t)とする。同様に、Pe(t)が負であるとき、リチウムイオン二次電池7及び電気二重層キャパシタ9の出力制限(つまりLmin(t),Cmin(t))を考慮し、Lmin(t)−Ln(t)及び−(Cmin(t)−Cn(t))のうち大きいほう(これらの絶対値の小さい方)を充放電電力下限値Pemin(t)とする。すなわち、Pe(t)がPemin(t)より小さい(Pemin(t)の絶対値より大きい)場合は、Pe(t)の値をPemin(t)とする。
【0070】
ステップs10では、電源出力決定手段30は、ステップs7で決定した二次電池配分出力Ln(t)及びキャパシタ配分出力Cn(t)と、ステップs9で決定した充放電電力Pe(t)とに基づいて、実際にリチウムイオン二次電池7が出力すべき二次電池出力Lm(t)と、実際に電気二重層キャパシタ9が出力すべきキャパシタ出力Cm(t)とを決定する。
【0071】
ここでは、電源出力決定手段30は、二次電池配分出力Ln(t)に対して充放電電力Pe(t)を減算したものを二次電池出力Lm(t)として決定し、キャパシタ配分出力Cn(t)に対して充放電電力Pe(t)を加算したものをキャパシタ出力Cm(t)として決定する。
【0072】
ステップs11では、電源出力制御手段31は、二次電池出力Lm(t)に基づいてリチウムイオン二次電池7の出力を制御するとともに、キャパシタ出力Cm(t)に基づいて電気二重層キャパシタ9の出力を制御する。
【0073】
<制御関数決定手段の動作>
以上、ステップs5以外の動作については詳細に説明した。次に、ステップs5において、制御関数決定手段25が三種類の関数群から三種類の関数を決定する動作について説明する。なお、このステップs5は、車両走行時に行われることもあれば、車両の出荷時や、リチウムイオン二次電池7または電気二重層キャパシタ9の交換時に行われることもある。
【0074】
<出力制限関数の決定>
制御関数決定手段25は、車両が一定時間走行するごとに、複数の出力制限関数ftのうち、出力制限決定手段26に付与する一の出力制限関数ftを順に変更していく。この際、制御関数決定手段25は、デフォルトとして予め定められた一の目標充電状態関数fp、及び、デフォルトとして予め定められた一の充放電電力関数feを、目標充電状態決定手段28及び充放電電力決定手段29にそれぞれ付与しているものとする。
【0075】
ここで、図3に示されるステップs10において、二次電池出力Lm及びキャパシタ出力Cmが求められる際には、ステップs6において出力制限関数ftが加味されるため、出力制限関数ftが変わると、二次電池出力Lm及びキャパシタ出力Cmも変わる。その結果、出力制限関数ftが変わると、車両の走行も変わることになる。
【0076】
目標充電状態関数fp及び充放電電力関数feがデフォルトの関数で固定され、一の出力制限関数ftが順に変更されている状態で車両が走行をしている際に、制御関数決定手段25は、以下のようにして、「消費電力」、「不足電力」及び「電源劣化値」のそれぞれを、複数の出力制限関数ftのそれぞれに対して求める。
【0077】
まず、制御関数決定手段25が、「消費電力」を求める動作について以下説明する。本実施の形態に係る制御関数決定手段25は、例えば、リチウムイオン二次電池7の充電状態、及び、キャパシタ充電状態Csを測定し、これら充電状態に基づいて、車両が実際に走行したときに消費された実際のエネルギー(電力)を取得する。それと並行して、制御関数決定手段25は、車両がその走行を実現するために必要と予測された予測のエネルギーを算出する。そして、制御関数決定手段25は、(予測のエネルギー)/(実際のエネルギー)をエネルギー効率として求める。
【0078】
ここで、制御関数決定手段25は、エネルギー効率と消費電力とが一対一で対応付けられた表を有しており、求めたエネルギー効率と当該表とに基づいて、消費電力を出力制限関数ftごとに求める。なお、この表では、エネルギー効率が高い(実際のエネルギーが小さい)と消費電力が小さく、エネルギー効率が低い(実際のエネルギーが大きい)と消費電力が大きくなっている。
【0079】
次に、制御関数決定手段25が、「不足電力」を求める動作について説明する。本実施の形態に係る制御関数決定手段25は、例えば、車速vを測定し、この車速vに基づいて、車両が要求された速度またはその近傍の速度で走行できなかった時間(以下、「車速逸脱時間」と呼ぶ)を取得する。そして、制御関数決定手段25は、((全走行時間−車速逸脱時間)/全走行時間)を走行性能値として求める。
【0080】
ここで、制御関数決定手段25は、走行性能値と不足電力とが一対一で対応付けられた表を有しており、求めた走行性能値と当該表とに基づいて、不足電力を出力制限関数ftごとに求める。なお、この表では、走行性能値が高い(車速逸脱時間が短い)と不足電力が小さく、走行性能値が低い(車速逸脱時間が長い)と不足電力が大きくなっている。
【0081】
最後に、制御関数決定手段25が、「電源劣化値」を求める動作について説明する。本実施の形態に係る制御関数決定手段25は、例えば、リチウムイオン二次電池7のエネルギー容量の減少量を測定する。ここで、制御関数決定手段25は、リチウムイオン二次電池7のエネルギー容量の減少量と電源劣化値とが一対一で対応付けられた表を有しており、測定した減少量と当該表とに基づいて、電源劣化値を求める。なお、この表では、エネルギー容量の減少量が大きいと電源劣化値が高く、エネルギー容量の減少量が小さいと電源劣化値が低くなっている。
【0082】
なお、ここでは、制御関数決定手段25は、リチウムイオン二次電池7のエネルギー容量の減少量に基づいて電源劣化値を求めたがこれに限ったものではなく、リチウムイオン二次電池7の内部抵抗の増加量に基づいて電源劣化値を求めてもよい。具体的には、制御関数決定手段25は、例えば、当該内部抵抗の増加量を測定する。ここで、制御関数決定手段25は、リチウムイオン二次電池7の内部抵抗の増加量と電源劣化値とが一対一で対応付けられた表を有しており、測定した増加量と当該表とに基づいて、電源劣化値を求める。なお、この表では、内部抵抗の増加量が大きいと電源劣化値が高く、内部抵抗の増加量が小さいと電源劣化値が低くなっている。
【0083】
あるいは、制御関数決定手段25は、エネルギー容量の減少量と内部抵抗の増加量の加重和に基づいて電源劣化値を求めてもよい。
【0084】
以上のようにして、制御関数決定手段25は、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれを、複数の出力制限関数ftのそれぞれに対して算出する。なお、制御関数決定手段25は、各種センサーを用いて、これらを算出するのに必要な測定を行うが、その各種センサーの一部には、操作検出手段21を構成するセンサー、走行状態検出手段22を構成するセンサー、及び、電源状態検出手段23を構成するセンサーが代用されてもよい。
【0085】
図7は、消費電力、不足電力及び電源劣化値のシミュレーション結果を、出力制限特性係数α(出力制限関数ftを規定する係数)ごとに示すグラフである。ここでは、説明を簡潔にするために、力行時の出力制限Cmaxを表す上式(9)、及び、回生時の出力制限Cminを表す上式(10)として、ft(Cs(t))=α×Cs(t)とした次式(13)及び(14)の関数をそれぞれ用いる。
Cmax(t)=α×Cs(t) ・・・(13)
Cmin(t)=α×Cs(t)−α ・・・(14)
この式(13)及び(14)では、Cmax(t)とCmin(t)に同じ出力制限特性係数αを使用しているが、力行時と回生時とで異なる出力制限特性係数を使用してもよい。なお、出力制限関数ftのパターンを変えると、出力制限特性係数αの値が変わるので、ここでは、出力制限関数ftを出力制限特性係数αに代えて説明する。このシミュレーション結果により得られる消費電力、不足電力及び電源劣化値は、制御関数決定手段25により算出される消費電力、不足電力及び電源劣化値と実質的に同じである。図7においては、消費電力、不足電力及び電源劣化値は正規化された状態で、破線、一点鎖線及び二点鎖線によりそれぞれ示されている。各項目の正規化後の値は、グラフの左側の縦軸の値にしたがってプロットされている。
【0086】
図7において、消費電力、不足電力及び電源劣化値はいずれも小さい方が望ましい。しかし、図7に示されるように、不足電力及び電源劣化値を小さくしようとすると、消費電力が大きくなってしまう。
【0087】
そこで、制御関数決定手段25は、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれに予め定められた重み係数をかけて、それらを総和して得られる評価値(加重和した評価値)を、出力制限特性係数αごとに算出する。図7には、加重和した評価値が、正規化された状態で実線によって示されている。当該評価値はグラフの右側の縦軸の値にしたがってプロットされている。制御関数決定手段25は、加重和した評価値が、所定の範囲に収まるように一の出力制限特性係数αを決定する。本実施の形態では、制御関数決定手段25は、当該評価値が、閾値よりも小さくなる一の出力制限特性係数αを決定する。つまり、制御関数決定手段25は、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の観点から適切な一の出力制限特性係数α(一の出力制限関数ft)を決定する。
【0088】
<目標充電状態関数の決定>
制御関数決定手段25は、上述と同様に、車両が一定時間走行するごとに、複数の目標充電状態関数fpのうち、目標充電状態決定手段28に付与する一の目標充電状態関数fpを順に変更していく。この際、制御関数決定手段25は、上述においてすでに決定した一の出力制限関数ft、及び、デフォルトとして予め定められた一の充放電電力関数feを、出力制限決定手段26及び充放電電力決定手段29にそれぞれ付与しているものとする。
【0089】
ここで、図3に示されるステップs10において、二次電池出力Lm及びキャパシタ出力Cmが求められる際には、ステップs8において目標充電状態関数fpが加味されるため、目標充電状態関数fpが変わると、車両の走行も目標充電状態関数fpによって変わることになる。
【0090】
一の目標充電状態関数fpが順に変更されている状態で車両が走行をしている際に、制御関数決定手段25は、上述と同様に、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれを、複数の目標充電状態関数fpのそれぞれに対して求める。
【0091】
図8は、図7と同様に、消費電力、不足電力及び電源劣化値のシミュレーション結果を、目標充電状態特性係数β(目標充電状態関数fpを規定する係数)ごとに示すグラフである。ここでは、説明を簡潔にするために、キャパシタ目標充電状態Cpを表す上式(11)の目標充電状態関数fpとして、次式(15)を用いる。なお、目標充電状態関数fpは、上式(11)で示したようにv(t),θ(t),Tb(t)の関数とすることが好ましいが、説明の便宜上、次式(15)で示す目標充電状態関数fpはv(t)のみの関数としている。
Cp(t)=exp(−β×v(t)) ・・・(15)
この式(15)においては、目標充電状態特性係数βが大きくなるにつれて、目標充電状態関数fpにより示されるキャパシタ目標充電状態Cp(t)は低くなる。
【0092】
図8には、目標充電状態特性係数βが大きくなるにつれて消費電力及び電源劣化値は変化しないが不足電力が大きくなることから、それに伴って上述の加重和した評価値も大きくなっている。そこで、制御関数決定手段25は、当該評価値が、閾値よりも小さくなる一の目標充電状態関数fpを決定する。つまり、制御関数決定手段25は、走行性能の観点から適切な一の目標充電状態関数fpを決定する。なお、ここでは、消費電力及び電源劣化値は変化しなかったが、目標充電状態関数fpがv(t),θ(t),Tb(t)である場合には変化する。この場合においても同様に、制御関数決定手段25が、上述の加重和した評価値に基づいて一の目標充電状態関数fpを決定すれば、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の観点から適切な一の目標充電状態関数fpが決定される。
【0093】
<充放電電力関数の決定>
制御関数決定手段25は、上述と同様に、車両が一定時間走行するごとに、複数の充放電電力関数feのうち、充放電電力決定手段29に付与する一の充放電電力関数feを順に変更していく。この際、制御関数決定手段25は、上述においてすでに決定した一の出力制限関数ft及び一の目標充電状態関数fpを、出力制限決定手段26及び目標充電状態決定手段28にそれぞれ付与しているものとする。
【0094】
ここで、図3に示されるステップs10において、二次電池出力Lm及びキャパシタ出力Cmが求められる際には、ステップs9において充放電電力関数feが加味されているため、充放電電力関数feが変わると、車両の走行も充放電電力関数feによって変わることになる。
【0095】
一の充放電電力関数feが順に変更されている状態で車両が走行をしている際に、制御関数決定手段25は、上述と同様に、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれを、複数の充放電電力関数feのそれぞれに対して求める。
【0096】
図9は、図7と同様に、消費電力、不足電力及び電源劣化値のシミュレーション結果を、充放電電力特性係数γ(充放電電力関数feを規定する係数)ごとに示すグラフである。ここでは、充放電電力Peを表す上式(12)の充放電電力関数feとして、次式(16)を用いる。
Pe(t)=γ×(Cp(t)−Cs(t)) ・・・(16)
この式(16)においては、充放電電力特性係数γが大きくなるにつれて、充放電電力関数feにより示される充放電電力Pe(t)の絶対値は大きくなる。
【0097】
この式(16)に示される充放電電力関数feは、充放電電力Peを示す、キャパシタ充電状態Csとキャパシタ目標充電状態Cpとの差分の関数である。この充放電電力関数feにおいては、差分の絶対値が小さい場合には、充放電電力Peの絶対値が小さくなり、差分の絶対値が大きい場合には、充放電電力Peの絶対値が大きくなる。したがって、式(16)に示される充放電電力関数feによれば、差分の絶対値が小さいときは充放電電力Peの絶対値を低くしてリチウムイオン二次電池7の出力変化を抑えることができ、その一方で、差分の絶対値が大きいときは充放電電力Peの絶対値を高くしてキャパシタ充電状態Csのキャパシタ目標充電状態Cpへの追従性を上げることができる。したがって、キャパシタ充電状態Csをキャパシタ目標充電状態Cpに適切に追従させることができる。
【0098】
図9には、消費電力及び電源劣化値を小さくすると、不足電力が大きくなってしまうことが示されている。そこで、制御関数決定手段25は、上述の加重和した評価値が、閾値よりも小さくなる一の充放電電力関数feを決定する。つまり、制御関数決定手段25は、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の観点から適切な一の充放電電力関数feを決定する。
【0099】
以上のような本実施の形態に係る電源制御装置6によれば、要求出力Pnと、キャパシタ充電状態Csと、出力制限関数ftとに基づいて、キャパシタ出力制限(Cmax,Cmin)を決定する。これにより、リチウムイオン二次電池7の寿命が短くなるのを抑制することができるとともに、エネルギー効率の低下を抑制することができる。また、消費電力、不足電力及び電源劣化値のそれぞれに予め定められた重み係数をかけて、それらを総和して得られる評価値に基づいて、一の出力制限関数ft、一の目標充電状態関数fp及び一の充放電電力関数feを決定する。したがって、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の総合的な観点から適切な電源制御を行うことができる。
【0100】
なお、以上では理解を容易にするために、制御関数決定手段25が、三種類の関数群のうち二種類の関数群を固定した状態で、残りの一種類の関数群から一の関数を選択し、この選択方法を三種類の関数群に対して順に行うことにより、三種類の関数を選択した。しかしこれに限ったものではなく、三種類の関数群を同時に変化させて、三種類の関数群から三種類の関数を同時に選択するようにしてもよい。このようにすれば、選択範囲が広がるため、より適切な三種類の関数を決定することができ、さらに満足度の高い電源制御を行うことができる。
【0101】
また、以上の説明では、各関数はそれぞれα、β、γというパラメータにより規定されているが、これに限ったものではなく、各関数が複数のパラメータによって規定されてもよい。また、出力制限関数ftは力行時と回生時とで同じ出力制限関数ftを使用したが、これに限ったものではなく、力行時と回生時とで異なる出力制限関数を使用してもよい。この場合には、力行時と回生時の出力制限関数を個別に変化させるため、上記の「三種類の関数」が「四種類の関数」となるが、この場合であっても上述と同様にすれば各関数を決定することは可能である。つまり、四種類の関数群のうち三種類の関数群を固定した状態で、残りの一種類の関数群から一の関数を選択し、この選択方法を四種類の関数群に対して順に行えば、四種類の関数を決定することが可能である。あるいは、四種類の関数群を同時に変化させて、四種類の関数群から四種類の関数を同時に選択するようにしてもよい。
【0102】
また、以上の説明では、例えば、制御関数決定手段25は、加重和した評価値が閾値よりも小さくなる一の関数を決定したが、最も評価値が小さい関数を決定するようにすることが望ましい。
【0103】
また、以上の説明では、主電源としてリチウムイオン二次電池、アシスト電源として電気二重層キャパシタを用いたが、アシスト電源が主電源よりも出力変化に強く、かつ、主電源とアシスト電源との間で充放電できるものであれば、これに限ったものではない。例えば、主電源として燃料電池を用いてもよく、アシスト電源として二次電池を用いてもよい。また、以上の説明では、電気モータ4により走行する電気自動車について説明したが、電気自動車以外に、エンジンと二次電池を組み合わせたハイブリッド車などに、本実施の形態に係る電源制御装置6が備えられてもよい。
【0104】
また、以上の説明では、図3に示すように、ステップs1〜s4及びステップs6〜s11を直列的に順に行う場合について説明したが、これらステップは部分的に並列的に行われてもよい。
【0105】
また、電源制御装置6を説明した際に述べたが、車両の制動時、すなわち回生エネルギーの発生時に、運転者が望む車両の減速ができなくなりそうな場合には、制動力の不足分を機械式ブレーキ(図示しない)で補うようにしてもよい。また、本実施の形態に係る車両がハイブリッド車であれば、車両の駆動時に、すなわち力行エネルギー発生時に、運転者が望む車両の加速ができなくなりそうな場合には、駆動力の不足分をエンジン(図示しない)で補うようにしてもよい。
【0106】
<実施の形態2>
図10は、本実施の形態に係る電源制御装置6の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る電源制御装置6は、制御関数決定手段25の動作が異なる点、事前情報検出手段32が追加されている点以外は、以上の電源制御装置6と同じである。
【0107】
本実施の形態に係る電源制御装置6が備える事前情報検出手段32は、例えば、カーナビなどからなり、車両が近い将来に走行しようとしている道路に関する情報(以下、「事前情報」と呼ぶ)を検出する。本実施の形態では、事前情報検出手段32は、車両が近い将来に走行しようとしている道路の勾配(以下、「事前勾配θp」と呼ぶ)を事前情報として検出するものとしている。
【0108】
また、本実施の形態に係る制御関数決定手段25は、複数の出力制限関数ft、複数の目標充電状態関数fp及び複数の充放電電力関数feの組合せにそれぞれ関連付けられた複数の走行モードを有している。以下、このような本実施の形態に係る制御関数決定手段25について説明する。なお、以下においても、出力制限関数ftを出力制限特性係数αに代えて説明する。
【0109】
図11は、制御関数決定手段25が有する走行モードの表を示す。図11に示される表においては、事前勾配θp及び二次電池温度Tbの組に対して、走行モードが一対一で関連付けられている。一つの走行モードは、表中の一つのセルに対応しており、セル中のカッコ内の3つの数字は、その走行モードに関連付けられた、出力制限特性係数αの値、目標充電状態特性係数βの値、充放電電力特性係数γの値を示している。例えば、この表の上から3行目、左から2列目に(7,0.01,0.06)と記載されたセルの走行モードは、値が「7」の出力制限特性係数αと、値が「0.01」の目標充電状態特性係数βと、値が「0.06」の充放電電力特性係数γと関連付けられていることを示している。
【0110】
出力制限特性係数α、目標充電状態特性係数β、充放電電力特性係数γの傾向について説明する。
【0111】
事前勾配θpが登坂を示し、かつ、二次電池温度Tbが低温を示す場合には、リチウムイオン二次電池7の出力変化による劣化が比較的小さいと考えられる。そこで、この場合に行われるべき走行モードに対しては、二次電池温度Tbが高温を示す場合よりも小さい出力制限特性係数αが割り当てられている。ただし、図11に示されるように、出力制限特性係数αは、事前勾配θpの変化に対しては一定であってもよい。
【0112】
また、上述の事前勾配θpが登坂、かつ二次電池温度Tbが低温の場合において出力不足を回避するために、この場合に行われるべき走行モードに対しては、キャパシタ目標充電状態Cpが高くなるように事前勾配θpが降板を示す場合よりも小さい目標充電状態特性係数βが割り当てられ、充放電電力Peが大きくなるように事前勾配θpが降板を示す場合よりも大きい充放電電力特性係数γが割り当てられている。
【0113】
一方、事前勾配θpが降坂を示し、かつ、二次電池温度Tbが高い場合には、リチウムイオン二次電池7の出力変化による劣化が比較的大きいと考えられる。そこで、この場合に行われるべき走行モードに対しては、二次電池温度Tbが低温を示す場合よりも大きい出力制限特性係数αが割り当てられている。ただし、図11に示されるように、出力制限特性係数αは、事前勾配θpの変化に対しては一定であってもよい。
【0114】
また、上述の事前勾配θpが降坂、かつ二次電池温度Tbが高温の場合において電気二重層キャパシタ9で回生エネルギーを十分に回収するために、この場合に行われるべき走行モードに対しては、キャパシタ目標充電状態Cpが低くなるように事前勾配θpが登板を示す場合よりも大きい目標充電状態特性係数βが割り当てられるとともに、充放電電力Peが小さくなるように事前勾配θpが登坂を示す場合よりも小さい充放電電力特性係数γが割り当てられている。なお、この際に、充放電電力Peが小さくなるように小さい充放電電力特性係数γが割り当てられることが望ましいが、二次電池温度Tbが高いときに充放電電力Peが大きくなると、リチウムイオン二次電池7が劣化しやすくなる。そこで、二次電池温度Tbが高温(図11では40℃以上)である走行モードに対しては、充放電電力Peの大きさが中程度となる充放電電力特性係数γが割り当てられている。そして、二次電池温度Tbが中温である走行モードに対しては、当該二次電池温度Tbが高温である走行モードよりも充放電電力Peが大きくなるように、大きい充放電電力特性係数γが割り当てられている。
【0115】
本実施の形態に係る制御関数決定手段25は、事前情報検出手段32で検出される事前勾配θp及び二次電池温度Tbに基づいて、複数の走行モードから一の走行モードを選択する。そして、制御関数決定手段25は、当該一の走行モードに関連付けられている出力制限特性係数α(出力制限関数ft)を上述の表から読み出し、当該出力制限関数ftを、出力制限決定手段26に用いられる一の出力制限関数ftとして決定する。同様に、制御関数決定手段25は、当該一の走行モードに関連付けられている目標充電状態特性係数β(目標充電状態関数fp)を上述の表から読み出し、当該目標充電状態関数fpを、目標充電状態決定手段28に用いられる一の目標充電状態関数fpとして決定する。同様に、制御関数決定手段25は、当該一の走行モードに関連付けられている充放電電力特性係数γ(充放電電力関数fe)を上述の表から読み出し、当該充放電電力関数feを、充放電電力決定手段29に用いられる一の充放電電力関数feとして決定する。なお、これらの決定は、例えば、事前情報が更新される際に行われる。
【0116】
以上のような本実施の形態に係る電源制御装置6によれば、事前勾配θp(事前情報)及び二次電池温度Tbに基づいて、一の出力制限関数ft、一の目標充電状態関数fp及び一の充放電電力関数feを決定する。したがって、エネルギー効率、走行性能及び電源寿命の観点から適切な電源制御を行うことができる。
【0117】
なお、以上では、事前情報は、事前勾配θpであるものとして説明した。しかし、事前情報は、これに限ったものではない。例えば、事前情報は、車両が近い将来に走行しようとしている道路(以下、「将来走行道路」と呼ぶ)の制限速度、渋滞の程度、信号による停止表示の可能性の高低の程度であってもよい。例えば、将来走行道路の制限速度が低い場合、あるいは、将来走行道路の渋滞の程度が高い場合、あるいは、将来走行道路における信号の表示が「赤」となる可能性が高い場合には、将来、減速する可能性が高いと考えられる。そこで、これらの場合には、事前勾配θpが降坂を示す際に割り当てた走行モードのように、回生重視の走行モードを割り当てる。一方、将来走行道路の制限速度が高い場合、あるいは、将来走行道路の渋滞の程度が低い場合には、将来、加速する可能性が高いと考えられる。そこで、これらの場合には、事前勾配θpが登坂を示す際に割り当てた走行モードのように、力行重視の走行モードを割り当てる。
【符号の説明】
【0118】
6 電源制御装置、21 操作検出手段、22 走行状態検出手段、23 電源状態検出手段、24 要求出力決定手段、25 制御関数決定手段、26 出力制限決定手段、27 要求出力配分手段、28 目標充電状態決定手段、29 充放電電力決定手段、30 電源出力決定手段、31 電源出力制御手段、32 事前情報検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられ、主電源及びアシスト電源からの出力を制御する電源制御装置であって、
前記車両に対する操作を検出する操作検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記主電源に関する温度と、前記アシスト電源の充電状態とを検出する電源状態検出手段と、
前記操作と前記走行状態とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の全体に要求されている要求出力を決定する要求出力決定手段と、
複数の出力制限関数、複数の目標充電状態関数、及び、複数の充放電電力関数を有し、これら関数のそれぞれから、一の前記出力制限関数、一の前記目標充電状態関数、及び、一の前記充放電電力関数をそれぞれ決定する制御関数決定手段と、
前記要求出力と、前記アシスト電源の充電状態と、前記一の出力制限関数とに基づいて、前記アシスト電源の出力制限を決定する出力制限決定手段と、
前記要求出力と、前記アシスト電源の出力制限とに基づいて、前記要求出力を前記主電源と前記アシスト電源とに配分する要求出力配分手段と、
前記走行状態と、前記一の目標充電状態関数とに基づいて、前記アシスト電源の目標充電状態を決定する目標充電状態決定手段と、
前記充電状態と、前記目標充電状態と、前記一の充放電電力関数とに基づいて、前記主電源と前記アシスト電源との間の充放電電力を決定する充放電電力決定手段と、
前記充放電電力と、前記主電源に配分された前記要求出力と、前記アシスト電源に配分された前記要求出力とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を決定する電源出力決定手段と、
前記電源出力決定手段で決定された前記主電源及び前記アシスト電源の出力に基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を制御する電源出力制御手段とを備え、
前記制御関数決定手段は、消費電力、不足電力及び電源劣化値を求め、前記消費電力、前記不足電力及び前記電源劣化値のそれぞれに重み係数をかけて、これらを総和して得られる評価値を算出し、当該評価値が所定の範囲に収まるように、前記一の出力制限関数、前記一の目標充電状態関数、及び、前記一の充放電電力関数をそれぞれ決定する、電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源制御装置であって、
前記走行状態は車速を含み、
前記複数の目標充電状態関数のそれぞれは、前記目標充電状態を示す、前記車速の関数であり、
前記複数の目標充電状態関数のそれぞれにおいて、前記車速が大きい場合には前記目標充電状態は低くなり、前記車速が小さい場合には前記目標充電状態は高くなる、電源制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電源制御装置であって、
前記複数の充放電電力関数のそれぞれは、前記充放電電力を示す、前記アシスト電源の前記充電状態と前記アシスト電源の前記目標充電状態との差分の関数である、電源制御装置。
【請求項4】
車両に備えられ、主電源及びアシスト電源からの出力を制御する電源制御装置であって、
前記車両に対する操作を検出する操作検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記主電源に関する温度と、前記アシスト電源の充電状態とを検出する電源状態検出手段と、
前記操作と前記走行状態とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の全体に要求されている要求出力を決定する要求出力決定手段と、
複数の出力制限関数、複数の目標充電状態関数、及び、複数の充放電電力関数を有し、これら関数のそれぞれから、一の前記出力制限関数、一の前記目標充電状態関数、及び、一の前記充放電電力関数をそれぞれ決定する制御関数決定手段と、
前記要求出力と、前記アシスト電源の充電状態と、前記一の出力制限関数とに基づいて、前記アシスト電源の出力制限を決定する出力制限決定手段と、
前記要求出力と、前記アシスト電源の出力制限とに基づいて、前記要求出力を前記主電源と前記アシスト電源とに配分する要求出力配分手段と、
前記走行状態と、前記一の目標充電状態関数とに基づいて、前記アシスト電源の目標充電状態を決定する目標充電状態決定手段と、
前記充電状態と、前記目標充電状態と、前記一の充放電電力関数とに基づいて、前記主電源と前記アシスト電源との間の充放電電力を決定する充放電電力決定手段と、
前記充放電電力と、前記主電源に配分された前記要求出力と、前記アシスト電源に配分された前記要求出力とに基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を決定する電源出力決定手段と、
前記電源出力決定手段で決定された前記主電源及び前記アシスト電源の出力に基づいて、前記主電源及び前記アシスト電源の出力を制御する電源出力制御手段と
前記車両が走行しようとしている道路に関する事前情報を検出する事前情報検出手段とを備え、
前記制御関数決定手段は、
複数の出力制限関数、複数の目標充電状態関数、及び、複数の充放電電力関数の組合せにそれぞれ関連付けられた複数の走行モードを有し、前記事前情報と、前記主電源に関する温度とに基づいて、前記複数の走行モードから一の走行モードを選択し、当該一の走行モードに関連付けられている前記出力制限関数、前記目標充電状態関数、及び、前記充放電電力関数を、前記一の出力制限関数、前記一の目標充電状態関数、及び、前記一の充放電電力関数としてそれぞれ決定する、電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157209(P2012−157209A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16088(P2011−16088)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】