説明

電源瞬停記憶装置、AC−DCコンバータ及び電源瞬停記憶方法

【課題】外部から入力電源に瞬時停止が発生したときに、瞬時停止が発生したことを確実に記録する。
【解決手段】外部電力が供給される入力端1の電圧レベルが、予め定められた閾値Vxよりも下回っているときに、その下回っている期間持続する検出信号を生成する検出手段2と、この検出信号を受信し、検出信号の持続期間が所定期間tを下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成する判定手段3と、瞬停情報を記憶する記憶手段5と、瞬停情報を検証するための検証情報を生成し、瞬停情報及び検証情報を記憶手段5の異なる記憶領域に順次繰り返して格納する制御手段4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタ装置等に供給される一次側電源が瞬停したことを記録する電源瞬停記憶装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示パネルの製造にスパッタ装置等が使用される。スパッタ装置は、チャンバー内にアルゴン等からなるプラズマを発生させ、金属材料や絶縁材料からなるターゲットにアルゴン等の荷電粒子を衝突させることにより、ターゲット材料を飛散させて基板上に導電膜や絶縁膜を堆積させる。これらの導電膜や絶縁膜は、膜厚や膜質が高精度に制御される。このような装置を稼働中に、一次側電源に瞬時停止が発生すると、スパッタ装置内に発生しているプラズマの状態が変動して、製膜中の膜厚や膜質に変動が生じて品質不良を起こす。そこで、この瞬時停止を常に監視し、瞬停が発生したときは瞬停記憶部によりこれを記録するようにしている。
【0003】
図7は、従来公知のAC-DCコンバータ65の構成を表すブロック図である。AC-DCコンバータ65は、電源瞬停記憶装置50と、例えばスパッタ装置等に電力を供給するAC-DC変換装置60を備えている。電源瞬停記憶装置50は、AC電力の供給を受ける入力端51と、入力端51からの電力供給を遮断するブレーカーBと、AC電力のノイズを除去するためのフィルター59と、フィルター59からAC電力を入力して整流する整流回路52と、整流された電圧と基準電圧とを比較して検出信号を生成する比較回路53と、瞬停情報を記憶する不揮発性メモリ56と、比較回路53から検出信号を入力し、検出信号の期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報と瞬停情報の誤りを検証するための検証情報を生成し、この瞬停情報と検証情報を不揮発性メモリ56に格納する制御部54と、プログラムの作業領域として使用される揮発性メモリ55と、制御部54等に電力を供給するオンボード電源57と、制御信号等を伝送するバス58とから構成されている。
【0004】
図8は、上記電源瞬停記憶装置50の動作を説明するためのタイミングチャートである。最上段はブレーカーBのON・OFFのタイミングを表し、その下段は整流回路52の出力電圧Vyを表し、その下段は比較回路53の出力を表し、その下段はオンボード電源57の出力を表し、最下段は不揮発性メモリ56の書込みステータスを表している。整流回路52の出力電圧Vyが低下、即ち外部から供給されるAC電力の電圧が低下して、基準電圧としての瞬時停止レベルの閾値Vxよりも低下すると、比較回路53の出力はHレベルからLレベルに変化する。次に、整流回路52の出力が瞬時停止レベルの閾値Vxよりも上昇すると、比較回路53の出力はLレベルからHレベルへ復帰する。制御部54は、比較回路53のLレベルの期間T21が所定期間t、例えば50msecよりも短いと判定したときは、AC電力の異常入力F1を瞬停と認定する。すると、制御部54は、不揮発性メモリ56のステータスをLレベルからHレベルに切替えて、瞬停があったことを表す瞬停情報と、瞬停情報の誤りを検証するための検証情報とを不揮発性メモリ56に格納する。この格納は比較回路53がLレベルからHレベルに復帰した直後の期間T24の期間に行われる。次の異常入力F2の場合も瞬停と判定され、不揮発性メモリ56の同じ記憶領域に瞬停情報と検証情報が重ねて格納される。なお、オンボード電源57の出力は、AC-DC変換装置60やオンボード電源57に構成される容量やインダクタンスにより、駆動可能な電力が供給され、オン状態を維持している。
【0005】
次に、ブレーカーBがタイミングz1からz2の期間、一時的にオフした場合を説明する。ブレーカーBがオフすると整流回路52の出力電圧Vyは漸次低下する。整流回路52の出力電圧Vyが低下して、瞬時停止レベルの閾値Vxを下回ると、比較回路53の出力はHレベルからLレベルに変化する。なお、整流回路52の出力電圧Vyがタイミングz1から瞬時停止レベルの閾値Vxを下回るまでに遅延するのは、フィルター59や整流回路52に組み込まれる容量成分や、ブレーカーBのオフ時に接点がオープンするまでの遅延等に起因している。そして、タイミングz2においてブレーカーBがオンすると、整流回路52の出力は上昇して瞬時停止レベルの閾値以上になると、比較回路53の出力はLレベルからHレベルに復帰する。制御部54は、このLレベルの期間T23が所定期間tよりも長いことを検出したときは、ブレーカーBが一時的にオフしたと判定し、不揮発性メモリ56に情報を書き込まない。
【0006】
次に、ブレーカーBをタイミングz3でオフした場合を説明する。ブレーカーBがオフし、整流回路52の出力電圧Vyが漸次低下して瞬時停止レベルの閾値Vxを下回る。すると比較回路53の出力はHレベルからLレベルに変化する。ブレーカーBが復帰していないので、比較回路53の出力がLレベルに変化後にAC-DC変換装置60の出力が低下する期間2t後と、オンボード電源57の出力が低下するt’後に、オンボード電源57の出力がオフする。この場合は、電源瞬停記憶装置50が動作を停止する。
【0007】
このように、外部電源に瞬停が発生したときに、瞬停情報が不揮発性メモリ56に書き込まれ、その他、ブレーカーBが一時的にオフした場合や、長時間オフする場合には、通常動作と判定され、記録されない。
【0008】
特許文献1には、スロットマシン等からなる装置の瞬停対策について記載されている。外部電源に瞬停が発生したときに、電力供給可能な蓄電手段から電力を供給して装置を継続的に動作させ、瞬停が発生した後の所定時間後に外部電力が復帰したときはそのまま装置を動作させ、外部電力が復帰しないときは装置の停止処理を実行する。しかし、瞬停が発生したときに、瞬停情報を記録することについては、記載されていない。
【特許文献1】特開2002−210095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記図7を用いて説明した電源瞬停記憶装置50は、ブレーカーBのオフ時にチャタリングが発生すると、制御部54は、瞬停が発生していないにもかかわらず瞬停が発生したと誤認する。そして、不揮発性メモリ56に瞬停情報を格納している最中にシステムがダウンして、不揮発性メモリ56の記録情報が破壊される場合がある。
【0010】
図9のタイミングチャートを用いて説明する。図9に示すタイミングチャートの最上段から最下段までは図8と同じである。タイミングz3においてブレーカーBがチャタリングを伴ってオフすると、整流回路52の出力電圧Vyにも所定の遅延後にチャタリングに伴う波形が現れる。比較回路53の出力は、整流回路52の出力電圧Vyが瞬時停止レベルの閾値Vxを下回ったときにHレベルからLレベルに変化し、期間T25の経過後にLレベルからHレベルに回復する。その後再びLレベルに変化する。制御部54は、期間T25が所定期間tよりも短いと判定したときは瞬停と判定するので、比較回路53の出力がLレベルからHレベルに復帰したことを契機として、不揮発性メモリ56の書込みステータスをLレベルからHレベルへ変化させて、不揮発性メモリ56に瞬停情報を格納する。しかし、瞬停情報の格納が終了する前に、再度Lレベルに変化して期間2t+t’が経過すると、オンボード電源57の出力はダウンする。このオンボード電源57の出力ダウンが、不揮発性メモリ56に瞬停情報を格納中である場合、即ち期間T26が格納を終了する期間T24より短い場合に、不揮発性メモリ56に格納された瞬停情報が破壊され、読み出すことができなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するために以下の手段を講じた。
【0012】
(1)外部電力が供給される入力端の電圧レベルが、予め定められた閾値よりも下回っているときに、前記下回っている期間持続する検出信号を生成する検出手段と、前記検出信号を受信し、前記検出信号の持続期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成する判定手段と、前記瞬停情報を記憶する記憶手段と、前記瞬停情報を検証するための検証情報を生成し、前記瞬停情報及び前記検証情報を、前記記憶手段の異なる記憶領域に順次繰り返して格納する制御手段と、を備える電源瞬停記憶装置とした。
【0013】
(2)上記(1)の電源瞬停記憶装置において、前記制御手段は、前記瞬停情報及び前記検証情報を、n(nは2以上の整数)個の夫々異なる記憶領域に、順次繰り返して格納するようにした。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)の電源瞬停記憶装置と、前記入力端から供給されるACの電力をDCに変換するコンバータを備えるAC-DCコンバータとした。
【0015】
(4)入力端の電圧レベルが閾値を下回った期間持続する検出信号を生成するステップと、前記検出信号を受信し、前記検出信号の持続期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成するステップと、前記瞬停情報を検証するための検証情報を生成するステップと、前記瞬停情報と前記検証情報とを記憶領域に格納した後に、前記記憶領域とは異なる記憶領域に前記瞬停情報及び前記検証情報を繰り返して格納するステップと、を備える電源瞬停記憶方法とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電源瞬停記憶装置においては、外部電力が供給される入力端の電圧レベルが、予め定められた閾値よりも下回っているときに、下回っている期間持続する検出信号を生成する検出手段と、検出信号を受信し、検出信号の持続期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成する判定手段と、瞬停情報を記憶する記憶手段と、瞬停情報を検証するための検証情報を生成し、瞬停情報及び検証情報を、記憶手段の異なる記憶領域に順次繰り返して格納する制御手段と、を備えるようにした。これにより、ブレーカー等のスイッチをオフした後にチャタリングが発生した場合でも、複数の記憶領域の夫々に瞬停情報等が記憶されているので、いずれか一つが破壊されたとしても、他の正しい瞬停情報等を残すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置10の基本的な構成を表す構成図である。図1に示すように、電源瞬停記憶装置10は、外部電源に接続し、外部電力が供給される入力端1と、外部電力の状態を検出して検出信号を生成する検出手段2と、検出信号を受信し、外部電力に瞬停が在ったことを判定して瞬停情報を生成する判定手段3と、瞬停情報を受信し、瞬停情報の誤りを検証するための検証情報を生成して、記憶手段5に格納する制御手段4とから構成されている。
【0019】
図2は、入力端1に供給される外部電力に瞬停が発生したときの、タイミングチャートを表す。最上段(a)は入力端1の電圧Vz、その下段(b)は検出手段2の出力、最下段(c)は記憶手段5の書き込みステータスを表す。横軸は時間を表す。検出手段2は、入力端1から入力した外部電力の電圧レベルが閾値Vxよりも低下すると、その出力をHレベルからLレベルに変化させて、その低下している期間T1の間持続する検出信号を生成する。判定手段3は、検出手段2から受信した検出信号の持続する期間T1が予め定められた所定期間tを下回っているかどうかを判定する。判定手段3は、持続する期間T1が所定期間tを下回っていることを検出したときは、外部電力に瞬停が発生したことを表す瞬停情報を生成する。制御手段4は、判定手段3から瞬停情報を受信して、この瞬停情報の誤りを検証するための検証情報を生成する。次に、制御手段4は、瞬停情報と検証情報を記憶手段5の互いに異なる記憶領域に順次繰り返して格納する。
【0020】
図3は、記憶手段5の記憶領域を表す模式図である。制御手段4は、記憶手段5の記憶領域0番地に瞬停情報1を格納する。次に、制御手段4は、記憶領域0番地、2番地、・・・m−2番地に格納された、瞬停情報1とその他のログ内容に基づいて検証情報1を生成し、記憶領域m−1番地に格納する。この検証情報1は、記憶領域0番地、2番地、3番地・・・m−2番地に格納された情報を検証するための情報である。瞬停情報1と検証情報1の格納を期間T2の間に行う。
【0021】
次に制御手段4は、記憶領域1番地に瞬停情報2を格納する。次に、制御手段4は、記憶領域1番地、2番地、・・・、m−2番地に格納された瞬停情報2とその他のログ内容に基づいて検証情報2を生成し、記憶領域m番地に格納する。この検証情報2は、記憶領域1番地、2番地、3番地・・・m−2番地に格納された情報を検証するための情報である。瞬停情報2と検証情報2の格納を期間T3の間に行う。つまり、記憶手段5の異なる記憶領域に瞬停情報1とこの瞬停情報1と内容が同じである瞬停情報2を時系列的に繰り返して格納する。これにより、最初の期間T2に格納された瞬停情報1の正しい読み出しが困難になった場合でも、次の期間T3に格納された瞬停情報2を正しく読み出すことができる。同様に、期間T3に格納された瞬停情報2の正しい読み出しが困難になった場合でも、前の期間T2に格納された瞬停情報1を正しく読み出すことができる。なお、記憶手段5の記憶領域は、不揮発性メモリにより構成するのが好ましい。不揮発性メモリは、電源オフでも記憶内容が保存されるからである。
【0022】
図2のタイミングチャートの後半部を用いて具体的に説明する。図2の後半部は、ブレーカー等からなる外部スイッチをオフにして、入力端1に供給される外部電力が遮断された際に、チャタリングが発生した場合である。入力端1の電圧Vzは、期間T4の間に閾値Vxを下回ってその後回復し、更にその後、閾値Vx以下に低下した。すると、検出手段2の出力は期間T4の間Lレベルを維持する。判定手段3は、期間T4が所定期間tを下回っていることを検出したときは、外部電力に瞬停が発生したことを表す瞬停情報を生成する。制御手段4は、検出手段2の出力がLレベルからHレベルへ回復したことを契機として、記憶手段5の記憶領域0番地に瞬停情報1を格納し、記憶領域m−1番地に検証情報1を格納し、続いて記憶領域1番地に瞬停情報2を格納し、次に記憶領域m番地に検証情報2を格納する一連の動作を行おうとする。
【0023】
しかし、入力端1には外部電力が供給されていないので、入力端1の電圧は低下し続ける。そして、検出手段2の出力がHレベルからLレベルへ変化した後の概ねの期間2t+t’後には、判定手段3や制御手段4の駆動電圧が低下して電源瞬停記憶装置10の動作が停止する。即ち、記憶手段5の書込みステータスは、期間T5の後にHレベルからLレベルに変化して停止する。ここで、tは瞬停を判定するための所定期間であり、t’は、入力端1に供給される電力が遮断した後の、判定手段3や制御手段4に駆動電力が供給されなくなるまでの時間を表している。
【0024】
この場合に、期間T5が瞬停情報1と検証情報1を格納する期間T2よりも短いときは、瞬停情報1又は検証情報1の書き込み途中で装置がダウンするので、記憶領域0番地又はm−1番地に記憶された瞬停情報1又は検証情報1が破壊される。そうなると、瞬停情報1を読み出すことができなくなる、或いは、読み出した後に検証情報1により記憶内容を検証したときに、誤り情報として読み出されることになる。その結果、瞬停情報1に関しては正しく読み出すことができない。しかし、記憶領域1番地に記憶された瞬停情報2については、期間T5による破壊の影響を受けないので、正しく情報を読み出すことができる。即ち、瞬停情報及びその他の情報を、検証情報2を用いて正しく読み出すことができる。
【0025】
なお、上記説明において、記憶手段5の互いに異なる記憶領域に瞬停情報を2回繰り返して格納する場合を説明したが、記憶手段5にn(nは2以上の整数)個の互いに異なる記憶領域を確保して、瞬停情報及び検証情報をn回順次繰り返して格納するようにしてもよい。このように構成すれば、nx(nx<n)回目に格納した瞬停情報nxが破壊された場合でも、nx+1回目以降に格納した瞬停情報は正しい情報として確実に読み出すことができる。
【0026】
また、以上説明した実施形態において、記憶手段5の記憶領域0番地及び1番地に瞬停が発生した回数を格納することができる。記憶領域0番地及び1番地の初期値として0回数を記憶する。そして、瞬停の発生のたびに、記憶領域0番地及び1番地に、以前記憶された回数に1を加算した数値を格納するようにすればよい。このようにすれば、瞬停のあった回数を記憶して、これを正しく読み出すことができる。
【0027】
また、記憶手段5の記憶領域を2p×q個(p、qは2以上の整数)確保することができる。各記憶領域には、瞬停が発生した時刻からなる瞬停情報Dと検証情報Vを格納する。1回目の瞬停があったときは、記憶領域の各アドレス(0、0)、(0、1)〜(0、q−1)に順次繰り返して瞬停情報Dを、及びアドレス(p、0)、(p、1)〜(p、q−1)に検証情報V0,0、V0,1〜V0,q−1を夫々格納する。2回目の瞬停があったときは、記憶領域の各アドレス(1、0)〜(1、q−1)に順次繰り返して瞬停情報Dを、及びアドレス(p+1、0)、(p+1、1)〜(p+1、q−1)に検証情報V1,0、V1,1〜V1,q−1を夫々格納する。p回目の瞬停があったときは、記憶領域の各アドレス(p―1、0)〜(p―1、q―1)に順次繰り返して瞬停情報Dp−1を、及びアドレス(2p−1、0)〜(2p−1、q−1)に検証情報Vp−1、0〜Vp−1,q−1を夫々格納する。ここで、1回目の瞬停において、検証情報V0,0は、記憶領域のアドレス(0、0)に格納された瞬停情報Dに基づいて、検証情報V0,1はアドレス(0、1)に格納された瞬停情報Dに基づいて、検証情報V0,q−1はアドレス(0、q−1)に格納された瞬停情報Dに基づいて夫々作成されている。2回目の瞬停において、検証情報V1,0は、記憶領域のアドレス(0、0)、(1、0)の夫々に格納された瞬停情報D、Dに基づいて、検証情報V1,1は、記憶領域のアドレス(0,1)、(1、1)の夫々に格納された瞬停情報D、Dに基づいて、検証情報V1,q−1は、記憶アドレス(0、q−1)、(1、q−1)の夫々に格納された瞬停情報D、Dに基づいて作成されている。p回目の瞬停において、検証情報Vp−1、0は、記憶領域のアドレス(0、0)、(1、0)・・・(p−1、0)の夫々に格納された瞬停情報D、D〜Dp−1に基づいて、検証情報Vp−1,q−1は、記憶領域のアドレス(0、q−1)〜(p−1、q−1)の夫々に格納された瞬停情報D〜Dp−1に基づいて作成されている。
【0028】
記憶領域をこのように構成して瞬停情報と検証情報とを各アドレスに格納することにより、瞬停のあった時刻や回数を正しく読み出すことができる。即ち、1回の瞬停時において、瞬停情報は記憶手段5の異なるq箇所の記憶領域にq回順次格納される。この場合に、qx回目(qxは1〜qの間の整数)に格納される検証情報は、今回及び今回より前の各回の瞬停におけるqx回目に格納した瞬停情報に基づいて作成さている。これにより、例えばpx回目(pxは1〜pの間の整数)の瞬停のqx回目の格納時に、瞬停の誤判定を伴う電圧ダウンが発生し、瞬停情報又は検証情報が破壊されたとしても、px回目の誤判定を伴う瞬停の瞬停情報、及び、今回を含む以降の各瞬停におけるqx回目に格納した瞬停情報を除いた瞬停情報は、各回に格納した検証情報を用いて正しい情報として読み出すことができる。これにより、駆動電圧がダウンして瞬停情報が破壊された瞬停以外の瞬停の発生時刻や発生回数を確実に読み出すことができる。
【0029】
また、以上の説明において、検証情報として、対応する瞬停情報のチェックサム値とすることができる。各瞬停情報のチェックサム値を検証情報として不揮発性メモリに格納しておき、電源瞬停記憶装置10の電源をオンして、不揮発性メモリの内容を揮発性メモリに読み出し、読み出した瞬停情報のチェックサム値と格納されているチェックサム値とを比較することにより、格納された瞬停情報が正しい情報であるか否かを検証することができる。
【0030】
以下、本発明に係るAC−DCコンバータ及び電源瞬停記憶装置10を、図4及び図5を用いて具体的に説明する。図4は、本発明の実施形態に係るAC-DCコンバータ20の構成を表す構成図である。図5は、電源瞬停記憶装置10の動作を説明するためのタイミングチャートを表す。図1及び図2と同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0031】
図4に示すように、AC−DCコンバータ20は、電源瞬停記憶装置10とコンバータとしてのAC−DC変換装置14から構成されている。電源瞬停記憶装置10は、外部からAC電力を入力する入力端1と、装置への電力を遮断するブレーカーBと、外部AC電力に重畳されるノイズ等を除去するフィルター16と、AC電力の瞬停を検出する検出手段2と、検出手段2により検出された検出信号から瞬停情報を生成する制御判定部9と、制御判定部9により生成された瞬停情報と検証情報とを格納する記憶手段5と、電源瞬停記憶装置10に駆動電力を供給するオンボード電源13と、制御判定部9及び記憶手段5等との間において情報伝達を行うバス15から構成されている。
【0032】
検出手段2は、AC電力を入力して整流する整流回路6と、比較回路7とから構成されている。比較回路7は、整流回路6から出力された電圧Vyと、予め定められた電圧レベルである閾値Vxとを比較して、整流回路6の出力電圧Vyが閾値Vxよりも高いときはHレベルの信号を出力し、出力電圧Vyが閾値Vxを下回ったときはLレベルの信号を生成する。
【0033】
制御判定部9は、CPU8と、判定手段3と、制御手段4から構成されている。記憶手段5は、不揮発性メモリ12と揮発性メモリ11により構成されている。CPU8は、不揮発性メモリ12に記憶されたプログラムを揮発性メモリ11に読み出し、揮発性メモリ11を処理の作業領域として使用する。また、不揮発性メモリ12には、瞬停情報や検証情報、及びその他のログ内容が記憶されている。判定手段3及び制御手段4は、CPU8が、揮発性メモリ11に読み出したプログラムを実行することにより実現される。判定手段3は、比較回路7から検出信号を受信して、検出信号のLレベルの期間が予め定められた所定期間tを下回ることを検出したときに、検出信号が瞬停を表していると判定し、瞬停情報を生成する。瞬停を判定するための所定期間tは、例えば50msecに設定されている。
【0034】
制御手段4は、判定手段3により瞬停情報が生成されたことを契機として、不揮発性メモリ12の書込みステータスをLレベルからHレベルに切替え、不揮発性メモリ12の記憶領域の0番地に瞬停情報1を格納する(図3を参照)。制御手段4は、不揮発性メモリ12の0番地に記憶された瞬停情報1と、他の領域に記憶されたアラーム情報等からなるログ内容に基づいて、検証情報1を生成して記憶領域m−1番地に格納する。続いて、制御手段4は、不揮発性メモリ12の記憶領域1番地に瞬停情報2を格納し、瞬停情報2と、他の領域に記憶されたアラーム情報等からなるログ内容に基づいて、検証情報2を生成して記憶領域m番地に格納する。
【0035】
オンボード電源13は、AC-DC変換装置14から供給されるDC電圧をレベルダウンして制御判定部9や記憶手段5にDC電圧を供給する。AC−DC変換装置14は、図示しないスパッタ装置等にDC電力を供給している。AC−DC変換装置14は容量やインダクタンスを含むので、ブレーカーBがオフした後の短い時間、例えば略2tの期間は出力電圧を維持する。同様に、オンボード電源13は電圧レベルを低下させるレベルシフターであり、入力電圧が停止した後の期間t’は出力電圧を維持する。従って、ブレーカーBがオフした後の、例えば2t+t’期間、制御判定部9や記憶手段5の動作を維持することができる。
【0036】
図5のタイミングチャートにおいて、最上段(a)はブレーカーBのオン・オフを表す。その下段(b)は整流回路6の出力を表す。その下段(c)は比較回路7の出力を表す。その下段(d)はオンボード電源13の出力を表す。最下段(e)は不揮発性メモリ12の書込みステータスを表す。横軸は、時間を表している。
【0037】
まず、入力端1に入力するAC電源に瞬断が発生したときは、整流回路6の出力電圧Vyが低下する入力異常E1が現れる。比較回路7は、整流回路6の出力電圧Vyと瞬時停止レベルを表す閾値Vxとを比較して、出力電圧Vyが閾値Vxよりも下回ると、比較回路7の出力をHレベルからLレベルに変化させ、出力電圧Vyが閾値以上に回復するとLレベルからHレベルに回復する。つまり、比較回路7は、その出力がLレベルとなる期間T11による検出信号を生成する。判定手段3は、この検出信号を受信して期間T11が瞬停を表す所定期間tを下回っていることを判定する。すると、制御手段4は、不揮発性メモリ12の記憶領域である0番地に、瞬時停止ログ内容である1回目の瞬停情報1を格納する。次に、制御手段4は、不揮発性メモリ12の記憶領域の0番地、2番地〜m−2番地のチェックサム値を算出してm−1番地にチェックサム値である検証情報1を格納する。この瞬停情報1と検証情報1は期間T14の間に格納される。制御手段4は、更に、不揮発性メモリ12の記憶領域の1番地に、瞬時停止ログ内容である2回目の瞬停情報2を格納する。次に、制御手段4は、不揮発性メモリ12の記憶領域の1番地〜m−2番地のチェックサム値を算出してm番地にチェックサム値である検証情報2を格納する。この瞬停情報2と検証情報2は期間T14の間に格納される。
【0038】
次に、入力端1に入力するAC電源に瞬断が発生し、上記と同様に整流回路6の出力電圧Vyが低下する入力異常E2が現れると、上記と同様に動作する。即ち、比較回路7から出力される検査信号が、Lレベルを持続する期間T12が所定期間tを下回っていることを判定手段3が検出する。すると、制御手段4は、不揮発性メモリ12の0番地に瞬停情報1を、m−1番地に検証情報1を期間T14の間に格納する。次に、不揮発性メモリ12の1番地に瞬停情報2を、m番地に検証情報2を期間T14の間に格納する。
【0039】
次にタイミングx1の時点でブレーカーBがオフしてAC電源を遮断し、タイミングx2において、ブレーカーBがオンした場合を説明する。タイミングx1でAC電源からAC電力が遮断されても、途中に挿入されているフィルター16、整流回路6等に構成された容量やインダクタンスの影響により、整流回路6の出力電圧Vyは遅延して低下する(E3)。整流回路6の出力電圧Vyが瞬時停止レベルの閾値を下回り、期間T13の後に回復する。判定手段3は、期間T13が所定期間tよりも長いことを検出したときは、ブレーカーBが一時的に遮断したと判定する。制御手段4は、判定手段3の判定結果に基づいて、不揮発性メモリ12に瞬停情報や検証情報を格納することなく、AC電源の監視を続行する。
【0040】
次に、タイミングx3においてブレーカーBをオフし、このときにチャタリングが発生した場合を説明する。ブレーカーBにおいて発生したチャタリングは整流回路6の出力に遅延して現れる(E4)。整流回路6の出力電圧Vyが瞬時停止レベルの閾値Vxを一旦下回って直に回復し、その後漸次低下する。比較回路7の出力はHレベルからLレベルに変化して期間T15の間Lレベルを維持し、その後Hレベルに回復して再びLレベルに変化する。判定手段3は、期間T15が所定期間tを下回ることを検出して瞬停が発生したと判定する。すると、制御手段4は、比較回路7の出力電圧レベルがLレベルからHレベルに変化したことを契機として、不揮発性メモリ12の記憶領域0番地に瞬停情報1の格納を開始する。
【0041】
比較回路7の出力電圧レベルは、期間T15を経過した後に一旦Hレベルを超える。しかし、オンボード電源13の出力電圧は、AC−DC変換装置14やオンボード電源13のインダクタンスや容量成分等により漸次低下する。整流回路6の出力電圧Vyが瞬時停止レベルの閾値Vxを下回った後の期間2t+t’を経過すると、オンボード電源13の出力電圧がオフして、電源瞬停記憶装置10の動作は停止する。この際に、不揮発性メモリ12に瞬停情報を格納中であるとき、即ち、格納を開始してからオンボード電源13の出力がオフするまでの間の期間T16が、一回の書込み期間T14よりも短いときは、格納中にオンボード電源13の出力電圧がダウンして、格納中の瞬停情報は破壊される。
【0042】
電源瞬停記憶装置10を再起動して、不揮発性メモリ12の記憶領域0番地及び2番地以降に記憶された瞬停情報及びその他のログ内容と、m−1番地に記憶された検証情報とを揮発性メモリ11に読み出す。次に、0番地に記憶された瞬停情報からチェックサムをとって求めた検証情報と、m−1番地に記憶された検証情報1とを比較する。しかし、記憶領域0番地に記憶された瞬停情報は破壊されているので、読み出した検証情報1と、読み出した瞬停情報1からチェックサムをとって求めた検証情報とが一致しない。従って、記憶領域0番地から読み出した瞬停情報1は誤りデータとなる。一方、記憶領域1番地に記憶された瞬停情報2は、瞬停情報2に基づいてチェックサムをとって求めた検証情報と、記憶領域m番地に記憶された検証情報2とが一致するので、正しく瞬停情報2を読み出したことになる。
【0043】
以上のとおり、瞬停が発生したときに、瞬停情報と、瞬停情報を検証するための検証情報を、異なる記憶領域に順次繰り返して格納することにより、供給されるAC電力をオフする際に発生するノイズに影響されない正しい瞬停情報を記憶領域に残すことができる。
【0044】
なお、以上の説明において、ブレーカーBは、電源瞬停記憶装置10の外部に設置されていてもよいし、ブレーカーB以外のスイッチであってもよい。また、オンボード電源13の入力電圧を、AC−DC変換装置14から供給しているが、これに変えて、入力端1からAC電圧を直接入力してもよい。また、判定手段3を、CPU8が実行するプログラムにより構成するものとして説明したが、これに代えて、判定手段3としてLレベルのパルス幅を検出する回路により構成してもよい。また、瞬停情報や検証情報を記憶する不揮発性メモリ12の記憶領域を、0番地、m−1番地のセットと、1番地、m番地のセットとを構成し、複数回瞬停があったときに、同じ記憶領域に重ねて格納する場合について説明をしたが、これに代えて、記憶領域を2p×q個確保して、複数回の瞬停の夫々の瞬停情報及び検証情報のセットを独立して夫々記憶するようにしてもよい。
【0045】
図6は、本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶方法を表すフロー図である。まず、電源瞬停記憶装置10に電力を供給して初期設定を行う(ステップS1)。初期設定は、瞬時停止電圧レベルを表す閾値Vxと、瞬時停止期間を表す所定期間tと、格納回数を表すn(2以上の整数)を設定する。また、n回分の瞬停情報や検証情報を格納する記憶領域を不揮発性メモリ12に設定する。次に、整流回路6は、外部から供給を受けるAC電力を整流した比較用の電圧Vyを生成する(ステップS2)。次に、比較回路7は、比較用の電圧Vyと瞬時停止レベルの閾値Vxとを比較し、電圧Vyが閾値Vxを下回ったときに(ステップS3のYes)、検出信号を生成する(ステップS4)。検出信号は、下回っている期間T1の間Lレベルを持続する。判定手段3は、検出信号の期間T1が所定期間tよりも短いことを検出したときは(ステップS5のYes)、瞬停があったと判定し、瞬停情報を生成する(ステップS6)。
【0046】
制御手段4は、不揮発性メモリ12の記憶領域0番地に瞬停情報1を格納する。制御手段4は、瞬停情報1に基づいて検証情報1を生成し、不揮発性メモリ12の記憶領域m−1番地に格納する(ステップS7)。次に、制御手段4は、瞬停情報と検証情報の格納をn回繰り返したか否かを判断し、n回繰り返していないときは(ステップS8のNo)、ステップS7から瞬停情報及び検証情報を不揮発性メモリ12に格納する処理を繰り返す。制御手段4は、瞬停情報と検証情報の格納をn回繰り返したと判断したときは(ステップS8のYes)、ステップS2に戻る。また、電圧Vyが閾値Vx以上であるとき(ステップS3のNo)、及び、期間T1が所定期間t以上の長さであるとき(ステップS5のNo)は、ステップS2に戻り、瞬停判断処理を続行する。
【0047】
以上のとおり、簡便な処理方法により、瞬停情報を確実に記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置の動作を表すタイミングチャート図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置の記憶領域を表す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置の構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶装置の動作を表すタイミングチャート図及び記憶領域を表す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電源瞬停記憶方法を表すフロー図である。
【図7】従来公知のAC-DCコンバータの構成を表すブロック図である。
【図8】従来公知のAC−DCコンバータの動作を表すタイミングチャート図である。
【図9】従来公知のAC−DCコンバータの動作を表すタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0049】
1 入力端
2 検出手段
3 判定手段
4 制御手段
5 記憶手段
6 整流回路
7 比較回路
8 CPU
9 制御判定部
10 電源瞬停記憶装置
11 揮発性メモリ
12 不揮発性メモリ
13 オンボード電源
14 AC−DC変換装置
20 AC−DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電力が供給される入力端の電圧レベルが、予め定められた閾値よりも下回っているときに、前記下回っている期間持続する検出信号を生成する検出手段と、
前記検出信号を受信し、前記検出信号の持続期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成する判定手段と、
前記瞬停情報を記憶する記憶手段と、
前記瞬停情報を検証するための検証情報を生成し、前記瞬停情報及び前記検証情報を、前記記憶手段の異なる記憶領域に順次繰り返して格納する制御手段と、を備える電源瞬停記憶装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記瞬停情報及び前記検証情報を、n(nは2以上の整数)個の夫々異なる記憶領域に、順次繰り返して格納することを特徴とする請求項1に記載の電源瞬停記憶装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電源瞬停記憶装置と、前記入力端から供給されるACの電力をDCに変換するコンバータを備えるAC-DCコンバータ。
【請求項4】
入力端の電圧レベルが閾値を下回った期間持続する検出信号を生成するステップと、
前記検出信号を受信し、前記検出信号の持続期間が所定期間を下回ることを検出したときに、瞬停情報を生成するステップと、
前記瞬停情報を検証するための検証情報を生成するステップと、
前記瞬停情報と前記検証情報とを記憶領域に格納した後に、前記記憶領域とは異なる記憶領域に前記瞬停情報及び前記検証情報を繰り返して格納するステップと、を備える電源瞬停記憶方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−15323(P2010−15323A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173848(P2008−173848)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】