説明

電界効果トランジスタと、それを用いた表示装置及び無線識別タグ

【課題】 ゲート絶縁層側からの酸素及び水分の侵入を抑制し、かつ容易に製造することができる電界効果トランジスタと、それを用いた表示装置及び無線識別タグを提供する。
【解決手段】 有機半導体を含む半導体層(2)と、半導体層(2)の表面に分離して設けられたソース電極(3)及びドレイン電極(4)と、半導体層(2)、ソース電極(3)及びドレイン電極(4)の表面に順次積層されたゲート絶縁層(5)及びゲート電極(6)とを含み、ゲート電極(6)は、半導体層(2)のチャネル領域(7)を覆って設けられ、ゲート電極(6)の外周部(6a)とチャネル領域(7)との最短距離をL1、ゲート電極(6)とチャネル領域(7)との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有する電界効果トランジスタ(10)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を半導体層の構成材料として用いた電界効果トランジスタと、それを用いた表示装置及び無線識別タグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機半導体に代わる半導体として有機半導体の開発が活発に行われており、有機半導体を半導体層の構成材料として用いた様々な電界効果トランジスタ(以下、単に「有機トランジスタ」という)が提案されている。なかでも、有機半導体であるペンタセンを半導体層の構成材料として用いた有機トランジスタでは、トランジスタの特性の一つであるキャリア移動度が1cm2/Vsを超えるという報告もなされている。従来のアモルファスシリコンを用いた電界効果トランジスタのキャリア移動度が約1cm2/Vsであることから、有機半導体が今後アモルファスシリコンに取って代わることが予想される。
【0003】
図5に従来の有機トランジスタの断面図を示す。図5に示すように、有機トランジスタ100は、基板101と、基板101上に積層された有機半導体を含む半導体層102と、半導体層102上に分離して設けられたソース電極103及びドレイン電極104と、半導体層102、ソース電極103及びドレイン電極104上に順次積層されたゲート絶縁層105及びゲート電極106とを備えている。そして、半導体層102には、ソース電極103とドレイン電極104との間に面してチャネル領域107が形成されている。なお、図5において、半導体層102の厚みは、チャネル領域107のチャネル長Dに対し誇張して描いている。
【0004】
他方、有機半導体は、大気中の酸素及び水分によって劣化し易いため、前記従来の有機トランジスタ100を電子デバイスとして用いるには、半導体層102への酸素及び水分の侵入を防ぐ必要がある。半導体層102への酸素及び水分の侵入経路は、大きく3つに分けられる。まず一つ目は、基板101から侵入する場合である。これに対しては、基板101にガスバリア性が高いものを使用することにより防ぐことができる。二つ目は、半導体層102の側面102aから侵入する場合である。これについては、半導体層102の厚みが数nmから100nm程度であるため、あまり問題とされない。三つ目は、ゲート絶縁層105側から半導体層102のチャネル領域107へ侵入する場合である(図中矢印I方向)。チャネル領域107のチャネル長Dは、通常100μm程度の間隔を有しているため、前記二つ目の侵入経路に比べ、酸素及び水分が侵入し易い。よって、従来の有機トランジスタ100では、前記三つ目の侵入経路から侵入する酸素及び水分により半導体層102を構成する有機半導体が劣化するおそれがあった。この問題を解決する一つの方法として、例えば、特許文献1に提案された封止膜により半導体層102を封止する方法が考えられる。
【特許文献1】特開2003−338629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案された封止膜を使用する場合は、有機トランジスタの構成部材が増えるため、製造工程が複雑化するおそれがあった。本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたものであり、ゲート絶縁層側からの酸素及び水分の侵入を抑制し、かつ容易に製造することができる有機トランジスタと、それを用いた表示装置及び無線識別タグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の有機トランジスタは、有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の表面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の表面に順次積層されたゲート絶縁層及びゲート電極とを含む有機トランジスタであって、前記ゲート電極が、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、前記ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の有機トランジスタは、有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の上面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上面に順次積層された第1ゲート絶縁層及び第1ゲート電極と、前記半導体層の下面に順次積層された第2ゲート絶縁層及び第2ゲート電極とを含む有機トランジスタであって、前記第1ゲート電極は、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、前記第1ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記第1ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有することを特徴とする。なお、ここでいう「前記半導体層の上面」及び「前記半導体層の下面」とは、前記半導体層の一表面とその反対面を指し、使用時における上下方向とは無関係である。
【0008】
本発明の表示装置及び無線識別タグは、いずれも本発明の有機トランジスタを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機トランジスタによれば、ゲート電極によって、ゲート絶縁層側から半導体層のチャネル領域へ侵入する酸素及び水分の侵入経路が長くなるため、ゲート絶縁層側からの酸素及び水分の侵入を抑制することができる。これにより、有機トランジスタの長寿命化が可能となる。また、封止膜等を別途使用する必要がないため、容易に製造することができる。また、本発明の表示装置及び無線識別タグは、いずれも本発明の有機トランジスタを備えているため、製品の長寿命化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の有機トランジスタは、有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の表面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の表面に順次積層されたゲート絶縁層及びゲート電極とを含む。前記有機半導体としては、例えば直鎖状アセンやπ共役系オリゴマー等の低分子系有機半導体材料や、π共役系ポリマーやπ共役系コポリマー等の高分子系有機半導体材料が好適に使用できる。前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記ゲート電極を構成する電極材料は、特に限定されないが、金等の金属材料が好適に使用できる。前記ゲート絶縁層を構成する絶縁材料としては、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機絶縁材料や、シリカ、アルミナ等の無機絶縁材料が好適に使用できる。また、前記半導体層及び前記ゲート絶縁層の好適な厚みは、それぞれ10〜300nm及び100〜1000nmであり、前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記ゲート電極の好適な厚みは、50〜500nmである。
【0011】
そして、本発明の第1の有機トランジスタは、前記ゲート電極が、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、前記ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有する。これにより、前記ゲート電極によって、前記ゲート絶縁層側から前記半導体層のチャネル領域へ侵入する酸素及び水分の侵入経路が長くなるため、前記ゲート絶縁層側からの酸素及び水分の侵入を抑制することができる。その結果、有機トランジスタの長寿命化が可能となる。また、封止膜等を別途使用する必要がないため、容易に製造することができる。なお、前記ゲート電極と前記チャネル領域との位置精度を確保するためには、前記最短距離L1と前記最短距離L2とは、L1/L2≧10となる関係を有することが好ましい。また、前記チャネル領域のチャネル長は、10〜500μmが好ましい。
【0012】
本発明の第2の有機トランジスタは、有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の上面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上面に順次積層された第1ゲート絶縁層及び第1ゲート電極と、前記半導体層の下面に順次積層された第2ゲート絶縁層及び第2ゲート電極とを含む。前記各構成要素の好適な材料や、好適な厚みは、前述した本発明の第1の有機トランジスタと同様である。
【0013】
そして、本発明の第2の有機トランジスタは、前記第1ゲート電極が、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、前記第1ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記第1ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有する。これにより、前記第1ゲート電極によって、前記第1ゲート絶縁層側から前記半導体層のチャネル領域へ侵入する酸素及び水分の侵入経路が長くなるため、前記第1ゲート絶縁層側からの酸素及び水分の侵入を抑制することができる。その結果、有機トランジスタの長寿命化が可能となる。また、封止膜等を別途使用する必要がないため、容易に製造することができる。
【0014】
また、本発明の第1及び第2の有機トランジスタは、それぞれ前記ゲート電極及び前記第1ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記ゲート電極及び前記第1ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧100となる関係を有することが好ましい。これにより、酸素及び水分の侵入経路が更に長くなるため、酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の第1及び第2の有機トランジスタは、それぞれ前記ゲート絶縁層及び前記第1ゲート絶縁層の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満であることが好ましい。これにより、酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。なお、ここでいう酸素透過速度とは、圧力が1MPaの酸素に前記ゲート絶縁層又は前記第1ゲート絶縁層を接触させた際、前記絶縁層1m2当たり1日に透過する酸素の量(体積)をいう。また、本発明の第2の有機トランジスタは、前記第2ゲート絶縁層の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満であることが好ましい。この構成によっても酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第1及び第2の有機トランジスタは、それぞれ前記ゲート絶縁層及び前記第1ゲート絶縁層が、前記半導体層を覆って積層されていることが好ましい。これにより、酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。また、本発明の第2の有機トランジスタは、前記第2ゲート絶縁層が、前記半導体層を覆って積層されていることが好ましい。この構成によっても酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の表示装置及び無線識別タグは、前述した本発明の有機トランジスタを備えている。これにより、有機トランジスタの長寿命化が可能となり、その結果、製品としても長寿命化が可能となる。なお、前記表示装置としては、例えば、有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型のディスプレイ等が例示できる。また、前記無線識別タグとしては、例えば、Radio Frequency Identification(RFID)タグ等が例示できる。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。参照する図1は、第1実施形態に係る有機トランジスタの説明図で、図1Aは断面図、図1Bは上面図である。ただし、図1Bにおいて、半導体層、ソース電極及びドレイン電極は破線で示している。なお、第1実施形態に係る有機トランジスタは、前述した本発明の第1の有機トランジスタの一実施形態である。
【0019】
図1Aに示すように、第1実施形態に係る有機トランジスタ10は、基板1と、基板1上に積層された有機半導体を含む半導体層2と、半導体層2上に分離して設けられたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2、ソース電極3及びドレイン電極4上に順次積層されたゲート絶縁層5及びゲート電極6とを備えている。また、図1Bに示すように、ゲート電極6は、ソース電極3とドレイン電極4との間に面して形成された半導体層2のチャネル領域7を覆って設けられている。そして、図1Aに示すように、有機トランジスタ10は、ゲート電極6の外周部6aとチャネル領域7との最短距離をL1、ゲート電極6とチャネル領域7との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有している。これにより、ゲート電極6によって、ゲート絶縁層5側から半導体層2のチャネル領域7へ侵入する酸素及び水分の侵入経路が長くなるため、ゲート絶縁層5側からの酸素及び水分の侵入を抑制することができる。その結果、有機トランジスタの長寿命化が可能となる。また、封止膜等を別途使用する必要がないため、容易に製造することができる。なお、基板1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の可撓性を有する基板が好ましい。可撓性を有する基板を用いると、有機トランジスタの柔軟性及び耐衝撃性が向上する。
【0020】
また、図1Bに示すように、有機トランジスタ10は、ゲート絶縁層5が、半導体層2を覆って積層されている。これにより、酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。
【0021】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。参照する図2は、第2実施形態に係る有機トランジスタの断面図である。なお、第2実施形態に係る有機トランジスタは、前述した本発明の第2の有機トランジスタの一実施形態である。また、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
図2に示すように、第2実施形態に係る有機トランジスタ20は、基板1と、基板1上に設けられた第2ゲート電極22と、第2ゲート電極22を覆って基板1上に積層された
第2ゲート絶縁層24と、第2ゲート絶縁層24上に積層された半導体層2と、半導体層2上に分離して設けられたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2、ソース電極3及びドレイン電極4上に順次積層された第1ゲート絶縁層21及び第1ゲート電極23とを備えている。第1ゲート電極23は、ソース電極3とドレイン電極4との間に面して形成された半導体層2のチャネル領域7を覆って設けられている。そして、有機トランジスタ20は、第1ゲート電極23の外周部23aとチャネル領域7との最短距離をL1、第1ゲート電極23とチャネル領域7との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有している。これにより、第1ゲート電極23によって、第1ゲート絶縁層21側から半導体層2のチャネル領域7へ侵入する酸素及び水分の侵入経路が長くなるため、第1ゲート絶縁層21側からの酸素及び水分の侵入を抑制することができる。その結果、有機トランジスタの長寿命化が可能となる。また、封止膜等を別途使用する必要がないため、容易に製造することができる。
【0023】
また、有機トランジスタ20は、第1及び第2ゲート絶縁層21,24が、半導体層2を覆って積層されている。これにより、酸素及び水分の侵入をより効果的に抑制することができる。
【0024】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。参照する図3は、第3実施形態に係るアクティブマトリクス型ディスプレイ(表示装置)の一部破断斜視図である。
【0025】
図3に示すように、アクティブマトリクス型のディスプレイ(以下、単に「ディスプレイ」という)30は、プラスチック基板31と、プラスチック基板31上にマトリクス状に複数配置された画素電極32と、画素電極32に接続され、プラスチック基板31上にアレイ状に複数配置されたトランジスタ駆動回路33と、画素電極32及びトランジスタ駆動回路33上に順次積層された有機EL層34、透明電極35及び保護フィルム36と、各トランジスタ駆動回路33と制御回路(図示せず)とを接続する複数本のソース電極線37及びゲート電極線38とを備えている。ここで、有機EL層34は、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の各層が積層されて構成されている。そして、ディスプレイ30は、各トランジスタ駆動回路33に、画素のスイッチング素子として、前述した第1及び第2実施形態のいずれかに係る有機トランジスタが設けられている。これにより、有機トランジスタの長寿命化が可能となり、その結果ディスプレイ全体としても長寿命化が可能となる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態に係るディスプレイ(表示装置)について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記実施形態では有機ELを用いたディスプレイについて説明したが、液晶表示素子等の他の表示素子を備えたディスプレイであってもよい。
【0027】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図面を参照して説明する。参照する図4は、第4実施形態に係るRFIDタグ(無線識別タグ)の斜視図である。
【0028】
図4に示すように、RFIDタグ40は、フィルム状のプラスチック基板41と、プラスチック基板41上に設けられたアンテナ部42及び集積回路部43とを備えている。集積回路部43には、前述した第1及び第2実施形態のいずれかに係る有機トランジスタが設けられている。これにより、有機トランジスタの長寿命化が可能となり、その結果RFIDタグ全体としても長寿命化が可能となる。なお、RFIDタグ40は、表面に保護膜を更に備えていてもよい。
【0029】
以上、本発明の一実施形態に係るRFIDタグ(無線識別タグ)について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アンテナ部、集積回路部の配置や構成は任意に設定できる。また、倫理回路部を更に組み込むことも可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1〜5)
まず、前述した第1実施形態の実施例である実施例1〜5について、図1を参照して説明する。各構成要素の材料、厚み及び形成方法は、基板1(材料:PET、厚み:50μm)、半導体層2(材料:ペンタセン、厚み:0.05μm、形成方法:蒸着)、ソース電極3(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)、ドレイン電極4(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)、ゲート絶縁層5(材料:ポリビニルフェノール(PVP)、厚み(L2):1μm、形成方法:スピンコート)、ゲート電極6(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)とした。なお、実施例1〜5のそれぞれについて、ゲート電極6を形成する際は、L1/L2の値が表1に示す値となるように調整した。また、チャネル長については、いずれも100μmとした。
【0032】
(比較例1及び参考例1)
比較例1として、ゲート電極6を形成する際に、L1/L2の値が1となるように調整したこと以外は、実施例1〜5と同様に形成した有機トランジスタを用意した。更に、参考例1として、ゲート電極6上に、封止膜として半導体層2を覆う大きさのポリビニルアルコール(PVA、厚み10μm)を設けたこと以外は、比較例1と同様に形成した有機トランジスタを用意した。
【0033】
(寿命時間の評価)
実施例1〜5、比較例1及び参考例1の有機トランジスタについて寿命時間の評価を行った。評価方法は、各有機トランジスタを、温度60℃、湿度85%の大気雰囲気中で駆動させ、駆動開始時からオン電流とオフ電流との比が1.0×103以下となった時間までを寿命時間として評価した。表1に評価結果を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、実施例1〜5は、L1/L2の値が5以上となる関係を有しているため、比較例1に比べ、寿命時間が延びている。また、L1/L2の値が100以上となる関係を有している実施例4及び5は、参考例1よりも寿命時間が延びている。このことから、L1/L2の値が100以上となるように構成すれば、封止膜を設けるよりも効果的に酸素及び水分の侵入を抑制できることがわかる。
【0036】
(実施例6〜9)
実施例6として、基板1に厚み700μmのガラス(コーニング社製)を用いたこと以外は、前述した実施例2と同様に形成した有機トランジスタを用意した。また、実施例7として、ゲート絶縁層5の材料に、スパッタ法により形成した厚み1μmのTa25層を使用したこと以外は実施例6と同様に形成した有機トランジスタを用意した。また、実施例8として、半導体層2が、その上面において、ゲート絶縁層5で覆われていない部分を有すること以外は、実施例7と同様に形成した有機トランジスタを用意した。なお、半導体層2の上面におけるゲート絶縁層5で覆われていない部分の面積は、0.7mm2とした。また、実施例9として、ゲート絶縁層5の材料にスピンコート法により形成した厚み1μmのPVA層を使用したこと以外は実施例6と同様に形成した有機トランジスタを用意した。
【0037】
(寿命時間の評価)
実施例6〜9の有機トランジスタについて寿命時間の評価を行った。評価方法については、前述した実施例1〜5の評価方法と同様の方法を用いた。表2に実施例6〜9について、それぞれのゲート絶縁層5の材料、ゲート絶縁層5の酸素透過速度及び寿命時間を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示すように、実施例6及び7は、ゲート絶縁層5の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満であるため、実施例9に比べ寿命時間が延びている。また、実施例7は、実施例8に比べ寿命時間が延びている。この結果より、ゲート絶縁層5が半導体層2を覆って積層された構成とすることにより、酸素及び水分の侵入を効果的に抑制できることがわかる。
【0040】
(実施例10〜14)
次に、前述した第2実施形態の実施例である実施例10〜14について、図2を参照して説明する。各構成要素の材料、厚み及び形成方法は、基板1(材料:PET、厚み:50μm)、第2ゲート電極22(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)、第2ゲート絶縁層24(材料:PVP、厚み(T):1μm、形成方法:スピンコート)、半導体層2(材料:ペンタセン、厚み:0.05μm、形成方法:蒸着)、ソース電極3(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)、ドレイン電極4(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)、第1ゲート絶縁層21(材料:PVP、厚み(L2):1μm、形成方法:スピンコート)、第1ゲート電極23(材料:金、厚み:0.1μm、形成方法:マスク蒸着)とした。なお、実施例10〜14のそれぞれについて、第1ゲート電極23を形成する際は、L1/L2の値が表3に示す値となるように調整した。また、チャネル長については、いずれも100μmとした。
【0041】
(比較例2及び参考例2)
比較例2として、第1ゲート電極23を形成する際に、L1/L2の値が1となるように調整したこと以外は、実施例10〜14と同様に形成した有機トランジスタを用意した。更に、参考例2として、第1ゲート電極23上に、封止膜として半導体層2を覆う大きさのポリビニルアルコール(PVA、厚み10μm)を設けたこと以外は、比較例2と同様に形成した有機トランジスタを用意した。
【0042】
(寿命時間の評価)
実施例10〜14、比較例2及び参考例2の有機トランジスタについて寿命時間の評価を行った。評価方法については、前述した実施例1〜5の評価方法と同様の方法を用いた。表3に評価結果を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示すように、実施例10〜14は、L1/L2の値が5以上となる関係を有しているため、比較例2に比べ、寿命時間が延びている。また、L1/L2の値が100以上となる関係を有している実施例13及び14は、参考例2よりも寿命時間が延びている。このことから、L1/L2の値が100以上となるように構成すれば、封止膜を設けるよりも効果的に酸素及び水分の侵入を抑制できることがわかる。
【0045】
(実施例15〜18)
実施例15として、第1ゲート絶縁層21に、スパッタ法により形成した厚み1μmのTa25層を使用したこと以外は、前述した実施例11と同様に形成した有機トランジスタを用意した。また、実施例16として、第2ゲート絶縁層24に、スパッタ法により形成した厚み1μmのTa25層を使用したこと以外は、実施例15と同様に形成した有機トランジスタを用意した。また、実施例17として、半導体層2が、その下面において、第2ゲート絶縁層24で覆われていない部分を有すること以外は、実施例16と同様に形成した有機トランジスタを用意した。なお、半導体層2の下面における第2ゲート絶縁層24で覆われていない部分の面積は、0.7mm2とした。また、実施例18として、第2ゲート絶縁層24に、スピンコート法により形成した厚み1μmのPVA層を使用したこと以外は、実施例15と同様に形成した有機トランジスタを用意した。
【0046】
(寿命時間の評価)
実施例15〜18の有機トランジスタについて寿命時間の評価を行った。評価方法については、前述した実施例1〜5の評価方法と同様の方法を用いた。表4に実施例15〜18について、それぞれの第2ゲート絶縁層24の材料、第2ゲート絶縁層24の酸素透過速度及び寿命時間を示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示すように、実施例15及び16は、第2ゲート絶縁層24の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満であるため、実施例18に比べ寿命時間が延びている。また、実施例16は、実施例17に比べ寿命時間が延びている。この結果より、第2ゲート絶縁層24が半導体層2を覆って積層された構成とすることにより、酸素及び水分の侵入を効果的に抑制できることがわかる。
【0049】
以上、本発明の有機トランジスタの実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではない。例えば、前記実施例では、基板としてPETフィルム又はガラスを用いたが、ポリイミドフィルム等の他の基板を用いてもよい。また、基板表面に、バリア層として、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅等の金属層やそれらの合金層、又は無機酸化物、無機窒化物等の絶縁体層を設けてもよい。
【0050】
また、前記実施例では、電極材料として金を用いたが、白金、銀、銅、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル等の金属やこれらの合金、又は、ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化インジウム−スズ合金(ITO)等の無機材料を用いてもよい。
【0051】
また、ゲート絶縁層の材料としては、前記実施例では、PVPやTa25を用いたが、これらに限定されるものではない。例えば、シリカ、アルミナ等の無機絶縁材料、ポリアクリロニトリル、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機絶縁材料を用いても良い。
【0052】
また、有機半導体としては、前記実施例ではペンタセンを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、アセチレン、ピロール、チオフェン、アニリン、フラーレンやこれらの誘導体等の有機半導体材料、カーボンナノチューブと有機半導体材料との複合体等を用いても良い。半導体層の成膜方法としては、スピンコート法、キャスト法、電解重合法、気相重合法、真空蒸着法等が利用できる。
【0053】
なお、本発明のトランジスタを備えた実施形態としては、前述したように表示装置及び無線識別タグについて説明したが、有機トランジスタを用いる他のデバイスに適用しても、同様の効果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機トランジスタの説明図で、Aは断面図、Bは上面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る有機トランジスタの断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るアクティブマトリクス型ディスプレイ(表示装置)の一部破断斜視図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るRFIDタグ(無線識別タグ)の斜視図である。
【図5】従来の有機トランジスタの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 半導体層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート絶縁層
6 ゲート電極
6a,23a 外周部
7 チャネル領域
10,20 有機トランジスタ(電界効果トランジスタ)
21 第1ゲート絶縁層
22 第2ゲート電極
23 第1ゲート電極
24 第2ゲート絶縁層
30 ディスプレイ(表示装置)
40 RFIDタグ(無線識別タグ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の表面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の表面に順次積層されたゲート絶縁層及びゲート電極とを含む電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極は、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、
前記ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧100となる関係を有する請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記ゲート絶縁層の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満である請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層を覆って積層されている請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
有機半導体を含む半導体層と、前記半導体層の上面に分離して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上面に順次積層された第1ゲート絶縁層及び第1ゲート電極と、前記半導体層の下面に順次積層された第2ゲート絶縁層及び第2ゲート電極とを含む電界効果トランジスタであって、
前記第1ゲート電極は、前記半導体層のチャネル領域を覆って設けられ、
前記第1ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記第1ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧5となる関係を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記第1ゲート電極の外周部と前記チャネル領域との最短距離をL1、前記第1ゲート電極と前記チャネル領域との最短距離をL2とした場合、L1/L2≧100となる関係を有する請求項5に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記第1及び第2ゲート絶縁層のうち少なくともいずれか一方の酸素透過速度が、100ml/m2/day/MPa未満である請求項5に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記第1及び第2ゲート絶縁層のうち少なくともいずれか一方は、前記半導体層を覆って積層されている請求項5に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタを備えている表示装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタを備えている無線識別タグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−19659(P2006−19659A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198421(P2004−198421)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】